JP2007273178A - 導電性組成物および導電性ペースト - Google Patents

導電性組成物および導電性ペースト Download PDF

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Abstract

【課題】 導電性が高く且つ熱膨張係数の小さい導電膜を生成することのできる導電性組成物および導電性ペーストを提供する。
【解決手段】 中付形導電層10の熱膨張係数が基板12の熱膨張係数に適合している。そのため、それらの熱膨張係数の相違に起因して、中付形導電層10にひび割れが生じ、或いは、基板12にクラックが生じることが好適に抑制される。しかも、中付形導電層10の熱膨張係数は、低膨張フィラーとしてZWPを10〜55(wt%)の範囲内で含むことで調整されているため、他の低膨張フィラーが添加されている場合に比較して、導電性の低下が抑制される。したがって、導電性が高く且つ接着強度の高い中付形導電層10が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display:以下、VFDという)の導電性接着層や回路基板の配線層等に用いられる導電性組成物および導電性ペーストに関する。
例えば、絶縁性の基板上に高い導電性を有する導電層を設けることが様々な目的で行われている。例えば、回路基板においては、導体配線を形成するために導電層が設けられる。また、例えばVFDでは、基板の導体配線パターン上に設けられた導電性接着層で後述するグリッドを固着することにより、そのグリッドを導体配線に接続している。
VFDは、例えばそれぞれガラスから成る前面板および背面板を枠状のスペーサを介して互いに気密に接合することによって真空容器を構成し、その真空容器内に陽極(アノード)、制御電極(グリッド)、およびフィラメント状陰極(カソード)とから成る3極管構造を設け、そのアノード上に塗着された蛍光体から発光させる電子表示素子である。VFDでは、カソードから発生させられた電子を、アノードとの間の高さ位置に設けられているグリッドとの電位差で加速制御し、蛍光体層に選択的に入射させることによってその蛍光体層を発光させる。このようなVFDは低い動作電圧で鮮明に表示されると共に、発光色の異なる蛍光体層を用意することによりカラー表示が可能となる等の特徴があるため、音響機器や自動車の表示パネルの表示部品等に多用されている。
上記グリッドは、例えば金属製メッシュから成るもので、矩形等の平面形状を成し、異電極毎すなわち相互に独立したタイミングで制御される表示パターン毎に分割して基板の表示面に固定されている。グリッドには、例えば背面板側に向かう脚部が両端部に折曲げ形成されており、その脚部において、その背面板内面のグリッド用配線導体上に導電性接着層によって固着される。この導電性接着層は、例えば、銀等の導電成分および低融点ガラス等の固着成分等から構成されている。グリッドを固着するに際しては、グリッド用配線導体上の所定位置に導電性中付けペーストを塗布し、そこへグリッドの脚部下端を押し込んだ後、焼成処理を施すことによってそのペーストから導電性接着層を生成する。
また、前記の回路基板においては、基板上に形成した配線パターンに接続された状態で、集積回路、キャパシタ、コイル、抵抗器等の回路部品をその基板に固着することも行われる。これら回路部品を固着するに際しても、例えば配線パターンの所定位置に導電性ペーストを塗布し、そこへ回路部品を載置して加熱処理を施すことにより、そのペーストから導電性接着層を生成する。
従来、上記のような導電性接着層や配線用導電層等には、鉛ガラスを含む導電性組成物が用いられてきた(例えば、特許文献1,2を参照。)。鉛ガラスを含有する導電性組成物を用いれば、低融点で且つ熱膨張係数もソーダライムガラス基板のそれに近似した値を有することから、製造過程や使用中などに大きな温度変化に曝されても、基板にクラックが生じ難い利点がある。
一方、近年、環境汚染防止および作業衛生の観点から、有害物質である鉛を含まない導電性組成物が求められている。そのため、硼珪酸アルカリ酸化物系、Bi2O3-B2O3系等の鉛を含まない非鉛低融点ガラスを用いた導電性組成物が種々提案されている(例えば特許文献3,4を参照)。
特開平03−152837号公報 特開平09−137066号公報 特開2001−312920号公報 特開2004−355880号公報 特開2005−035840号公報
ところで、非鉛低融点ガラスは、一般に、鉛ガラスに比較して熱膨張係数が大きい。例えば、鉛ガラスの熱膨張係数は70〜80×10-7(/℃)程度であるのに対し、非鉛低融点ガラスの熱膨張係数は100〜140×10-7(/℃)程度である。これに対して、ソーダライムガラスの熱膨張係数は例えば85〜90×10-7(/℃)程度であることから、従来の鉛ガラスを含む導電性組成物を非鉛系低融点ガラスを含む導電性組成物にそのまま置き換えると、ソーダライムガラス等から成る基板の熱膨張係数に比して、導電性組成物から生成される導電膜(すなわち、導電性ペーストから生成された焼成後の膜。)のそれが著しく大きくなる。そのため、このような非鉛系低融点ガラスを含む導電性組成物で導電性接着層を構成すると、製造過程や使用中において大きな温度変化を受けた場合に基板にクラックが生じ得る。
