JP2006205300A - 表面被覆部材および切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 硬度、靭性が高く、耐欠損性および耐摩耗性に優れた表面被覆部材を提供する。
【解決手段】 基体の表面に、チタンの炭化物、窒化物および炭窒化物から選ばれる単層、または、2層以上の複層からなるチタン系下層4と、α型結晶構造をなす酸化アルミニウムからなるαアルミナ層5とからなる硬質被覆層3を備え硬質被覆層3の断面を研磨して、チタン系下層4とαアルミナ層5との界面6を観察した際に、界面6に沿って10μmの長さ範囲あたりに、酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部7が1〜50個の割合で分散分布する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、硬質被覆層を表面に被着形成した表面被覆部材に関し、鋼の加工や、特に鋳鉄の断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような切削に際しても、優れた耐チッピング性および耐欠損性を有する表面被覆切削工具に関する。
従来より、金属の切削加工に広く用いられている切削工具は、超硬合金やサーメット、セラミックス等の基体の表面に、炭化チタン(TiC)層、窒化チタン(TiN)層、炭窒化チタン(TiCN)層および酸化アルミニウム(Al)層等の硬質被覆層を複数層被着形成した表面被覆切削工具が多用されている。
かかる表面被覆切削工具においては、最近の切削加工の高能率化に従って金属の重断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような過酷な切削条件で使われるようになっており、従来の工具では硬質被覆層が突発的に発生する大きな衝撃に耐えきれず、チッピングや硬質被覆層が剥離にて基体が露出してしまい、これが引き金となって切刃に大きな欠損や異常摩耗が発生して工具寿命の長寿命化ができないという問題があった。
そこで、特許文献1には、炭窒化チタン(TiCN)層上に結合層(強化層)を配して酸化アルミニウム(Al)層を積層した構造において、強化層とAl層間に所定の凹凸をつけることによってAl層の剥離を抑制できることが記載されている。また、特許文献2では、TiCN層と結合層とAl層の格子縞が連続する、さらにはエピタキシャルの関係であることにより、TiCN層−Al層間の密着性が高く機械強度に優れたAl層を作製できることが記載されている。
さらに、特許文献3では、チタン系下層と酸化アルミニウム層との間に酸化チタン(Ti)層を成膜することによって層間密着性を向上できることが記載されている。さらには、特許文献4によれば、炭酸窒化チタン(TiCNO)相または酸窒化チタン(TiNO)相と酸化チタン(Ti)相との2相組織からなる密着層をチタン系下層と酸化アルミニウム層の間に成膜して、チタン系下層と酸化アルミニウム層との密着性を高めることが記載されている。
特開平11−229144号公報 特開平10−156606号公報 特開平10−310877号公報 特開2000−176706号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された硬質被覆層の構成によっても、重断続切削等の突発的に大きな衝撃がかかるような切削においては硬質被覆層が衝撃に耐えきれずに被覆層内にチッピングや欠損につながるほどの大きなクラックが発生してしまい、切刃のチッピングによる異常摩耗や突発欠損等が発生して工具寿命が短くなっていた。また、鋼等の切削においても更なる耐欠損性および耐摩耗性の向上が求められていた。
また、特許文献2のように炭窒化チタン層−酸化アルミニウム層間がエピタキシャルの関係にある硬質層では、層間の密着性は向上するものの大きな衝撃に対する耐久性は低下してしまうという問題があった。
さらに、特許文献3、4のように、酸化チタン層、または酸化チタンと炭酸窒化チタンまたは酸窒化チタンとからなる混合層をチタン系下層と酸化アルミニウム層との間に層として成膜した硬質層では、チタン系下層と酸化アルミニウム層との付着力は向上するものの切削による衝撃を吸収することができず、耐欠損性が不十分であった。
従って、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、衝撃に対する耐久性を高めて、チッピングや欠損が発生することなく優れた耐チッピング性および耐欠損性を有するとともに、耐摩耗性にも優れる長寿命の切削工具等の表面被覆部材を提供することにある。
本発明者は、上記課題に対して検討した結果、基体の表面に、チタン系下層と酸化アルミニウム(Al)層とを積層した構造からなる硬質被覆層において、酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が前記チタン系下層の界面から前記酸化アルミニウム層内に突出した状態で分散分布した組織とすることによって、切削加工時に硬質被覆層の表面から突発的な大きい衝撃がかかってもチタン系下層および酸化アルミニウム層に含まれる粒子よりも機械的強度が低い酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))粒子が部分的に変形してその衝撃を吸収することによって、部材の耐欠損性が向上することを知見した。
