JP5477767B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、例えば、鋼や鋳鉄の切削加工を、高い発熱を伴うとともに、切刃に対して高負荷が作用する高速重切削条件で行った場合でも、硬質被覆層がチッピングを発生することなく、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有するα型Al23層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆工具が知られている。
また、特許文献1に示すように、上記のような被覆工具において、α型Al23層の層厚に応じて結晶粒の粒径を規定するとともに、集合組織を形成することにより、耐摩耗性と靭性を改善した被覆工具も知られている。
さらに、特許文献2に示すように、上記従来被覆工具の上部層(b)の代わりに、B(ボロン)を少量含有するB含有α型Al23層で構成した被覆工具も知られており、そして、このB含有α型Al23層を被覆した被覆工具は、付着強度および耐摩耗性が向上することが知られている。
特表平9−507528号公報 特公昭61−54114号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高能率化する傾向にあるが、上記特許文献1,2に示される被覆工具においては、これを低合金鋼や炭素鋼などの一般鋼、さらにねずみ鋳鉄などの普通鋳鉄の高速切削加工等に用いた場合には特に問題は生じないが、特にこれを、高熱発生を伴うとともに切刃に高負荷が作用する鋼や鋳鉄の高速重切削加工に用いた場合には、前記従来のα型Al23層、B含有α型Al23層は、高温強度が十分でないため、チッピング、欠損等を発生しやすく、これを原因として、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、高熱発生を伴い、かつ、切刃に対して高負荷が作用する鋼や鋳鉄の高速連続・断続重切削加工に用いた場合にも、すぐれた耐チッピング性を備え、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する被覆工具を開発すべく、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
従来、α型Al23層は、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層の表面に、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成(容量%):
AlCl3:2〜6%、
CO2:3〜9%、
HCl:2〜6%、
2S:0.1〜0.3%、
2:残り、
反応雰囲気温度:990〜1010℃、
反応雰囲気圧力:3〜5kPa、
という条件(以下、通常条件という)で蒸着形成することができるが、
上記α型Al23層の成膜過程において、反応ガス中にBCl成分を添加し、
反応ガス組成(容量%):
AlCl3:2〜6%、
BCl:0.05〜1%、
CO2:3〜9%、
HCl:2〜6%、
2S:0.2〜1%、
2:残り、
反応雰囲気温度:960〜1000℃、
反応雰囲気圧力:5〜8kPa、
という条件(以下、改質条件という)に変更して蒸着を継続すると、
通常のα型Al23層からなる中間層の上に、α型Al23主体層(具体的には、微量のBを含有するα型Al23主体層)からなる上部層とが蒸着形成されることを本発明者等は見出した。
そして、上記通常条件で形成したα型Al23層からなる中間層と、上記改質条件で形成したα型Al23主体層からなる上部層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶格子面のそれぞれの法線が基体表面の法線と交わる角度を測定し、
この測定結果から、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出し、その角度差が5°以上である隣接する結晶格子相互の界面を粒界として結晶粒を特定した場合に、
上記α型Al23層からなる中間層の結晶粒の平均幅D(b)と、上記α型Al23主体層からなる上部層の結晶粒の平均幅D(c)との比の値を測定したところ、D(c)/D(b)は1.5以上であることを確認した。
さらに、上記D(c)/D(b)≧1.5を満足する結晶粒平均幅を備えた中間層と上部層は、すぐれた高温強度を備えるものであるから、工具基体表面に、Ti化合物層からなる下部層、通常条件で形成したα型Al23層からなる中間層および改質条件で形成したα型Al23主体層からなる上部層を硬質被覆層として蒸着形成した被覆工具は、高熱発生を伴い、かつ、切刃に対して高負荷が作用する高速重切削に用いた場合にも、チッピング、欠損等を発生することなく、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)中間層が、1〜5μmの平均層厚を有し、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層、
(c)上部層が、2〜15μmの平均層厚を有し、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、0.01〜0.1原子%のボロンを含有する(但し、ボロン含有量は、アルミニウムとボロンと酸素の合量に対するボロンの原子%)ボロン含有酸化アルミニウム層
上記(a)〜(c)からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
上記(b)の中間層及び上記(c)の上部層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶格子面のそれぞれの法線が基体表面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出し、その角度差が5°以上である隣接する結晶格子相互の界面を粒界として結晶粒を特定した場合に、
上記(b)の中間層の結晶粒の平均幅D(b)と、上記(c)の上部層の結晶粒の平均幅D(c)との比の値D(c)/D(b)が1.5以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆工具の硬質被覆層の構成層について、より詳細に説明する。
