JP4713137B2 - 表面被覆部材および切削工具 - Google Patents

表面被覆部材および切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP4713137B2
JP4713137B2 JP2004344829A JP2004344829A JP4713137B2 JP 4713137 B2 JP4713137 B2 JP 4713137B2 JP 2004344829 A JP2004344829 A JP 2004344829A JP 2004344829 A JP2004344829 A JP 2004344829A JP 4713137 B2 JP4713137 B2 JP 4713137B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
covering member
ticn
substrate
surface covering
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2004344829A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006150506A (ja
Inventor
栄仁 谷渕
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyocera Corp filed Critical Kyocera Corp
Priority to JP2004344829A priority Critical patent/JP4713137B2/ja
Publication of JP2006150506A publication Critical patent/JP2006150506A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4713137B2 publication Critical patent/JP4713137B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Description

本発明は、硬質被覆層を表面に被着形成した表面被覆部材に関し、中でも優れた耐チッピング性および耐欠損性を有する表面被覆切削工具に関する。
従来より、金属の切削加工に広く用いられている切削工具は、超硬合金やサーメット、セラミックス等の基体の表面に、炭化チタン(TiC)層、窒化チタン(TiN)層、炭窒化チタン(TiCN)層および酸化アルミニウム(Al)層等の硬質被覆層を複数層被着形成した表面被覆切削工具が多用されている。
かかる表面被覆切削工具においては、最近の切削加工の高能率化に従って金属の重断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような過酷な切削条件で使われるようになっており、従来の工具では硬質被覆層が突発的に発生する大きな衝撃に耐えきれず、チッピングや硬質被覆層が剥離にて基体が露出してしまい、これが引き金となって切刃に大きな欠損や異常摩耗が発生して工具寿命の長寿命化ができないという問題があった。
そこで、特許文献1には、下部層(TiCN層)上に結合部(強化層)を配して上部層(Al層)を積層した構造において、強化層とAl層間に所定の凹凸をつけることによってAl層の剥離を抑制できることが記載されている。
また、特許文献2では、下部層(TiCN層)と結合部と上部層(Al層)の格子縞が連続する、さらにはエピタキシャルの関係であることにより、TiCN層−Al層間の密着性が高く機械強度に優れたAl層を作製できることが記載されている。
特開平11−229144号公報 特開平10−156606号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された硬質被覆層の構成によっても、重断続切削等の突発的に大きな衝撃がかかるような切削においては硬質被覆層が衝撃に耐えきれずに被覆層内に大きなクラックが発生してしまい、切刃のチッピングによる異常摩耗や突発欠損等が発生して工具寿命が短くなっていた。また、鋼等の切削においても更なる耐欠損性および耐摩耗性の向上が求められていた。
また、特許文献2のように下部層(TiCN層)−上部層(Al層)間がエピタキシャルの関係にある硬質層では、層間の密着性は向上するものの大きな衝撃に対する耐久性は低下してしまうという問題があった。
従って、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、衝撃に対する耐久性を高めて、チッピングや欠損が発生することなく優れた耐チッピング性および耐欠損性を有するとともに、耐摩耗性にも優れる長寿命の切削工具等の表面被覆部材を提供することにある。
本発明者は、上記課題に対して検討した結果、基体の表面に、3層以上の多層膜を積層した構造の硬質被覆層において、下部層と上部層との間の結合部の少なくとも一部にストライプ状のコントラスト(以下、ストライプ構造と略す。)を持つ構造とすることによって、加工時に硬質被覆層の表面から衝撃がかかっても上記結合部がその衝撃を吸収することができる結果、部材の耐欠損性が向上することを知見した。
すなわち、本発明の表面被覆部材は、基体の表面に、少なくとも下部層と、結合部と、上部層とを順次続けて積層した部分を有する硬質被覆層を具備する表面被覆部材であって、前記硬質被覆層の断面組織の透過型電子顕微鏡(TEM)写真において、前記結合部の少なくとも一部に幅方向の平均コントラスト幅が5〜70nmで該幅方向と垂直な方向の縞状に観察されるストライプ状のコントラストが観察されることを特徴とするものである。
