JP3551604B2 - 火炎溶射方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、工業窯炉の内壁を熱間で補修する火炎溶射補修方法に関する。とりわけ、易被酸化性金属粉と粉状の耐火性酸化物を噴射ノズル内で酸素含有ガスと混合して溶融状態または半溶融状態にし、コークス炉、高炉、製鋼窯炉等の内壁に、熱間で溶射する火炎溶射補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
火炎溶射補修技術を用いて行う損傷炉壁耐火物の補修は、修復すべき炉壁耐火物材質と略同様な組成を有する補修用耐火性粉体に、酸化性粉体を配合した混合粉体を火炎溶射補修材料とするもので、酸化性粉体を燃焼させた時の発熱を利用すると共に、酸化性粉体自身も酸化物となり、耐火物粉体と一緒に耐火性補修層を形成するものである。
【0003】
そして、火炎溶射補修では適正な溶射効率を保持するバーナが使用される。通常の可燃性ガスを大容量使用することを考慮したバーナ構造として、例えば特開昭55−111860号公報に開示されているように、可燃性ガス(プロパンガス等)と支燃性ガス(酸素ガス等)を火炎発生前で完全に混合するプレミックス型の火炎発生構造がある。
【0004】
上記のプレミックス型バーナ構造で火炎溶射補修する場合、例えば特開昭55−111860号公報に記載されているように、一般的には溶射材料として耐火性酸化物のみを使用しており、易被酸化性金属粒子(以下、金属粒子という)と耐火性酸化物粒子(以下、酸化物粒子という)とからなる混合耐火材料は使用されていなかった。
【0005】
これに対し、特公平2−45110号公報に開示されるように、金属粒子と酸化物粒子とからなる混合耐火材料を可燃性ガスと共に支燃性ガス気流中に噴射し溶射補修する方法がある。この方法によると、酸化物粒子のみを溶射材料とした場合と比較して、金属粒子の酸化発熱を利用することによって可燃性ガスの発熱寄与を低減することが可能になった。
【0006】
これらをもとに大容量の火炎溶射補修を行う場合、可燃性ガスと支燃性ガスを火炎発生前に完全に混合するプレミックス型の火炎発生構造を有し、金属粒子と酸化物粒子とからなる混合耐火材料を可燃性ガスと共に支燃性ガス気流中に噴射し溶射補修する方法ないしノズルが考えられ、特開平7−218147号公報に開示されている。
【0007】
しかしながら、上記方法をそのまま適用しただけでは、ノズル内で金属粒子、状況によっては酸化物粒子までもが溶融、固化して付着物が発生・成長してノズルが閉塞する。そのために吹き付け補修層が緻密化しなかったり、溶射材料の炉壁での付着歩留りも低下するという問題点があり、必然的に溶射作業のコスト高騰を招いた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
可燃性ガスと支燃性ガスとを火炎発生前で完全に混合するプレミックス型の火炎発生構造を有する溶射機で、金属粒子を配合した溶射材料を用いる溶射補修における重要課題は以下の通りである。
(1)ノズル閉塞の防止
(2)耐火体補修層の緻密化
(3)溶射材料の歩留り向上
本発明は、ノズル閉塞を防止しつつ耐火性補修層の緻密性の向上等、上記課題を有利に解決出来る経済性に優れる火炎溶射補修方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者等の実験・検討結果に基づく、本発明における上記問題を解決するための手段を以下に記す。
(a)ノズル閉塞の防止
可燃性ガスと支燃性ガスをバーナ以前で完全に混合するプレミックス型の火炎発生構造で、金属粒子を配合した溶射材料を用いる場合、ノズル閉塞は、材料吐出口付近での付着物の成長によることが観察された。材料吐出口付近での付着物の成長は、金属粒子のノズル内での溶融・酸化燃焼によるためと推定される。そして、金属粒子の燃焼時間はその粒径に依存し、その粒径が小さい程燃焼時間が短い。そこで、金属粒子のノズル内での溶融・燃焼を防止するには、該金属粒子の粒径を制御する必要がある。ところで、さらに詳細に観察すると、金属粒子によるものとは別に、酸化物粒子の溶融が見いだされた。金属粒子に比べて融点の高い酸化物粒子においても、温度の高い火炎中では、熱容量の小さな粒径の小さい粒子は、ノズル内において溶融する可能性があるので、その粒径を制御する必要がある。
(b)耐火体補修層の緻密化
ノズル内での金属粒子、さらには酸化物粒子の溶融、燃焼に起因するノズル閉塞を防止することによって、金属粒子及び酸化物粒子を溶融ないし半溶融状態で効率良く被溶着物の表面に到達させると共に、ここで金属粒子を燃焼させる。その結果、混合耐火材料の粒子が確実に溶融あるいは半溶融状態になることにより吹き付け補修層の緻密性を向上させることができる。
(c)溶射材料の歩留り向上
