JP6130204B2 - 切削工具 - Google Patents

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本発明は、被覆層を被覆してなる切削工具に関する。
切削インサートとして、超硬合金やサーメット等の基体の表面に被覆層を成膜して、耐摩耗性、摺動性、耐欠損性を向上させたコーティング超硬合金が広く使われている。
例えば、特許文献1では、角型または台形形状の粒子からなるTiC層を成膜し、その表面にAl層を積層することによって、Al層の密着力が向上することが開示されている。また、特許文献2では、被覆層を形成した後、すくい面を研磨して、すくい面のスキューネス(Rsk)が負の値をとるように調整した切削工具が開示されている。さらに、特許文献3では、基体と被覆層との界面の表面粗さRzを、すくい面で0.5〜5μm、逃げ面で1〜30μmとして、被覆層の密着性が高くかつ被削材の溶着を抑制できることが開示されている。
特開2000−170907号公報 特開2007−313636号公報 特開2012−157916号公報
しかしながら、特許文献1の構成では、Al層の密着性は向上するものの、被削材との接触によって被覆層の表面から衝撃がかかった場合には、被覆層を構成する粒子に衝撃がかかってチッピングや剥離を引き起こすおそれがあった。また、特許文献2のようにすくい面における被覆層の表面が平滑となるように研磨すると、すくい面における耐摩耗性の低下や切屑の溶着を抑制できるものの、逃げ面においては被削材が接触する際に被覆層にチッピングや突発欠損が発生する場合があった。さらに、特許文献3のように、基体と被覆層との界面の表面粗さRzを、すくい面で0.5〜5μm、逃げ面で1〜30μmとした場合でも、逃げ面に被覆層のチッピングや突発欠損が発生する場合があった。さらにまた、逃げ面における被覆層の表面を研磨して平滑にすることも考えられるが、単純に逃げ面の被覆層の表面を研磨しても逃げ面におけるチッピングや突発欠損をなくすことはできなかった。
本発明は、上記課題に対して、被覆層を備える切削工具において、逃げ面におけるチッピングや突発欠損を抑制できる切削工具を提供することを目的とする。
一態様の切削工具は、基体の表面に、Al層を含む多層からなる被覆層を設けた
切削工具であって、逃げ面における前記被覆層の最表面は、前記逃げ面に直交する断面において、球状で頂部に平坦部を有する形状からなる頂部平坦球状粒子が前記逃げ面に沿った方向に複数並んだ構成からなり、かつ前記逃げ面における被覆層の最表面には3μm以上の深さを有する深クラックと3μm未満の深さを有する浅クラックとが存在し、前記逃げ面における前記被覆層の最表面がAl 層またはTiN層からなり、前記頂部平坦球状粒子は、前記断面において、前記頂部における曲率半径が最大長さに対して1/20より大きく、かつ、前記基体側から前記頂部までの高さに対する、前記基体側から9/10の位置における前記逃げ面に平行な直線の長さが、前記最大長さに対して2/5以上である切削工具。
本発明の切削工具によれば、逃げ面における被覆層の最表面が、球状で頂部に平坦部を有する形状からなる頂部平坦球状粒子が並んだ構成からなるので、逃げ面において被削材
が接触して被覆層に衝撃がかかっても、従来の被覆層の最表層のように、頂部が尖った一部の粒子や球状粒子の頂部のみに衝撃が集中して被覆層にチッピングや突発欠損が発生することが抑制できる。また、例え被覆層を構成する粒子が衝撃に耐えきれずに欠けて微小クラックが入ったとしても、微小クラックが進展すると被覆層の表面に存在する深クラックおよび浅クラックに合流して、クラックの進展方向が曲げられる。これによって、クラックの進展が抑制される結果、逃げ面に生じるチッピングや突発欠損を抑制することができる。
本発明の切削工具の好適例である切削インサートの一例について、(a)概略斜視図、(b)要部拡大断面図である。 図1の切削インサートの一例について、逃げ面における被覆層の最表面についての走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 図1の切削インサートの頂部平坦球状粒子の測定方法を説明するための図である。
本発明の切削工具の好適例である切削インサートの一例である図1を基に説明する。
図1の切削インサート(以下、インサートと略す場合がある。)1は、すくい面2と逃げ面3との交差稜線部が切刃4を構成しており、図1(a)のインサート1は、板状で主面が概略正方形形状(CNMA/CNMG)からなる。
本実施態様によれば、インサート1は、図1(b)に示すように、基体5の表面に、Al層12を含む多層からなる被覆層6が設けられている。被覆層6は、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物および炭窒酸化物のうちの1層以上と、α型結晶構造のAl層(以下、単にAl層と略す。)12と、TiNからなる最表層14とが順に積層されている。
