JP2515992B2 - 孔部材と軸部材間の密封構造 - Google Patents

孔部材と軸部材間の密封構造

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、孔部材の孔内に軸部材を相対運動可能に設
けた場合の、両者間の密封構造に関する。
「従来の技術」 相対運動を行う孔部材と軸部材間の密封を必要とする
場合その構造は、その目的と洩れ量により様々な形式が
あり、大別して軸方向に往復運動するものと回転運動す
るもの、およびその両方をするものがある。
従来の軸方向の往復運動を行う孔部材と軸部材の密封
構造の例として、エンジンやコンプレッサのシリンダと
ピストン間の密封構造がある。このピストンとシリンダ
間の密封は、一般的にはピストン外周に数個の平行なリ
ング溝を軸方向に間隔をあけて設け、このリング溝に1
箇所を切断したピストンリングをそれぞれ挿入する構造
である。
またピストンとシリンダ間の密封はピストンリングが
均一な弾性力でシリンダ壁面の全周に接していることが
望ましく、そのためピストンリングをシリンダ壁面に圧
接させるようにしたものもある。
さらにピストンリングの切断線を凹凸状にして、その
切断箇所でピストンリング両端が周方向面で重なるよう
にして切断個所での密封を図ったものもある。
特に、コンプレッサのように気体を密封する孔部材と
軸部材との往復運動の場合には、ピストン外壁に平行多
段、又は螺旋状のラビリンスを設けラビリンス頂部とシ
リンダ内壁間に微小な隙間を保ち、気体がその微小隙間
と溝の間を通過する際の急膨張急圧縮を繰り返しさせる
ことにより、圧力損失を増大させ、その結果として、シ
リンダとピストン間の無給油式密封を行う構造もある。
また、往復運動する孔部材と軸部材間にOリングやグラ
ンドパッキンを設ける方式もある。
回転運動の孔部材と軸部材の密封には、リップシール
(オイルシール)方式、Oリングやグランドパッキン方
式や、シール方式、及び軸の外周に螺旋状ラビリンスを
設け、ラビリンス頂部と孔の内壁間に微小隙間を保ちな
がら、螺旋溝の回転により生じるポンプ作用により、流
体を高圧側に押し戻す方式、又は同様のラビリンス構造
で、先述のコンプレッサの無給油方式密封と同様、流れ
の急拡大、急縮小の繰り返し効果による密封方式があ
る。
また、特に流体を圧送するのを目的とするスクリュー
コンプレッサでは、回転軸上に形成された螺旋状ブレー
ドの外周を、微小隙間を保ちながらケース内周に組込
み、螺旋ブレードの頂部とケース内周の隙間から洩れな
いようにその構成を出来るだけ密封状態とするものもあ
る。
「発明が解決しようとする問題点」 上記のピストンの往復運動の際に用いられるエンジン
やコンプレッサのピストンリングは、全てピストン側に
装着され、またピストンリングも無端状でないため、そ
の切断箇所での密封が十分でない。
また従来のピストンリングはピストン軸に直角な面上
に配置され、その場合ピストンリングの受ける摩擦反力
の方向は、ピストンの運動方向に対し平行成分がほとん
どである。このためピストンリングへの反力が大きく、
摩擦抵抗も大きく、従ってシリンダ、ピストンリングの
摩耗の点でも不利である。また従来のピストンリング
は、連続リングではなく、切断箇所を押し広げてピスト
ンリング溝に挿入した後、シリンダ内にピストンを装着
したときに、ピストンリングがシリンダ内壁形状と一致
しにくく、ピストン全周での均一な密封が得られないと
いう問題点があった。
さらにピストンリングを装着したピストンをシリンダ
内に圧入するとき、ピストンリングがシリンダ入口に引
かかって圧入しずらく、またこの圧入時にピストンリン
グの一部に曲げ荷重が作用して変形したり折れるなどの
問題があった。
またピストン側にシール材を設け、シリンダ内壁に圧
接往復運動させる場合は、シリンダ内壁に摩耗が生じる
為、シール性劣化を修理する為シリンダ内径を拡大加工
し、それに合ったオーバーサイズのピストンを改めて製
