JP5636971B2 - 硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP5636971B2
JP5636971B2 JP2011002835A JP2011002835A JP5636971B2 JP 5636971 B2 JP5636971 B2 JP 5636971B2 JP 2011002835 A JP2011002835 A JP 2011002835A JP 2011002835 A JP2011002835 A JP 2011002835A JP 5636971 B2 JP5636971 B2 JP 5636971B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
average particle
particle diameter
ticn
thickness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011002835A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012143828A (ja
Inventor
翔 龍岡
翔 龍岡
興平 冨田
興平 冨田
長田 晃
晃 長田
中村 惠滋
惠滋 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2011002835A priority Critical patent/JP5636971B2/ja
Priority to CN201110417261.XA priority patent/CN102581322B/zh
Publication of JP2012143828A publication Critical patent/JP2012143828A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5636971B2 publication Critical patent/JP5636971B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Description

この発明は、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に高負荷が作用する各種の鋼や鋳鉄の高速重切削加工において、硬質被覆層がすぐれた靭性と耐チッピング性を備えることにより、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された酸化アルミニウム(以下、Alで示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられていることが知られている。
ただ、上記の被覆工具の切削性能は、特に、下部層の組織構造によって大きな影響を受けることから、下部層の結晶粒組織構造について、従来からいくつかの提案がなされている。
例えば、引用文献1には、下部層として、TiN層、この上の第2層として、TiCN層、さらにこの上に、TiC層、TiN層、TiCN層等を形成した被覆工具において、上記第2層のTiCNを柱状結晶粒から構成し、該TiCNの平均結晶粒径が、第2層の膜厚が4.0μm以下のときには0.1〜1μmの範囲であり、第2層の膜厚が4.0μmを越え、20μm以下のときには0.5〜3.0μmの範囲とし、第2層の硬度を1600〜2400kg/mmとすることにより、硬質被覆層と母材との密着性を強固にし、硬質被覆層の靭性、耐剥離性、耐摩耗性を高めることが提案されている。
また、引用文献2には、基体と接する第1層がTiN、第2層がTiCNからなる下部層において、第2層の膜厚を全膜厚に対して60%以上で、かつ、その粒子の水平方向の平均粒径が0.3〜1.2μmであり、垂直方向の平均粒径水平方向の平均粒径の2.5倍以上とすることにより、被覆工具の耐剥離性、耐チッピング性、耐摩耗性を高めることが提案されている。
また、引用文献3には、下部層のTi化合物層として、少なくとも、柱状晶のTiCN層を形成し、該TiCN層の上端から該TiCN層の厚さの1/5の距離の位置におけるTiCN柱状結晶粒の水平方向の平均粒径d1と、該TiCN層の下端から該TiCN層の厚さの2/5の距離の位置におけるTiCN柱状結晶粒の水平方向の平均粒径d2の比を1≦d1/d2≦1.3とし、さらに、d1=0.2〜1.5μmすることにより、耐摩耗性、耐欠損性の両方に優れ、断続切削を含む長時間の切削加工における耐欠損性と耐摩耗性の改善を図ることが提案されている。
さらに、引用文献4には、硬質被覆層として、少なくともTiCN層とAl層を有する被覆工具において、該TiCN層は、下部TiCN層と上部TiCN層とからなり、下部TiCN層の膜厚t1は1μm≦t1≦10μm、上部TiCN層の膜厚t2は0.5μm≦t2≦5μmであって、かつ、1<t1/t2≦5の関係を満足し、さらに、上部TiCN層のTiCN粒子の平均結晶幅w2は0.2〜1.5μmであって、下部TiCN層のTiCN粒子の平均結晶幅w1はw2の0.7倍以下とすることによって、硬質被覆層の密着性を高め、層間剥離を防止し、断続切削加工等における耐欠損性、耐摩耗性の改善を図ることが提案されている。
特開平7−285001号公報 特開平10−15711号公報 特開平10−109206号公報 特開2005−186221号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、被覆工具は一段と過酷な条件下で使用されるようになってきているが、例えば、前記特許文献1〜3に示される被覆工具においても、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いられた場合には、下部層の靭性が十分ではないために、切削加工時の高負荷によって切れ刃にチッピングが発生しやすく、その結果、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いられた場合でも、硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備え、しかも、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得たのである。