そして、本実施態様によれば、逃げ面3における被覆層6の最表面についての走査型電子顕微鏡(SEM)写真である図2に示すように、逃げ面3における被覆層6の最表面に存在する最表層14は、球状で頂部に平坦部を有する頂部平坦球状粒子20が並んだ構成からなる。また、この逃げ面3における被覆層6の最表面には、深クラック21と浅クラック22とが存在する。これによって、逃げ面3において被削材が接触して被覆層6に衝撃がかかっても、被覆層6にチッピングや突発欠損が発生することを抑制できる。また、例え被覆層6を構成する頂部平坦球状粒子20が衝撃に耐えきれずに欠けて微小クラックが入ったとしても、微小クラックが進展すると被覆層6の表面に存在する深クラック21または浅クラック22に合流して、クラックの進展方向が曲げられる。これによって、クラックの進展が抑制される結果、逃げ面3に生じるチッピングや突発欠損を抑制することができる。
すなわち、逃げ面3においては、こすれ摩耗による摩耗の進行が主な寿命の要因であるが、場合によっては切屑が逃げ面側に衝突して逃げ面が欠損する場合がある。本発明においては、かかる逃げ面の突発的なチッピングや欠損を抑制して、安定した切削寿命を持つ切削インサート1となる。なお、浅クラック22が存在せず深クラック21のみが存在する場合には、クラック間間隔が長すぎて切削時に発生した微小クラックの進展を抑制する効果が十分でなく、または深クラック21自体によって被覆層6に被覆層6がチッピングや欠損が発生しやすくなってしまう。逆に深クラック21が存在せず浅クラックのみからなる場合には、被覆層6の内部応力が大きくなって、被覆層6自体の耐欠損性が低下する結果、被覆層6の耐摩耗性および耐欠損性がともに低下する。
ここで、本実施態様において、被覆層6を構成する粒子が頂部平坦球状粒子であるとは、被覆層6の最表面を含む研磨断面において、任意位置において、図3の頂部平坦球状粒子の測定方法の概念図を用いて説明する。視野内における最表面の粒子(10個以上)の輪郭をトレースし、この輪郭に、粒子20の頂部Tにおける曲率半径Rが粒子の最大長さW1に対して1/20以下の尖頭部がないかどうかを確認する。尖頭部が2つ以上存在する場合には、粒子が球状でないとして、被覆層6の最表面の粒子が球状か否かを判別する。粒子が球状であると判定された場合には、被覆層6の最表面に存在する粒子の連続10個の形状を観察し、その頂部Tに平坦部があるか否かを以下の方法で確認する。すなわち、図3に示すように、粒子の頂部の高さhから1/10の高さだけ低い高さ0.9h(粒子の基体側端部から粒子の高さに対して9/10の位置)に、その粒子が存在する直下の基体の表面と平行な直線Lを引き、この直線を横切る粒子の幅を確認する。この粒子の幅W2が、粒子の最大長さW1に対して2/5以上の幅を有するものを、頂部が平坦であると定義する。頂部が平坦である粒子の数が10個中の7個以上である場合に、被覆層6の最表面の粒子が頂部平坦球状粒子であると定義する。
また、本実施態様において、深クラックおよび浅クラックは、以下のように定義する。走査型電子顕微鏡にて逃げ面における被覆層6を表面から観察した図2のような顕微鏡写真において、最表層を構成する粒子の平均粒径を算出し、この平均粒径の10倍を超える長さにわたって隙間が空いた部分を深クラックと定義する。深クラック21は3μm以上の深さを有し、被覆層6を3μm程度研磨しても被覆層6の表面から消失しない。深クラック21は、被覆層6を成膜した後の冷却段階で、Al層の熱膨張係数差によって発生する。一方、粒子の平均粒径の10倍以下の長さにわたって隙間が空き、その両端では隙間が塞がれている部分を浅クラックと定義する。浅クラック22は3μm未満の深さを有し、被覆層6を3μm程度研磨すると被覆層6の表面から消失する。浅クラックは成膜の途中で形成され、その後に最表面を構成する粒子が堆積して隙間の一部が塞がれたものが多数を占める。
なお、本実施態様では、逃げ面3における被覆層6の最表面がAl層またはTiN層からなる。ここで、頂部平坦球状粒子20は被覆層6の成膜工程の調整によって生成させることができる。すなわち、被覆層6のうちのAl層は、後述する特定の条件で前処理するとともに特定の条件で成膜することによって、Al粒子が基体に垂直な方向がc軸に向くように成膜されることが望ましい。このc軸配向のAl粒子は頂面が球状となるように成長する傾向にある。本実施態様によれば、その後、TiN層を成膜するが、TiN層の成膜の最終段階で混合ガスにおけるTiClガスの割合を通常条件よりも10〜20%少なくするとともに、通常条件よりも成膜温度を10〜30℃低くして成膜する。これによって、最表面のTiN粒子の頂部には平坦部が形成され、頂部平坦球状粒子となる。また、逃げ面3の最表面がAl層からなる場合には、上記Al層の成膜に際して、Al層を成膜する最終段階で混合ガスにおけるAlClガスの構成比率を10〜20%少なくするとともに、成膜温度を10〜30℃低くして成膜する。これによって、Al粒子の頂部に平坦部が形成され、Al粒子が頂部平坦球状粒子となる。
