JP2007313636A - 切削工具およびそれを用いた被削材の切削方法 - Google Patents

切削工具およびそれを用いた被削材の切削方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高い耐欠損性を切削液の保持力に優れた切削工具を提供する。
【解決手段】 基体と該基体の表面に形成された層とを有してなる本体部を備え、該本体部は、すくい面と、逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差部に形成された切刃部と、を有してなり、前記すくい面のうち前記切刃部の近傍領域を領域Aとしたとき、前記領域Aにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.5μm〜1μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が負の値をとる切削工具である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、基体と該基体の表面に形成された層とを有した切削工具に関する。
従来より、金属の切削加工に広く用いられている切削工具は、超硬合金やサーメット、セラミックス等の基体の表面に、炭化チタン(TiC)層、窒化チタン(TiN)層、炭窒化チタン(TiCN)層および酸化アルミニウム(Al)層、または窒化チタンアルミニウム(TiAlN)層等の層を単層または複数層形成した切削工具が多用されている。
かかる切削工具においては工具表面の微小な凹凸が被削材との摩擦や切削液による冷却効果を支配する。その為、工具表面に大きな凹凸が存在する場合には、次のような問題があった。連続切削においては、切刃が高温になって被削材が溶着して耐摩耗性が著しく低下するという問題があった。また、断続切削など切刃に大きな衝撃が加わる切削においては、層表面の凹凸によって衝撃のかかり方が微視的に偏ってしまうために応力集中が生じ、該応力集中により発生したクラックを起点として、チッピングが発生し、耐欠損性が著しく低下するという問題があった。
そこで、特許文献1には、ブラシを用いた研磨やラッピング等の機械加工にて切刃先端の表面粗さ(Rmax)を0.2μm以下に小さくすることが提案されている。これによって、表面の凹凸に起因する溶着やマイクロチッピングを防止し工具寿命を向上できることが記載されている。
一方、近年の切削加工の高能率化に伴い、切削速度が速い高速切削加工が行われるようになっている。このような高速切削加工は、切削液を使用した切削条件においても切刃が非常に高温になって耐摩耗性が低下したり、切刃に溶着が発生しやすくなったりする場合が多かった。そのため、この耐摩耗性の低下および切刃の凝着が引き金となって切刃の欠損や異常摩耗が発生して、工具寿命を延ばすことができないという問題があった。
そこで、特許文献2や特許文献3では、アークイオンプレーティング法により形成した層について、層の表面に突出したドロップレット(粗大粒子)をバレル加工やホーニング加工等の機械加工により除去することによって、層の表面に頂部が突出したドロップレット粒子が層中に埋没した部分も含めてまるごと層から引き抜かれるように除去されて、層の表面に深い凹部(微細孔)が形成されることが提案されている。これにより、このクレータ部(深い凹部、微細孔)が切削液の液溜まりとなって切削時の潤滑性を高めることができ、耐摩耗性が向上することが記載されている。
WO02−004156号公報 特開平7−157862号公報 特開2002−146515号公報
しかしながら、特許文献1のように切刃先端の表面粗さを小さくする方法では、チッピングなどの異常摩耗は防ぐことができるものの、高速切削加工やステンレス等のように熱伝導性の悪い被削材の加工においては切刃が高温になることは避けられない。そのため、高温になった切刃は、耐摩耗性が低下したり、被削材が溶着しやすく、これが引き金となって切刃が突発的に欠損したり異常摩耗が発生したりして工具寿命を延ばすことができないという問題があった。
また、上記特許文献2や特許文献3のように、アークイオンプレーティング膜の表面を研磨して層の表面にクレータ部を形成した層においても、粗大粒子を除去した跡にできたクレータ部のサイズが大きくしかもその端部が不連続な状態となる為に、このクレータ部を起点としてクラックが発生しやすくなり、層の耐欠損性が低下してしまうという問題があった。
従って、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、高速切削加工やステンレス等のように熱伝導性の悪い被削材の加工においても、切刃が高温になることによる耐摩耗性の低下や、溶着の発生等を低減させ、切刃の欠損や異常摩耗の発生等の突発的な工具損傷を低減して、耐摩耗性および耐欠損性に優れる長寿命の切削工具を提供することにある。
本発明は、高い耐欠損性を維持しつつ切削液の保持力を高められる層の表面性状について検討したもので、基体と該基体の表面に形成された層とを有してなる本体部を備え、該本体部は、すくい面と、逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差部に形成された切刃部と、を有してなり、前記すくい面のうち前記切刃部の近傍領域を領域Aとしたとき、前記領域Aにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.5μm〜1μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が負の値をとるよう制御することによって、領域Aが切削時に受ける衝撃や摩擦に応じた最適な表面となり、工具寿命を向上できるという効果を有するものである。