すなわち、本発明の表面被覆部材は、基体の表面に、チタンの炭化物、窒化物および炭窒化物から選ばれる単層、または、2層以上の複層からなるチタン系下層と、α型結晶構造をなす酸化アルミニウム層とからなる硬質被覆層を備える表面被覆切削工具であって、酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が前記チタン系下層の界面から前記酸化アルミニウム層内に突出した状態で分散分布することを特徴とするものである。
ここで、前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が前記チタン系下層の界面に沿って10μmの長さ範囲あたりに1〜50箇所の割合で分散分布することが、層間密着性と耐衝撃性をともに高めることができる点で望ましい。
また、前記酸化アルミニウム層のX線回折ピークにおいて、(012)面または(110)面に最強ピーク強度を有することが、耐酸化性、高温硬度が向上するため、耐摩耗性が向上する点で望ましい。
なお、前記チタン系下層に筋状晶炭窒化チタン粒子からなる炭窒化チタン層を含有するとともに、前記筋状晶炭窒化チタン粒子の平均幅が100〜1000nmであり、かつ前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が筋状をなして平均幅5〜70nmで存在することが、硬質被覆層の耐欠損性、耐摩耗性を共に向上させることができるため望ましい。
さらに、前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部の突出高さが100〜1000nmであることが、切削時の衝撃を層間剥離することなく十分に吸収できるため、耐欠損性が向上する点で望ましい。
また、前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部の直下に炭窒化チタン粒子が偏析していることが、前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))の核生成が確実にできて酸化チタン部を確実に存在せしめることができる結果、耐衝撃性を確実に高め製品間での耐欠損性のバラツキを小さくできるとともに、前記チタン系下層と酸化アルミニウム層との密着力が向上して膜剥離による工具損傷を防ぐことができるために望ましい。
さらに、前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が、x=2、y=3であることが、チタン系下層と酸化アルミニウム層との密着力が向上して膜剥離による工具損傷を防ぐことができ、かつ、切削時の衝撃を吸収しやすくなるため望ましい。
この時、前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部の最強ピークを示す結晶面が前記酸化アルミニウム層の最強ピークを示す結晶面と同じであることが、チタン系下層と酸化アルミニウム層との密着力が向上して膜剥離による工具損傷を防ぐことができるため望ましい。
さらに、前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部にて衝撃を吸収するために、前記表面被覆部材の表面にて硬質球をころがすように回転させて前記硬質被覆層中の各層及び基体を露出するように球曲面の摩耗痕を形成してなり、該摩耗痕の露出した前記硬質被覆層の前記硬質球接触部分を局所的に摩耗させて、前記硬質被覆層の炭窒化チタン層及び基体を露出するように球曲面の摩耗痕を形成するカロテストにおいて、前記摩耗痕の露出した前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部から前記酸化アルミニウム層の内部に向かってクラックが観察される場合がある。
なお、上記表面被覆部材は、掘削工具、切削工具、刃物等の工具や金型や摺動部材等の耐摩材等の耐摩耗性および耐欠損性が要求される構造材に好適に利用可能であるが、特に切削工具として用いた際に耐摩耗性および耐欠損性を両立することができる、優れた切削性能を発揮するものとなる。
上記本発明の表面被覆部材は、基体の表面に、チタン系下層と、α型結晶構造をなす酸化アルミニウム層とを積層した構造からなる硬質被覆層において、前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が前記チタン系下層の界面から前記酸化アルミニウム層内に突出した状態で分散分布した組織とすることによって、例えば切削加工時等に突発的な大きい硬質被覆層の表面から衝撃がかかってもチタン系下層および酸化アルミニウム層に含まれる粒子よりも機械的強度が低い酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が部分的に変形してその衝撃を吸収することによって、部材の耐欠損性が向上する。
その結果、ねずみ鋳鉄(FC材)やダクタイル鋳鉄(FCD材)のような高硬度黒鉛粒子が分散した鋳鉄等の金属の重断続切削等のような工具切刃に強い衝撃がかかる過酷な切削条件や、連続切削条件、さらにはこれら断続切削と連続切削とを組み合わせた複合切削条件において、例え突発的に大きな衝撃が硬質被覆層にかかったときであっても新たに大きなクラックが発生して硬質被覆層がチッピングしたり欠損したりすることなく衝撃を吸収できる結果、硬質被覆層全体のチッピングや剥離を防止できるとともに、硬質被覆層全体の耐摩耗性が維持される、優れた耐チッピング性および耐欠損性を有する切削工具が得られる。もちろん、鋼の切削においても従来工具に対して耐欠損性および耐摩耗性に優れた工具となる。
