JP2009257421A - 流体機械の軸封構造 - Google Patents

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正和 村瀬
Takayuki Kato
崇行 加藤
Hisaya Yokomachi
尚也 横町
Hiroo Ueda
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Abstract

【課題】ゴムリップ部の耐摩耗性を向上させることができるとともに、回転軸の回転時及び静止時における機内側から機外側への潤滑油の漏れ量を減らすことができる流体機械の軸封構造を提供すること。
【解決手段】軸封構造Tにおける軸封装置39は回転軸17の周面17aに対して密接するゴムリップ部44を備えるとともに、ゴムリップ部44より機外側に配設されて周面17aに対して密接する樹脂リップ部47bを備える。回転軸17の周面17aにはゴムリップ部44と対向する位置に第1螺子溝部17cが形成されている。回転軸17の周面17aにおいて、樹脂リップ部47bと対向する位置には螺子溝Gによって回転軸17の回転に伴い機内側へ潤滑油を戻す第2螺子溝部17dが形成されるとともに、第2螺子溝部17dより機外側に、溝Mによって回転軸17の静止時に機内側から機外側への潤滑油の流動を規制する流動規制部17fが形成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、回転軸の周囲を密封する軸封装置を備えた流体機械の軸封構造に関する。
冷媒圧縮機における回転軸の周囲を密封するため、冷媒圧縮機には軸封構造が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の軸封構造は、回転軸の周面に形成された球欠形のくぼみと、このくぼみが形成された部位と対向する位置に配設されたパッキンリングと、このパッキンリングのシールリップを回転軸のくぼみに押し付ける環状コイルばねとから構成されている。そして、特許文献1の軸封構造によれば、回転軸の非回転時には、くぼみの内側は潤滑油で満たされており、シールリップとくぼみとの間が潤滑油によって密封され、冷媒ガスの機内側から機外への洩れが抑制される。また、回転軸の回転の際には、シールリップはくぼみから僅かに遊離し、潤滑油がくぼみ内で循環される結果、回転軸とシールリップとの間での摩擦に基づく潤滑油の過熱が回避されるとともに、耐摩耗性が向上する。
特開平1−283477号公報
ところで、特許文献1において、くぼみは、回転軸の軸方向及び回転方向に対して方向性が無いため、回転軸の静止時(非回転時)に機内側と機外側との圧力差によって、くぼみに満たされた潤滑油が機内側から機外側へ多量に洩れてしまうという問題があった。
本発明の目的は、ゴムリップ部の耐摩耗性を向上させることができるとともに、回転軸の回転時及び静止時における機内側から機外側への潤滑油の漏れ量を減らすことができる流体機械の軸封構造を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転軸の周囲を密封する軸封装置を備えた流体機械の軸封構造であって、前記軸封装置は、前記回転軸の周面に対して密接するゴムリップ部を備えるとともに、前記回転軸の軸方向における前記ゴムリップ部より機外側に配設されて前記回転軸の周面に対して密接する樹脂リップ部を備え、前記回転軸の周面には、前記ゴムリップ部と対向する位置に前記周面を凹凸状に形成してなる凹凸部が形成され、さらに、前記樹脂リップ部と対向する位置に、螺子溝によって前記回転軸の回転に伴い前記流体機械の機内側へ潤滑油を戻す油戻し部が形成されるとともに、該油戻し部より機外側に、前記回転軸の軸方向に沿った前記樹脂リップ部の幅内に位置するように前記軸方向に交差する溝によって、前記回転軸の静止時に機内側から機外側への潤滑油の洩れを抑える流動規制部が形成されていることを要旨とする。
これによれば、回転軸の回転中、回転軸の周面を機内側から機外側へ流動する潤滑油を凹凸部の凹部内に貯留することができる。このため、ゴムリップ部と凹凸部の間に潤滑油を介在させ、ゴムリップ部の接触摺動性を良好とすることができ、ゴムリップ部の耐摩耗性を向上させることができる。さらに、回転軸の回転中、油戻し部の流体ポンプ作用により、油戻し部に流動してきた潤滑油を機内側に戻すことができ、軸封装置から機外側への潤滑油の漏れ量を減らすことができる。加えて、回転軸の静止時(非回転時)、流動規制部を形成する溝によって機内側から機外側への潤滑油の流動をせき止め(規制し)、軸封装置よりも機外側への潤滑油の漏れ量を減らすことができる。