即ち、本発明者等は、被覆工具の硬質被覆層、特に、下部層を構成するTi化合物のうちのTiの炭窒化物(以下、TiCNで示す)層の結晶粒組織構造を、柱状組織と微粒組織の混合組織として構成し、しかも、該柱状組織と微粒組織が、層厚方向に周期的に交互に現出するような結晶粒組織構造として構成することにより、Ti化合物層からなる下部層の本来有する特性を何ら損なうことなく、下部層と上部層からなる硬質被覆層の靭性及び耐チッピング性を向上させ得ることを見出したのである。
そして、上記結晶粒組織構造を有するTiCN層(以下、改質TiCN層という)は、例えば、以下の化学蒸着法によって成膜することができる。
例えば、工具基体表面に、下部層を構成するTi化合物層の一つとして、TiN層を蒸着形成した後、
(a)上記TiN層の上に、TiCl−CHCN−N−H系反応ガスを用いてTiCN層を蒸着形成し、
(b)上記(a)の成膜過程で、上記反応ガスの導入を停止すると同時に、SF系ガスを導入してSFエッチングを行い、
(c)次いで、上記(a)の工程と上記(b)の工程を繰り返し行ない、目標厚さのTiCN層を形成する。
上記(a)〜(c)によって、下部層を構成するTi化合物層の一つの層として改質TiCN層が形成されるが、該改質TiCN層について透過型電子顕微鏡で組織観察を行うと、柱状組織と微粒組織の混合組織からなり、しかも、該柱状組織と微粒組織が、層厚方向に周期的に交互に現出するような結晶粒組織構造が形成されていることが確認される。
そして、硬質被覆層の下部層を構成するTi化合物層の少なくとも一つの層として、上記結晶粒組織構造を有する改質TiCN層を蒸着形成したこの発明の被覆工具は、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に高負荷が作用する鋼や鋳鉄の高速重切削加工に用いた場合でも、硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備え、しかも、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層は、少なくともTiの炭窒化物層を含み、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層は、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を化学蒸着した表面被覆切削工具において、
上記(a)の下部層を構成する少なくとも1層のTiの炭窒化物層を、工具基体表面と平行に0.02μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する粒界の数を測定し、1μm当たりの粒界の数の逆数を平均粒径Dとして、膜厚方向に沿う各厚み幅領域の平均粒径Dの変化を求めた場合に、
平均粒径Dが0.5〜1.5μmである厚み幅領域と、平均粒径Dが0.05〜0.3μmである厚み幅領域とが、該層の膜厚方向に沿って、交互に少なくとも複数領域形成されていることによって、上記下部層を構成する少なくとも1層のTiの炭窒化物層の平均粒径Dが膜厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を有することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記(a)のTi化合物層は、少なくとも1層のTiの炭窒化物層と、Tiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上とからなることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に詳細に説明する。
下部層のTi化合物層:
Tiの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層、炭窒化物(TiCN)層、炭酸化物(TiCO)層および炭窒酸化物(TiCNO)層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層は、通常の化学蒸着条件で形成することができる。
上記のTi化合物からなる下部層は、それ自体が高温強度を有するため、下部層の存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体とAlからなる上部層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつ。
ただ、下部層の合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、チッピングを発生しやすくなることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
下部層の改質TiCN層:
この発明では、上記下部層を構成するTi化合物層のうち、少なくとも一つの層を、柱状組織と微粒組織が周期的に交互に現出するような結晶粒組織構造を備える前記改質TiCN層として形成する。
なお、改質TiCN層は、下部層中に1層だけ形成するのではなく、下部層中に複数層形成することも勿論可能である。
本発明の改質TiCN層は、その層厚方向に沿って結晶粒組織構造を観察した場合、改質TiCN層の平均粒径Dが層厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を有しており、さらに具体的には、改質TiCN層を、工具基体表面と平行に0.02μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する粒界の数を測定し、1μm当たりの粒界の数の逆数を平均粒径Dとして、層厚方向に沿う各厚み幅領域の平均粒径Dの変化を求めた場合に、平均粒径Dが0.5〜1.5μmである厚み幅領域と、平均粒径Dが0.05〜0.3μmである厚み幅領域とが、改質TiCN層の層厚方向に沿って、交互に少なくとも複数領域形成されている結晶粒組織構造を有している。
