JP2007238412A - ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ケイ酸原料として、非晶質ケイ酸原料を用い、ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO2及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiO2が0.2〜0.7の範囲内で混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させて水性スラリーを調製する。当該スラリーを100℃以下の常圧下で水熱反応させることによって、未反応ケイ酸を含有したCaO/SiO2が低いケイ酸カルシウム二次粒子凝集体が得られる。上記方法によれば、100℃以下の常圧下でケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を製造できるため、低コスト化及び生産性の向上を図ることができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、安定供給可能な非晶質ケイ酸原料と石灰原料とを用い、100℃以下の常圧下でケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成し、低コストのシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を提供するものである。本発明にかかる方法で製造されるシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体は、ケイ酸カルシウムの有する濾過特性、シリカゲルの有する吸着特性を併せ持つものである。
本発明にかかるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は、ケイ酸原料と石灰原料とからなる水性スラリーを100℃以下、常圧下で水熱反応させることにより、製造されるものである。なお、本明細書において、「二次粒子」とは、箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合ったものを指す。また、本明細書において、「常圧」なる用語は、「大気圧」と同義的に用いられ、具体的には、0.1MPaの気圧を意味する。
上記水性スラリー調製工程では、ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させることにより、水性スラリーを調製する。
上記水熱合成工程では、常圧下、100℃以下で上記水性スラリーを加熱することにより、水熱反応を行う。上記水熱合成工程によれば、後述するシリカ多孔質凝集体やハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の原料として利用可能なケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を製造することができる。
本発明にかかるシリカ多孔質凝集体は、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を用いて製造されるものであって、箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子を形成したシリカ多孔質凝集体である。本発明にかかるシリカ多孔質凝集体は、後述の実施例にも示されているように、濾過特性、タンパク吸着能、ホルムアルデヒド吸着能及び分解能が優れている。具体的には、以下の(a)〜(e)の物性を有することが好ましい。これらの物性を有することにより、シリカ多孔質凝集体を後述の<VI.本発明の利用>で述べる目的に好適に用いることができる。
(a)平均粒子径が5〜20μmであることが好ましい。
(b)嵩密度が0.08〜0.30g/cm3であることが好ましい。
(c)BET比表面積が200〜900m2/gであることが好ましい。
(d)透過率が0.15Darcy以上であることが好ましい。
(e)VOC吸着量が1.5mg/g以上であることが好ましい。
上記酸処理工程では、上記水熱合成工程後のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を含有する水性スラリー(以下、「ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリー」ともいう)を酸処理する。これにより、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体中の酸化カルシウムが溶解・除去され、シリカ多孔質凝集体が得られる。
上記分離回収工程では、上記酸処理工程後の水性スラリーから、固形物、言い換えればシリカ多孔質凝集体を分離・回収する。シリカ多孔質凝集体を分離・回収する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。
本発明にかかるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体をリン酸化合物で処理することにより、表層がハイドロキシアパタイトで被覆されたシリカ多孔質凝集体(以下、「ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体」ともいう)を製造することができる。本発明には、このように表層がハイドロキシアパタイトで被覆されたシリカ多孔質凝集体及びその製造方法も含まれる。
(a’)平均粒子径が5〜20μmであることが好ましい。
(b’)嵩密度が0.10〜0.40g/cm3であることが好ましい。
(c’)BET比表面積が50〜300m2/gであることが好ましい。
(d’)透過率が0.15Darcy以上であることが好ましい。
(e’)VOC吸着量が1.5mg/g以上であることが好ましい。
上記リン酸化合物処理工程では、上記水熱合成工程後のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリーをリン酸化合物処理する。これにより、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体中の酸化カルシウムが溶出すると同時に、溶出した酸化カルシウムとリン酸化合物とが反応し、ハイドロキシアパタイトが生成される。その結果、表層がハイドロキシアパタイトで被覆されたシリカ多孔質凝集体が得られる。
本発明にかかるシリカ多孔質凝集体の製造装置は、上述したシリカ多孔質凝集体の製造方法及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造方法を実施するのに好適に用いることができるものである。
本発明は、上述したように、常圧下、100℃以下でケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造を可能にするものである。本発明にかかる製造方法により得られるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は、シリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造に用いることができる物性を有している。
レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置を用い、粒子径は体積基準で、平均粒子径(メジアン径)を求めた。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用い写真撮影し、約150個の粒子径測定を行い、平均粒子径を求めた。
BET比表面積測定装置を用い、200℃で十分に加熱脱気した試料について、窒素ガスを吸着させる多点法による比表面積を求めた。
メスシリンダーの中に試料を約50ml入れ、タッピングして充填容積が一定になったところを容積とし、試料の重量及び容積から嵩密度を求めた。
濾過面積8.5cm2の円柱状加圧濾過器を用い、濾過板の上に約2cmのケーク層を形成させ、次にケーク層を崩さないように200mlの水を注ぎ込み、0.1Kg/cm2で加圧し、濾液の採取量から透過率(Darcy)を求めた。
pH4に調整した500μg/mlのチトクロームC水溶液を100ml採取し、これに試料0.3gを投入した。30℃の恒温インキュベーターで1時間浸透後、5Cの濾紙を用いて濾過した。この濾液中のチトクロームCの残量を分光光度計を用いて吸光度(波長410nm)を測定し、初期濃度との差から吸着量を求めた。
22.5Lの攪拌機付きデシケータ、エアーポンプ、カラム、気化容器を用い、系全体の空気をエアーポンプで減圧した。その後、窒素ガスを充填し、気化容器に系全体の濃度が約40ppmにホルムアルデヒドを添加した。カラムに試料を0.1g充填して、ホルムアルデヒドを系全体に循環させながら試料への吸着を行った。60分後に検知管でホルムアルデヒド濃度を測定した。初期濃度との差から吸着量を求めた。
実験用試料は、次のようにして得た。まず、解砕したパルプスラリーを濾過してパルプシートにした。その後、パルプシート重量に対して試料重量が10%になるよう水に分散させたスラリーを当該パルプシートに供し、濾過した後、120℃で乾燥させた。次に、試料重量に対して10%になるように、希釈した酸化チタン(アナターゼ)水溶液を乾燥させた試料含有パルプシートに吹き付けて、120℃で乾燥させた。このようにして、試料含有パルプシート、すなわち実験用試料を得た。これを用いて以下の操作を行った。
