JP2009166194A - 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP2009166194A
JP2009166194A JP2008008659A JP2008008659A JP2009166194A JP 2009166194 A JP2009166194 A JP 2009166194A JP 2008008659 A JP2008008659 A JP 2008008659A JP 2008008659 A JP2008008659 A JP 2008008659A JP 2009166194 A JP2009166194 A JP 2009166194A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
crystal
modified
normal
plane
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008008659A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5170829B2 (ja
Inventor
Manyasu Nishiyama
満康 西山
Keiji Nakamura
惠滋 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2008008659A priority Critical patent/JP5170829B2/ja
Publication of JP2009166194A publication Critical patent/JP2009166194A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5170829B2 publication Critical patent/JP5170829B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

【課題】高速切削加工ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】工具基体の表面に、下部層として、密着性Ti化合物層と縦長成長結晶組織を有する改質Ti系炭窒化物層、上部層としてAl層からなる硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具において、前記改質Ti系炭窒化物層は、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線および{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちで、{112}面についての測定傾斜角および{111}面についての測定傾斜角が、前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にあるそれぞれの結晶粒子の総面積Aと総面積Bを求めた場合、A/Bが2〜9である結晶配向性を示す改質Ti系炭窒化物層である。
【選択図】 なし

Description

この発明は、特に鋼や鋳鉄などの、高熱発生を伴う高速切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆背削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、化学蒸着形成されたTiN層、TiCN層からなり、0.1〜1μmの平均層厚を有する第1密着層と、化学蒸着形成され、Zr含有量が0.3〜50質量%であり、かつ2.5〜15μmの平均層厚を有するTiとZrの炭窒化物(以下、従来TiZrCNで示す)層、
(b)中間層として、TiCO層、TiCNO層からなり、0.1〜1μmの平均層厚を有する第2密着層、
(c)上部層として、化学蒸着形成されたAl23層からなり、かつ1〜15μmの平均層厚を有する高温硬質層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具(以下、従来被覆工具という)が知られており、この被覆工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削加工で、すぐれた膜密着性と耐摩耗性を有することが知られている。
特開2001−11632号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、被覆工具の下部層は所定の高温強度、また、同上部層は所定の高温硬さおよび耐熱性を具備することから、これを通常の切削加工条件で用いた場合には特段の問題は生じないが、特にこれを、高熱発生を伴う高速切削加工に供した場合には、従来被覆工具の下部層を構成する従来TiZrCN層の耐摩耗性が十分でないため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来被覆工具を構成する硬質被覆層の耐摩耗性の向上をはかるべく、特に、従来TiZrCN層に着目し、研究を行った結果、以下の知見を得た。
(a)上記従来被覆工具の硬質被覆層の下部層を構成する従来TiZrCN層は、通常の化学蒸着装置で、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:0.3〜2.5%、ZrCl:0.3〜2.5%、CHCN:0.6〜5%、N:25〜45%、H:残り、
反応雰囲気温度:750〜980℃、
反応雰囲気圧力:2.7〜13.3kPa、
の条件で蒸着することにより形成されている。
そこで、上記従来TiZrCN層の形成条件を変更し、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:0.5〜5%、ZrCl:2〜3.5%、CHCN:2〜3.5%、N:10〜30%、H:残り、
の反応ガス雰囲気中で、
初期反応時(蒸着開始から30分間)には、
反応雰囲気温度:750〜850℃、
反応雰囲気圧力:2.5〜5kPa、
の比較的低温、低圧の雰囲気中で蒸着し、一方、
メイン反応時(蒸着開始から30分経過以降)には、
反応雰囲気温度:870〜1000℃、
反応雰囲気圧力:6〜15kPa、
の比較的高温、高圧の雰囲気中で蒸着し、
初期反応とメイン反応で反応雰囲気の温度と圧力を上記のように変化させてやると、
組成式:(Ti1−XZr)CN(ただし、原子比で、X:0.15〜0.3)を満足し、かつ、縦長成長結晶組織を有するTiとZrの炭窒化物(以下、改質TiZrCNで示す)層が蒸着形成され、そして、この改質TiZrCN層は、上記従来TiZrCN層に比して、すぐれた耐熱性とすぐれた高温強度を備える。
(b)上記の改質TiZrCN層は、上記従来TiZrCN層と同様に、格子点にTi、Zr、炭素(C)、および窒素(N)からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、この改質TiZrCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角(図1(a),(b)に概略図を示す)および{111}面の法線がなす傾斜角(図2(a),(b)に概略図を示す)を測定し、前記測定傾斜角のうちで、{112}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Aを測定し、また、{111}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Bを測定し、総面積Aと総面積Bの比の値A/Bを求めると、A/Bの値は2〜9を示し、この結果、改質TiZrCN層は、縦長成長結晶組織を有する{112}面配向のTiZrCN結晶粒中に、縦長成長結晶組織を有する{111}面配向のTiZrCN結晶粒が存在する結晶組織構造を呈する。
なお、前記従来TiZrCN層については、結晶粒の{112}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Aを測定し、{111}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Bを測定し、総面積Aと総面積Bの比の値A/Bを求めたところ、A/Bの値は2未満あるいは9を超えるものであった。
(c)硬質被覆層の下部層を密着性Ti化合物層と改質TiZrCN層、また、上部層をAl23層で構成した被覆工具は、これを、高熱発生を伴う高速切削加工に用いた場合にも、改質TiZrCN層がすぐれたと耐熱性とすぐれた高温強度を備えるため、熱塑性変形、偏摩耗を発生することなく、また、チッピング、欠損、剥離等を生じることもなく、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性と耐チッピング性を示すようになること。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、3〜20μmの合計平均層厚を有し、いずれも化学蒸着で形成された密着性Ti化合物層と改質Ti系炭窒化物(改質TiZrCN)層、
