JP5321094B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Description

この発明は、硬質被覆層として、Ti化合物層からなる下部層と酸化アルミニウム層からなる上部層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、下部層と上部層間に特定構造の界面組織を形成することにより、硬質被覆層の層間密着性、層間密着強度を高め、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、工具基体という)の表面に、
下部層として、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
上部層として、酸化アルミニウム(以下、Alで示す)層、
からなる硬質被覆層を蒸着形成した被覆工具が知られている。
また、上記被覆工具の上部層−下部層間の層間密着性を高めるために、上部層−下部層間に、結合層を形成し、かつ、該結合層は、TiとOを必須としこれにC及び/又はNが加わった組成からなり、立方晶構造を有し、針状、棒状、板状の突起を有する結合層を介在形成した被覆工具も知られている。
特開平9−174304号公報 特開2004−148502号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高能率化する傾向にあるが、上記従来の被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを、高熱発生を伴うとともに、切刃に対して断続的かつ衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工に用いたような場合には、硬質被覆層の層間密着性、層間密着強度が十分でないために、被覆工具の切刃部は、チッピング、欠損、剥離を発生しやすく、これらを原因として、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、硬質被覆層の下部層をTi化合物層、また、上部層をAl層で構成した被覆工具において、下部層−上部層間の層間密着性、層間密着強度をより向上させ、高速断続切削加工に用いた場合にもすぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を発揮する硬質被覆層の層構造について研究を行った結果、以下の知見を得た。
(a)本発明者等は、工具基体表面に、Tiの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層、炭窒化物(TiCN)層、炭酸化物(TiCO)層および炭窒酸化物(TiCNO)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層からなる下部層と、Al層からなる上部層を化学蒸着し、硬質被覆層を形成するにあたり、下部層と上部層との界面に特定構造の界面組織を形成すると、下部層と上部層との密着性・密着強度が向上し、切刃に高負荷、衝撃的負荷が作用する切削条件においても、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性が発揮されることを見出した。
(b)上記特定構造の界面組織は、下部層及び上部層を形成する際に、化学蒸着条件を段階的に調整することにより得ることができる。
例えば、下地層の形成及び中間層の形成という二段階で下部層を形成した後、境界層の形成及び表面層の形成という二段階で上部層の形成を行うことにより、下部層と上部層の界面に、特定構造の界面組織を備えた硬質被覆層を蒸着形成することができる。
(c)具体的には、
(イ)まず、下地層を、通常行われるTi化合物層の化学蒸着条件で工具基体表面に蒸着形成し、
(ロ)次いで、中間層を、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:0.2〜2%、CH:0.5〜3%、N2:1〜5%、CO:0〜2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850〜950℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件で蒸着し、
上記(イ)、(ロ)で下部層を形成した後、
(ハ)次に、境界層を、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:0.2〜0.5%、TiCl:0.2〜0.5%、CO:1〜2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850〜950℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件で蒸着し、
(ニ)次いで、表面層を、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:2〜6%、HCl:1〜5%、H2S:0.25〜0.75%、H2:残り、
反応雰囲気温度:920〜1000℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件で蒸着し、
上記(ハ)、(ニ)で上部層を形成すると、
下部層、上部層の形成とともに、両層間に特定構造の界面組織を形成できる。
そして、上記特定構造の界面組織は、より具体的には、例えば、六方晶の結晶構造を有するTiの酸化物で構成された三次元網状構造と、該網状構造の網目間隙に、Alが充填された組織構造を有し、さらに、該界面組織の断面を走査型電子顕微鏡で観察すると、単位断面積(10×10(μm))当り、Alが充填された直径10〜500nmの網目間隙が30箇所以上存在する組織構造を有する。