ここで、前記結合部が前記下部層から前記上部層内に向かって伸びる突出粒子が点在した状態であることが、下部層−上部層間の層間密着性を高める上で望ましい。
ここで、前記下部層が前記基板表面に対して垂直に成長した筋状晶からなるTiCN層であり、前記突出粒子が(TiAl1−v)C(x+y+z+w=1、0≦v≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)であり、前記上部層がAl層であることが、高い耐摩耗性と高い耐欠損性を達成できる点で望ましい。
さらに、前記筋状晶TiCN粒子の幅方向の平均粒径が100〜1000nmであることが、層間密着性と耐衝撃性をバランスよく両立できる点で望ましい。
また、前記結合部が膜厚0.1〜1μmの層状をなす層状結合部が存在することが、高い耐衝撃性を維持するために望ましい。
さらに、前記表面被覆部材の表面に硬質球を接触させた状態で該硬質球をころがすように回転させて前記表面被覆部材の前記硬質球接触部分を局所的に摩耗させて、中心に前記基体が露出するように前記硬質被覆層に球曲面の摩耗痕を形成させるカロテストを行い、前記摩耗痕を観察した際、前記上部層の前記結合部との界面から前記上部層の内部に向かってクラックが観察されることが耐衝撃性を高める点で望ましい。
ここで、前記上部層が前記下部層の表面から剥離し始める剥離荷重をF、前記下部層が前記基体の表面から剥離し始める剥離荷重をFとしたとき、その比(F/F)が1.1〜30であることが、実用上必要な硬度を損なうことなく硬度と靭性、さらに耐摩耗性と耐欠損性とが向上する点で望ましい。
さらに、上記構成からなる表面被覆部材は、摺動部品や金型等の耐摩部品、切削工具、掘削工具、刃物等の工具、耐衝撃部品等の各種用途へ応用可能である。すくい面と逃げ面との交差稜線部に形成された切刃を被切削物に当てて切削加工する切削工具として用いた場合には上述した優れた効果を発揮することができ、他の用途に用いた場合であっても優れた機械的信頼性を有するものである。
本発明の表面被覆切削工具は、基体の表面に3層以上の多層膜を積層した構造の硬質被覆層において、下部層と上部層との間の層に衝撃に対する耐久性をより優れたものとすることができる結合層を配することによって、加工時に硬質被覆層の表面から衝撃がかかっても前記結合層のストライプ構造部分がその衝撃を吸収することができる結果、部材の耐欠損性が向上する。
したがって、例えば、切削工具の用途の場合、耐欠損性が求められる加工においても層間のわずかな剥離やクラックの発生によって衝撃を吸収して、大きな剥離や被覆層全体のチッピングを防止できる。さらに、例え層間が剥離しても、残存する下部層の基体との密着力が高いことから摩耗や欠損の抑制に貢献して、被覆層全体として耐摩耗性および耐欠損性が高いものである。また、上部層と下部層の剥離荷重をさらに最適化することによって、耐摩耗性が要求される加工において被覆層が剥離することなく高い耐摩耗性を有するものとなる。
特に、ねずみ鋳鉄(FC材)やダクタイル鋳鉄(FCD材)のような高硬度黒鉛粒子が分散した鋳鉄等の金属の重断続切削等のような工具切刃に強い衝撃がかかる過酷な切削条件や、連続切削条件、さらにはこれら断続切削と連続切削とを組み合わせた複合切削条件において、例え突発的に大きな衝撃が硬質被覆層にかかったときであっても新たに大きなクラックが発生して硬質被覆層がチッピングしたり欠損したりすることなく衝撃を吸収できる結果、硬質被覆層全体のチッピングや剥離を防止できるとともに、硬質被覆層全体の耐摩耗性が維持される優れた耐チッピング性および耐欠損性を有する切削工具が得られる。もちろん、鋼の切削においても従来工具に対して耐欠損性および耐摩耗性に優れた工具となる。
本発明の表面被覆部材は、基体11の表面に、少なくとも下部層1と、結合部3と、上部層2とを順次続けて積層した部分を有する硬質被覆層を具備し、前記硬質被覆層の断面の要部についての透過型電子顕微鏡(TEM)写真の一例である図1から明らかなように、下部層1と、上部層2との間に存在する結合部3内に積層欠陥に由来するストライプ状のコントラスト(ストライプ構造)3aが観察されることを特徴とするものである。
上記結合部3がTEM写真にてストライプ構造3aが観察される程多数の積層欠陥を含んでいることによって、加工時に硬質被覆層4の表面から衝撃がかかっても結合部3の積層欠陥部分がその衝撃を吸収することができる結果、表面被覆部材(以下、単に部材と略す。)5の耐欠損性が向上する。
ここで、結合部3が下部層1から上部層2内に向かって微細柱状晶の突出粒子6が点在したものであることが、下部層1−上部層2間の層間密着性を高める上で望ましい。なお、ストライプ構造3aの方向は、突出粒子6の突出方向に向かって平行となるように伸びていることが望ましく、つまり基体11の表面に平行とはならず、硬質被覆層4の表面に向かって伸びていることが衝撃を効果的に吸収できる点で望ましい。
また、突出粒子6が、ストライプ構造3aの部分でc軸長の長い構造をなしていることが、耐衝撃性をさらに高めることができる点で望ましい。なお、上記ストライプ構造3aの構造は、例えばBaAlO化合物と類似の結晶構造をなすものであってもよい。
さらに、下部層1が基板(図1のTEM写真では観察されず。)表面に対して垂直に成長した筋状晶からなるTiCN層7であり、突出粒子6が(TiAl1−v)C(x+y+z+w=1、0≦v≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)8であり、上部層2がAl層9であることが、高い耐摩耗性と高い耐欠損性を達成できる点で望ましい。
なお、結合部3は層状であってもよいが、上記のように層状構造部8に加えて突出粒子6が点在した構造からなることが衝撃によるクラックの進展等を防止してより耐衝撃性に優れる点で望ましい。また、結合部3が突出粒子6のみからなるものであってもよい。
