JP3716445B2 - 火炎溶射補修材料および火炎溶射補修方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、窯炉や金属溶湯用炉等の内張りなどの耐火物、特にシリカ質の炉壁耐火物の補修材料として好適な火炎溶射補修材料および火炎溶射補修方法に関するものである。
【0002】
火炎溶射補修材料を用いての損傷炉壁耐火物の補修は、修復すべき炉壁耐火物材質と略同様な組成を有する補修用耐火性粉体に、酸化性粉体を配合した混合粉体を火炎溶射補修材料とし、酸化性粉体を燃焼させたときの発熱を利用すると共に、酸化性粉体自身も耐火性酸化物となり、耐火性粉体と一緒に耐火性補修層を形成するものである。
【0003】
【従来の技術】
これまで、火炎溶射補修技術としては、例えば、耐火物粒子と混合した50μm以下の易被酸化性物質粒子を酸素気流中で搬送し、熱間雰囲気中に噴射し燃焼させて補修層(耐火物)を形成させる特公昭49-46364号公報(耐火物の形成方法および装置)に開示されている技術、あるいは、耐火性粒体と酸化性粒体の粒径と粒径分布とを特定した特公平 5-21865号公報(耐火体成形方法および耐火体成形用組成物)に開示されている技術などがある。
【0004】
特に、特公平 5-21865号公報の火炎溶射補修技術では、混合物として溶射する粒体の粒度が、耐火性粒体の80%および20%粒径の平均を酸化性粒体の80%および20%粒径の平均よりも大きくし、耐火性粒体の粒径範囲分布(size range spread factors) が 1.2以上になるようにすることを特徴とする耐火体成形方法を提供し、形成される耐火体の気孔率の低減をはかっている。
【0005】
ここで、粒径範囲分布率:f(G)は以下の式であらわされる。
f(G)=2・(G80−G20)/(G80+G20)
ただし、G80はその種類の粒体の80%粒径、G20はその種類の粒体の20%粒径である。
【0006】
しかしながら、これらの火炎溶射補修技術においては、酸化性粒子の燃焼だけでは全体の耐火性粒子を溶融あるいは半融状態にするには熱量が不足する。このため、緻密で強固な付着層を得るのは困難になる。この解決策として、熱量を多くするために酸化性粒子の量を増加する手段が考えられるが、酸化性粒子の増量に伴い火炎溶射補修材料の単価が上昇し、コスト低減を目的とする炉壁耐火物の補修には不向きとなる。
【0007】
また、耐火性粒子の粒径の微小な粒子量が限定されていないため、酸化性粒子の燃焼と同時に耐火性粒子の微小粒子が優先的に溶融し、これが未燃焼酸化性粒子を包んでしまい、酸化性粒子が完全に燃焼されない場合が多々発生する。
【0008】
そして、酸化性粒子が未燃焼のまま炉壁耐火物や補修層に付着し補修層内に存在すると、この補修層内の未燃焼酸化性粒子が酸化される時に体積変化が起こるため、補修層と炉壁耐火物との間の膨張差が生じ、壁炉から補修層が剥離するなどのトラブルが発生する場合がある。
【0009】
さらに、これまでの火炎溶射補修方法は、表面が冷えた温度管理されていない炉壁耐火物表面に火炎溶射補修材料を溶射するため、熱衝撃によって、炉壁耐火物に亀裂などの損傷の発生あるいは亀裂の進行が生じる場合があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
耐火性酸化物粉体と易被酸化性金属粒子とを配合した火炎溶射補修材料を用いる炉壁耐火物の補修における重要課題は以下の通りである。
▲1▼易被酸化性金属粒子の燃焼性の向上。
▲2▼耐火体補修層内への未燃焼易被酸化性金属粒子の混入防止。
▲3▼コスト低減。
▲4▼耐火体補修層の緻密化。
▲5▼耐火体補修層の炉壁耐火物への接着性の向上。
▲6▼炉壁耐火物に加わる熱衝撃の緩和。
【0011】
したがって、この発明は、耐火性補修層の緻密性の向上すなわち気孔率の低減など上記課題を有利に解決できる経済性に優れる火炎溶射補修材料および好適な火炎溶射補修方法を提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らの実験・検討結果にもとづく、この発明における上記課題を解決するための手段を以下に記す。
【0013】
▲1▼ 易被酸化性金属粒子の燃焼性の向上
溶射される火炎溶射補修材料が炉壁耐火物に到達するまでに、耐火性酸化物粒子を溶融あるいは半溶融状態にし、易被酸化性金属粒子の酸化反応を完了させておくことが重要であり、そのため、易被酸化性金属粒子をより細粒化し、かつ該金属粒子が完全に酸化反応を終了するまで耐火性酸化物粒子に包まれないような粒度構成とする。かくすることにより、易被酸化性金属粒子の燃焼性は向上し、耐火性酸化物粒子の溶融が容易になる。
【0014】
▲2▼ 耐火体補修層内への未燃焼易被酸化性金属粒子の混入防止
細粒化による易被酸化性金属粒子の燃焼性を向上することと耐火性酸化物粒子の微小粒子量を減少させることとで、炉壁あるいは耐火体補修層に易被酸化性金属粒子が到達する時には該金属粒子は燃焼を完了していて、補修層内に未燃焼易被酸化性金属粒子が混入することがなくなる。これにより耐火体補修層の体積変化に起因する炉壁からの耐火体補修層の剥離は防止できる。
【0015】
▲3▼ コスト低減
易被酸化性金属粒子をより細粒化してその燃焼性を向上させることで、易被酸化性金属粒子を多量に使用しなくてもよくなる。なお、易被酸化性金属粒子の燃焼時間が短すぎると材料を吐出するノズル等への材料の付着が生じ歩留りが低下するため粒径が小さすぎる易被酸化性金属粒子は除去することがよい。
【0016】