そして、上記三次元網状構造の網目間隙に充填されたAlと上部層を構成するAlがすぐれた密着性を示し、また、上記三次元網状構造が上部層を構成するAlとすぐれたアンカー効果を発揮し、その結果、下部層と上部層との密着強度・接合強度が向上し、高熱発生を伴い、かつ、切刃に衝撃的負荷が繰り返し断続的に作用する高速断続切削条件においても、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性が発揮される。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層として、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、及び、1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層からなる上部層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
上部層と下部層の界面には、1〜10nmの平均層厚を有する三次元網状構造の界面組織が形成され、該界面組織の三次元網状構造の網目間隙には酸化アルミニウムが充填され、かつ、該界面組織の断面を走査型電子顕微鏡で観察した場合、単位断面積(10(μm)×10(μm))当り、酸化アルミニウムが充填された直径10〜500nmの網目間隙が30箇所以上存在することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記(1)に記載の表面被覆切削工具において、
上記界面組織の三次元網状構造は、六方晶の結晶構造を有するTiの酸化物で構成され、かつ、該Tiの酸化物に隣接する下部層内には、立方晶の結晶構造を有するTiの炭窒化物、炭窒酸化物が存在することを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆工具の硬質被覆層の構成層に関し、詳細に説明する。
≪Ti化合物層からなる下部層≫
(a)下地層
下地層は、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層(これらを総称して、Ti(C,N,O)層で示す)を、通常行われるTi化合物層の化学蒸着条件で工具基体表面に蒸着することによって形成する。下地層は、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度を維持するが、その平均層厚が2μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、特に高熱発生を伴う高速断続切削では熱塑性変形を起こしやすくなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を2〜15μmとすることが望ましい。
(b)中間層
TiCN層あるいはTiCNO層からなる中間層は、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:0.2〜2%、CH:0.5〜3%、N2:1〜5%、CO:0〜2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850〜950℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
成膜時間:1〜30分、
という条件で蒸着形成することができる。
そして、上記条件で形成されたTiCN層あるいはTiCNO層からなる中間層の表面(即ち、上部層との界面に相当する)は、中間層の形成に続いて行われる境界層の形成に際し、中間層の表面構造が改変され、三次元網状構造が形成される。つまり、中間層表面のTiCNあるいはTiCNOが六方晶の結晶構造を有するTi酸化物に変化して、このTi酸化物が三次元網状構造を構成し、同時に、三次元網状構造の網目間隙には酸化アルミニウムが充填され、特定構造の界面組織が形成される。
なお、三次元網状構造を構成する六方晶の結晶構造を有するTi酸化物に隣接する下部層内には、立方晶の結晶構造を有する上記TiCNあるいはTiCNOが存在する。
TiCN層あるいはTiCNO層の蒸着条件が前記の条件から外れた場合には、境界層をこの上に形成しても、三次元網状組織は形成されず、わずかに針状あるいは棒状突起の存在がみられるほぼ平坦な界面が形成されるのみである。
中間層の平均層厚は、0.5μm未満では、三次元網状構造組織を十分な厚さで形成することができず、一方その平均層厚が5μmを越えると、三次元網状組織が平坦な組織へと変化することから、その平均層厚を0.5〜5μmとすることが望ましい。
また、前記下地層及び中間層からなる下部層の合計平均層厚が3μm未満では、硬質被覆層に十分な高温強度を具備せしめることができないばかりか、上部層との層間密着性・密着強度の向上を期待できず、一方、その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴う高速断続切削では熱塑性変形を起こしやすくなり、これが偏摩耗の原因となることから、ことから、その合計平均層厚は3〜20μmと定めた。
≪Al層からなる上部層≫
(c)境界層
中間層表面に、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:0.2〜0.5%、TiCl:0.2〜0.5%、CO:1〜2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850〜950℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
成膜時間:1〜10分、
の条件で境界層を蒸着すると、中間層表面が改変され、図1(a)、(b)の模式図に示されるように、三次元網状構造が形成され、同時に、蒸着されたAlが該三次元網状構造の網目間隙に充填された界面組織が形成される。
三次元網状構造からなる界面組織の形成深さ(層厚方向長さ)、網目間隙の平均サイズ等は、中間層及び境界層の蒸着条件、特に、境界層蒸着におけるCO濃度によって大きく影響を受けるので、所定領域にわたって所定網目間隙サイズ、所定網目間隙個数を得るためにはこれらの条件を調整することが必要である。
なお、境界層の平均層厚が0.1μm未満では、三次元網状構造の界面組織を十分な厚さで形成することができず、一方その平均層厚が1μmを越えると、Al粒の粗大化により、層間密着性を十分に発揮させることができなくなることから、その平均層厚を0.1〜1μmとすることが望ましい。
図1(a)、(b)は、上記条件で蒸着形成された界面組織の層厚方向断面を走査型電子顕微鏡で観察した模式図であるが、単位断面積(10×10(μm))当り、Alが充填された直径10〜500nmの網目間隙が30箇所以上存在する組織構造を有している。
