JP6162484B2 - 表面被覆部材 - Google Patents

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本発明は、基体の表面に被覆層を設けた表面被覆部材に関する。
表面被覆部材として、超硬合金やサーメット等の基体の表面に被覆層を成膜して、耐摩耗性、摺動性、耐欠損性を向上させたコーティング超硬合金が広く使われている。
例えば、特許文献1では、超硬基体の表面に、(Zr、Ti)CNからなる硬質被覆層を化学蒸着した被覆チップが開示されている。また、特許文献2では、基体の表面に、第1層としてTiN層、第2層として(Ti、Zr)CN層、第3層としてTiCNO層、第4層としてAl層を順次積層した切削工具が開示されている。さらに、特許文献3では、基体の表面に、下部層としてTi化合物層、中間層としてα型結晶構造のAl層、上部層として、α型結晶構造のZr含有Al層を蒸着形成した切削工具が開示されている。
特開昭62−056564号公報 特開2001−011632号公報 特開2011−200953号公報
しかしながら、特許文献1−3のように(Zr、Ti)CN層や(Ti、Zr)CN層、Zr含有Al層を具備する構成では、被覆層の高温硬さと耐熱性は向上するものの、逆に耐欠損性が低下する傾向にあり、工具寿命は必ずしも延びず、被覆層のさらなる改善が求められていた。また、被覆層の表面では切屑の溶着が発生する場合があり、耐溶着性の改善も必要であった。
本発明は、上記課題に対して、良好な耐溶着性と耐欠損性とを兼ね備えた被覆層を具備する表面被覆部材を提供することを目的とする。
一態様の表面被覆部材は、基体の表面に、TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiNOおよびTiCNOの少なくとも1種のTi系層とAl層とを具備する複数層からなる被覆層を設けたものであって、表面被覆部材であって、前記被覆層の表面層のみにZrを含有するとともに、前記表面層の表面から前記基体に向かって前記Zrの含有比率が漸次減少しているものであって、前記表面層の表面におけるZrの含有比率が金属元素の総量に対して0.2〜1質量%である
本発明の表面被覆部材によれば、前記被覆層の表面層のみにZrを含有するとともに、表面層の表面から基体に向かってZrの含有比率が漸次減少している構成からなることによって、被覆層は良好な耐溶着性を示すとともに、耐欠損性が改善されることを知見した。その結果、高速重切削加工のような切刃が高温になるとともに大きな衝撃がかかる切削加工においても、良好な切削性能を発揮する。
本発明の表面被覆部材の好適例である切削インサートの一例について、(a)概略斜視図、(b)要部拡大断面図である。
本発明の表面被覆部材の好適例である切削インサートの一例である図1を基に説明する。
図1の切削インサート(以下、インサートと略す場合がある。)1は、すくい面2と逃げ面3との交差稜線部が切刃4を構成しており、図1(a)のインサート1は、板状で主面が概略正方形形状(CNMA/CNMG)からなる。
また、本実施態様によれば、図1(b)に示すように、インサート1は、基体5の表面に、TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiNOおよびTiCNOの少なくとも1種のTi系層とAl層とを具備する複数層からなる被覆層6が設けられている。図1(b)によれば、具体的な構成として、基体5の直上には第1層としてTiN層7が形成され、第2層としてTiCN層8−10が形成されている。第2層であるTiCN層8−10は、柱状結晶からなる、いわゆるMT−TiCN層8,9と、成膜温度が950〜1100℃と高温で成膜した、いわゆるHT−TiCN層10とを順に成膜して構成されている。さらに、MT−TiCN層8,9は、平均結晶幅が0.5μm未満と微細な微細柱状結晶からなる微細MT−TiCN層8と、平均結晶幅が0.5〜2μmと比較的大きい粗大柱状結晶からなる粗大MT−TiCN層9との積層からなる。HT−TiCN層10の表面には中間層11が設けられ、中間層11の表面にはAl層12が設けられ、Al層12の表面には表面層13が設けられている。
なお、本発明において、被覆層6を構成する結晶が粒状であるとは、被覆層6を構成する結晶の任意10個について最長長さとそれに直交する長さの平均値との比であるアスペクト比を各結晶について求めて、その平均値が1.5未満のものを指す。このアスペクト比が1.5以上の場合には、被覆層6を構成する結晶が柱状であるという。
本実施態様によれば、表面層13のみにZrを含有するとともに、表面から基体5に向かって前記Zrの含有比率が漸次減少している。これによって、被覆層6は良好な耐溶着性を示すとともに、耐欠損性が改善される。その結果、高速重切削加工のような切刃が高温になるとともに大きな衝撃がかかる切削加工においても、良好な切削性能を発揮する。
ここで、本実施態様においては、表面層13の厚みが0.5〜10μmである。そして、表面層13のうちのZrを含有している厚みが0.1〜5μmである。これによって、表面層13の耐チッピング性を改善できる。Zrを含有している厚みの望ましい範囲は、0.2〜2μmである。
また、本実施態様においては、表面層13の表面におけるZrの含有比率が金属元素の総量に対して0.2〜1.0質量%である。これによって、表面層13の耐溶着性をより高めることができる。
さらに、本実施態様では、表面層13はZr含有TiN層からなる。Zr含有TiN層は金色を呈することから、被覆層6の外観からインサート1を使用したかどうか、および摩耗の進行状態を目視で確認することができる。
本実施態様によれば、表面層13を構成するTiN結晶の平均粒径が0.01〜0.5μmである。これによって、表面層13の上表面がより平滑になる結果、被覆層6の表面が平滑になる。また、本実施態様によれば、表面層13の厚みが1〜10μmである。こ
