JP4284144B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた耐チッピング性および耐摩耗性を有する硬質被覆層を表面に被着形成した表面被覆切削工具に関し、特に金属の断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような切削に際しても、優れた耐欠損性および耐摩耗性を有する表面被覆切削工具に関する。
従来より、金属の切削加工に広く用いられている切削工具は、超硬合金やサーメット、セラミックス等の母材の表面に、TiC層、TiN層、TiCN層およびAl層等の硬質被覆層を複数層被着形成した表面被覆切削工具が多用されている。
かかる表面被覆切削工具においては、最近の切削加工の高能率化に従って金属の重断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような過酷な切削条件で使われるようになっており、従来の工具では硬質被覆層が突発的に発生する大きな衝撃に耐えきれず、チッピングや硬質被覆層が剥離にて母材が露出してしまい、これが引き金となって切刃に大きな欠損や異常摩耗が発生して工具寿命の長寿命化ができないという問題があった。
そこで、特許文献1には、筋状TiCN結晶(縦長成長TiCN結晶)からなるTiCN層を設けるとともに、その間を粒状のTiN層で分割することにより層間剥離を抑制できることが記載され、工具の耐欠損性が向上すると記載されている。
特許第3230372号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたTiCN層の構成によっても、重断続切削等の突発的に大きな衝撃がかかるような切削においては依然としてTiCN層とAl層との界面にてチッピングや硬質被覆層の剥離が発生する場合があったり、逆に硬質被覆層全体が剥離して母材が露出してしまい急激に摩耗が進行する場合もあり、いずれの場合にも工具寿命が短くなっていた。
また、TiCN層の結晶幅を単純に小さくしたり、大きくしたりしても、Al層の付着力が極端に低下して連続切削によっても切削初期にAl層が大きく剥離してしまい摩耗が進行したり、母材との密着力が損なわれて硬質被覆層全体が剥離する等、硬質被覆層全体の最適化を図ることに限界があり、やはり工具寿命には限界があった。
従って、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、断続切削等の突発的に工具切刃に強い衝撃がかかるような過酷な切削条件においても、連続切削等の耐摩耗性が重視される切削条件においても、母材−TiCN層−Al層の層間でチッピングや剥離が発生することなく、優れた耐欠損性および耐摩耗性を有する長寿命の切削工具を提供することにある。
本発明者は、上記課題に対し、母材表面にTiCN層とAl層を順に設けた硬質被覆層を具備する切削工具の耐摩耗性を損なわずに耐欠損性を高める方法について検討した結果、前記TiCN層のAl層側の平均結晶幅を母材側の平均結晶幅より大きくすること、かつAl層が10〜50Nの荷重で剥離する密着力に制御することによって、母材とTiCN層とAl層間の層間密着性を向上させることができ、連続切削においては硬質被覆層が剥離することなく、高い耐摩耗性を有するとともに、断続切削において、例え突発的に大きな衝撃が硬質被覆層にかかったときでも、Al層がわずかに剥離したりクラックを発生させたりすることによって衝撃を吸収してAl層が広範囲にわたって剥離したり、硬質被覆層全体がチッピングしたり剥離したりすることを防止し、さらにAl層が剥離した後に残存したTiCN層も微細な平均結晶幅の高い耐摩耗性を有する部分がある結果、特にねずみ鋳鉄(FC材)やダクタイル鋳鉄(FCD材)のような高硬度黒鉛粒子が分散した鋳鉄等の金属の重断続切削等のような工具切刃に強い衝撃がかかる過酷な切削条件や、連続切削条件、さらにはこれら断続切削と連続切削とを組み合わせた複合切削条件においても、優れた耐摩耗性および耐欠損性を有する切削工具が得られることを知見した。
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、硬質合金からなる母材の表面に、連続する2層以上のTiCN層とα型結晶構造を有するAl層とを順次被着形成した硬質被覆層を具備し、前記2層以上のTiCN層が、断面で見て、前記母材との界面に対して垂直な方向に成長した筋状TiCN結晶からなるとともに、A層側に配設されたTiCN上側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅が前記母材側に配設されたTiCN下側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅より大きく、かつ前記硬質被覆層のスクラッチ試験による付着力測定において、前記Al層が23〜40Nの荷重で剥離することを特徴とするものである。