ここで、前記Rskが−0.5〜−0.1であることが、領域Aにおける耐欠損性が向上するとともに、切削液の潤滑性と冷却性の向上によって耐摩耗性が向上するため望ましい。
また、前記切刃部におけるすくい面側の領域を領域Bとしたとき、前記領域Bにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.1μm〜1.5μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が0以下の値をとるとともに、前記Rskが前記Rskよりも小さいことが、切刃の耐欠損性とすくい面における耐摩耗性のバランスが最適化され、優れた耐摩耗性と耐欠損性を示す切削工具となるため望ましい。
さらに、前記Rskが−0.2〜0であることが、切屑がスムーズに排出されると共に、衝撃によってクラックが発生することを防ぎ、耐欠損性を向上させることができるため望ましい。
また、前記Rzが、前記Rzよりも大きいことが、領域Aがより潤滑性に優れた面となり、領域Bがより耐欠損性に優れる面となり、工具の耐欠損性と潤滑性とのバランスを最適化することができ、優れた切削性能を発揮する切削工具を実現することができるため望ましい。
さらに、前記Rzが0.1μm〜0.5μmであることが、切削温度を低下させることによって工具の強度が低下することを抑えるとともに、破壊源となる深い凹部を減らすことによって、耐欠損性を高めることができるため望ましい。
また、前記すくい面の前記領域Aよりも内側に形成されたブレーカ溝を有することが、切屑の流れを安定させる点で望ましく、かつ、該ブレーカ溝の最深部に位置する底面領域を領域Cとしたとき、前記領域Cにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.1μm〜1.5μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が負の値をとるとともに、前記Rskが前記Rskよりも小さいことが、領域Aより領域Cにおいて多くの凹部領域が得られるので、領域Cがより高い潤滑性を発揮し、領域Cにて切り屑がスムーズに潤滑するため、安定して切り屑を排出できるとともに、領域Cと切り屑の摩擦による熱の発生を抑え、熱による工具材質や被削材の劣化を低減させることができるため望ましい。
さらに、前記Rskが−1〜−0.4であることが、上記切り屑の潤滑性を高める効果が向上するため望ましい。
また、前記Rzが0.5μm〜1.5μmであることが、上記切り屑の潤滑性を高める効果が向上するため望ましい。
さらに、前記Rzが前記Rzよりも大きいことが、切り屑の潤滑性に優れた領域Cと、耐欠損性に優れた領域Aと、を併せ持ち、高い切削性能を発揮する切削工具を実現することができるため望ましい。
また、前記領域Aの前記基体と前記層との界面における最大高さ粗さ(Rz’)が0.3μm〜1.5μmであり、かつ、前記界面の基準長さ5μmにおいて、最も高い位置と最も低い位置との中点を通る基準線に対して、該基準線よりも上に突き出している部分を1つの凸部と規定したとき、前記基準長さ5μmにおける前記凸部の数が4個〜15個であることが、層の上記表面性状の制御が容易であるとともに、基体に対する層の密着性を高めることができる点で望ましい。
さらに、前記すくい面における水の接触角θが30°〜80°であることが、切削液が層表面に対し十分に浸透し高い潤滑性を発揮できるため望ましい。
また、本発明は、上記切削工具および被削材の少なくとも一方を回転させ、前記被削材に前記切削工具を近接させる工程と、前記切削工具の切刃部を前記被削材の表面に接触させ、前記被削材を切削する工程と、前記被削材から前記切削工具を離間させる工程と、を備えることで、耐欠損性および耐摩耗性に優れた切削工具を用いるため、加工面精度の高い切削加工が可能となる。
本発明の切削工具は、切屑が激しく衝突するとともに切屑の流れによって表面が激しくこすられる領域Aにおける表面の凹凸状態を最適化することによって、切削液を用いて切削する、いわゆる湿式加工において切刃が高温になることによる耐摩耗性の低下や、被削材の溶着を低減させ、切刃の欠損や異常摩耗の発生等の突発的な工具損傷を低減して、優れた耐摩耗性および耐欠損性を発揮することができるものである。
さらに、本発明の被削材の切削方法は、耐摩耗性および耐欠損性に優れた切削工具を用いて加工するため、加工面精度の高い安定した切削加工を長時間に渡って実現することができる。
本発明の切削工具の一例について、その工具切刃断面の模式図である図2を基に説明する。
図2によれば、切削工具(以下、単に工具と略す。)1は基体2の表面に単層または複層の層3を形成したものである。すなわち、基体2と基体2の表面に形成された層3とを有してなる本体部を備えてなる工具1である。工具1は、前記本体部の上面に形成されたすくい面5と、側面に形成された逃げ面6と、すくい面5と逃げ面6との交差部に形成された切刃部7とを有している。本発明においては、図2に示すように、工具1のすくい面5と逃げ面6とが交差する切刃部7からの距離によって下記のように領域A、B、Cを定義する。
すなわち、すくい面5のうち切刃部7の近傍領域を領域A、前記切刃部におけるすくい面側の領域を領域B、領域Aよりも内側にブレーカ溝9を有する場合、ブレーカ溝9の最深部に位置する底面領域を領域Cと規定する。