▲4▼ 耐火体補修層の緻密化
耐火性酸化物粉体の粒径範囲分布率を 1.2未満とし、かつ細粒化による易被酸化性金属粒子の燃焼性をよくすることで、耐火性酸化物粒子の溶融あるいは半溶融状態にすることが容易になり、補修層の緻密性を向上できる。
【0017】
▲5▼ 耐火体補修層の炉壁耐火物への接着性の向上
(4)項に記載と同様の手段により、耐火性酸化物粒子を溶融あるいは半溶融状態にすることが容易となり、炉壁耐火物への接着性を向上できる。
【0018】
▲6▼ 炉壁耐火物に加わる熱衝撃の緩和
特にシリカ質れんがの熱膨脹は300 〜500 ℃の温度域で大きく、それ以上の温度ではほとんど変化しない。したがって、補修する炉壁耐火物表面温度を高温に管理することで、熱衝撃が緩和され、炉壁耐火物の損傷や亀裂の進行を防止でき、ひいては健全な補修層も得られる。
【0019】
この発明は、以上の手段を総合し、上記した課題を解決するものである。
すなわち、この発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0020】
(1) 溶射して耐火物を補修する、耐火性酸化物粉体の一種以上と燃焼して耐火性酸化物を形成する易被酸化性金属粒子の一種以上との混合粉体からなる火炎溶射補修材料であって、
耐火性酸化物粉体の粒径範囲分布率が 1.2未満で、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の10%にあたる粒径が、0.5mm 以下の粒径の易被酸化性金属粉体の積算質量分率の20〜50%にあたる粒径の範囲にあり、かつ易被酸化性金属粉体の最大粒径が、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の90%にあたる粒径以下とすることを特徴とする火炎溶射補修材料(第1発明)。
【0021】
(2) 第1発明の火炎溶射補修材料を 700℃以上の温度の耐火物表面へ溶射することを特徴とする火炎溶射補修方法(第2発明)。
【0022】
そして、この発明になる火炎溶射補修材料は、気流で搬送し、易被酸化性金属粒子を燃焼させ、耐火性酸化物粒子の表面あるいは全体を溶融または半溶融状態にし、炉壁耐火物損傷部に吹き付けることにより炉壁に耐火体補修層を形成させ、炉壁耐火物の損傷部を修復する。この時、易被酸化性金属粒子自身は酸化熱を発生すると同時に、耐火性溶融酸化物となり、溶融あるいは半溶融状態の耐火性酸化物粒子と融合し緻密な耐火体補修層を形成する。
【0023】
ここで、粒径範囲分布率:f(G)は、下記式であらわされる。
f(G)=2・(G80−G20)/(G80+G20)
ただし、
G80:粉体の積算質量分率80%の粒径
G20:粉体の積算質量分率20%の粒径
【0024】
【作用】
この発明の作用について以下に述べる。
この発明において、その火炎溶射補修材料を溶射して形成される耐火体補修層の気孔率を低減できるのは、使用する耐火性酸化物粉体の粒径範囲分布率を 1.2未満とし、該粉体の積算質量分率と、粒径が 0.5mm以下の易被酸化性金属粉体の積算質量分率とを互いに拘束し合わせる火炎溶射補修材料とすることにある。
【0025】
火炎溶射補修材料を溶射して耐火体補修層を形成するにあたって、易被酸化性金属粒子の粒径が大き過ぎると燃焼しきれないまま補修層内に混入してしまい補修層が剥離するなどのトラブルを生じたり熱エネルギーの損失が大きくなったりする。
【0026】
また、易被酸化性金属粉体の燃焼に際し、耐火性酸化物粉体の粒径のバラツキが大きいとこれらを溶融あるいは半溶融状態にする時間差が大きくなり耐火体補修層の緻密性に悪影響をおよぼし、さらに耐火性酸化物粉体の微小粒子量を限定しないと易被酸化性金属粒子の燃焼と同時に耐火性酸化物微小粒子が金属粒子に融着して未燃焼金属粒子を耐火性酸化物で包んでしまい未燃焼金属粒子が補修層内に混入し上記と同様に剥離などの問題を生じる。
【0027】
そこで、この発明においては、粒径範囲分布率が 1.2未満の耐火性酸化物粉体の積算質量分率の10%にあたる粒子径が、 0.5mm以下の易被酸化性金属粉体の積算質量分率の20〜50%にあたる粒径の範囲にあり、かつ易被酸化性金属粉体の最大粒径が、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の90%にあたる粒径以下とする火炎溶射補修材料とし、上記問題を解決するものである。
【0028】
すなわち、耐火性酸化物粉体の粒径範囲分布率を 1.2未満としたのは、その粒径のバラツキを小さくして耐火性酸化物粒子の溶融・半融化を均一化し耐火体補修層の緻密性を向上させるためである。
【0029】
また、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の10%にあたる粒径が易被酸化性金属粉体の積算質量分率の50%以下にあたる粒径と規定したのは、これより大きい粒径の耐火性酸化物粒子ではその溶融・半融化が不十分となり緻密な耐火体補修層が形成されなく、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の10%にあたる粒径が易被酸化性金属粉体の積算質量分率の20%以上にあたる粒径と規定したのは、これより小さい粒径の耐火性酸化物微小粒子が多く含まれると、易被酸化性金属粒子が十分に燃焼しないうちにそれらの耐火性酸化物微小粒子が易被酸化性金属粒子に融着して該金属粒子を包んでしまい、未燃焼の易被酸化性金属粒子が耐火体補修層内に混入して耐火体補修層が剥離するなどのトラブルを生じるためである。