また、前記軸封装置は、前記樹脂リップ部を有する樹脂リップリングを1つ備え、1つの前記樹脂リップ部に対向するように前記油戻し部及び流動規制部が前記回転軸の軸方向に連続して設けられていてもよい。
これによれば、例えば、油戻し部に樹脂リップ部が対向するように樹脂リップリングを1つ設け、さらに、流動規制部に樹脂リップ部が対向するように樹脂リップリングをもう1つ設けて軸封装置を形成する場合に比して、回転軸の軸方向に沿った軸封装置及び軸封構造の長さを短くすることができる。
また、前記樹脂リップ部における前記油戻し部と対向する位置には、螺旋溝によって前記回転軸の回転に伴い前記流体機械の機内側へ潤滑油を戻す螺旋溝形成面が形成されていてもよい。これによれば、回転軸の回転中は、螺旋溝形成面の流体ポンプ作用により、樹脂リップ部と油戻し部との間に流動してきた潤滑油を機内側に戻すことができる。よって、油戻し部と協働して、軸封装置から機外側への潤滑油の漏れ量をより一層減らすことができる。
また、前記軸封装置は、前記樹脂リップ部を有する樹脂リップリングを2つ備え、機内側に位置する一方の前記樹脂リップ部に前記油戻し部が対向配置されるとともに、機外側に位置する他方の前記樹脂リップ部に前記流動規制部が対向配置されていてもよい。これによれば、油戻し部と対向する樹脂リップ部の長さ、及び流動規制部と対向する樹脂リップ部の長さを十分に確保することができ、軸封装置から機外側への潤滑油の洩れ量を確実に減らすことができる。
また、前記流体機械は空調装置の冷媒圧縮機であって、該空調装置の冷媒としては二酸化炭素が用いられていてもよい。これによれば、二酸化炭素冷媒を用いた場合には、例えばフロン冷媒を用いた場合と比較して、冷媒圧縮機の機内側の圧力が非常に高くなり、軸封装置に作用する負荷も非常に大きくなる。このような態様において本発明を具体化し、潤滑油の機外側への洩れ量を減少させるようにしたことは、特に有効であると言える。
本発明によれば、ゴムリップ部の耐摩耗性を向上させることができるとともに、回転軸の回転時及び静止時における機内側から機外側への潤滑油の漏れ量を減らすことができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の流体機械の軸封構造を、車両空調装置の冷凍回路を構成する流体機械としての可変容量型圧縮機(冷媒圧縮機)の軸封構造に具体化した第1の実施形態について、図1及び図2に従って説明する。なお、冷凍回路の冷媒としては二酸化炭素が用いられている。また、以下の説明において可変容量型圧縮機の「前」及び「後」は、図1に示す矢印Yの方向を前後方向とする。
図1は、可変容量型圧縮機(以下単に圧縮機とする)10の縦断面図を示す。図1に示すように、圧縮機10のハウジング11内にはクランク室16が区画されるとともに、このクランク室16内には回転軸17が回転可能に配置されている。回転軸17には、車両の走行駆動源である図示しないエンジンが作動連結されている。回転軸17は、エンジンから動力の供給を受けて、圧縮機10の軸方向に垂直な方向における断面を前方から見た場合に時計回りとなるように回転される(図1の矢印R参照)。
クランク室16内において、回転軸17には、ラグプレート18が一体回転可能に固定されている。クランク室16内において、回転軸17には、斜板19がスライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。ラグプレート18と斜板19との間には、ヒンジ機構20が介在されている。斜板19は、ヒンジ機構20を介したラグプレート18との間でのヒンジ連結、及び回転軸17の支持により、ラグプレート18及び回転軸17と同期回転可能であるとともに、回転軸17の中心軸Lに沿う方向へのスライド移動を伴いながら回転軸17に対して傾動可能となっている。
ハウジング11内において回転軸17の中心軸L周りには、複数のシリンダボア22が形成されている。各シリンダボア22内には片頭型のピストン23が挿入されている。シリンダボア22内にはピストン23によって圧縮室24が区画されている。各ピストン23は、一対のシュー25を介して斜板19の外周部に係留されている。
よって、回転軸17の回転によって斜板19が回転すると、斜板19は回転軸17の中心軸Lに沿う方向の前後へと揺動される。斜板19の揺動によって、ピストン23が前後方向に往復直線運動されて、図示しない外部冷媒回路から圧縮室24への冷媒ガスの吸入、圧縮室24に吸入された冷媒ガスの圧縮、圧縮済み冷媒ガスの外部冷媒回路への吐出が行われる。