本発明の表面被覆部材の好適な一例である炭素鋼や鋳鉄等の鋼材を切削加工する切削工具について、破断面についての走査型顕微鏡(SEM)写真である図1、図1のA部についての透過型顕微鏡(TEM)写真である図2を基に説明する。
図1によれば、本発明の表面被覆切削工具(以下単に工具と略す)1は、基体2の表面に、チタンの炭化物、窒化物および炭窒化物から選ばれる単層、または、2層以上の複層からなるチタン系下層4と、α型結晶構造をなす酸化アルミニウムからなるα−酸化アルミニウム層(以下、αアルミナ層と略す。)5とからなる硬質被覆層3を備えている。
ここで、図1のチタン系下層4とαアルミナ層5との界面6付近であるA部についてのTEM写真である図2に示すように、本発明の工具1は、チタン系下層4とαアルミナ層5との界面6において、酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部(以下、酸化チタン部と略す。)7をチタン系下層4の界面からαアルミナ層5内に突出した状態で分散分布させた構成からなり、この構成により、切削加工による衝撃を吸収することができ、工具1の突発欠損やチッピングを防ぐことができる。
すなわち、チタン系下層4とαアルミナ層5との界面6に酸化チタン部7が存在していない状態では、切削加工による衝撃を吸収する性能が低く強い衝撃に工具1が耐えられずに欠損またはチッピングしてしまい、工具寿命が低下してしまう。
ここで、酸化チタン部7の分散分布の割合として、チタン系下層4とαアルミナ層5との界面6に沿って10μmの長さ範囲あたりに1〜50箇所、好ましくは5〜20箇所の割合で酸化チタン部7が存在するように制御することによって、この範囲であれば、チタン系下層4とαアルミナ層5との密着強度の低下を抑え、膜剥離による異常摩耗やチッピングを防ぎ、また、界面6が脆くなりすぎて逆に膜剥離やチッピングが発生することを防止して長寿命な工具とすることができる。
なお、本発明によれば、チタン系下層4とαアルミナ層5との間に、チタン系下層4とαアルミナ層5との密着力を向上させるためにチタンの酸窒化物、炭酸化物、炭酸窒化物から選ばれる硬質膜の単層または2層以上の複層からなる中間層を成膜しても良いが、酸化チタン粒子が切削の衝撃を吸収しやすくするために中間層の膜厚は100nm以下であることが望ましい。
ここで、界面6を観察する際には、金属顕微鏡、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察機器を用いて観察可能であるが、特に透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することにより微小なサイズの酸化チタン部7を正確かつ鮮明に観察することができる。
また、EELS(Electoron Energy−Loss Spectroscopy)分析によるEELSスペクトルから、その部分に含有される元素状態を特定できて、酸化チタン部7の存在を確認することができる。なお、酸化チタン部7における炭素、窒素およびホウ素の検出ピーク比率はチタン、酸素を含めた全体のピーク強度の合計と比較して合計で20%以下となる。
さらに、酸化チタン部7については、TixOyと表記したときのx=2、y=3(三酸化二チタン:Ti)であることが、αアルミナ層5とチタン系下層4との密着力が向上して膜剥離による工具損傷を防ぐことができ、かつ、切削時の衝撃を吸収しやすくなるため望ましい。
この時、酸化チタン部7(Ti)の最強ピークを示す結晶面がαアルミナ層5の最強ピークを示す結晶面と同じであることが、チタン系下層4とαアルミナ層5との密着力が向上して膜剥離による工具損傷を防ぐことができるため望ましい。
なお、チタン系下層4に筋状晶炭窒化チタン粒子9からなる炭窒化チタン層8を必須として含有するとともに、筋状晶炭窒化チタン粒子9の平均幅bが100〜1000nmであることが、硬質被覆層の耐欠損性、耐摩耗性を共に向上させることができるため望ましい。なお、筋状晶炭窒化チタン粒子9の平均幅bは図1に示すように、炭窒化チタン層8の中央部に線分Lを引き、この線分Lを通る粒界の数で割った値とする。
ここで、上記筋状晶炭窒化チタン粒子9の平均幅bを100〜500nm、さらに100〜300nmと小さくするとチタン系下層4自体の耐摩耗性が向上するがαアルミナ層5との密着性が低下する傾向にある。しかしながら、本発明においては、このように筋状晶炭窒化チタン粒子9の平均幅bが小さくなる場合であっても、チタン系下層4とαアルミナ層5との密着性が高いものである。
また、酸化チタン部7が筋状をなして平均幅5〜70nmで存在することが、酸化チタン部7とαアルミナ層5との密着性を高めるとともに衝撃を吸収する効果が高い点で望ましい。
さらに、酸化チタン部7の突出高さhが100〜1000nmであることが、切削時の衝撃を層間剥離することなく十分に吸収できるため、耐欠損性が向上する点で望ましい。
また、酸化チタン部7の直下に粒径50nm以上の粗大な炭窒化チタン粒子10が独立した状態で偏析していることが、チタン系下層4とαアルミナ層5との密着力が向上して膜剥離による工具損傷を防ぐことができるため望ましい。
なお、αアルミナ層5は、X線回折ピークにおいて、(012)面または(110)面を示す角度に最強ピーク強度を有することが、耐酸化性、高温硬度が向上するため、耐摩耗性が向上する点で望ましい。
