JP2007267548A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電動モータ起動時の注入電力を少なくすることにより、起動時の異音または振動を抑制でき、また、省エネルギー性にも優れたモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置5は、ロータならびにU相、V相およびW相のステータ巻線を備えた構成の電動モータ3を駆動する。高周波電圧発生部30は、大きさを一定に保持して所定周期で回転する回転定電圧ベクトルを印加するための電圧指令を生成する。ロータ角度推定部25は、回転定電圧ベクトルが印加されているときの電動モータ3からの電流応答に基づいてロータ位相角を推定する。回転定電圧の大きさおよび回転速度は、N極判定のための磁気飽和電圧および磁気飽和回転速度から、極位置推定のための極位置推定電圧および極位置回転速度へと変化させられる。これらは、温度センサ2によって検出される電動モータ3の温度に基づいて定められる。
【選択図】図1
【解決手段】モータ制御装置5は、ロータならびにU相、V相およびW相のステータ巻線を備えた構成の電動モータ3を駆動する。高周波電圧発生部30は、大きさを一定に保持して所定周期で回転する回転定電圧ベクトルを印加するための電圧指令を生成する。ロータ角度推定部25は、回転定電圧ベクトルが印加されているときの電動モータ3からの電流応答に基づいてロータ位相角を推定する。回転定電圧の大きさおよび回転速度は、N極判定のための磁気飽和電圧および磁気飽和回転速度から、極位置推定のための極位置推定電圧および極位置回転速度へと変化させられる。これらは、温度センサ2によって検出される電動モータ3の温度に基づいて定められる。
【選択図】図1
Description
この発明は、ブラシレスモータをセンサレス駆動するためのモータ制御装置に関する。ブラシレスモータは、たとえば、電動パワーステアリング装置における操舵補助力の発生源として利用される。
ブラシレスDCモータを駆動制御するためのモータ制御装置は、一般に、ロータの回転位置を検出するための位置センサの出力に応じてモータ電流の供給を制御するように構成されている。しかし、位置センサの耐環境性が問題となるうえ、高価な位置センサおよびこれに関連する配線がコストの削減を阻害し、かつ、小型化を阻害している。そこで、位置センサを用いることなくブラシレスDCモータを駆動するセンサレス駆動方式が提案されている。センサレス駆動方式は、ロータの回転に伴う誘起電圧を推定することによって、磁極の位相(ロータの電気角)を推定する方式である。
ロータ停止時および極低速回転時には、誘起電圧を推定できないので、別の方式で磁極の位相が推定される。具体的には、図2(a)に示すように、ロータ50の回転中心を原点とする固定座標であるαβ座標の原点まわりにロータ50の回転方向に沿って回転する高周波電圧ベクトル(大きさは一定)が形成されるように、高周波探査電圧がU,V,W相のステータ巻線51,52,53に印加される。高周波電圧ベクトルは、ロータ50の回転速度に対して十分に高速に回転する電圧ベクトルである。この高周波電圧ベクトルの印加に伴って、U,V,W相のステータ巻線51,52,53に電流が流れる。この三相の電流の大きさおよび方向をαβ座標上で表した電流ベクトルは、原点まわりに回転することになる。
ロータ50のインダクタンスは、磁束方向に沿う磁極軸であるd軸と、これに直交するq軸(トルク方向に沿う軸)とで異なる値をとる。そのため、電流ベクトルの大きさは、d軸に近い方向の場合に大きく、q軸に近い方向の場合に小さくなる。その結果、図2(b)に示すように、電流ベクトルの終点は、αβ座標上において、ロータ50のd軸方向を長軸とする楕円形の軌跡55を描く。
したがって、電流ベクトルの大きさは、ロータ50のN極方向およびS極方向において極大値を有する。すなわち、図3(a)に示すように、電流ベクトルの1周期において、その大きさは、2つの極大値を有する。この場合、電圧ベクトルの大きさが十分に大きければ、ステータの磁気飽和の影響により、ロータ50のN極側の方がS極側よりもインダクタンスが小さくなり、N極方向の電流ベクトルの大きさが最大値をとることになる(曲線L1参照)。
そこで、十分に大きな高周波電圧ベクトルを印加してN極に対応した電流ベクトルの極大値を特定しておき(N極判定動作)、その後は、大きさを小さくした高周波電圧ベクトルを印加し、電流ベクトルの極大値に基づいて、ロータ50の位相を推定することができる(極位置推定動作)。より具体的には、大きさが極大値をとるときの電流ベクトルのα軸成分Iαおよびβ軸成分Iβにより、ロータ50の位相角(電気角)θは、θ=Tan-1(Iβ/Iα)として求められる。
特許第3312472号公報
特開2000−282873号公報
陳 志謙他、「外乱オブザーバと速度適応同定による円筒型ブラシレスDCモータの位置・速度センサレス制御」、電気学会論文誌 D,118巻7/8号、平成10年
N極判定動作のためには、十分に大きな電圧を印加して、ステータ巻線の磁気飽和を生じさせる必要がある。
ところが、ロータの磁束密度は、温度に大きく依存するため、それに応じて、ステータ巻線の磁気飽和を引き起こすための電流値が変動する。したがって、このような温度依存性までをも考慮して、磁気飽和を生じさせるための電流値に対応した大電圧をステータ巻線に印加することにより、N極判定動作を確実に行う必要がある。