(a)Ti化合物層(下部層)
Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層は、基本的には中間層である通常条件で形成したα型Al23層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた靭性及び耐摩耗性によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体と中間層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上にも寄与する作用を有するが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生下で切刃に高負荷が作用する高速重切削条件ではチッピングを起し易くなり、これが異常摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)α型Al23層(中間層)
化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有するα型Al23層からなる中間層は、既に述べたように、
通常の化学蒸着装置を用い、
反応ガス組成(容量%):
AlCl3:2〜6%、
CO2:3〜9%、
HCl:2〜6%、
2S:0.1〜0.3%、
2:残り、
反応雰囲気温度:990〜1010℃、
反応雰囲気圧力:3〜5kPa、
という通常条件で蒸着することによって形成すればよい。
中間層のα型Al23層は、すでによく知られているように、すぐれた高温硬さと耐熱性を備え、被覆工具の耐摩耗性を向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満ではα型Al23層の有する前記の特性を硬質被覆層に十分に具備せしめることができず、一方、その平均層厚が5μmを越えると、切削時に発生する高熱と切刃に作用する高負荷によって、異常摩耗の原因となるチッピングが発生し易くなると同時に、摩耗が加速するようになるから中間層の平均層厚は1〜5μmと定めた。なお、次に述べるように、中間層の上に、改質条件で形成したα型Al23主体層からなる上部層を蒸着形成することによって、高温強度に優れたAl23層が中間層α型Al23では不十分であった高温強度を補い、チッピング、欠損等の発生の恐れもなく一段と切削性能、工具寿命を高めることができる。
(c)改質条件で形成されたα型Al23主体層(上部層)
中間層の上に形成される、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム主体層からなる上部層は、例えば、中間層を形成するためのα型Al23の皮膜生成反応ガス中に、B(ボロン)成分を微量添加して、
反応ガス組成(容量%):
AlCl3:2〜6%、
BCl:0.05〜1%、
CO2:3〜9%、
HCl:2〜6%、
2S:0.2〜1%、
2:残り、
反応雰囲気温度:960〜1000℃、
反応雰囲気圧力:5〜8kPa、
という改質条件で成膜を行うことによって、皮膜構成成分として微量のB(ボロン)を含有すると同時に、結晶粒の平均幅が、中間層の結晶粒の平均幅と所定の関係を満足するα型Al23主体層として形成される。
上部層であるα型Al23主体層におけるB(ボロン)成分含有量についていえば、例えば、反応ガス組成中のBCl添加量が0.05容積%未満であるような場合には、上部層のα型Al23主体層中のB(ボロン)含有量は0.01原子%未満となり、α型Al23主体層の結晶粒の平均幅D(c)と、中間層であるα型Al23層の結晶粒の平均幅D(b)との比D(c)/D(b)が1.5未満となってしまう。これでは、上部層の十分な高温強度の確保はできない。
この理由としては、上部層であるα型Al23主体層を成膜する際、反応ガス組成中のBCl添加量が0.05容積%未満であるような場合には、工具基体表面と平行な方向への結晶粒の成長が促進されず、α型Al23主体層の結晶粒の平均幅D(c)が、D(c)/D(b)≧1.5を満足するほどには大きな値とならないことによるものである。
D(c)/D(b)≧1.5であると、結果的にAl23層の粒界長が減少し、それによって切削時のクラック進展のため粒界(道程)自体が減るために高温強度が高くなったと推定される。
したがって、α型Al23主体層中のB(ボロン)含有量は0.01原子%以上であることが必要である。
一方、反応ガス組成中のBCl添加量が1容積%を超えるような条件で成膜した場合には、上部層のα型Al23主体層中のB(ボロン)は0.1原子%を超える含有量となるが、この場合、α型Al23主体層中にはB(ボロン)の酸化物、B(ボロン)の酸塩化物等のB(ボロン)化合物が生成し、これらのB(ボロン)化合物の生成によって、工具基体表面と平行な方向への結晶粒の成長が抑制され、また、結晶粒間に存在するB(ボロン)化合物によって粒界強度が低下し、その結果、切削性能が低下するようになることから、α型Al23主体層中のB(ボロン)含有量は0.1原子%以下であることが必要である。
なお、本発明でいうB(ボロン)含有量(原子%)とは、層中におけるAl、B(ボロン)および酸素の合計量に対するB(ボロン)含有割合、
即ち、B(ボロン)含有量(原子%)=B/(Al+B+O)×100
である。
ここで、中間層、上部層の結晶粒の平均幅の測定方法を以下に述べる。
図1に、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置により、中間層、上部層のAl23結晶粒を特定した模式図を示す。
図1のα型Al23主体層からなる上部層(図1中では、B含有Al23で示す)の断面において、上部層の平均層厚の1/2の層の深さ方向位置を結ぶように直線を引き、B含有Al23結晶粒の粒界と該直線とが交差した点相互間の距離をB含有Al23の粒径とし、複数箇所において該粒径を測定し、測定した複数の粒径を平均して求めた平均値をB含有Al23結晶粒(上部層の結晶粒)の平均幅D(c)とする。