【0030】
一方、易被酸化性金属粉体の粒径を 0.5mm以下とし、その最大粒径を耐火性酸化物粉体の積算質量分率の90%にあたる粒径としたのは、耐火性酸化物粉体の溶融・半融化と関連させて易被酸化性金属粉体の燃焼性の向上をはかったものであり、易被酸化性金属粒子の粒径が大きすぎると十分に燃焼しないままこれが耐火体補修層に達して該補修層内に混入してしまい、上記したような耐火体補修層の剥離などのトラブルを生じ、また熱的エネルギーの損失も大きくなり耐火性酸化物粒子の溶融・半融化が不十分となり耐火体補修層の緻密性が損なわれる。
【0031】
なお、易被酸化性金属粉体において粒径の小さすぎる微小粒子が多く含まれると、これらの微小金属粒子は容易に溶融して吐出ノズル等へ融着し歩留りが低下するとともに火炎溶射の作業性を損なうことがある。また微小金属粒子は混合中あるいは溶射装置への搬入中等での発火や、搬送管内での圧力低下等に起因する逆火等の恐れがあり危険が伴う。したがって易被酸化性金属粉体は微小金属粒子を除去しておくことが好ましい。
【0032】
以上、この発明になる火炎溶射補修材料を用いれば、易被酸化性金属粉体の酸化・燃焼性の向上、炉壁への接着性はもちろんのこと耐火体補修層自身の緻密性も向上できる効果を有する。
ここで、易被酸化性金属粒子としては、Si, Mn, Al, Mg, SiMn, CaSi, FeSi, FeMn, FeCrおよびCaC2等のうちのいずれか一種以上とすることでよく、また耐火性酸化物粒子としては、シリカ、アルミナ、ムライト、シャモット系、ジルコン、ジルコニア、スピネル、マグネシアおよびマグクロ等のうちのいずれか一種以上とすることでよい。これらは耐火性補修層の目標組成に合わせて易被酸化性金属粉体と耐火性酸化物粉体とを配合することにより目的を達成できる。
【0033】
なお、この発明においては、耐火性酸化物粒子および易被酸化性金属粒子の性状については特に規定するものではなく、粉体の粒度測定法に関しては常法にしたがうことでよい。すなわち粒度測定法としては、光学・電子顕微鏡法、ふるい分け法、重力・遠心沈降法、光透過法、比表面積測定による吸着法等がある。
【0034】
つぎに、この発明においては、補修する炉壁耐火物の表面温度を高温に管理した状態で上記火炎溶射補修材料を溶射し、補修する。
【0035】
これまでの火炎溶射補修方法は、前記したように冷却された状態の炉壁耐火物表面に火炎あるいは燃焼によって、溶融あるいは半溶融状態の粒子を付着させ補修する方法であり、特に炉壁耐火物表面温度の管理はなされていなかった。
したがって、冷えた状態の炉壁耐火物表面に火炎溶射補修材料を溶射すると、溶射によって炉壁耐火物表面が急激に加熱され、その熱衝撃によって炉壁耐火物の損傷あるいは亀裂の進行を引き起すことになる。
【0036】
なお、一般に、コークス炉炭化室内面の炉壁耐火物の補修の際には、炉壁耐火物の補修面の背面は燃焼室になっているためその背面温度は高く炉壁耐火物の厚さ方向に温度勾配がある状態で火炎溶射補修材料が溶射されるが、この場合においても上記と同様に熱衝撃による炉壁耐火物の損傷あるいは亀裂の進行を引き起す。
【0037】
そこで、上記現象について、熱応力計算と実験とを重ねた結果、れんが(炉壁耐火材)の表面温度が 700℃未満で火炎溶射補修を行った場合には、れんがの破壊強度を超える応力が発生し、れんがに損傷や亀裂などの進行が生じること、逆にれんがの表面温度を 700℃以上にして火炎溶射補修を行った場合には、れんがに発生する応力はれんがの破壊強度以下となり、れんがには損傷や亀裂の進行が生じないこと、などが確認された。
【0038】
したがって、炉壁耐火物の火炎溶射補修を行うにあたっては、炉壁耐火物の表面温度を 700℃以上とすることが重要で、かくすることにより、炉壁耐火物の損傷や亀裂の進行を防止でき、ひいては健全な耐火体補修層を得ることができる。
【0039】
【実施例】
実施例1
図1〜3に示す粒度分布のシリカ質の耐火性酸化物粉体と、図4〜10に示す粒度分布の金属シリコンの易被酸化性金属粉体とから選んだ各一種づつを重量比で(耐火性酸化物粉体):(易被酸化性金属粉体)=95:5〜70:30の範囲で混合して火炎溶射補修材料とし、これらの火炎溶射補修材料を用い、雰囲気温度 750℃の実験炉に設置した基体れんがに火炎溶射し付着層(耐火体補修層)を形成させ、材料歩留り、付着層中の未燃焼金属粒子の混入率および付着層の見かけ気孔率などを調査した。
【0040】
火炎溶射補修材料の物性と調査結果を表1にまとめて示す。
【表1】
【0041】
ここで、図1は粒径範囲分布率f(G)が1.16の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の10%の粒径が 5.4μm、90%の粒径が 202μmのシリカ質粉体、図2は粒径範囲分布率f(G)が1.12の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の10%の粒径が21μm、90%の粒径が 580μmのシリカ質粉体、図3は粒径範囲分布率f(G)が1.72の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の10%の粒径が 4.0μm、90%の粒径が98μmのシリカ質粉体であり、