ここで、前記TiCN層が2層からなり、前記母材側のTiCN下層の中間の高さ位置における前記筋状TiCN結晶の平均結晶幅wが0.05〜0.7μm、かつ、前記A層側のTiCN上層の中間の高さ位置における前記筋状TiCN結晶の平均結晶幅wが前記平均結晶幅wの2倍以上であることが、筋状TiCN結晶自身の耐摩耗性を高めることができるとともに、Al層の付着力を制御して、硬質被覆層全体としての耐摩耗性および耐欠損性を高めるために望ましい。
前記TiCN層のうち、前記TiCN下層の膜厚tが1μm≦t≦10μm、前記TiCN上層の膜厚tが1μm≦t≦5μmで、かつ、1< /t ≦5の関係を満たすことが、硬質被覆層全体の密着力と耐衝撃性を高めて、工具全体としての耐摩耗性と耐欠損性を最適な状態にすることができるため望ましい。
さらに、前記TiCN層が連続する2層以上の多層からなることが成膜条件の制御が容易な点で重要であり、前記TiCN層およびAl層の下層、層間または上層に、TiN層、TiC層、TiCNO層、TiCO層、TiNO層の群から選ばれる少なくとも1層を介装することによって、母材成分の拡散防止、硬質被覆層の層間密着力の向上、工具表面を明るい色にして使用の有無を識別する、TiCN層、Al層の組織、結晶構造を制御することも可能である。
さらには、前記Al層がα型結晶構造を有することが耐摩耗性の向上の点で重要である
上記本発明の表面被覆切削工具は、前記連続する2層以上のTiCN層のAl2O3層側に配設されたTiCN上側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅を母材側に配設されたTiCN下側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅より大きくすること、かつAl層が23〜40Nの荷重で剥離する密着力に制御することによって、母材とTiCN層とAl層間の層間密着性を向上させることができ、連続切削においては硬質被覆層が剥離することなく、高い耐摩耗性を有するとともに、断続切削において、たとえ突発的に大きな衝撃が硬質被覆層にかかったときでも、Al層がわずかに剥離したりクラックを発生させたりすることによって衝撃を吸収してAl層が広範囲にわたって剥離したり、硬質被覆層全体がチッピングしたり剥離したりすることを防止し、さらにAl層が剥離した後に残存したTiCN層も微細な平均結晶幅の高い耐摩耗性を有する部分がある結果、特にねずみ鋳鉄(FC材)やダクタイル鋳鉄(FCD材)のような高硬度黒鉛粒子が分散した鋳鉄等の金属の重断続切削等のような工具切刃に強い衝撃がかかる過酷な切削条件や、連続切削条件、さらにはこれら断続切削と連続切削とを組み合わせた複合切削条件においても、優れた耐摩耗性および耐欠損性を有する切削工具が得られる。
本発明の表面被覆切削工具の一例について硬質被覆層を含む破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である図1を基に説明する。
図1によれば、表面被覆切削工具(以下、単に工具と略す。)1は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期律表第4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種からなる硬質相をコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金、または炭化チタン(TiC)や炭窒化チタン(TiCN)を主体として周期律表第4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種からなる硬質相をコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)の鉄属金属から成る結合相にて結合させたサーメット、さらには、ダイヤモンド質焼結体、立方晶窒化硼素(cBN)質焼結体等の硬質合金からなる母材2の表面に硬質被覆層3を被着形成したものである。
本発明によれば、硬質被覆層3として、少なくとも連続する2層以上の炭窒化チタン(TiCN)層4とα型結晶構造を有するアルミナ(Al)層6とを順次被着形成した構成からなり、TiCN層4が母材2との界面に対して垂直な方向に成長した筋状TiCN結晶からなるとともに、Al 層側に配設されたTiCN上側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅が母材2側に配設されたTiCN下側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅より大きく、かつ硬質被覆層3のスクラッチ試験による付着力測定において、Al層6が23〜40Nの荷重で剥離することが大きな特徴である。
