JP4593937B2 - 表面被覆部材および切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、硬質被覆層を表面に被着形成した表面被覆部材に関し、鋼の加工や、特に鋳鉄の断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような切削に際しても、優れた耐チッピング性および耐欠損性を有する表面被覆切削工具に関する。
従来より、金属の切削加工に広く用いられている切削工具は、超硬合金やサーメット、セラミックス等の基体の表面に、炭化チタン(TiC)層、窒化チタン(TiN)層、炭窒化チタン(TiCN)層および酸化アルミニウム(Al)層等の硬質被覆層を複数層被着形成した表面被覆切削工具が多用されている。
かかる表面被覆切削工具においては、最近の切削加工の高能率化に従って金属の重断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような過酷な切削条件で使われるようになっており、従来の工具では硬質被覆層が突発的に発生する大きな衝撃に耐えきれず、チッピングや硬質被覆層が剥離にて基体が露出してしまい、これが引き金となって切刃に大きな欠損や異常摩耗が発生して工具寿命の長寿命化ができないという問題があった。
そこで、特許文献1には、筋状炭窒化チタン結晶(縦長成長炭窒化チタン結晶)からなる炭窒化チタン層を設けるとともに、その間を粒状の窒化チタン層で分割することにより、層間剥離を抑制できることが記載され、工具の耐欠損性が向上すると記載されている。
特許第3230372号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された炭窒化チタン層の構成によっても、重断続切削等の突発的に大きな衝撃がかかるような切削においては依然として切刃のチッピングによる異常摩耗や突発欠損等が発生し、工具寿命が短くなっていた。また、鋼等の切削においても更なる耐欠損性および耐摩耗性の向上が求められていた。
また、炭窒化チタン層の結晶幅を単純に小さくしたり、大きくしたりしても、基体耐摩耗性または耐欠損性のいずれかが悪化して、突発欠損やチッピングの発生による異常摩耗が発生したり、摩耗が進行しやすい等の問題が発生して硬質被覆層全体の最適化がうまくいかず工具寿命には限界があった。
従って、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、特に断続切削等の突発的に工具切刃に強い衝撃がかかるような過酷な切削条件においても、チッピングや欠損が発生することなく、優れた耐チッピング性および耐欠損性を有するとともに、耐摩耗性にも優れる長寿命の切削工具等の表面被覆部材を提供することにある。
本発明者は、上記課題に対して検討した結果、基体の表面に少なくとも炭窒化チタン層およびその上層に酸化アルミニウム層を含む硬質被覆層を有する表面被覆部材において、いわゆるカロテストの摩耗痕を観察すれば前記硬質被覆層の部分的な耐摩耗性および耐欠損性の分布を評価することができることを知見した。
そして、その摩耗痕を観察した際に、前記摩耗痕の中心に存在する露出した基体の周囲に観察される炭窒化チタン層が、クラック幅がゼロまたは小さい下部組織と、該下部組織の周囲に観察されて前記下部組織よりもクラック幅が大きい上部組織とが存在することによって、上部組織にクラックが生成することにより炭窒化チタン層と上層の酸化アルミニウム層との間に発生する残留応力を開放して、断続切削時において例え突発的に大きな衝撃が硬質被覆層にかかったときであっても新たに大きなクラックが発生して硬質被覆層がチッピングしたり欠損したりすることなく衝撃を吸収できるとともに、クラックの生成しにくい炭窒化チタン層の下部組織が存在することによって、上部組織にて生成したクラックの進展が阻害されるために炭窒化チタン層または硬質被覆層全体がチッピングや剥離することなく、結果的に硬質被覆層全体のチッピングや剥離を防止できるとともに、硬質被覆層全体の耐摩耗性が向上することを発明した。
また、本発明によれば、前記上部組織の径方向長さLの前記炭窒化チタン層全体の径方向長さL(ただし、L=L+L、ここでLは前記下部組織の径方向長さ)に対する比(L/L)が0.05〜0.15の割合で観察されることにより、さらに炭窒化チタン層の耐欠損性を高めることができる。
すなわち、本発明の表面被覆部材は、基体の表面に2層の炭窒化チタン層と、その上層として酸化アルミニウム層を含む硬質被覆層を有する表面被覆切削工具において、該表面被覆切削工具の表面に直径30mmの球形鋼玉からなる硬質球を接触させた状態で該硬質球をころがしながら自転させるように前記表面被覆切削工具の前記硬質球接触部分を局所的に摩耗させて、中心に前記基体が露出するように前記硬質被覆層に球曲面の摩耗痕を形成させるカロテストを行い、前記摩耗痕を観察した際に、該摩耗痕の中心に存在する露出した基体の外周位置に観察される炭窒化チタン層が、クラック幅がゼロまたは小さい下部組織と、該下部組織の外周位置に観察されて前記下部組織よりもクラック幅が大きい上部組織とが存在し、前記上部組織の径方向長さLの前記炭窒化チタン層全体の径方向長さL(ただし、L=L+L、ここでLは前記下部組織の径方向長さ)に対する比(L/L)が0.05〜0.15の割合で観察されることを特徴とするものである。