これに対して、前記特許文献4に記載された導電性組成物では、10〜60(vol%)のAg、10〜80(vol%)のBi2O3-B2O3系低融点ガラス、0〜70(vol%)のセラミック粒子、および、5〜10(vol%)の金属酸化物系顔料を含む組成とすることにより、熱膨張係数をソーダライムガラス基板に適合させている。この導電性組成物は、熱膨張係数の小さい低膨張フィラーとして上記セラミック粒子を添加することで導電膜の熱膨張係数を調節したものである。セラミック粒子としては、例えば、熱膨張係数が40×10-7(/℃)程度のジルコンが用いられている。しかしながら、ジルコンは絶縁材料であることから、熱膨張係数が十分に小さくなる程度まで添加量を多くすると、導電性組成物から生成される導電膜の抵抗値が著しく高くなる問題がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、導電性が高く且つ熱膨張係数の小さい導電膜を生成することのできる導電性組成物および導電性ペーストを提供することにある。
斯かる目的を達成するため、第1発明の導電性組成物の要旨とするところは、重量百分率でAgを20〜70(%)、Bi2O3-B2O3系低融点ガラスを10〜55(%)、燐酸タングステン酸ジルコニウム(以下、ZWPという)を10〜55(%)の範囲でそれぞれ含むことにある。
また、第2発明の導電性ペースト要旨とするところは、ベヒクル中の全樹脂に対する重量百分率でエチルセルロースを65〜98(%)、ロジン系樹脂を2〜35(%)の範囲でそれぞれ含むベヒクル中に前記第1発明の導電性組成物を分散させたことにある。
前記第1発明によれば、導電性組成物に含まれるZWPは、例えば-32×10-7(/℃)程度の負の熱膨張係数を有することから、鉛系ガラスに比較して熱膨張係数の大きいBi2O3-B2O3系低融点ガラスが含まれていても、導電性組成物から生成される導電膜の熱膨張係数が鉛系ガラスを含む従来の導電膜に比較して大きくなることが好適に抑制される。このとき、低膨張フィラーとして従来の導電性組成物のようにジルコンを用いると、生成される導電膜の導電性が著しく低下するが、第1発明のようにZWPを用いると、同程度の含有量であっても、理由は定かでは無いが、抵抗値の増大も抑制される。そのため、導電性が高く且つ熱膨張係数の小さい導電膜を生成することのできる導電性組成物が得られる。なお、上記熱膨張係数は、25〜250(℃)における値である。
因みに、上記ZWPをフィラーとして用いることは、導電性を有しない封着材料において、従来から提案されていた(例えば特許文献5を参照)。このZWPもジルコンと同様に絶縁材料であって、その体積抵抗率は例えば3×1013(Ω・cm)程度の高い値である。そのため、導電性組成物のフィラーをジルコンからZWPに置き換えても、生成される導電膜の導電性が改善されることは全く期待できない。しかしながら、導電性が高く且つ熱膨張係数の小さい導電膜を生成し得る導電性組成物を得るべく、本発明者等が種々の組成について研究を重ねたところ、前記のような範囲内の割合でAgおよびBi2O3-B2O3系ガラスを含む組成では、全く意外にも、ZWPをフィラーとして用いるとジルコンを用いた場合に比較して導電性が著しく改善されることが見出された。本願第1発明は、このような知見に基づいて為されたものである。
なお、前記導電性組成物の組成において、Agは導電性を得るための基幹成分であるから、20(%)未満では、生成される導電膜の抵抗値が著しく高くなる。一方、70(%)を超えると、結合材料であるガラスの割合が少なくなり過ぎるため、基板等への接着強度が不十分になると共に、生成される導電膜にひび割れが生じ、抵抗値も高くなる。例えばVFDのグリッド固着用途においては、導電膜の抵抗値が高くなるとグリッド電流が減少し、延いては発光輝度が低下する問題がある。また、VFDのように真空容器内に導電膜が備えられる用途では、ひび割れが生ずると、そこから遊離した導電粒子が真空空間内に浮遊し、VFDが長期使用された場合に異常発光点として作用するので、表示品位が損なわれる問題もある。
また、Bi2O3-B2O3系低融点ガラスは溶融固化することにより基板等への接着強度を確保するための成分であるから、10(%)未満では、基板等への接着強度が不十分になり、その結果、導電膜にひび割れが生じて抵抗値も高くなる。一方、55(%)を超えると、生成される導電膜の熱膨張係数が著しく上昇し、基板等との熱膨張係数の不適合によって導電膜や基板等にクラックが生じ易くなる。すなわち、ガラス量が多くなり過ぎると、ZWPによる熱膨張係数低下効果を十分に得られなくなる。
また、ZWPは、Zr2(WO4)(PO4)2或いは2ZrO2・WO3・P2O5の組成式で表されるセラミックスであり、例えば、燐酸ジルコニル(2ZrO2・P2O5)と酸化タングステン(WO3)を出発原料とし、湿式混合後、1200(℃)程度で熱処理を施して固相反応合成によって製造されるが、その製法は特に限定されない。このZWPはBi2O3-B2O3系低融点ガラスによる導電膜の熱膨張係数上昇を抑制するための低膨張フィラーである。10(%)未満では、熱膨張係数を十分に低下させることができない。一方、55(%)を超えると、相対的にAgやガラスの量が少なくなることから、基板等への接着強度および導電性を共に高く保つことが困難になる。