ノズル内での金属粒子、さらには酸化物粒子の溶融、燃焼に起因するノズル閉塞を防止することによって効率良く金属粒子及び酸化物粒子を対象表面に到達させ得るばかりでなく、前述のように混合耐火材料の粒子が完全に溶融あるいは半溶融状態になることにより付着層を効率良く形成させ、溶射材料の歩留りを向上することができる。
【0010】
本発明は以上の手段を総合し、上記課題を解決するものである。
すなわち、第1の発明の技術手段は、易被酸化性金属粒子と耐火性酸化物粒子とからなる混合耐火材料が可燃性ガスとともに支燃性ガスと混合し、次いで火炎が発生するプレミックス型のノズルを用いて被補修物に溶射する火炎溶射方法において、前記易被酸化性金属粒子は、粒子径(μm)が、下記(1)式で表されるD i 以上であるか又は下記(1)式で表されるD i までの積算質量分率が30%以下である粒度分布を有することの何れかを特徴とする火炎溶射方法である。
【0011】
D i =ki × L (1)式
ここでLは、混合耐火材料が可燃性ガスとともに支燃性ガスと混合する領域に流入する流路の軸線と支燃性ガスが該領域に流入する流路の軸線とが交差する点からバーナタイル先端までの距離(mm)である。また、kiは、前記易被酸化性金属粒子がシリコンの場合は、2 . 0であり、アルミニウムの場合は、2.5である。
【0012】
上記のいずれの発明においても、金属(合金を含む)粒子については、Si,Al,SiMn,CaSi,FeSi 等のうちいずれか一種または二種以上とすることでよいが、特にSiを使用した場合に効果を発揮する。また、酸化物粒子としては、シリカ、ムライト、シャモット系等のうちのいずれか一種類以上を含むものとすることでよい。
【0013】
金属粒子の形状については、特に規定はなく、その粒径の上限は溶射可能な範囲であればよいが、好ましくは最大粒子径を0.3mm以下にすることによって、付着層の緻密性、基体への接着性のさらなる向上を図ることが可能となる。また、酸化物粒子の形状についても特に規定はないが、好ましくは該酸化物粒子の最大粒子径を0.5mm以下にすることによって、付着層の緻密性、基体への接着性の更なる向上を図ることが可能になる。
【0014】
なお、本発明における粉体の粒度測定法に関しては常法に従うことでよい。すなわち、粒度測定法としては、光学・電子等による顕微鏡法、ふるい分け法、重力・遠心沈降法、光透過法、比表面積測定による吸着法等、いずれでもよい。
以上、本発明によれば、金属粒子の酸化・燃焼性の向上はもちろん、付着層自身の緻密性をも向上させ、更には金属粒子の微粉を使用しないことによる安全性も向上出来る効果を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
図9に、本発明の適用される火炎発生前に酸化物粒子4及び金属粒子5と、可燃性ガス3、支燃性ガス6が完全に混合するプレミックス型の火炎バーナ構造の例を示した。なお、図9において(a)は正面図、(b)は側断面図である。可燃性ガス3、耐火性粒子4、金属粒子5はノズル本体9の中心より外側にある流路2を通ってバーナタイル1から前方へ噴射される。中心に位置する支燃性ガス6は流路8を通って送られ、ノズルキャップ7に衝突して半径方向に進路を曲げ、上記可燃性ガス3、耐火性粒子4、金属粒子5と混合する。この混合位置から、バーナタイル1の先端の火炎発生点までの距離Lが重要な要素である。
【0016】
発明者らは、種々の実験結果や熱バランスを検討し、金属粒子5(以下、金属シリコン)の粒径(μm)が、図9に示されるL(mm)に対し、D1 ≧2Lであればノズル閉塞が防止できることを見出した。このようなD1 ≧2Lを満たす粒径を有する金属シリコン粒子はノズル内では溶融せず、ノズル外の火炎中に出て始めて溶融を開始するものである。上記距離Lは、金属シリコン粒子を含む混合耐火材料が可燃性ガス3(例えばプロパンガス)とともに支燃性ガス6(例えば酸素ガス)と混合するに際し、混合耐火材料4、5がこの領域に流入する流路の軸線と支燃性ガス6がこの領域に流入する流路の軸線とが交差する点から火炎発生点までの距離である。
【0017】
上記知見について、アルミニウムの金属粒子5についても同様に検討したところ、その粒径がLに対し、D i ≧2.5Lであればノズルの閉塞は生じないことが判った。係数ki は、金属粒子5の融点T(K)と密度ρ(g/cm3 )、比熱c(J/g・k)に依存するものである。
【0018】
ところで、ある粒度分布を有する金属粒子5をある粒径以上にふるい分けることは工業的に不利である。そこで,さらに検討を加えた結果、前記D1 までの積算質量分率が30%以下の粒度分布を有するものであれば,ノズル閉塞は実質的に問題ないことが判った。積算質量分率が30%を超えると小粒が多くなり、これらがノズル内で溶融し,ノズルが閉塞しやすくなる。なお、好ましくは,積算質量分率が15%以下の粒度分布を有する金属粒子5を用いることによってノズル閉塞をほぼ完全に防止することができる。
【0022】
【実施例】
[実施例1]