圧縮機10のハウジング11内には、抽気通路32及び給気通路33並びに制御弁34が設けられている。抽気通路32は、クランク室16と吸入室26とを接続する。給気通路33は、吐出室27とクランク室16とを接続する。給気通路33の途中には、電磁弁よりなる周知の制御弁34が配設されている。制御弁34の開度を調節することで、給気通路33を介したクランク室16への高圧な吐出ガスの導入量と、抽気通路32を介したクランク室16からのガス導出量とのバランスが制御され、クランク室16の内圧が決定される。クランク室16の内圧の変更に応じて、クランク室16の内圧と圧縮室24の内圧とのピストン23を介した差が変更され、斜板19の傾斜角度が変更される結果、ピストン23のストローク即ち圧縮機10の吐出容量が調節される。
次に、軸封装置39と回転軸17とからなる軸封構造Tについて説明する。
ハウジング11の前側には軸挿通孔35が形成されるとともにハウジング11の後側には軸挿通孔36が形成されている。軸挿通孔35,36内には回転軸17の前後両側が挿通されるとともに、回転軸17は軸挿通孔35,36内に設けられた軸受38によって回転可能に支持されている。前側の軸挿通孔35内において、回転軸17の径方向外側には、リップ型よりなる軸封装置39が配設されている。そして、軸封装置39によって、密封空間側たる機内側(クランク室16側)と機外側(大気側)との間で、回転軸17の周囲が密封されている。
図2に示すように、軸封装置39は、その外郭を形成するゴムリップリング42を備えるとともに、このゴムリップリング42の内周側に、第1バックアップリング46、樹脂リップリング47、第2バックアップリング48を、回転軸17の軸方向に沿った機内側から機外側へ向かって同順に積層して備える。
ゴムリップリング42は、その機外側を形成する円筒状の本体部43と、この本体部43の内周面から機内側及び回転軸17側に向けて筒状に延出するゴムリップ部44とからなる。本体部43の外周面は、軸挿通孔35を形成するハウジング11の内周面に密接し、この内周面と軸封装置39(ゴムリップリング42)の外周面との間を密封している。
ゴムリップリング42の内部には金属製の補強リング45が内蔵されるとともに、この補強リング45によって、ゴムリップリング42の径方向及び軸方向への姿勢が保持されている(変形が抑制されている)。ゴムリップ部44の先端内周面には、回転軸17に向けて先鋭状をなす環状凸部44aが形成されている。そして、ゴムリップ部44は機内側の高圧の作用や自身の弾発力によって、環状凸部44aが回転軸17に対して円環状領域で密接されて密封作用を奏する。
軸封装置39において、ゴムリップ部44の内周側には第1バックアップリング46が配設されている。第1バックアップリング46は、円環平板状をなす外周基部46aと、この外周基部46aから機内側へ向かって延び、さらに回転軸17側へ向かって延びてなるバックアップ部46bとからなっている。第1バックアップリング46は、回転軸17に遊嵌されるとともに、バックアップ部46bがゴムリップ部44を内周側から支承し、機内側の高圧がゴムリップ部44に作用したときのゴムリップ部44を支承するようになっている。
また、第1バックアップリング46における外周基部46aの機内側(ゴムリップ部44側)の面には、複数の係合突部46cが周方向に沿って間隔をあけて形成されている。そして、複数の係合突部46cが、ゴムリップ部44に形成された第1係合凹部44bに係合することにより、第1バックアップリング46が回転軸17と連れ回りすることが防止されるようになっている。
軸封装置39において、第1バックアップリング46より機外側には樹脂リップリング47が配設されている。樹脂リップリング47は、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂材料よりなっている。樹脂リップリング47は、円環平板状をなす外周基部47aと、この外周基部47aから回転軸17側及び機内側へ向かって延在された樹脂リップ部47bとからなっている。そして、樹脂リップ部47bは、内周面が回転軸17に対して密接されて密封作用を奏する。さらに、樹脂リップ部47bの先端内周における機内側は、複数の螺旋溝Jが形成された螺旋溝形成面47dとなっている。螺旋溝形成面47dの方向性は、回転軸17の回転時に、機外側から機内側への流体ポンプ作用を奏するように設定されている。また、樹脂リップ部47bの先端内周面において、螺旋溝形成面47dより機外側は平滑面47eとなっている。