ところが、ロータの磁束密度は、温度に大きく依存するため、それに応じて、ステータ巻線の磁気飽和を引き起こすための電流値が変動する。したがって、このような温度依存性までをも考慮して、磁気飽和を生じさせるための電流値に対応した大電圧をステータ巻線に印加することにより、N極判定動作を確実に行う必要がある。
しかし、大電力の注入に伴って、電動モータから異音や振動が生じる問題があり、たとえば、電動パワーステアリング装置では、運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。また、必要以上の大電力を必要とするから、省エネルギー性の観点からも問題がある。
そこで、この発明の目的は、電動モータ起動時の注入電力を少なくすることにより、起動時の異音または振動を抑制でき、また、省エネルギー性にも優れたモータ制御装置を提供することである。
そこで、この発明の目的は、電動モータ起動時の注入電力を少なくすることにより、起動時の異音または振動を抑制でき、また、省エネルギー性にも優れたモータ制御装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、電動モータ(3)の温度を検出または推定する温度検出手段(28)と、この温度検出手段によって検出または推定される温度に基づいて、前記電動モータのステータが磁気飽和を起こすのに必要十分な磁気飽和電圧値を設定する磁気飽和電圧値設定手段(35A,S12)と、前記温度検出手段によって検出または推定される温度に基づいて、前記電動モータのロータ(50)の磁極位置を推定するのに必要十分な極位置推定電圧値を設定する極位置推定電圧値設定手段(35B,S14)と、前記磁気飽和電圧値設定手段によって設定された磁気飽和電圧値に従って、前記ロータの回転中心まわりを回転する回転定電圧ベクトルを形成するための磁気飽和用探査電圧を前記モータのステータ巻線(51,52,53)に印加し、その後に、前記極位置推定電圧値設定手段によって設定された極位置推定電圧値に従って、前記ロータの回転中心まわりを回転する回転定電圧ベクトルを形成するための極位置推定用探査電圧を前記ステータ巻線に印加する探査電圧印加手段(30)と、この探査電圧印加手段によって探査電圧を印加しているときの前記電動モータの応答に基づいて前記ロータの回転角を演算する回転角演算手段(25)とを含むことを特徴とするモータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、電動モータの温度に応じて、ステータの磁気飽和を生じさせるのに必要十分な磁気飽和電圧値および極位置推定のために必要十分な極位置推定電圧値が定められる。これらに従って、ロータの回転中心まわりで回転する回転定電圧ベクトルが形成されることにより、必要十分な電力を電動モータに注入して、N極判定動作およびその後の極位置推定動作を行わせることができる。より具体的には、磁気飽和電圧値に従って回転定電圧ベクトルが形成されている状態で電動モータの応答を調べることによって、ロータのN極位置を特定でき、さらに、極位置推定電圧値に従って回転定電圧ベクトルが形成されている状態で電動モータの応答を調べることによって、ロータの磁極位置を特定できる。こうして、ロータの回転角(電気角)を位置センサを用いることなく推定することができる。
このように、この発明では、電動モータの温度に応じて必要最低限の電力が注入されるので、電動モータの停止時や極低速回転時、すなわち、電動モータの起動時におけるロータ回転角の推定のために、電動モータに異音や振動が生じることを抑制することができる。それとともに、省エネルギー性も向上できる。
前記磁気飽和電圧値設定手段は、電動モータの温度を入力として、当該温度に対応する磁気飽和電圧値を出力するマップ(テーブル)で構成されていてもよい。同様に、極位置推定電圧値設定手段は、電動モータの温度を入力として、当該温度に対応する極位置推定電圧値を出力するマップ(テーブル)で構成されていてもよい。
前記磁気飽和電圧値設定手段は、電動モータの温度を入力として、当該温度に対応する磁気飽和電圧値を出力するマップ(テーブル)で構成されていてもよい。同様に、極位置推定電圧値設定手段は、電動モータの温度を入力として、当該温度に対応する極位置推定電圧値を出力するマップ(テーブル)で構成されていてもよい。
磁気飽和電圧値および極位置推定電圧値は、たとえば、ステータ巻線に流すべき必要十分な電流値に基づいて求められる。この場合、ステータ巻線のインピーダンスは温度に依存し、インピーダンスは印加電圧の周波数に依存するので、回転定電圧ベクトルの回転速度についても、電動モータの温度に応じて可変設定することが好ましい。具体的には、前記温度検出手段によって検出または推定される温度に基づいて、前記磁気飽和電圧値に対応した磁気飽和回転速度を設定する磁気飽和回転速度設定手段(36A,S12)と、前記温度検出手段によって検出または推定される温度に基づいて、前記極位置推定電圧値に対応した極位置推定回転速度を設定する極位置推定回転速度設定手段(36B,S14)とをさらに含むことが好ましい。これらは、温度を入力として各回転速度値を出力するマップ(テーブル)で構成されていてもよい。
また、探査電圧印加手段から印加される回転定電圧ベクトルの大きさを、磁気飽和電圧から極位置推定電圧へと漸次的に変更する手段(S15)をさらに含むことが好ましい。また、探査電圧印加手段から印加される回転定電圧ベクトルの回転速度を磁気飽和回転速度から極位置推定回転速度へと漸次的に変更する手段(S15)をさらに含むことが好ましい。これにより、ステータ巻線に流れる電流の急変を抑制できるから、電動モータによる駆動対象(たとえば、電動パワーステアリング装置における舵取り機構)やこれに連結された部材に対して不所望な動きや振動が生じることを抑制できる。
