JP5590327B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を備える表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を備える表面被覆切削工具 Download PDF

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この発明は、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する各種の鋼や鋳鉄の高速断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を備えることにより、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された酸化アルミニウム(以下、Alで示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられていることが知られている。
ただ、上記の被覆工具は、切れ刃に大きな負荷がかかる切削条件では、チッピング、欠損等を発生しやすく、工具寿命が短命であるという問題があるため、これを解消するために、従来からいくつかの提案がなされている。
例えば、引用文献1には、硬質被覆層として、Al層の厚さ方向に貫通孔を有する多孔質Al層の空孔内にTiC、TiN、TiCNを充填したAl主体層を形成することにより、硬質被覆層の耐摩耗性を確保しつつ靭性の向上を図り、もって、被覆工具の耐チッピング性を改善することが提案されている。
また、引用文献2、3には、下部層としてTi化合物層、上部層としてAl層を設けた被覆工具において、上部層を、5〜30%の空孔率を有する多孔質Al層で構成し、該空孔によって機械的、熱的衝撃を緩和させ、耐チッピング性を向上させることが提案されている。
特開2001−277007号公報 特開2003−19603号公報 特開2003−48105号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、被覆工具は一段と過酷な条件下で使用されるようになってきているが、例えば、前記特許文献1〜3に示される被覆工具においても、高熱発生を伴うとともに、より一段と切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工に用いられた場合には、上部層の耐機械的衝撃性、耐熱的衝撃性が十分ではないために、切削加工時の高負荷によって切れ刃にチッピング、欠損が発生しやすく、その結果、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工に用いられた場合でも、硬質被覆層がすぐれた衝撃吸収性を備え、その結果、長期の使用にわたってすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮する被覆工具について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得たのである。
即ち、硬質被覆層として、上記従来の多孔質Al層を形成したものにおいては、Al層内の全体にわたって空孔がほぼ均一に形成されており、そのため、空孔率が高くなるほど機械的、熱的な耐衝撃性は向上するが、その反面、空孔率が高くなるほど多孔質Al層の高温強度、高温硬さが低下するため、長期の使用にわたって十分な耐摩耗性を発揮することができず、また、工具寿命も満足できるものであるとはいえなかった。
そこで、本発明者等は、Al層内の空孔分布形態について更に検討を進めたところ、Al層からなる硬質被覆層の上部層内に形成された微小空孔を、Al層内全体にわたって均一に分散させるのではなく、規則性をもって不均質に分散させることによって、Al層の高温強度と高温硬さの低下を招くことなく、機械的、熱的な耐衝撃性を向上させることができることを見出したのである。
そして、上記空孔分布形態を備えるAl層は、例えば、以下の化学蒸着法によって成膜することができる。
(a)工具基体表面に、通常のTi化合物層からなる目標厚さの下部層を蒸着形成し、
(b)下部層の上に、AlCl−HCl−HS−CO系反応ガスを用いてAl層を蒸着形成し、
(c)上記(b)の成膜過程で、上記反応ガスの導入を停止すると同時に、SF系ガスを導入してSFエッチングを行い、
(d)次いで、上記(b)の工程と上記(c)の工程を繰り返し行ない、目標厚さのAl層を形成する。
上記(a)〜(d)によって、工具基体表面には、目標層厚の下部層と上部層が形成されるが、上記上部層について走査型電子顕微鏡で表面組織観察を行うと、Al層中には孔径2〜30nmの微小空孔が形成され、しかも、該微小空孔密度は、層厚方向に沿って周期的に変化する空孔分布形態を有することが確認される。
そして、硬質被覆層の上部層として、上記の空孔分布形態を有するAl層を蒸着形成したこの発明の被覆工具は、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する鋼や鋳鉄の高速断続切削加工に用いた場合でも、硬質被覆層が耐チッピング性、耐欠損性に優れ、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性を発揮し得ることを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層は、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を化学蒸着した表面被覆切削工具において、