ここで、すくい面5のうち切刃部7の近傍領域である領域Aとは、被削材の切屑が通過することから工具1の表面が激しくこすれ、拡散摩耗が発生しやすい領域である。したがって、領域Aは、切削液が適度に蓄えられる大きさの凹部が表面に存在し、潤滑と冷却の効果が最大限に発揮できることが要求される。そこで、本発明によれば、前記領域Aにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.5μm〜1μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が負の値をとるように制御することによって、表面は比較的平坦な部分が多いため被削材の溶着を低減させることができる。また、層表面の凹部では切削液が浸透して適度な潤滑性を確保できるため、摩擦による熱の発生が抑えられ、耐摩耗性が向上する。
なお、領域Aは、刃先近傍のクレーター摩耗が進行しやすい部分であり、切削形態によって領域が異なる。具体的には、切削時の切り込み幅の距離に対して5%〜30%の幅分だけ、より具体的には、すくい面5のうち工具の内接円直径の寸法に対して0.5%〜3%の幅分だけ切刃部7より内側に位置する領域である。例えば、本体部の内接円直径が12mmである場合、すくい面5と逃げ面6とが交差する切刃部7に対してすくい面5側に100μmの距離だけ離れた位置X1から切刃部7に対してすくい面5側に200μmの距離だけ離れた位置X2の間の領域である。
なお、切刃部7がRホーニング処理されているような場合は、図3に示すように、領域Aを規定することができる。すなわち、領域Aは、切刃部7とすくい面5との交点からすくい面側へ100μm幅の領域と規定できる。より具体的には、例えば、切刃部7に連続するすくい面5の平面部分と切刃部7に連続する逃げ面6の平面部分との仮想延長線(L5、L6)のなす角の二等分線Mと切刃部7との交点を切刃部7の基準位置Oとして、該基準位置Oからすくい面側に100μmの距離だけ離れた位置を前記X1、200μmの距離だけ離れた位置を前記X2とする。その時の前記X1と前記X2との間の領域をA領域とすることができる。なお、切刃部7がチャンファホーニング処理されている場合も、同様にして規定することができる。
ここで、スキューネス(Rsk)とはJIS B 0601―2001およびISO1302―2002に規定されるように、表面粗さプロファイルの平均線に対しての振幅分布曲線の相対性を示すものである。図1(A)、(B)は表面粗さプロファイルと振幅分布曲線を示す。ここで振幅分布曲線(確率密度関数)とは、表面状態を示す測定曲線の最も高い山頂と最も深い谷底との間を等間隔に分割し、2本の平行線内の領域に存在するデータの数nと全データNとの比を横軸に、測定曲線の高さ方向を縦軸にとってプロットしたものである。図1に示すように、振幅分布が表面粗さプロファイルの平均線より下にある場合(図1(A))はスキューネス(Rsk)が正であり、その逆に振幅分布が表面粗さプロファイルの平均線より上にある場合(図1(B))はスキューネス(Rsk)が負である。
スキューネス(Rsk)が正であるということは平均線より上部に位置する体積(図1では面積)部分が少ないことを表わし、層の表面は尖った先端が多く突き出した形状であることを意味する。逆に、スキューネス(Rsk)が負であるということは平均線より上部に位置する体積(図1では面積)が多いことを表わし、層の被削材や切屑と接触する面積が多い形状であることを意味する。
また、スキューネスが0に近い値であれば摩擦係数は小さいが、被削材または切屑と接触する層の面積比率が十分でないために、すなわち、被削材や切屑との接触面積が増大するため、耐摩耗性が低下し、層表面の凸部が早期に摩耗し、その結果切削液の液だまりとなる凹部領域が不足して潤滑性が低下する。
ここで、焼成後の基体は表面が荒れた状態であり、該基体表面にそのまま層が形成された工具では、工具表面に凸部が多く存在してスキューネスが正の値となってしまう。そうなると、層の表面の耐溶着性が低下するとともに拡散摩耗や凝着摩耗が進行して耐摩耗性が低下してしまう。
これに対して、基体の表面をブラシ加工にて研削すると基体表面の表面粗さ、スキューネスともゼロに近い値になり、このような表面に形成された層の表面においては、表面粗さは基体表面の平滑性を反映して0に近い値となるがスキューネスは正となる。そして、この層の表面を再度研磨して層表面のスキューネスをゼロにすると層の表面における表面粗さが小さくなりすぎてしまう。そのため、工具表面において切削液を十分に保持することができず、十分な冷却、潤滑効果が得られず耐摩耗性が低下してしまう。
そこで、本発明の切削工具では、特許文献2、3のアークイオンプレーティング膜の表面を研磨してドロップレットの跡のクレータが残存し、Rzが2μm以上と非常に大きなものとなり、それに応じてRskの絶対値も非常に大きな値をとる構成とは異なり、焼成後の基体表面および層表面を適切に加工することで、適切な表面粗さ(最大高さ粗さ(Rz))と適切なスキューネス(Rsk)を有している。そのため、マイクロクラックの発生が低減でき、耐欠損性が高い切削工具となる。従来は、特に大きなドロップレットが生じたアークイオンプレーティング膜では、Rzが10μm程度となり、耐欠損性が大変低くなる場合があったが、本発明の切削工具では、RzおよびRskを制御して、表面性状が好適なものとなっているので、優れた耐欠損性を発揮させることができる。