図4は最大粒径が80μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が 1.9μm、50%の粒径が29μmの金属シリコン粉体、図5は最大粒径が80μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が 4.8μm、50%の粒径が32μmの金属シリコン粉体、図6は最大粒径が99μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が0.54μm、50%の粒径が6μmの金属シリコン粉体、図7は最大粒径が 450μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が 1.9μm、50%の粒径が 200μmの金属シリコン粉体、図8は最大粒径が 275μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が 2.5μm、50%の粒径が32μmの金属シリコン粉体、図9は最大粒径が47μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が0.22μm、50%の粒径が0.58μmの金属シリコン粉体、図10は最大粒径が 550μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が2μm、50%の粒径が 220μmの金属シリコン粉体である。
【0042】
表1から明らかなように、比較例に比しこの発明に適合する火炎溶射補修材料を用いた適合例は、易被酸化性金属粒子の燃焼性がよく付着層中への未燃焼金属粒子の混入がなく、付着層の気孔率が低くその緻密性に優れ、さらに火炎溶射補修材料の歩留りも向上している。
【0043】
実施例2
シリカ質の耐火性酸化物粉体:85wt%と金属シリコンの易被酸化性金属粉体:15wt%との混合粉体からなるこの発明に適合する火炎溶射補修材料を、背面温度を1200℃とし表面温度を 500〜900 ℃の範囲で変化させたコークス炉で使用されていた亀裂の多数存在するシリカ質れんがに、火炎溶射処理したのち、各れんがの損傷状況として亀裂の進行状況を調査した。
これらの調査結果を表2にまとめて示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2から明らかなように、れんがの表面温度を 700℃以上として火炎溶射したこの発明の適合例には亀裂の進行は見られないのに対し、れんがの表面温度を 650℃以下とした比較例には、亀裂の進行が見られる。
【0046】
【発明の効果】
この発明は、耐火性酸化物粒子と易被酸化性金属粒子との混合粉体からなり、かつ、粒径範囲を特定した耐火性酸化物粉体の積算質量分率と、特定粒径以下の易被酸化性金属粉体の積算質量分率とが互い拘束し合う火炎溶射補修材料および火炎溶射補修方法であって、
この発明になる火炎溶射補修材料を用いて窯炉や金属溶湯用炉などの内張り耐火物の損傷部を補修すれば、易被酸化性金属粉体の燃焼性が向上することにより火炎溶射補修用材料自身のコストが低減できるとともに接着性に優れる緻密な耐火体補修層が形成でき、さらに炉壁耐火物表面温度を 700℃以上で補修すれば炉壁を損傷させることなく補修でき耐火物の寿命を大幅に向上できる。このようなことから、耐火物原単位および原単価の低減や操業安定性にも寄与することのほか、補修作業における安定性および作業性が向上し、コストも低減する。したがって、この発明になる火炎溶射補修材料および火炎溶射補修方法は、各種炉の補修に極めて有利に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた粒径範囲分布が1.16の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図2】実施例で用いた粒径範囲分布が1.12の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図3】実施例で用いた粒径範囲分布が1.72の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図4】実施例で用いた最大粒径が80μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図5】実施例で用いた最大粒径が80μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図6】実施例で用いた最大粒径が99μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図7】実施例で用いた最大粒径が 450μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図8】実施例で用いた最大粒径が 275μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図9】実施例で用いた最大粒径が47μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図10】実施例で用いた最大粒径が 550μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【産業上の利用分野】
この発明は、窯炉や金属溶湯用炉等の内張りなどの耐火物、特にシリカ質の炉壁耐火物の補修材料として好適な火炎溶射補修材料および火炎溶射補修方法に関するものである。
【0002】
