JP5930512B2 - 硬質被覆層が高速断続切削加工ですぐれた耐剥離性、耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層(以下、Al2O3層で示す)、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆工具が知られている。
そこで、被覆層の剥離、チッピングの発生を抑制することを目的として、硬質被覆層の層構造については各種の提案がなされている。
Ti化合物層からなる下部層とAl2O3層からなる上部層とを被覆形成した被覆工具において、下部層の最表面層直上のAl2O3結晶粒の結晶組織と結晶方位傾斜角度分布性を制御することで、上部層と下部層の付着強度を向上させ得るとともに、さらに、上部層全体のAl2O3結晶粒についての結晶方位傾斜角度分布性を制御することで、上部層全体の高温硬さと高温強度を維持することができるため、切刃に高負荷・衝撃的負荷が作用する高速断続切削に用いた場合でも、上部層と下部層間での剥離、チッピング等の異常損傷の発生が抑え、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する被覆工具を得られることを見出したのである。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、2〜15μmの平均層厚を有し、α型の結晶構造を有するAl2O3層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
(c)下部層の最表面層と上部層との界面における上部層のAl2O3結晶粒は、くさび形結晶組織を有し、該くさび形結晶組織の凹凸部の平均高低差が0.5〜2.0μm、凸部の平均間隔が1〜3μmであり、該くさび形結晶組織を有するAl2O3結晶粒について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子線後方散乱回折装置を用い、その断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{1−210}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に存在する度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の20〜40%の割合を占め、
(d)上部層全体のAl2O3結晶粒について、その断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{02−21}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に存在する度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記(c)のくさび形結晶組織は、平均粒径0.05〜1μmのAl2O3結晶粒の集合体によって構成されていることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
(a)Ti化合物層(下部層):
Ti化合物層(例えば、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層)は、基本的にはα型の結晶構造を有するAl2O3(以下、単に「Al2O3」で示す)層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体、Al2O3層のいずれにも密着し、硬質被覆層の工具基体に対する密着性を維持する作用を有するが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴う高速断続切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
この発明では、下部層の最表面層に、例えば、以下のような処理を施すことにより、下部層表面直上に形成される上部層のAl2O3結晶粒を、所定の結晶組織および方位形態(後記参照)になるよう蒸着することができる。
即ち、まず、通常の化学蒸着装置を使用して、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなる種々のTi化合物層を蒸着形成した後、予備酸化処理条件として、
反応ガス組成(容量%):CO 5〜10%、CO2 5〜10%、残部H2、
雰囲気温度:900〜960 ℃、
雰囲気圧力:3〜10 kPa、
時間:2〜5min、
という条件でCOとCO2混合ガスによる予備酸化処理を行うことによって、次のAl2O3層成膜工程におけるAl2O3核生成に際し、所定の結晶組織および所定方位のAl2O3核を分散形成せしめることができる。
上記(b)で成膜した下部層の表面に、例えば、初期成長条件として、
反応ガス組成(容量%):AlCl3 1〜3%、CO2 11〜15%、HCl 0.5〜2.0%、H2S 0.05〜0.2%、残部H2、
反応雰囲気温度:1000〜1040 ℃、
反応雰囲気圧力:3〜10 kPa、
時間:5〜30 min、
の条件でAl2O3を蒸着することにより、下部層の最表面層直上に、所定の結晶組織(平均粒径が0.05〜1μmのAl2O3結晶粒の集合体からなるくさび形結晶組織)および所定の方位形態(工具基体の表面の法線に対して、{1−210}面の法線がなす傾斜角が0〜10度の範囲内にある結晶粒の度数割合が20〜40%)を有するAl2O3核を分散形成することができる。
以下にくさび型結晶組織について説明する。下部層の最表面層直上に成長した{1−210}面の法線がなす傾斜角が0〜10度の範囲内にあるAl2O3結晶粒において、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における{1−210}面の法線同士の交わる角度を求め、角度差が20度未満の範囲にある場合は、互いがくさび型結晶構造をなしており、角度差が20度以上の場合、その結晶粒界がくさび型結晶組織と後述する上部層Al2O3結晶粒を分ける箇所となる。また、そのくさび型結晶組織がAl2O3皮膜の再表面に露出することはない。