前記探査電圧印加手段は、前記ロータが回転停止または極低速回転(たとえば、250rpm以下)しているときに、探査電圧をステータ巻線に印加するものであることが好ましい。また、前記探査電圧印加手段は、前記回転定電圧ベクトルがロータの回転よりも速く(好ましくは、20倍以上の速さで)回転するように探査電圧を印加するものであることが好ましい。
前記回転角度演算手段は、前記探査電圧印加手段によって探査電圧を印加しているときに前記電動モータに流れる電流の極大値を検出する電流極大値検出手段(19,S4)と、この電流極大値検出手段によって電流極大値が検出されるときの前記回転定電圧ベクトルの位相を特定する位相特定手段(26,S5)とを含み、この特定された回転定電圧ベクトルの位相をロータ回転角の推定値として出力するものであってもよい。
前記モータ制御装置は、前記回転角演算手段が出力する回転角に基づいて、前記ロータを回転させるために前記ステータ巻線に印加する制御信号を生成する回転制御信号生成手段(10,13,14,15,16,17,18,20)をさらに含むことが好ましい。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に操舵補助力を与える電動モータ3と、この電動モータ3を駆動制御するモータ制御装置5とを備えている。モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルクに応じて電動モータ3を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスDCモータであり、図2(a)に示すように、界磁としてのロータ50と、U相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。電動モータ3は、ロータの外部にステータを配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを配置したアウターロータ型のものであってもよい。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に操舵補助力を与える電動モータ3と、この電動モータ3を駆動制御するモータ制御装置5とを備えている。モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルクに応じて電動モータ3を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスDCモータであり、図2(a)に示すように、界磁としてのロータ50と、U相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。電動モータ3は、ロータの外部にステータを配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを配置したアウターロータ型のものであってもよい。
モータ制御装置5は、d軸電流指令値生成部11と、q軸電流指令値生成部12と、d軸PI(比例積分)制御部13と、q軸PI制御部14と、d軸指示電圧生成部15と、q軸指示電圧生成部16と、d軸指示電圧およびq軸指示電圧を座標変換する座標変換部17と、PWM制御部10と、駆動回路(インバータ回路)18と、電流検出手段としての電流検出回路19と、電流検出回路19の出力を座標変換する座標変換部20とを備えている。
d軸電流指令値生成部11は、電動モータ3のロータ磁極方向に沿うd軸電流成分の指示値を生成する。同様に、q軸電流指令値生成部12は、d軸に直交するq軸(ただし、dq座標平面はロータ50の回転方向に沿う平面である。)電流成分の指示値を生成する。電動モータ3のU相、V相およびW相に与えるべき電流(正弦波電流)の振幅を表す電流指令値I*を用いると、d軸電流指令値Id *およびq軸電流指令値Iq *は、次式(1)(2)のように表される。
したがって、d軸電流指令値生成部11は定数「0」を生成し、q軸電流指令値生成部12は操舵トルクに応じたq軸電流指令値Iq *を生成するように構成されている。より具体的には、q軸電流指令値生成部12は、操舵トルクに対応したq軸電流指令値Iq *を記憶したマップ(テーブル)によって構成されてもよい。
電流検出回路19は、たとえば、電動モータ3のU相電流IUおよびV相電流IVを検出する。その検出値は、座標変換部20に与えられる。座標変換部20は、次式(3)(4)に従って、U相電流IUおよびV相電流IVを、dq座標上での電流成分、すなわち、d軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。
電流検出回路19は、たとえば、電動モータ3のU相電流IUおよびV相電流IVを検出する。その検出値は、座標変換部20に与えられる。座標変換部20は、次式(3)(4)に従って、U相電流IUおよびV相電流IVを、dq座標上での電流成分、すなわち、d軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。