上記(b)の上部層内部には孔径2〜30nmの微小空孔が形成されており、上記(b)の上部層を、工具基体表面と平行に0.1μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する微小空孔密度を測定した場合に、
微小空孔密度が200〜500個/μmである厚み幅領域と、微小空孔密度が0〜20個/μmである厚み幅領域とが、上部層の層厚方向に沿って、交互に少なくとも複数領域形成されていることによって、上部層中の微小空孔密度が層厚方向に沿って周期的に変化する空孔分布形態を有することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上部層中の微小空孔密度が、周期0.5μm〜5μmで層厚方向に沿って周期的に変化する空孔分布形態を有することを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に詳細に説明する。
下部層のTi化合物層:
Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層は、通常の化学蒸着条件で形成することができ、それ自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体とAl からなる上部層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、チッピングを発生しやすくなることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
上部層のAl層:
上部層を構成するAl層が、高温硬さと耐熱性を備えることは既に良く知られているが、この発明のAl層で構成された上部層、即ち、孔径2〜30nmの微小空孔が、Al層内で所定の分布形態で分散分布している上部層は、切れ刃が高温に曝され、しかも、機械的・熱的衝撃を受ける高速断続切削加工においても、すぐれた高温強度、高温硬さを備え、同時に、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮する。
なお、この発明のAl層からなる上部層は、その平均層厚が1μm未満では、長期の使用に亘っての耐摩耗性を確保することができず、一方、その平均層厚が25μmを越えるとAl結晶粒が粗大化し易くなり、その結果、高温硬さ、高温強度の低下に加え、高速断続切削加工時の耐チッピング性、耐欠損性が低下するようになることから、その平均層厚を1〜25μmと定めた。
上部層(Al層)の成膜:
この発明の上部層は、通常の化学蒸着条件で成膜した下部層の表面に、例えば、以下の化学蒸着条件によって成膜することができる。
まず、通常の化学蒸着装置を用い、
(a)反応ガス組成(容量%):
AlCl:2〜3 %,
CO:5〜6 %,
HCl:2〜3 %,
S:0.1〜0.5 %,
:残
反応雰囲気温度:960〜1000℃、
反応雰囲気圧力:5〜8kPa、
の条件で20〜180分間蒸着し、所定層厚のAl層を蒸着形成する。
(b)ついで、上記反応ガスの導入を停止し、その代わりに、5〜10容量%のガス組成となるようにSFガスを添加したHガスを導入し、このSFガスにより以下の条件、即ち、
反応ガス組成(容量%):
SF:5〜10 %,
:残
反応雰囲気温度:800〜1050 ℃、
反応雰囲気圧力:4〜27kPa、
の条件で5〜60分間SFエッチングを行う。
(c)ついで、上記SF系ガスの導入を停止し、装置内に、上記(a)の反応ガス組成となるようにHSを導入し、上記(a)と同じ条件で20〜180分間蒸着し、再度Al層を蒸着形成する。
以下、上記(b)と(c)を繰り返し行ない、最終的に目標層厚のAl層を蒸着形成する。
上部層(Al層)の空孔分布形態:
図1に、上記の化学蒸着条件で形成されたこの発明の上部層(Al層)の空孔分布形態の概略式図を示す。
図1に示されるように、この発明の上部層(Al層)では、孔径2〜30nmの微小空孔が高密度で存在する領域と、微小空孔密度の低い領域とが複数領域形成され、しかも、該複数の微小空孔高密度領域と微小空孔低密度領域とは、層厚方向に沿って周期的に微小空孔密度が変化する空孔分布形態を有している。
図2により、更に詳細に説明する。
図2は、上記の化学蒸着条件で形成されたこの発明の空孔分布形態を有する上部層(Al層)における、層厚方向位置−微小空孔密度の相関を表す空孔分布形態図を示す。
この空孔分布形態図は、以下の方法で求めることができる。
まず、上部層を、工具基体表面と平行に0.1μmの厚み幅領域に夫々区分し(図3において、工具基体表面に平行に引かれた複数の平行線で仕切られた区画が、0.1μmの厚み幅領域に相当する。)、区分された各厚み幅領域に存在する孔径2〜30nmの微小空孔の数を長さ合計10μmにわたって、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて測定し、該0.1μmの厚み幅領域に存在する微小空孔密度(個/μm)を求め、各厚み幅領域で求められた微小空孔密度を層厚方向に沿ってグラフ化することにより、図2として示される層厚方向の空孔分布形態図を作成する。
そして、この発明の上部層(Al層)の空孔分布形態によれば、該層厚方向空孔分布形態図において、微小空孔密度が極大値(200〜500個/μmの範囲内)となる厚み幅領域と、微小空孔密度が極小値(0〜20個/μmの範囲内)となる厚み幅領域とが、上部層の層厚方向に沿って、周期的かつ交互に少なくとも複数領域形成される。
例えば、図2においては、微小空孔密度が極大値(200〜500/μmの範囲内)を示す厚み幅領域が、層厚方向に3箇所形成され、また、微小空孔密度が極小値(0〜20個/μmの範囲内)を示す厚み幅領域が、層厚方向に3箇所形成されている。