また、前記カロテストの摩耗痕観察において、前記炭窒化チタン層の下部組織中に観察されるクラックの幅が、前記上部組織中に観察されるクラックの幅に比べて1/2以下であることが、炭窒化チタン層と酸化アルミニウム層との密着性を高めることができるとともに、炭窒化チタン層自身のクラックの進展を抑制することもできる結果、硬質被覆層全体の耐チッピング性、耐欠損性が向上するとともに、耐摩耗性が維持されるために望ましい。
ここで、前記炭窒化チタン層が、前記摩耗痕中心に存在する露出した基体の周囲に観察されてクラック幅がゼロまたは小さい下部炭窒化チタン層と、該下部炭窒化チタン層の周囲に観察されて前記下部炭窒化チタン層よりもクラック幅が大きい上部炭窒化チタン層との複数層が存在することが、炭窒化チタン層の上部にて生成したクラックが止まることなく進展して下部にまで達してしまうことなく、チッピングや欠損を確実に抑制できる点で望ましい。
また、前記下部炭窒化チタン層の膜厚tが1μm≦t≦10μm、前記上部炭窒化チタン層の膜厚tが0.5μm≦t≦5μmで、かつ、1<t/t≦5の関係を満たすことが、前記炭窒化チタン層と前記酸化アルミニウム層との密着性を高め、前記炭窒化チタン層自身のクラックの進展を抑制することもでき、前記硬質被覆層全体の耐衝撃性を高めて、工具全体としてのチッピングや欠損を防止し、かつ高い耐摩耗性を維持することができるために望ましい。
さらに、前記炭窒化チタン層が前記基体表面に対して垂直に伸びる筋状組織の炭窒化チタン粒子からなるとともに、断面視による組織観察で前記上部炭窒化チタン層をなす炭窒化チタン粒子の平均結晶幅が前記下部炭窒化チタン層をなす炭窒化チタン粒子の平均結晶幅より大きいことが、上部炭窒化チタン層に生成したクラックが下部炭窒化チタン層に進展することを抑制できるとともに、酸化アルミニウム層と炭窒化チタン層との残留応力を低減してクラックの発生を最小限に抑えて両者間の付着力を制御できる。これによって、硬質被覆層の耐摩耗性と耐剥離性を高めて、工具全体としての耐摩耗性と耐欠損性を最適な状態にすることができるために望ましい。
なお、この場合には、前記炭窒化チタン層中の前記上部層における平均結晶幅wが0.2〜1.5μmであり、かつ、前記下部炭窒化チタン層における平均結晶幅wが前記上部炭窒化チタン層の平均結晶幅wの0.7倍以下であることが、炭窒化チタン結晶自身の耐欠損性および耐チッピング性を高めることができるとともに、酸化アルミニウム層との付着力を制御して、硬質被覆層全体としての耐摩耗性および耐欠損性を高めるために望ましい。
また、前記炭窒化チタン層をTi(C1−x)と表したとき、前記下部炭窒化チタン層におけるxが0.55〜0.80、前記上部炭窒化チタン層におけるxが0.40〜0.55の組成からなることが、基体上部炭窒化チタン層に生成したクラックが下部炭窒化チタン層に進展することを抑制し、硬質被覆層の耐チッピング性および耐欠損性を高め、高い耐摩耗性を維持することができるために望ましい。
さらに、前記下部炭窒化チタン層中の炭窒化チタン粒子が表面視による組織観察でアスペクト比の平均が2以上の針状をなすことにより、クラックが炭窒化チタン層の面内方向に進展することを抑制してより一層炭窒化チタン層の耐欠損性が向上する。
さらには、前記酸化アルミニウム層のスクラッチ試験における付着力が10〜50Nであることによって、連続切削においては硬質被覆層の剥離を抑制できて耐摩耗性が高く、かつ断続切削においては酸化アルミニウム層が適度の剥離を生じさせることで基体までに至る硬質層剥離を抑制させることで耐欠損性および耐チッピング性を高めることができるために望ましい。
ここで、前記カロテストの摩耗痕観察において、前記酸化アルミニウム層の前記炭窒化チタン層との界面から酸化アルミニウム層の内部にわたってクラックが観察されることが、炭窒化チタン層と酸化アルミニウム層との界面に発生する残留応力を効果的に解消でき、かつ炭窒化チタン層に過剰なクラックが発生することを防止して、炭窒化チタン層のチッピングおよび剥離を防止できる点で望ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、基体の表面に2層の炭窒化チタン層およびその上層に酸化アルミニウム層を含む硬質被覆層を有する表面被覆部材において、いわゆるカロテストの摩耗痕を観察すれば前記硬質被覆層の部分的な耐摩耗性および耐欠損性の分布を評価することができること、その摩耗痕の観察にて、前記摩耗痕の中心に存在する露出した基体の周囲に観察される炭窒化チタン層が、クラック幅がゼロまたは小さい下部組織と、該下部組織の周囲に観察されて前記下部組織よりもクラック幅が大きい上部組織とが存在することによって、上部組織にクラックが生成することにより炭窒化チタン層と上層の酸化アルミニウム層との間に発生する残留応力を開放することができる。