また、前記第2発明によれば、前記第1発明の導電性組成物がビヒクル中に分散させられていることから、導電性が高く且つ熱膨張係数の小さい導電膜を生成することのできる導電性ペーストが得られる。
また、上記第2発明の導電性ペーストは、樹脂成分として、通常用いられるエチルセルロースに加えて、ロジン系樹脂が2〜35(%)の範囲で含まれていることから、適度に高い粘性を有している。そのため、塗布された導電性ペーストが基板等の上において流動して広がることが好適に抑制されることから、短絡(すなわち導電リーク)を防止するために要求される隣接する導体パターンとの間隔を小さく設定できるので、導体パターンの精細度を高めることができる利点もある。なお、ロジン系樹脂のうちロジンエステルは、テルピネオール系溶剤には溶解し、ブチルカルビトールアセテート(BCA)等のグリコール系溶剤には溶解しにくい性質がある。但し、ロジンエステルは単独で乳化する傾向があり、重合ロジンと併用することにより好適なベヒクルが得られる。これらロジン系樹脂でエチルセルロースの一部を置き換えても、例えば、導電性ペーストの主溶剤としてBCAとテルピネオールとを併用すれば、両者は相溶性が高いため均質性の高い導電性ペーストを得ることができる。すなわち、必要に応じて樹脂成分以外の他の成分構成を適宜調節すれば、ロジン系樹脂でエチルセルロースの一部を置き換えても何ら支障は無い。
しかも、ロジン系樹脂は、一般に、エチルセルロースに比較して耐熱性が高いことから、これが含まれることによって樹脂全体の耐熱性が高められる。また、ロジンエステルはガラスペーストに通常用いられるBCA等のグリコール系溶剤に対して難溶性を有することから、これが含まれることによって樹脂全体のグリコール系溶剤に対する溶解性が低下させられる。そのため、基板等に塗布された導電性ペーストを乾燥させた後、形成された導電性ペースト膜上にガラスペーストを塗布して乾燥し、焼成処理を施すことによって導電膜の固着力を高める等の使用態様においても、ガラスペーストに含まれる溶剤によって導電性ペースト膜中の樹脂が溶解させられることが好適に抑制される。したがって、ガラスペーストを塗布した際に導電性ペースト膜が再溶解することが抑制され、延いてはそれが流動性を有するものとなってその形状が崩れること、甚だしい場合には隣接するパターンと接して短絡することが好適に抑制される。すなわち、このような使用態様においても、導体パターンの精細度を高めることができる。
例えば、VFDのグリッド固着等において、グリッドの脚部を固着した導電膜をガラス膜で被覆することによって、その固着力を高めるものがある。第1発明の導電性組成物および第2発明の導電性ペーストによれば、このような形態で用いられる場合に、精細度の高いパターンで設計しても短絡等の不具合が生ずる可能性が極めて低い利点がある。すなわち、第1発明の導電性組成物および第2発明の導電性ペーストは、一般の配線層にももちろん適用可能であるが、VFDのグリッド固着用途に特に好適である。
なお、ロジン系樹脂が2(%)未満では、溶解や流動を十分に抑制することができない。また、35(%)を超えると、ペーストの粘性が高くなり過ぎるため、取扱いや適当な厚みで塗布すること等が困難になる。また、焼成時の燃え抜け性も悪くなるため、導電性が低下させる傾向になる。
ここで、好適には、前記導電性組成物および前記導電性ペーストにおいて、Agは、30(%)以上の割合で含まれる。このようにすれば、導電成分の割合が一層多くなるため、生成される導電膜の抵抗値を一層低くすることができる。
また、好適には、前記導電性組成物および前記導電性ペーストにおいて、Agは、50(%)以下の割合で含まれる。このようにすれば、ガラスの割合を一層多くすることができるため、生成される導電膜にひび割れが生じることが一層抑制され、延いては抵抗値が高くなることが一層抑制される。
また、好適には、前記導電性組成物および前記導電性ペーストにおいて、Bi2O3-B2O3系低融点ガラスは、16(%)以上の割合で含まれる。このようにすれば、接着強度を確保するための成分の割合が一層多くなるため、生成される導電膜の基板等への接着強度が一層高くなり、生成される導電膜にひび割れが生じることが一層抑制され、延いては抵抗値が高くなることが一層抑制される。
また、好適には、前記導電性組成物および前記導電性ペーストにおいて、Bi2O3-B2O3系低融点ガラスは、26(%)以下の割合で含まれる。このようにすれば、熱膨張係数の大きいガラス成分の割合が十分に少なくされるため、生成される導電膜の熱膨張係数が一層低くなり、基板等との熱膨張係数の適合性が一層高められる。また、導電成分の割合を一層多くすることができるため、生成される導電膜の抵抗値を一層低くすることができる。
また、好適には、前記導電性組成物および前記導電性ペーストにおいて、ZWPは、20(%)以上の割合で含まれる。このようにすれば、生成される導電膜の熱膨張係数を一層低くできるため、基板等との熱膨張係数の適合性が一層高められ、延いては、その基板等にクラックの生ずることや、生成される導電膜にひび割れが生じることが一層抑制される。
また、好適には、前記導電性組成物および前記導電性ペーストにおいて、ZWPは、26(%)以下の割合で含まれる。このようにすれば、導電成分であるAgおよび結合材であるガラス成分の割合を十分に多くできるため、生成される導電膜の抵抗値を一層低くすることができると共に、基板等への接着強度を一層高くできる。