ここで、前記Al層9はα型結晶構造からなることが、構造的に安定で高温になっても優れた耐摩耗性を維持できる点で望ましい。従来ではα型結晶構造をもつAlは優れた耐摩耗性を持つが、核生成を行う際の粒径が大きいため、TiCN層7との接触面積が小さくなり、付着力が弱くなってしまい、膜剥離を起こしやすいという問題があった。しかし、上述した組織調整によってAl層9とTiCN層7との付着力を所定の範囲内に制御することができるため、Al層9をα型結晶構造としても十分な付着力を得ることができる。よって、α型結晶構造のAlの持つ、優れた耐摩耗性をAl層4の付着力を低下させることなく得ることができるため、部材5の寿命のより延命することができる。
なお、Al結晶の一部をα型結晶構造以外のκ型結晶構造として、すなわちAl層4の結晶構造をα型結晶構造とκ型結晶構造との混晶としてAl層9の付着力を調整することも可能である。また、Al層9をα型結晶構造とする場合には、結合部3の層状結合部8がTiC(x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)からなり、特にz≧0.1とすることが安定してα型結晶構造を成長させることができる点で望ましい。
一方、基体11表面に対して垂直に伸びる筋状組織のTiCN粒子10とは、基体11との界面に対して垂直な方向の結晶長さ/平均結晶幅=アスペクト比が2以上の結晶組織を指す。また、図3に示すような硬質被覆層5の断面組織観察(図3は走査型電子顕微鏡(SEM)写真)にて、粒状TiCN結晶が30面積%以下の割合で混合した混晶であってもよい。
さらに、TiCN層7をなす筋状晶TiCN粒子10の幅方向の平均粒径wが0.1〜1μmであり、かつ突出粒子6の幅方向のコントラスト幅wが5〜70nmであることが、層間密着性と耐衝撃性をバランスよく両立できる点で望ましい。
なお、本発明において筋状結晶からなるTiCN粒子10の断面方向から見た平均結晶幅、および突出粒子の断面方向から見たストライプ幅を測定する方法としては、硬質被覆層3を含む断面について走査型電子顕微鏡(SEM)写真(図3)または透過型電子顕微鏡(TEM)写真(図1)より、各層において基体11と硬質被覆層4との界面と平行な直線を引き(図3の線分A、B参照)、この線分上にある各粒子の幅の平均値、すなわち線分長さに対する線分上を横切る粒界の数で割った値wとする。
また、結合部3の層状結合部8としては、TiCN、TiC、TiCO、TiNO、TiCNOの少なくとも1種にて構成され、2種以上であってもよい。さらに、結合部3の高さ領域(結合部3が突出粒子からなる場合には硬質被覆層3の高さ方向への平均粒径、結合部3が層状結合部8のみからなる場合にはその膜厚、両者を含む場合はそれらの総計)は0.1〜1μmであることが、高い耐衝撃性を維持するために望ましい。なお、層状結合部8が多層からなる場合、層状結合部8の膜厚は総膜厚が0.1〜1μmであることが望ましい。
さらに、図2に示すように、部材5の表面に硬質球12を接触させた状態で硬質球12をころがすように回転させて部材5の硬質球12接触部分を局所的に摩耗させて、中心に基体11が露出するように硬質被覆層5に球曲面の摩耗痕を形成させるカロテストを行い、このカロテストの摩耗痕観察において、上部層2の結合部3との界面から上部層2の内部に向かってクラックが観察されることが耐衝撃性を高める点で望ましい。
なお、露出した基体2の大きさが大きすぎたり、小さすぎたりすると、硬質被覆層4中のクラックを正確に観察することができない場合があるため、摩耗痕中に露出する基体11の直径が摩耗痕全体の直径の0.1倍〜0.6倍になるようにカロテストの摩耗条件(時間、硬質球の種類、研磨剤等)を調節するのがよい。
ここで、上部層2が下部層1の表面から剥離し始める剥離荷重をF、下部層1が基体11の表面から剥離し始める剥離荷重をFとしたとき、その比(F/F)が1.1〜30であることが、実用上必要な硬度を損なうことなく硬度と靭性、さらに耐摩耗性と耐欠損性とが向上する点で望ましい。
また、部材5の基体11は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期律表第4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種からなる硬質相をコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)等の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金や、Ti基サーメット、またはSi、Al、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)等のセラミックスのいずれかが好適に使用でき、中でも切削工具として用いる場合には、超硬合金またはサーメットからなることが耐欠損性および耐摩耗性の点で望ましい。また、基体11としては用途によっては炭素鋼、高速度鋼、合金鋼等の金属からなるものであっても良い。
さらに、TiCN層7と基体11との間、およびAl層9の上層に、TiN層、TiC層、TiCNO層、TiCO層、TiNO層の群から選ばれる少なくとも1層(他のTi系被覆層)を形成することが望ましい。ここで、TiCN層7と基体11との間に下地層として上記他のTi系被覆層を形成することによって、基体成分の拡散を抑制する効果およびTiCN層9の結晶構造を容易に制御できる効果がある。また、Al層9の表面に表層として上記他のTi系被覆層を形成することによって、被覆層表面の摺動性、外観等の調整が可能となる。