れによって、表面層13の上表面がより平滑になる結果、被覆層6の表面が平滑になる。なお、本実施態様によれば、表面層13の下表面の表面粗さ(Ra)が0.2〜0.5μmであるとともに、表面層13の上表面の表面粗さ(Ra)が0.01〜0.3μmである。なお、本発明においては、表面層13の下表面および上表面の表面粗さ(Ra)は、被覆層6の断面写真において、表面層13の下表面および上表面の凹凸をトレースし、この凹凸形状をJISB0651による算出方法に準じて平均粗さ(Ra)を算出する。
また、本実施態様では、表面層13がZr含有TiN層からなるが、表面層13がAl層12の表面にZrを含有させたZr含有Al層であってもよい。なお、表面層13は、Ti系層であってもよく、Ti系層としては上述のZr含有TiN層に限定されるものではなく、TiC、TiCN、TiCO、TiNOおよびTiCNOのいずれかを基本構造とするものであっても上述した効果を得ることができる。なお、表面層13がZr含有TiN層であれば、被覆層6の外観からインサート1の使用状態を目視で確認することができる。Al層12はα型結晶構造のAl結晶からなり、かつ基体5の表面に対して垂直な方向から見た平均結晶幅が0.05〜2μmである。これによって、耐摩耗性が向上する。
基体5の直上のTiN層7、TiCN層8−10は、被覆層6の耐欠損性を高めるものである。
また、本実施態様によれば、中間層11は粗大MT−TiCN層9とAl層12との密着力を高めるためのものであり、Al層12の剥離やチッピングを抑えることができる。中間層11は、厚み0.05〜0.5μmのTiCNOからなる。この酸素成分の存在によって、α型Al層12を構成する結晶を、平均粒径0.05〜2μmのα型結晶構造のAl結晶とすることができ、耐摩耗性を向上させることができる。
なお、各層の厚みおよび各層を構成する結晶の性状は、インサート1の断面における電子顕微鏡写真(走査型電子顕微鏡(SEM)写真または透過電子顕微鏡(TEM)写真)を観察することにより、測定することが可能である。
一方、インサート1の基体5は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種と、からなる硬質相を、コバルト(Co)やニッケル(Ni)等の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金やTi基サーメット、またはSi、Al、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)等のセラミックスのいずれかが好適に使用できる。中でも、インサート1を切削工具として用いる場合には、基体5は、超硬合金またはサーメットからなることが耐欠損性および耐摩耗性の点で望ましい。また、用途によっては、基体5は炭素鋼、高速度鋼、合金鋼等の金属からなるものであっても良い。
さらに、上記記載では切削インサートについて説明したが、ソリッドタイプの切削工具への適用も可能である。さらに、摺動部品や金型等の耐摩部品、掘削工具、刃物等の工具、耐衝撃部品等の各種の用途への応用も可能である。
(製造方法)
また、本実施形態のインサートの製造方法の一実施形態について説明する。
まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に
成形する。その後、得られた成形体を真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる基体5を作製する。そして、上記基体の表面に所望によって研磨加工や切刃部のホーニング加工を施す。
次に、得られた基体5の表面に化学気相蒸着(CVD)法によって被覆層を形成する。まず、基体の直上に1層目としてTiN層を形成する。TiN層の成膜条件としては、混合ガス組成として四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を800〜940℃、圧力を8〜50kPaにて成膜される。
次に、2層目としてTiCN層を形成する。ここでは、TiCN層が、平均結晶幅が小さい微細柱状結晶層と、この層よりも平均結晶幅が大きい粗柱状結晶層とのMT−TiCN層と、HT−TiCN層との3層にて構成する場合の成膜条件について説明する。
MT−TiCN層のうちの微細柱状結晶層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.1〜0.4体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を780〜900℃、圧力を5〜25kPaとする。MT−TiCN層のうちの粗柱状結晶層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜4.0体積%、窒素(N)ガスを5〜40体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.4〜2.0体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を780〜900℃、圧力を5〜25kPaとする。
HT−TiCN層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜5.0体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜30体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を950〜1100℃、圧力を5〜40kPaとして成膜する。