すなわち、領域Aにおける最大高さ粗さ(Rz)を0.5μm以上とすることで、切削液が蓄えられる凹部が小さくなり、潤滑と冷却の効果が発揮できずに耐摩耗性が低下することを低減することができる。そして、領域Aにおける最大高さ粗さ(Rz)を1μm以下とすることで、凹凸の差が大きすぎて切屑の流れが悪くなり、切削抵抗が増大して耐摩耗性が低下することを低減することができる。また、領域Aにおけるスキューネス(Rsk)を負とすることで、層の被削材や切屑と接触する面積が多い表面性状とすることができる。そのため、層表面の凸部が早期に摩耗することによって、切り屑の潤滑性が低下することを低減するとともに、切削中の凸部への衝撃によって生じる亀裂の低減が図れる。その結果、耐欠損性の向上が図れる。
さらに、領域Aにおけるスキューネス(Rsk)を−0.5以上とすることで、凹部が深くなりすぎて切削中の衝撃により亀裂が生じて耐欠損性が低下することを抑制することができる。一方、領域Aにおけるスキューネス(Rsk)を−0.1以下とすることで、切削液が蓄えられる凹部が小さくなって潤滑性と冷却性が低下して摩耗が進行してしまうことを抑制することができる。そのため、耐欠損性および耐摩耗性の低下を抑制する効果が高まる。
次に、上述した切刃部におけるすくい面側の領域である領域Bについて説明する。該領域Bは、切刃先端で切削による大きな切削荷重が加わる領域である。領域Aと同じく、被削材の切屑が通過する領域であり、ある程度の潤滑は必要であるが、領域Aよりも切削荷重が大きい領域である。
そのため、領域Bは、領域Bにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.1μm〜1.5μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が0以下の値をとるとともに、前記Rskが前記Rskよりも小さくなるよう構成することが望ましい。このような構成により、領域Bが、チッピングや凝着の発生を低減させる効果が高い表面性状となるため、異常摩耗の低減が図れる。そのため、切刃の耐欠損性とすくい面の耐摩耗性のバランスが最適化され、優れた耐欠損性と耐摩耗性を示す切削工具を実現することができる。
さらに、Rskが−0.2〜0であるのがより好ましい。これにより、衝撃によってクラックが発生することを低減でき、耐欠損性を向上させることができる
また、RzがRzよりも大きい関係にあることが望ましい。これにより、領域Aが潤滑性に優れるとともに領域Bがより耐欠損性に優れ、工具全体としての工具寿命の向上が図れる。そのため、切刃の耐欠損性とすくい面の耐摩耗性さらに、Rzが、0.1μm〜0.5μmであることで、領域Bでの耐欠損性がより一層向上するため、チッピングによる加工精度の低下を低減させることができる。すなわち、切削温度を低下させるとともに、破壊源となる深い凹部を減らすことによって、耐欠損性を高めることができる。
特に、Rzが0.1μm〜0.5μmであり、かつ、Rskが−0.2〜0であることが望ましい。これにより、切刃部7が高温になることを防ぎ、切削熱によって生じるる拡散摩耗、凝着摩耗やチッピングなどの異常摩耗を低減させることができる。そのため、高い耐摩耗性と耐欠損性を維持することができる。
なお、前記領域Bは、より具体的には、切刃部7のうち、逃げ面6との交点からすくい面5側の領域のことである。
なお、前述の領域A同様、切刃部7がRホーニング処理されているような場合には、領域Bは、刃先処理が施された部位(ホーニングされた部位)と規定することができる。具体的には、図3に示すように、前記切刃部7の基準位置O(切刃部7に連続するすくい面5の平面部分と切刃部7に連続する逃げ面6の平面部分との仮想延長線(L5、L6)のなす角の二等分線Mと切刃部7との交点)における接線Yとすくい面5の仮想直線L5との交点をP5とした時、基準位置OからP5における領域を領域Bと規定する。
また、工具1が、すくい面5の前記領域Aよりも内側にブレーカ溝9を有する場合、ブレーカ溝9では強い衝撃はあまりかからず切屑が常に流れ続けるため、耐衝撃性よりも潤滑性が必要となる。つまり、ブレーカ溝の潤滑性を向上させ、切屑の流れをスムーズにすることが必要である。そこで、本発明の一実施形態である工具1は、ブレーカ溝9の最深部に位置する底面領域を領域Cとしたとき、領域Cにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.1μm〜1.5μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が負の値をとるとともに、RskがRskよりも小さい構成とすることが望ましい。これにより、クレータ摩耗の低減および潤滑性の向上が高まる。すなわち、領域Cにより多くの凹部領域が得られるため、領域Cが優れた潤滑性を備えることができる。そのため、切屑が領域Cをスムーズに潤滑するため、切屑と領域Cとの摩擦による熱の発生を低減させることができる。その結果、摩擦熱によって工具材質や被削材が劣化することを低減することができる。
さらに、Rskが−1〜−0.4であることが望ましい。これにより、潤滑性の向上が一層高まる。そのため、湿式加工において、高い切削性能を発揮することができる。
特に、Rzが0.5μm〜1.5μmであることが望ましい。これにより、上記範囲にRskを容易に制御でき、領域Cの潤滑性を向上させる効果が高まる。さらには、RzがRzよりも大きい関係にあることが望ましい。これにより、耐摩耗性に優れた領域Aと、潤滑性に優れた領域Cとを併せ持つことができる。その結果、工具寿命を向上させる効果が高まる。
特に、領域Cにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.5μm〜1.5μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が−1〜−0.4であることが望ましい。これにより、ブレーカ溝9における潤滑性を高く維持するとともに、耐クレータ摩耗性を向上させることができる。
