JP2007263234A - 軸受シール、軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】衝撃による振動が作用した際においても、シール性を良好に維持できる軸受けシール、および軸受装置を提供する。
【解決手段】軸受シールBを、基端側から先端側に向かうに従ってリング中心軸線に接近するようなテーパを有したリング状のシールリップ200を含んで構成し、このシールリップ200には、周方向に摺動するピン101の外周面に接触するシール面220を形成し、シールリップ200の先端には、シール面220と連続した外周面26を形成し、シール面220と外周面26とを鈍角を成すように連続させることで第1エッジ27Aを形成し、シール面220とシール面220の基端側の面210とを鈍角を成すように連続させることで第2エッジ27Bを形成した。
【選択図】 図11
Description
ピンで連結された部分、つまり、ピンヒンジジョイントにおいては、軸受装置が設けられており、ピンとボスとの間にグリース等の潤滑剤を充填してスムーズに揺動できるようにするとともに、金属接触による摩耗、異音発生を防止するようにしている。この軸受装置には、ピンとボスとの間に外部からの泥水等が侵入するのを防止するとともに、ピンとボス間の隙間から潤滑剤が漏れ出てしまうのを防止するため、軸受シールが用いられている。
このようなシールリップを備えた軸受シールにおいて、密封性をさらに向上させるために先端部外側に環状突起を設けて軸の外周面への圧接力を高めたものもある。(例えば特許文献1)
すなわち、衝撃による振動が作用した際に、ピンに対する接触面のピーク接触圧が十分に得られない場合は、シール性が低下してその隙間からダストや泥水が侵入したり、潤滑剤が漏れ出てしまうという問題があった。
(軸受装置の全体構成)
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る軸受装置100が示されている。この軸受装置100は、油圧ショベルを構成するブームとアームとを連結するピンヒンジジョイントとして用いられ、例えば、一方の部材となるアームには、軸部としてのピン101が設けられ、他方の部材となるブームには、軸受としてのボス102が設けられている。
ボス102は、この円柱状のピン101を内挿する円筒状の鋼製材料から構成され、ボス102の内径はピン101の外径よりも大きく、これらの間に隙間が形成されている。また、ボス102の円筒端面開口部分には、ブラケット103とボス102間の隙間を減らすために、シム104が設けられている。
このボス102の円筒内周面には、一対の軸受部105が間隔を空けて圧入され、この軸受部105の軸受面によってピン101が支承されている。そして、ピン101が軸受部105の軸受面に対して摺動することによって、ブームおよびアームが回動する。
図2には、軸受シールAの全体構造が示されている。図3には、軸受シールAが軸受装置100に装着された状態が示されている。ただし、図2と図3とでは軸受シールAの向きを違えて図示してある。軸受けシールAは、径の異なる複数のリング状部材を同心円状に組み合わせて構成され、最外周に配置されたアウターリング10と、このアウターリング10の内側に配置されたリング状のシール20と、リング状の剛性部としてのインナーリング30とを備える。
アウターリング固着部21Aは、外径寸法がアウターリング10のボス固着部11の内径寸法と略同じに形成され、外周面がアウターリング10のボス固着部11の内周面に固着されている。
薄肉変形部21Bは、アウターリング固着部21Aの外端(反潤滑剤封入空間側端)からこのアウターリング固着部21Aの内周面との間に空間を隔ててかつこれと略平行に円筒状に延設され、この円筒部分の肉厚は薄く形成されている。
インナーシール部22は、図4に拡大して示されるように、先端部分に、径方向外側に膨出した肉厚部25と、第1シール面22Bと連続する外側の外周面26とを備えている。外周面26は、軸線方向に沿った断面でみた場合に第1シール面22Bと鈍角を成して連続し、その連続部分には、第1エッジ27Aが形成されている。
