JP4720418B2 - 難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents

難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、硬質被覆層がすぐれた潤滑性を有し、したがって特に軟鋼やステンレス鋼、さらに高マンガン鋼などの粘性の高い難削材の高い発熱を伴う高速切削加工に用いた場合にも、切削時に切粉が切刃部に溶着することなく、すぐれた耐チッピング性を長期に亘って発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層として、炭化チタン(以下、TiCで示す)層、窒化チタン(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)層、炭酸化チタン(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化チタン(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム(以下、α型Al23層という)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を、化学蒸着装置で蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることは良く知られている。
また、上記の被覆サーメット工具において、これの硬質被覆層の構成層は、一般に粒状結晶組織を有し、さらに、下部層であるTi化合物層を構成するTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
特開平6−31503号公報 特開平6−8010号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを炭素鋼や低合金鋼、さらに普通鋳鉄などの切削を高速切削加工条件で行うのに用いた場合には、通常の切削性能を示し問題はないが、特に軟鋼やステンレス鋼、さらに高マンガン鋼などの粘性の高い難削材などの切削加工を、高熱発生を伴なう高速切削加工条件で行うのに用いた場合には、特に硬質被覆層の潤滑性不足が原因で、切粉が切刃部に溶着し易くなり、これが原因でチッピング(微少欠け)が発生し、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に上記粘性の高い難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具を開発すべく、上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層に着目し、研究を行った結果、
(a)従来、一般に、酸化クロム(以下、Crで示す)層(以下、従来Cr層という)は、通常の化学蒸着装置で、
反応ガス組成:容量%で、CrCl:2〜4%、CO:4.5〜7%、HCl:2.5〜5%、H:残り、
反応雰囲気温度:950〜1020℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で形成され、かつ、格子点にCrおよび酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造、すなわち図1にCrの単位格子の原子配列が模式図[(a)は斜視図、(b)は横断面1〜9の平面図]で示される結晶構造を有する結晶粒で構成されるが、黒鉛質材料と同等に潤滑性を有するものの、脆い材料であるために、被覆サーメット工具の硬質被覆層の表面層として適用し、高速切削加工に用いた場合、摩耗進行がきわめて速く、実用に供し得ないこと。
(b)一方、Cr層を、同じく通常の化学蒸着装置で、
反応ガス組成:容量%で、CrCl:2〜4%、CO:4.5〜7%、HCl:2.5〜5%、H:残り、
反応雰囲気温度:1040〜1080℃、
反応雰囲気圧力:3〜5kPa、
の条件、すなわち反応雰囲気温度および圧力を相対的に高温および低圧の条件で形成すると、この結果のCr23層(以下、改質Cr23層という)は、上記従来Cr23層のもつ結晶構造と同じコランダム型六方最密晶の結晶構造を有すると共に、これの具備する潤滑性と同等のすぐれた潤滑性を有し、さらに、一段と高温強度の向上したものになっており、したがって、これを上記の硬質被覆層の表面層として蒸着形成してなる被覆サーメット工具は、上記の粘性の高い難削材の高い高熱発生を伴う高速切削加工でも、切刃部に切粉が溶着することがなく、この結果チッピングの発生なく、さらに具備するすぐれた高温強度によって摩耗進行が著しく抑制された状態を維持するので、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになること。
(c)上記(a)の従来Cr層と上記(b)の改質Crで層について、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図2(a),(b)に概略説明図で例示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角[図2(a)には前記結晶面の傾斜角が0度の場合、同(b)には傾斜角が45度の場合を示しているが、これらの角度を含めて前記結晶粒個々のすべての傾斜角]を測定し、この場合前記結晶粒は、上記の通り格子点にCrおよび酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現し、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフを作成した場合(この場合前記の結果から、Σ5、Σ9、Σ15、Σ25、およびΣ27の構成原子共有格子点形態は存在しないことになる)、上記従来Cr23層は、図5に例示される通り、Σ3の分布割合が30%以下の相対的に低い構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、前記改質Cr23層は、図4に例示される通り、Σ3の分布割合が60%以上のきわめて高い構成原子共有格子点分布グラフを示し、この高いΣ3の分布割合は、前記改質Cr23層の形成条件を変化させることにより変化すること。
なお、上記の改質Cr23層および従来Cr23層において、相互に隣接する結晶粒の界面における構成原子共有格子点形態のうちのΣ3、Σ7、およびΣ11の単位形態を模式図で例示すると図3(a)〜(c)に示される通りとなる。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有するα型Al23層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、被覆サーメット工具において、
上記硬質被覆層の表面層として、2〜5μmの平均層厚を有すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にCrおよび酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が60%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示す改質Cr23層、
を蒸着形成してなる、難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層において、上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)下部層のTi化合物層
Ti化合物層は、α型Al23層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体とα型Al23層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性を向上させる作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)上部層のα型Al23
α型Al23層は、Al23自体のもつすぐれた高温硬さと耐熱性によって、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、所望のすぐれた耐摩耗性を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
(c)表面層の改質Cr23