そして、上記三次元網状構造の網目間隙に充填されたAlは、上部層を構成するAlとすぐれた密着性を示し、また、上記三次元網状組織は、上部層を構成するAlとすぐれたアンカー効果を備えることによって、このような界面組織を有する硬質被覆層は、下部層−上部層間の密着強度・接合強度が優れたものとなり、その結果、切刃部に衝撃的負荷が作用する高速断続切削において、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を発揮する。
(d)表面層
表面層は、上記境界層を形成後、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:2〜6%、HCl:1〜5%、H2S:0.25〜0.75%、H2:残り、
反応雰囲気温度:920〜1000℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件で蒸着することにより形成する。
表面層はAlから構成され、高温硬さおよび耐熱性に優れ、基本的に、被覆工具全体としての耐摩耗性を担保する。
表面層の平均層厚は、1μm未満では、耐摩耗性が不十分であり、一方その平均層厚が15μmを越えると、チッピング、欠損等を発生しやすくなることから、その平均層厚を1〜15μmとすることが望ましい。
また、境界層と表面層の合計平均層厚が1μm未満であるような場合は、下部層−上部層の密着性・密着強度が不十分になるばかりか、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を確保することができず、一方、合計平均層厚が15μmを超えるような場合は、切刃に衝撃的負荷が作用する高速断続切削ではチッピング、欠損等を発生しやすくなることから、その合計平均層厚を1〜15μmと定めた。
《界面組織》
この発明における特定構造の界面組織は、中間層の蒸着条件と境界層の蒸着条件の組み合わせにより、下部層と上部層との界面に形成される組織であって、Ti酸化物から構成される三次元網状構造と、該網状構造の網目間隙にAlが充填された組織構造からなるが、既に述べたように、中間層の蒸着条件あるいは境界層の蒸着条件が適切でない場合には、例えば、境界層蒸着におけるCO濃度が上記条件より外れたような場合には、わずかに針状、棒状突起が存在するほぼ平坦な界面組織が形成されるのみである。また、仮に、三次元網状構造が形成されたとしても、所定領域にわたって所定網目間隙サイズ、所定網目間隙個数を得ることはできない。
界面組織の平均層厚が1nm未満では、下部層−上部層の密着性、密着強度が不十分であり、一方、平均層厚が10nmを超えると、三次元網状構造の網目間隙にAlが十分に充填されず、空隙が発生することにより、やはり、下部層−上部層の密着性、密着強度が不十分となることから、界面組織の平均層厚は1〜10nmと定めた。
また、この発明で、界面組織について、「走査型電子顕微鏡で観察した場合、単位断面積(10×10(μm))当り、Alが充填された直径10〜500nmの網目間隙が30箇所以上存在する」と規定したのは、直径10〜500nmの網目間隙がすぐれたアンカー効果を発揮する上で最適サイズであること、また、このようなサイズの網目間隙の存在箇所が30箇所未満であったような場合には、すぐれたアンカー効果を十分に発揮し得ないという理由による。
この発明の被覆工具は、下部層と上部層との界面に、特定構造(三次元網状構造)の界面組織が形成され、該界面組織の備える密着性、アンカー効果により、下部層と上部層間の層間密着強度・接合強度が向上し、その結果、高熱発生を伴うとともに、切刃に断続的に繰り返し衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合にも、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を発揮し、長期の使用に亘って、すぐれた耐摩耗性を示すとともに工具寿命の一層の延命化を可能とするものである。
(a)は、本発明被覆工具の硬質被覆層の下部層(中間層)と上部層(境界層)間に形成される特定構造の界面組織(三次元網状組織の網目間隙にAlが充填された界面組織)を示す模式図、(b)は、その部分拡大図である。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・SNMX310924に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・SNMX310924のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
ついで、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、
まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表4に示される目標層厚のTi化合物層を、下地層として蒸着し、
さらに、表3に示される条件にて、同じく表4に示される目標層厚のTiCN層、TiCNO層を中間層として蒸着し、下地層及び中間層からなる下部層を蒸着形成した。
次いで、上記の下部層の上に、表3に示される条件にて、表4に示される目標層厚のα型Al層からなる境界層を形成し、
さらに、表3に示される条件にて、表4に示される目標層厚のα型Al層からなる表面層を蒸着し、
境界層及び表面層からなる上部層を蒸着形成し、
硬質被覆層として、上記の下部層と上部層を蒸着形成した本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表3に示される条件にて、表5に示される目標層厚のTi化合物層を下部層として形成し、
ついで、上記の下部層の上に、表3に示される条件にて、表5に示される目標層厚のα型Al層を上部層として形成することにより、
硬質被覆層として、上記の下部層と上部層を蒸着形成した比較被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
(即ち、比較被覆工具1〜13では、本発明被覆工具1〜13で形成した中間層及び境界層の形成を行っていない点で、硬質被覆層の構造が異なっている。)