また、好適には、前記導電性組成物は、主成分であるAg、Bi2O3-B2O3系低融点ガラス、ZWPが、合計で90(%)以上の割合を占めるものである。このようにすれば、導体成分であるAg、接着成分であるガラス、および熱膨張係数の調節成分であるZWPの量が十分に多くなるので、第1発明の効果が顕著に得られる。これら主成分は、95(%)以上含まれることが一層好ましい。
また、好適には、前記導電性組成物および前記導電性ペーストにおいて、Agは、1〜10(μm)の範囲内の平均粒径を備えたものが好適に用いられる。導電性組成物中および導電性ペースト中において好適な分散状態を得て、所望する導電性を確保するために必要なAg含有量を可及的に少なくするためには、平均粒径が1(μm)以上であることが好ましい。また、導電膜の高い導電性を確保しつつ膜厚を可及的に薄くするためには、平均粒径が10(μm)以下であることが好ましい。平均粒径は3(μm)以上が一層好ましく、6(μm)以下が一層好ましい。
また、Agは、球形状およびフレーク状の何れの粒子形状のものも用いることができるが、これらを混合したものを用いることも好ましい。混合する場合の混合比は、例えば、重量比で1:1が好ましい。
また、好適には、前記導電性組成物および前記導電性ペーストにおいて、ZWPは、1〜50(μm)の範囲内の平均粒径を備えたものが好適に用いられる。このようにすれば、ZWPの平均粒径が凝集が生じ難い範囲で十分に小さいため、導電性組成物および導電性ペースト中において好適な分散状態が得られ、生成される導電膜の熱膨張係数を効果的に低下させることができると共に、導電膜内において熱膨張係数のバラツキが生ずることを好適に抑制できる。このような効果を得るためには、平均粒径が10(μm)以上であることが一層好ましく、25(μm)以下であることが一層好ましい。
また、ZWPは、適宜の粒子形状のものを用いることができる。例えば、球形状やそれが破砕された形状を備えたものが挙げられる。
また、好適には、前記導電性組成物は、還元剤を含むことができる。このようにすれば、導電成分であるAgの酸化が抑制されるため、生成される導電膜の導電性が一層高められる。還元剤としては、例えば、カーボンが好適である。また、還元剤は、導電性組成物中に10(%)以下の範囲で含まれることが好ましい。還元剤は、5(%)程度の含有量で十分な効果を奏するが、10(%)を超えると徐々にAgの焼結性を阻害する傾向が見られるため、10(%)以下にすることが好ましい。
なお、前記導電性組成物および導電性ペーストは、生成される導電膜に着色するための顔料を含むものとすることができる。用いる顔料の種類は特に限定されず、導電性組成物において通常用いられる種々のものから任意に選択することができる。例えば、Fe-Cr系複合酸化物、Fe-Cr-Mn系複合酸化物、Fe-Ni系複合酸化物を用いることができる。また、顔料は、導電性組成物中に10(%)以下の範囲で含まれていることが好ましい。
また、好適には、前記還元剤および顔料は、導電性組成物中に合計で10(%)以下の範囲で含まれることが好ましく、5(%)以下であることが一層好ましい。
また、好適には、前記導電性組成物および導電性ペーストは、収縮抑制剤を含むものである。このようにすれば、導電膜を生成するに際して焼成処理を施したときの収縮が抑制されることから、その導電膜にひび割れが生じることが一層抑制される。収縮抑制剤としては、導電性をできるだけ損なわず、収縮抑制効果の高いものが好ましく、例えばAlが用いられる。また、収縮抑制剤は、主成分であるAg、ガラス、ZWPの含有量が可及的に多く保たれるように、十分な効果を享受できる範囲で少ないことが好ましい。例えば、導電性組成物中に10(%)以下の割合で含まれることが好ましい。
因みに、導電膜のひび割れの一因は、焼成処理を施して導電膜を生成する際の収縮にある。特に、導電成分であるAgの焼結過程における収縮量が大きな影響を及ぼす。そのため、上記のような収縮抑制剤を用いて導電膜の焼成収縮を制御することが好ましい。
また、前記第2発明の導電性ペーストに含まれるロジン系樹脂は、特に限定されず、水添ロジン、重合ロジン、ロジンエステル等を用いることができる。この中でも、ロジンエステルが好ましいが、ロジンエステルは単独で用いると乳化する傾向があることから、これと重合ロジンを併用して安定性を高めることが特に好ましい。ロジンエステルとしては、例えば、ロジンのマレイン酸エステルが挙げられる。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の導電性組成物で中付形導電層10を形成したVFDの要部を説明する断面図である。
図1において、基板12は、例えばソーダライムガラスから成る平板であって、真空空間内に位置するその一面14上には、配線層16、絶縁体層18、グリッド電極20が備えられている。なお、この図1においては、長手平箱状の真空容器を構成するために基板12上にガラス封着により接合される矩形枠状のスペーサガラスおよび透明なガラス平板から成るカバーガラス板等は省略した。また、本発明の導電性組成物は、グリッド電極20が備えられた周知のVFDに適用されるものであり、VFDの全体構造については特記すべき部分は無いため構造の詳細は省略する。