なお、領域Cは、前述のとおりブレーカ溝の最深部に位置する底面領域である。ブレーカ溝9のうち切屑が摺動する領域のことである。すなわち、強い衝撃があまりかからず、切屑が常に流れ続けるため、耐衝撃性よりも潤滑性が求められる領域である。より具体的には、例えば、CNMG120408タイプの切削インサートの場合、領域Cは、ブレーカ溝の形状によって変化するが、およそブレーカ溝9の最深部を中心とするレンジ1mm幅(前後500μm幅)の領域と規定することができる。
なお、ブレーカ溝9の最深部が図2と異なり、一つの平面上で構成されるような場合は、該最深部に相当する平面の任意の一点を図2のX3(最深部)として、上述と同様に、領域Cを規定することができる。
さらに、A領域における基体2と層3との界面ににおける最大高さ粗さ(Rz’)が0.3μm〜1.5μmであり、かつ、前記界面の基準長さ5μmにおいて、最も高い位置と最も低い位置との中点を通る基準線に対して、該基準線よりも上に突き出している部分を1つの凸部と規定したとき、前記基準長さ5μmにおける前記凸部の数が4個〜15個であることが望ましい。これにより、層3の上記表面性状の制御が容易であるとともに基体2に対する層3の密着性を高めることができる。
また、領域Bおよび領域Cについても、上記表面性状をなすとともに、前述した領域Aにおける前記凸部の数と同程度の前記凸部を有してなることが好ましい。これにより、基体2に対する層3の密着性を高める効果が向上する。
ここで、基体2と層3との界面における最大高さ粗さ(Rz’)は、層3の組織観察において、基体2と層3との界面における凹凸形状をトレースした線からJIS B 0601−2001(ISO4287−1997)に規定される最大高さ粗さ(Rz)の算出方法に準じて基準長さを5μmとしたときに求められる値と定義する。
また、基準長さ5μmにおける凸部の数は、上記トレースした線9から図4に示す方法で求めることができる。
すなわち、まず、工具1の切断面または破断面を5000倍〜20000倍の倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。そして、得られた画像から凹凸形状をトレースする。トレースした線9を用いて、基体2と層3の界面での最高凸部を通り基体2と略平行な直線Dから、最深凹部を通り基体2と略平行な直線Eまでの最短距離の中点を通り、基体2に平行な直線を引き、これを基準線Fとする。そして、トレースした線9のうち、基準線Fよりも上に突き出しているものを凸部、基準線Fよりも下に凹んでいるものを凹部として、基準線Fから凸部の個数を数える(図4では2個)ことにより算出する(図4参照)。
また、すくい面5における水の接触角θが30°〜80°であることが望ましい。これにより、切削液がすくい面5に対して十分に浸透し、高い潤滑性を発揮することができる。なお、水の接触角はJIS R 3257―1999に基づく静滴法によって測定される。
ところで、上記層の表面性状を持つ切削工具は、例えば以下のような構成および製法によって作製することができるものである。
基体2は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期律表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種とからなる硬質相を、コバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金や、Ti基サーメット、または窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素等のセラミックスのいずれかからなる。
基体2を構成する上記セラミックスの主結晶または超硬合金またはTi基サーメットの硬質相の平均粒径は1〜2μmであることが望ましい。また、超硬合金またはTi基サーメットの場合、基体2の表面には、結合相濃度が内部と異なる厚み10〜100μmの層が存在するものであってもよい。
かかる基体2の製法の一実施形態を、基体2として超硬合金を用いる場合を例として説明する。まず、超硬合金の組成は、金属コバルト(Co)粉末が3質量%〜20質量%、周期律表第4、5、6族金属の炭化物(炭化タングステンを除く)、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種の硬質相を形成可能な化合物が0.1質量%〜10質量%、残部が炭化タングステン(WC)粉末である。これらの原料粉末を混合して、プレス成形により切削工具形状に成形する。そして、この成形体に対して脱バインダ処理を施した後、真空中にて、炉内温度1350℃〜1450℃で0.5時間〜3時間焼成して超硬合金からなる基体を作製する。
次に、層を形成する前の基体表面に対して、層と基体の密着性を向上させ、かつ、基体表面の表面性状を層の表面性状に反映させる目的で、基体表面全体にブラスト加工を施す。加工条件としては、アルミナ#200〜1000の砥粒を使用し、2Mpa〜10Mpaの噴出圧力にて基体表面の最大高さ粗さ(Rz)が0.3μm〜1.5μm程度の均一な粗さとなるよう調節する。このとき、切刃に向かって集中的にブラスト加工を施すことによって、切刃に丸ホーニングを施すことも可能である。また、成形時に生じる切刃のバリを除去することも可能である。
