JP4827045B2 - 水浄化材、および水浄化材の製造方法 - Google Patents
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より具体的には、生活排水や事業所排水などに含まれ、池水や内湾など閉鎖性水環境の水質を富栄養化させ赤潮やアオコなどの発生原因となるリンを、排水もしくは閉鎖性水環境において除去することを目的として用いられる、水浄化材(特に、リン除去材)、およびその製造方法に関するものである。
この方法では、水中のオルトリン酸に対して大過剰のCa2+を消石灰として加え、その反応物である難水溶性のヒドロキシアパタイト(Ca10(OH)2(PO4)6)を凝集沈殿させるが、生成するスラッジの処理が必要となることと、処理水のpH調整、ならびに過剰Ca2+の処理が必要となる。
しかしながら、晶析脱リン法では排水のpHを一定範囲に綿密に維持し、オルトリン酸と反応するカルシウムイオンを系外から供給する必要がある。
この空隙は、汚水の一方向の流れを乱し、実質的な流速を緩和し、ヒドロキシアパタイトの析出や成長を促進する働きがあるとしている。さらに、珪酸カルシウム水和物やゲル類は、オルトリン酸イオンの反応に必要なCa2+を供給し、pHをヒドロキシアパタイトの析出に適した8〜9に維持するとしている。珪酸カルシウム水和物がヒドロキシアパタイトの晶析に効果的な原因としては、珪酸カルシウム水和物粒子間の空隙にヒドロキシアパタイト結晶が補足されるためであるとしている。
また、本発明は、上記のような健全なバルク構造を維持することが可能な水浄化材の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明によれば、上記のような健全なバルク構造を維持することが可能な水浄化材の製造方法を得ることができる。
また、成形後に施す熱処理によって生石灰化させ、速やかに水分を補給して、バルク体を一度に消化する構成を有することにより、空気中の水蒸気によって徐々に消化が進むスレーキング(剥離・粉化)現象を防止することができ、消化前の健全なバルク体を維持することができる。
さらに、バルク体のカルシウム成分を消化した後に、すぐに水熱処理を施すので、バルク体を構成する粉体粒子は活性な状態にあり、水熱反応を円滑に進めることができる。
上述した材料を用意した後、本実施形態においては、まず、これらの材料の混合物を粉砕・混合させる(本発明の「粉砕混合工程」に相当)。
このバルク体は、その空隙率が少なくとも30%以上になるように成形を行う。具体的には、空隙率が少なくとも30%以上となるように、気孔形成材の添加や起泡などにより気孔を導入する。
なぜならば、バルク体の連通孔は製造工程においては消化反応や水熱反応を促進するからである。また、水浄化材としての使用に際しては、汚水との接触性を改善し、汚水をその気孔内に取り込むことでヒドロキシアパタイトが晶析するための滞留時間を確保する効果があるからである。
このときの下限の温度は炭酸カルシウムが分解を始める時のものであり、上限はバルク体のバッチ組成によっては焼結を起こさない温度を目安としている。焼結が起こると粉体の表面積が減少し、特に水熱反応の際の障害になる。
そこで、本実施形態においては、水浄化材の製造にあたり、上述した熱処理工程の後、バルク体の炭酸カルシウム成分を生石灰化し、含水させて消化させる工程(本発明の「消化工程」に相当)が行われる。
水分の補給操作は、その後の水熱処理に備え、バルク体を鉄、ステンレスおよびガラスなどの材質の容器に静置し、上述した所定量の水分を散水することにより行う。そして、消化による体積変化が収まるのを待って、そのまま容器ごとオートクレーブ内に移動し、バルク体の損傷を防止する。
この条件はトバモライト、ゾノトライトおよびジャイロライトなどの珪酸カルシウム水和物が生成する条件である。なお、トバモライトとゾノトライトとのいずれの珪酸カルシウム水和物も、リン除去に用いた際にヒドロキシアパタイトの晶析効果を示すが、通常は、トバモライトの方が処理温度も低く、リン除去等の水浄化には、トバモライトを選択することが多い。
すなわち、本実施形態によれば、炭酸カルシウムを主成分とする石灰質原料に、珪石粉、非晶質シリカ微粒子などの珪酸質原料を配合し、湿式または乾式の成形法によりバルク体とした後に、脱炭酸の起こる温度域(すなわち750〜1000℃)で熱処理することにより、バルク体中の炭酸カルシウムや廃セメントのカルシウム成分を生石灰化した後、散水などにより速やかに含水状態とし、一旦生成した生石灰を直ちに消化させ、バルク体の構造を健全に維持することが可能となる。また、本実施形態によれば、含水状態となったバルク体は、オートクレーブ容器に移し、水熱処理を施すことにより、消石灰と珪酸質原料とを反応させて、その組織中にトバモライトやCSHゲルなどの珪酸カルシウム水和物を生成させ、併せてハンドリング上充分な機械的強度を付与することが可能となるため、好適な水浄化材(特に、リン除去材)を得ることができる。