そしてこの層厚方向の空孔分布形態図から、この発明の上部層(Al層)では、Al層内部に形成された孔径2〜30nmの微小空孔の分布が、層厚方向に沿って周期的に変化する空孔分布形態が形成されていることがわかる。
この発明で、微小空孔密度の極大値を200〜500個/μmの範囲内と定めたのは、微小空孔密度の極大値200個/μm未満であると極小領域との差が小さくなりすぎて周期構造の有する特徴を十分に発揮しえなくなり、一方、500個/μmを超えると空隙率が高くなりすぎ、上部層の脆化とともに耐摩耗性の低下が生じるからである。
また、微小空孔密度の極小値を0〜20個/μmの範囲内と定めたのは、耐衝撃性に加えて上部層全体としての高温強度、高温硬さを維持するためには、上部層内に微小空孔密度が20個/μm以下の領域が必要とされるからであり、微小空孔密度の極小値が20個/μmを超えるような場合には、耐衝撃性にはすぐれたとしても、Al層の靭性、耐摩耗性が低下するという理由による。
また、この発明で、微小空孔の孔径を2〜30nmと定めたのは、Al層中に形成される空孔の孔径が2nm未満では、衝撃緩和効果が期待できず、一方、孔径が30nmを超えると、Al層の靭性低下が大きくなるためであり、Al層の高温強度、高温硬さを維持しつつ、断続的・衝撃的負荷に対する衝撃緩和効果を保持するためには、Al層内部に形成される微小空孔の孔径は2〜30nmでなければならない。
また、上記微少空孔の分布形態における層厚方向の周期は、0.5μm〜5μmであることが望ましい。この周期が0.5μm未満であるとAl層からなる上部層の靭性、耐摩耗性が低下傾向を示し、一方、上記周期が5μmを超えると断続的・衝撃的負荷に対するAl層の耐衝撃性が低下してくる。
この発明では、硬質被覆層の上部層(Al層)として、微小空孔密度が上記の極大値と極小値を示す厚み幅領域が周期的に交互に現出する空孔分布形態を備えていることから、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工においても、Al層が有する本来の高温硬さと耐熱性とを損なうことなく、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮するようになる。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層として、Ti化合物層からなる下部層とAl層からなる上部層を被覆形成し、かつ、上部層のAl層の微小空孔密度が層厚方向に沿って周期的に変化する空孔分布形態を有していることにより、鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合でも、耐チッピング性、耐欠損性にすぐれ、その結果、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮し、被覆工具の長寿命化が達成されるものである。
この発明の空孔分布形態を有する本発明被覆工具の上部層(Al層)の概略式図を示す。 この発明の空孔分布形態を有する上部層(Al層)についての層厚方向の微小空孔密度分布図を示す。 この発明の上部層(Al層)を、工具基体表面に平行に引かれた複数の(仮想)平行線で、0.1μmの厚み幅領域に仕切り、区画した状態の式図を示す。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Eをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜eを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、
(a)硬質被覆層の下部層として、表3に示される条件かつ表5に示される目標層厚でTi化合物層を蒸着形成する。
(b)次いで、硬質被覆層の中間層として、表3に示される条件で所定の層厚のAl層を蒸着形成する。
(c)次いで、表4に示されるエッチング条件で、Al層を所定時間SFエッチングを行う。
(d)上記(b)、(c)を所定の上部層層厚が得られるまで繰り返し行なう。
上記(a)〜(d)によって、表6に示される下部層、および、Al層の微小空孔密度が層厚方向に沿って周期的に変化する空孔分布形態を有する同じく表7に示される上部層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜15を製造した。
上記本発明被覆工具1〜15のAl層からなる上部層について、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて、膜厚方向の破断面を複数視野に渡って観察し、図1の概略摸式図に示される空孔分布形態を観察した。
また、同じく走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて、上記本発明被覆工具1〜15のAl層からなる上部層について、図3に示されるように層厚方向に0.1μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する孔径2〜30nmの微小空孔の数を長さ合計10μmにわたって測定し、微小空孔密度(個/μm)を求め、横軸を微小空孔密度(個/μm)、縦軸を層厚方向深さとして、図2に示される空孔分布形態図を作成した。
上記図2において、微小空孔密度が200〜500個/μmの間に存在する場合の微小空孔密度の最大の値を極大値Dmaxとし、一方、微小空孔密度が0〜20個/μmの間に存在する場合の微小空孔密度の最小の値を極小値Dminとし、図2として作成した空孔分布形態図から、DmaxとDminを求め、さらに、層厚方向に沿って、周期的に現れるDmax間の距離を微小空孔密度が変化する周期Cとして求めた。