その結果、特にねずみ鋳鉄(FC材)やダクタイル鋳鉄(FCD材)のような高硬度黒鉛粒子が分散した鋳鉄等の金属の重断続切削等のような工具切刃に強い衝撃がかかる過酷な切削条件や、連続切削条件、さらにはこれら断続切削と連続切削とを組み合わせた複合切削条件において、例え突発的に大きな衝撃が硬質被覆層にかかったときであっても新たに大きなクラックが発生して硬質被覆層がチッピングしたり欠損したりすることなく衝撃を吸収できるとともに、クラックの生成しにくい炭窒化チタン層の下部組織が存在することによって、上部組織にて生成したクラックの進展が阻害されるために炭窒化チタン層がチッピングや剥離することなく、結果的に硬質被覆層全体のチッピングや剥離を防止できるとともに、硬質被覆層全体の耐摩耗性が維持される優れた耐チッピング性および耐欠損性を有する切削工具が得られる。もちろん、鋼の切削においても従来工具に対して耐欠損性および耐摩耗性に優れた工具となる。
さらに、本発明によれば、前記上部組織の径方向長さLの前記炭窒化チタン層全体の径方向長さL(ただし、L=L+L、ここでLは前記下部組織の径方向長さ)に対する比(L/L)が0.05〜0.15の割合で観察されることにより、さらに炭窒化チタン層の耐欠損性を高めることができる。
本発明の表面被覆切削部材の好適例である切削工具の一例についておよびカロテストの摩耗痕の金属顕微鏡像である図1((a)は本発明例、(b)は比較例)、硬質被覆層を含む破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である図2を基に説明する。
図1、2によれば、表面被覆切削工具(以下、単に工具と略す。)1は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期律表第4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種からなる硬質相をコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)等の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金や、Ti基サーメット、または窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素等のセラミックスのいずれかからなる基体2の表面に硬質被覆層3を化学蒸着法(CVD)にて被着形成したものである。
本実施態様によれば、図2に示すように、硬質被覆層3として2層の炭窒化チタン(TiCN)層4およびその上層として酸化アルミニウム層6を有している。また、図1はカロテストの摩耗痕7を金属顕微鏡または走査型電子顕微鏡により例えば倍率4〜50倍(図1では5倍)で観察したものである。
また、本発明の評価項目として規定するカロテストとは、図3に示すように、工具1の表面、すなわち硬質被覆層3の表面に金属製または超硬合金製の硬質球13を接触させた状態で硬質球13を支持する支持棒14を回転させて硬質球13をころがしながら自転させることによって、工具1を局所的に摩耗させ、図1に示すように摩耗痕7の中心に基体2が露出するように硬質被覆層3を球曲面に摩耗させたものであり、一般的にはこの摩耗痕7中に観察される硬質被覆層3の各層の幅を観察することによって各層の膜厚を見積もる方法である。
本発明によれば、直径30mmの球形鋼玉からなる硬質球を用いた図1のようなカロテストの摩耗痕7の観察において、(a)のように摩耗痕7の中心に存在する露出した基体の外周位置に観察される炭窒化チタン層4に、クラック幅がゼロまたは小さい下部組織11と、下部組織11の外周位置に観察されて下部組織11よりもクラック幅が大きい上部組織12とが存在することが大きな特徴である。
上記構成によって、コーティング後の冷却時に酸化アルミニウム層6と炭窒化チタン層4との熱膨張係数差に起因する残留応力が、炭窒化チタン層4の表面側である上部組織12にクラック5が発生することによって応力解放されて、例え突発的に大きな衝撃が硬質被覆層3にかかったときであっても新たに大きなクラックが発生して硬質被覆層がチッピングしたり欠損したりすることなく衝撃を吸収できるとともに、クラック5の生成しにくい炭窒化チタン層4の下部組織11が存在することによって、上部組織12にて生成したクラック5の進展が阻害されるために炭窒化チタン層4がチッピングや剥離することなく、結果的に硬質被覆層3全体のチッピングや剥離を防止できるとともに、硬質被覆層3全体の耐摩耗性が向上する結果、特にねずみ鋳鉄(FC材)やダクタイル鋳鉄(FCD材)のような高硬度黒鉛粒子が分散した鋳鉄等の重断続切削においても優れた耐欠損性および耐チッピング性を有する工具1が得られる。
すなわち、摩耗痕7の観察において、炭窒化チタン層4の上部組織12にクラック5がないと炭窒化チタン層4と酸化アルミニウム層6との間の残留応力が解放されず、硬質被覆層3に大きな衝撃が加わった場合に炭窒化チタン層4と酸化アルミニウム層6のいずれか、または両方に大きなクラック5が進展して硬質被覆層にチッピングが発生したり、欠損したりしやすくなる。また、図1(b)のように炭窒化チタン層4全体においてクラック5の生成割合が同じであると、上記酸化アルミニウム層6との残留応力に起因するクラック5が発生した際にクラック5が炭窒化チタン層4全体に進展してしまい、この場合にも硬質被覆層3にチッピングが発生したり、欠損したりしやすくなる。
