JP2007291891A - 内燃機関の始動装置 - Google Patents

Abstract

【課題】機関側伝達部材と機関出力軸との結合強度を高く維持しつつ、動力伝達機構のシール性能の向上を図ることのできる内燃機関の始動装置を提供する。
【解決手段】この装置は、動力伝達機構６０を備える。動力伝達機構６０は、クランク軸１１に締結固定されるアウタレースプレート２０と機関始動用の電動機の回転軸に連結されるリングギヤ３０とを有する。また動力伝達機構６０は、リングギヤ３０からアウタレースプレート２０への回転力伝達のみを許容するワンウェイクラッチ５０と、二つのシール部材６１，６２とを有する。シリンダブロック１２側から動力伝達機構６０の内部への潤滑オイルの供給を通じて同動力伝達機構６０の潤滑が行われる。クランク軸１１とアウタレースプレート２０との接触部分における同アウタレースプレート２０側の接触面２０ａに、クランク軸１１の周方向全周にわたって延びる溝２２が形成される。
【選択図】図１

Description

本発明は、電動機の駆動による機関出力軸の強制回転を通じて機関始動を行う内燃機関の始動装置に関するものである。

一般に、車両用の内燃機関の始動装置には、始動用の電動機の駆動力をクランクシャフトなどの機関出力軸に伝達するための動力伝達機構が設けられている。この動力伝達機構としては、例えば以下のような構造のものが知られている（例えば特許文献１参照）。

動力伝達機構は、機関側伝達部材や、電動機側伝達部材、ワンウェイクラッチなどにより構成されている。電動機側伝達部材は、ボルト締結などによって機関出力軸に締結固定されており、同機関出力軸と一体回転する。電動機側伝達部材は、機関出力軸に対して回転可能に設けられる一方、電動機の回転軸に連結される。ワンウェイクラッチは、機関側伝達部材と電動機側伝達部材との間に設けられて、それらの間における回転力の伝達のうち、電動機側伝達部材（詳しくは電動機）から機関側伝達部材（詳しくは機関出力軸）への回転力の伝達のみを許容する。

こうした動力伝達機構を有する内燃機関の始動装置では、機関始動要求に基づいて電動機が駆動されるとワンウェイクラッチが係合状態になり、このとき同電動機の回転力がワンウェイクラッチを介して機関出力軸に伝達される。そして、内燃機関が完爆状態になる、換言すれば電動機の力を借りることなく内燃機関が自律回転するようになると、ワンウェイクラッチは開放状態になり、これによって機関出力軸と電動機との駆動連結が解除される。

また上記始動装置では、機関出力軸や機関側伝達部材、並びに電動機側伝達部材によって仕切られた動力伝達機構の内部に機関本体側から潤滑オイルが供給されることによって、同動力伝達機構の潤滑が行われる。そして、機関側伝達部材と電動機側伝達部材との間や機関本体と電動機側伝達部材との間には、動力伝達機構の内部からの潤滑オイルの漏れをシールするシール部材が設けられている。
特開２００４−１６９６６８号公報

ところで、上述した動力伝達機構にあって、機関側伝達部材の上記機関出力軸に対する取り付け部分には、同部分からの潤滑オイルの漏れを防止するための特段のシール処理が施されていない。ただし、機関側伝達部材は機関出力軸に締結固定されており、それらの接触面の面圧が高められているために、上記動力伝達機構は上記取り付け部分からの、すなわち機関出力軸と機関側伝達部材との間からの潤滑オイルの漏れが生じ難い構造であると云える。とはいえ、動力伝達機構内からの潤滑オイルの漏れを的確にシールするためには、それら機関出力軸および機関側伝達部材の間にもシール処理を施すことが望ましい。

ここで、そうした部分に、ガスケットやＯリング等のシール部材を介在させるといったシール処理を施すことが考えられる。これにより、上記取り付け部分、ひいては動力伝達機構のシール性能の向上を図ることができる。

