JP2007313539A - 精錬容器の補修方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶融金属を鋳型に注ぐ際に用いられ、耐火物が内張りされた精錬容器を補修する精錬容器の補修方法は、耐火物と同成分の骨材とアルミニウム又はシリコンとを含む粉体を、酸素により耐火物の補修箇所に吹き付け、金属及び酸素のテルミット反応により補修を行い、金属及び酸素のテルミット反応は、燃料噴出管32から燃料を噴出させて着火する段階と、着火後、スプレーノズル31から酸素を噴出させながら粉体を吹き付け、テルミット反応を開始させる段階と、テルミット反応開始後、燃料噴出を停止させる段階を経て開始される。
【選択図】図3
Description
このような精錬容器は、流し込まれる高温の溶鋼やスラグ等によって損傷を受けることがあり、溶損の状態によっては補修をしなければならないことがある。
しかし、このような水系の補修材を使用する場合、部分的な補修で十分にも拘わらず、内張り面全体に補修材を施工しなければならず、手間がかかるという問題がある。
そこで、部分的な補修でよい場合には、局部溶損部に煉瓦の部分積み替えを行い、周囲部にはカーボン含有耐火物を用いて補修範囲をなるべく少なくするという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、コークス炉の補修方法として、操業中に酸化性粒子及び耐火性粒子とCa−Si、Al−Mg等の金属粉とを補修箇所に吹き付けてテルミット反応を起こして補修する溶射を利用した補修方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、前記特許文献2に記載の補修方法では、操業中のコークス炉における補修であり、壁面温度が600℃〜1000℃の環境下で補修を行うものであるから、テルミット反応を容易に起こせるのであるが、前述した精錬容器は、操業を止めて容器を冷却した状態で補修するのが通常であるから、前記特許文献2に記載の補修方法をそのまま適用することはできない。
ここで、補修対象となる精錬容器としては、例えば、タンディッシュ、取鍋の他、二次精錬装置である真空脱ガス炉や、トーピードカー、トーピードカーと転炉の間に用いられる溶銑鍋等が考えられる。
また、テルミット反応は、精錬容器の補修箇所を予め高温にしておき、粉体を吹き付けることにより起こさせてもよく、着火源を用いて酸素を燃焼させることによりテルミット反応を起こさせてもよい。
また、補修後の耐火物に水分が含有されないので、補修後の精錬容器を使用しても、鋼中に水素がピックアップされて鋼の品質が低下することもない。
さらに、Al及びSiの少なくともいずれか一方を骨材に含ませることにより、テルミット反応時の発熱量を大きくすることができる上、テルミット反応によってこれらの元素からアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)が生成するので、そのまま耐火物として使用することができる。
具体的には、補修作業に際しては、耐熱対策を講じた場合に作業可能な温度として500〜600℃まで冷却し、さらには作業可能な温度としてはより低い温度である100℃以下で常温程度まで、冷却しても粉体の吹き付けを行うことができる。
この発明によれば、精錬容器が補修作業可能な温度に冷却されていることにより、作業者による精錬容器の取り扱いが容易となるため、効率的に補修作業を行うことができる。
ここで、吹付ノズルへの着火は、例えば、トーチランプ等を用いて行うことができる。
また、補修箇所近傍とは、補修作業ができれば特に規定されるものではないが、1m以内が推奨される。
この発明によれば、補修箇所近傍で着火することにより、着火後直ちに粉体の吹き付けを開始して、テルミット反応による補修作業を行うことができる。
この発明によれば、吹付ノズルに燃料噴出管が設けられていることにより、燃料噴出管に着火して燃焼させ、着火後、酸素を噴出させながら粉体を吹き付けるだけで、テルミット反応を開始させることができるため、補修作業の作業性が一層向上する。
また、燃料噴出管から噴出される燃料を燃焼させて着火した後、テルミット反応を開始させることにより、精錬容器の状態によらず補修作業を行うことができるため、作業環境によらずに補修作業を実施することができる。