なお、本発明によれば、上記カロテストの摩耗痕7として、摩耗痕7の中心に基体2が露出するように硬質被覆層3を球曲面に摩耗させた状態としたものであり、この摩耗痕7中に含まれる硬質被覆層3の各層の摩耗、剥離、クラック5の進展状態等を各層ごとに観察することにより、硬質被覆層3の性状および特性を評価できることを見出したものである。
ここで、露出した基体2の大きさが大きすぎたり、小さすぎたりすると、炭窒化チタン層4中のクラック5を正確に観察することができない場合があるため、摩耗痕7中に露出する基体2の直径が摩耗痕7全体の直径の0.1倍〜0.6倍になるようにカロテストの摩耗条件(時間、硬質球の種類、研磨剤等)を調節するのがよい。
また、図2の硬質被覆層3の組織を説明するための図面代用走査型電子顕微鏡写真(SEM)に記載されるように、炭窒化チタン層4の下部組織11にて観察されるクラック幅bが、上部組織12にて観察されるクラック幅bに対する比(b/b)で1/2以下、特に1/3以下であることが、炭窒化チタン層4と酸化アルミニウム層6との密着性を高めることができるとともに、炭窒化チタン層4自身のクラック5の進展を抑制することもでき、硬質被覆層3全体の耐チッピング性、耐欠損性が向上するとともに、耐摩耗性が維持されるために望ましい。
ここで、本発明によれば、前記上部組織の径方向長さLの前記炭窒化チタン層全体の径方向長さL(ただし、L=L+L、ここでLは前記下部組織の径方向長さ)に対する比(L/L)が0.05〜0.15の割合で観察されることにより、さらに炭窒化チタン層の耐欠損性を高めることができる。
また、図1、2、または図1の要部拡大図である図3によれば、炭窒化チタン層4が、摩耗痕7中心に存在する露出した基体2の外周位置に観察されてクラック幅がゼロまたは小さい下部炭窒化チタン層(以下、単に下部層と略す。)15と、下部層15の周囲に観察されて下部層15よりもクラック幅が大きい上部炭窒化チタン層(以下、単に上部層と略す。)16との複数層が存在した状態となっており、この構成によって、炭窒化チタン層4の上部にて生成したクラック5が進展して下部にまで達してしまうことなく、確実に硬質被覆層3のチッピングや欠損を防止できる。
また、図4に示すように、炭窒化チタン層4が基体2表面に対して垂直に伸びる筋状組織の炭窒化チタン粒子からなるとともに、断面視による組織観察で上部層16が炭窒化チタン粒子の平均結晶幅wが大きい筋状組織からなり、下部層15が炭窒化チタン粒子の平均結晶幅wが小さい筋状組織からなることが、上部層16に生成したクラック5が下部層15に進展することを抑制できるとともに、酸化アルミニウム層6と炭窒化チタン層4との残留応力を低減してクラックの発生を最小限に抑えて両者間の付着力を制御できる。これによって、硬質被覆層3の耐摩耗性と耐剥離性を高めて、工具1全体としての耐摩耗性と耐欠損性を最適な状態にすることができるために望ましい。
さらに、上部層16の膜厚tが0.5μm≦t≦5μm、下部層15の膜厚tが1μm≦t≦10μmで、かつ、1<t/t≦5の関係を満たすことが、炭窒化チタン層4と酸化アルミニウム層6との密着性を高め、かつ炭窒化チタン層4自身のクラック5の進展を抑制することもでき、硬質被覆層3全体の耐衝撃性を高めて、工具1全体としてのチッピングや欠損を防止し、かつ高い耐摩耗性を維持することができるために望ましい。
ここで、基体2表面に対して垂直に伸びる筋状組織の炭窒化チタン粒子とは、基体2との界面に対して垂直な方向の結晶長さ/平均結晶幅=アスペクト比が2以上の結晶組織を指す。また、図2に示すような硬質被覆層3の断面組織観察にて、粒状炭窒化チタン結晶が30面積%以下の割合で混合した混晶であってもよい。
なお、この場合には、炭窒化チタン層4中の上部層16における平均結晶幅wが0.2〜1.5μm、特に0.2〜0.5μmであり、かつ、下部層15における平均結晶幅wが上部層16の平均結晶幅wの0.7倍以下であることが、炭窒化チタン層4自身の耐欠損性および耐チッピング性を高めることができるとともに、酸化アルミニウム層6との付着力を制御して、硬質被覆層3全体としての耐摩耗性および耐欠損性を高めるために望ましい。
ここで、本発明において筋状結晶からなる炭窒化チタン粒子の断面方向から見た平均結晶幅を測定する方法としては、硬質被覆層3を含む断面について走査型電子顕微鏡写真観察を行い、炭窒化チタン層4の各高さ領域において基体2と硬質被覆層3との界面と平行な直線を引き(図4の線分A、B参照)、この線分上にある各粒子の幅の平均値、すなわち線分長さを線分上を横切る粒界の数で割った値を平均結晶幅wとする。
また、炭窒化チタン層4をTi(C1−x)と表したとき、下部層15においてxが0.55〜0.80、上部層16においてxが0.40〜0.55の組成からなることが、上部層16に生成したクラックが下部層15に進展することを抑制し、硬質被覆層3の耐チッピング性および耐欠損性を高めるために望ましい。
さらに、本発明によれば、前記上部組織の径方向長さLの前記炭窒化チタン層全体の径方向長さL(ただし、L=L+L、ここでLは前記下部組織の径方向長さ)に対する比(L/L)を0.05〜0.15の割合で観察されるように制御するためには、特に、前記下部炭窒化チタン層中の炭窒化チタン粒子が表面視による組織観察でアスペクト比の平均が2以上の針状をなす組織として、クラックが炭窒化チタン層の面内方向に進展することを抑制する方法が効果的であり、これによって、クラックの進展によりチッピングや欠損が発生することを防止して、より一層炭窒化チタン層の耐欠損性が向上する。