また、本実施態様によれば、頂部平坦球状粒子20の平均粒径は0.5〜2μmである。これによって、逃げ面3における被覆層6の最表面の耐摩耗性が高くなる。
一方、すくい面2においては、常に切屑が通過する状態であるから、切屑の溶着およびクレータ摩耗の進行を抑制する目的で、ブラスト加工やブラシ加工等の一般的な研磨方法によって、被覆層6の表面が研磨されていることが望ましい。なお、研磨面をSEMにて観察すると、粒子間に微小な研磨屑(研磨かす)が詰まって粒子の輪郭が確認できない状
態となる。逃げ面において研磨加工を施すこともできるが、過剰品質による製造コストが高くならないように、逃げ面3では研磨していない。
上記頂部平坦球状粒子20が並んだ構成からなる逃げ面3における被覆層6の最表面のスキューネス(Rsk)は−0.15〜−0.5であり、すくい面2における被覆層6の
最表面のスキューネス(Rsk)は−0.3〜−10.0である。
さらに、逃げ面3における被覆層6のAl層は、平面視でc軸配向した粒子の比率が50面積%以上の割合からなる。これによって、逃げ面3における被覆層6の最表面がより頂部平坦球状粒子20となりやすくなる。ここで、本実施態様において、c軸配向した粒子の比率を算出するには、被覆層6の表面にAl層を露出させ、被覆層6の表面を鏡面とした状態で電界放出型走査顕微鏡(FE−SEM)を用いて後方散乱電子回折像(EBSD)解析から前記酸化アルミニウム層の各粒子の結晶方位を特定し、これに基づいてカラーマップを作成して各Al粒子のカラーマップの色から粒子の向きを確認する。カラーマップは、(0,0,0,1)面の結晶方位を赤色、(1,0,−1,0)面の結晶方位を青色、(1,0,1,0)面の結晶方位を緑色として表示し、マンセルの色彩マップにおいて5RP〜10YRの赤系色となる粒子をc軸配向粒子として特定し、各粒子がc軸配向しているかどうかを判定し、c軸配向した粒子の面積比率を算出する。
また、本実施態様によれば、逃げ面3における被覆層6の最表面において、深クラック21および浅クラック22を合わせた平均クラック間間隔が2〜10μmである。これによって、逃げ面3における被覆層6のチッピングおよび突発欠損を大幅に抑制することができる。なお、平均クラック間間隔は、逃げ面3における被覆層6の最表面の走査型顕微鏡写真(5000倍)を撮り、16μm×20μmの領域について、深クラック21および浅クラック22を確認する。そして、写真の縦または横に平行な線をそれぞれ写真の縦または横の端からそれぞれ1/4、1/2、3/4の高さに3本、合計6本の直線を引き、この直線の長さを、直線を横切る深クラック21および浅クラック22の数で割った値とする。なお、本実施態様によれば、上記観察領域における深クラック21の本数は2〜6本であり、浅クラック22の本数は5〜30本である。これによって、逃げ面3のチッピングおよび欠損がより効率的に抑制される。
また、Al層12の基体5側に形成される被覆層は、TiC、TiN、TiCN、TiCNO、TiCO、TiNOの群から選ばれる1層以上が好適に用いられ、耐摩耗性および耐欠損性が向上する。本実施態様によれば、具体的な構成として、基体5の直上には第1層としてTiN層7が形成され、第2層としてTiCN層(第2TiCN層と称す場合がある。)8−10が形成されている。第2TiCN層8−10としては、アセトニトリル(CHCN)ガスを原料として含み成膜温度が780〜900℃と比較的低温で成膜した柱状粒子からなる、いわゆるMT−TiCN(中温炭窒化チタン)層8,9と、成膜温度が950〜1100℃と高温で成膜した、いわゆるHT−TiCN(高温炭窒化チタン)層10とが順に成膜された構成であることが望ましい。さらに、MT−TiCN層8,9は、平均粒子幅が0.5μm未満と微細な微細柱状粒子からなる微細MT−TiCN層と8、平均粒子幅が0.5〜2μmと比較的大きい粗大柱状粒子からなる粗大MT−TiCN層9との積層からなることが望ましい。これによって、HT−TiCN層10と中間層11とを介して積層されるAl層12の密着力が高まり、被覆層の剥離やチッピングを抑えることができる。
なお、本発明において、被覆層6を構成する粒子が粒状であるとは、被覆層6を構成する粒子の任意10個について最長長さとそれに直交する長さとの比であるアスペクト比を各粒子ごとに求めて、その平均値が1.5未満のものを指す。このアスペクト比が1.5
以上の場合には、被覆層6を構成する粒子が柱状であるという。
また、本実施態様によれば、HT−TiCN層10とAl層12との間には、TiCNOからなる厚み0.05〜0.5μmの中間層11が設けられている。この酸素成分の存在によって、α型Al層12を構成する粒子を、平均粒径0.05〜2μmのα型結晶構造のAl粒子とすることができ、耐摩耗性を向上させることができる。
なお、各層の厚みおよび各層を構成する粒子の性状は、インサート1の断面における電子顕微鏡写真(走査型電子顕微鏡(SEM)写真または透過電子顕微鏡(TEM)写真)を観察することにより、測定することが可能である。