〔1〕取鍋1の構造
図1には、本発明による補修対象となる精錬容器としての取鍋1が示され、この取鍋1は、連続鋳造において最初に溶鋼が投入される容器であり、溶鋼が投入されると、溶鋼中の介在物が浮遊してくるので、取鍋1内に溶鋼を投入した際、この介在物の除去も行われる。
取鍋1は、図1に示されるように、容器本体11と、この容器本体11の底部に設けられるロングノズル12及び上ノズル13とを備えて構成され、ロングノズル12は、タンディッシュへの溶鋼注入時、鋳込み流を直接大気と触れさせないで酸化を防止する他、タンディッシュに注入された溶鋼流の乱れを防止するために設けられている。
容器内側面に内張りされる耐火煉瓦113、115は、例えば、コランダム及びスピネルを主成分とする材料から構成されている。さらに、耐火煉瓦113のうち、上部の取鍋スラグと接触する部分には、耐溶損性からマグネシアを主成分とする材料が使用されることもある。
容器底部に内張りされる耐火煉瓦115のうち、ロングノズル12の挿入孔の羽口回り部の耐火煉瓦115は、例えば、コランダム及びムライトを主成分とする材料から構成され、容器内側面に内張りされる耐火煉瓦113よりも耐溶損性の高い材料が採用されている。
さらに、上ノズル13の挿入孔の羽口回りの箇所Bにも損傷が生じる。この部分の損傷は、上ノズル13の酸素洗浄の際に発生する酸化鉄により生じるものである。
図2には、本発明による他の補修対象となるタンディッシュ2が示され、このタンディッシュ2は、取鍋1のロングノズル12から供給される溶鋼を受け入れ、溶鋼中の介在物をさらに除去した後、溶鋼を連続鋳造用の鋳型に供給する。
タンディッシュ2は、図2に示されるように、容器本体21と、この容器本体21の底部に設けられ、鋳型に溶鋼を供給するための浸漬ノズル22とを備えて構成される。尚、図2では図示を略したが、浸漬ノズル22は、容器本体21の底部に複数設けられており、各浸漬ノズル22の下部にはそれぞれ鋳型が配置され、タンディッシュ2に投入された溶鋼は、容器本体21内で分配され、各鋳型に供給される。
このタンディッシュ2に用いられる耐火煉瓦213は、例えば、ムライトを主成分とする材料から構成されている。
また、容器本体21内部には、耐火煉瓦213の面から突出して堰214が設けられ、この堰214は、溶鋼の流れをコントロールしたり、溶鋼中の介在物を浮遊させるために設けられている。
また、取鍋1の場合と同様に、浸漬ノズル22の交換時に、羽口回りにも箇所Dにも損傷が生じる。
さらに、タンディッシュ2では、操業中常時溶鋼の流れがあり、溶鋼のスラグラインSに応じた耐火煉瓦213の箇所Eに溶損が生じる。
図3には、本発明に係る補修装置3が示されており、この補修装置3は、スプレーノズル31及び燃料噴出管32を備えて構成されている。
スプレーノズル31は、補修材及び金属からなる粉体及び酸素を噴出する部分であり、図示を略したが、粉体を噴出するコンプレッサと、酸素ボンベ等の酸素供給源とに接続されている。
燃料噴出管32は、燃料ガス等の可燃性ガスを噴出する部分であり、やはり図示を略したが、ガスボンベ等の燃料ガス供給源に接続されている。
補修装置3の着火に際しては、燃料ガスを噴出させた状態で火花やグロー放電を利用して着火する。
次に、図3に基づいて、前記の補修装置3による補修手順について説明する。
まず、溶射に使用する骨材は、基本的には、内張りされた耐火煉瓦の材質と同様のものを採用するのが好ましく、また、テルミット反応を生じさせるには、アルミニウム(Al)やシリコン(Si)等を骨材に混合して粉体を構成する。具体的には、前述した損傷箇所に応じて、例えば、次のような粉体成分を採用するのが好ましい。
■損傷箇所A:コランダム80質量%+スピネル10質量%+金属アルミニウム10質量%
■損傷箇所A’:マグネシア90質量%+金属アルミニウム10質量%
■損傷箇所B:コランダム80質量%+ムライト10質量%+金属アルミニウム10質量%
■損傷箇所C〜E:ムライト90質量%+金属アルミニウム10質量%
次に、図3の3Bに示されるように、燃料ガスの燃焼状態を維持したまま、コンプレッサを駆動して、酸素を噴出させながら粉体の吹付を開始し、燃焼ガスの燃焼温度によりテルミット反応を開始させる。