なお、本発明において炭窒化チタン層を表面視にて確認する方法は、炭窒化チタン層を表面から研磨して薄くし、これを透過型電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。また、本発明における炭窒化チタン粒子の平均アスペクト比は組織観察にて確認される各粒子について長軸と長軸に直交する短軸との比を算出し、観察される粒子全体のアスペクト比を平均した値を指す。
さらには、酸化アルミニウム層6のスクラッチ試験における付着力が10〜50Nであることによって、連続切削においては硬質被覆層3の剥離を抑制できて耐摩耗性を高め、断続切削においては酸化アルミニウム層6が適度の剥離を生じさせることで基体2までに至る硬質層3の剥離を抑制させることができ、耐欠損性および耐チッピング性が向上するために望ましい。
また、基体2と炭窒化チタン層4との間、炭窒化チタン層4と酸化アルミニウム層6との層間、多層に形成された炭窒化チタン層の層間、酸化アルミニウム層の上層に、窒化チタン(TiN)層、炭化チタン(TiC)層、炭窒酸化チタン(TiCNO)層、炭酸化チタン(TiCO)層、窒酸化チタン(TiNO)層の群から選ばれる少なくとも1層、最下層18では特に窒化チタン層を介装することによって、基体2の成分の拡散防止、硬質被覆層3の各層間密着力の向上、炭窒化チタン層4、酸化アルミニウム層6の組織、結晶構造、密着力およびクラックの発生状態を制御する等が可能である。
また、炭窒化チタン層4の上層として形成する酸化アルミニウム層6は、スクラッチ試験にて行った付着力の測定で10〜50N、特に、10〜30Nの付着力を有することが、連続切削中に膜剥離が発生せずに優れた耐摩耗性を発揮することができ、断続切削中には酸化アルミニウム層6のみが剥離し、強靭な炭窒化チタン層4は剥離することなく残存して摩耗が急激に進行することを抑制し、優れた耐欠損性を発揮することができるため望ましい。
なお、上記スクラッチ試験とは、試料表面に触針を接触させた状態で一定の負荷をかけながら前記触針を一定の速度で試料表面をこすりながら傷をつけ、試料の硬質被覆層が剥離する負荷の値を剥離した層の付着力として読み取ることによって硬質被覆層中の各層の付着力を測定する試験法である。
ここで、本発明に使用される酸化アルミニウム層6としては、結晶構造がα型であることが望ましい。従来ではα型結晶構造をもつ酸化アルミニウム結晶は優れた耐摩耗性を持つが、核生成によって生成する酸化アルミニウム結晶の粒径が大きいため酸化アルミニウム層6と炭窒化チタン層4との界面における粒子同士の接触面積が小さくなって付着力が弱くなってしまい酸化アルミニウム層6が膜剥離を起こしやすいものである。しかし、上記構成によれば、酸化アルミニウム層6中の酸化アルミニウム結晶をα型結晶構造としても酸化アルミニウム層6の付着力を10〜50Nの範囲に容易に制御することができ、工具寿命のより長い工具1を得ることができる。
なお、Al層6をα型結晶構造とする場合には、炭窒化チタン層4と酸化アルミニウム層6との間に0.2μm以下の炭酸化チタン層、酸窒化チタン層または炭酸窒化チタン層のいずれかよりなる中間層8を介装することにより安定してα型結晶構造を成長させることができる。また、酸化アルミニウム層6の層厚は3〜8μmであることが耐摩耗性、特に鋳鉄に対する耐摩耗性および耐溶着性を維持しつつ、膜剥離を防止して耐欠損性を高めることができる点で望ましい。
ここで、前記カロテストの摩耗痕観察において、酸化アルミニウム層6の炭窒化チタン層4との界面から酸化アルミニウム層6の内部にわたってクラックが観察されることが、炭窒化チタン層4と酸化アルミニウム層6との界面に発生する残留応力を効果的に解消でき、かつ炭窒化チタン層4に過剰なクラックが発生することを防止して、炭窒化チタン層4のチッピングおよび剥離を防止できる点で望ましい。
また、炭窒化チタン層4と基体2の間に、付着力向上のおよび基体2成分の拡散による耐摩耗性の低下を防ぐため窒化チタン(TiN)層からなる最下層(図示せず)を被覆することが望ましい。また、最下層の層厚は0.1〜2μmの範囲であることが付着力の低下を防ぐ点で望ましい。
また、硬質被覆層3の最表面層19として窒化チタン層を形成することによって、工具1が金色を呈するため、工具1を使用したときに変色して使用済みかどうかの判別がつきやすく、また、摩耗の進行を容易に確認できるため望ましい。
なお、上記説明においては本発明の表面被覆部材を切削工具に応用した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、掘削工具、金型や摺動部材等の耐摩材等の耐摩耗性および耐欠損性が要求される構造材に好適に利用可能である。
(製造方法)
また、上述した表面被覆切削工具を製造するには、まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形した後、真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる基体2を作製する。