上記構成によって、母材2とTiCN層4とAl層6間の層間密着性を向上させ、かつAl層6の密着力を適正な範囲に制御することができ、連続切削時には硬質被覆層が剥離することなく優れた耐摩耗性を発揮し、断続切削時には例え突発的に大きな衝撃が被覆層にかかったときでもAl層6が微小剥離やクラックの生成等によって衝撃を吸収してAl層6が広範囲にわたって剥離したり、硬質被覆層3全体がチッピングしたり剥離したりすることを防止し、さらに、その後、Al層6が剥離した後にも残存したTiCN層4が微細な平均結晶幅を有する高い耐摩耗性を備える結果、特にねずみ鋳鉄(FC材)やダクタイル鋳鉄(FCD材)のような高硬度黒鉛粒子が分散した鋳鉄等の重断続切削および連続切削のいずれにおいても優れた耐摩耗性および耐欠損性を有する工具1が得られる。
すなわち、Al層6の付着強度が23N以下になると、連続切削中にAl層6が早期に剥離して摩耗が急速に進行してしまい、耐摩耗性が低下してしまう。また、付着強度が40N以上になると、断続切削中に突発的に大きな衝撃がかかったときにAl層6のみにて衝撃を吸収することなく下層のTiCN層4まで剥離して欠損が生じたり、母材が露出して、異常摩耗が発生してしまう。
ここで、Al層6の直下に位置するTiCN層4の炭窒化チタン結晶を全体的に微細化して平均結晶幅を小さくすると、TiCN層4の耐摩耗性が向上するTiCN層4と母材2との層間密着性が増しTiCN層4の剥離を抑えることができるが、Al層6の付着力が23Nよりも小さくなってしまい、断続切削中だけでなく連続切削中においてもAl層6がTiCN層4から早期に剥離して、異常摩耗や切刃の欠損が発生する。
一方、TiCN層4の炭窒化チタン結晶を全体的に粗粒化して平均結晶幅を大きくすると、Al層6とTiCN層4との層間密着性を改善することができるが、Al層6の付着力が40Nを超えてしまうとともに、母材2とTiCN層4との層間密着性が悪くなってしまい、硬質被覆層3がTiCN層4ごと母材2から剥離して母材が露出しやすくなり、やはり異常摩耗や切刃の欠損が発生してしまう。
なお、本発明のTiCN層は、硬質被覆層3の厚み方向(母材との界面に対して垂直な方向)の結晶長さ/平均結晶幅=アスペクト比が2以上の筋状TiCN結晶からなるが、断面組織にて観察したとき、粒状TiCN結晶が30面積%以下の割合で混合した混晶であってもよい。
ここで、TiCN層が2層からなり、TiCN層4の母材2側のTiCN下層の中間の高さ位置における前記筋状TiCN結晶の平均結晶幅wが0.05〜0.7μm、かつ、A層6側のTiCN上層の中間の高さ位置における前記筋状TiCN結晶の平均結晶幅w が平均結晶幅wの2倍以上であることが、筋状TiCN結晶自身の耐摩耗性を高めることができるとともに、Al層6の付着力を制御して、硬質被覆層3全体としての耐摩耗性および耐欠損性を高めるために望ましい。
なお、平均結晶幅を測定する際には、各層の中間の高さ位置(図1:線Aおよび線B参照)で測定する。具体的な測定方法は、その線分上にある各粒子の幅の平均値、すなわち、線分長さを線分上を横切る粒界の数で割った値を平均結晶幅wとする。
また、TiCN層4のうち、TiCN下層の膜厚tが1μm≦t≦10μm、TiCN上層の膜厚tが1μm≦t≦5μmで、かつ、1< /t ≦5の関係を満たすことが、硬質被覆層3全体の密着力と耐衝撃性を高めて、工具1全体としての耐摩耗性と耐欠損性を最適な状態にすることができるため望ましい。
さらに、TiCN層4が2層以上の多層からなることが成膜条件の制御が容易な点で望ましく、前記TiCN層4およびAl層6の下層、多層TiCN層の層間、TiCN層とAl層との層間、または上層に、TiN層、TiC層、TiCNO層、TiCO層、TiNO層の群から選ばれる少なくとも1層を介装することによって、母材2の成分の拡散防止、硬質被覆層3の各層間密着力の向上、工具1表面を明るい色にして使用の有無を識別する、TiCN層4、Al層6の組織、結晶構造を制御することも可能である。
具体的には、TiCN層4と母材2の間に、付着力向上のおよび母材成分の拡散による耐摩耗性の低下を防ぐため窒化チタン(TiN)層(下層)10を被覆することが望ましい。また、TiN層の層厚は0.1〜2μmの範囲であることが付着力の低下を防ぐ点で望ましい。
また、Al層6の上層に、硬質被覆層3の表面層としてTiN層(表層)9を形成することによって、工具1が金色を呈するため、工具1を使用したときに変色して使用済みかどうかの判別がつきやすく、また、摩耗の進行を容易に確認できるため望ましい。
一方、本発明に使用されるAl層6としては、結晶構造がα型であることが重要である。従来ではα型結晶構造をもつアルミナは優れた耐摩耗性を持つが、核生成を行う際の粒径が大きいため、TiCN層4との接触面積が小さくなり、付着力が弱くなってしまい、膜剥離を起こしやすいという問題があった。しかし、本発明の構成によれば、Al層6をα型結晶構造としてもAl層6の付着力を23〜40Nの範囲に制御することができ、工具寿命のより長い工具1を得ることができる。