改質Cr23層の成原子共有格子点分布グラフにおけるΣ3の分布割合は、上記の通り、その形成条件を調整することにより60%以上とすることができるが、この場合Σ3の分布割合が60%未満では、特に粘性の高い難削材の高速切削加工で、摩耗進行を抑制し、長期に亘って潤滑性を保持するに十分な高温強度を確保することができず、この結果比較的早期に摩滅し、硬質被覆層にチッピングが発生し、これが原因で使用寿命に至るようになることから、Σ3の分布割合を60%以上と定めたものであり、また、その平均層厚が2μm未満では、所望のすぐれた潤滑性を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が5μmを越えて厚くなりすぎると、チッピング発生の原因となることから、その平均層厚を2〜5μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて硬質被覆層の最表面層として蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明被覆サーメット工具は、特に軟鋼やステンレス鋼、さらに高マンガン鋼などの粘性の高い難削材の高い発熱を伴う高速切削加工に用いた場合にも、硬質被覆層の表面層を構成する改質Cr23層が、Cr23自身のもつすぐれた潤滑性に加えて、一段とすぐれた高温強度を具備することから、長期に亘ってすぐれた潤滑性を保持し、硬質被覆層の耐チッピング性向上に寄与し、使用寿命の一層の延命化を可能とするものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で18時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.04mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで18時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.04mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
ついで、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、それぞれ表6に示される目標層厚のTi化合物層とα型Al23層を、同じく表6に示される組み合わせで、硬質被覆層の下部層および上部層として蒸着形成し、ついで、表4に示される条件で、表6に示される目標層厚の改質Cr23層を同じく表6に示される組み合わせで、硬質被覆層の表面層として蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、改質Cr23層に代って、表5に示される条件で、表7に示される目標層厚の従来Cr23層を同じく表7に示される組み合わせで、硬質被覆層の表面層として蒸着形成する以外は同一の条件で比較被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆サーメット工具および比較被覆サーメット工具の硬質被覆層の表面層を構成する改質Cr23層および従来Cr23層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記構成原子共有格子点分布グラフは、上記のCr23層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記表面研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を求めることにより作成した。
この結果得られた各種のCr23層のの構成原子共有格子点分布グラフにおいて、ΣN+1全体(上記の結果からΣ3、Σ7、Σ11、Σ13、Σ17、Σ19、Σ21、Σ23、およびΣ29のそれぞれの分布割合の合計)に占めるΣ3の分布割合をそれぞれ表6,7にそれぞれ示した。
上記の各種のCr23層の構成原子共有格子点分布グラフにおいて、表6,7にそれぞれ示される通り、本発明被覆サーメット工具の改質Cr23層は、いずれもΣ3の占める分布割合が60%以上の構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、比較被覆サーメット工具の従来Cr23層は、いずれもΣ3の分布割合が30%以下の構成原子共有格子点分布グラフを示すものであった。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具3の硬質被覆層の表面層である改質Cr23層の構成原子共有格子点分布グラフ、図3は、比較被覆サーメット工具3の硬質被覆層の表面層である従来Cr23層の構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ示すものである。
また、この結果得られた本発明被覆サーメット工具1〜13および比較被覆サーメット工具1〜13の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および比較被覆サーメット工具1〜13各種の被覆サーメット工具について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SS490の丸棒、
切削速度:420m/min、
切り込み:3.5mm、
送り:0.25mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Aという)での軟鋼の乾式連続高速切削試験(通常の切削速度は250m/min)、
被削材:JIS・SUS310Sの長さ方向等間隔4本縦溝入丸棒、
切削速度:270m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.35mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Bという)でのステンレス鋼の乾式断続高速切削試験(通常の切削速度は130m/min)、さらに、
被削材:JIS・SMnC443の長さ方向等間隔4本縦溝入丸棒、
切削速度:320m/min、
切り込み:2.5mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Cという)での高マンガン鋼の乾式断続高速切削試験(通常の切削速度は180m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表8に示した。
Figure 0004720418
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表6〜8に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、いずれも硬質被覆層の表面層が、Σ3の分布割合が60%以上の構成原子共有格子点分布グラフを示す改質Cr23層で構成され、前記改質Cr23層は、すぐれた潤滑性と高温強度を有することから、上記の粘性の高い難削材の高い高熱発生を伴う高速切削加工でも、切刃部に切粉が溶着しないすぐれた潤滑性が長期に亘って持続され、この結果硬質被覆層のチッピング発生が防止され、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層の表面層が、Σ3の分布割合が30%以下の構成原子共有格子点分布グラフを示す従来Cr23層で構成された比較被覆サーメット工具1〜13においては、いずれも上記の高速切削加工では、表面層の従来Cr23層が、潤滑性を有するものの、高温強度不足が原因で、早期に摩滅し、前記従来Cr23層の存在しない状態で切削加工が行なわれるようになるので、切削加工開始後、短時間で硬質被覆層にチッピングが発生し、これが原因で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に粘性の高い難削材の高い高熱発生を伴う高速切削加工でも、すぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Cr23層を構成するコランダム型六方最密晶の単位格子の原子配列を示す模式図にして、(a)は斜視図、(b)は横断面1〜9の平面図である。 Cr23層における結晶粒の(0001)面および(10-10)面の傾斜角の測定態様を示す概略説明図である。 相互に隣接する結晶粒の界面における構成原子共有格子点形態の単位形態を示す模式図にして、(a)はΣ3、(b)はΣ7(c)はΣ11の単位形態をそれぞれ示す図である。 本発明被覆サーメット工具3の硬質被覆層の表面層を構成する改質Cr23層の構成原子共有格子点分布グラフである。 比較被覆サーメット工具3の硬質被覆層の表面層を構成する従来Cr23層の構成原子共有格子点分布グラフである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層として、炭化チタン層、窒化チタン層、炭窒化チタン層、炭酸化チタン層、および炭窒酸化チタン層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層、
    以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、表面被覆サーメット製切削工具において、
    上記硬質被覆層の表面層として、2〜5μmの平均層厚を有すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にCrおよび酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が60%以上である構成原子共有格子点分布グラフを示す改質酸化クロム層、
    を蒸着形成してなる、難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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