外周基部47aにおける機内側(ゴムリップ部44側)の面には、複数の係合突部47cが周方向に沿って間隔を空けて形成されている。そして、複数の係合突部47cが、ゴムリップ部44の内周面に形成された第2係合凹部44cに係合することにより、樹脂リップリング47が回転軸17と連れ回りすることが防止されるようになっている。
軸封装置39において、樹脂リップリング47より機外側には第2バックアップリング48が配設されている。第2バックアップリング48は、円筒状をなす外周基部48aと、この外周基部48aから回転軸17側へ向かって延び、さらに機内側へ向かって延びるバックアップ部48bとからなっている。第2バックアップリング48は、回転軸17に遊嵌されるとともに、バックアップ部48bが樹脂リップリング47の外周基部47aを機外側から支承している。また、バックアップ部48bにおける機内側(樹脂リップリング47側)の面には、複数の係合突部48cが周方向に沿って間隔を空けて形成されている。そして、複数の係合突部48cが、樹脂リップリング47における外周基部47aに形成された係合凹部47fに係合することにより、第2バックアップリング48が回転軸17と連れ回りすることが防止されるようになっている。
軸封装置39は、ゴムリップリング42のゴムリップ部44と、第1バックアップリング46の外周基部46aと、樹脂リップリング47の外周基部47aと、第2バックアップリング48の外周基部48aとが、ゴムリップリング42における補強リング45による軸方向へのカシメによって一体化されている。そして、カシメによって、ゴムリップリング42のゴムリップ部44と第1バックアップリング46の外周基部46aとの間、第1バックアップリング46の外周基部46aと樹脂リップリング47の外周基部47aとの間、樹脂リップリング47の外周基部47aと第2バックアップリング48のバックアップ部48bとの間が密封されている。
軸封装置39に対向する回転軸17の周面17aにおいて、ゴムリップ部44の環状凸部44aと対向する位置には、凹凸部としての第1螺子溝部17cが形成されている。第1螺子溝部17cは、周面17aに複数の螺子溝Hを形成することで周面17aを凹凸状に形成してなる。回転軸17の軸方向に沿った螺子溝H同士の間隔は一定になっている。また、螺子溝Hの深さも全て同じになっている。そして、螺子溝Hの方向性は、回転軸17の回転時に、機内側から機外側(樹脂リップ部47b)への流体ポンプ作用を奏するように設定されている。回転軸17の軸方向に沿った第1螺子溝部17cの形成範囲は、回転軸17の軸方向に沿った環状凸部44aの幅より広く、回転軸17の軸方向において、環状凸部44aより機内側及び機外側にまで第1螺子溝部17cが位置している。
軸封装置39に対向する回転軸17の周面17aにおいて、樹脂リップ部47bの螺旋溝形成面47dと対向する位置には、油戻し部としての第2螺子溝部17dが形成されている。すなわち、回転軸17の周面17aにおいて、第1螺子溝部17cより機外側には第2螺子溝部17dが第1螺子溝部17cに連続して形成されている。第2螺子溝部17dは複数の螺子溝Gより形成されている。回転軸17の軸方向に沿った螺子溝G同士の間隔は一定になっている。また、複数の螺子溝Gの深さも全て同じになっている。そして、螺子溝Gの方向性は、回転軸17の回転時に、機外側から機内側(ゴムリップ部44)への流体ポンプ作用を奏するように設定されている。回転軸17の軸方向に沿った第2螺子溝部17dの形成範囲は、樹脂リップ部47bにおける螺旋溝形成面47dの形成範囲より広くなっている。
軸封装置39に対向する回転軸17の周面17aにおいて、樹脂リップ部47bの平滑面47eと対向する位置には、流動規制部17fが形成されている。すなわち、回転軸17の周面17aにおいて、第2螺子溝部17dより機外側には、流動規制部17fが第2螺子溝部17dに連続して形成されている。流動規制部17fは複数の溝Mよりなり、複数の溝Mそれぞれは回転軸17の軸方向に直交し、かつ回転軸17の全周に亘って延びるように周面17aに形成されている。回転軸17の軸方向に沿った溝Mの幅、及び溝Mの深さは、全ての溝Mで同じになっている。
回転軸17の軸方向に沿った流動規制部17fの形成範囲は、回転軸17の軸方向に沿った平滑面47eの幅より広くなっている。樹脂リップ部47bの内周面は、第2螺子溝部17dと流動規制部17fの両部に対向している。本実施形態において、軸封装置39と、回転軸17における第1螺子溝部17c、第2螺子溝部17d、及び流動規制部17fとによって軸封構造Tが形成されている。