このようなくさび形結晶組織が形成される理由は、下部層のTi化合物の最表面層(特にTiCNO層やTiCO層)上にAl2O3結晶粒が成長する際に、成長初期ではTi化合物の最表面層の格子面とエピタキシャル関係を保ちながら成長するが、Al2O3層の膜厚が厚くなるに従って、Ti化合物の最表面層の格子面や結晶組織の影響が小さくなり、最終的に凹凸を有したくさび型形状が形成されるためと推察される。
そして、平均粒径0.05〜1μmのAl2O3結晶粒の集合体によりくさび形結晶組織を構成するAl2O3結晶粒の平均粒径が0.05μm未満である場合には、下部層直上Ti化合物表面の凹凸に対する充填性が悪くなるため、下部層直上Ti化合物とAl2O3層間の付着強度が低下し、一方、Al2O3結晶粒の平均粒径が1μmを超える場合には、その上層に成長するAl2O3結晶の粒径が大きくなり、耐チッピング性が低下するとともに、くさび形結晶組織を構成するAl2O3結晶粒とその上部層のAl2O3層の界面にポアが形成されやすくなり、そのため上部層の硬さ、強度が低下するともに、上部層と中間層との付着強度が低下するため、くさび形結晶組織を構成するAl2O3結晶粒の平均粒径は、0.05〜1μmの範囲内であることが望ましい。
また、この発明でいうくさび形結晶組織とは、図1に示すように、種々の粒径を持つAl2O3結晶粒の集合体により形成されるものであり、くさび形結晶組織全体としては膜厚方向に凹凸を有した構造と定義される。
凹凸部の平均高低差(図1におけるb)は0.5〜2.0μmの範囲であることが必要であり、0.5μm未満である場合は、くさび形結晶組織を構成するAl2O3結晶粒とその上部層のAl2O3層の界面の接触する表面積の増大が見込めず、また平均高低差が2.0μmを超える場合には、その上層に成長するAl2O3層の方位形態が所望のものとならなくなるため、凹凸部の平均高低差は0.5〜2.0μmとした。
凸部の平均間隔(図1におけるa)は1〜3μmの範囲であることが必要であり、1μm以下である場合は、くさび形結晶組織の凹部とその上部に成長するAl2O3層の界面にポアが形成しやすくなり、また凸部の平均間隔が3μm以上である場合には、くさび形結晶組織を構成するAl2O3結晶粒とその上部層のAl2O3層の界面の接触する表面積の増大が見込めないため、凸部の平均間隔を1〜3μmとした。
本願発明では、下部層の最表面層直上(上部層と下部層の界面直上)に上記のくさび形結晶組織が形成されることによって、くさび形結晶組織を構成するAl2O3結晶粒とその上部層のAl2O3層の界面の接触する表面積が増大することから、上部層と下部層間の密着性向上が図られる。
上記界面方位形態を有するAl2O3結晶粒の度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数合計の20%未満であると、上部層Al2O3結晶粒の縦長柱状組織が層厚方向に対して、傾斜した状態で形成され、微細な縦長柱状結晶粒でなくなり、上部層全体としての所望の方位形態が得られなくなる。一方、上記界面方位形態を有するAl2O3結晶粒の度数の合計割合が40%を超えると、上部層全体のAl2O3結晶粒が所望の方位形態を示さなくなるため、上部層Al2O3の高温強度が低下する。
したがって、上部層と下部層との界面直上における上部層のAl2O3結晶粒について、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、上記界面方位形態を有するAl2O3結晶粒の度数割合を20〜40%と定めた。
図2に、下部層と上部層の界面直上のAl2O3結晶粒について測定したAl2O3結晶粒の傾斜角度数分布グラフの一例を示す。なお、界面方位形態Al2O3結晶粒とは、下部層の最表面層直上に形成したAl2O3結晶粒の集合体である。
下部層の最表面層直上に上記(c)のAl2O3核を蒸着形成した後、上部層のAl2O3結晶粒を以下の条件で形成する。
即ち、上記(c)でAl2O3核を蒸着形成した後、
反応ガス組成(容量%):AlCl3 1〜3%、CO2 11〜15%、HCl 1〜3%、H2S 0.05〜0.2%、残部H2、
反応雰囲気温度:1000〜1040 ℃、
反応雰囲気圧力:3〜10 kPa、
時間:(目標とする上部層層厚になるまで)
という条件で蒸着することにより、層厚方向とほぼ平行に成長した微細な縦長柱状Al2O3結晶粒で構成された上部層が成膜される。
また、CO2、H2Sのガス比CO2/H2Sの値(但し、容量比)が小さいとTi化合物上へのAl2O3層初期核形成が不十分となり、その結果上部層のAl2O3層が所望の{02−21}方位傾斜角度分布を有することができなくなり、一方、CO2/H2Sの値が大きいとTi化合物上へのAl2O3層初期核サイトが粗大になり、その結果上部層のAl2O3層の粒径が粗粒になり、耐チッピング性が低下する。
そして、{02−21}方位形態を示すAl2O3結晶粒の度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数合計の50%以上を占める場合に、上部層Al2O3の高温硬さ、高温強度が維持されることから、本発明では、上部層の{02−21}方位形態を示すAl2O3結晶粒の度数の合計割合を、50%以上と定めた。
図3に、上部層全体について測定したAl2O3結晶粒の傾斜角度数分布グラフの一例を示す。
なお、上部層全体の層厚が、2μm未満であると長期の使用にわたってすぐれた高温強度および高温硬さを発揮することができず、一方、15μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、上部層の層厚は2〜15μmと定めた。
(a)まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表6,7に示される目標層厚のTi化合物層を蒸着形成した。
(b)ついで、表4に示される条件にて、下部層の最表面のTi化合物層にCOとCO2混合ガスによる予備酸化処理を行い、
(c)ついで、上記(b)の処理を施したTi化合物層の表面に、表5に示される二段階の条件にて、上部層のAl2O3層を表6に示される目標層厚で形成することにより、
本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