さらに、所望により、ブラスト加工前にブラシ加工によって切刃に丸ホーニングを施してもよい。ホーニング幅(曲率半径:R)を0.02mm〜0.06mmとすることで、切れ味、耐欠損性ともにバランスが取れた切刃形状となる。また、後述するように、ブラスト処理された層の表面に対して、切刃のみにブラシがあたるようブラシ位置を調節する等の調整を行って切刃のみを加工する場合がある。このような場合でも、領域Aの基体2の表面の最大高さ粗さ(Rz’)=0.3μm〜1.5μmとなるように調製する。
そして、ブラスト処理した基体2の表面にCVD法によって層3を形成する。層3の構成としては、単層でもよいが多層構成としたものであってもよい。具体的な層構成としては、以下の形成順序によって得られる構成が挙げられる。
例えば、基体2の表面に第1層として0.2μm〜0.5μm厚みのTiN層を形成する。第1層の上に第2層として耐摩耗性、耐欠損性に優れる柱状結晶組織からなるTiCN層を1.5μm〜5μmの厚みとなるよう形成する。第2層の上に第3層として粒状のTiCN層を0.05μm〜0.2μmの厚みとなるよう形成し、第3層の上に第4層としてTiCNO層を0μm〜0.2μmの厚みとなるよう形成する。そして、第4層の上に第5層として耐酸化性に優れるAl2O3層を形成する。さらに、第5層の上に第6層としてTiN層またはTiC層を0.5μm〜1.5μmの厚みで形成する。
なお、層3は層厚みが厚いほど耐摩耗性に優れる反面、基体と層との熱膨張差による残留応力により耐欠損性が低下する。したがって、層3の層厚みは被削材や切削条件などの切削工具の切削用途に応じた最適な値を設定する必要がある。その際、基体の表面性状を層の表面性状に反映させるため層3の総厚みを15μm以下とすることが望ましい。
層の成膜条件の一実施形態を以下に示す。炉内温度800℃〜1100℃、炉内圧力5kPa〜85kPaに調整されたCVD炉に反応ガスを導入する。反応ガスは、0.1体積%〜10体積%の塩化チタン(TiCl)ガスが、5体積%〜60体積%の窒素(N)ガス、残りを占める水素(H)ガスからなる混合ガスである。
第2層である炭窒化チタン(TiCN)層を形成するには、炉内温度750℃〜900℃、炉内圧力5kPa〜85kPaに調整されたCVD炉に反応ガスを導入する。反応ガスは、0.1体積%〜10体積%の塩化チタン(TiCl)ガス、0体積%〜40体積%の窒素(N)ガス、1体積%〜10体積%のアセトニトリル(CHCN)ガスおよび残りを占める水素(H)ガスからなる混合ガスである。
第3層である粒状のTiCN層を形成するには、炉内温度が950℃〜1100℃、炉内圧力が5kPa〜85kPaに調整されたCVD炉に反応ガスを導入する。反応ガスは、3体積%〜10体積%の塩化チタン(TiCl)ガス、5体積%〜40体積%の窒素(N)ガス、1体積%〜15体積%のメタン(CH)ガスおよび残りを占める水素(H)ガスからなる混合ガスである。
第4層であるTiCNO層を形成するには、炉内温度が800℃〜1100℃、炉内圧力が5kPa〜30kPaに調整されたCVD炉に反応ガスを導入する。反応ガスは、0.1体積%〜3体積%の塩化チタン(TiCl)ガス、0.1体積%〜10体積%のメタン(CH)ガス、0.01体積%〜5体積%の二酸化炭素(CO)ガス、5体積%〜60体積%の窒素(N)ガスおよび残りを占める水素(H)ガスからなる混合ガスである。
第5層であるAl層を形成するには、炉内温度が900℃〜1100℃、炉内圧力が5kPa〜10kPaに調整されたCVD炉に反応ガスを導入する。反応ガスは、3体積%〜20体積%の塩化アルミニウム(AlCl)ガス、0.5体積%〜3.5体積%の塩化水素(HCl)ガス、0.01体積%〜5.0体積%の二酸化炭素(CO)ガス、0体積%〜0.01体積%の硫化水素(HS)ガス、残りを占める水素(H)ガスからなる混合ガスである。
第6層である窒化チタン(TiN)または炭化チタン(TiC)を形成するには、炉内温度が800℃〜1100℃、炉内圧力が5kPa〜85kPaに調整されたCVD炉に反応ガスを導入する。窒化チタン(TiN)の場合の反応ガスは、0.1体積%〜10体積%の塩化チタン(TiCl)ガス、5体積%〜60体積%の窒素(N)ガスおよび残りが水素(H)ガスからなる混合ガスである。炭化チタン(TiC)の場合の反応ガスは、0.1体積%〜10体積%の塩化チタン(TiCl)ガス、5体積%〜60体積%のメタン(CH)ガスおよび残りが水素(H)ガスからなる混合ガスである。
形成された層3の表面に対して、ブラシ加工を行う。砥粒は、#1000以上のダイヤモンド砥粒や#300以上のSiC砥粒、または#300以上のAlを例示できる。ブラシは、豚毛、またはナイロン製でかつ毛丈が100mm以上の比較的柔らかいものが好ましい。基体の表面性状を反映した層の表面を除去しすぎないために、ブラシ加工の加工時間を20秒〜100秒の間で調整する。これにより、層3の表面を、最適な表面性状に加工することができる。また、ブラシ加工された層の表面に対して、切刃のみにブラシがあたるようブラシ位置を調節する等の調整を行って、切刃のみを加工することもできる。
最後に、本発明に係る被削材の切削方法について説明する。
図5は、本発明にかかる切削方法の工程図を示す(図においては、例として旋削工具を記載する。)まず、切削工具ホルダ11に切削工具1を取り付ける。そして、図5(a)に示すように、切削工具1の切刃を被削材10に近づける。なお、切削工具1と被削材10とが相対的に近づけば良く、例えば、被削材10を切削工具11に近づけてもよい。
そして、被削材10と切削工具1の少なくとも一方を回転させる。なお、図5(a)〜(c)においては、被削材が回転するものを例示している。次いで、図5(b)に示すように切削工具1の切刃を被削材10に接触させて切削する。その後、図5(c)に示すように被削材10から切削工具を離間させる。なお、切削加工を継続する場合は、切削工具1と被削材10とを相対的に回転させた状態を保持して、被削材10の異なる箇所に切削工具1の切刃を接触させる工程を繰り返す。