そして、このような結晶粒組織構造を有している改質TiCN層を、少なくとも一層、Ti化合物からなる下部層に形成することによって、硬質被覆層全体としての靭性が向上し、その結果、硬質被覆層の耐チッピング性、耐摩耗性の向上が図られる。
改質TiCN層の成膜:
この発明の改質TiCN層は、通常の化学蒸着条件で成膜するTi化合物層からなる下部層の少なくとも一つの層として、成膜することができる。
例えば、通常の化学蒸着装置を用い、
反応ガス組成(容量%):
TiCl:4〜5 %,
:30〜40 %,
:残
反応雰囲気温度:1020〜1060℃、
反応雰囲気圧力:10〜30kPa、
の条件で所定膜厚のTiN層を蒸着形成した後、
(a)上記TiN層の表面に、
反応ガス組成(容量%):
TiCl:1〜3 %,
CHCN:0.5〜1.0 %,
:5〜15 %,
:残
反応雰囲気温度:900〜950℃、
反応雰囲気圧力:5〜20kPa、
の条件で所定膜厚のTiCN層を蒸着形成し
(b)ついで、上記反応ガスの導入を停止し、その代わりに、0.1〜2容量%のガス組成となるようにSFガスを添加したHガスを導入し、このSFガスにより以下の条件、即ち、
反応ガス組成(容量%):
SF:0.1〜2 %,
:残
反応雰囲気温度:800〜1050 ℃、
反応雰囲気圧力:5〜20kPa、
の条件で5〜30分間SFエッチングを行う。
(c)ついで、上記SF系ガスの導入を停止し、装置内に、上記(a)の反応ガスを導入し、上記(a)と同じ条件で、再度TiCN層を蒸着形成する。
上記(b)と(c)を繰り返し行ない、最終的に目標層厚の改質TiCN層を蒸着形成する。
この後、下部層として必要とするTi化合物層の成膜を行い、目標層厚の下部層を形成し、この上に上部層であるAl層を目標膜厚となるように蒸着形成することによって、硬質被覆層を形成する。
改質TiCN層の結晶粒組織構造:
図1に、上記の化学蒸着条件で形成されたこの発明の改質TiCN層の結晶粒組織構造の概略式図を示す。
図1に示されるように、この発明の改質TiCN層では、柱状組織のTiCN粒が層厚方向に複数段に形成され、しかも、各段の上下の柱状組織のTiCN粒の境界には、微粒組織のTiCN粒が集積形成された組織構造を備えている。
図2には、上記の化学蒸着条件で形成されたこの発明の結晶粒組織構造を有する改質TiCN層における、平均粒径の分布図を示す。
この平均粒径の分布図は、以下の方法で求めることができる。
まず、改質TiCN層を、工具基体表面と平行に0.02μmの厚み幅領域に夫々区分し(図3において、工具基体表面に平行に引かれた複数の平行線で仕切られた区画が、0.02μmの厚み幅領域に相当する。)、区分された各厚み幅領域に存在する粒界の数nを透過型電子顕微鏡(倍率50000倍)にて合計10μmにわたって測定し、このnを1μm当たりの粒界の数N(=n/10)に換算し、その換算値の逆数を平均粒径D(=1/N)として求め、各厚み幅領域で求められた平均粒径Dを層厚方向に沿ってグラフ化することにより、図2として示される層厚方向平均粒径分布図を作成する。
そして、この発明の改質TiCN層の結晶粒組織構造によれば、該層厚方向平均粒径分布図において、平均粒径Dの値が0.5〜1.5μmの範囲内である厚み幅領域と、平均粒径Dの値が0.05〜0.3μmの範囲内である厚み幅領域とが、改質TiCN層の層厚方向に沿って、周期的かつ交互に少なくとも複数領域形成される。
例えば、図2においては、平均粒径Dの値が0.5〜1.5μmの範囲内である厚み幅領域が、層厚方向に4領域形成され、また、平均粒径Dの値が0.05〜0.3μmの範囲内である厚み幅領域が、層厚方向に3領域形成されている。
そしてこの層厚方向平均粒径分布図から、この発明の改質TiCN層では、層厚方向に沿ってTiCN結晶粒の平均粒径が周期的に変化する結晶粒組織構造が形成されていることがわかる。
この発明で、TiCNの平均粒径の変化の周期を0.5μm〜5μmとしたのは、上記周期が0.5μm未満になると周期が短すぎるために周期構造の有するすぐれた靭性とすぐれた耐チッピング性の特徴を十分に発揮できなくなるためであり、一方、上記周期が5μm以上になると周期が長くなり過ぎてしまい周期構造の有する上記特徴を十分に発揮できなくなるため、という理由による。
また、この発明で、平均粒径Dの値の上限範囲を0.5〜1.5μmの範囲内と定めたのは、0.5μm未満になると下限範囲の平均粒径Dとの差が小さくなりすぎて周期構造の有する特徴を十分に発揮しえなくなり、一方、1.5μm以上になると粗粒になり高い靭性を維持できなくなるからである。
また、平均粒径Dの値の下限範囲を0.05〜0.3μmの範囲内と定めたのは、0.05μm未満になると該厚み幅領域でのTiCNの粒子間歪みが増大し改質TiCN層中の粒子の密着性が低下することによりTiCNの高い靭性を維持できなくなり、一方、0.3μm以上になると粗粒になることにより高い靭性を維持できなくなるという理由による。
この発明では、硬質被覆層の下部層中に、少なくとも一層の改質TiCN層として、平均粒径Dが上記の上限範囲内と上記の下限範囲内にある厚み幅領域が周期的に交互に現出する結晶粒組織構造を備えていることから、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工においても、上部層のAl層が有する本来の高温硬さと耐熱性とを損なうことなく、硬質被覆層全体としてのすぐれた靭性、耐チッピング性を発揮するようになる。
上部層のAl層:
上部層を構成するAl層が、高温硬さと耐熱性を備えることは既に良く知られているが、この発明のAl層からなる上部層は、その平均層厚が1μm未満では、長期の使用に亘っての耐摩耗性を確保することができず、一方、その平均層厚が25μmを越えるとAl結晶粒が粗大化し易くなり、その結果、高温硬さ、高温強度の低下に加え、高速重切削加工時の耐チッピング性が低下するようになることから、その平均層厚を1〜25μmと定めた。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層として、Ti化合物層からなる下部層とAl層からなる上部層を被覆形成し、かつ、下部層の少なくとも一つの層として、TiCNの平均粒径が層厚方向に沿って周期的に変化する結晶粒組織構造を有している改質TiCN層を形成することにより、鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いた場合でも、靭性、耐チッピング性にすぐれ、その結果、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮し、被覆工具の長寿命化が達成されるものである。
この発明の改質TiCN層の結晶粒組織構造の概略式図を示す。 この発明の結晶粒組織構造を有する改質TiCN層についての層厚方向の平均粒径分布図を示す。 この発明の改質TiCN層を、工具基体表面に平行に引かれた複数の(仮想)平行線で、0.02μmの厚み幅領域に仕切り、区画した状態の式図を示す。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG190612に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Eをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG190612のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜eを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、
硬質被覆層の下部層として、表3に示される条件かつ表5に示される目標層厚でTi化合物層を蒸着形成する。
ただ、Ti化合物層を形成するにあたり、そのうちの少なくとも一つの層は、表4に示す条件で、改質TiCN層を蒸着形成する。
改質TiCN層は、
(a)まず、表4に示す成膜条件でTiCN層を形成し、
(b)次いで、表4に示される条件で、成膜したTiCN層を所定時間SFエッチングし、
(c)上記(a)、(b)を所定膜厚の改質TiCN層が得られるまで繰り返し行なうことにより形成する。
所定膜厚の下部層を蒸着形成した後、硬質被覆層の上部層であるAl層を、表3に示される条件で表5に示される目標層厚で蒸着形成する。
上記蒸着によって、表5に示される下部層および上部層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜15を製造した。
上記本発明被覆工具1〜15の改質TiCN層について、透過型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて複数視野に渡って観察したところ、図1の概略摸式図に示される結晶粒組織構造が観察された。
また、同じく透過型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて、上記本発明被覆工具1〜15の改質TiCN層について、図3に示されるように層厚方向に0.02μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する粒界の数を測定し、1μm当たりの粒界の数の逆数を平均粒径Dとして、層厚方向に沿う各厚み幅領域の平均粒径Dの変化を求め、横軸を平均粒径D、縦軸を層厚方向深さとして、図2に示される平均粒径分布図を作成した。
上記図2において、平均粒径Dが0.5〜1.5μmの間にある厚み幅領域における平均粒径Dの最大の値を平均粒径の極大値Dmaxとし、一方、平均粒径Dが0.05〜0.3μmの間にある厚み幅領域における平均粒径Dの最小の値を平均粒径の極小値Dminとし、図2として作成した平均粒径分布図から、DmaxとDminを求め、さらに、層厚方向に沿って、周期的に現れるDmax間の距離を平均粒径が変化する周期Cとして求めた。
表6に、改質TiCN層について、上記極大値Dmax、極小値Dmin及び周期Cの値を示す。
また、比較の目的で、工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eの表面に、表3に示される条件かつ表7に示される目標層厚で、硬質被覆層の下部層としてのTi化合物層および上部層としてのAl層を蒸着形成することにより、表7に示すTiCN層を有する比較被覆工具1〜10を作製した。(比較被覆工具1〜10では、改質TiCN層の形成を行っていない。)
また、表3に示される条件かつ表7に示される目標層厚で、硬質被覆層の下部層としてのTi化合物層および上部層としてのAl層を蒸着形成するとともに、下部層の一部に、表4に示される条件でTiCNの平均粒径が変化する改質TiCN層を形成することにより、表7に示すTiCN層を有する比較被覆工具11〜15を作製した。
比較被覆工具1〜10のTiCN層及び比較被覆工具11〜15の改質TiCN層について、透過型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて、TiCNの平均粒径を測定した。
比較被覆工具1〜10については、TiCNの平均粒径は層厚方向に有意な差は認められず、ほぼ均一平均粒径であった。
表8には、比較被覆工具1〜10についての層厚方向全体にわたり均一な平均粒径の値を示す。
比較被覆工具11〜15については、本発明被覆工具1〜15の場合と同様に層厚方向にわたる平均粒径の変化を測定した。
表8に、比較被覆工具11〜15について求めた極大値Dmax、極小値Dmin及び周期Cの値を示す。
また、本発明被覆工具1〜15及び比較被覆工具1〜15の各構成層の層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて測定したところ、いずれも表5,表7に示される目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。