最後に、テルミット反応が安定したら、図3の3Cに示されるように、燃料ガスの噴出を遮断して、粉体を損傷箇所に吹き付け、溶射補修を行う。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、次に示すような変形をも含むものである。
前記実施形態では、補修装置3が燃料噴出管32を備え、この燃料噴出管32から燃料ガスを噴出させてこれに着火することでテルミット反応を起こさせていたが、本発明はこれに限られない。すなわち、補修対象となる精錬容器を予めテルミット反応開始温度まで加熱しておき、これに粉体及び酸素を吹き付けることでテルミット反応を起こさせてもよく、トーチランプ等の燃焼装置を別途準備しておき、これを用いて補修箇所近傍で粉体及び酸素のテルミット反応を起こさせてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
〔1〕従来の補修方法
従来の補修方法として、次の補修方法を比較対象とした。
■流し込み補修
タンディッシュ2を連続鋳造設備から取り外し、補修材を水で混練した水系の不定形補修材をタンディッシュ内に流し込み、養生及び乾燥を行う補修方法である。
流し込み補修と同様に、タンディッシュ2を連続鋳造設備から取り外し、タンディッシュ2内の損傷した耐火煉瓦を剥がし、新たな煉瓦に積み替えて行う補修方法である。
■湿式吹付補修
タンディッシュ2を連続鋳造設備上に取り付けたまま、スプレーガンで水系の不定形補修材を吹き付けた後、乾燥させて行う補修方法である。
■パッチング補修
補修箇所に粘土状又はパテ状の補修材を塗りつけて行う補修方法である。
各方法による補修に要した施工時間、施工に要した補修材の施工量、及び補修後の再補修が必要となるまでの溶鋼のチャージ数、すなわち耐用に基づいてそれぞれの補修方法の評価を行った。
各補修方法による評価結果を表1に示す。
前述した実施形態に係る補修方法では、施工時間が2時間であり、補修材の施工量も100kgと少なくて済み、かつ50チャージまで再補修が必要ないという結果が得られた。
これに対して、流し込み補修による補修方法は、再補修が必要となるまでは100チャージと長くなるが、施工時間が12時間と長く、また、補修材の施工量も200kgと多い。
また、煉瓦積み替え補修においても、乾燥時間を4時間確保しなければならず、施工時間が6時間と長く、補修材の施工量も200kgと多い。
そして、パッチング補修は、施工時間は1時間と短く、補修材の施工量も100kgと少ないが、3チャージ程度で再補修が必要となるため、操業中に何度も補修を行わなければならない。
以上のことから、前述した実施形態に係る補修方法は、施工時間、施工量、耐用すべてについてバランスがとれており、さらに水分乾燥の時間を確保する必要がなく、鋼中の水素ピックアップのおそれもないので、最も優れた補修方法であることが確認された。
Claims (4)
- 溶融金属を鋳型に注ぐ際に用いられ、耐火物が内張りされた精錬容器を補修する精錬容器の補修方法であって、
前記耐火物と同成分の骨材と、アルミニウム及びシリコンの少なくともいずれか一方とを含む粉体を、酸素により前記耐火物の補修箇所に吹き付け、金属及び酸素のテルミット反応により補修することを特徴とする精錬容器の補修方法。 - 前記精錬容器をテルミット反応が生じる温度以下に冷却した状態で、前記粉体の吹き付けを行うことを特徴とする請求項1に記載の精錬容器の補修方法。
- 前記粉体の吹き付けは、吹付ノズルを用いて行い、
前記金属及び酸素のテルミット反応は、前記補修箇所近傍で吹付ノズルに着火して開始させることを特徴とする請求項1に記載の精錬容器の補修方法。 - 前記吹付ノズルには、粉体の吹付とともに燃料を噴出する燃料噴出管が設けられ、
前記金属及び酸素のテルミット反応は、
前記燃料を噴出させて着火する段階と、
着火後、前記酸素を噴出させながら前記粉体を吹き付け、テルミット反応を開始させる段階と、
テルミット反応開始後、燃料噴出を停止させる段階とを経て開始させることを特徴とする請求項3に記載の精錬容器の補修方法。
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