JP5839509B2 - 密封装置及び密封構造 - Google Patents

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Description

本発明は、相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間をシールする密封装置及び密封構造に関する。
従来、軸に対して摺動する2つのシールリップを備え、密封対象流体側のシールリップの摺動性を高めるために、これら2つのシールリップの間にグリースを充填させる密封装置が知られている(特許文献1参照)。
図6を参照して、従来例に係る密封装置について説明する。図6(a)は従来例に係る密封装置の使用状態を示す模式的断面図である。また、図6(b)は、図6(a)中、Z方向に見た場合における回転軸の回転方向(図中矢印R)を示している。この密封装置200は、密封対象流体側(L)に設けられるゴム製の第1シールリップ210と、密封対象流体側とは反対側(A)に設けられる樹脂製の第2シールリップ220とを備えている。そして、第1シールリップ210の軸300に対する摺動性を高めるために、第1シールリップ210と第2シールリップ220との間には、グリース230が充填されている。
また、第1シールリップ210におけるリップ先端よりも密封対象流体側とは反対側(A)のテーパ面には、ネジポンプ機能を発揮するネジ突起(又はネジ溝)211が設けられている。これにより、第1シールリップ210と軸300とが相対的に回転する際に、リップ先端と軸300表面との摺動によって、リップ先端よりも密封対象流体側とは反対側(A)に漏れ出てきた密封対象流体を密封対象流体側(L)に戻すことができる。
しかしながら、この従来例においては、ネジ突起(又はネジ溝)211によるネジポンプ効果によって、グリース230も密封対象流体側(L)に移動させてしまう(図中、矢印X参照)。そのため、第1シールリップ210の摺動性が低下してしまう。これにより、第1シールリップ210が軸300の表面に摺動する際に異音(鳴き)が発生してしまい、また、摺動摩耗を促進する結果を招いている。従って、密封装置の耐久寿命を低下させる原因にもなっている。
特開平10−73165号公報
本発明の目的は、摺動性の安定化を図った密封装置及び密封構造を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明の密封装置は、
相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間をシールする密封装置において、
前記軸表面に摺動する第1シールリップと、
第1シールリップよりも密封対象流体側とは反対側に設けられ、前記軸表面に摺動する第2シールリップと、
第1シールリップと第2シールリップとの間に充填されるグリースと、
を備える密封装置であって、
第1シールリップのリップ先端は、密封対象流体側に向かって拡径する第1テーパ面と、密封対象流体側とは反対側に向かって拡径する第2テーパ面とを有しており、
第2テーパ面には、前記軸との相対的な回転に伴って前記グリースを軸方向に移動させる複数のネジ突起又はネジ溝(ネジ突起のみの場合とネジ溝のみの場合の他、ネジ突起とネジ溝が混在する場合も含む)が設けられており、これら複数のネジ突起又はネジ溝は、いずれも前記グリースを密封対象流体側とは反対側に向かって移動させる配置となっていることを特徴とする。
また、本発明の密封構造は、
軸孔を有するハウジングと、
前記軸孔内に挿通され、前記ハウジングに対して相対的に回転する軸と、
前記軸とハウジングとの間の環状隙間をシールする密封装置と、
を備える密封構造において、
前記密封装置は、
前記軸表面に摺動する第1シールリップと、
第1シールリップよりも密封対象流体側とは反対側に設けられ、前記軸表面に摺動する第2シールリップと、
第1シールリップと第2シールリップとの間に充填されるグリースと、
を備え、
第1シールリップのリップ先端は、密封対象流体側に向かって拡径する第1テーパ面と、密封対象流体側とは反対側に向かって拡径する第2テーパ面とを有しており、
第2テーパ面には、前記軸との相対的な回転に伴って前記グリースを軸方向に移動させる複数のネジ突起又はネジ溝(ネジ突起のみの場合とネジ溝のみの場合の他、ネジ突起とネジ溝が混在する場合も含む)が設けられており、これら複数のネジ突起又はネジ溝は、いずれも前記グリースを密封対象流体側とは反対側に向かって移動させる配置となっていることを特徴とする。