軸受シールAをピン101に装着しない状態においては、インナーシール部22の先端側内径寸法(第1エッジ27A部分の内径寸法)は、ピン101の外径寸法よりも小さい。軸受シールAにピン101を挿入する際は、インナーシール部22の先端部分を広げながら軸受シールAに対してピン101を挿入し、ピン101を所望の位置まで移動させる。
ピン101が所望位置まで挿入されると、インナーシール部22のリング状シール面22Aがピン101の外周面に押圧されて外側に弾性変形し、先端側の第1シール面22Bの全域は、ピン101の外周面に圧接し、基端側の第2シール面22Cは、インナーシール部26の外側への弾性変形量に応じた接触面積でピン101の外周面に圧接する。
図5には、リング状シール面22Aのピン101に対する接触面の接触圧分布の概略図が示されている。
この際、リング状シール面22Aに形成された第1エッジ27A、第2エッジ27B、および第3エッジ27C部分のピン101に対する接触圧は、図5に示されるように、ピン101に対してそれぞれピーク接触圧となる。また、第2エッジ27Bおよび第3エッジ27C部分の接触圧は、第1エッジ27A部分の接触圧よりも高くなる。これに対し、溝24が設けられていない場合のピン101に対するインナーシール部22接触面のピーク接触圧は、第1エッジ27Aに相当する部位でピークとなるだけであり、リング状シール面22Aの基端側に向かうにしたがって減少する。
従って、インナーシール部22は、第2、第3エッジ27B,27C部分でのピーク接触圧により、ピン101の外周面に強く圧接することができるようになり、軸受装置100のガタで発生するピン101の軸方向変位(図4)に対して、第1エッジ27Aで外部からのダストおよび泥水の侵入を防止し、第2エッジ27Bで内部の潤滑剤が外部にかき出される事を防止するとともに、第3エッジ27Cで、第1エッジ27Aで防止しきれなかったダストおよび泥水の侵入を確実に防止することができる。
図6に示されるように、従来品では試験開始直後から潤滑剤の漏れが発生し、時間が経つにつれ漏れ量が増加していくのに対し、第2エッジ27Bを備えた軸受シールAでは、約8時間試験を行ってもまったく潤滑剤の漏れが発生していない。つまり、軸受シールAが、軸部の軸方向変位による潤滑剤の外部へのかき出しに対して、非常に高い潤滑剤保持性能を発揮することを示している。
図7に示されるように、従来品では試験時間が50時間を越えるとダストが多量に侵入してくるのに対し、第1エッジ27Aおよび第3エッジ27Cを備えた軸受シールAでは、試験時間が従来品の4倍の200時間となってもダスト侵入量をほぼゼロに抑えている。つまり、軸受シールAは、従来品に比べて非常に高い耐ダスト侵入性能を発揮することを示している。
図8には、ボス102に対してピン101が径方向に変位したときの一方側および他方側の軸受シールAの状態が示されている。
図8において、実線で示される中立位置のピン101に対して、ピン101が設けられるアームに大きな力が作用すると、軸受シールAの径方向の一方側では、ピン101は、アウターリング10に近づく方向に変位して、二点鎖線で描かれた位置B1まで変位する。すると、軸受シールAのインナーシール部22は、径方向外側へ延びないインナーリング30によって径方向外側への変位が抑えられているので、薄肉変形部21Bが、インナーシール部22のピン101への圧接状態を維持したまま、アウターシール部21の内側のU字隙間を潰すように変形して、ピン101の変位を吸収する。
また、軸受シールAの他方側では、ピン101は、アウターリング10から離れる方向に変位して、二点鎖線で描かれた位置B2まで変位する。そして、この場合には、インナーシール部22のピン101への圧接状態を維持したまま、薄肉変形部21Bがアウターシール部21の内側のU字隙間を大きく開くように変形して、ピン101の変位を吸収する。
また、軸受シールAは、インナーシール部22先端を潤滑剤が封入される内部空間側とは反対方向の軸方向外側へ向けて装着されている。そのため、潤滑剤を封入(グリースアップ)する際に、インナーシール部22先端が潤滑剤封入時の圧力で開き、内部の潤滑剤が排出されるので、軸受装置100内部に潤滑剤が封入されているのかどうかを確認しながら潤滑剤を封入することができる。アウターシール部21は、アウターリング10なしでボス102に直接取り付けてもよい。
図10には、軸受シールBの全体構造が示されている。図11には、軸受装置100に装着された軸受シールBの詳細な構造が示されている。