作し、組合わせるか、シリンダ側を交換するかのいずれ
かであり、修理が困難であった。
これを更に改善する為には、シリンダ側にピストンリ
ングを装着すれば良いが、従来の平行複数のピストンリ
ングではシリンダ内側に組込み可能でも、ピストンを圧
入しずらいという問題があった。
次にラビリンスを直接ピストン外周に切った、無給油
式ピストンとシリンダの密封構造では、ピストンのラビ
リンス頂部と、シリンダ内周との隙間の大きさが直接密
封性に影響を与える為、ピストンの外径とシリンダ内径
の加工精度が重要となる。特に、クランク軸やカム軸を
介したピストンの複合運動である為、ピストンが往復運
動方向と直角方向、つまり周方向にも不規則な運動を
し、これによりシリンダ内壁にピストンが直接干渉し、
シリンダ及びピストンの両方が摩耗し易い。
次に孔と軸の往復運動をOリングやグランドパッキン
で密封する際には、形状や寸法状の制約が少ないが、こ
れらの材料がゴム等の軟質材であり、且つ既に軸部材の
大きさに合わせ成形する必要がある為、汎用性が少なく
寿命が短い欠点がある。
次に孔部材と軸部材の回転運動における密封について
は従来のリップシール(オイルシール)、Oリンググラ
ンドパッキンを使用したものがあるが、これらは寸法上
の制約があり、耐久性がない。
次に回転軸上に螺旋ブレードを溶接したり、又はネジ
溝を加工したスクリューポンプやネジポンプの螺旋ブレ
ードやネジ溝を形成するものは、加工精度を出すのが困
難であり、軸方向に傾斜した力が作用する場合に偏った
摩擦が生じるという問題がある。
「問題点を解決する為の手段」 本発明は、孔部材に軸部材を嵌合した構造において、
孔部材内周又は軸部材外周の少なくとも一方に螺旋溝を
設け、この螺旋溝に螺旋状シールを挿入して、孔側の内
径と軸側の外径を軸方向に組合せ、螺旋状シールの突出
端面が対応する周壁、又は対応する他方の螺旋状シール
の突出端面に弾性的に接触するか、微小隙間を保ちなが
ら相対運動をするようにしたものである。孔側と軸側の
強い干渉の可能性のある場合には、螺旋状シールはその
厚さを螺旋溝の寸法との関係で調整し、常に軸方向又は
周方向に適切な遊びを設ける構造とする。
「作用」 孔部材がシリンダ、軸部材がピストン、螺旋溝および
螺旋状シールを軸部材外周に設けた場合について説明す
る。
シリンダ内をピストンが往復摺動したとき、螺旋状シ
ールによりピストンとシリンダ間の密封が保たれる。こ
の場合、ピストンとシリンダ間の隙間は微小であるの
で、螺旋状シールの各巻線部の間を洩れるようなことは
ない。螺旋状シールの各巻線間に螺旋状の微小隙間があ
ったとしても、螺旋状シールは複数巻であり、洩れよう
とする流体はピストンの運動方向に平行に流れることは
出来ず、長い螺旋状の微小隙間に沿って流れるため、大
きな流れ抵抗による圧損を生じる。またピストンが軸方
向に往復摺動する場合、螺旋状シールの上端巻線部と下
端巻線部の差圧が常に変化しており、これにより更に流
れが撹乱され、益々流れ抵抗が大きくなる。このような
状態で、ピストンは螺旋状シールの巻線方向にほぼ直角
に高速度で移動するので密封に問題はない。
シリンダが急に傾く等の周方向の急激な運動にが生じ
ても、螺旋状シールは螺旋溝内の深さ方向に少し移動で
きるので、螺旋状シールと相手側周壁との間でほとんど
摩耗は生じない。螺旋状シールに傾斜方向の衝撃力が作
用したとき、その力点から力は螺旋状シールを伝達して
ピストン円周方向と軸方向に分散し、螺旋状シール全体
に均一な力を働らかせて、シリンダとピストン間を密封
ができる。それと同時に螺旋状シールと螺旋溝間では、
ピストン外壁との摩擦反力およびピストン上下の圧力差
により、常に螺旋講側壁側に螺旋状シールが連続的に密
封を助ける方向に圧接され、理想的な密封状態を得るこ
とができる。前記は軸部材側へ螺旋状シールを組込み、
弾性的接触をしながら軸が往復運動する場合であるが、
非接触の無給油型の往復運動する場合でも、同様の作用