モータ制御装置5は、さらに、d軸電流指令値Id *に対するd軸電流Idの偏差を演算するd軸電流偏差演算部21と、q軸電流指令値Iq *に対するq軸電流Iqの偏差を演算するq軸電流偏差演算部22とを備えている。これらが出力する偏差がそれぞれd軸PI制御部13およびq軸PI制御部14に与えられてPI演算処理を受ける。そして、これらの演算結果に応じて、d軸指示電圧生成部15およびq軸指示電圧生成部16によって、d軸指示電圧Vd *およびq軸指示電圧Vq *が生成されて、座標変換部17に与えられる。座標変換部17は、次式(5)(6)(7)に従って、d軸指示電圧Vd *およびq軸指示電圧Vq *をU相、V相およびW相の電圧指令値VU *,VV *,VW *に変換する。
PWM制御部10は、三相の電圧指令値VU *,VV *,VW *に応じて制御されたデューティ比の駆動信号を生成して駆動回路18に与える。これにより、電動モータ3の各相には、電圧指令値VU *,VV *,VW *に応じたデューティ比で電圧が印加されることになる。
前記式(3)〜(7)の座標変換のためには、ロータ50の位相角(電気角)θが必要である。そこで、モータ制御装置5は、ロータ位相角θを、位置センサを用いることなく推定するロータ角度推定部25を備えている。このロータ角度推定部25には、電流検出回路19の出力が、高周波応答抽出部24を介して与えられている。高周波応答抽出部24は、たとえば、ハイパスフィルタである。
前記式(3)〜(7)の座標変換のためには、ロータ50の位相角(電気角)θが必要である。そこで、モータ制御装置5は、ロータ位相角θを、位置センサを用いることなく推定するロータ角度推定部25を備えている。このロータ角度推定部25には、電流検出回路19の出力が、高周波応答抽出部24を介して与えられている。高周波応答抽出部24は、たとえば、ハイパスフィルタである。
ロータ50の停止時および極低速回転時(250rpm以下)においてロータ50の位相角θを推定するために、モータ制御装置5には、さらに、探査電圧印加手段としての高周波電圧発生部30が備えられている。この高周波電圧発生部30は、電動モータ3の定格周波数に比較して十分に高い周波数(たとえば、200Hz)の高周波正弦電圧を、探査電圧として、電動モータ3のU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53に印加するための電圧指令値を生成し、PWM制御部10に与える。より具体的には、ロータ50の回転を引き起こすことのない程度のデューティ比の高周波電圧の印加によって、V−W相通電、W−U相通電およびU−V相通電を順次繰り返させることにより、ロータ50の回転中心まわりで空間的に回転する回転定電圧ベクトルである高周波電圧ベクトルを印加する。この高周波電圧ベクトルは、ロータ50の回転中心を原点とする固定座標であるαβ座標の原点まわりに定速回転する一定の大きさの電圧ベクトルである(図2(a)参照)。
高周波電圧発生部30は、ロータ50の停止時および極低速回転時において、前述のような高周波電圧(探査電圧)の印加のための指令値を生成してPWM制御部10に与える。ロータ50の回転が十分に速くなると(たとえば、250rpmを超えると)、高周波電圧発生部30は、高周波電圧指令の発生を停止する。
高周波応答抽出部24は、ロータ50の停止時および極低速回転時において、高周波電圧発生部30が発生する高周波電圧の周波数に対応した周波数成分を電流検出回路19の出力信号から抽出するフィルタ処理を実行する。また、高周波応答抽出部24は、ロータ50の回転が十分に速くなると(たとえば、250rpmを超えると)、前記フィルタ処理を行わず、電流検出回路19の出力信号をロータ角度推定部25へとスルーさせる。
高周波応答抽出部24は、ロータ50の停止時および極低速回転時において、高周波電圧発生部30が発生する高周波電圧の周波数に対応した周波数成分を電流検出回路19の出力信号から抽出するフィルタ処理を実行する。また、高周波応答抽出部24は、ロータ50の回転が十分に速くなると(たとえば、250rpmを超えると)、前記フィルタ処理を行わず、電流検出回路19の出力信号をロータ角度推定部25へとスルーさせる。
したがって、ロータ角度推定部25は、ロータ50の停止時および極低速回転時には、高周波応答抽出部24によって抽出される高周波成分に基づいてロータ位相角θを推定する。また、ロータ角度推定部25は、ロータ50の回転が十分に速くなると、高周波応答抽出部24によるフィルタ処理を受けていない電流検出回路19の出力を用いることにより、ロータ50の回転に伴ってU,V,W相のステータ巻線51,52,53に現れる誘起電圧を推定(たとえば、非特許文献1参照)し、これに基づいて、ロータ50の位相角θを推定する。
ロータ角度推定部25は、ロータ50の停止時および極低速回転時において、ロータ50の回転角を求めるために使用される計数手段としてのカウンタ26を備えている。このカウンタ26は、高周波電圧発生部30の働きによって印加される高周波電圧ベクトルがα軸(U相方向に一致)に沿うとき(すなわち、高周波電圧ベクトルの位相が零のとき)に初期化されて計数動作を開始するように繰り返し動作する。カウンタ26は、たとえば、高周波電圧の周期(高周波電圧ベクトルがロータ50の電気角で360度回転するのに要する時間)Tをn等分(nは1周期当たりのサンプリング数。たとえばn=360)した周期T/n毎にカウントアップするもので、その出力は、高周波電圧ベクトルの位相を表す。そこで、図3に示すように、高周波応答抽出部24の出力(電流)の極大値が検出された時点でカウンタ26の計数値を参照すれば、この計数値はロータ50の磁極位置(電流ベクトルの大きさが最大のときの高周波電圧ベクトルの位相角)を表す。なお、図3(a)は電流ベクトルの大きさの時間変化を表し、図3(b)は高周波電圧ベクトルのβ軸成分の時間変化を表し、図3(c)はカウンタ26の計数値の時間変化を表している。