本実施形態では、インナーシール部22の内周面の先端側にシール面220が形成されているが、前記第1実施形態とは異なり、インナーシール部22の内周面には、溝24は設けられていない。そして、前記第1実施形態と同様に、このシール面220と外周面26とが鈍角を成して連続することで第1エッジ27Aが形成され、シール面220とシール面220の基端側の面210とが鈍角を成して連続することで第2エッジ27Bが形成されているので、インナーシール部22が、第2エッジ27B部分でのピーク接触圧により、ピン101の外周面に強く圧接することができるようになり、軸受装置100のガタで発生するピン101の軸方向変位に対して、第1エッジ27Aで外部からのダストおよび泥水の侵入を防止し、第2エッジ27Bで内部の潤滑剤が外部にかき出される事を防止することができる。また、インナーシール部22の内周面に溝24を設けない分、インナーシール部22の構造を簡素化でき製作が容易になる。
前記第1実施形態では、インナーシール部22とアウターシール部21とを一体に形成し、リング状剛性部としてのインナーリング30をインナーシール部22の中に埋設していたが、図12に示すように、シールリップ200を備えたインナーシール60と、アウターシール50とを別々に形成して、インナーリング70を、インナーシール60とアウターシール50との間に設けてもよい。このような構成としても、インナーシール60はシールリップ200を備え、シールリップ200のリング状シール面22Aには、溝24が設けられて各エッジ27A,27B,27Cが形成されるので、前記第1実施形態と同様な構成により、同様な作用効果を得ることができるうえ、アウターシール50をインナーシール60よりも変形しやすい弾性体から形成することで、ピン101の径方向の変位に対してアウターシール50をより応答性よく変形させることができ、シール性を一層向上させることができる。
Claims (4)
- 軸受シールにおいて、
基端側から先端側に向かうに従ってリング中心軸線に接近するようなテーパを有したリング状のシールリップを備え、
前記シールリップには、周方向に摺動する軸部の外周面に接触するシール面が形成され、
前記シールリップの先端には、前記シール面と連続した外周面が形成され、
前記シール面と前記外周面とが鈍角を成して連続することで第1エッジが形成され、
前記シール面と当該シール面の基端側の面とが鈍角を成して連続することで第2エッジが形成されている
ことを特徴とする軸受シール。 - 軸受シールにおいて、
基端側から先端側に向かうに従ってリング中心軸線に接近するようなテーパを有したリング状のシールリップを備え、
前記シールリップには、周方向に摺動する軸部の外周面に接触するシール面が形成され、
前記シール面には、周方向に沿った少なくとも1条の溝と、この溝を境いにして先端側の第1シール面と、前記溝を境いにして基端側の第2シール面とが形成され、
前記シールリップの先端には、前記シール面と連続した外周面が形成され、
前記第1シール面と前記外周面とが鈍角を成して連続することで第1エッジが形成され、
前記第1シール面と前記溝の内周面とが鈍角を成して連続することで第2エッジが形成され、
前記溝の内周面と前記第2シール面とが鈍角を成して連続することで第3エッジが形成されている
ことを特徴とする軸受シール。 - 請求項1または請求項2に記載の軸受シールにおいて、
リング状のアウターシール部と、
前記アウターシール部の内側に設けられたリング状のインナーシール部と、
前記アウターシール部および前記インナーシール部の間に設けられたリング状剛性部とを備え、
前記アウターシール部は、軸受に対して軸部が径方向に変位したときに、前記インナーシール部の変形よりも大きく変形するように形成され、
前記インナーシール部は、前記シールリップを含んで形成されている
ことを特徴とする軸受シール。 - 軸受装置において、
軸部と、
軸部を周方向に摺動可能に支承する軸受部と、
前記軸部および前記軸受部間の隙間を遮蔽する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の軸受シールを備えている
ことを特徴とする軸受装置。
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