上述のように、耐欠損性に優れ、切削液の保持力に優れた切削工具によって被削材が加工されるため、加工面精度の高い加工物を得ることができる。特に、湿式加工においては、切削液の浸透に優れる切削工具を用いることから、より一層の加工面精度の向上が図れる。また、切削工具が、切屑排出性に優れるため、切屑の噛み込みを低減でき、安定した切削加工を長期にわたって行うことができる。その結果、加工効率の向上が図れる。特に、本発明にかかる切削工具は、延性が大きく、熱伝導性が低いステンレス鋼の切削加工において上述した効果がより顕著なものとなる。
そのため、ステンレスのように、切削時に切刃に溶着しやすい被削材の旋削加工において優れた耐溶着性を発揮することができるため、仕上げ面精度の高い加工が可能となる。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.5μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%、平均粒径1.5μmの炭化チタン(TiC)粉末を0.5質量%、TaC粉末を1質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMG120408)に成形した後、脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1500℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。
さらに、作製した超硬合金に表2に示す加工方法で表面処理、切刃処理を施した。
なお、表面処理条件はブラスト処理の場合、アルミナ砥粒#500を使用し噴出圧力2MPaにてウエットブラスト処理を工具表面全体に施す条件とした。そして、一部の試料については#500のSiC砥粒を用い、ブラシ回転速度を400rpmとしたブラシ加工にてホーニング加工を施した。このとき、ブラスト処理された表面を除去しないように、切刃のみにブラシがあたるようブラシ位置を調節した。
次に、上記超硬合金に対して、CVD法により、表1に示す条件にて基体から順に、第1層としてTiN層(0.4μm厚み)−第2層として柱状結晶からなるTiCN層(2.5μm厚み)−第3層として粒状結晶からなるTiCN層(0.1μm厚み)−第4層としてTiCNO層(0.1μm厚み)−第5層としてAl層(0.5μm厚み)−第6層としてTiN層(0.7μm厚み)を形成した。また、上記超硬合金に対して、アークイオンプレーティング法によりTiAlN膜を3.0μm形成した試料を試料No.9(比較例)として作製した。
Figure 2007313636
その後、表2に示す表面加工を施した。この時、ブラシ加工する条件は、ダイヤモンド砥粒#1000を使用し、ブラシ毛丈を120mm、ブラシ回転速度を100rpmで40秒加工する条件とした。なお、ブラシ加工の方法としては、ブラシの回転軸が水平方向である縦型ブラシにより切刃のみにブラシがあたるように加工したもの(表中、刃先と記載)、または、ブラシの回転軸が垂直方向である横型ブラシにより切刃のみならずすくい面全面にブラシがあたるように加工したもの(表中、全面と記載)のいずれかにて行った。
また、ブラスト加工の条件は、#300のアルミナ砥粒を溶媒である水とともに噴出圧力2.0MPa、噴出ノズル径をΦ10mm、ノズルとチップとの距離を20mmに設定し、チップのすくい面に垂直方向から噴出させて行った。
このようにして、基体の表面に形成される層として、CVD法によって形成された層を備える試料No.1〜8および10〜20と、PVD法によって形成された層を備える試料No.9との合計20個の切削工具を作製した。
Figure 2007313636
得られた切削工具について、触針式の表面粗さ測定器を用いて、領域A,BおよびCにおける最大高さ粗さ(Rz)およびスキューネス(Rsk)をJIS B 0601−2001に準拠してカットオフ値0.25mm、基準長さ:0.8mm、走査速度:0.1mm/秒の条件で測定した。なお、測定に際しては、領域A,BおよびC内の任意3箇所について各々測定し、最小値〜最大値として表3に記載した。
また、得られた工具のすくい面の平坦部について、表面における水の接触角θの測定をJIS R 3257―1999に準拠した静滴法を用いて行った。さらに、領域Aについて、JIS B 0601−2001(ISO4287−1997)に規定される最大高さ粗さ(Rz)の算出方法に準じて基準長さを5μmとしたときに求められる値を界面における最大高さ粗さ(Rz’)として算出した。詳しくは、基体と層との界面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて15000倍で観察し、基体の面粗さを測定した。具体的には、図4に示すように、基体と層との界面での最も基体が突出している最高点Hを通る基体と略平行な直線Dと、最も基体がへこんでいる最低点Lを通り基体と略平行な直線Eと、を形成する。その直線Dと直線Eの最短距離の中点を通り、基体と略平行な直線を基準線Fとした。直線Dと直線Eとの最短距離を最大高さ粗さ(Rz’)として、任意の5箇所(1箇所あたり界面における5μm長さの範囲)について測定し、その平均を各試料について算出した。また、基準線Fよりも上に突き出した凸部の個数を最大高さ粗さ(Rz’)と同様に、任意の5箇所でカウントし、その平均を各試料について算出した。結果はそれぞれ表3に示した。