上記の配線層16は、例えば薄いアルミニウム薄膜或いは15(μm)程度の厚さ寸法を備えた厚膜導体から成るものである。この配線層16は、基板12上に備えられている多数のグリッド電極20や図示しない蛍光体層の配設形状に応じた平面形状で設けられている。図1には、配線層16のうち、グリッド用配線導体の一部であって、グリッド電極20の脚部20aが固着されたグリッド固着部を示している。
また、上記の絶縁体層18は、例えば黒色顔料を含む低融点ガラス等から成る厚膜絶縁体であり、基板12の一面14のうち前記配線層16を露出させるべき部分を除く略全面に、例えば30〜40(μm)程度の厚さ寸法で設けられている。
また、上記のグリッド電極20は、例えばSUS304等で構成されたものであって、メッシュ状を成す例えば矩形の金属薄板の両端部に前記の脚部20a,20aを備えたものである。グリッド電極20は、その脚部20a,20aで支持されることにより、メッシュ部分が基板12の一面14から離隔して位置させられている。
また、前記の中付形導電層10は、導電成分、結合成分、フィラー等から構成されるものである。グリッド電極20の脚部20aは、この中付形導電層10によって、極めて小さな接触抵抗を以て前記グリッド固着部に強固に接合されている。例えば、基板12上の配線層16からグリッド電極20の抵抗値は、1(Ω)に満たない低い値になっている。また、脚部20aの固着強度は、引張り強度で200(gf)≒1.96(N)以上の高い値になっている。また、中付形導電層10の厚さ寸法は、例えば前記絶縁体層18よりも僅かに厚い程度である。
上記中付形導電層10の導電成分は専らAgであり、20〜70(wt%)の範囲内、例えば30(wt%)程度の割合で含まれている。また、結合成分は専らBi2O3-B2O3系低融点ガラスであり、10〜55(wt%)の範囲内、例えば18(wt%)程度の割合で含まれている。このBi2O3-B2O3系低融点ガラスは、従来から用いられている鉛ガラスと同様に、例えば、400〜550(℃)程度の比較的低い温度で焼成可能な低融点ガラスである。しかしながら、その熱膨張係数は、100〜140×10-7(/℃)程度であって、基板12の構成材料であるソーダライムガラスに比較すると極めて大きな値である。
また、前記フィラーは専らZWPであり、10〜55(wt%)の範囲内、例えば21(wt%)程度の割合で含まれている。中付形導電層10に含まれるZWPの平均粒径は、1〜50(μm)の範囲内、例えば20(μm)程度である。このZWPは、25〜250(℃)の範囲で例えば-32×10-7(/℃)程度の負の熱膨張係数を有している。
そのため、中付形導電層10は、結合成分として熱膨張係数の大きいBi2O3-B2O3系低融点ガラスが用いられているにも拘らず、全体の熱膨張係数の増大がZWPによって抑制されているため、全体として、従来の鉛ガラスと同等の70〜80×10-7(/℃)程度の基板12に近似した熱膨張係数を有している。すなわち、ZWPは、組成物全体の熱膨張係数を低下させるための低膨張フィラーとして添加されている。このような低膨張フィラーは、一般に、導電性組成物の導電性を低下させる方向に作用するが、本実施例ではそのような傾向は見られず、中付形導電層10は高い導電性を有している。
要するに、本実施例によれば、中付形導電層10の熱膨張係数が基板12の熱膨張係数に適合している。そのため、それらの熱膨張係数の相違に起因して、中付形導電層10にひび割れが生じ、或いは、基板12にクラックが生じることが好適に抑制される。しかも、中付形導電層10の熱膨張係数は、低膨張フィラーとしてZWPを10〜55(wt%)の範囲内で含むことで調整されているため、他の低膨張フィラーが添加されている場合に比較して、導電性の低下が抑制される。したがって、導電性が高く且つ接着強度の高い中付形導電層10が得られる。
また、本実施例によれば、結合成分であるBi2O3-B2O3系低融点ガラスが前記のように10〜55(wt%)の範囲内の十分な割合で含まれていることから、2(N)以上の十分に高いグリッド電極20の固着強度が得られている。
これに対して、ジルコンが低膨張フィラーとして添加された従来の中付形導電層では、例えば、21(wt%)程度の添加量としても、配線層16とグリッド電極20との間の抵抗値が100(Ω)以上と大きくなるため、十分な導電性を維持することが困難である。しかも、ジルコンはZWPに比較すると熱膨張係数が著しく大きいため、上記のようにZWPと同程度の添加量としても熱膨張係数を低下させる効果を十分に享受することは困難である。そのため、熱膨張係数を十分に低下させて中付形導電層のひび割れや基板クラックを抑制するためには、含有量を一層多くする必要がある。しかしながら、そのようにすると抵抗値が一層大きくなることから、高い導電性を保ちつつ熱膨張係数を低下させて基板に適合させることは困難であった。
図2は、低膨張フィラーを含まない或いはその含有量が少ない導電性組成物を用いて形成した中付形導電層22の形成後の状態を示したものである。低膨張フィラーによって熱膨張係数を十分に低下させないと、基板12と中付形導電層22の熱膨張係数の相違に起因して、基板12にクラック24が生じ易くなると共に、中付形導電層22にもひび割れ26が生じ易くなる。すなわち、Bi2O3-B2O3系低融点ガラスは、熱膨張係数が大きいことから、前記のような低膨張フィラーの十分な量の添加が必須となる。