この時、Al膜4の上層、すなわち硬質被覆膜3の表面にTiN層からなる表層16を形成することによって、工具が金色を呈するため、部材5を使用したときに表層16が摩耗して使用済みかどうかの判別がつきやすく、また、摩耗の進行を容易に確認できるため望ましい。さらには、表層12はTiN層に限定されるものではなく、摺動性を高めるためにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)層やCrN層を形成する場合もある。表層16をなすTiN層の膜厚は1μm以下であることが望ましく、かかる表層16の剥離強度はAl膜9の剥離強度よりも低くなることが使用の有無を目視で確認しやすくなる点で望ましい。
さらに、上記構成からなる表面被覆部材5は、摺動部品や金型等の耐摩部品、切削工具、掘削工具、刃物等の工具、耐衝撃部品等の各種用途へ応用可能である。切削工具として用いた場合には上述した優れた効果を発揮することができ、他の用途に用いた場合であっても優れた機械的信頼性を有するものである。
(製造方法)
また、本発明の表面皮覆部材の一例である上述した表面被覆切削工具を製造する方法について説明する。
まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形した後、真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる基体2を作製する。そして、上記基体2の表面に所望によって研磨加工や切刃部のホーニング加工を施す。
なお、基体2の表面粗さは、被覆層の付着力を制御する点で、すくい面における算術平均粗さ(Ra)が0.1〜1.5μm、逃げ面における算術平均粗さ(Ra)が0.5〜3.0μmとなるように原料粉末の粒径、成形方法、焼成方法、加工方法を制御する。
次に、その表面に例えば化学気相蒸着(CVD)法によって被覆層5を成膜する。
まず、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1000℃、10〜30kPaの条件で下地層であるTiN層を成膜する。
次に、反応ガス組成として、体積%で塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.1〜0.4体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、成膜温度を780〜880℃、5〜25kPaにてTiCN層を成膜する。
ここで、上記成膜条件のうち、反応ガス中のアセトニトリルガスの割合が0.1〜0.4体積%に調整することによって、TiCN層7中の筋状晶TiCN粒子10の組織を上述した範囲に確実に成長させることができる。また、上記成膜温度についても、780℃〜880℃とすることが、断面観察において微細な筋状晶をなすTiCN層7を形成できるために望ましい。
なお、本実施形態例では、TiCN層の成膜前期(TiCN下部組織の成膜)に使用する反応ガス中のCHCNの割合よりもTiCN層の成膜後期(TiCN上部組織の成膜)に使用する反応ガス中のアセトニトリル(CHCN)ガスの混合割合を増やすことによって、TiCN下部組織よりもTiCN上部組織中のTiCN粒子の平均結晶幅を大きくする。具体的には、TiCN層の成膜前期に使用するアセトニトリルガスの導入割合に対してTiCN層の成膜後期時に導入するアセトニトリルガスの割合を1.5倍以上とすることにより確実な制御が可能である。
ここで、上記成膜条件のうち、筋状TiCN結晶の成長過程では、CHCN(アセトニトリル)ガスの割合Vを0.1〜3体積%に制御するとともに、キャリアガスであるHガスの割合VとCHCNガスの割合Vとの比(V/V)が0.03以下となるように低濃度に制御することによって、微細な核生成ができてTiCN層の付着力を向上させることができる。
また、TiCN層の上部組織を成膜する際は、反応ガス中のCHCNガス導入量を上述したように変えて、所望により成膜温度を調整することによって、TiCN結晶の平均結晶幅を所定の構成に制御することが可能である。
次いで結合部を成膜する。結合部11を成膜するには、塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜3体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.1〜5体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を950〜1100℃、5〜30kPaとする。この時、本実施態様によれば、結合部形成時点で成膜される基体11表面の温度が成膜される混合ガスの温度に比べて20〜80℃高くなるように成膜装置を調整することによって中間部中に所定のストライプ構造を導入することができる。
そして、引き続き、Al層4を成膜する。Al層4の成膜方法としては、塩化アルミニウム(AlCl)ガスを3〜20体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜3.5体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.01〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0〜0.5体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、950〜1100℃、5〜10kPaとすることが望ましい。
また、表層(TiN層)12を成膜するには、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、50〜85kPaとすればよい。