そして、チャンバ内を950〜1100℃、5〜40kPaとし、四塩化チタン(TiCl)ガスを1〜5体積%、メタン(CH)ガスを4〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜30体積%、一酸化炭素(CO)ガスを4〜8体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整してチャンバ内に10〜60分導入した後、続いて体積%で二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜4.0体積%、残りが窒素(N)ガスからなる混合ガスを調整してチャンバ内に導入し、成膜温度を950〜1100℃、5〜40kPaにて、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜10体積%、残りが窒素(N)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に10〜60分導入することによって、中間層を成膜する。なお、このCOガスを含む混合ガスを流す工程を経ることなく中間層を形成することもできるが、α型Al層を構成する結晶を微細なものとするためには、COガスを含む混合ガスを流す工程を経ることが望ましい。
そして、引き続き、α型Al層を形成する。α型Al層の成膜条件としては、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを0.5〜5.0体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜3.5体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0〜0.5体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入し、成膜温度を950〜1100℃、圧力を5〜10kPaとして成膜することが望ましい。
さらに、α型Al層の上層に表面層を形成する。Zr含有TiN層からなる表面層を成膜する方法について説明すると、四塩化チタン(TiCl)ガスを1〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜60体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる
混合ガスをチャンバ内に導入し、成膜温度を960〜1100℃、圧力を10〜85kPaとして、成膜を開始する。成膜開始後の所定の時間で、Zr源である四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスを追加し、その添加量を漸次増加させて、最終的に0.1〜5.0体積%となるように添加する。この時、四塩化チタン(TiCl)ガスの混合量は四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスの添加量分減らしていく。また、四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスの添加を開始するとともに成膜温度を成膜開始時に比べて50〜200℃上昇させることによって、耐溶着性に優れる傾斜膜ができるので望ましい。この成膜条件によって、表面層13は、Zrを含有するとともに、表面から基体5に向かってZrの含有比率が漸次減少しているZr含有TiN層となる。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMG120412)に成形した。得られた成形体について、脱バインダ処理を施し、0.5〜100Paの真空中、1400℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金に対して、ブラシ加工にてすくい面側について刃先処理(Rホーニング)を施した。
そして、上記超硬合金をCVD装置内にセットし、以下の順序で被覆層を成膜した。まず、四塩化チタン(TiCl)ガスを2.0体積%、窒素(N)ガスを33体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を880℃、ガス圧を16kPaにて粒状結晶からなるTiN層を成膜した。次に、四塩化チタン(TiCl)ガスを2.5体積%、窒素(N)ガスを25体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.2体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を865℃、圧力を15kPaとして、TiCN層の下側の柱状結晶からなるMT−TiCN層を成膜した。そして、四塩化チタン(TiCl)ガスを2.5体積%、窒素(N)ガスを25体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.5体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を865℃、圧力を9kPaとして、TiCN層の上側の柱状結晶からなるMT−TiCN層を成膜した。その後、四塩化チタン(TiCl)ガスを3.5体積%、メタン(CH)ガスを7体積%、窒素(N)ガスを25体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を1010℃、圧力を20kPaとして、粒状結晶からなるHT−TiCN層を成膜した。
そして、チャンバ内を1000℃、30kPaとし、四塩化チタン(TiCl)ガスを2体積%、メタン(CH)ガスを8体積%、窒素(N)ガスを20体積%、一酸化炭素(CO)ガスを6体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整してチャンバ内に20分導入して成膜した後、成膜温度を1000℃、20kPaにて、二酸化炭素(CO)ガスを5体積%、残りが窒素(N)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に20分導入して、粒状結晶のTiCNOからなる中間層を成膜した。