しかしながら、機関側伝達部材は機関始動時において機関出力軸を強制的に回転させるべく非常に大きい回転力を伝達するものであるために、動力伝達機構の信頼性を高く維持するためには、そうした機関側伝達部材と機関出力軸とを強固に結合する必要がある。そのため上述したシール処理を採用すると、機関出力軸に対する機関側伝達部材の締結固定に際してシール部材が過度に変形してしまうために、上記取り付け部分のシール性能を十分に高くすることができなくなってしまう。また、そのシール性能を十分に高くするために、機関出力軸に対する機関側伝達部材の締結力を小さくすると、当然のことながら、機関出力軸と機関側伝達部材との結合強度を十分に高めることができなくなってしまう。

本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機関側伝達部材と機関出力軸との結合強度を高く維持しつつ、動力伝達機構のシール性能の向上を図ることのできる内燃機関の始動装置を提供することにある。

以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について説明する。
請求項１に記載の発明は、機関出力軸に締結固定される機関側伝達部材と、前記機関出力軸に対して回転可能に設けられ且つ機関始動用の電動機の回転軸に連結される電動機側伝達部材と、前記機関側伝達部材および前記電動機側伝達部材の間に設けられてそれら部材間における回転力伝達のうちの前記電動機側伝達部材から前記機関側伝達部材への回転力伝達のみを許容するワンウェイクラッチと、前記機関側伝達部材および前記電動機側伝達部材の間、機関本体および前記電動機側伝達部材の間にそれぞれ設けられるシール部材とを有してなる動力伝達機構を備え、前記機関本体側から前記動力伝達機構の内部への潤滑オイルの供給を通じて同動力伝達機構の潤滑を行う内燃機関の始動装置において、前記機関出力軸と前記機関側伝達部材との接触部分における同機関出力軸側の接触面および前記機関側伝達部材側の接触面のうちの一方に、部分的に凹む形状の凹部が前記機関出力軸の周方向全周にわたり形成されてなることをその要旨とする。

上記構成によれば、上記凹部が形成されないものと比較して、機関出力軸と機関側伝達部材とが実際に接触する面の総面積を小さくしてその接触面に作用する面圧を高くすることができ、その接触部分、ひいては動力伝達機構のシール性能を向上させることができる。しかも、機関出力軸と機関側伝達部材との間にシール部材が介在しない構成であるために、機関出力軸への機関側伝達部材の締結固定を通じて、機関側伝達部材と機関出力軸との結合強度を高く維持することもできる。

なお上記凹部としては、幾何学模様状に凹部を形成することや、迷路状に延びる溝を形成することなどの他、請求項２によるように、前記機関出力軸の軸心周りを渦巻き形状で延びる溝を形成することができる。

そうした渦巻き形状で延びる溝の中でも、請求項３によるように、レコード盤の溝形状で延びる一本の溝を形成することにより、同溝を切削加工によって容易に形成することができる。

また前記凹部としては、請求項４によるように、前記機関出力軸の軸心周りを円形状で延びる複数の溝を形成することができる。
そうした複数の溝として、請求項５によるように、同心円の溝を形成することにより、それら溝を切削加工によって容易に形成することができる。

請求項６に記載の発明は、請求項２〜５のいずれか一項に記載の内燃機関の始動装置において、前記溝は、前記機関出力軸と交差する方向における前記接触面の断面形状が鋸歯形状となる方向に延設されることをその要旨とする。

上記構成によれば、機関側伝達部材を機関出力軸に締結固定する際に、溝が形成された側の接触面の突出端を塑性変形させることによって、機関出力軸と機関側伝達部材との接触部分における各接触面の密接の度合いを高めることができ、同部分のシール性能を向上させることができる。したがって、動力伝達機構のシール性能を好適に向上させることができる。