火炎溶射補修材料を用いての損傷炉壁耐火物の補修は、修復すべき炉壁耐火物材質と略同様な組成を有する補修用耐火性粉体に、酸化性粉体を配合した混合粉体を火炎溶射補修材料とし、酸化性粉体を燃焼させたときの発熱を利用すると共に、酸化性粉体自身も耐火性酸化物となり、耐火性粉体と一緒に耐火性補修層を形成するものである。
【0003】
【従来の技術】
これまで、火炎溶射補修技術としては、例えば、耐火物粒子と混合した50μm以下の易被酸化性物質粒子を酸素気流中で搬送し、熱間雰囲気中に噴射し燃焼させて補修層(耐火物)を形成させる特公昭49-46364号公報(耐火物の形成方法および装置)に開示されている技術、あるいは、耐火性粒体と酸化性粒体の粒径と粒径分布とを特定した特公平 5-21865号公報(耐火体成形方法および耐火体成形用組成物)に開示されている技術などがある。
【0004】
特に、特公平 5-21865号公報の火炎溶射補修技術では、混合物として溶射する粒体の粒度が、耐火性粒体の80%および20%粒径の平均を酸化性粒体の80%および20%粒径の平均よりも大きくし、耐火性粒体の粒径範囲分布(size range spread factors) が 1.2以上になるようにすることを特徴とする耐火体成形方法を提供し、形成される耐火体の気孔率の低減をはかっている。
【0005】
ここで、粒径範囲分布率:f(G)は以下の式であらわされる。
f(G)=2・(G80−G20)/(G80+G20)
ただし、G80はその種類の粒体の80%粒径、G20はその種類の粒体の20%粒径である。
【0006】
しかしながら、これらの火炎溶射補修技術においては、酸化性粒子の燃焼だけでは全体の耐火性粒子を溶融あるいは半融状態にするには熱量が不足する。このため、緻密で強固な付着層を得るのは困難になる。この解決策として、熱量を多くするために酸化性粒子の量を増加する手段が考えられるが、酸化性粒子の増量に伴い火炎溶射補修材料の単価が上昇し、コスト低減を目的とする炉壁耐火物の補修には不向きとなる。
【0007】
また、耐火性粒子の粒径の微小な粒子量が限定されていないため、酸化性粒子の燃焼と同時に耐火性粒子の微小粒子が優先的に溶融し、これが未燃焼酸化性粒子を包んでしまい、酸化性粒子が完全に燃焼されない場合が多々発生する。
【0008】
そして、酸化性粒子が未燃焼のまま炉壁耐火物や補修層に付着し補修層内に存在すると、この補修層内の未燃焼酸化性粒子が酸化される時に体積変化が起こるため、補修層と炉壁耐火物との間の膨張差が生じ、壁炉から補修層が剥離するなどのトラブルが発生する場合がある。
【0009】
さらに、これまでの火炎溶射補修方法は、表面が冷えた温度管理されていない炉壁耐火物表面に火炎溶射補修材料を溶射するため、熱衝撃によって、炉壁耐火物に亀裂などの損傷の発生あるいは亀裂の進行が生じる場合があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
耐火性酸化物粉体と易被酸化性金属粒子とを配合した火炎溶射補修材料を用いる炉壁耐火物の補修における重要課題は以下の通りである。
▲1▼易被酸化性金属粒子の燃焼性の向上。
▲2▼耐火体補修層内への未燃焼易被酸化性金属粒子の混入防止。
▲3▼コスト低減。
▲4▼耐火体補修層の緻密化。
▲5▼耐火体補修層の炉壁耐火物への接着性の向上。
▲6▼炉壁耐火物に加わる熱衝撃の緩和。
【0011】
したがって、この発明は、耐火性補修層の緻密性の向上すなわち気孔率の低減など上記課題を有利に解決できる経済性に優れる火炎溶射補修材料および好適な火炎溶射補修方法を提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らの実験・検討結果にもとづく、この発明における上記課題を解決するための手段を以下に記す。
【0013】
▲1▼ 易被酸化性金属粒子の燃焼性の向上
溶射される火炎溶射補修材料が炉壁耐火物に到達するまでに、耐火性酸化物粒子を溶融あるいは半溶融状態にし、易被酸化性金属粒子の酸化反応を完了させておくことが重要であり、そのため、易被酸化性金属粒子をより細粒化し、かつ該金属粒子が完全に酸化反応を終了するまで耐火性酸化物粒子に包まれないような粒度構成とする。かくすることにより、易被酸化性金属粒子の燃焼性は向上し、耐火性酸化物粒子の溶融が容易になる。
【0014】
▲2▼ 耐火体補修層内への未燃焼易被酸化性金属粒子の混入防止
細粒化による易被酸化性金属粒子の燃焼性を向上することと耐火性酸化物粒子の微小粒子量を減少させることとで、炉壁あるいは耐火体補修層に易被酸化性金属粒子が到達する時には該金属粒子は燃焼を完了していて、補修層内に未燃焼易被酸化性金属粒子が混入することがなくなる。これにより耐火体補修層の体積変化に起因する炉壁からの耐火体補修層の剥離は防止できる。
【0015】
▲3▼ コスト低減
易被酸化性金属粒子をより細粒化してその燃焼性を向上させることで、易被酸化性金属粒子を多量に使用しなくてもよくなる。なお、易被酸化性金属粒子の燃焼時間が短すぎると材料を吐出するノズル等への材料の付着が生じ歩留りが低下するため粒径が小さすぎる易被酸化性金属粒子は除去することがよい。
【0016】
▲4▼ 耐火体補修層の緻密化
耐火性酸化物粉体の粒径範囲分布率を 1.2未満とし、かつ細粒化による易被酸化性金属粒子の燃焼性をよくすることで、耐火性酸化物粒子の溶融あるいは半溶融状態にすることが容易になり、補修層の緻密性を向上できる。
【0017】
▲5▼ 耐火体補修層の炉壁耐火物への接着性の向上
(4)項に記載と同様の手段により、耐火性酸化物粒子を溶融あるいは半溶融状態にすることが容易となり、炉壁耐火物への接着性を向上できる。
【0018】
▲6▼ 炉壁耐火物に加わる熱衝撃の緩和