このとき、上述した方法に加えて、上記化学蒸着法にて被覆層4を成膜した後700℃までのチャンバの冷却速度を12〜30℃/分に制御することによって、上部層5および下部層4の付着力を上述した所定の範囲に制御することができる。
そして、所望により、成膜した被覆層3表面の少なくとも切刃部を研磨加工する。この研磨加工により、切刃部における被覆層3中に残存する残留応力が開放されてさらに耐欠損性に優れた工具となる。
なお、本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、例えば、被覆層の一部または全部を物理蒸着(PVD)法によって形成したものであってもよい。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%、平均粒径2.0μmの炭化チタン(TiC)粉末を0.5質量%、TaC粉末を5質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMA120412)に成形した後、脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1500℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金にブラシ加工にてすくい面側について刃先処理(ホーニングR)を施した。得られた基体の逃げ面においてJISB0601−2001に準じた算術平均粗さ(Ra)は1.1μm、すくい面における算術平均粗さ(Ra)は0.4μmであった。
次に、上記超硬合金に対して、CVD法により各種の被覆層を表1、表2に示す成膜条件および膜構成にて成膜した。そして、被覆層の表面をすくい面側から30秒間ブラシ加工して試料No.1〜7の表面被覆切削工具を作製した。なお、結合部を成膜する際の基体の温度は1020℃で一定とした。
Figure 0004713137
得られた工具について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて表2に記載する被覆層が観察できるように研磨加工して各層の断面方向からみたミクロな組織状態を観察し、結合部の状態、突出粒子の有無およびその幅等を観察した。また、被覆層の断面を含む任意破断面5ヵ所について走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮り、各写真おいてTiCN層、結合部、Al層の組織状態を観察し、写真5ヶ所についてそれぞれ算出した結晶幅の平均値を算出した。
また、上記表面被覆切削工具の硬質被覆層のクラック状態を、下記条件で行ったカロテスト試験によって生じた摩耗痕を金属顕微鏡またはSEMにて観察し、クラックの有無および進行方向をそれぞれ測定した。結果は表2に示した。
装置:ナノテック社製CSEM−CALOTEST
鋼球
直径30mm球形鋼玉
ダイヤモンドペースト 1/4MICRON
さらに、摩耗痕中に露出する基体の直径が摩耗痕全体の直径に対して0.1〜0.6倍、(今回の測定では0.3〜0.7mm)となるように摩耗させた状態でクラックを観察した。
また、硬質被覆層の付着力を、下記条件のスクラッチ試験によって測定した。結果は表2に示した。
装置:ナノテック社製CSEM−REVETEST
測定条件
テーブルスピード:0.17mm/sec
荷重スピード100N/min
圧子
円錐形ダイヤモンド圧子(東京ダイヤモンド工具製作所社製ダイヤモンド接触子:N2−1487)
曲率半径:0.2mm
稜線角度:120°
結果は表2に示した。
Figure 0004713137
そして、この切削工具を用いて下記の条件により、連続切削試験および断続切削試験を行い、耐摩耗性および耐欠損性を評価した。
(連続切削条件)
被削材 :ダクタイル鋳鉄4本溝付スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:250m/分
送り速度:0.4mm/rev
切り込み:2.5mm
切削時間:25分
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:顕微鏡にて切刃を観察し、フランク摩耗量・先端摩耗量を測定
(断続切削条件)
被削材 :ダクタイル鋳鉄4本溝付スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:250m/分
送り速度:0.3〜0.5mm/rev
切り込み:2.5mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:欠損に至る衝撃回数
衝撃回数1200回時点で顕微鏡にて切刃の被覆層の剥離状態を観察
結果は表3に示した。
Figure 0004713137
表1〜3より、結合部中に格子欠陥がない試料No.5、6ではチッピングが発生して耐欠損性に劣るものであった。
これに対して、本発明に従い、結合部中に格子欠陥が存在する試料1〜4では、連続切削においても断続切削においても長寿命であり、耐欠損性および耐チッピング性とも優れた切削性能を有するものであった。
本発明の表面被覆部材の硬質被覆層の要部についての透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。 本発明の表面被覆部材について評価するカロテストの模式図である。 図1の表面被覆部材の硬質被覆層の要部についての走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
符号の説明
1 下部層
2 上部層
3 結合部
3a ストライプ構造
4 硬質被覆層
5 表面被覆部材(部材)
6 突出粒子
7 TiCN層
8 層状結合部
9 Al
10 筋状晶TiCN粒子
11 基体
12 硬質球
TiCN層の平均結晶幅
突出粒子の平均ストライプ幅
15 下地層
16 表層