そして、この切削工具を用いて下記の条件により、連続切削試験および断続切削試験を行い、耐摩耗性および耐欠損性を評価した。結果は表3に示した。
(連続切削試験)
被削材 :SUS304
切削速度:120m/分
送り速度:0.3mm/rev
切り込み:2mm
切削時間:40分
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:顕微鏡にて切刃を観察し、フランク摩耗量を測定
(断続試験)
被削材 :SUS304
切削速度:100m/分
送り速度:0.4mm/rev
切り込み:2mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:欠損に至る衝撃回数
層の表面状態が本発明の範囲外となる試料No.3、5〜9では、すくい面摩耗の進行が早く、チッピングや膜剥離による異常摩耗や欠損が発生し、短い工具寿命であった。試料No.7については、Rskの最小値〜最大値の中に正の値を有してなるため、領域Aの一部においてRskが正の値をとる領域に、尖った表面部分が存在してしまい、該部分を起点とする欠損が発生してしまい、耐欠損性が低いものとなっていた。
これに対して、ブラストによって基体表面を研磨し、該ブラスト処理面を残存させるよう好適にホーニング処理することで、層の表面状態が本発明の規定範囲となっている試料No.1、2および4は、切刃やランドのすくい面摩耗が比較的小さく、切刃のチッピングや膜剥離も無く、優れた耐摩耗性および耐欠損性を発揮した。また、層の表面状態が本発明の規定範囲となっている試料No.10〜20も、優れた耐摩耗性および耐欠損性を発揮した。
Figure 2007313636
(A)はスキューネス(Rsk)が正のときの表面粗さプロファイルとその振幅分布曲線(確立密度関数)、(B)はスキューネス(Rsk)が負のときの表面粗さプロファイルとその振幅分布曲線(確立密度関数)を各々示す概略図である。 本発明の工具切刃断面の模式図である。 領域AおよびBを説明するための説明図である。 基体と層との界面における凸部の数を測定する方法を説明するための模式図である。 本発明にかかる切削方法の工程図である。
符号の説明
1 切削工具(工具)
2 基体
3 層
5 すくい面
6 逃げ面
7 切刃部
9 ブレーカ溝
A すくい面5のうち切刃部7の近傍領域
B 切刃近傍領域7におけるすくい面側の領域
C ブレーカ溝9の最深部に位置する底面領域

Claims (13)

  1. 基体と該基体の表面に形成された層とを有してなる本体部を備え、
    該本体部は、すくい面と、逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差部に形成された切刃部と、を有してなり、
    前記すくい面のうち前記切刃部の近傍領域を領域Aとしたとき、前記領域Aにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.5μm〜1μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が負の値をとる切削工具。
  2. 前記Rskが−0.5〜−0.1である請求項1記載の切削工具。
  3. 前記切刃部におけるすくい面側の領域を領域Bとしたとき、前記領域Bにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.1μm〜1.5μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が0以下の値をとるとともに、前記Rskが前記Rskよりも小さい請求項1または2記載の切削工具。
  4. 前記Rskが−0.2〜0である請求項3記載の切削工具。
  5. 前記Rzが、前記Rzよりも大きい請求項3または4記載の切削工具。
  6. 前記Rzが0.1μm〜0.5μmである請求項3乃至5いずれか記載の切削工具。
  7. 前記すくい面の前記領域Aよりも内側に形成されたブレーカ溝を有し、かつ、該ブレーカ溝の最深部に位置する底面領域を領域Cとしたとき、前記領域Cにおける最大高さ粗さ(Rz)が0.1μm〜1.5μmであり、かつ、スキューネス(Rsk)が負の値をとるとともに、前記Rskが前記Rskよりも小さい請求項1乃至6いずれか記載の切削工具。
  8. 前記Rskが−1〜−0.4である請求項7記載の切削工具。
  9. 前記Rzが0.5μm〜1.5μmである請求項7または8記載の切削工具。
  10. 前記Rzが前記Rzよりも大きい請求項7乃至9いずれか記載の切削工具。
  11. 前記領域Aの前記基体と前記層との界面における最大高さ粗さ(Rz’)が0.3μm〜1.5μmであり、かつ、前記界面の基準長さ5μmにおいて、最も高い位置と最も低い位置との中点を通る基準線に対して、該基準線よりも上に突き出している部分を1つの凸部と規定したとき、前記基準長さ5μmにおける前記凸部の数が4個〜15個である請求項1乃至10いずれか記載の切削工具。
  12. 前記すくい面における水の接触角θが30°〜80°である請求項1乃至11いずれか記載の切削工具。
  13. 請求項1乃至12いずれか記載の切削工具および被削材の少なくとも一方を回転させ、前記被削材に前記切削工具を近接させる工程と、
    前記切削工具の切刃部を前記被削材の表面に接触させ、前記被削材を切削する工程と、
    前記被削材から前記切削工具を離間させる工程と、
    を備える被削材の切削方法。
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