ついで、本発明被覆工具1〜13の硬質被覆層の下部層と上部層の界面組織(縦断面)について、走査型電子顕微鏡を用いてその組織状態を観察し、三次元網状組織の網目間隙の直径を測定するとともに、単位断面積(10×10(μm))当りのAlが充填されている直径10〜500nmの網目間隙の数を測定し、その値を表6に示した。
比較被覆工具1〜13については、下部層(Ti化合物層)と上部層(α型Al層)間の界面組織(縦断面)を走査型電子顕微鏡を用いてその組織状態を観察し、その観察結果を表6に示した。
また、本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13の硬質被覆層の各構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材: JIS・SNCM420の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒
切削速度: 375 m/min.、
切り込み: 2.4 mm、
送り: 0.25 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Aという)でのニッケルクロムモリブデン鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、200m/min.)、
被削材: JIS・FCD500の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒
切削速度: 375 m/min.、
切り込み: 2.5 mm、
送り: 0.37 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Bという)での鋳鉄の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、180m/min.)、
被削材: JIS・S30Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒
切削速度: 375 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.4 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Cという)での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、250m/min.)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表7に示した。
Figure 0005321094
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表4〜7に示される結果から、本発明被覆工具1〜13は、硬質被覆層の下部層と上部層との界面に、特定構造の界面組織(即ち、六方晶の結晶構造を有するTiの酸化物で構成された三次元網状構造の網目間隙にAlが充填された1〜10nmの平均層厚を有する界面組織であって、該界面組織の断面を走査型電子顕微鏡で観察した場合、単位断面積(10×10(μm))当り、Alが充填された直径10〜500nmの網目間隙が30箇所以上存在し、さらに、三次元網状構造を構成するTiの酸化物に隣接する下部層内には、立方晶の結晶構造を有するTiの炭窒化物、炭窒酸化物が存在する界面組織)が形成され、該界面組織の備える密着性、アンカー効果により、下部層と上部層間の層間密着強度・接合強度が向上し、その結果、高熱発生を伴い、かつ、切刃に断続的に繰り返し衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合にも、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を示す。
これに対して、硬質被覆層の下部層と上部層との界面に、特定構造の界面組織が形成されていない比較被覆工具1〜13においては、高熱発生を伴い、かつ、切刃に断続的に繰り返し衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工で、層間密着性、層間密着強度が十分でないため、チッピング、欠損、剥離が発生し、いずれも短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削は勿論のこと、高熱発生を伴うとともに、切刃に断続的に繰り返し衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工でも、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層として、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、及び、1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層からなる上部層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
    上部層と下部層の界面には、1〜10nmの平均層厚を有する三次元網状構造の界面組織が形成され、該界面組織の三次元網状構造の網目間隙には酸化アルミニウムが充填され、かつ、該界面組織の断面を走査型電子顕微鏡で観察した場合、単位断面積(10(μm)×10(μm))当り、酸化アルミニウムが充填された直径10〜500nmの網目間隙が30箇所以上存在することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 請求項1に記載の表面被覆切削工具において、
    上記界面組織の三次元網状構造は、六方晶の結晶構造を有するTiの酸化物で構成され、かつ、該Tiの酸化物に隣接する下部層内には、立方晶の結晶構造を有するTiの炭窒化物、炭窒酸化物が存在することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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