なお、Al層6をα型結晶構造とする場合には、TiCN層4とAl層6との間に0.2μm以下のTiCO層、TiNO層またはTiCNO層のいずれかよりなる中間層を介装することにより安定してα型結晶構造を成長させることができる。また、Al層6の層厚は3〜8μmであることが耐摩耗性、特に鋳鉄に対する耐摩耗性および耐溶着性を維持しつつ、膜剥離を防止して耐欠損性を高めることができる点で望ましい。
(製造方法)
また、上述した表面被覆切削工具を製造するには、まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形した後、真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる母材2を作製する。
次に、上記母材2の表面を所望によって研磨加工した後、その表面に例えば化学気相蒸着(CVD)法によって硬質被覆層3を成膜する。筋状TiCN層4の成膜条件は、例えば、反応ガス組成として、体積%でTiClガスを0.1〜10体積%、Nガスを0〜60体積%、CHガスを0〜0.1体積%、CHCNガスを0.1〜3体積%、残りがHガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaにて成膜する。
ここで、本発明では、TiCN層の成膜前期(TiCN層の母材側)に使用する反応ガス中のCHCNの割合よりもTiCN層の成膜後期(TiCN層のAl側)に使用する反応ガス中のアセトニトリル(CHCN)ガスの混合割合を増やすことによって、TiCN結晶を母材側よりもAl層側に大きくすることができる。
具体的には、TiCN層の成膜前期に使用するCHCNガスの導入割合に対してTiCN層の成膜後期時に導入するCHCNガスの割合を1.5倍以上とすることにより制御可能である。
ここで、上記成膜条件のうち、反応ガス中のCHCNガスの割合が0.1体積%より少ないと筋状TiCN結晶に成長させることができず、粒状結晶となる。逆に反応ガス中のCHCNガスの混合割合が3体積%を超えるとTiCN結晶の平均結晶幅が大きくなって、その比を制御することができない。
なお、反応ガス中のCHCNガス導入量の変化に代えて、成膜温度を成膜前期よりも成膜後期において高めるといった方法によってもTiCN結晶の平均結晶幅を所定の構成に制御することが可能である。
そして、本発明によれば、引き続き、Al層6を成膜する。Al層6の成膜方法としては、AlClガスを3〜20体積%、HClガスを0.5〜3.5体積%、COガスを0.01〜5.0体積%、HSガスを0〜0.01体積%、残りがHガスからなる混合ガスを用い、900〜1100℃、5〜10kPaとすることが望ましい。
また、TiN層を成膜するには、反応ガス組成としてTiClガスを0.1〜10体積%、Nガスを0〜60体積%、残りがHガスからなる混合ガスを順次調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaとすればよい。
さらに、TiCNO層を成膜するには、TiClガスを0.1〜3体積%、CHガスを0.1〜10体積%、COガスを0.01〜5体積%、Nガスを0〜60体積%、残りがHガスからなる混合ガスを順次調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaとすればよい。
(実施例1)
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%、平均粒径2.0μmの炭化チタン(TiC)粉末を0.5質量%、TaC粉末を5質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMA120412)に成形した後、脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1500℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。
そして、上記超硬合金に対して、CVD法により表1に示す条件で各種の硬質被覆層を形成して表2に示す多層膜構成からなる試料No.1〜8の表面被覆切削工具を作製した。なお、筋状TiCN層の平均結晶幅の測定は、図1に示すような工具の硬質被覆層を含む任意破断面5ヵ所について走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮り、各写真おいてTiCN層の組織を観察して異なる結晶組織部分がある場合にはTiCN層の下側と上側に線Aおよび線Bを引いて線上を横切る粒界数を測定して炭窒化チタン結晶の結晶幅に換算した値を算出し、さらに、写真5ヶ所についての平均値を平均結晶幅(w、w)として算出した。また、平均結晶幅wが前記TiCN層の前記母材側の平均結晶幅wに対して2倍以下である部分の膜厚t、前記母材側の平均結晶幅wに対して2倍を超える部分の膜厚tとの関係式 /t の値を計算した。結果は表2に示した。
一方、硬質被覆層の付着力を、下記条件で行ったスクラッチ試験によって測定した。