Claims (8)

  1. 基体の表面に、少なくとも下部層と、結合部と、上部層とを順次続けて積層した部分を有する硬質被覆層を具備する表面被覆部材であって、前記硬質被覆層の断面組織の透過型電子顕微鏡(TEM)写真において、前記結合部の少なくとも一部に幅方向の平均コントラスト幅が5〜70nmで該幅方向と垂直な方向の縞状に観察されるストライプ状のコントラストを有する表面被覆部材。
  2. 前記結合部の前記ストライプ状のコントラストを有する部分が、前記下部層から前記上部層内に向かって伸びる突出粒子内で観察されるとともに、該突出粒子が点在した状態である請求項1記載の表面被覆部材。
  3. 前記下部層が前記基板表面に対して垂直に成長した筋状晶からなるTiCN層であり、前記突出粒子が(TiAl1−v)C(x+y+z+w=1、0≦v≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)であり、前記上部層がAl層である請求項1または2記載の表面被覆部材。
  4. 前記筋状晶TiCN粒子の幅方向の平均粒径が0.1〜1μmであ請求項記載の表面被覆部材。
  5. 前記結合部が膜厚0.1〜1μmの層状をなす層状結合部と前記突出粒子とが順次積層された構成からなる請求項1乃至のいずれか記載の表面被覆部材。
  6. 前記表面被覆部材の表面に硬質球を接触させた状態で該硬質球をころがすように回転させて前記表面被覆部材の前記硬質球接触部分を局所的に摩耗させて、中心に前記基体が露出するように前記硬質被覆層に球曲面の摩耗痕を形成させるカロテストを行い、前記摩耗痕を観察した際、前記上部層の前記結合部との界面から前記上部層の内部に向かってクラックが観察される請求項1乃至のいずれか記載の表面被覆部材。
  7. 前記上部層が前記下部層の表面から剥離し始める剥離荷重をF、前記下部層が前記基体の表面から剥離し始める剥離荷重をFとしたとき、その比(F/F)が1.1〜30である請求項1乃至のいずれか記載の表面被覆部材。
  8. 請求項1乃至のいずれか記載の表面被覆部材を具備する切削工具。
JP2004344829A 2004-11-29 2004-11-29 表面被覆部材および切削工具 Active JP4713137B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004344829A JP4713137B2 (ja) 2004-11-29 2004-11-29 表面被覆部材および切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004344829A JP4713137B2 (ja) 2004-11-29 2004-11-29 表面被覆部材および切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006150506A JP2006150506A (ja) 2006-06-15
JP4713137B2 true JP4713137B2 (ja) 2011-06-29