一方、インサート1の基体5は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種と、からなる硬質相を、コバルト(Co)やニッケル(Ni)等の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金やTi基サーメット、またはSi、Al、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)等のセラミックスのいずれかが好適に使用できる。中でも、インサート1を切削工具として用いる場合には、基体5は、超硬合金またはサーメットからなることが耐欠損性および耐摩耗性の点で望ましい。また、用途によっては、基体5は炭素鋼、高速度鋼、合金鋼等の金属からなるものであっても良い。
(製造方法)
また、本実施態様のインサートの製造方法の一実施態様について説明する。
まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形する。その後、得られた成形体を真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる基体を作製する。そして、上記基体の表面に所望によって研磨加工や切刃部のホーニング加工を施す。
次に、得られた基体の表面に化学気相蒸着(CVD)法によって被覆層を形成する。
まず、基体の直上に1層目としてTiN層を形成する。TiN層の成膜条件としては、混合ガス組成として四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を800〜940℃、圧力を8〜50kPaにて成膜される。
次に、2層目としてTiCN層を形成する。ここでは、TiCN層が、平均粒子幅が小さい微細柱状粒子層と、この層よりも平均粒子幅が大きい粗柱状粒子層とのMT−TiCN層と、HT−TiCN層との3層にて構成する場合の成膜条件について説明する。
MT−TiCN層のうちの微細柱状粒子層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.1〜0.4体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を780〜900℃、圧力を5〜25kPaとする。MT−TiCN層のうちの粗柱状粒子層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜4.0体積%、窒素(N)ガスを5〜40体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.4〜2.0体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を780〜900℃、圧力を5〜25kPaとする。
HT−TiCN層の成膜条件は、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜5体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜30体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を950〜1100℃、圧力を5〜40kPaとして成膜する。
そして、チャンバ内を950〜1100℃、5〜40kPaとし、四塩化チタン(TiCl)ガスを1〜5体積%、メタン(CH)ガスを4〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜30体積%、一酸化炭素(CO)ガスを4〜8体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整してチャンバ内に10〜60分導入した後、続いて、成膜温度を950〜1100℃、5〜40kPaにて、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜10体積%、残りが窒素(N)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に10〜60分導入することによって、中間層を成膜する。なお、このCOガスを含む混合ガスを流す工程を経ることなく中間層を形成することもできるが、α型Al層を構成する粒子を微細なものとするためには、COガスを含む混合ガスを流す工程を経ることが望ましい。
そして、引き続き、Al層を形成する。Al層の成膜前の前処理条件としては、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを0.5〜2.0体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜5.0体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入し、温度を950〜1100℃、圧力を5〜15kPaとする。