図4は、ロータ50の停止時または極低速回転時におけるロータ位相角推定動作を説明するためのフローチャートであり、高周波電圧発生部30の働きによって印加される高周波電圧ベクトルの1周期(1回転)に対応している。高周波電圧ベクトルの印加開始(位相角零)と同期してカウンタ26が初期化されて計数が開始される(ステップS1,S2,S3)。一方、ロータ角度推定部25は、高周波応答抽出部24の出力の極大値を検出し(ステップS4)、極大値が検出されたときのカウンタ26の計数値をロータ位相角推定値として出力する(ステップS5)。
前述のとおり、電流ベクトルの大きさは、電流ベクトルの方向がロータ50のN極方向およびS極方向に向くときに極大値をとり、高周波電圧ベクトルの大きさがステータの磁気飽和を生じるほど大きい場合には、N極方向に向くときの電流ベクトルの大きさがS極方向に向くときの電流ベクトルの大きさよりも大きくなる(図3(a)の曲線L1参照)。
そこで、電動モータ3の起動時には、N極位置が不明であるので、高周波電圧発生部30は、ステータの磁気飽和を生じさせることができる大きさの高周波電圧ベクトルを印加し、一方、ロータ角度推定部25は、高周波電圧ベクトルの1周期中で電流ベクトルの大きさが最大値となるときのカウンタ26の計数値に基づいてN極位置を判定するN極判定動作を行う。すなわち、高周波電圧ベクトルの1周期に2度現れる極大値のうちのいずれがN極に対応した極大値であるかが特定される。その後は、高周波電圧発生部30は、磁気飽和を生じるほどは大きくない高周波電圧ベクトルを印加し、ロータ角度推定部25は、N極判定動作によって特定された極大値に対応する極大値の位置でカウンタ26の計数値を参照し、その計数値をロータ角度位置として出力する極位置推定動作(ロータ角度位置推定動作)を行う(図3(a)の曲線L2参照)。
そこで、電動モータ3の起動時には、N極位置が不明であるので、高周波電圧発生部30は、ステータの磁気飽和を生じさせることができる大きさの高周波電圧ベクトルを印加し、一方、ロータ角度推定部25は、高周波電圧ベクトルの1周期中で電流ベクトルの大きさが最大値となるときのカウンタ26の計数値に基づいてN極位置を判定するN極判定動作を行う。すなわち、高周波電圧ベクトルの1周期に2度現れる極大値のうちのいずれがN極に対応した極大値であるかが特定される。その後は、高周波電圧発生部30は、磁気飽和を生じるほどは大きくない高周波電圧ベクトルを印加し、ロータ角度推定部25は、N極判定動作によって特定された極大値に対応する極大値の位置でカウンタ26の計数値を参照し、その計数値をロータ角度位置として出力する極位置推定動作(ロータ角度位置推定動作)を行う(図3(a)の曲線L2参照)。
N極判定動作およびその後の極位置推定動作のために、ロータ角度推定部25は、モータ制御装置5に備えられたメモリ40内に格納された温度−印加電圧テーブル35および温度−回転速度テーブル36を参照し、また、電動モータ3の近傍の温度を検出する温度センサ28が検出する温度を参照するようになっている。
温度−印加電圧テーブル35は、磁気飽和電圧テーブル35Aと、極位置推定電圧テーブル35Bとを含む。磁気飽和電圧テーブル35Aは、磁気飽和電圧と温度との関係を規定したテーブルである。磁気飽和電圧とは、N極判定動作時にステータの磁気飽和を発生させるために高周波電圧発生部30から発生させるべき必要十分な大きさの探査電圧である。一方、極位置推定電圧テーブル35Bは、極位置推定電圧と温度との関係を規定したテーブルである。極位置推定電圧とは、N極判定動作後の極位置推定動作時において高周波電圧発生部30から発生させるべき必要十分な大きさの探査電圧であり、ステータの磁気飽和が生じるほど大きくない電圧、すなわち、磁気飽和電圧よりも小さい電圧である。
温度−印加電圧テーブル35は、磁気飽和電圧テーブル35Aと、極位置推定電圧テーブル35Bとを含む。磁気飽和電圧テーブル35Aは、磁気飽和電圧と温度との関係を規定したテーブルである。磁気飽和電圧とは、N極判定動作時にステータの磁気飽和を発生させるために高周波電圧発生部30から発生させるべき必要十分な大きさの探査電圧である。一方、極位置推定電圧テーブル35Bは、極位置推定電圧と温度との関係を規定したテーブルである。極位置推定電圧とは、N極判定動作後の極位置推定動作時において高周波電圧発生部30から発生させるべき必要十分な大きさの探査電圧であり、ステータの磁気飽和が生じるほど大きくない電圧、すなわち、磁気飽和電圧よりも小さい電圧である。
温度−回転速度テーブル36は、磁気飽和回転速度テーブル36Aと、極位置推定回転速度テーブル36Bとを含む。磁気飽和回転速度テーブル36Aは、ステータに磁気飽和を生じさせるN極判定動作時における高周波ベクトルの回転速度と温度との関係を規定したテーブルである。ステータ巻線51,52,53に流れる電流は、高周波電圧ベクトルの大きさおよび回転速度に依存する。そこで、温度に応じて定められる磁気飽和電圧に応じて、回転速度もまた温度に依存するように定められるようになっている。極位置推定回転速度テーブル36Bは、極位置推定動作を行う際の高周波ベクトルの回転速度と温度との関係を規定したテーブルである。前述のとおり、ステータ巻線51,52,53に流れる電流は、高周波電圧ベクトルの大きさおよび回転速度に依存するので、温度に応じて定められる極位置推定電圧に応じて、その回転速度もまた温度に依存するように定められるようになっている。