(b)上部層として、化学蒸着で形成された1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
(c)上記下部層の密着性Ti化合物層は、0.5〜5μmの合計平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、
(d)上記下部層の改質Ti系炭窒化物(改質TiZrCN)層は、2.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Ti1−XZr)CN
で表した場合、0.15≦X≦0.3(但し、原子比)を満足し、かつ、縦長成長結晶組織を有するTiとZrの複合炭窒化物層からなり、
さらに、上記改質Ti系炭窒化物(改質TiZrCN)層は、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線および{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちで、{112}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Aと、{111}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Bを求めた場合、A/Bが2〜9である結晶配向性を示す改質Ti系炭窒化物(改質TiZrCN)層であることを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆工具の硬質被覆層の構成層について、詳細に説明する。
(a)下部層の密着性Ti化合物層
Ti化合物層は、自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体と改質TiZrCN層のいずれに対しても強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、高熱発生を伴う高速切削加工では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)下部層の改質Ti系炭窒化物(改質TiZrCN)層
下部層の密着性Ti化合物層の上に、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:0.5〜5%、ZrCl:2〜3.5%、CHCN:2〜3.5%、N:10〜30%、H:残り、
の反応ガス雰囲気中で、
初期反応時(蒸着開始から30分間)には、
反応雰囲気温度:750〜850℃、
反応雰囲気圧力:2.5〜5kPa、
の比較的低温、低圧の雰囲気中で蒸着し、一方、
メイン反応時(蒸着開始から30分経過以降)には、
反応雰囲気温度:870〜1000℃、
反応雰囲気圧力:6〜15kPa、
の比較的高温、高圧の雰囲気中で蒸着すると、
組成式:(Ti1−XZr)CN
で表した場合、0.15≦X≦0.3(但し、原子比)を満足するZr成分を含有し、かつ、縦長成長結晶組織を有する改質TiZrCN層が蒸着形成される。
そして、上記改質TiZrCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、前記改質TiZrCN層の表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線および{111}面の法線がなす傾斜角を測定した場合、前記測定傾斜角のうちで、{112}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積をA、また、{111}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積をBとした場合、総面積Aと総面積Bの比の値A/Bが2〜9である結晶配向が形成される。
そして、改質TiZrCN層は、A/Bが2〜9である結晶配向を示す縦長成長結晶組織を有することにより、従来TiZrCN層に比して改質TiZrCN層の耐熱性と高温強度が一段と向上するため、高熱発生を伴う高速切削加工において、チッピング、欠損、剥離等を生じることもなく、すぐれた耐摩耗性と耐チッピング性を発揮する。
なお、上記A/Bの値を求めるための手順は、具体的には以下のとおりである。
まず、上記改質TiZrCN層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で走査し、まず、改質TiZrCN層であると認識したピクセル数γをカウントし、次に、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角のうちで、その値が0〜10度の範囲にある結晶粒子と認識したピクセル数αをカウントし、A=K×α/γ×100の式(但し、K=改質TiZrCN層の総面積/測定範囲内に存在する改質TiZrCN層の面積)から、{112}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Aの値を算出する。
同様にして、改質TiZrCN層であると認識したピクセル数γをカウントし、次に、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角のうちで、その値が0〜10度の範囲にある結晶粒子と認識したピクセル数βをカウントし、B=K×β/γ×100の式(但し、K=改質TiZrCN層の総面積/測定範囲内に存在する改質TiZrCN層の面積)から、{111}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Bの値を算出する。
上記のとおり算出した総面積A、Bの値から、A/Bを求めることができる。
改質TiZrCN層に含有されるZr成分について、その含有割合X(X=Zr/(Ti+Zr))の値(但し、原子比)が、0.15未満では、電界放出型走査電子顕微鏡による測定で、改質TiZrCN層に占める総面積Bの面積割合が小さくなり、一方、総面積Aの面積割合は60〜90%であるから、その結果、総面積比A/Bの値は9を超えてしまい、改質TiZrCN層の高温強度、耐熱性ともに不十分となる。
また、Zr成分の含有割合Xが、0.3を超えると、電界放出型走査電子顕微鏡による測定で、改質TiZrCN層に占める総面積Aの面積割合が60%未満となり、一方、総面積Bの面積割合は30%以上であるから、その結果、総面積比A/Bの値が2未満となってしまい、所望の高温強度と耐熱性が得られないので、Zrの含有割合を、0.15〜0.3に、また、総面積の比の値A/Bを、2〜9に定めた。
また、改質TiZrCN層の平均層厚が2.5μm未満では所望のすぐれた高温強度、耐熱性を発揮することができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が促進されるようになることから、その平均層厚を2.5〜15μmと定めた。
(c)Al23層(上部層)
Al23層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層の下部層のうちの1層を構成する改質TiZrCN層がすぐれた耐熱性と高温強度を有することから、高熱発生を伴う高速切削加工に用いた場合でも、すぐれた耐摩耗性および耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で36時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで36時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、硬質被覆層の下部層として、密着性Ti化合物層および改質TiZrCN層からなる下部層を表3に示される条件で、表4に示される組み合わせおよび目標層厚で蒸着形成し、ついで同じく表3に示される条件にて、上部層としてのAl23層を同じく表4に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
比較の目的で、工具基体に密着性Ti化合物層を蒸着形成した後、従来TiZrCN層を表3に示される条件で、表5に示される組み合わせおよび目標層厚で蒸着形成し、さらに上部層としてのAl23層を、表3に示される条件で、かつ同じく表5に示される目標層厚で蒸着形成することにより比較被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