さて、圧縮機10が駆動し、回転軸17が回転している状態では、機内側の圧力は機外側に比して非常に高くなっている。このため、機内側の潤滑油が、回転軸17の周面17aに沿って機外側に向けて流動していく。このとき、回転する第1螺子溝部17cによる流体ポンプ作用により、潤滑油が機内側から機外側へ向けて送り出される。すなわち、潤滑油は、第1螺子溝部17cを通過して第2螺子溝部17dに向けて送り出される。第2螺子溝部17dに向けて送り出された潤滑油は、第2螺子溝部17d及び螺旋溝形成面47dにおける流体ポンプ作用により、機外側から機内側に戻される。
圧縮機10の停止時であり、回転軸17の静止時においても機内側は機外側に比して高圧であるため、潤滑油は第1螺子溝部17cの螺子溝H、及び第2螺子溝部17dの螺旋溝J内を通って機外側に向けて流動していく。このとき、第2螺子溝部17dより機外側に流動規制部17fが形成され、流動規制部17fを形成する各溝Mが回転軸17の軸方向に直交するように形成されている。そして、複数の溝M同士は、回転軸17の軸方向において繋がることなく、分断されている。このため、第1螺子溝部17c及び第2螺子溝部17dを通過して機外側へ流動する潤滑油は、流動規制部17fによって軸封装置39より機外側へ洩れ出ることが規制される。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)軸封構造Tはハウジング11に軸封装置39を備え、さらに、回転軸17の周面17aにおいて、軸封装置39の樹脂リップ部47bと対向する位置には、回転軸17の軸方向に直交する複数の溝Mを形成してなる流動規制部17fが形成されている。このため、回転軸17の静止時(非回転時)に機内側の圧力が高くても、複数の溝Mによって機内側から機外側への潤滑油の流動を規制し、軸封装置39よりも機外側への潤滑油の漏れ量を減らすことができる。
(2)軸封構造Tはハウジング11に軸封装置39を備え、さらに、回転軸17の周面17aにおいて、ゴムリップ部44(環状凸部44a)と対向する位置に第1螺子溝部17cが形成されている。このため、回転軸17の回転中、機内側から機外側へ流動する潤滑油を、第1螺子溝部17cの各螺子溝H内に貯留することができる。このため、ゴムリップ部44と第1螺子溝部17cの間に潤滑油を介在させ、ゴムリップ部44と第1螺子溝部17cとの間の接触摺動性を良好とすることができ、その結果として、ゴムリップ部44の耐摩耗性を向上させることができる。
(3)軸封構造Tはハウジング11に軸封装置39を備え、さらに、回転軸17の周面17aにおいて、樹脂リップ部47bと対向する位置に第2螺子溝部17dが形成されている。このため、回転軸17の回転中、第2螺子溝部17dの流体ポンプ作用により、第2螺子溝部17dに流動してきた潤滑油を機内側に戻すことができ、軸封装置39から機外側への潤滑油の漏れ量を減らすことができる。
(4)軸封装置39の樹脂リップ部47bの内周面には螺旋溝形成面47dが設けられている。このため、回転軸17の回転中は、螺旋溝形成面47dの流体ポンプ作用により、樹脂リップ部47bに流動してきた潤滑油を機内側に戻すことができる。よって、第2螺子溝部17dと協働して、軸封装置39から機外側への潤滑油の漏れ量をより一層減らすことができる。
(5)回転軸17の周面17aに形成された第2螺子溝部17d及び流動規制部17fは、軸封装置39の1つの樹脂リップ部47bと対向するように形成されている。したがって、例えば、第2螺子溝部17dに対向するように樹脂リップリングを1つ設け、さらに、流動規制部17fに対向するように樹脂リップリングをもう1つ設けて軸封装置39を形成する場合に比して、回転軸17の軸方向に沿った軸封装置39及び軸封構造Tの長さを短くすることができ、ハウジング11の長さも短くすることができる。
(6)回転軸17の周面17aにおいて、第1螺子溝部17cと第2螺子溝部17dとは間隔を空けることなく連続して形成されている。このため、第1螺子溝部17cによって、潤滑油を第2螺子溝部17dへ直接供給することができ、樹脂リップ部47bと第2螺子溝部17dとの間に潤滑油を確実に介在させ、樹脂リップ部47bの接触摺動性を良好とすることができる。また、第1螺子溝部17cと、第2螺子溝部17dと、流動規制部17fとは互いに間隔を空けることなく連続して形成されている。このため、第1螺子溝部17cと、第2螺子溝部17dと、流動規制部17fとに対向配置されるゴムリップ部44と、樹脂リップ部47bとの間隔を狭くすることができ、回転軸17の軸方向に沿った軸封装置39及び軸封構造Tの長さを短くすることができ、ハウジング11の長さも短くすることができる。