なお、中付形導電層10には、上記構成成分の他、カーボン、アルミニウム粉、顔料等が含まれている。カーボンは、還元剤として10(wt%)以下、例えば3〜5(wt%)程度の割合で含まれており、焼成時に導電成分であるAgが酸化して導電性が低下することを抑制するものである。また、アルミニウム粉は、収縮抑制剤として10(wt%)以下、例えば3(wt%)程度の割合で含まれており、焼成時にAgが過度に収縮してひび割れが生ずることを抑制するものである。また、顔料は、中付形導電層10を所望の色調に着色する目的で、Fe-Cr系複合酸化物等が10(wt%)以下、例えば2〜4(wt%)程度の割合で含まれている。
なお、上記中付形導電層10は、例えば、以下のようにして形成される。すなわち、先ず、調合工程において、予め定められた調合仕様に従って、Ag粉、Bi2O3-B2O3系低融点ガラス粉、還元剤、低膨張フィラー、Al粉、およびベヒクルをそれぞれ秤量、調合する。Ag粉は、例えば1〜10(μm)程度の平均粒径を備えた球形状粉体およびフレーク状粉体を重量比で1:1となるように混合したものを用いる。また、Bi2O3-B2O3系低融点ガラス粉は、従来と同様に適宜の粒子径の粉末を用いる。また、還元剤は、カーボン粉末である。また、低膨張フィラーは、前述したような特性を備えたZWPである。また、Al粉は、例えば1〜10(μm)程度の平均粒径を備えたフレーク状粉体であり、顔料は、例えば、0.5〜5(μm)程度の平均粒径を備えた破砕形状粉体である。
また、上記ベヒクルは、例えば、樹脂成分としてエチルセルロースおよびロジン系樹脂を、溶剤としてBCAおよびテルピネオールをそれぞれ含み、更に、可塑剤および分散剤を混合したものである。可塑剤としては、例えばDMP(ジメチルフタレート)、DEP(ジエチルフタレート)等のフタル酸エステルが好適である。上記ロジン系樹脂は、ロジンエステルまたはこれに重合ロジンを1:1の割合で混合したものが好適である。
次いで、混合工程では、上記の秤量した材料を攪拌機等を用いて軽く混合する。次いで、混練工程においては、例えば三本ロールミル等の混練機を用いて、混合した材料に混練処理を施す。混練時間は例えば15〜30分程度である。これにより、ベヒクル中にAg粉、ガラス粉、フィラー等から成る導電性組成物が分散させられた導電性ペーストが調製される。
次いで、塗布工程においては、配線層16が一面14に形成された基板12を用意し、その配線層16上の所定位置に上記の導電性ペーストを塗布する。
次いで、脚部埋め込み工程では、別途作製したグリッド電極20を、その脚部20aが導電性ペースト上に位置するように基板12上に載置することにより、その脚部20aを導電性ペースト内に埋め込む。
次いで、乾燥工程においては、例えば120(℃)程度のオーブンで乾燥処理を施す。次いで、焼成工程においては、連続焼成炉にて、焼成処理を施す。焼成条件はガラス粉の種類等に応じて適宜定められるが、例えば、最高保持温度が480(℃)で、最高保持温度における保持時間が10分程度である。これにより、導電性ペースト中のガラス成分が溶融させられ且つ硬化させられると共に、Ag粉が相互に結合させられ、前記の中付形導電層10が形成されて、グリッド電極20が基板12上に固着される。
図3、図4は、本発明の導電性組成物および導電性ペーストが適用された他の実施例のVFDの要部構成を説明する図である。図3において、基板12の一面14には、前記のような工程に従ってグリッド電極20の脚部20aが中付形導電層10によって固着されている。脚部20aは、このように中付形導電層10のみで固着されてもよいが、図4に示す態様では、その一部に覆い被さるようにガラス被覆層28が形成されている。このガラス被覆層28は、例えば、前記の乾燥工程を施した後、焼成工程の前に、ガラスペーストを塗布し、乾燥処理を施して、中付形導電層10と同時に焼成して形成される。上記のガラスペーストは、例えば、溶剤としてBCAのみを含み、テルピネオール系溶剤を含まないものが好適に用いられる。
このような態様によれば、Ag粉等を含まないことから高い固着力を有するガラス被覆層28によって中付形導電層10の固着強度が高められる。そのため、ガラス被覆層28を設けない場合に比較して、脚部20aと配線層16との密着性が高められるので、接触抵抗が一層確実に低下させられると共に、製造過程や使用中に振動が与えられた場合にもグリッド電極20の脱落や抵抗値の増大が一層生じ難いVFDが得られる。
上記のようにしてガラス被覆層28を設けるに際して、本実施例によれば、中付形導電層10を形成するための導電性ペーストを構成するベヒクルには、樹脂成分としてエチルセルロースおよびロジン系樹脂が、溶剤成分としてBCAおよびテルピネオールがそれぞれ含まれるのに対し、ガラス被覆層28を形成するためのガラスペーストには溶剤成分としてBCAのみが含まれていることから、導電性ペーストに乾燥処理を施した導電性ペースト膜は、ガラスペーストがその上に塗布されても、再溶解することが無い。導電性ペーストに含まれているロジン系樹脂は、テルピネオール系溶剤には溶解するがBCA等のグリコール系溶剤には溶解し難い。そのため、導電性ペースト中においては、好適に溶解するが、一旦硬化すると、溶剤としてBCAのみを含むガラスペーストを上から塗布しても溶解しないのである。