請求項７に記載の発明は、請求項６に記載の内燃機関の始動装置において、前記溝は前記接触面の全面にわたり形成されることをその要旨とする。
上記構成によれば、機関側伝達部材を機関出力軸に締結固定する前において、それら機関出力軸と機関側伝達部材とが面接触する部分がなくなる。そのため、機関側伝達部材を機関出力軸に締結固定する際に、接触面の一部に溝を形成する構成と比較して、低い面圧を作用させることによって上記溝の形成された接触面の突出端を塑性変形させることができ、上記各接触面の密接の度合いを好適に高くすることができる。

以下、本発明にかかる内燃機関の始動装置を具体化した一実施の形態について説明する。
図１に、本実施の形態にかかる内燃機関の始動装置についてその動力伝達機構およびその周辺の断面構造を示す。

なお図１には、内燃機関の出力軸であるクランク軸１１の軸心Ｃを境界として一方の側（図の上方側）のみを示している。また図１にあって、クランク軸１１や、シリンダブロック１２並びにボルトＢ以外の構成についてはその切断面のみを示している。

図１に示すように、内燃機関のシリンダブロック１２とラダービーム（図示略）との間にはクランク軸１１が回転可能に支持されている。このクランク軸１１の一端には、フライホイール１３、アウタレースプレート２０、およびリングギヤ３０が取り付けられている。

フライホイール１３は中心部が円形に開口した略円板形状に形成されている。フライホイール１３の上記シリンダブロック１２に取り付けられる部分は、アウタレースプレート２０と接触している。また、フライホイール１３にあって上記アウタレースプレート２０と接触する側の反対側には、クランク軸１１の回転力を変速機に伝達するためのクラッチ機構の一部として、クラッチディスク１４が取り付けられている。なお、クラッチ機構はフライホイール１３とは別体に形成されていてもよい。

アウタレースプレート２０は略円板形状に形成されている。アウタレースプレート２０の外周部には、シリンダブロック１２側に円筒形状で突出する形状のアウタレース部２１が形成されている。また、このアウタレースプレート２０は、上記フライホイール１３と同様に、中心部が開口した形状に形成されている。

フライホイール１３およびアウタレースプレート２０は、その中心部の開口へのクランク軸１１の端部の挿入を通じて、アウタレースプレート２０、フライホイール１３の順にクランク軸１１に取り付けられている。そしてフライホイール１３およびアウタレースプレート２０は、そのようにクランク軸１１の端部が挿入された状態で同クランク軸１１（詳しくは、そのフランジ部１５）にボルト締結によって固定される。このようにフライホイール１３およびアウタレースプレート２０は共に、クランク軸１１と一体に回転するように構成されている。

リングギヤ３０は、中心部が大きく円形に開口した略円板形状に形成されている。リングギヤ３０の外周部には、その全周にわたってギヤが形成されてなるギヤ部３１が設けられている。このギヤ部３１は機関始動用の電動機の回転軸（図示略）に駆動連結されている。そのため、リングギヤ３０は上記電動機の駆動に伴って回転するようになっている。またリングギヤ３０の内周部には、上記アウタレースプレート２０側に円筒形状で突出する形状のインナレース部３２が形成されている。なお、このインナレース部３２は、その外周面３２ａと上記アウタレース部２１の内周面２１ａとが対向する形状に形成されている。さらに、リングギヤ３０の外周部と内周部との間の中間部には、外周側の部分に対して内周側の部分がシリンダブロック１２側に断面円形状で窪んだ形状の段差部３３が形成されている。

このリングギヤ３０は、ベアリング４０を介して、クランク軸１１に取り付けられている。ベアリング４０は、具体的には、クランク軸１１のフランジ部１５の外周面と上記インナレース部３２の内周面３２ｂとの間に設けられる。

リングギヤ３０のインナレース部３２の外周面３２ａと上記アウタレースプレート２０のアウタレース部２１の内周面２１ａとの間には、複数のケージ５１が配置されている。そして、それらケージ５１、アウタレース部２１、およびインナレース部３２により、ワンウェイクラッチ５０が構成されている。