装置:ナノテック社製CSEM−REVETEST
測定条件
テーブルスピード:0.17mm/sec
荷重スピード100N/min
圧子
円錐形ダイヤモンド圧子(東京ダイヤモンド工具製作所社製ダイヤモンド接触子:N2−1487)
曲率半径:0.2mm
稜線角度:120°
結果は表2に示した。
そして、この切削工具を用いて下記の条件により、連続切削試験および断続切削試験を行い、耐摩耗性および耐欠損性を評価した。
(連続切削試験)
被削材 :ダクタイル鋳鉄スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:250m/分
送り速度:0.4mm/rev
切り込み:2mm
切削時間:20分
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:顕微鏡にて切刃を観察し、フランク摩耗量・先端摩耗量を測定
(断続試験)
被削材 :ダクタイル鋳鉄4本溝付スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:200m/分
送り速度:0.3〜0.5mm/rev
切り込み:2mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:欠損に至る衝撃回数
衝撃回数1000回時点で顕微鏡にて切刃の硬質被覆層の剥離状態を観察
表2、3より、単層TiCN層からなり、Al層の付着力が23Nより小さい試料No.8では、切刃部においてTiCN層とAl層との間で層剥離が早期に発生して切削性能が低下した。
また、同じ成膜条件で2層のTiCN層を成膜し、Al層の付着力が23Nより小さい試料No.6では、連続切削において耐摩耗性が低下し、Al層の付着力が50Nより大きい試料No.7では、切刃部の硬質被覆層がTiCN層ごと剥離して母材が露出し、早期に欠損した。
これに対して、本発明に従い、TiCN層が筋状TiCN結晶からなり、母材側に配設されたTiCN下側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅よりAl層側に配設されたTiCN上側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅が大きく、かつAl層の付着力を23〜40Nに調整した試料No.1〜5では、いずれも硬質被覆層の剥離が発生せず、連続切削においても断続切削においても長寿命であり、耐欠損性および耐摩耗性とも優れた切削性能を有するものであった。
本発明による表面被覆切削工具の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1: 表面被覆切削工具
2: 母材
3: 硬質被覆層
4: TiCN層
6: Al
7: 中間層(TiCNO層)
9: TiN層(表層)
10: TiN層(下層)
: TiCN層の母材側の平均結晶幅
: TiCN層のAl層側の平均結晶幅

Claims (4)

  1. 硬質合金からなる母材の表面に、連続する2層以上のTiCN層とα型結晶構造を有するAl層とを順次被着形成した硬質被覆層を具備し、前記2層以上のTiCN層が、断面で見て、前記母材との界面に対して垂直な方向に成長した筋状TiCN結晶からなるとともに、A層側に配設されたTiCN上側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅が前記母材側に配設されたTiCN下側の層の中間の高さ位置における筋状TiCN結晶の平均結晶幅より大きく、かつ前記硬質被覆層のスクラッチ試験による付着力測定において、前記Al層が23〜40Nの荷重で剥離することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記TiCN層が2層からなり、前記母材側のTiCN下層の中間の高さ位置における前記筋状TiCN結晶の平均結晶幅wが0.05〜0.7μm、かつ、前記A層側のTiCN上層の中間の高さ位置における前記筋状TiCN結晶の平均結晶幅wが前記平均結晶幅wの2倍以上であることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記TiCN層のうち、前記TiCN下層の膜厚tが1μm≦t≦10μm、前記TiCN上層の膜厚tが1μm≦t≦5μmで、かつ、1< /t ≦5の関係を満たすことを特徴とする請求項2記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記TiCN層および前記Al層の下層、層間または上層に、TiN層、TiC層、TiCNO層、TiCO層、TiNO層の群から選ばれる少なくとも1層を介装することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の表面被覆切削工具。
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