この結果、ガラス被覆層28を設けても、図4に示すように、中付形導電層10は溶解や変形等することなく当初の形状に保たれるので、隣接するパターンとの間で短絡すること(すなわち電気的なリークが生ずること)なく、好適に固着強度を補強し得る。
因みに、導電性ペーストに樹脂成分としてロジン系樹脂を混合しない場合や、ガラスペースト中にBCAおよびテルピネオールが溶剤成分として含まれる場合には、導電性ペーストを塗布して、乾燥処理を施した後にガラスペーストを塗布すると、導電性ペースト膜中の樹脂が再溶解させられる。そのため、導電性ペースト膜が流動性を有するものとなって形状が崩れ、甚だしい場合には隣接する導電性ペースト膜と接し或いは一体化させられる(すなわち電気的に短絡させられる)問題がある。図5は、一点鎖線に示すようにガラス被覆層30が形成されることにより、中付形導電層32の形状が崩れ、隣接するもの相互に接触することとなった状態を模式的に示している。上述したように、導電性ペースト中の樹脂成分が、ガラスペースト中の溶剤成分で溶解させられるような関係となっている場合には、このような不具合が生じ得るのである。
下記の表1および表2は、本発明の導電性組成物および導電性ペーストの組成を種々変更して、上述したようなガラス被覆層で一部が覆われた中付形導電層を形成し、その特性を評価した結果をまとめたものである。これら表1、表2において、「実施例」は本発明の範囲内の実施例を、「比較例」は本発明の範囲外の比較例をそれぞれ意味する。また、「Ag」〜「ベヒクルD」の欄は、比較例および実施例の各々の調合組成を重量百分率で表したものである。「ベヒクルA」〜「ベヒクルD」の組成は、表3に示した。
Figure 2007273178
Figure 2007273178
Figure 2007273178
また、表1,2において、「基板クラック」〜「導電リーク」の各欄は、中付形導電層およびガラス被覆層を設けて評価した結果を表している。「基板クラック」は、前記図2に示す基板クラック24の有無を評価したものである。具体的には、2(mm)□の評価ドットを任意に10箇所定めて、目視にてその10箇所のうちのクラックが生じているものの箇所数を数え、クラックが認められなかったものを「◎」、10箇所のうちの1箇所にクラックが認められたものを「△」、2箇所以上にクラックが認められたものを「×」と判定した。なお、何れの評価項目においても、「◎」および「○」は製品として合格であり、「△」および「×」は製品として不合格である。
また、「ひび割れ」は、前記図2に示す中付形導電層のひび割れ26の有無を評価したものである。具体的には、基板クラックと同様に2(mm)□の評価ドットを任意に10箇所定めて、目視にてその10箇所のうちのひび割れが生じているものの箇所数を数え、ひび割れが認められなかったものを「◎」、10箇所のうちの1箇所にひび割れが認められたものを「○」、2箇所にひび割れが認められたものを「△」、3箇所以上にひび割れが認められたものを「×」と判定した。
また、「抵抗値」は、基板12上の配線層16から中付形導電層を介してグリッド電極20までの抵抗値をテスターで測定して、実質的にその中付形導電層の抵抗値の大きさを評価したものである。抵抗値が1(Ω)以下であったものを「◎」、50(Ω)未満であったものを「○」、100(Ω)未満であったものを「△」、100(Ω)以上であったものを「×」と判定した。
また、「接着強度」は、接着部の外形サイズが約2(mm)□で、内部に約150(μm)□の角穴が約200(μm)間隔で並んだメッシュ形状を成すグリッド電極20を固着し、基板面に対して垂直に引張る引張り試験法により、剥離するに至った引張り強度を測定したものである。引張り強度が200(gf)以上すなわち1.96(N)以上であったものを「◎」、100(gf)以上すなわち0.98(N)以上であったものを「○」、100(gf)未満すなわち0.98(N)未満であったものを「×」と判定した。
また、「導電リーク」は、焼成処理を施した後に、ガラス被覆層で覆われた中付形導電層の変形の程度で評価した。前述したように、中付形導電層の樹脂成分が再溶解して、その中付形導電層が流動して変形すると、隣接する中付形導電層等にくっついて短絡し得る。すなわち、導電リークが生じ得る。そのため、この評価では、変形が全く認められないものを「◎」、変形が認められるが隣接する中付形導電層と接するまでには至っていないものを「○」、変形の程度が甚だしく隣接する中付形導電層と接しているもの、すなわち導電リークが生じたものを「×」と判定した。
前記表1、表2において、比較例1,3および実施例1〜5は、Agの含有量の上下限を明らかにするための組成例である。比較例1に示すようにAg量が19.0(wt%)では過少であるため、抵抗値が100(Ω)以上と著しく高くなった。また、比較例3に示すように、Ag量が71.0(wt%)では過剰であるため、相対的にガラス量が不足し、接着強度が低くなった結果として中付形導電層にひび割れが生じ、延いては抵抗値が上昇した。これらに対して、Ag量が20〜70(wt%)の実施例1〜5では、何れも抵抗値が50(Ω)未満の低い値に留まり、十分な導電性を有している。特に、実施例2〜4のようにAg量が30〜50(wt%)の場合には、1(Ω)以下の極めて低い値まで抵抗値が低下し、高い導電性を有する。