Family

ID=36629391

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004344829A Active JP4713137B2 (ja) 2004-11-29 2004-11-29 表面被覆部材および切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4713137B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008049470A (ja) * 2006-07-24 2008-03-06 Mitsubishi Materials Corp 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP4853829B2 (ja) * 2006-09-22 2012-01-11 三菱マテリアル株式会社 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5303732B2 (ja) * 2008-01-21 2013-10-02 日立ツール株式会社 被覆工具
JP5286625B2 (ja) * 2011-01-31 2013-09-11 住友電工ハードメタル株式会社 表面被覆切削工具およびその製造方法
JP5286626B2 (ja) * 2011-01-31 2013-09-11 住友電工ハードメタル株式会社 表面被覆切削工具およびその製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000234172A (ja) * 1998-12-09 2000-08-29 Seco Tools Ab 被覆超硬合金ボディー及びそれを用いた鋳鉄の切削方法
JP2004332004A (ja) * 2003-04-30 2004-11-25 Kobe Steel Ltd アルミナ保護膜およびその製造方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3560303B2 (ja) * 1996-11-29 2004-09-02 日立金属株式会社 酸化アルミニウム被覆工具およびその製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000234172A (ja) * 1998-12-09 2000-08-29 Seco Tools Ab 被覆超硬合金ボディー及びそれを用いた鋳鉄の切削方法
JP2004332004A (ja) * 2003-04-30 2004-11-25 Kobe Steel Ltd アルミナ保護膜およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006150506A (ja) 2006-06-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4805819B2 (ja) 表面被覆部材および切削工具
KR100983551B1 (ko) 표면피복 절삭공구
JP4994367B2 (ja) 切削工具及びその製造方法、並びに切削方法
CN108290223B (zh) 切削工具
JP4711714B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4854359B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4711691B2 (ja) 表面被覆部材および切削工具
JP4832108B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5841170B2 (ja) 被覆工具
JP5383259B2 (ja) 切削工具
JP2012144766A (ja) 被覆部材
JP4142955B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4713137B2 (ja) 表面被覆部材および切削工具
JP2006205300A (ja) 表面被覆部材および切削工具
JP4284201B2 (ja) 表面被覆部材および切削工具
JP4351521B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4936742B2 (ja) 表面被覆工具および切削工具
JP4360618B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP6522985B2 (ja) 被覆工具
JP4284144B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4593952B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4593937B2 (ja) 表面被覆部材および切削工具
JP4936741B2 (ja) 表面被覆工具および切削工具
JP2006123079A (ja) 表面被覆部材および表面被覆切削工具
JP2005153099A (ja) 表面被覆切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070912

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20101118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20101125

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110106

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110224

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110324

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4713137

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150