次に、Al層の成膜条件としては、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを0.5〜2.0体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜3.5体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0〜0.5体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入し、成膜温度を950〜1100℃、圧力を5〜15kPaとして成膜する。
Al層が最表層となる場合には、成膜最終段階(例えば10分間)で、成膜温度を10〜30℃低くし、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスをそれまでの含有割合よりも0.2体積%以上少なくして、0.3〜1.7体積%に変更して成膜する。
さらに、所望により、α型Al層の上層に上層TiN層を形成する。
最表層を成膜する前の前処理条件としては、まず、メタンガスを0.5〜2.5体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入し、炉内温度を950〜1025℃、圧力を5〜15kPaとして10〜60分保持し、その後、四塩化チタン(TiCl)ガスを1〜5体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入する条件とする。そして、成膜温度を950〜1050℃、圧力を5〜15kPaとして、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜30体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入してTiN層を成膜する。
なお、TiN層の成膜の最終段階の10分間程度は、成膜温度を10〜30℃低くし、四塩化チタン(TiCl)ガスをそれまでの含有割合よりも0.2体積%以上少なくして、四塩化チタン(TiCl)ガスを0.3〜9.8体積%、窒素(N)ガスを5〜30体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に導入し、成膜温度を930〜1030℃、圧力を5〜15kPaに変更して成膜する。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMG120412)に成形した。得られた成形体について、脱バインダ処理
を施し、0.5〜100Paの真空中、1400℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金に対して、ブラシ加工にてすくい面側について刃先処理(Rホーニング)を施した。
そして、上記超硬合金をCVD装置内にセットし、以下の順序で被覆層を成膜した。まず、四塩化チタン(TiCl)ガスを2.0体積%、窒素(N)ガスを33体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を880℃、ガス圧を16kPaにてTiN層を成膜した。次に、四塩化チタン(TiCl)ガスを2.5体積%、窒素(N)ガスを25体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.2体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を865℃、圧力を15kPaとして、TiCN層の下側のMT−TiCN層を成膜した。そして、四塩化チタン(TiCl)ガスを2.5体積%、窒素(N)ガスを25体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.5体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を865℃、圧力を9kPaとして、TiCN層の上側のMT−TiCN層を成膜した。その後、四塩化チタン(TiCl)ガスを3.5体積%、メタン(CH)ガスを7体積%、窒素(N)ガスを25体積%の割合で含み、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、成膜温度を1010℃、圧力を20kPaとして、HT−TiCN層を成膜した。
そして、チャンバ内を1000℃、30kPaとし、四塩化チタン(TiCl)ガスを2体積%、メタン(CH)ガスを8体積%、窒素(N)ガスを20体積%、一酸化炭素(CO)ガスを6体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整してチャンバ内に20分導入して成膜した後、成膜温度を1000℃、20kPaにて、二酸化炭素(CO)ガスを5体積%、残りが窒素(N)ガスからなる混合ガスをチャンバ内に20分導入して、TiCNOからなる中間層を成膜した。