次に、上記基体2の表面を所望によって研磨加工した後、その表面に例えば化学気相蒸着(CVD)法によって硬質被覆層3を成膜する。筋状炭窒化チタン層4の成膜条件は、例えば、反応ガス組成として、体積%で塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、メタン(CH)ガスを0〜0.1体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.1〜3体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaにて成膜する。
ここで、本実施形態では、炭窒化チタン層の成膜前期(下部層11の成膜)時の成膜温度を800〜840℃に、かつ使用する反応ガス中のアセトニトリル(CHCN)ガスの混合割合を0.1〜0.4体積%とするとともに、炭窒化チタン層の成膜前期(下部層11の成膜)に使用する反応ガス中のアセトニトリル(CHCN)の割合よりも炭窒化チタン層の成膜後期(上部層12の成膜)に使用する反応ガス中のアセトニトリル(CHCN)ガスの混合割合を例えば1.5倍以上に増やすことによって、下部層11と上部層12の炭窒化チタン粒子の粒径を制御する。
ここで、上記成膜条件のうち、下部層成膜時の反応ガス中のアセトニトリルガスの割合が0.1体積%より少ないか成膜温度が800℃より低いと筋状炭窒化チタン結晶に成長させることができず粒状結晶となる。逆に反応ガス中のアセトニトリルガスの混合割合が0.4体積%を超えるか成膜温度が840℃より高いと炭窒化チタン結晶の断面視における平均結晶幅、および上部層の平均結晶幅との比を制御することができず、また、炭窒化チタン層の表面視における平均アスペクト比が小さくなる傾向になってクラックの進展を抑制する効果がない。
なお、成膜後期の成膜温度は850〜900℃であることが炭窒化チタン結晶の平均結晶幅を所定の構成に制御する点で有効である。
そして、本実施形態によれば、引き続き、酸化アルミニウム層6を成膜する。酸化アルミニウム層6の成膜方法としては、塩化アルミニウム(AlCl)ガスを3〜20体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜3.5体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.01〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0〜0.01体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、900〜1100℃、5〜10kPaとすることが望ましい。
また、窒化チタン(TiN)層を成膜するには、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを順次調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaとすればよい。
さらに、炭酸窒化チタン(TiCNO層を成膜するには、塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜3体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、二酸化炭素(CO
ガスを0.01〜5体積%、窒素(N)ガスを0〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを順次調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaとすればよい。
このとき、上述した方法に加えて、上記化学蒸着法にて硬質被覆層を成膜した後700℃までのチャンバの冷却速度を12〜30℃/分に制御することによって、炭窒化チタン層の組織を、上記カロテストにて所定のクラックが観察される組織に制御することができる。
なお、本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、例えば、上記説明においては成膜方法として化学蒸着(CVD)法を用いた場合について説明したが、硬質被覆層の一部または全部を物理蒸着(PVD)法によって形成したものであってもよい。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%、平均粒径2.0μmの炭化チタン(TiC)粉末を0.5質量%、TaC粉末を5質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMA120412)に成形した後、脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1500℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金にブラシ加工にて刃先処理(ホーニングR)を施した。
そして、上記超硬合金に対して、CVD法により各種の硬質被覆層を表1に示す条件で表2に示す構成の多層膜からなる硬質被覆層を成膜した試料No.1〜8の表面被覆切削工具を作製した。
Figure 0004593937