高周波電圧発生部30が生成する電圧指令は、その電圧値の可変制御が可能であり、この電圧値は、ロータ角度推定部25によって制御されるようになっている。また、高周波電圧発生部30は、高周波電圧ベクトルの回転速度が可変制御可能であり、その回転速度は、ロータ角度推定部25によって制御されるようになっている。
図5は、温度−印加電圧テーブル35の一例を説明するための図であり、曲線A1は磁気飽和電圧テーブル35Aに対応し、曲線B1は極位置推定電圧テーブル35Bに対応している。また、図6は、温度−回転速度テーブル36の一例を説明するための図であり、曲線A2は磁気飽和回転速度テーブル36Aに対応し、曲線B2は極位置推定回転速度テーブル36Bに対応している。
図5は、温度−印加電圧テーブル35の一例を説明するための図であり、曲線A1は磁気飽和電圧テーブル35Aに対応し、曲線B1は極位置推定電圧テーブル35Bに対応している。また、図6は、温度−回転速度テーブル36の一例を説明するための図であり、曲線A2は磁気飽和回転速度テーブル36Aに対応し、曲線B2は極位置推定回転速度テーブル36Bに対応している。
磁気飽和電圧テーブル35Aおよび磁気飽和回転速度テーブル36Aは、予め行う実験結果に従って定められる。具体的には、様々な温度環境下で、ステータの磁気飽和を生じさせるために必要十分な電流値が実験によって求められ、その電流値が達成されるように、磁気飽和電圧テーブル35Aおよび磁気飽和回転速度テーブル36Aが定められる。磁気飽和を生じさせるために必要な電流値は、電動モータ3の形状、ロータ50の磁束密度、ステータの透磁率に依存する。このなかで、ロータ50の磁束密度は、温度依存性が高く、そのために、ステータに磁気飽和を生じさせるための電流値が温度に依存することになる。さらに、ステータ巻線51,52,53のインピーダンスもまた温度依存性が高いため、当該電流値を達成するために印加すべき高周波電圧ベクトルの大きさ(磁気飽和電圧)および回転速度(磁気飽和回転速度)が、温度に依存することになる。
このような温度依存性に応じて、ステータに磁気飽和を生じさせるための必要十分な(必要最低限の)電圧および回転速度が、個々の温度ごとの磁気飽和電圧および磁気飽和回転速度としてそれぞれ求められることにより、磁気飽和電圧テーブル35Aおよび磁気飽和回転速度テーブル36Aが作成される。
図5の曲線A1の例では、常温(たとえば、23〜25℃程度)までの温度に対しては、一定の磁気飽和電圧が設定され、常温以上の温度に対しては、温度の増加に伴ってリニアに増加するように磁気飽和電圧が設定されている。また、図6の曲線A2の例では、常温までの温度に対しては一定の磁気飽和回転速度が設定され、常温以上の温度に対しては、温度の増加に伴ってリニアに減少するように磁気飽和回転速度が設定されている。
図5の曲線A1の例では、常温(たとえば、23〜25℃程度)までの温度に対しては、一定の磁気飽和電圧が設定され、常温以上の温度に対しては、温度の増加に伴ってリニアに増加するように磁気飽和電圧が設定されている。また、図6の曲線A2の例では、常温までの温度に対しては一定の磁気飽和回転速度が設定され、常温以上の温度に対しては、温度の増加に伴ってリニアに減少するように磁気飽和回転速度が設定されている。
極位置推定用テーブル35Bおよび極位置推定回転速度テーブル36Bも同様に、予め行う実験結果に従って定められる。具体的には、様々な温度環境下で、ステータの磁気飽和が生じるよりも低い範囲で、磁石極位置の推定に必要十分な電流の極大値を生じさせるために必要十分な電流値が実験によって求められ、その電流値が達成されるように、極位置推定電圧テーブル35Bおよび極位置推定回転速度テーブル36Bが定められる。磁石極位置の推定のために必要とされる電流値も、むろん、電動モータ3の形状、ロータ50の磁束密度、ステータの透磁率に依存し、したがって、ロータ磁束密度の温度依存性に起因して、強い温度依存性を有することになる。そして、さらに、ステータ巻線51,52,53のインピーダンスもまた温度依存性が高いため、当該電流値を達成するために印加すべき高周波電圧ベクトルの大きさ(極位置推定電圧)および回転速度(極位置推定回転速度)が、温度に依存することになる。
この温度依存性に応じて、必要十分な電圧および回転速度が、個々の温度ごとの極位置推定電圧および極位置推定回転速度としてそれぞれ求められることにより、極位置推定電圧テーブル35Bおよび極位置推定回転速度テーブル36Bが作成される。
この温度依存性に応じて、必要十分な電圧および回転速度が、個々の温度ごとの極位置推定電圧および極位置推定回転速度としてそれぞれ求められることにより、極位置推定電圧テーブル35Bおよび極位置推定回転速度テーブル36Bが作成される。
図5の曲線B1の例では、常温(たとえば、23〜25℃程度)までの温度に対しては、一定の極位置推定電圧が設定され、常温以上の温度に対しては、温度の増加に伴ってリニアに増加するように極位置推定電圧が設定されている。また、図6の曲線B2の例では、常温までの温度に対しては一定の極位置推定回転速度が設定され、常温以上の温度に対しては、温度の増加に伴ってリニアに減少するように極位置推定回転速度が設定されている。
曲線A1,B1の比較から理解されるとおり、いずれの温度においても、磁気飽和電圧は、極位置推定電圧よりも高く定められている。
図7は、電動モータ3の起動時におけるロータ位相角θの推定動作を説明するためのフローチャートであり、N極判定および極位置推定のための動作が示されている。