(7)樹脂リップ部47bにおいて、螺旋溝形成面47dの形成範囲より第2螺子溝部17dの形成範囲は広く、平滑面47eの形成範囲より流動規制部17fの形成範囲が広くなっている。このため、回転軸17に対する軸封装置39の組付け誤差や軸封装置39の製造誤差等があっても、螺旋溝形成面47dと第2螺子溝部17dとを対向させ、平滑面47eと流動規制部17fとを対向させることができる。
(8)冷凍回路の冷媒としては二酸化炭素が用いられている。二酸化炭素冷媒を用いた場合には、例えばフロン冷媒を用いた場合と比較して、圧縮機10の機内側の圧力が非常に高くなり、軸封装置39に作用する負荷も非常に大きくなる。このような態様において本発明を具体化し、潤滑油の機外側への洩れ量を減少させるようにしたことは、特に有効であると言える。
(第2の実施形態)
本発明の軸封構造を、車両空調装置の冷凍回路を構成する可変容量型圧縮機(冷媒圧縮機)における軸封構造に具体化した第2の実施形態について、図3に従って説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成については、その重複する説明を省略又は簡略する。
第2の実施形態の軸封装置50は、第1の実施形態の軸封装置39と同様に、ゴムリップリング51、第1バックアップリング54、第1樹脂リップリング55、第2バックアップリング56を備え、さらに、第2樹脂リップリング57及び第3バックアップリング58を備える。すなわち、第2の実施形態の軸封装置50は、ゴムリップリングの内側に第1バックアップリング54、第1樹脂リップリング55、第2バックアップリング56、第2樹脂リップリング57、及び第3バックアップリング58を、回転軸17の軸方向に沿った機内側から機外側へ向かって同順に積層して備える。
ゴムリップリング51は、第1の実施形態のゴムリップリング42とほぼ同じ構造を有し、本体部52とゴムリップ部53とを一体に備えるとともに内周には金属製の補強リング49が一体に設けられている。ゴムリップ部53の先端内周には環状凸部53aが形成されている。そして、ゴムリップ部53は機内側の高圧の作用や自身の弾発力によって、環状凸部53aが回転軸17に対して円環状領域で密接されて密封作用を奏する。
ゴムリップリング51の内側において、ゴムリップ部53の内周側には、第1の実施形態の第1バックアップリング46とほぼ同じ構成の第1バックアップリング54が配設されている。第1バックアップリング54は、円環平板状をなす外周基部54aと、この外周基部54aから機内側へ向かって延び、さらに、回転軸17側へ向かって延びるバックアップ部54bとからなっている。外周基部54aには複数の係合突部54cが周方向に沿って間隔を空けて形成されている。
ゴムリップリング51の内側において、第1バックアップリング54より機外側には、第1の実施形態の樹脂リップリング47とほぼ同じ構成の第1樹脂リップリング55が配設されている。第1樹脂リップリング55は、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂材料よりなっている。第1樹脂リップリング55は、円環平板状をなす外周基部55aと、該外周基部55aから回転軸17側及び機内側へ向かって延在された樹脂リップ部55bとからなっている。樹脂リップ部55bの先端内周には複数の螺旋溝Pが形成された螺旋溝形成面55dが形成されている。螺旋溝形成面55dの方向性は、機外側から機内側への流体ポンプ作用を奏するように設定されている。外周基部55aにおける機内側(第1バックアップリング54)の面には、複数の係合凹部55cが周方向に沿って間隔を空けて形成されている。そして、第1バックアップリング54の係合突部54cが係合凹部55cに係合することにより、第1樹脂リップリング55が回転軸17と連れ回りすることが防止されるようになっている。
第2バックアップリング56は、円環状をなす外周基部56aと、この外周基部56aから回転軸17側及び機内側へ向かって延在されたバックアップ部56bとからなっている。第2バックアップリング56は、回転軸17に遊嵌されるとともに、バックアップ部56bが第1樹脂リップリング55の樹脂リップ部55bを機外側から支承している。