が得られる。
また軸側でなく孔側に螺旋状シールが組込まれた場合
でも、孔側、軸側共に螺旋状シールを設ける場合でも、
前記例の作用は同じである。静止側に螺旋状シールを設
ける場合は、螺旋状シールの各巻線間に生じる螺旋溝中
を、密封流体が流れることにより長い管路での流れ摩擦
抵抗で圧力損失を生じ、結果的に密封の効果をあげるこ
とが出来るが、運動側に螺旋状シールを設ける場合に
は、それに加え往復運動の直接の影響を受け流れの撹乱
による圧力損失、つまり密封効果が更に良くなる。ま
た、静止側と運動側の両方に螺旋状シールを設ける場合
には、静止側に設ける螺旋状シールは螺旋状隙間溝を交
叉させることにより大きな流れの撹乱効果を得ることが
できる。なお静止側の螺旋状シールにより生じる螺旋溝
断面を必要以上に大きくせず適切に決定することが肝要
である。
孔部材と軸部材の相対運動が回転であっても、回転と
往復運動の複合であっても、前記の作用は同様である。
回転運動においては、螺旋状シールの剛性の強弱により
又回転数の大きさにより、その程度は異なるが螺旋状シ
ールがその外径側に拡張する作用あり、接触回転する場
合には回転数の上昇と共に接触圧力も増大し、一般に回
転数の増加に伴い、流体はより高圧となり流体の密封効
果を上げることも可能となる。なお、螺旋状シールは、
回転運動中、洩れ方向と反対方向にスクリュウポンプ作
用をするようにその向きが設定されており、螺旋状シー
ルの各巻線間を流体が洩れることはない。
「実施例」 本発明の孔部材がシリンダで、軸部材がピストンであ
る第1実施例を第1図により説明する。
ピストン1は、シリンダ2内を軸方向に往復摺動する
ようになっており、ピストン1の外周に設けた螺旋溝3
内に螺旋状シール4が挿入され、この螺旋状シール4に
よりシリンダとピストン間の密封が保たれる。
螺旋溝3は、ピストンの上、下端部を除いた中央部に
複数巻きとなるように設けられ、この巻数は目的に応じ
て変り、密封圧力が大きい程、多数巻とする。なお、螺
旋溝3の両端は軸方向に離れた関係になっている。また
螺旋状シール4を螺旋溝3内に挿入した状態で、螺旋状
シールの各巻線間に両端開口の螺旋状隙間が生じるが、
前記の作用の欄で説明した密封作用により、そこから流
体が洩れることはない。
螺旋状シール4は、螺旋溝3の長さより少し短い複数
巻きに形成して、ピストンの往復運動中に、周方向に自
由に螺旋状シール4が動けるようにするとともに、熱膨
張に対応させる。螺旋状シール4の素材をゴム等の弾性
体とするときには、シリンダ内壁と螺旋状シールの接触
圧力による潰し代を調整して密封を図る。また素材を金
属にするときは、螺旋状シール4の螺旋溝3への装着前
の外径をシリンダ内壁径よりも若干大きくし、螺旋状シ
ールを螺旋溝へ装着してシリンダ内に押し込んでも、螺
旋状シールの内周側が螺旋溝底面と干渉しないような寸
法にする。
なお、螺旋状シールの断面は、円形でも、外周部が半
円状で内周部が四角形状であってもよく、その目的に応
じ適切な形状にすればよく、螺旋状シール内周側に螺旋
状コイルを設けて螺旋状シールをシリンダ壁面側に押す
ようにしてもよい。
上記実施例では螺旋溝をピストン(軸部材)外周に設
けたが、その代りにシリンダ(孔部材)内周に設け、そ
の螺旋溝に螺旋状シールを設けるようにしてもよい。さ
らに、螺旋溝と螺旋状シールをシリンダ内周とピストン
外周の両方に設けるようにしてもよい。
また、前記の実施例および変形例では、孔部材と軸部
材の相対運動が軸方向に往復運動するものであったが、
その相対運動が回転であっても同様に適用でき、両者間
の密封機能を有する。この場合、螺旋状シールは洩れ方
向と反対方向にスクリュウポンプ作用をさせる向きに配
置され、各巻線間を流体が洩れないようにする。
次に本発明の第2実施例を第2図により説明する。
第1実施例では、螺旋状シールを、それを設けた部材
(孔、軸)でない方の部材の周面に接触させていたが、
第2実施例では螺旋状シールを相手部材の周面に接触し