温度750℃に設定した珪石質の基体れんがに、図9に示すノズル構造を有するバーナにより火炎溶射を行い、付着層(溶射補修層)を形成した。このノズルは、混合耐火材料4、5(シリカ質粉体および金属シリコン粉体)が可燃性ガス3(プロパンガス)と共に支燃性ガス6(酸素ガス)と混合するに際し、混合耐火材料が該領域に流入する流路の軸線と支燃性ガス6が該領域に流入する流路の軸線とが交差する点から火炎発生点までの距離L(図9中におけるL)が10mmと30mmの2種類を用いた。溶射条件を表1に示す。また、酸化物粒子であるシリカ質粉体の粒度分布を図1に示す。
【0023】
一方、金属粒子である金属シリコン粉体の粒度分布を図2〜6に示す。溶射はこれらの金属シリコンを20μmまたは60μmで細粒側をカットしたものと、そのままの粒度分布のものを使用した。
溶射の成績としては、ノズルが閉塞するまでの時間、溶射後の付着層の見かけ気孔率、付着層中の残留金属量、材料歩留り(全混合耐火材料に対する付着量)を調べ、表2に粒度分布とともに示した。
【0024】
D i =ki ×L(シリコンの場合ki =2)で規定される粒径以下の積算質量分率が30%を超え,比較的微粉の多い実験番号G、Hに対し、30%以下であるA〜Fは、ノズル閉塞までの時間が長く、付着層の見かけ気孔率や材料歩留りが高くなっている。とりわけ、積算質量分率をC、Fのように15%以下とすることにより、さらにはA、Dのように粒度D i =ki ×L未満の微粉をカットすることにより、その効果はとりわけ顕著である。
【0025】
アルミニウム粉体の粒度分布を図7、8に示した。溶射はこれらのアルミニウムを75μmで篩分けて細粒をカットしたものと、そのままの粒度分布のものを使用した。
溶射成績として、ノズルが閉塞するまでの時間、溶射後の付着層の見かけ気孔率、付着層中の残留金属量、材料歩留り(全混合耐火材料に対する付着量)を調べ、表2に粒度分布とともに示す。
【0026】
D i =ki ×L(アルミニウムの場合ki =2.5)で規定される粒径以下の積算質量分率が30%を超え,比較的微粉の多い実験番号Kに対し、30%以下であるI,Jは、ノズル閉塞までの時間が長く、付着層の見かけ気孔率や材料歩留りが高くなっている。とりわけ、IのようにD i 未満の微粉をカットすることにより、その効果は顕著である。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた酸化物粒子の粒度分布を示す図である。
【図2】実施例の実験番号A,Bで用いられ,粒子径20μmまでの積算質量分率が28%である金属粒子の粒度分布を示す図である。
【図3】実施例の実験番号Cで用いられ、粒子径20μmまでの積算質量分率が8%及び粒子径60μmまでの積算質量分率が15%である金属粒子の粒度分布を示す図である。
【図4】実施例の実験番号Gで用いられ、粒子径20μmまでの積算質量分率が33%である金属粒子の粒度分布を示す図である。
【図5】実施例の実験番号D,Eで用いられ、粒子径60μmまでの積算質量分率が30%である金属粒子の粒度分布を示す図である。
【図6】実施例の実験番号Hで用いられ、粒子径60μmまでの積算質量分率が34%である金属粒子の粒度分布を示す図である。
【図7】実施例の実験番号I,Jで用いられ、粒子径75μmまでの積算質量分率が28%である金属粒子の粒度分布を示す図である。
【図8】実施例の実験番号Kで用いられ、粒子径75μmまでの積算質量分率が32%である金属粒子の粒度分布を示す図である。
【図9】バーナ以前で材料と可燃性ガスと支燃性ガスが完全に混合するプレミックス型の火炎バーナ構造で、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
1 バーナタイル
2 流路
3 可燃性ガス
4 酸化物粒子
5 金属粒子
6 支燃性ガス
7 ノズルキャップ
8 支燃性ガスの流路
9 ノズル本体
Claims (2)
- 易被酸化性金属粒子と耐火性酸化物粒子とからなる混合耐火材料が可燃性ガスと共に支燃性ガスと混合し、次いで火炎が発生するプレミックス型のノズルを用いて被補修物に溶射する火炎溶射方法において、
前記易被酸化性金属粒子は、粒子径(μm)が、下記(1)式で表されるD i 以上であることを特徴とする火炎溶射方法。
D i =ki × L (1)式
ここで
L: 混合耐火材料が可燃性ガスと共に支燃性ガスとの混合領域に流入する流路の軸線と支燃性ガスが該流路に流入する流路の軸線とが交差する点からバーナタイル先端までの距離(mm)
ki :易被酸化性金属粒子がシリコンの場合は、2 . 0であり、アルミニウムの場合は、2.5である。 - 前記粒子径(μm)が、(1)式で表されるD i 以上であることに代えて、(1)式で表されるD i までの積算質量分率が30%以下である粒度分布を有することを特徴とする請求項1記載の火炎溶射方法。
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