第2樹脂リップリング57は、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂材料よりなっている。第2樹脂リップリング57は、円環平板状をなす外周基部57aと、この外周基部57aから回転軸17側及び機内側へ向かって延在された樹脂リップ部57bとからなっている。そして、樹脂リップ部57bは、内周面が回転軸17に対して密接されて密封作用を奏する。
第3バックアップリング58は、円環状をなす外周基部58aと、この外周基部58aから回転軸17側及び機内側へ向かって延在されたバックアップ部58bとからなっている。第3バックアップリング58は、回転軸17に遊嵌されるとともに、バックアップ部58bが、第2樹脂リップリング57の樹脂リップ部57bを機外側から支承している。第2バックアップリング56と第2樹脂リップリング57との間には、両者の間隔を保持する保持部材59が介装されている。
軸封装置50は、ゴムリップ部53と、外周基部54a,55a,56a,57a,58aと、保持部材59とが補強リング49による軸方向へのカシメによって一体化されている。
軸封装置50に対向する回転軸17の周面17aにおいて、ゴムリップ部53の環状凸部53aと対向する位置には、凹凸部としての横溝部17gが形成されている。横溝部17gは、回転軸17の軸方向へ直線状に延びる複数の横溝Nによって形成されている。回転軸17の軸方向に沿った横溝部17gの形成範囲は、回転軸17の軸方向に沿った環状凸部53aの幅より広くなっている。そして、回転軸17の軸方向において、環状凸部53aより機内側及び機外側にまで横溝部17gの各横溝Nが延びている。
軸封装置50に対向する回転軸17の周面17aにおいて、第1樹脂リップリング55の樹脂リップ部55bと対向する位置には、第1の実施形態と同じ第2螺子溝部17dが形成されている。すなわち、回転軸17において、2つの樹脂リップ部55b,57bのうち機内側に位置する一方の樹脂リップ部55bと対向する位置に第2螺子溝部17dが形成されている。回転軸17の周面17aにおいて、横溝部17gより機外側には、第2螺子溝部17dが回転軸17の軸方向に沿って第1螺子溝部17cに不連続となるように形成されている。
軸封装置50に対向する回転軸17の周面17aにおいて、第2樹脂リップリング57の樹脂リップ部57bと対向する位置には、第1の実施形態と同じ流動規制部17fが回転軸17の全周に亘って形成されている。すなわち、回転軸17において、2つの樹脂リップ部55b,57bのうち機外側に位置する他方の樹脂リップ部57bと対向する位置に流動規制部17fが形成されている。回転軸17の周面17aにおいて、第2螺子溝部17dより機外側には、流動規制部17fが回転軸17の軸方向に沿って第2螺子溝部17dに不連続となるように形成されている。
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)、(3)、(4)、(7)、(8)と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(9)軸封構造Tはハウジング11に軸封装置50を備え、さらに、回転軸17の周面17aにおいて、ゴムリップ部53(環状凸部53a)に対向する位置に横溝部17gを備える。このため、回転軸17の回転中、機内側から機外側へ流動する潤滑油を、横溝部17gの各横溝N内に貯留することができる。このため、ゴムリップ部53と回転軸17との間に潤滑油を介在させ、ゴムリップ部53と回転軸17との間の接触摺動性を良好とすることができ、その結果として、ゴムリップ部53の耐摩耗性を向上させることができる。
(10)軸封装置50に第1樹脂リップリング55と第2樹脂リップリング57の2つを設け、回転軸17の周面17aにおいて、第1樹脂リップリング55の樹脂リップ部55bと対向する位置に第2螺子溝部17dを形成し、第2樹脂リップリング57の樹脂リップ部57bと対向する位置に流動規制部17fを形成した。このため、第2螺子溝部17dと対向する樹脂リップ部55bの長さ、及び流動規制部17fと対向する樹脂リップ部57bの長さを十分に確保することができる。よって、軸封装置50から機外側への潤滑油の洩れ量を減らすことができる。
なお、各実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第1の実施形態において、図4に示すように、回転軸17の周面17aに第2の実施形態における横溝部17gを形成し、この横溝部17gにゴムリップ部44の環状凸部44aを対向させてもよい。