得られた工具について、硬質被覆層の断面を含む任意破断面または研磨面5ヵ所について走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮り、各写真おいてTiCN層の組織を観察した。このとき、炭窒化チタン層の総膜厚に対して基体側から総膜厚の1μmの高さ位置と酸化アルミニウム層(表面)側から総膜厚の0.5μmの高さ位置にそれぞれ図2に示すような線Aおよび線Bを引いて、それぞれの線分上を横切る粒界数を測定して炭窒化チタン結晶の結晶幅に換算した値を算出し、写真5ヶ所についてそれぞれ算出した結晶幅の平均値を平均結晶幅(w、w)として算出した。
上記金属顕微鏡写真またはSEM写真にて炭窒化チタン層が単層か多層かを確認し、多層である場合には、上部層と下部層との膜厚t、tを測定し、関係式t/tの値を計算した。なお、炭窒化チタン層の観察において層境界が明確でない場合には、上記破断面を研磨して鏡面状態とし、さらにアルカリ赤血塩溶液(村上氏試薬:10%KOH+10%KFe(CN))によるエッチング処理を施した状態とし、これを金属顕微鏡またはSEMにて観察した。結果は表2に示した。
また、上記表面被覆切削工具の硬質被覆層のクラック状態を、下記条件で行ったカロテスト試験によって生じた摩耗痕を金属顕微鏡またはSEMにて観察し、カロテスト摩耗痕で観察される炭窒化チタン層の下部組織と上部組織におけるクラックの幅b、bをそれぞれ測定した。結果は表2に示した。
装置:ナノテック社製CSEM−CALOTEST
鋼球
直径30mm球形鋼玉
ダイヤモンドペースト 1/4MICRON
摩耗痕中に露出する基体の直径が摩耗痕全体の直径に対して0.1〜0.6倍、(今回の測定では0.3〜0.7mm)となるように摩耗させた状態でクラックを観察した。なお、前記上部層組織の径方向長さLと下部層組織の径方向長さL(=L−L)を写真判定にて見積もった。また、前記クラックの幅については、摩耗痕の炭窒化チタン層領域の基体(内)側から1/5長さの位置に存在するクラック幅の平均値=b、摩耗痕7の炭窒化チタン層領域の酸化アルミニウム層(外)側界面位置に存在するクラック幅の平均値=bとして算出した。結果は表2に示した。
また、炭窒化チタン層を研磨加工によって下部層部分が見えるように薄くして透過型電子顕微鏡(TEM)にて組織を観察したところ、試料No.1〜4については、アスペクト比の平均が2以上の針状をなしていることを確認した。
さらに、硬質被覆層の付着力を、下記条件のスクラッチ試験によって測定した。結果は表2に示した。
装置:ナノテック社製CSEM−REVETEST
測定条件
テーブルスピード:0.17mm/sec
荷重スピード100N/min
圧子
円錐形ダイヤモンド圧子(東京ダイヤモンド工具製作所社製ダイヤモンド接触子:N2−1487)
曲率半径:0.2mm
稜線角度:120°
Figure 0004593937
なお、表2中の試料No.5は、表1の炭窒化チタン層6(TiCN6)の条件、すなわち、混合ガス中のアセトニトリル(CHCN)ガスの割合を連続的に増加させて作製した傾斜組織の炭窒化チタン層からなるものである。
そして、この切削工具を用いて下記の条件により、連続切削試験および断続切削試験を行い、耐摩耗性および耐欠損性を評価した。
(連続切削試験)
被削材 :ダクタイル鋳鉄スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:250m/分
送り速度:0.4mm/rev
切り込み:2mm
切削時間:20分
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:顕微鏡にて切刃を観察し、フランク摩耗量・先端摩耗量を測定
(断続試験)
被削材 :ダクタイル鋳鉄4本溝付スリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:200m/分
送り速度:0.3〜0.5mm/rev
切り込み:2mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:欠損に至る衝撃回数
衝撃回数1000回時点で顕微鏡にて切刃の硬質被覆層の剥離状態を観察
Figure 0004593937
表1〜3より、成膜後から700℃までの冷却速度が10℃/分より遅い試料No.5では、酸化アルミニウム層側の上部組織の径方向長さLの炭窒化チタン層全体の径方向長さL(ただし、L=L+L、ここでLは前記下部組織の径方向長さ)に対する比(L/L)が0.15を超え、切削においては微小チッピングが発生して衝撃回数1200回で欠損した。
さらに、同じ成膜条件で炭窒化チタン層を2層成膜した試料No.6、および炭窒化チタン層の成膜条件を連続的に変化させた試料No.7でも、カロテストの摩耗痕観察においてTiCN層のクラック発生の上部組織存在比(L/L)が0.15を超え、やはりチッピングが発生して1800個、および4100個加工した時点で欠損した。
これに対して、本発明に従い、炭窒化チタン層の基体側の下部組織(下部層)のクラック幅よりも酸化アルミニウム層側の上部組織(上部層)クラック幅が大きく、かつ上部組織存在比(L/L)が0.05〜0.15となる試料No.1〜4では、いずれも硬質被覆層の剥離が発生せず、連続切削においても断続切削においても長寿命であり、耐欠損性および耐チッピング性とも優れた切削性能を有するものであった。特に、炭窒化チタン層を多層とした試料No.1〜4、中でも下部層のクラック幅が0.5μmより小さく観察されにくくなっている試料1〜3が最も耐摩耗性、耐欠損性ともに優れていた。