ケイ酸原料には、シリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を用いた。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.5になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.05モルのNaOH溶液を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
実施例1で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.05モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。その際、pH7.5以下にならないように注意し、pHが7.5以下になったら水酸化ナトリウムを添加しながら処理を行った。
ケイ酸原料には、シリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を使用した。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.5になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
実施例3で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、ケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。
ケイ酸原料には、シリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を使用した。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.5になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.2モルのNaOH溶液水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
実施例5で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.2モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。
ケイ酸原料にはシリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を使用した。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.3になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.2モルのNaOH溶液水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
実施例7で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.2モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、30時間撹拌しながら保持した。
ケイ酸原料には、市販の石英粒子を粉砕した結晶質シリカ(平均粒子径4.2μm)を用いた。当該結晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.5になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.05モルのNaOH溶液を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
比較例1で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.05モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。
ケイ酸原料には、シリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を使用した。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.8になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.2モルのNaOH溶液を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
比較例3で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.05モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。その際、pH7.5以下にならないように注意し、pHが7.5以下になったら水酸化ナトリウムを添加しながら処理を行った。
市販のケイソウ土系濾過助剤(参考例1)、市販のビール安定化処理用シリカゲル(参考例2)及び市販のVOCガス吸着用ハイドロキシアパタイト(参考例3)の性能を表1及び2に示す。
Claims (8)
- (A)ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO2及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiO2が0.2〜0.7の範囲内で混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させ、水性スラリーを調製する工程と、
(B)上記水性スラリーを、常圧下、100℃以下で加熱することによって、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成する工程とを含み、
上記ケイ酸原料は、非晶質ケイ酸原料であることを特徴とするケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法。 - 上記ケイ酸原料は、非晶質ガラス、非晶質ケイ酸、水ガラス、及びホワイトカーボンからなる群より選択されるSiO2少含有物質を少なくとも1つ含むことを特徴とする請求項1に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法。
- 上記石灰原料は、生石灰、消石灰、又は生石灰と消石灰との混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法を1工程に含み、
(C)上記(B)工程後の水性スラリーを酸処理する工程をさらに含むことを特徴とする、シリカ多孔質凝集体の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法を1工程に含み、
(D)上記(B)工程後の水性スラリーをリン酸化合物処理する工程をさらに含むことを特徴とするハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造方法。 - シリカ多孔質凝集体又はハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を製造するための製造装置であって、
ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させる混合手段と
ケイ酸原料と石灰原料とが水又は水酸化アルカリ水溶液に分散された水性スラリーを、常圧下、100℃以下で加熱するための加熱手段と、
上記加熱手段によって加熱された水性スラリーを、酸処理もしくはリン酸化合物処理するための酸処理手段と、
上記酸処理手段によって酸処理もしくはリン酸化合物処理されたスラリーを、固液分離し、固形物を乾燥させる分離乾燥手段とを備えることを特徴とする製造装置。 - 箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子を形成したシリカ多孔質凝集体であって、
平均粒子径が5〜20μmであり、嵩密度が0.08〜0.30g/cm3であり、BET比表面積が200〜900m2/gであり、透過率が0.15Darcy以上であり、VOC吸着量が1.5mg/g以上であることを特徴とするシリカ多孔質凝集体。 - 箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子を形成したハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体であって、
平均粒子径が5〜20μmであり、嵩密度が0.10〜0.40g/cm3であり、BET比表面積が50〜300m2/gであり、透過率が0.15Darcy以上であり、VOC吸着量が1.5mg/g以上であることを特徴とするハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体。
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