同様に、α型Al23層からなる中間層(図1中では、Al23で示す)についても、中間層の平均層厚の1/2の層の深さ方向位置を結ぶ直線と、Al23結晶粒の粒界との交差した点相互間の距離をAl23の粒径とし、複数箇所において測定した粒径を平均して求めた平均値をAl23結晶粒(中間層の結晶粒)の平均幅D(b)とする。
上記で求めたD(c)、D(b)の値から、本発明で規定するD(c)とD(b)の比の値D(c)/D(b)を求めることができる。
なお、B含有Al23結晶粒の粒界およびAl23結晶粒の粒界は、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶格子面のそれぞれの法線が基体表面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出し、その角度差が5°以上である隣接する結晶格子相互の界面を、それぞれの粒界と定義する。
上記のとおり、この発明の被覆工具は、Ti化合物層からなる下部層、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有するα型Al23層からなる中間層、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有するα型Al23主体層からなる上部層を形成し、例えば、上部層成分として0.01〜0.1原子%のB(ボロン)を含有させることにより、中間層の結晶粒の平均幅D(b)と、上部層の結晶粒の平均幅D(c)との比の値D(c)/D(b)を1.5以上とした硬質被覆層を形成することにより、高熱発生を伴うとともに、切刃に高負荷が作用する高速重切削加工においても、硬質被覆層の高温強度が向上し、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性等を備え、また、硬質被覆層の厚膜化も可能になり、その結果、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮し、使用寿命の一層の延命化も可能となる。
本発明被覆工具の硬質被覆層の中間層のAl23結晶粒および上部層のAl23結晶粒を、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置により特定した模式図である。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも2〜4μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Eをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜eを形成した。
ついで、これらの工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、
(a)まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表6に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(b)ついで、同じく表3に示される通常条件にて、表7に示される目標層厚のα型Al23層を硬質被覆層の中間層として蒸着形成し、
(c)次に、表4に示される改質蒸着条件により、同じく表7に示される目標層厚のα型Al23主体層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜15をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、硬質被覆層の下部層を表3に示される条件にて形成し、上部層を同じく表3に示される通常条件で形成し、表8に示される目標層厚のTi化合物層と通常のα型Al23層からなる硬質被覆層を設けた比較被覆工具1〜10をそれぞれ製造した。
即ち、比較被覆工具1〜10では、本発明でいう上部層(改質蒸着条件で形成されたα型Al23主体層)は存在しない。
なお、比較被覆工具1〜10の工具基体種別、下部層種別及び下部層厚は、それぞれ、本発明被覆工具1〜10のそれと同じである。
さらに、参考のために、硬質被覆層の下部層を表3に示される条件にて形成し、この上に、表5に示される蒸着条件により、従来のBを含有する従来α型Al23主体層を形成することにより、表8に示される目標層厚のTi化合物層とα型Al23主体層のみからなる硬質被覆層を設けた参考被覆工具11〜15をそれぞれ製造した。
即ち、参考被覆工具11〜15では、本発明でいう中間層(通常条件で形成されたα型Al23層)は存在しない。
なお、参考被覆工具11〜15の工具基体種別、下部層種別及び下部層厚は、それぞれ、本発明被覆工具11〜15のそれと同じである。
ついで、上記の本発明被覆工具1〜15の硬質被覆層の中間層を構成するα型Al23層、同上部層を構成するα型Al23主体層、および、比較被覆工具1〜10の通常条件で形成されたα型Al23層、参考被覆工具11〜15の従来B含有Al23の蒸着条件で形成された従来α型Al23主体層について、電界放出型走査電子顕微鏡、電子後方散乱回折像装置を用いて、それぞれの層の結晶粒の粒界および結晶粒を特定し、各結晶粒の平均幅を求めた。本発明被覆工具1〜15については、中間層の結晶粒の平均幅D(b)、上部層の結晶粒の平均幅D(c)を求めるとともに、その比の値D(c)/(b)を算出した。
これらを、それぞれ、表7、表8に示す。
具体的な粒界の特定法および結晶粒の特定法は、次のとおりである。
本発明被覆工具1〜15、比較被覆工具1〜10、参考被覆工具11〜15の各層について、それぞれの断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、六方晶結晶格子からなる結晶格子面のそれぞれの法線が基体表面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出し、その角度差が5°以上である隣接する結晶格子相互の界面を粒界として特定し、また、結晶粒を特定した。