○ 第1の実施形態において、第1螺子溝部17cに変えて回転軸17の周面17aにショットブラスト等によって多数のくぼみを形成して凹凸部としてもよい。この多数のくぼみは、回転軸17の軸方向や斜めに繋がるように方向性を持たせて形成されていてもよく、方向性を持たないように形成されていてもよい。
○ 第2の実施形態において、横溝部17gに変えて回転軸17の周面17aにショットブラスト等によって多数のくぼみを形成して凹凸部としてもよい。この多数のくぼみは、回転軸17の軸方向や斜めに繋がるように方向性を持たせて形成されていてもよく、方向性を持たないように形成されていてもよい。
○ 各実施形態において、流動規制部17fの溝Mは、回転軸17の軸方向に沿った平滑面47e及び樹脂リップ部57bの幅内で回転軸17の全周に亘って延びなければ、回転軸17の軸方向に対し斜めに延びるように形成されていてもよい。
○ 軸封構造は、可変容量型圧縮機10に適用することに限定されるものではなく、例えば固定容量型圧縮機に適用してもよい。
○ 軸封構造は、冷媒として二酸化炭素を用いた冷凍回路の可変容量型圧縮機10に適用することに限定されるものではなく、冷媒としてフロン(例えば、R134a)を用いた冷凍回路の冷媒圧縮機に適用してもよい。
○ 軸封構造は、冷凍回路の冷媒圧縮機に適用することに限定されるものではなく、その他の流体回路(例えばエア回路や油圧回路)に用いられる流体機械(例えばエアコンプレッサや油圧ポンプ)に適用してもよい。
○ 軸封構造は流体機械に適用することに限定されるものではなく、例えば膨張機等のその他の回転機械に適用してもよい。
第1の実施形態の軸封構造を備えた可変容量型圧縮機の縦断面図。 第1の実施形態の軸封構造を拡大して示す図。 第2の実施形態の軸封構造を拡大して示す図。 別例の軸封構造を拡大して示す図。
符号の説明
G…螺子溝、J,P…螺旋溝、M…溝、T…軸封構造、10…流体機械及び冷媒圧縮機としての可変容量型圧縮機、17…回転軸、17a…周面、17c…凹凸部としての第1螺子溝部、17d…油戻し部としての第2螺子溝部、17f…流動規制部、17g…凹凸部としての横溝部、39,50…軸封装置、44,53…ゴムリップ部、47…樹脂リップリング、55…第1樹脂リップリング、57…第2樹脂リップリング、47b,55b,57b…樹脂リップ部、47d,55d…螺旋溝形成面。

Claims (5)

  1. 回転軸の周囲を密封する軸封装置を備えた流体機械の軸封構造であって、
    前記軸封装置は、前記回転軸の周面に対して密接するゴムリップ部を備えるとともに、前記回転軸の軸方向における前記ゴムリップ部より機外側に配設されて前記回転軸の周面に対して密接する樹脂リップ部を備え、
    前記回転軸の周面には、前記ゴムリップ部と対向する位置に前記周面を凹凸状に形成してなる凹凸部が形成され、
    さらに、前記樹脂リップ部と対向する位置に、螺子溝によって前記回転軸の回転に伴い前記流体機械の機内側へ潤滑油を戻す油戻し部が形成されるとともに、
    該油戻し部より機外側に、前記回転軸の軸方向に沿った前記樹脂リップ部の幅内に位置するように前記軸方向に交差する溝によって、前記回転軸の静止時に機内側から機外側への潤滑油の流動を規制する流動規制部が形成されている流体機械の軸封構造。
  2. 前記軸封装置は、前記樹脂リップ部を有する樹脂リップリングを1つ備え、1つの前記樹脂リップ部に対向するように前記油戻し部及び流動規制部が前記回転軸の軸方向に連続して設けられている請求項1に記載の流体機械の軸封構造。
  3. 前記樹脂リップ部における前記油戻し部と対向する位置には、螺旋溝によって前記回転軸の回転に伴い前記流体機械の機内側へ潤滑油を戻す螺旋溝形成面が形成されている請求項2に記載の流体機械の軸封構造。
  4. 前記軸封装置は、前記樹脂リップ部を有する樹脂リップリングを2つ備え、機内側に位置する一方の前記樹脂リップ部に前記油戻し部が対向配置されるとともに、機外側に位置する他方の前記樹脂リップ部に前記流動規制部が対向配置されている請求項1に記載の流体機械の軸封構造。
  5. 前記流体機械は空調装置の冷媒圧縮機であって、該空調装置の冷媒としては二酸化炭素が用いられている請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の流体機械の軸封構造。
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