さらに、図3に示すように、酸化チタン部7にて衝撃を吸収するために、工具1の表面にて硬質球12をころがすように回転させて接触させた状態で工具1の硬質被覆層3中の各層及び基体2を露出するように球曲面の摩耗痕11を形成するカロテストを行った場合、その硬質球12の衝撃で酸化チタン部7が最も変形しやすい傾向になる。その結果、図4に示すように、酸化チタン部7(図4では便宜上通常のサイズより強調して大きく表示している。)が変形する一方、変形し得ないαアルミナ層5中にクラックが発生することとなる。すなわち、摩耗痕11の露出した酸化チタン部7からαアルミナ層5の内部に向かってクラック13が観察される場合があり、このことは、酸化チタン部7に衝撃を吸収する作用があることを示している。
ここで、露出した基体2の大きさが大きすぎたり、小さすぎたりすると、TiCN層4中のクラックを正確に観察することができない場合があるため、摩耗痕11中に露出する基体2の直径が摩耗痕11全体の直径の0.1倍〜0.6倍になるようにカロテストの摩耗条件(時間、硬質球の種類、研磨剤等)を調節するのがよい。
一方、硬質被覆層3のチタン系下層4としては基体2の直上に下地層としてTiN層等を成膜してもよく、また、αアルミナ層5の表面に最表面層としてTiN層を成膜してもよい。
なお、本発明の工具1に使用される基体2は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期律表第4a、5aおよび6a族金属元素の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種からなる硬質相をコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)等の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金や、Ti基サーメット、またはSi、Al、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)等のセラミックスのいずれかが好適に使用でき、中でも切削工具として用いる場合には、超硬合金またはサーメットからなることが耐欠損性および耐摩耗性の点で望ましい。また、基体2としては用途によっては炭素鋼、高速度鋼、合金鋼等の金属からなるものであっても良い。
さらに、上記構成からなる表面被覆部材は、摺動部品や金型等の耐摩部品、切削工具、掘削工具、刃物等の工具、耐衝撃部品等の各種用途へ応用可能である。切削工具として用いた場合には上述した、優れた効果を発揮することができ、他の用途に用いた場合であっても優れた機械的信頼性を有するものである。
(製造方法)
また、本発明の工具1を製造する方法について説明する。
まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形した後、真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる基体2を作製する。そして、上記基体2の表面に所望によって研磨加工や切刃部のホーニング加工を施す。
なお、基体2の表面粗さは、被覆層の付着力を制御する点で、すくい面における算術平均粗さ(Ra)が0.1〜1.5μm、逃げ面における算術平均粗さ(Ra)が0.5〜3.0μmとなるように原料粉末の粒径、成形方法、焼成方法、加工方法を制御する。
次に、その表面に例えば化学気相蒸着(CVD)法によって被覆層5を成膜する。
まず、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1000℃、10〜30kPaの条件で下地層であるTiN層を成膜する。
次に、例えば、反応ガス組成として、体積%で塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.1〜2.0体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、成膜温度を780〜880℃、5〜25kPaにて炭窒化チタン層を成膜する。
ここで、上記成膜条件のうち、反応ガス中のアセトニトリルガスの割合が0.1〜0.4体積%に調整することによって、チタン系下層4の炭窒化チタン層中の粒子を上述した筋状結晶に確実に成長させることができる。また、上記成膜温度についても、780℃〜880℃とすることが、断面観察において筋状をなし、かつ表面観察において筋状をなす炭窒化チタン粒子からなる微細炭窒化チタン層を形成するために望ましい。
ここで、上記成膜条件のうち、筋状TiCN結晶の成長過程では、CHCN(アセトニトリル)ガスの割合Vを0.1〜3体積%に制御するとともに、キャリアガスであるHガスの割合VとCHCNガスの割合Vとの比(V/V)が0.03以下となるように低濃度に制御することによって、微細な核生成ができてTiCN層の付着力を向上させることができる。
次いで結合層を成膜する。この時、酸化チタン部を作製する上では、塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜3体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.01〜5体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を950〜1100℃、5〜30kPaとする。