このワンウェイクラッチ５０は、アウタレースプレート２０およびリングギヤ３０の間における回転力伝達のうち、リングギヤ３０からアウタレースプレート２０への回転力伝達のみを許容するものである。

詳しくは、ワンウェイクラッチ５０は、内燃機関が自律運転されるようになるタイミング以前においては、アウタレースプレート２０のアウタレース部２１とリングギヤ３０のインナレース部３２との間にケージ５１が噛み込まれた状態、いわゆる係合状態になる。これによりアウタレースプレート２０とリングギヤ３０とが連結されて一体回転し、このとき電動機によってクランク軸１１が強制回転される。

その後、内燃機関が自律運転されるようになり、クランク軸１１と一体回転するアウタレースプレート２０の回転が前記電動機の駆動によるリングギヤ３０の回転より速くなると、ワンウェイクラッチ５０は上記ケージ５１の噛み込みが解除された状態、いわゆる解放状態になる。これにより、アウタレースプレート２０とリングギヤ３０との連結が解除される。またリングギヤ３０は、ベアリング４０を介してクランク軸１１に設けられているために、同クランク軸１１の回転によることなく独立して回転することの可能な状態になる。したがって、このときリングギヤ３０は、クランク軸１１の回転によることなく、電動機の出力軸の回転に伴って回転するようになる。これにより、クランク軸１１の回転力によって上記電動機が駆動されることを回避して同電動機の過回転を防止することができ、また機関運転に影響を与えることなく電動機の駆動を停止することができる。

このように本実施の形態にかかる始動装置にあっては、アウタレースプレート２０、リングギヤ３０、ベアリング４０、およびワンウェイクラッチ５０等によって構成される動力伝達機構６０により、内燃機関の始動に際して上記電動機の回転力がクランク軸１１に伝達される。

本実施の形態では、図１中に矢印Ａで示すように、クランク軸１１あるいはシリンダブロック１２内のオイル通路を介して、機関本体（シリンダブロック１２やオイルパン（図示略））から動力伝達機構６０の内部に、内燃機関の潤滑に用いられる潤滑オイルが供給される。そして、この潤滑オイルによって動力伝達機構６０の潤滑、詳しくはそのベアリング４０やワンウェイクラッチ５０の潤滑が行われる。

上記動力伝達機構６０は、その内部からの潤滑オイルの漏れを防止するためのシール部材６１，６２を備えている。これらシール部材６１，６２としては共にリング形状のものが用いられる。

上記シール部材６１は、ワンウェイクラッチ５０のアウタレース部２１とリングギヤ３０の段差部３３との間に設けられる。詳しくは、シール部材６１は段差部３３の内周面３３ａに嵌合することによってリングギヤ３０に固定されている。また、シール部材６１の内周側に形成された主シールリップ６１ａと副シールリップ６１ｂとがそれぞれアウタレース部２１の外周面２１ｂに摺動可能に接触している。そして、このシール部材６１によって、アウタレースプレート２０とリングギヤ３０との間のオイルシールが行われる。

一方、シール部材６２は、機関本体とリングギヤ３０の段差部３３との間に設けられる。機関本体には、シリンダブロック１２および上記オイルパンそれぞれに形成された扇形状の凹部が組み合わされてなる円形状の凹部（シール嵌合部１６）が形成されている。このシール嵌合部１６の内周面１６ａは、上記段差部３３の外周面３３ｂに対向している。シール部材６２は、そうしたシール嵌合部１６の内周面１６ａに嵌合することによって機関本体に固定されている。またシール部材６２の内周側に形成された主シールリップ６２ａと副シールリップ６２ｂとがそれぞれ上記段差部３３の外周面３３ｂに摺動可能に接触している。そして、こうしたシール部材６２によって、リングギヤ３０と機関本体との間のオイルシールが行われる。