次に、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを1.5体積%、塩化水素(HCl)ガスを2.0体積%、二酸化炭素(CO)ガスを4.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0.3体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用いて、成膜温度を1005℃、圧力を9kPaとして、粒状結晶からなるAl層を成膜した。ここで、試料No.4については、Al層の成膜工程の3/4が経過した時間から四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスを追加し、その添加量を漸次増加させた。なお、四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスの添加量は最終的に0.4体積%となった。この時、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスの混合量は四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスの添加量分減らしてZr含有Al層とした。そして、試料No.4については、Zr含有
Al層の表面には後述する表面層をさらに成膜せず、Zr含有Al層が表1に示す表面層となった。
その後、試料No.4以外の試料については、Al層の上層に、表面層を四塩化チタン(TiCl)ガスを2.5体積%、窒素(N)ガスを30体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入し、圧力を30kPaとして、表1に示す初期成膜温度で成膜を開始し、試料No.1〜3、5、6については、成膜開始後の特定の時間で、Zr源である四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスを追加し、その添加量を漸次増加させるとともに成膜温度を表1に示す最終成膜温度まで漸次上昇させて、表1の表面層を成膜してインサートを作製した。なお、四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスの添加量は最終的に0.2〜5.0体積%となった。この時、四塩化チタン(TiCl)ガスの混合量は四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスの添加量分減らして成膜した。試料No.8については四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスを添加せず、試料No.7については、成膜開始時から四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスを同じ比率で添加して成膜した。
得られたインサートについて、走査型電子顕微鏡観察を行い、各層を構成する結晶の基本構造、平均厚み(表中、厚みと記載した。)、形状、平均粒径(表中、粒径と記載した。)を見積もった。また、グロー放電発光分光分析(GDS)によって深さ方向を成分分析し、表面層の表面におけるZrの含有比率およびZrの含有厚み(表中、Zr厚みと記載した。)を確認した。なお、試料No.1〜6においては、Zrの含有比率が表面層の表面から基体側に向かって次第に減少していることが確認できた。さらに、表面層の下表面および上表面の表面粗さ(Ra)は、被覆層の断面写真において、表面層の下表面および上表面の凹凸をトレースし、この凹凸形状をJISB0651による算出方法に準じて平均粗さ(Ra)を算出した。結果は表1に示した。
次に、このインサートを用いて以下の切削条件にて切削試験を行った。結果は表1に示した。
切削方法:端面加工
被削材 :FC250
切削速度:500m/分
送り :0.35mm/rev
切り込み:3.0mm
切削状態:乾式
評価方法:フランク摩耗が0.3mm以上となるまでに加工できた個数(表中、加工数と記載。)とそのときの切刃の状態
表1の結果から明らかなように、表面層中にZrを含有しない試料No.8では、切刃に溶着が発生して加工数が少ないものであった。また、表面層の全体にZrを含有して、表面層の表面と基体側におけるZrの含有比率が同じである試料No.7では、表面層の耐欠損性が低下してチッピングが発生した。これに対し、本発明の範囲内である表面層のみにZrを含有するとともに、表面層の表面から基体に向かってZrの含有比率が漸次減少している試料No.1〜6では、インサートの表面への被削材の溶着が少なく、チッピングしにくくて工具寿命が長いものであった。
1 切削インサート(インサート)
2 すくい面
3 逃げ面
4 切刃
5 基体
6 被覆層
7 TiN層
8、9 MT−TiCN層
10 HT−TiCN層
11 中間層
12 Al
13 表面層

Claims (4)

  1. 基体の表面に、TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiNOおよびTiCNOの少なくとも1種のTi系層とAl層とを具備する複数層からなる被覆層を設けた表面被覆部材であって、前記被覆層の表面層のみにZrを含有するとともに、前記表面層の表面から前記基体に向かって前記Zrの含有比率が漸次減少しており、
    前記表面層の表面におけるZrの含有比率が金属元素の総量に対して0.2〜1質量%である表面被覆部材。
  2. 基体の表面に、TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiNOおよびTiCNOの少なくとも1種のTi系層とAl 層とを具備する複数層からなる被覆層を設けた表面被覆部材であって、前記被覆層の表面層のみにZrを含有するとともに、前記表面層の表面から前記基体に向かって前記Zrの含有比率が漸次減少しており、
    前記表面層は、TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiNOおよびTiCNOの少なくとも1種のTi系の層である表面被覆部材。
  3. 前記表面層は、前記Ti系の層のうちTiN層である請求項2記載の表面被覆部材。
  4. 前記表面層の下表面の表面粗さ(Ra)が0.2〜0.5μmであるとともに、前記表面層の上表面の表面粗さ(Ra)が0.01〜0.3μmである請求項1乃至3のいずれか記載の表面被覆部材。
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