表7に、上記極大値Dmax、極小値Dmin及び周期Cの平均値を示す。
また、比較の目的で、工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eの表面に、表3に示される条件かつ表6に示される目標層厚で本発明被覆工具1〜15と同様に、硬質被覆層の下部層としてのTi化合物層を蒸着形成した。
次いで、硬質被覆層の上部層として、いくつかのものについては、表3に示される条件かつ表8に示される目標層厚でAl層からなる上部層を蒸着形成することにより、表8の比較被覆工具1〜5を作製した。
同じく、いくつかのものについては、表5に示される条件(特許文献2,3に記載される条件に相当する)かつ表8に示される目標層厚でAl層からなる上部層を蒸着形成することにより、表8の比較被覆工具6〜10を作製した。
また、残りのものについては、表3に示される条件によるAl層の蒸着形成と、表4に示される条件でSFエッチングとを繰り返し行なうことにより、Alの微小空孔密度が変化するAl層からなる上部層を蒸着形成することにより、表8の比較被覆工具11〜15を作製した。
比較被覆工具1〜10及び11〜15のAl層からなる上部層について、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて、Alの微小空孔密度を測定した。
比較被覆工具1〜5については、Al層の空孔密度は層厚方向に有意な差は認められず、孔径 50〜100nmの空孔が、ほぼ 0〜 5 個/μmの密度で層内に均一に分布していた。
また、比較被覆工具6〜10については、Al層の空孔密度は層厚方向に有意な差は認められず、孔径 200〜1000nmの空孔が、10〜25%の空孔率で層内に均一に分布していた。
表8には、比較被覆工具1〜10についての層厚方向全体にわたり均一な孔径、空孔密度の値を示す。
比較被覆工具11〜15については、本発明被覆工具1〜15の場合と同様に層厚方向にわたる空孔分布形態を求めた。
表8に、比較被覆工具11〜15について求めた極大値Dmax、極小値Dmin及び周期Cの値を示す。
また、本発明被覆工具1〜15及び比較被覆工具1〜15の各構成層の層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて測定したところ、いずれも表6〜表8に示される目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。



表10に、この測定結果を示した。

表6〜10に示される結果から、この発明の被覆工具は、硬質被覆層の上部層として、Al層内部に形成された微小空孔の微小空孔密度が層厚方向に沿って周期的に変化する空孔分布形態を有していることにより、鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合でも、耐チッピング性、耐欠損性にすぐれ、その結果、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することが明らかである。
これに対して、上部層のAl層内のほぼ均一平均粒径である比較被覆工具1〜10、また、本発明範囲外の結晶粒組織構造を有する比較被覆工具11〜15については、高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合、チッピング、欠損等の発生により短時間で寿命にいたることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、例えば鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工において、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮し、使用寿命の延命化を可能とするものであるが、高速断続切削加工条件ばかりでなく、高速切削加工条件、高切込み,高送りの高速重切削加工条件等で使用することも勿論可能である。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)上部層は、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
    上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を化学蒸着した表面被覆切削工具において、
    上記(b)の上部層内部には孔径2〜30nmの微小空孔が形成されており、上記(b)の上部層を、工具基体表面と平行に0.1μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する微小空孔密度を測定した場合に、
    微小空孔密度が200〜500個/μmである厚み幅領域と、微小空孔密度が0〜20個/μmである厚み幅領域とが、上部層の層厚方向に沿って、交互に少なくとも複数領域形成されていることによって、上部層中の微小空孔密度が層厚方向に沿って周期的に変化する空孔分布形態を有することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 上部層中の微小空孔密度が、周期0.5μm〜5μmで層厚方向に沿って周期的に変化する空孔分布形態を有することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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