これらの発明によれば、ネジ突起又はネジ溝によって、グリースを第1シールリップのリップ先端よりも密封対象流体側とは反対側に移動させる機能を発揮させることができる。そのため、グリースが密封対象流体側に漏れてしまうことを抑制できる。これにより、第1シールリップと第2シールリップとの間にグリースが充填された状態を安定的に維持させることができ、第1シールリップの摺動性を長期に亘って維持させることができる。
また、前記複数のネジ突起又はネジ溝は、第1シールリップのリップ先端における第1テーパ面と第2テーパ面との間のエッジ部に到達する位置まで設けられているとよい。
これにより、ネジ突起等が摺動により摩耗されていない初期段階から、グリースを密封対象流体側とは反対側に移動させる機能(ネジポンプ機能)を発揮させることができる。
以上説明したように、本発明によれば、摺動性の安定化を図ることができる。
図1は本発明の実施例に係る密封装置の適用例を示す模式的断面図である。 図2は本発明の実施例1に係る密封装置の模式的断面図である。 図3は本発明の実施例1に係る密封装置の使用状態を示す模式的断面図である。 図4は本発明の実施例1に係る密封装置の組み立て手順を示す工程図である。 図5は本発明の実施例2に係る密封装置の模式的断面図である。 図6は従来例に係る密封装置の使用状態を示す模式的断面図である。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(実施例1)
図1〜図4を参照して、本発明の実施例1に係る密封装置について説明する。
<密封装置の適用例>
図1を参照して、本発明の実施例に係る密封装置100の適用例を説明する。図1は自動車用のウォーターポンプ10の模式的断面図である。ウォーターポンプ10は、回転軸21と、回転軸21が挿通される軸孔を有するハウジング30とを備えている。回転軸21には、回転軸21の回転を円滑にするためのベアリング22が取り付けられている。また、回転軸21の一端側には不図示のベルト等によって回転駆動力が与えられるプーリー23が取り付けられており、他端側には冷却水(LLC)を圧送するためのインペラー24が取り付けられている。そして、本実施例に係る密封装置100は、この冷却水が外部(すなわち、密封対象流体側(L)とは反対側(A))に漏れてしまうことを抑制するために、回転軸21とハウジング30との間の環状隙間に配置される。つまり、本実施例においては、密封対象流体は冷却水である。
<密封装置の構成>
図2及び図3を参照して、本発明の実施例に係る密封装置100について説明する。ここで、図2及び図3(a)は回転軸21の中心を通る面で切断した断面図であり、図2は密封装置100単体の断面を示し、図3(a)は密封装置100を使用した状態における断面を示している。図3(b)は、図3(a)中、Z方向に見た場合における回転軸の回転方向(図中矢印R)を示している。なお、密封装置100は回転対称形状である。
密封装置100は、金属製のカートリッジ110と、ゴム製の第1シールリップ120と、金属製のケース130と、合成樹脂製の第2シールリップ140と、金属製のバックアップリング150と、金属製のアダプタ160と、潤滑剤であるグリース170とから構成されている。
カートリッジ110は、環状の部材で構成され、ハウジング30における軸孔の内周面に嵌着される。第1シールリップ120は、略円筒状の被固定部121と、被固定部121の端部から内側に伸びる内向き部122と、内向き部122の内側の先端から密封対象流体側(L)に向かって伸び、かつ更に内側に向かうように構成されたリップ部123とを備えている。第1シールリップ120における被固定部121の内側に、環状のケース130が嵌め込まれる。これにより、このケース130の外周面とカートリッジ110の内周面との間で、被固定部121が挟み込まれることで、第1シールリップ120はカートリッジ110に対して径方向の位置決めがなされる。
第2シールリップ140は、板状の被固定部141と、被固定部141の内側の先端から更に内側かつ密封対象流体側(L)に向かうように構成されたリップ部142とから構成されている。この第2シールリップ140の密封対象流体側とは反対側(A)に、環状のバックアップリング150が設けられている。これにより、第2シールリップ140における被固定部141が、バックアップリング150とケース130における内向きフランジ部131との間に挟み込まれることによって、第2シールリップ140はカートリッジ110に対して固定された状態となっている。