つぎに、上記本発明被覆工具1〜15及び比較被覆工具1〜15について、表9に示す条件で切削加工試験を実施し、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
表10に、この測定結果を示した。
表5〜10に示される結果から、この発明の被覆工具は、硬質被覆層の下部層として、少なくとも一層の改質TiCNの平均粒径が層厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を有していることにより、鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いた場合でも、靭性、耐チッピング性にすぐれ、その結果、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することが明らかである。
これに対して、下部層のTiCNがほぼ均一平均粒径である比較被覆工具1〜10、また、本発明範囲外の結晶粒組織構造を有する比較被覆工具11〜15については、高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いた場合、チッピング、欠損等の発生により短時間で寿命にいたることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、例えば鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工において、すぐれた靭性、耐チッピング性を発揮し、使用寿命の延命化を可能とするものであるが、高速重切削加工条件ばかりでなく、高速切削加工条件、高速断続切削加工条件等で使用することも勿論可能である。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層は、少なくともTiの炭窒化物層を含み、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)上部層は、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
    上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を化学蒸着した表面被覆切削工具において、
    上記(a)の下部層を構成する少なくとも1層のTiの炭窒化物層を、工具基体表面と平行に0.02μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する粒界の数を測定し、1μm当たりの粒界の数の逆数を平均粒径Dとして、膜厚方向に沿う各厚み幅領域の平均粒径Dの変化を求めた場合に、
    平均粒径Dが0.5〜1.5μmである厚み幅領域と、平均粒径Dが0.05〜0.3μmである厚み幅領域とが、該層の膜厚方向に沿って、交互に少なくとも複数領域形成されていることによって、上記下部層を構成する少なくとも1層のTiの炭窒化物層の平均粒径Dが膜厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を有することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 上記(a)のTi化合物層は、少なくとも1層のTiの炭窒化物層と、Tiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上とからなることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
JP2011002835A 2011-01-11 2011-01-11 硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具 Active JP5636971B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011002835A JP5636971B2 (ja) 2011-01-11 2011-01-11 硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具
CN201110417261.XA CN102581322B (zh) 2011-01-11 2011-12-14 硬质包覆层具备优异的韧性、耐崩刀性的表面包覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011002835A JP5636971B2 (ja) 2011-01-11 2011-01-11 硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012143828A JP2012143828A (ja) 2012-08-02
JP5636971B2 true JP5636971B2 (ja) 2014-12-10