本実施例1においては、食用に供される養殖牡蠣の殻(以下、「牡蠣殻」という。)55重量部、ベントナイト5重量部、蛙目粘土10重量部、珪石粉(平均粒径5μm)30重量部、および食用寒天0.95重量部を乾式でよく粉砕・混合した(本発明の「粉砕混合工程」に相当)後、80℃の熱水82重量部を加えて撹拌しスラリー化した。このバッチ組成のCa/Si比は0.8である。
この際、型枠としては、50cm四方の枠のみの場合と、その中に対角線の長さが15mmの六角形の孔をもつハニカム状の仕切付型枠の場合との両方を用いてみた。そうすると、いずれの場合も約17時間を要して、水分1wt%程度にまで乾燥させることができた。
しかしながら、試料の一部を大気中に放置し、空気中の湿分との反応が徐々に進行した試料では、機械的な強度が極端に低下し、触れると小片に崩壊したことから、試料中に不均質な膨張歪みが生じると、上記の粘土鉱物による結合効果も充分ではなくなることが確認された。
その結果、リン濃度は4時間を要して1mg/Lまで低下した。
その結果、概ね10回目(10回の水溶液交換)までは1mg/L以下に、50回目までは2mg/L以下に維持され、さらに60回目までは2.5mg/Lに維持されることが確認された。すなわち、本実施例1にかかる水浄化材によれば、60回目までは、リンの除去率を50%以上に維持することができる。
利用率(%)=(累積除去リン重量)×105/(31×6×(CaCO3配合率%))
その値(利用率)は16%に達していた。
このことから、本実施例1にかかる水浄化材は充分な持続性を有することが確認された。
接触時間 0分:pH7.2
1分:pH7.4
5分:pH7.7
10分:pH8.0
30分:pH8.4
60分:pH8.5
120分:pH8.5
240分:pH8.6
360分:pH8.6
1320分:pH8.7
以上の結果から明らかなように、本実施例にかかる水浄化材によれば、pHを略8〜9の間で推移させることが可能であるため、従来技術(晶析脱リン法)のように、pHを一定範囲に綿密に維持する必要がない(pH調整を行う必要がない)。
この実施例2においては、牡蠣殻57.6重量部、ベントナイト5重量部、蛙目粘土10重量部、珪石粉27.4重量部、および食用寒天0.96重量部を乾式でよく粉砕・混合した(本発明の「粉砕混合工程」に相当)後、80℃の熱水82重量部を加えて撹拌しスラリー化した。このバッチ組成のCa/Si比は0.9である。
この水浄化材は、水熱処理前の泡状組織をそのまま維持しており、気孔はほとんどが連通しており、開気孔率は約80%であった。
その結果、リン濃度は4時間を要して1mg/Lまで低下した。
このことから、本実施例にかかる水浄化材によれば、従来技術(晶析脱リン法)のように、pHを一定範囲に綿密に維持する必要がない(pH調整を行う必要がない)ことが明らかとなった。
この実施例3においては、牡蠣殻51.8重量部、ベントナイト5重量部、蛙目粘土10重量部、珪石粉33.2重量部、および食用寒天0.96重量部を乾式でよく粉砕・混合した(本発明の「粉砕混合工程」に相当)後、80℃の熱水82重量部を加えて撹拌しスラリー化した。このバッチ組成のCa/Si比は0.7である。
この水浄化材は、水熱処理前の泡状組織をそのまま維持しており、気孔はほとんどが連通しており、開気孔率は約90%であった。
その結果、リン濃度は4時間を要して1mg/Lまで低下した。
接触時間 0分:pH7.2
2分:pH8.7
5分:pH8.7
10分:pH8.7
30分:pH8.9
60分:pH8.9
120分:pH9.0
240分:pH8.9
360分:pH8.9
4380分:pH8.9
以上の結果から明らかなように、本実施例にかかる水浄化材によれば、pHを略8〜9の間で推移させることが可能であるため、従来技術(晶析脱リン法)のように、pHを一定範囲に綿密に維持する必要がない(pH調整を行う必要がない)。
上述した実施例1〜実施例3によれば、いずれの水浄化材についても、かなり高い水浄化性能(具体的には、リン除去性能)を有することが確認された。これらの実施例における各水浄化材は、Ca/Si比以外は基本的に同様の構成を有しており、そのリン除去能力を比較すると、Ca/Si比で、0.8>0.9>0.7の順に、持続力が高いことが明らかとなった。