そして、第1シールリップ120における被固定部121の密封対象流体側(L)に、環状のアダプタ160が設けられる。これにより、第1シールリップ120はカートリッジ110に対して軸方向に対しても位置決めがなされる。
また、第1シールリップ120と第2シールリップ140との間にできる空間領域に、グリース170が充填される(図2参照)。ここで、グリース170の充てん量は、密封装置100に回転軸21が取り付けられた状態(図3に示す状態)において、第1シールリップ120と第2シールリップ140との間にできる空間内にグリース170が充満する量となるように設定される。
ここで、特に、図4を参照して、密封装置100の組み立て手順について説明する。まず、ケース130の内側に第2シールリップ140における被固定部141を組み込む。その後、バックアップリング150を嵌め込む(図4(a)参照)。次に、ケース130の図中左側の端部を内側に折り曲げる(図中矢印参照)。そして、このケース130と第2シールリップ140とバックアップリング150とが一体となったものに、第1シールリップ120を組み付ける(図4(b)参照)。その後、これらが一体となったものを、カートリッジ110の内周面に沿うように軸方向に押し込み、第1シールリップ120における被固定部121をカートリッジ110の内周面に嵌める(図4(c)参照)。そして、アダプタ160をカートリッジ110の内周面に圧入する。この状態で、第1シールリップ120と第2シールリップ140との間にできる空間領域に、グリース170を充填する。
以上の構成により、上記の各部材等が一体的となってカートリッジ化される。すなわち、カートリッジ110,第1シールリップ120,ケース130,第2シールリップ140,バックアップリング150,アダプタ160及びグリース170を備えた密封装置100を、一つの部品として取り扱うことが可能となる。
そして、本実施例に係る密封装置100においては、第1シールリップ120におけるリップ部123は、その先端が、密封対象流体側(L)に向かって拡径する第1テーパ面123aと、密封対象流体側とは反対側(A)に向かって拡径する第2テーパ面123bとを有する構成となっている。なお、第1テーパ面123aと第2テーパ面123bとの間はエッジ部Eを形成している。
また、第2テーパ面123bには、回転軸21との相対的な回転に伴ってグリース170を軸方向に移動させる複数のネジ突起(ネジ溝でもよい)124が設けられている。そして、これら複数のネジ突起124は、いずれもグリース170を密封対象流体側とは反対側(A)に向かって移動させる配置となっている。すなわち、回転軸21が回転することによって(図3(b)参照)、リップ部123が回転軸21の表面に対して摺動し、ネジ突起124のネジポンプ効果によって、グリース170はリップ部123の先端のエッジ部Eよりも密封対象流体側とは反対側(A)に移動する(図3中矢印Y参照)。ここで、ネジ突起124は、第2テーパ面123bにおいて、密封対象流体側とは反対側(A)からリップ部123の先端のエッジ部Eに到達する位置まで設けられている。従って、ネジ突起124が摺動により摩耗されていない初期段階から、グリース170を密封対象流体側とは反対側(A)に移動させる機能(ネジポンプ機能)を発揮させることができる。
<本実施例に係る密封装置100の優れた点>
本実施例に係る密封装置100によれば、ネジ突起(又はネジ溝)124によって、グリース170を第1シールリップ120のリップ部123の先端よりも密封対象流体側とは反対側(A)に移動させる機能を発揮させることができる。そのため、グリース170が密封対象流体側(L)に漏れてしまうことを抑制できる。これにより、第1シールリップ120と第2シールリップ140との間にグリース170が充填された状態を安定的に維持させることができ、第1シールリップ120の摺動性を長期に亘って維持させることができる。これに伴い、異音(鳴き)の発生を抑制でき、かつ摺動摩耗の低減によって、密封装置100の耐久寿命を向上させることができる。
また、第1シールリップ120と回転軸21の表面との間には、グリース170による膜が安定的に形成されるため、密封対象流体である冷却水(LLC)が密封対象流体側とは反対側(A)に漏れてしまうことを効果的に抑制できる。また、これにより、密封対象流体側とは反対側(A)に流体を移動させる機能を発揮するネジ突起(又はネジ溝)124を設けたからといって、冷却水の漏れを助長することはない。
(実施例2)