ここで、本実施態様によれば、酸化チタン部7形成時の反応ガスの温度を、工具1表面に成膜される混合ガスの温度に比べて成膜装置のチャンバ内に導入される時点で一旦20〜150℃高くなるように加熱し、成膜時には成膜温度に下げるように成膜装置を調整することによってチタン系下層と後述する方法にて成膜するαアルミナ層との界面に上述した酸化チタン部を導入することができる。
そして、引き続き、αアルミナ層5を成膜する。αアルミナ層5の成膜方法としては、塩化アルミニウム(AlCl)ガスを3〜20体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜3.5体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.01〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0〜0.01体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、950〜1100℃、5〜10kPaとすることが望ましい。なお、酸化チタン部7の存在状態を制御するために、αアルミナ層の成膜速度は0.5〜2μm/時に制御することが望ましい。
また、最表層としてTiN層を成膜するには、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、50〜85kPaとすればよい。
そして、所望により、成膜した被覆層3表面の少なくとも切刃部を研磨加工する。この研磨加工により、被覆層3中に残存する残留応力が開放されてさらに耐欠損性に優れた工具となる。
なお、上記方法はCVD法について説明しているが、その他の成膜方法(物理蒸着法、プラズマCVD等)を用いた製造方法でも本発明の工具1は作製可能である。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%、平均粒径2.0μmの炭化チタン(TiC)粉末を0.5質量%、TaC粉末を5質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMA120412)に成形した後、脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1500℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金にブラシ加工にてすくい面より刃先処理(ホーニングR)を施した。得られた基体の逃げ面においてJISB0601−2001に準じた算術平均粗さ(Ra)は1.1μm、すくい面における算術平均粗さ(Ra)は0.4μmであった。
次に、上記超硬合金に対して、CVD法により各種の被覆層を表1、表2に示す成膜条件および膜構成にて成膜した。また、最表層として、TiN膜を表1の条件で全ての試料の最表面に0.2μm成膜した。そして、被覆層の表面をすくい面側から30秒間ブラシ加工して試料No.1〜6の表面被覆切削工具を作製した。
Figure 2006205300
Figure 2006205300
得られた工具について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて硬質被覆層のチタン系下層とαアルミナ層との界面部分が観察できるように研磨加工して各層の断面方向からみたミクロな組織状態を観察し、結合層の状態、突出粒子の有無およびその幅等を観察した。
さらに、硬質被覆層の断面を含む任意破断面または研磨面5ヵ所について走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮り、各写真おいて各層の膜厚、マクロな組織を観察した。このとき、筋状炭窒化チタン粒子からなる炭窒化チタン層の総膜厚に対して中央の高さ位置について図1に示すような線Aを引いて、線分上を横切る粒界数を測定して筋状炭窒化チタン粒子の結晶幅に換算した値を算出し、写真5ヶ所についてそれぞれ算出した結晶幅の平均値を平均結晶幅bとして算出した。
また、上記表面被覆切削工具の硬質被覆層のクラック状態を、下記条件で行ったカロテスト試験によって生じた摩耗痕を金属顕微鏡またはSEMにて観察し、クラックの有無および進行方向をそれぞれ測定した。結果は表3に示した。
装置:ナノテック社製CSEM−CALOTEST
鋼球
直径30mm球形鋼玉
ダイヤモンドペースト 1/4MICRON
さらに、摩耗痕中に露出する基体の直径が摩耗痕全体の直径に対して0.1〜0.6倍、(今回の測定では0.3〜0.7mm)となるように摩耗させた状態でクラックを観察した。
また、硬質被覆層の付着力を、下記条件のスクラッチ試験によって測定した。結果は表3に示した。
装置:ナノテック社製CSEM−REVETEST
測定条件
テーブルスピード:0.17mm/sec
荷重スピード100N/min
圧子
円錐形ダイヤモンド圧子(東京ダイヤモンド工具製作所社製ダイヤモンド接触子:N2−1487)
曲率半径:0.2mm
稜線角度:120°
結果は表3に示した。
そして、この切削工具を用いて下記の条件により、連続切削試験および断続切削試験を行い、耐摩耗性および耐欠損性を評価した。
(連続切削条件)
被削材 :ダクタイル鋳鉄4本溝付スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:250m/分
送り速度:0.4mm/rev
切り込み:2.5mm
切削時間:25分
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:顕微鏡にて切刃を観察し、フランク摩耗量・先端摩耗量を測定