ちなみに、トバモライトのCa/Si比は0.83であり、今回の0.8はそれに近いものではあるが、一方で実施例1〜実施例3に示した試料には、いずれも未反応の珪石粉や石灰分が存在しており、水浄化材原料のすべてがトバモライト生成に寄与したわけではない。すなわち、未反応に終わった原料にもカルシウム供給や骨材としての役割があることから、以上の実施例による水浄化材はいずれも本発明の範囲内であり、使用条件等によって選択されるものである。
この実施例4においては、石灰石55重量部もしくは卵殻粉55重量部に、ベントナイト5重量部、蛙目粘土10重量部、珪石粉30重量部、および食用寒天0.96重量部を乾式でよく粉砕・混合した(本発明の「粉砕混合工程」に相当)後、80℃の熱水82重量部を加えて撹拌しスラリー化した。このバッチ組成のCa/Si比は0.8である。
この水浄化材は、水熱処理前の泡状組織をそのまま維持しており、気孔はほとんどが連通しており、開気孔率は約80%であった。
その結果、リン濃度は4時間を要して1mg/Lまで低下した。
この実施例5においては、牡蠣殻55重量部、ベントナイト5重量部、蛙目粘土10重量部、珪石粉30重量部、および大鋸屑10重量部を乾式でよく粉砕・混合した(本発明の「粉砕混合工程」に相当)。この粉砕混合工程の後、適量の水分を加えてプラネタリミキサーで混練し練土状態とし、押出し成形機に移して、外径12mm・内径9mm・長さ15mmの円管状と、外径6mm・長さ10mmの円柱状の試料を成形した(本発明の「成形工程」に相当)。
また、バルク体(水浄化材)の断面を走査型電子顕微鏡で観察すると、円管状、円柱状いずれの組織もトバモライト11オングストロームの薄片状結晶に覆われており、構成粒子間の隙間としてのミクロンオーダーの気孔以外に、大鋸屑を起源とする数十〜数百μmの気孔が存在する、いわゆる二元性気孔構造を有していることが分かった。
その結果、円管状のバルク体である水浄化材は、接触開始4時間以内にリン濃度を2.5mg/L以下に到達させる能力を有することが確認された。また、円管状の水浄化材は、リン水溶液の交換20回目まで、かかるリン除去能力を維持していることが分かった。さらに、円柱状のバルク体である水浄化材についても、リン水溶液の交換16回目まで、円管状の水浄化材と同様のリン除去能力を維持可能であることが分かった。
加えて、本発明においては、石灰石などの天然原料や、貝殻、卵殻、さらには使用済みのセメント素材などを、事前に熱処理・消化などの工程を経ることなく、化学的に穏和で扱いの容易な原料として利用することができ、かつ健全なバルク体としてのリン除去材を提供することができる。
したがって、本発明によれば、合理的な水浄化方法(リン除去方法)を提供すると共に、全体の加工コストを低減することが可能となる。
Claims (6)
- 生活排水、事業所排水などの排水や、池水、内湾など閉鎖性水域の水を浄化する水浄化材であって、
炭酸カルシウムを主成分とする石灰質原料と、シリカを主成分とする珪酸質原料と、粘土鉱物とを粉砕・混合し、
これらの粉砕混合物を多孔質構造の成形体となした後、750℃〜1000℃の温度範囲で熱処理を施して、炭酸カルシウム成分を生石灰化し、
前記生石灰化の後、含水させて消化させ、
前記消化後、160℃〜210℃の温度範囲で水蒸気養生を行うことによって得られることを特徴とする
水浄化材。 - 前記炭酸カルシウムを主成分とする石灰質原料が、石灰石、貝殻、サンゴ砂、卵殻、およびドロマイトの少なくとも一つを含んだ原料である
請求項1に記載の水浄化材。 - 前記シリカを主成分とする珪酸質原料が、珪石粉、ガラス粉、非晶質シリカ粉、珪藻土、陶磁器セルベン、粘土、およびセメント水和物の少なくとも一つを含んだ原料である
請求項1または2に記載の水浄化材。 - 生活排水、事業所排水などの排水や、池水、内湾など閉鎖性水域の水を浄化する水浄化材の製造方法であって、
炭酸カルシウムを主成分とする石灰質原料と、シリカを主成分とする珪酸質原料と、粘土鉱物とを粉砕・混合する粉砕混合工程と、
これらの粉砕混合物を多孔質構造の成形体となす成形工程と、
前記成形体に対して、750℃〜1000℃の温度範囲で熱処理を施して、その炭酸カルシウム成分を生石灰化する熱処理工程と、
前記熱処理工程の後、含水させて消化させる消化工程と、
前記消化工程の後、160℃〜210℃の温度範囲で水蒸気養生を行う養生工程とを備えたことを特徴とする
水浄化材の製造方法。 - 前記炭酸カルシウムを主成分とする石灰質原料として、石灰石、貝殻、サンゴ砂、卵殻、およびドロマイトの少なくとも一つを含んだ原料を用いる
請求項4に記載の水浄化材の製造方法。 - 前記シリカを主成分とする珪酸質原料として、珪石粉、ガラス粉、非晶質シリカ粉、珪藻土、陶磁器セルベン、粘土、およびセメント水和物の少なくとも一つを含んだ原料を用いる
請求項4または5に記載の水浄化材の製造方法。
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