ないようにしたものである。
すなわち、一例として軸部材5に螺旋溝3を設けると
ともに、この螺旋溝内に螺旋状シール4を設け、この螺
旋状シール4の外端面が孔部材6の内周面に間隔7を有
するようにした。なお、孔部材6と軸部材5との相対運
動は、軸方向の往復運動でも、回転運動でもよく、また
螺旋溝と螺旋状シールを軸部材の代りに孔部材に設けて
もよく、さらに両者に設けてもよい。
本実施例のように、螺旋状シール外端面と相手部材の
周面との間に間隔を設けた構成では、両者が回転相対運
動をする場合に前記実施例とほぼ同様に流体が両者間で
洩れないように密封できる。また軸部材と孔部材間に粘
性の大きな流体を介在させて使用する場合に、両者間の
密封を保つことができる。
「発明の効果」 本発明は、従来のピストンリング、ラビリンスシール
のラビリンス、スクリューポンプの螺旋ブレード等に相
当する部分に代り、シール材を、螺旋状に形成して孔部
材や軸部材の周壁に設けた螺旋溝に装着しているので、
螺旋状シールに衝撃力が作用してもその力はその円周方
向と上下方向に分散されるので、より安定した密封状態
を得ることができ、さらに両者間の摩耗をより減少でき
る。
また螺旋溝に螺旋状シールを組込むとき、螺旋溝に沿
ってねじ込むようにまたは巻き込むように装着すればよ
いので、その組付けが容易であり、さらにその後に孔側
に軸側を組込むとき、螺旋状シールに曲げ荷重が作用し
にくく、その破損を防止できる。また、流体の性質、圧
力、温度、運動の速度により、螺旋状シールの材質、形
状、寸法等を選択または変更するだけで、機能の幅広い
選択が可能である。また、孔部材と軸部材の加工精度、
又はそれらの組合わせ上の制約も緩和され、更に補修、
修理も容易となる。また、孔部材と軸部材の隙間の流れ
の錯乱により生じる振動の元となる不規則な力が螺旋状
シール各部に分散され、吸収され易く、結果として振動
を減少する効果もある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1実施例の密封構造の断面図、第2
図は第2実施例の密封構造の断面図である。 1;ピストン、2;シリンダ 3;螺旋溝、4;螺旋状シール 5;軸部材、6;孔部材 7;間隔
フロントページの続き (73)特許権者 999999999 越智 雅文 埼玉県鴻巣市大間2丁目11番105号 (72)発明者 今井 淳 朝霞市宮戸1丁目1番24号 (56)参考文献 特開 昭57−86662(JP,A) 実開 昭56−157464(JP,U) 実公 昭45−5306(JP,Y1)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】孔部材の孔内に軸部材を嵌合した構造にお
    いて、孔部材の内周又は軸部材の外周の少なくとも一方
    に螺旋溝を形成し、その螺旋溝は複数巻きであって両端
    が軸方向に離れた関係にされ、その螺旋溝内に複数巻き
    の螺旋状シールを設けた孔部材と軸部材巻の密封構造。
  2. 【請求項2】螺旋状シールの外端面と、それを設けた部
    材でない方の部材周面との間に間隔を設けた特許請求の
    範囲第1項の孔部材と軸部材間の密封構造。
JP61220840A 1986-05-07 1986-09-20 孔部材と軸部材間の密封構造 Expired - Lifetime JP2515992B2 (ja)

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JP10317186 1986-05-07
JP61-103171 1986-05-07

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JPS63101578A JPS63101578A (ja) 1988-05-06
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