特にシリカ質れんがの熱膨脹は300 〜500 ℃の温度域で大きく、それ以上の温度ではほとんど変化しない。したがって、補修する炉壁耐火物表面温度を高温に管理することで、熱衝撃が緩和され、炉壁耐火物の損傷や亀裂の進行を防止でき、ひいては健全な補修層も得られる。
【0019】
この発明は、以上の手段を総合し、上記した課題を解決するものである。
すなわち、この発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0020】
(1) 溶射して耐火物を補修する、耐火性酸化物粉体の一種以上と燃焼して耐火性酸化物を形成する易被酸化性金属粒子の一種以上との混合粉体からなる火炎溶射補修材料であって、
耐火性酸化物粉体の粒径範囲分布率が 1.2未満で、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の10%にあたる粒径が、0.5mm 以下の粒径の易被酸化性金属粉体の積算質量分率の20〜50%にあたる粒径の範囲にあり、かつ易被酸化性金属粉体の最大粒径が、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の90%にあたる粒径以下とすることを特徴とする火炎溶射補修材料(第1発明)。
【0021】
(2) 第1発明の火炎溶射補修材料を 700℃以上の温度の耐火物表面へ溶射することを特徴とする火炎溶射補修方法(第2発明)。
【0022】
そして、この発明になる火炎溶射補修材料は、気流で搬送し、易被酸化性金属粒子を燃焼させ、耐火性酸化物粒子の表面あるいは全体を溶融または半溶融状態にし、炉壁耐火物損傷部に吹き付けることにより炉壁に耐火体補修層を形成させ、炉壁耐火物の損傷部を修復する。この時、易被酸化性金属粒子自身は酸化熱を発生すると同時に、耐火性溶融酸化物となり、溶融あるいは半溶融状態の耐火性酸化物粒子と融合し緻密な耐火体補修層を形成する。
【0023】
ここで、粒径範囲分布率:f(G)は、下記式であらわされる。
f(G)=2・(G80−G20)/(G80+G20)
ただし、
G80:粉体の積算質量分率80%の粒径
G20:粉体の積算質量分率20%の粒径
【0024】
【作用】
この発明の作用について以下に述べる。
この発明において、その火炎溶射補修材料を溶射して形成される耐火体補修層の気孔率を低減できるのは、使用する耐火性酸化物粉体の粒径範囲分布率を 1.2未満とし、該粉体の積算質量分率と、粒径が 0.5mm以下の易被酸化性金属粉体の積算質量分率とを互いに拘束し合わせる火炎溶射補修材料とすることにある。
【0025】
火炎溶射補修材料を溶射して耐火体補修層を形成するにあたって、易被酸化性金属粒子の粒径が大き過ぎると燃焼しきれないまま補修層内に混入してしまい補修層が剥離するなどのトラブルを生じたり熱エネルギーの損失が大きくなったりする。
【0026】
また、易被酸化性金属粉体の燃焼に際し、耐火性酸化物粉体の粒径のバラツキが大きいとこれらを溶融あるいは半溶融状態にする時間差が大きくなり耐火体補修層の緻密性に悪影響をおよぼし、さらに耐火性酸化物粉体の微小粒子量を限定しないと易被酸化性金属粒子の燃焼と同時に耐火性酸化物微小粒子が金属粒子に融着して未燃焼金属粒子を耐火性酸化物で包んでしまい未燃焼金属粒子が補修層内に混入し上記と同様に剥離などの問題を生じる。
【0027】
そこで、この発明においては、粒径範囲分布率が 1.2未満の耐火性酸化物粉体の積算質量分率の10%にあたる粒子径が、 0.5mm以下の易被酸化性金属粉体の積算質量分率の20〜50%にあたる粒径の範囲にあり、かつ易被酸化性金属粉体の最大粒径が、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の90%にあたる粒径以下とする火炎溶射補修材料とし、上記問題を解決するものである。
【0028】
すなわち、耐火性酸化物粉体の粒径範囲分布率を 1.2未満としたのは、その粒径のバラツキを小さくして耐火性酸化物粒子の溶融・半融化を均一化し耐火体補修層の緻密性を向上させるためである。
【0029】
また、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の10%にあたる粒径が易被酸化性金属粉体の積算質量分率の50%以下にあたる粒径と規定したのは、これより大きい粒径の耐火性酸化物粒子ではその溶融・半融化が不十分となり緻密な耐火体補修層が形成されなく、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の10%にあたる粒径が易被酸化性金属粉体の積算質量分率の20%以上にあたる粒径と規定したのは、これより小さい粒径の耐火性酸化物微小粒子が多く含まれると、易被酸化性金属粒子が十分に燃焼しないうちにそれらの耐火性酸化物微小粒子が易被酸化性金属粒子に融着して該金属粒子を包んでしまい、未燃焼の易被酸化性金属粒子が耐火体補修層内に混入して耐火体補修層が剥離するなどのトラブルを生じるためである。
【0030】
一方、易被酸化性金属粉体の粒径を 0.5mm以下とし、その最大粒径を耐火性酸化物粉体の積算質量分率の90%にあたる粒径としたのは、耐火性酸化物粉体の溶融・半融化と関連させて易被酸化性金属粉体の燃焼性の向上をはかったものであり、易被酸化性金属粒子の粒径が大きすぎると十分に燃焼しないままこれが耐火体補修層に達して該補修層内に混入してしまい、上記したような耐火体補修層の剥離などのトラブルを生じ、また熱的エネルギーの損失も大きくなり耐火性酸化物粒子の溶融・半融化が不十分となり耐火体補修層の緻密性が損なわれる。