(断続切削条件)
被削材 :ダクタイル鋳鉄4本溝付スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:250m/分
送り速度:0.3〜0.5mm/rev
切り込み:2.5mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:欠損に至る衝撃回数
衝撃回数1200回時点で顕微鏡にて切刃の被覆層の剥離状態を観察
Figure 2006205300
表1〜3より、結合層中に酸化チタン部がない試料No.5、6ではチッピングが発生して耐欠損性に劣るものであった。
これに対して、本発明に従い、酸化チタン部が存在する試料No.1〜4では、連続切削においても断続切削においても長寿命であり、耐欠損性および耐チッピング性とも優れた切削性能を有するものであった。
本発明の表面被覆部材の破断面における硬質被覆層付近についての走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。 本発明の表面被覆部材の硬質被覆層の要部についての透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。 本発明の表面被覆部材について評価するカロテストの評価法を説明するための模式図である。 図3のカロテストの研磨痕の一例についての模式図である。
符号の説明
1: 表面被覆切削工具
2: 基体
3: 硬質被覆層
4: チタン系下層
5: αAl2O3層
(α型結晶構造をなす酸化アルミニウムからなるα−酸化アルミニウム層)
6: 界面
7: 酸化チタン(TixOy)部
8: 炭窒化チタン層
9: 筋状炭窒化チタン粒子
10: 独立して存在した炭窒化チタン粒子
11: カロテストによる摩耗痕
12: 硬質球
13: 酸化アルミニウム層のクラック
b: 筋状炭窒化チタン層における平均結晶幅
h: 酸化チタン部の突出高さ

Claims (10)

  1. 基体の表面に、チタンの炭化物、窒化物および炭窒化物から選ばれる単層、または、2層以上の複層からなるチタン系下層と、α型結晶構造をなす酸化アルミニウム層とからなる硬質被覆層を備える表面被覆切削工具であって、酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が前記チタン系下層の界面から前記酸化アルミニウム層内に突出した状態で分散分布することを特徴とする表面被覆部材。
  2. 前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が前記チタン系下層の界面に沿って10μmの長さ範囲あたりに1〜50箇所の割合で分散分布することを特徴とする請求項1記載の表面被覆部材。
  3. 前記酸化アルミニウム層のX線回折ピークにおいて、(012)面または(110)面に最強ピーク強度を有することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆部材。
  4. 前記チタン系下層に筋状晶炭窒化チタン粒子からなる炭窒化チタン層を含有するとともに、前記筋状晶炭窒化チタン粒子の平均幅が100〜1000nmであり、かつ前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部が筋状をなして平均幅5〜70nmで存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面被覆部材。
  5. 前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部の突出高さが100〜1000nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表面被覆部材。
  6. 前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部の直下に炭窒化チタン粒子が偏析していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表面被覆部材。
  7. 前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部において、x=2、y=3であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表面被覆部材。
  8. 前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部の最強ピークを示す結晶面が前記酸化アルミニウム層の最強ピークを示す結晶面と同じであることを特徴とする請求項7に記載の表面被覆部材。
  9. 前記表面被覆部材の表面にて硬質球をころがすように回転させて前記硬質被覆層中の各層及び基体を露出するように球曲面の摩耗痕を形成してなり、該摩耗痕の露出した前記硬質被覆層の前記硬質球接触部分を局所的に摩耗させて、前記硬質被覆層の各層及び基体を露出するように球曲面の摩耗痕を形成してなり、該摩耗痕の露出した前記酸化チタン(TixOy(x>0、y>0))部との界面から前記酸化アルミニウム層の内部に向かってクラックが観察される請求項1乃至8のいずれか記載の表面被覆部材。
  10. 請求項1乃至9のいずれか記載の表面被覆部材を具備する切削工具。
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