上記の本発明被覆工具1〜13の改質TiZrCN層は縦長成長結晶組織を有するのに対して、従来被覆工具1〜13の従来TiZrCN層は、粒状結晶組織を有しており、そして、それぞれについて、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、前記各TiZrCN層の表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線および{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちで、{112}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積をA、また、{111}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積をBとして、総面積Aと総面積Bの比の値A/Bを求めた。上記総面積Aと総面積Bの比の値(A/B)を表4、5にそれぞれ示す。
なお、上記A/Bの値は、既に述べたように、以下の手順で算出した。
まず、上記改質TiZrCN層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で走査し、まず、改質TiZrCN層であると認識したピクセル数γをカウントし、次に、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角のうちで、その値が0〜10度の範囲にある結晶粒子と認識したピクセル数αをカウントし、さらに、表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角のうちで、その値が0〜10度の範囲にある結晶粒子と認識したピクセル数βをカウントし、A=K×α/γ×100およびB=K×β/γ×100の式(但し、K=改質TiZrCN層の総面積/測定範囲内に存在する改質TiZrCN層の面積)から、総面積A、総面積Bの値をそれぞれ求め、A/Bの比の値を算出した。
表4、5にそれぞれ示される通り、本発明被覆工具の改質TiZrCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて求めた{112}面についての測定傾斜角が表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Aと、{111}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Bの比の値(A/B)は2〜9であるのに対して、比較被覆工具の従来TiZrCN層では、前記面積比A/Bの値は、2未満あるいは9を超えるものであった。
さらに、上記の本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13について、これの硬質被覆層の構成層を電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者および後者とも目標組成と実質的に同じ組成を有する密着性Ti化合物層、改質TiZrCN層、従来TiZrCN層、さらにAl23層からなることが確認された。また、これらの被覆工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の各種の被覆サーメット工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13について、
被削材:JIS・SCM435の丸棒、
切削速度: 470 m/min、
切り込み: 2.5 mm、
送り: 0.23 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件Aという)でのクロムモリブデン鋼の湿式高速連続切削試験、
被削材:JIS・S40Cの丸棒、
切削速度: 470 m/min、
切り込み: 2.8 mm、
送り: 0.25 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件Bという)での炭素鋼の湿式高速連続切削試験、
被削材:JIS・FCD350の丸棒、
切削速度: 470 m/min、
切り込み: 2.5 mm、
送り: 0.30 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件Cという)での球状黒鉛鋳鉄の湿式高速連続切削試験、
いずれの切削試験(水溶性切削油使用)でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Figure 2009166194
Figure 2009166194
Figure 2009166194
Figure 2009166194
Figure 2009166194
Figure 2009166194
表4〜6に示される結果から、本発明被覆工具1〜13は、硬質被覆層の改質TiZrCN層における、{112}面についての測定傾斜角が0〜10度の範囲内にある結晶粒子の総面積Aと、{111}面についての測定傾斜角が0〜10度の範囲内にある結晶粒子の総面積Bの比の値(A/B)は2〜9であることから、すぐれた耐熱性と高温強度を備えることにより、硬質被覆層が長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性と耐チッピング性を示すのに対して、硬質被覆層が従来TiZrCNで構成された比較被覆工具1〜13においては、高熱発生を伴う高速切削条件下では、硬質被覆層の耐熱性が不十分であり、熱塑性変形、偏摩耗等が発生するため耐摩耗性に劣り、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に高い熱発生を伴う高速連続切削加工でも、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性とすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
改質TiZrCN層および従来TiZrCN層における結晶粒の{112}面の傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。 改質TiZrCN層および従来TiZrCN層における結晶粒の{111}面の傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層として、3〜20μmの合計平均層厚を有し、いずれも化学蒸着で形成された密着性Ti化合物層と改質Ti系炭窒化物層、
    (b)上部層として、化学蒸着で形成された1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
    上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
    (c)上記下部層の密着性Ti化合物層は、0.5〜5μmの合計平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、
    (d)上記下部層の改質Ti系炭窒化物層は、2.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Ti1−XZr)CN
    で表した場合、0.15≦X≦0.3(但し、原子比)を満足し、かつ、縦長成長結晶組織を有するTiとZrの複合炭窒化物層からなり、
    さらに、上記改質Ti系炭窒化物層は、
    電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線および{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうちで、{112}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Aと、{111}面についての測定傾斜角が前記表面研磨面の法線に対して0〜10度の傾斜角の範囲内にある結晶粒子の総面積Bを求めた場合、A/Bが2〜9である結晶配向性を示す改質Ti系炭窒化物層であることを特徴とする表面被覆切削工具。
JP2008008659A 2008-01-18 2008-01-18 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Active JP5170829B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008008659A JP5170829B2 (ja) 2008-01-18 2008-01-18 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008008659A JP5170829B2 (ja) 2008-01-18 2008-01-18 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009166194A true JP2009166194A (ja) 2009-07-30
JP5170829B2 JP5170829B2 (ja) 2013-03-27