ロータ角度推定部25は、温度センサ28から電動モータ3の周辺温度を読み込み(ステップS11)、磁気飽和電圧テーブル35Aおよび磁気飽和回転速度テーブル36Aを参照して、当該温度に対応した磁気飽和電圧および磁気飽和回転速度を決定する(ステップS12)。これらの磁気飽和電圧および磁気飽和回転速度の各値が高周波電圧発生部30に与えられることにより、高周波電圧発生部30は、それらの値に応じた高周波電圧ベクトルを発生させるためにU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53に印加すべき電圧を表す電圧指令値を生成する。こうして、U相、V相およびW相の空間に印加される高周波電圧ベクトルに対する電流応答が、電流検出回路19の出力に基づいてロータ角度推定部25によって調べられ、高周波電圧ベクトルの一周期中における最大電流値に対応する高周波ベクトルの位相角が、N極位置として特定される。こうしてN極判定動作が行われる(ステップS13)。
図7は、電動モータ3の起動時におけるロータ位相角θの推定動作を説明するためのフローチャートであり、N極判定および極位置推定のための動作が示されている。
ロータ角度推定部25は、温度センサ28から電動モータ3の周辺温度を読み込み(ステップS11)、磁気飽和電圧テーブル35Aおよび磁気飽和回転速度テーブル36Aを参照して、当該温度に対応した磁気飽和電圧および磁気飽和回転速度を決定する(ステップS12)。これらの磁気飽和電圧および磁気飽和回転速度の各値が高周波電圧発生部30に与えられることにより、高周波電圧発生部30は、それらの値に応じた高周波電圧ベクトルを発生させるためにU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53に印加すべき電圧を表す電圧指令値を生成する。こうして、U相、V相およびW相の空間に印加される高周波電圧ベクトルに対する電流応答が、電流検出回路19の出力に基づいてロータ角度推定部25によって調べられ、高周波電圧ベクトルの一周期中における最大電流値に対応する高周波ベクトルの位相角が、N極位置として特定される。こうしてN極判定動作が行われる(ステップS13)。
次に(たとえば所定時間経過後)、ロータ角度推定部25は、極位置推定電圧テーブル35Bおよび極位置推定回転速度テーブル36Bを参照して、ステップS1で取得された温度に対応する極位置推定電圧および極位置推定回転速度の各値を取得する(ステップS14)。
この取得された各値をそのまま高周波電圧発生部30に与えると、高周波電圧ベクトルが急変することになり、運転者に対してステアリングホイールを介して違和感を与えてしまうおそれがある。より具体的には、高周波電圧ベクトルの回転速度の変化により、ステータ巻線51,52,53のインピーダンスが変化し、ステータ巻線51,52,53に流れる電流が変化する。そこで、ロータ角度推定部25は、磁気飽和電圧から極位置推定電圧まで滑らかに変化する電圧値と、磁気飽和回転速度から極位置推定回転速度まで滑らかに変化する回転速度値とを、たとえば直線補間によって生成し、それらを高周波電圧発生部30に与える。これによって、U相、V相およびW相の空間に印加される高周波電圧ベクトルは、徐々に、極位置推定電圧および極位置推定回転速度に対応した電圧ベクトルへと変化していく(ステップS15)。
この取得された各値をそのまま高周波電圧発生部30に与えると、高周波電圧ベクトルが急変することになり、運転者に対してステアリングホイールを介して違和感を与えてしまうおそれがある。より具体的には、高周波電圧ベクトルの回転速度の変化により、ステータ巻線51,52,53のインピーダンスが変化し、ステータ巻線51,52,53に流れる電流が変化する。そこで、ロータ角度推定部25は、磁気飽和電圧から極位置推定電圧まで滑らかに変化する電圧値と、磁気飽和回転速度から極位置推定回転速度まで滑らかに変化する回転速度値とを、たとえば直線補間によって生成し、それらを高周波電圧発生部30に与える。これによって、U相、V相およびW相の空間に印加される高周波電圧ベクトルは、徐々に、極位置推定電圧および極位置推定回転速度に対応した電圧ベクトルへと変化していく(ステップS15)。
高周波電圧ベクトルが極位置推定用の電圧および回転速度に対応したものになって安定するために必要な所定時間だけ経過した後、ロータ角度推定部25は、極位置推定動作を行う(ステップS16)。この極位置推定動作の詳細は、前述の図4を参照して説明したとおりである。
以上のように、この実施形態によれば、電動モータ3の温度に応じて、N極判定動作時にはステータの磁気飽和を生じさせるために必要十分な電力がステータ巻線51,52,53に供給され、極位置判定動作時には極位置判定のために必要十分な電力がステータ巻線51,52,53に供給されるようになっている。これにより、必要以上の大電力が電動モータ3に供給されることがないので、起動時の異音および振動を低減することができる。それとともに、必要最小限の電力が電動モータ3に注入されるので、省エネルギー性も向上することができる。
以上のように、この実施形態によれば、電動モータ3の温度に応じて、N極判定動作時にはステータの磁気飽和を生じさせるために必要十分な電力がステータ巻線51,52,53に供給され、極位置判定動作時には極位置判定のために必要十分な電力がステータ巻線51,52,53に供給されるようになっている。これにより、必要以上の大電力が電動モータ3に供給されることがないので、起動時の異音および振動を低減することができる。それとともに、必要最小限の電力が電動モータ3に注入されるので、省エネルギー性も向上することができる。