ついで、本発明被覆工具1〜15、比較被覆工具1〜10および参考被覆工具11〜15の硬質被覆層の各構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したが、いずれもの場合も、目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
Figure 0005477767
Figure 0005477767
Figure 0005477767
Figure 0005477767
Figure 0005477767
Figure 0005477767
Figure 0005477767
Figure 0005477767
つぎに、上記の本発明被覆工具1〜15、比較被覆工具1〜10および参考被覆工具11〜15について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM435の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:310 m/min.、
切り込み:2.5 mm、
送り:0.50 mm/rev.、
切削時間:5 分、
の条件(切削条件Aという)でのクロムモリブデン鋼の乾式高速重断続切削試験(通常の切削速度、切り込み、送りは、それぞれ、170m/min.、2mm、0.4mm/rev.)、
被削材:JIS・S25Cの丸棒、
切削速度:310 m/min.、
切り込み:2.5 mm、
送り:0.50 mm/rev.、
切削時間:5 分、
の条件(切削条件Bという)での炭素鋼の乾式高速重切削試験(通常の切削速度、切り込み、送りは、それぞれ、170m/min.、2mm、0.4mm/rev.)、
被削材:JIS・FC300の丸棒、
切削速度:415 m/min.、
切り込み:2.5 mm、
送り:0.50 mm/rev.、
切削時間:5 分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式高速重切削試験(通常の切削速度、切り込み、送りは、それぞれ、170m/min.、2mm、0.4mm/rev.)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表8に示した。
Figure 0005477767
表6〜9に示される結果から、本発明被覆工具1〜15は、Ti化合物層からなる下部層、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有するα型Al23層からなる中間層、その成分として微量のB(ボロン)を含有し、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有するα型Al23主体層からなる上部層を形成し、しかも、D(c)/D(b)の値を1.5以上としていることにより、高熱発生を伴い、かつ、切刃に対して高負荷が作用する高速重切削加工で、硬質被覆層が一段とすぐれた耐チッピング性を発揮するとともに、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を示し、使用寿命の一層の延命化が可能となっている。
これに対して、硬質被覆層がTi化合物層と通常のα型Al23層のみからなる比較被覆工具1〜10、および、硬質被覆層がTi化合物層と微量のB(ボロン)を含有する従来のα型Al23主体層のみからなる参考被覆工具11〜15においては、チッピング発生、摩耗促進等によって、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常条件の切削加工は勿論のこと、高熱発生を伴うとともに切刃に対して高負荷が作用する高速重切削加工でも、付着強度が高く、チッピングの発生を抑えることができ、さらに、硬質被覆層の厚膜化も可能となるため、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するとともに、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の
    表面に、
    (a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層
    、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20
    μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)中間層が、1〜5μmの平均層厚を有し、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有
    する酸化アルミニウム層、
    (c)上部層が、2〜15μmの平均層厚を有し、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を
    し、0.01〜0.1原子%のボロンを含有する(但し、ボロン含有量は、アルミニウムとボロンと酸素の合量に対するボロンの原子%)ボロン含有酸化アルミニウム層
    上記(a)〜(c)からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
    上記(b)の中間層及び上記(c)の上部層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電
    子後方散乱回折像装置を用い、断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を
    照射して、六方晶結晶格子からなる結晶格子面のそれぞれの法線が基体表面の法線と交わ
    る角度を測定し、この測定結果から、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出し、そ
    の角度差が5°以上である隣接する結晶格子相互の界面を粒界として結晶粒を特定した場
    合に、
    上記(b)の中間層の結晶粒の平均幅D(b)と、上記(c)の上部層の結晶粒の平均
    幅D(c)との比の値D(c)/D(b)が1.5以上であることを特徴とする表面被覆
    切削工具。
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