【0031】
なお、易被酸化性金属粉体において粒径の小さすぎる微小粒子が多く含まれると、これらの微小金属粒子は容易に溶融して吐出ノズル等へ融着し歩留りが低下するとともに火炎溶射の作業性を損なうことがある。また微小金属粒子は混合中あるいは溶射装置への搬入中等での発火や、搬送管内での圧力低下等に起因する逆火等の恐れがあり危険が伴う。したがって易被酸化性金属粉体は微小金属粒子を除去しておくことが好ましい。
【0032】
以上、この発明になる火炎溶射補修材料を用いれば、易被酸化性金属粉体の酸化・燃焼性の向上、炉壁への接着性はもちろんのこと耐火体補修層自身の緻密性も向上できる効果を有する。
ここで、易被酸化性金属粒子としては、Si, Mn, Al, Mg, SiMn, CaSi, FeSi, FeMn, FeCrおよびCaC2等のうちのいずれか一種以上とすることでよく、また耐火性酸化物粒子としては、シリカ、アルミナ、ムライト、シャモット系、ジルコン、ジルコニア、スピネル、マグネシアおよびマグクロ等のうちのいずれか一種以上とすることでよい。これらは耐火性補修層の目標組成に合わせて易被酸化性金属粉体と耐火性酸化物粉体とを配合することにより目的を達成できる。
【0033】
なお、この発明においては、耐火性酸化物粒子および易被酸化性金属粒子の性状については特に規定するものではなく、粉体の粒度測定法に関しては常法にしたがうことでよい。すなわち粒度測定法としては、光学・電子顕微鏡法、ふるい分け法、重力・遠心沈降法、光透過法、比表面積測定による吸着法等がある。
【0034】
つぎに、この発明においては、補修する炉壁耐火物の表面温度を高温に管理した状態で上記火炎溶射補修材料を溶射し、補修する。
【0035】
これまでの火炎溶射補修方法は、前記したように冷却された状態の炉壁耐火物表面に火炎あるいは燃焼によって、溶融あるいは半溶融状態の粒子を付着させ補修する方法であり、特に炉壁耐火物表面温度の管理はなされていなかった。
したがって、冷えた状態の炉壁耐火物表面に火炎溶射補修材料を溶射すると、溶射によって炉壁耐火物表面が急激に加熱され、その熱衝撃によって炉壁耐火物の損傷あるいは亀裂の進行を引き起すことになる。
【0036】
なお、一般に、コークス炉炭化室内面の炉壁耐火物の補修の際には、炉壁耐火物の補修面の背面は燃焼室になっているためその背面温度は高く炉壁耐火物の厚さ方向に温度勾配がある状態で火炎溶射補修材料が溶射されるが、この場合においても上記と同様に熱衝撃による炉壁耐火物の損傷あるいは亀裂の進行を引き起す。
【0037】
そこで、上記現象について、熱応力計算と実験とを重ねた結果、れんが(炉壁耐火材)の表面温度が 700℃未満で火炎溶射補修を行った場合には、れんがの破壊強度を超える応力が発生し、れんがに損傷や亀裂などの進行が生じること、逆にれんがの表面温度を 700℃以上にして火炎溶射補修を行った場合には、れんがに発生する応力はれんがの破壊強度以下となり、れんがには損傷や亀裂の進行が生じないこと、などが確認された。
【0038】
したがって、炉壁耐火物の火炎溶射補修を行うにあたっては、炉壁耐火物の表面温度を 700℃以上とすることが重要で、かくすることにより、炉壁耐火物の損傷や亀裂の進行を防止でき、ひいては健全な耐火体補修層を得ることができる。
【0039】
【実施例】
実施例1
図1〜3に示す粒度分布のシリカ質の耐火性酸化物粉体と、図4〜10に示す粒度分布の金属シリコンの易被酸化性金属粉体とから選んだ各一種づつを重量比で(耐火性酸化物粉体):(易被酸化性金属粉体)=95:5〜70:30の範囲で混合して火炎溶射補修材料とし、これらの火炎溶射補修材料を用い、雰囲気温度 750℃の実験炉に設置した基体れんがに火炎溶射し付着層(耐火体補修層)を形成させ、材料歩留り、付着層中の未燃焼金属粒子の混入率および付着層の見かけ気孔率などを調査した。
【0040】
火炎溶射補修材料の物性と調査結果を表1にまとめて示す。
【表1】
【0041】
ここで、図1は粒径範囲分布率f(G)が1.16の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の10%の粒径が 5.4μm、90%の粒径が 202μmのシリカ質粉体、図2は粒径範囲分布率f(G)が1.12の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の10%の粒径が21μm、90%の粒径が 580μmのシリカ質粉体、図3は粒径範囲分布率f(G)が1.72の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の10%の粒径が 4.0μm、90%の粒径が98μmのシリカ質粉体であり、