さて、本実施の形態にかかる始動装置にあっては、クランク軸１１とアウタレースプレート２０との接触部分における同アウタレースプレート２０側の接触面２０ａに、クランク軸１１の周方向全周にわたって延びる溝２２を形成するようにしている。これにより、クランク軸１１とアウタレースプレート２０との結合強度を高く維持しつつ、それらクランク軸１１およびアウタレースプレート２０の間、ひいては動力伝達機構６０のシール性能の向上を図るようにしている。

以下、上記溝２２について詳細に説明する。
図２に、図１の矢印Ｄ方向から見たアウタレースプレート２０の平面構造を示す。
同図２に示すように、上記溝２２は、クランク軸１１の軸心Ｃの周りを渦巻き形状で延びるように形成される。具体的には、上記溝２２として、レコード盤の溝形状で延びる一本の溝が形成される。また、上記溝２２は、クランク軸１１（図１）とアウタレースプレート２０との接触部分における同アウタレースプレート２０側の接触面２０ａの全面にわたって形成されている。

本実施の形態によれば、上記溝２２が形成されないものと比較して、クランク軸１１とアウタレースプレート２０とが実際に接触する面の総面積を小さくして同面に作用する面圧を高くすることができ、その接触部分、ひいては動力伝達機構６０のシール性能を向上させることができる。

しかもクランク軸１１とアウタレースプレート２０との間にシール部材が介在しない構造であるために、クランク軸１１へのアウタレースプレート２０の締結固定を通じて、同アウタレースプレート２０とクランク軸１１との結合強度を高く維持することもできる。

また本実施の形態では、図３に示すように、上記溝２２が形成されることによって、クランク軸１１の軸心Ｃ（図１参照）と直交する方向におけるアウタレースプレート２０の接触面２０ａの断面形状が鋸歯形状になっている。

そのため、図４（ａ）に示すように、アウタレースプレート２０が上記クランク軸１１に締結固定される前においては、同アウタレースプレート２０の接触面２０ａの突出端がクランク軸１１（具体的には、そのフランジ部１５）の接触面１１ａに線接触した状態になる。

そして、その状態でクランク軸１１にアウタレースプレート２０が締結固定されると、図４（ｂ）に示すように、上記接触面２０ａの突出端（同図中に破線で示す部分）がクランク軸１１の接触面１１ａによって潰されて塑性変形する。このとき、上記接触面２０ａの突出端はクランク軸１１の接触面１１ａに沿う形状に変形するために、それら接触面１１ａ，２０ａの密接の度合いが極めて高くなり、クランク軸１１とアウタレースプレート２０との接触部分のシール性能も極めて高くなる。なお、図４（ｂ）にあっては、理解を容易にするために、上記接触面２０ａの突出端の変形量を誇張して示している。

ここで仮に、アウタレースプレート２０の接触面２０ａの一部のみに溝を形成すると、アウタレースプレート２０がクランク軸１１に締結固定される前において、同溝が形成されていない部分ではクランク軸１１とアウタレースプレート２０とが面接触する。そのため、そうした構成にあってアウタレースプレート２０の接触面２０ａの突出端を塑性変形させるためには、クランク軸１１へのアウタレースプレート２０の締結固定に際して締結力を大きくして、同接触面２０ａに高い面圧を作用させる必要がある。

これに対して本実施の形態では、上記溝２２が、アウタレースプレート２０の接触面２０ａの全面にわたって形成されている。そのため、アウタレースプレート２０がクランク軸１１に締結固定される前において、同クランク軸１１の接触面１１ａとアウタレースプレート２０の接触面２０ａとが面接触している部分は殆どない。

したがって、上述した接触面２０ａの一部のみに溝を形成する構成と比較して、小さい締結力によってアウタレースプレート２０をクランク軸１１に締結固定して上記接触面２０ａに低い面圧を作用させることによって同接触面２０ａの突出端を塑性変形させることができ、各接触面１１ａ，２０ａの密接の度合いを好適に高くすることができる。