Family

ID=40967969

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008008659A Active JP5170829B2 (ja) 2008-01-18 2008-01-18 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5170829B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112930234A (zh) * 2019-02-19 2021-06-08 住友电工硬质合金株式会社 切削工具

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001011632A (ja) * 1999-06-29 2001-01-16 Hitachi Metals Ltd ジルコニウム含有膜被覆工具
JP2006334721A (ja) * 2005-06-02 2006-12-14 Mitsubishi Materials Corp 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP2009006426A (ja) * 2007-06-27 2009-01-15 Mitsubishi Materials Corp 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009056562A (ja) * 2007-08-31 2009-03-19 Mitsubishi Materials Corp 表面被覆切削工具
JP2009056560A (ja) * 2007-08-31 2009-03-19 Mitsubishi Materials Corp 表面被覆切削工具

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001011632A (ja) * 1999-06-29 2001-01-16 Hitachi Metals Ltd ジルコニウム含有膜被覆工具
JP2006334721A (ja) * 2005-06-02 2006-12-14 Mitsubishi Materials Corp 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP2009006426A (ja) * 2007-06-27 2009-01-15 Mitsubishi Materials Corp 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009056562A (ja) * 2007-08-31 2009-03-19 Mitsubishi Materials Corp 表面被覆切削工具
JP2009056560A (ja) * 2007-08-31 2009-03-19 Mitsubishi Materials Corp 表面被覆切削工具

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112930234A (zh) * 2019-02-19 2021-06-08 住友电工硬质合金株式会社 切削工具
CN112930234B (zh) * 2019-02-19 2024-01-30 住友电工硬质合金株式会社 切削工具

Also Published As

Publication number Publication date
JP5170829B2 (ja) 2013-03-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4474646B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP2006231433A (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP2006334721A (ja) 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP5023654B2 (ja) 硬質被覆層の改質α型Al2O3層がすぐれた結晶粒界面強度を有する表面被覆サーメット製切削工具
JP2006159397A (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4716250B2 (ja) 高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP5170828B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP4716254B2 (ja) 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP2009056561A (ja) 表面被覆切削工具
JP2008080476A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5170829B2 (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5088477B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5088476B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5170830B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4747338B2 (ja) 難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP5088475B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5267766B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4756454B2 (ja) 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4483510B2 (ja) 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4692065B2 (ja) 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4894406B2 (ja) 硬質被覆層が高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP4748444B2 (ja) 難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP5309698B2 (ja) 高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4793629B2 (ja) 難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4752536B2 (ja) 高硬度材の高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100929

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120726

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120731

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120918

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121210

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121223

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5170829

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150