さらに、この実施形態では、磁気飽和用の電圧および回転速度での高周波ベクトル印加から、極位置推定用の電圧および回転速度での高周波ベクトル印加への変更が、直線補間等により、滑らかに行われるようになっている。これにより、電動モータ3に供給される電流の急変を抑制できるので、ロータ停止時または極低速回転状態におけるロータ位相角推定動作に起因する違和感を低減することができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、高周波電圧ベクトルの印加と同期して計数を行うカウンタ26を用いてロータ位相角θを求めているが、カウンタ26を用いずにロータ位相角θを求めてもよい。たとえば、電流の極大値が検出されたときの高周波電圧ベクトルのα軸成分Vαおよびβ軸成分Vβから、θ=Tan-1(Vβ/Vα)によって、位相角θを求めてもよい。また、αβ座標における電流ベクトル(電流値が極大値のときの電流ベクトル)の成分Iα,Iβを求め、θ=Tan-1(Iβ/Iα)によって、位相角θを求めてもよい。
また、前述の実施形態では、ロータ角度推定部25は、高周波応答抽出部24の出力を参照しているが、座標変換部20で変換した後の電流成分Id,Iqのノルム{Id 2+Iq 2}1/2を電流ベクトルの大きさとして用い、これが極大値をとるときの高周波電圧ベクトルの位相をカウンタ26の計数値によって求めるようにしてもよい。
さらに、前述の実施形態では、電動モータ3の温度を温度センサ28によって検出し、その検出温度をロータ角度推定部25が参照するようにしているが、専用の温度センサを用いず、演算によって電動モータ3の温度を推定するようにしてもよい。
さらに、前述の実施形態では、電動モータ3の温度を温度センサ28によって検出し、その検出温度をロータ角度推定部25が参照するようにしているが、専用の温度センサを用いず、演算によって電動モータ3の温度を推定するようにしてもよい。
具体的には、電動モータの主な損失は、ステータ巻線の抵抗成分によって発生する損失である銅損P1、ステータのヒステリシスループによって発生する損失である鉄損P2、および誘起電圧で流れる電流により発生する損失である渦電流損P3である。これらは、個々の電動モータに固有の定数k1,k2,k3、通電電流I(アンペア)および周波数(モータ回転速度)(ヘルツ)を用いて、次式(8)(9)および(10)のように表される。
P1=k1I2 (8)
P2=k2f (9)
P3=k3f2 (10)
全損失は時間tの関数であり、これをP(t)=P1+P2+P3とする。損失は、電動モータの温度上昇分と周囲へと拡散分との和である。そこで、電動モータの熱容量C(J/k)、表面積S(m2)、外気温との温度差T、およびモータ表面熱伝達係数k4(W/m2K)を用いると、時間t=0〜t0の間に発生する熱量に関して、次式(11)が成立する。
P2=k2f (9)
P3=k3f2 (10)
全損失は時間tの関数であり、これをP(t)=P1+P2+P3とする。損失は、電動モータの温度上昇分と周囲へと拡散分との和である。そこで、電動モータの熱容量C(J/k)、表面積S(m2)、外気温との温度差T、およびモータ表面熱伝達係数k4(W/m2K)を用いると、時間t=0〜t0の間に発生する熱量に関して、次式(11)が成立する。
これを、次のように変形することによって微分方程式(12)が得られ、これを解くと、式(13)を得る。
時間t=0における温度差T(0)=0とすれば、次式(14)が得られる。
したがって、定数k1,k2,k3を予め実験によって求めておき、通電電流Iおよび周波数fを測定すれば、演算によって、式(14)により、温度差T(t)を推定することができる。
この推定された温度差T(t)を、車室内等に設けられた汎用の温度計で検出される温度(外気温)に加算することによって、電動モータの温度を推定できる。
この推定された温度差T(t)を、車室内等に設けられた汎用の温度計で検出される温度(外気温)に加算することによって、電動モータの温度を推定できる。
上記の他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
5…モータ制御装置、35…温度−印加電圧テーブル、36…温度−回転速度テーブル、50…ロータ、51〜53…ステータ巻線
Claims (1)
- 電動モータの温度を検出または推定する温度検出手段と、
この温度検出手段によって検出または推定される温度に基づいて、前記電動モータのステータが磁気飽和を起こすのに必要十分な磁気飽和電圧値を設定する磁気飽和電圧値設定手段と、
前記温度検出手段によって検出または推定される温度に基づいて、前記電動モータのロータの磁極位置を推定するのに必要十分な極位置推定電圧値を設定する極位置推定電圧値設定手段と、
前記磁気飽和電圧値設定手段によって設定された磁気飽和電圧値に従って、前記ロータの回転中心まわりを回転する回転定電圧ベクトルを形成するための磁気飽和用探査電圧を前記モータのステータ巻線に印加し、その後に、前記極位置推定電圧値設定手段によって設定された極位置推定電圧値に従って、前記ロータの回転中心まわりを回転する回転定電圧ベクトルを形成するための極位置推定用探査電圧を前記ステータ巻線に印加する探査電圧印加手段と、
この探査電圧印加手段によって探査電圧を印加しているときの前記電動モータの応答に基づいて前記ロータの回転角を演算する回転角演算手段とを含むことを特徴とするモータ制御装置。
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