すなわち、上記の本発明被覆工具1〜13、比較被覆工具1〜13の下部層と上部層との界面から上部層の深さ方向へ0.3μm、また、工具基体表面と平行方向に50μmの断面研磨面の測定範囲(0.3μm×50μm)を、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電界放出型走査電子顕微鏡と電子線後方散乱回折像装置を用い、下部層の最表面層から膜厚方向1μm以内のAl2O3結晶粒について、0.3×50μmの測定領域を0.1μm/stepの間隔で、工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{1−210}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表し、測定傾斜角が0〜10度である結晶粒(界面方位形態を示すAl2O3結晶粒)の度数の合計割合を測定することによって求めた。
表6、表7にこれらの値を示す。
また、図2に、本発明被覆工具1について、下部層と上部層の界面直上について測定したAl2O3結晶粒の傾斜角度数分布グラフを示す。
なお、ここでいう「上部層全体」とは、下部層と上部層との界面から上部層最表面までの測定範囲をいい、界面直上の界面方位形態を示すAl2O3結晶粒の測定範囲も含む。
表6、表7にこれらの値を示す。
また、図3に、本発明被覆工具1の上部層全体について測定したAl2O3結晶粒の傾斜角度数分布グラフを示す。
また、下部層Ti化合物層直上のAl2O3結晶粒について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子線後方散乱回折装置を用い、前記と同様、その断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射することで、くさび形結晶組織の凸部の平均間隔、凹凸部の平均高低差、くさび形結晶組織を構成するAl2O3結晶粒の平均粒径を算出した。
くさび形結晶組織の凸部の平均間隔は図1のa部に示すように、本発明で述べた、くさび型結晶組織の隣あう凸部間の距離を測定し、5点測定の平均値を凸部の平均間隔とした。くさび形結晶組織の凹凸部の平均高低差は図1のb部に示すように、本発明で述べた、結晶群の凹部と一つ隣の凸部の距離を測定し、5点測定の平均値を凹凸部の平均高低差とした。くさび形結晶組織を構成するAl2O3結晶粒の平均粒径は、下部層Ti化合物層直上の{1−210}配向Al2O3結晶粒における横方向の線分測定点10箇所の測定値の平均から、くさび形結晶組織を構成するAl2O3結晶粒の横方向平均粒径を求めた。
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔8本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:1.8mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の湿式高速断続切削試験(通常の切削速度は、200m/min)、
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔8本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:2.0mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Bという)での炭素鋼の湿式高速断続切削試験(通常の切削速度は、200m/min)、
被削材:JIS・FCD450の長さ方向等間隔8本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.35mm/rev、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Cという)でのダグタイル鋳鉄の湿式高速断続切削試験(通常の切削速度は250m/min)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
表8にこの測定結果を示した。
これに対して、比較被覆工具1〜13では、高速断続切削加工においては、硬質被覆層の剥離発生、チッピング発生により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
Claims (2)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、2〜15μmの平均層厚を有し、α型の結晶構造を有するAl2O3層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
(c)下部層の最表面層と上部層との界面における上部層のAl2O3結晶粒は、くさび形結晶組織を有し、該くさび形結晶組織の凹凸部の平均高低差が0.5〜2.0μm、凸部の平均間隔が1〜3μmであり、該くさび形結晶組織を有するAl2O3結晶粒について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子線後方散乱回折装置を用い、その断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{1−210}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に存在する度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の20〜40%の割合を占め、
(d)上部層全体のAl2O3結晶粒について、その断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記工具基体の表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{02−21}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで表わした場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に存在する度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 上記(c)のくさび形結晶組織は、平均粒径0.05〜1μmのAl2O3結晶粒の集合体によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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