次に、表1に示す前処理条件を用いて表2の条件で前処理をした後、表1に示す成膜条件を用いて表2の条件でAl層を成膜した。その後、Al層の上層に、表1に示す前処理条件を用いて表2の条件で前処理をした後、表1に示す成膜条件を用いて表2の条件でTiN層またはAl層を成膜し、表2に示す冷却速度で冷却してインサートを作製した。
得られたインサートについて、逃げ面の表面(被覆層の最表面)、および逃げ面の被覆層を含む鏡面加工した断面について走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、Al層および最表層(Al層またはTiN層)を構成する粒子の形状、平均粒径、厚み、深クラックおよび浅クラックの本数とクラック間間隔(表中、間隔と記載)を測定した。結果は表3に示した。なお、試料No.15については、逃げ面において被覆層の最表層を研磨除去してAl層を露出させたことから、被覆層の表面から最表層を観察しても、Al層を構成するAl粒子の輪郭および浅クラックの存在状態は確認できなかった。また、接触式の表面粗さ測定器を用いて、インサートのすくい面および逃げ面におけるスキューネス(Rsk)を測定した。測定条件は、JISB0601−20
01に準拠して、カットオフ値0,25mm、基準長さ0.8mm、走査速度0.1mm/秒とした。さらに、電界放出型走査顕微鏡(FE−SEM)を用いて後方散乱電子回折像(EBSD)解析からAl層の各粒子の結晶方位を特定し、これに基づいてカラーマップを作成して、c軸配向したAl粒子の比率(c軸配向割合)を算出した。結果は表3に示した。
次に、このインサートを用いて以下の切削条件にて切削試験を行った。結果は表4に示した。
<切削条件>
切削方法:旋削
被切削材:SCM435 4本溝入丸棒
切削速度:150m/分
送り量:0.5mm/rev
切り込み量:2.0mm
切削条件:湿式切削
評価項目:逃げ面のチッピングや欠損により工具寿命に至った時間と、5分間切削した後の切刃状態を観察した。
表1〜4に示される結果から、前処理なく最表層であるTiN層を成膜した試料No.
12では、最表層を構成するTiN粒子の形状が尖頭状の頂部の粒子を含む粒状となり、逃げ面にチッピングが発生した。また、前処理2を行わないで最表層であるTiN層を成膜した試料No.13では、浅クラックが発生せず、逃げ面の被覆層に剥離が発生した。そして、最表層であるTiN層を成膜する際に、成膜条件が最後まで同じ条件で成膜した試料No.14では、逃げ面の最表層を構成するTiN粒子の形状が頂部に平坦部がない球状となり、逃げ面の被覆層に剥離が発生した。さらに、Al層を成膜する際に、成膜条件が最後まで同じ条件で成膜し、その上部にTiN層を成膜したが、逃げ面におけるTiN層を研磨除去してAl層を露出させた試料No.15では、逃げ面にチッピングが発生した。
これに対して、最表面は、球状で頂部に平坦部を有する形状からなる頂部平坦球状粒子が並んだ構成からなり、かつ深クラックと浅クラックとが存在する試料No.1〜11では、いずれも優れた工具寿命を発揮した。
1 切削インサート(インサート)
2 すくい面
3 逃げ面
4 切刃
5 基体
6 被覆層
7 TiN層
8、9 MT−TiCN層
10 HT−TiCN層
11 中間層
12 Al
14 最表層
20 頂部平坦球状粒子
21 深クラック
22 浅クラック

Claims (6)

  1. 基体の表面に、Al層を含む多層からなる被覆層を設けた切削工具であって、逃げ面における前記被覆層の最表面は、前記逃げ面に直交する断面において、球状で頂部に平坦部を有する形状からなる頂部平坦球状粒子が前記逃げ面に沿った方向に複数並んだ構成からなり、かつ前記逃げ面における被覆層の最表面には3μm以上の深さを有する深クラックと3μm未満の深さを有する浅クラックとが存在し、
    前記逃げ面における前記被覆層の最表面がAl 層またはTiN層からなり、
    前記頂部平坦球状粒子は、前記断面において、前記頂部における曲率半径が最大長さに対して1/20より大きく、かつ、前記基体側から前記頂部までの高さに対する、前記基体側から9/10の位置における前記逃げ面に平行な直線の長さが、前記最大長さに対して2/5以上である切削工具。
  2. 前記頂部平坦球状粒子の平均粒径が0.5〜2μmである請求項1記載の切削工具。
  3. 前記逃げ面における前記被覆層の最表面のスキューネス(Rsk)が−0.15〜−0
    .5である請求項1または2記載の切削工具。
  4. 前記逃げ面における前記被覆層の前記Al層は、平面視でc軸配向した粒子の数が50%以上の割合からなる請求項1記載の切削工具。
  5. 前記逃げ面における前記被覆層の最表面において、前記深クラックおよび前記浅クラックを合わせた平均クラック間間隔が2〜10μmである請求項1乃至のいずれか記載の切削工具。
  6. すくい面における前記被覆層の最表面は、研磨加工されている請求項1乃至のいずれか記載の切削工具。
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