以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
（１）クランク軸１１とアウタレースプレート２０との接触部分における同アウタレースプレート２０側の接触面２０ａに、クランク軸１１の周方向全周にわたって延びる溝２２を形成するようにした。そのため、クランク軸１１とアウタレースプレート２０との結合強度を高く維持しつつ、それらクランク軸１１およびアウタレースプレート２０の間、ひいては動力伝達機構６０のシール性能を向上させることができる。

（２）前記溝２２として、クランク軸１１の軸心Ｃの周りを渦巻き形状で延びる溝であってレコード盤の溝形状で延びる一本の溝を形成するようにした。そのため、切削加工によって上記溝２２を形成する場合において同溝２２を一つの工程で形成することができ、溝２２を容易に形成することができる。

（３）クランク軸１１と交差する方向におけるアウタレースプレート２０の接触面２０ａの断面形状が鋸歯形状となるように、前記溝２２を延設するようにした。そのため、アウタレースプレート２０をクランク軸１１に締結固定する際に、上記接触面２０ａの突出端を塑性変形させることによって同接触面２０ａとクランク軸１１の接触面１１ａとの密接の度合いを高めることができ、クランク軸１１とアウタレースプレート２０との接触部分のシール性能を向上させることができる。したがって、動力伝達機構６０のシール性能を好適に向上させることができる。

（４）前記溝２２を、アウタレースプレート２０の接触面２０ａの全面にわたって形成するようにした。これにより、上記接触面２０ａの一部に溝を形成する構成と比較して、低い面圧を作用させることによって接触面２０ａの突出端を塑性変形させることができるため、同接触面２０ａとクランク軸１１の接触面１１ａとの密接の度合いを好適に高くすることができる。

なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・アウタレースプレート２０の接触面２０ａの全体に溝２２を形成する必要はなく、例えばアウタレースプレート２０の接触面２０ａの外周部や内周部に溝２２が形成されない部分を設定するなど、同接触面２０ａの一部に溝２２を形成するようにしてもよい。

・クランク軸１１の軸心Ｃの周りにおいて渦巻き形状で延びる溝であれば、レコード盤の溝形状以外の形状で延びる溝を形成するようにしてもよい。
・また、そうした渦巻き形状で延びる溝に代えて、図５に示すアウタレースプレート７０のように、クランク軸１１の軸心Ｃの周りを円形状で延びる複数の溝７２を接触面７０ａに形成するようにしてもよい。なお同構成にあっては、上記複数の溝７２を同心円の溝とすることにより、それら溝を切削加工によって容易に形成することができる。

・例えば溝の間隔を大きくするなど、同溝を、クランク軸１１と交差する方向におけるアウタレースプレートの接触面の断面形状が鋸歯形状以外の形状になるように延設してもよい。

・アウタレースプレートの接触面に円形の溝を一本のみ形成するようにしてもよい。
・アウタレースプレートの接触面に、迷路状に延びる溝を、クランク軸１１の周方向全周にわたって形成するようにしてもよい。

・アウタレースプレートの接触面に溝を形成することに代えて、クランク軸１１の周方向全周にわたり部分的に凹む形状の凹部を形成するようにしてもよい。そうした凹部としては、例えば接触面に形成された凹部が幾何学模様になるように、円形状や多角形状の凹部を所定の間隔を置いて形成するようにすればよい。図６および図７に、そうした凹部が形成されたアウタレースプレートの一例を示す。図６に示すアウタレースプレート８０には、いわゆる水玉模様になるように、その接触面８０ａに円形状の凹部８２が所定の間隔を置いて形成されている。また図７に示すアウタレースプレート９０には、いわゆる格子模様になるように、その接触面９０ａに四角形状の凹部９２が所定の間隔を置いて形成されている。

・クランク軸１１とアウタレースプレートとの接触部分におけるアウタレースプレート側の接触面に凹部を形成することに代えて、クランク軸１１側の接触面１１ａに凹部を形成するようにしてもよい。また、各接触面の双方に凹部を形成するようにしてもよい。