図4は最大粒径が80μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が 1.9μm、50%の粒径が29μmの金属シリコン粉体、図5は最大粒径が80μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が 4.8μm、50%の粒径が32μmの金属シリコン粉体、図6は最大粒径が99μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が0.54μm、50%の粒径が6μmの金属シリコン粉体、図7は最大粒径が 450μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が 1.9μm、50%の粒径が 200μmの金属シリコン粉体、図8は最大粒径が 275μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が 2.5μm、50%の粒径が32μmの金属シリコン粉体、図9は最大粒径が47μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が0.22μm、50%の粒径が0.58μmの金属シリコン粉体、図10は最大粒径が 550μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフで、積算質量分率の20%の粒径が2μm、50%の粒径が 220μmの金属シリコン粉体である。
【0042】
表1から明らかなように、比較例に比しこの発明に適合する火炎溶射補修材料を用いた適合例は、易被酸化性金属粒子の燃焼性がよく付着層中への未燃焼金属粒子の混入がなく、付着層の気孔率が低くその緻密性に優れ、さらに火炎溶射補修材料の歩留りも向上している。
【0043】
実施例2
シリカ質の耐火性酸化物粉体:85wt%と金属シリコンの易被酸化性金属粉体:15wt%との混合粉体からなるこの発明に適合する火炎溶射補修材料を、背面温度を1200℃とし表面温度を 500〜900 ℃の範囲で変化させたコークス炉で使用されていた亀裂の多数存在するシリカ質れんがに、火炎溶射処理したのち、各れんがの損傷状況として亀裂の進行状況を調査した。
これらの調査結果を表2にまとめて示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2から明らかなように、れんがの表面温度を 700℃以上として火炎溶射したこの発明の適合例には亀裂の進行は見られないのに対し、れんがの表面温度を 650℃以下とした比較例には、亀裂の進行が見られる。
【0046】
【発明の効果】
この発明は、耐火性酸化物粒子と易被酸化性金属粒子との混合粉体からなり、かつ、粒径範囲を特定した耐火性酸化物粉体の積算質量分率と、特定粒径以下の易被酸化性金属粉体の積算質量分率とが互い拘束し合う火炎溶射補修材料および火炎溶射補修方法であって、
この発明になる火炎溶射補修材料を用いて窯炉や金属溶湯用炉などの内張り耐火物の損傷部を補修すれば、易被酸化性金属粉体の燃焼性が向上することにより火炎溶射補修用材料自身のコストが低減できるとともに接着性に優れる緻密な耐火体補修層が形成でき、さらに炉壁耐火物表面温度を 700℃以上で補修すれば炉壁を損傷させることなく補修でき耐火物の寿命を大幅に向上できる。このようなことから、耐火物原単位および原単価の低減や操業安定性にも寄与することのほか、補修作業における安定性および作業性が向上し、コストも低減する。したがって、この発明になる火炎溶射補修材料および火炎溶射補修方法は、各種炉の補修に極めて有利に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた粒径範囲分布が1.16の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図2】実施例で用いた粒径範囲分布が1.12の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図3】実施例で用いた粒径範囲分布が1.72の耐火性酸化物粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図4】実施例で用いた最大粒径が80μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図5】実施例で用いた最大粒径が80μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図6】実施例で用いた最大粒径が99μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図7】実施例で用いた最大粒径が 450μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図8】実施例で用いた最大粒径が 275μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図9】実施例で用いた最大粒径が47μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
【図10】実施例で用いた最大粒径が 550μmの易被酸化性金属粉体の粒度分布を示すグラフである。
Claims (2)
- 溶射して耐火物を補修する、耐火性酸化物粉体の一種以上と燃焼して耐火性酸化物を形成する易被酸化性金属粉体の一種以上との混合粉体とからなる火炎溶射補修材料であって、
耐火性酸化物粉体の粒径範囲分布率が 1.2未満で、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の10%にあたる粒径が、0.5mm 以下の粒径の易被酸化性金属粉体の積算質量分率の20〜50%にあたる粒径の範囲にあり、かつ易被酸化性金属粉体の最大粒径が、耐火性酸化物粉体の積算質量分率の90%にあたる粒径以下とすることを特徴とする火炎溶射補修材料。 - 請求項1に記載の火炎溶射補修材料を 700℃以上の温度の耐火物表面へ溶射することを特徴とする火炎溶射補修方法。
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