Family

ID=46470864

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011002835A Active JP5636971B2 (ja) 2011-01-11 2011-01-11 硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5636971B2 (ja)
CN (1) CN102581322B (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5850402B2 (ja) * 2012-02-16 2016-02-03 三菱マテリアル株式会社 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2734311B2 (ja) * 1992-08-11 1998-03-30 三菱マテリアル株式会社 耐チッピング性にすぐれた表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削工具
JP3052586B2 (ja) * 1992-06-25 2000-06-12 三菱マテリアル株式会社 耐チッピング性にすぐれた表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具
US5920760A (en) * 1994-05-31 1999-07-06 Mitsubishi Materials Corporation Coated hard alloy blade member
JP4284144B2 (ja) * 2003-09-26 2009-06-24 京セラ株式会社 表面被覆切削工具
JP4466841B2 (ja) * 2004-06-30 2010-05-26 三菱マテリアル株式会社 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
CN100473483C (zh) * 2004-08-11 2009-04-01 三菱综合材料株式会社 表面被覆金属陶瓷制切削工具

Also Published As

Publication number Publication date
CN102581322A (zh) 2012-07-18
JP2012143828A (ja) 2012-08-02
CN102581322B (zh) 2016-04-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6139058B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5590335B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を備える表面被覆切削工具
JP5590327B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を備える表面被覆切削工具
JP5590329B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を備える表面被覆切削工具
JP6139057B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009006426A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5246518B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具
JP5854321B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5003308B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5636971B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具
JP5817998B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP2008080476A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5850402B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5569740B2 (ja) 耐チッピング性にすぐれた表面被覆切削工具
JP4936211B2 (ja) 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2013116548A (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5686294B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5838805B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5569739B2 (ja) 耐チッピング性にすぐれた表面被覆切削工具
JP5892380B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5928806B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5928807B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5999350B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4936212B2 (ja) 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2015182155A (ja) 断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130927

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140611

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140707

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140828

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140924

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141007

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5636971

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150