表面被覆切削工具をカロテストした摩耗痕の金属顕微鏡像((a)本発明例、(b)従来例)である。 本発明の表面被覆部材の破断面における硬質被覆層領域についての走査型電子顕微鏡像である。 カロテストの試験方法を説明するための模式図である。 図1の摩耗痕の金属顕微鏡像についての要部拡大写真である。
符号の説明
1: 表面被覆切削工具
2: 基体
3: 硬質被覆層
4: 炭窒化チタン層
5: クラック
6: 酸化アルミニウム層
7: 摩耗痕
8: 中間層
11: 炭窒化チタン層の下部組織
12: 炭窒化チタン層の上部組織
13: 硬質球
14: 支持棒
15: 下部炭窒化チタン層(下部層)
16: 上部炭窒化チタン層(上部層)
19: 最表面層
: 炭窒化チタン層の下部組織(基体側)における平均クラック幅
: 炭窒化チタン層の上部組織(酸化アルミニウム層側)における平均クラック幅
: 炭窒化チタン層の下部組織(基体側)の径方向長さ
: 炭窒化チタン層の上部組織(酸化アルミニウム層側)の径方向長さ
: 炭窒化チタン層の基体側の平均結晶幅
: 炭窒化チタン層のAl層側の平均結晶幅
: 炭窒化チタン層の下部層の膜厚
: 炭窒化チタン層の上部層の膜厚

Claims (11)

  1. 基体の表面に2層の炭窒化チタン層と、その上層として酸化アルミニウム層とを含む硬質被覆層を有する表面被覆切削工具において、該表面被覆切削工具の表面に直径30mmの球形鋼玉からなる硬質球を接触させた状態で該硬質球をころがしながら自転させるように前記表面被覆切削工具の前記硬質球接触部分を局所的に摩耗させて、中心に前記基体が露出するように前記硬質被覆層に球曲面の摩耗痕を形成させるカロテストを行い、前記摩耗痕を観察した際、該摩耗痕の中心に存在する露出した基体の外周位置に観察される炭窒化チタン層に、クラック幅がゼロまたは小さい下部組織と、該下部組織の外周位置に観察されて前記下部組織よりもクラック幅が大きい上部組織とが存在し、前記上部組織の径方向長さLの前記炭窒化チタン層全体の径方向長さL(ただし、L=L+L、ここでLは前記下部組織の径方向長さ)に対する比(L/L)が0.05〜0.15の割合で観察されることを特徴とする表面被覆部材。
  2. 前記カロテストの摩耗痕観察において、前記炭窒化チタン層の下部組織中に観察されるクラックの幅が、前記上部組織中に観察されるクラックの幅に比べて1/2以下であること特徴とする請求項1記載の表面被覆部材。
  3. 前記炭窒化チタン層が、前記摩耗痕中心に存在する露出した基体の周囲に観察されてクラック幅がゼロまたは小さい下部炭窒化チタン層と、該下部炭窒化チタン層の周囲に観察されて前記下部炭窒化チタン層よりもクラック幅が大きい上部炭窒化チタン層との2層からなることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆部材。
  4. 前記下部炭窒化チタン層の膜厚tが1μm≦t≦10μm、前記上部炭窒化チタン層の膜厚tが0.5μm≦t≦5μmで、かつ、1<t/t≦5の関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の表面被覆部材。
  5. 前記炭窒化チタン層が前記基体表面に対して垂直に伸びる筋状組織の炭窒化チタン粒子からなるとともに、断面視による組織観察で記上部炭窒化チタン層をなす炭窒化チタン粒子の平均結晶幅が前記下部炭窒化チタン層をなす炭窒化チタン粒子の平均結晶幅より大きいことを特徴とする請求項3または4に記載の表面被覆部材。
  6. 前記炭窒化チタン層中の前記上部層における平均結晶幅wが0.2〜1.5μmであり、かつ、前記下部炭窒化チタン層における平均結晶幅wが前記上部炭窒化チタン層の平均結晶幅wの0.7倍以下であることを特徴とする請求項5記載の表面被覆部材。
  7. 前記炭窒化チタン層をTi(C1−x)と表したとき、前記下部炭窒化チタン層におけるxが0.55〜0.80、前記上部炭窒化チタン層におけるxが0.40〜0.55の組成からなることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の表面被覆部材。
  8. 前記下部炭窒化チタン層中の炭窒化チタン粒子が表面視による組織観察でアスペクト比の平均が2以上の針状をなすことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の表面被覆部材。
  9. 前記酸化アルミニウム層のスクラッチ試験における付着力が10〜50Nであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の表面被覆部材。
  10. 前記カロテストの摩耗痕観察において、前記酸化アルミニウム層の前記炭窒化チタン層との界面から酸化アルミニウム層の内部にわたってクラックが観察されることを特徴とする請求項9に記載の表面被覆部材。
  11. 請求項1乃至10のいずれか記載の表面被覆部材を具備する切削工具。
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