また、比較例2は、実施例2に対応する組成で、熱膨張係数を低下させるためのフィラーをZWPに代えてジルコンとしたものである。比較例2では、抵抗値が100(Ω)以上の高い値になる。ジルコンをフィラーとして用いると、導電性と熱膨張係数との両立が困難である。
また、実施例6,7および比較例3,4は、低融点ガラスの含有量の上下限を明らかにするための組成例である。比較例3に示すように、ガラス量が9.5(wt%)まで少なくなると、組成物全体の熱膨張係数が小さいことから、熱膨張の不適合に起因する基板クラックは生じないものの、中付形導電層の基板12への接着強度が不足すると共に、銀粉末相互の接合力が不足することとなるため、ひび割れが生じ、抵抗値も却って増大する。また、比較例4に示すように、ガラス量が56(wt%)に達すると、低膨張フィラーを添加しても熱膨張係数を十分に低下させることができないため、基板12との熱膨張の不適合によって、基板クラックおよび中付形導電層のひび割れが生ずる。実施例6,7に示すように、ガラス量が35〜55(wt%)の範囲内であれば、基板クラックおよびひび割れが何れも生じない。
なお、実施例5、8に示すようにガラス量は10〜15(wt%)でも合格レベルではあるが、接着強度がやや不足し、ひび割れも僅かに認められる場合がある。したがって、ガラス量は16(wt%)以上とすることが好ましい。
また、実施例7,比較例5は、フィラー量の上限を確かめたものである。比較例5に示すように、フィラー量が56(wt%)に達すると、基板クラックは生じないものの、接着強度が不足してひび割れがやや生じ易くなると共に、抵抗値が増大する。
なお、実施例5、7に示すようにフィラー量が10〜15(wt%)ではひび割れや接着強度の不足が認められる場合があるので、フィラー量は16(wt%)以上が一層好ましい。
また、実施例9,10は、還元剤およびAl粉(すなわち収縮抑制剤)の添加量を増大させたものであるが、それぞれ10(wt%)までの添加量では特に問題が生じないことが明らかとなった。したがって、これよりも添加量を多くすることも可能であると考えられるが、これらを多くするほど、主成分であるAg、ガラス、フィラーの含有量が相対的に少なくなるため、多くする利点は見当たらない。
また、比較例6,実施例11,12は、実施例2に対応する組成で、ベヒクルの組成を異なるものとしたものである。前記表3に示すように、ベヒクルAは全樹脂量に対するロジン系樹脂の割合が35(wt%)含まれるものであり、ベヒクルBはロジン系樹脂の割合が0(wt%)のものであり、ベヒクルCはロジン系樹脂の割合が2(wt%)に留まるものであり、ベヒクルDはベヒクルA,Cの中間のロジン系樹脂量としたものである。ベヒクルA,Dは、ロジン系樹脂は重合ロジンとロジンエステルとを併用した。ベヒクルCにおいては、重合ロジンは用いていない。何れにおいても、ロジンエステルは、ロジンのマレイン酸エステルである。
これら実施例2,11,12および比較例6を対比すれば、ロジン系樹脂を含まないベヒクルBが用いられた比較例6では、中付形導電層の樹脂が再溶解して導電リークが生ずることとなったのに対し、ロジン系樹脂を含むベヒクルA,C,Dが用いられた実施例2,11,12では、その含有割合の相違に拘らず、何れも導電リークが生じなかった。したがって、ロジン系樹脂を含む組成とすることは、ガラス被覆層を設ける構成では必須である。
なお、ロジン系樹脂の割合が2(wt%)に留まるベヒクルCを用いた比較例11では、導電リークには至らないものの中付形導電層の変形が認められた。ロジン系樹脂は全樹脂量に対して2(wt%)以上が必要であると考えられる。すなわち、エチルセルロースは、全樹脂量の98(wt%)を上限とすることが好ましい。また、ベヒクルAのようにロジン系樹脂が35(wt%)を占めても支障は無いので、エチルセルロースは全樹脂量の65(wt%)まで減じることも可能である。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
本発明の導電性組成物および導電性ペーストの適用対象の一例であるVFDのグリッド脚部近傍を接着部を拡大して模式的に示す断面図である。 低膨張フィラーを添加しない導電性組成物および導電性ペーストが用いられた場合の問題点を説明するための図1に対応する図である。 本発明の他の実施例の導電膜がガラス膜で覆われる態様を説明するための導電性ペースト膜が設けられた状態を模式的に示す斜視図である。 図3に続いて導電性ペースト膜を覆うガラスペースト膜が設けられた状態を模式的に示す斜視図である。 図3、図4に示される態様において、従来の導電性ペーストが用いられた場合の問題点を説明する図である。
符号の説明
10:中付形導電層、12:基板、14:一面、16:配線層、18:絶縁体層、20:グリッド電極、20a:脚部

Claims (2)

  1. 重量百分率でAgを20〜70(%)、Bi2O3-B2O3系低融点ガラスを10〜55(%)、燐酸タングステン酸ジルコニウムを10〜55(%)の範囲でそれぞれ含むことを特徴とする導電性組成物。
  2. ベヒクル中の全樹脂に対する重量百分率でエチルセルロースを65〜98(%)、ロジン系樹脂を2〜35(%)の範囲でそれぞれ含むベヒクル中に前記請求項1の導電性組成物を分散させたことを特徴とする導電性ペースト。
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