本発明にかかる内燃機関の始動装置を具体化した一実施の形態についてその動力伝達機構およびその周辺の断面構造を示す断面図。 図１の矢印Ｄ方向から見たアウタレースプレートの平面構造を示す平面図。 クランク軸の軸心と直交する方向におけるアウタレースプレートの接触面の断面形状を示す断面図。 （ａ）および（ｂ）クランク軸とアウタレースプレートとの接触部分の断面構造を示す断面図。 本発明を具体化した他の実施の形態のアウタレースプレートについてその平面構造を示す平面図。 本発明を具体化した他の実施の形態のアウタレースプレートについてその平面構造を部分的に拡大して示す平面図。 本発明を具体化した他の実施の形態のアウタレースプレートについてその平面構造を部分的に拡大して示す平面図。

符号の説明

１１…クランク軸、１１ａ…接触面、１２…シリンダブロック、１３…フライホイール、１４…クラッチディスク、１５…フランジ部、１６…シール嵌合部、１６ａ…内周面、２０，７０，８０，９０…機関側伝達部材としてのアウタレースプレート、２０ａ，７０ａ，８０ａ，９０ａ…接触面、２１…アウタレース部、２１ａ…内周面、２１ｂ…外周面、２２，７２…溝、３０…電動機側伝達部材としてのリングギヤ、３１…ギヤ部、３２…インナレース部、３２ａ…外周面、３２ｂ…内周面、３３…段差部、３３ａ…内周面、３３ｂ…外周面、４０…ベアリング、５０…ワンウェイクラッチ、５１…ケージ、６０…動力伝達機構、６１，６２…シール部材、６１ａ，６２ａ…主シールリップ、６１ｂ，６２ｂ…副シールリップ、８２，９２…凹部。

Claims (7)

1. 機関出力軸に締結固定される機関側伝達部材と、前記機関出力軸に対して回転可能に設けられ且つ機関始動用の電動機の回転軸に連結される電動機側伝達部材と、前記機関側伝達部材および前記電動機側伝達部材の間に設けられてそれら部材間における回転力伝達のうちの前記電動機側伝達部材から前記機関側伝達部材への回転力伝達のみを許容するワンウェイクラッチと、前記機関側伝達部材および前記電動機側伝達部材の間、機関本体および前記電動機側伝達部材の間にそれぞれ設けられるシール部材とを有してなる動力伝達機構を備え、前記機関本体側から前記動力伝達機構の内部への潤滑オイルの供給を通じて同動力伝達機構の潤滑を行う内燃機関の始動装置において、
   前記機関出力軸と前記機関側伝達部材との接触部分における同機関出力軸側の接触面および前記機関側伝達部材側の接触面のうちの一方に、部分的に凹む形状の凹部が前記機関出力軸の周方向全周にわたり形成されてなる
   ことを特徴とする内燃機関の始動装置。
2. 請求項１に記載の内燃機関の始動装置において、
   前記凹部として、前記機関出力軸の軸心周りを渦巻き形状で延びる溝が形成されてなる
   ことを特徴とする内燃機関の始動装置。
3. 請求項２に記載の内燃機関の始動装置において、
   前記凹部は、レコード盤の溝形状で延びる一本の溝である
   ことを特徴とする内燃機関の始動装置。
4. 請求項１に記載の内燃機関の始動装置において、
   前記凹部として、前記機関出力軸の軸心周りを円形状で延びる複数の溝が形成されてなる
   ことを特徴とする内燃機関の始動装置。
5. 請求項４に記載の内燃機関の始動装置において、
   前記複数の溝は、同心円の溝である
   ことを特徴とする内燃機関の始動装置。
6. 請求項２〜５のいずれか一項に記載の内燃機関の始動装置において、
   前記溝は、前記機関出力軸と交差する方向における前記接触面の断面形状が鋸歯形状となる方向に延設される
   ことを特徴とする内燃機関の始動装置。
7. 請求項６に記載の内燃機関の始動装置において、
   前記溝は前記接触面の全面にわたり形成される
   ことを特徴とする内燃機関の始動装置。

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