図5には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、上記実施例1におけるカートリッジの変形例を説明する。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
軸(回転軸21)の径と、ハウジング30の軸孔の径との関係によっては、密封装置によってシールするべき環状隙間が大きくなる場合がある。そのため、本実施例に係る密封装置100aにおいては、カートリッジ110aを断面S字形状の部位を設けることで径方向に対する弾性を持たせて、大きな環状隙間に対しても、装着性を悪化させることなく、十分にシール性を発揮させるようにしている。カートリッジ110a以外の構成については、上記実施例1で説明した通りであるので、その説明は省略する。
(その他)
上記実施例においては、密封装置の適用例として、自動車用のウォーターポンプ10に用いられる場合を例にして説明したが、本発明は相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間をシールする必要のある各種装置に適用可能である。特に、本発明は、家電用の装置や、負荷の少ない工業用のウォーターポンプにおける軸封用の密封装置や密封構造として、好適に用いることができる。
10 ウォーターポンプ
21 回転軸
22 ベアリング
23 プーリー
24 インペラー
30 ハウジング
100,100a 密封装置
110,110a カートリッジ
120 第1シールリップ
121 被固定部
122 内向き部
123 リップ部
123a 第1テーパ面
123b 第2テーパ面
124 ネジ突起
130 ケース
131 内向きフランジ部
140 第2シールリップ
141 被固定部
142 リップ部
150 バックアップリング
160 アダプタ
170 グリース

Claims (2)

  1. 相対的に回転する軸とハウジングとの間の環状隙間をシールする密封装置において、
    前記軸表面に摺動し、前記軸の相対的な回転時に密封対象流体を密封する第1シールリップと、
    第1シールリップよりも密封対象流体側とは反対側に設けられ、前記軸表面に摺動する第2シールリップと、
    第1シールリップと第2シールリップとの間に充填され、前記第1シールリップと前記軸表面との間に膜を形成するグリースと、
    を備える密封装置であって、
    第1シールリップのリップ先端は、密封対象流体側に向かって拡径する第1テーパ面と、密封対象流体側とは反対側に向かって拡径する第2テーパ面とを有しており、
    第2テーパ面には、前記軸との相対的な回転に伴って前記グリースを軸方向に移動させる複数のネジ突起又はネジ溝が設けられており、これら複数のネジ突起又はネジ溝は、いずれも前記グリースを密封対象流体側とは反対側に向かって移動させる配置となっており、
    前記複数のネジ突起又はネジ溝は、第1シールリップのリップ先端における第1テーパ面と第2テーパ面との間のエッジ部に到達する位置まで設けられていることを特徴とする密封装置。
  2. 軸孔を有するハウジングと、
    前記軸孔内に挿通され、前記ハウジングに対して相対的に回転する軸と、
    前記軸とハウジングとの間の環状隙間をシールする密封装置と、
    を備える密封構造において、
    前記密封装置は、
    前記軸表面に摺動し、軸の相対的な回転時に密封対象流体を密封する第1シールリップと、
    第1シールリップよりも密封対象流体側とは反対側に設けられ、前記軸表面に摺動する第2シールリップと、
    第1シールリップと第2シールリップとの間に充填され、前記第1シールリップと前記軸表面との間に膜を形成するグリースと、
    を備え、
    第1シールリップのリップ先端は、密封対象流体側に向かって拡径する第1テーパ面と
    、密封対象流体側とは反対側に向かって拡径する第2テーパ面とを有しており、
    第2テーパ面には、前記軸との相対的な回転に伴って前記グリースを軸方向に移動させる複数のネジ突起又はネジ溝が設けられており、これら複数のネジ突起又はネジ溝は、いずれも前記グリースを密封対象流体側とは反対側に向かって移動させる配置となっており、
    前記複数のネジ突起又はネジ溝は、第1シールリップのリップ先端における第1テーパ面と第2テーパ面との間のエッジ部に到達する位置まで設けられていることを特徴とする密封構造。
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