JP3308196B2 - 脱リン材の製造方法 - Google Patents

脱リン材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、リン酸やリン酸
塩(以下、「リン」と略す)を湖、沼、貯水池、河川
水、生活排水、家畜屎尿排水、下水から除去するための
脱リン材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、貯水池における富栄養化現象の
防止策は、流入河川対策と貯水池内対策に大別される。
貯水池内対策には、曝気循環、噴水、選択放流などがあ
る。しかし、これらは積極的に栄養塩類を除去する方策
ではない。流入河川対策には流路転換と流入水処理があ
る。流路転換もまた栄養塩類を積極的に除去するもので
はない。流入水処理は、栄養塩類を積極的に除去するこ
とを目的とした方法である。これは、礫間接触、凝集沈
降分離、リン吸着材などにより、水中のリンを除去す
る。
【0003】特にリン吸着材による脱リン処理は有効な
手段であると考えられる。凝集沈降分離のようなスラッ
ジの回収処理が不必要だからである。リン吸着材(脱リ
ン材)としては、従来、特開昭62−183898号公
報に記載されているものが知られている。このものは、
トバモライト系水和物を主要鉱物とした独立気泡を有す
る多孔質処理材である。この脱リン材では、アルミニウ
ム粉末などの気泡剤を使用して空隙を造っている。よっ
て、その製法上、空隙である気泡は独立気泡となってい
る。
【0004】上記脱リン材を用いて脱リン効果を調べた
結果、リンは、気泡内部に成長したトバモライト水和物
を析出サイトとして、アパタイト(リン灰石)の形で固
定されていることが分かった。また、このアパタイトの
析出は、リン溶液が直接に接する硬化体の表面近傍での
み旺盛であり、硬化体の内部の気泡ではアパタイトの析
出は認められなかった。これは気泡が、硬化体の製法
上、独立の気泡にならざるを得ないことに起因するもの
である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の脱
リン材では独立気泡を有しているために、脱リン効果が
不十分であった。特に、その内部ではアパタイトの吸着
を行うことができなかった。よって、脱リン材として
は、大型でかさばり、その容積効率が低いという課題を
有していた。
【0006】
【発明の目的】そこで、この発明の目的は、脱リン材と
しての容積効率を飛躍的に高めることである。また、廃
棄物量、処分費用を大幅に低減することを、その目的と
している。さらに、この発明は、脱リン材全体において
比較的均一な硬さにすることができることを、その目的
としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、珪酸質原料からなる粉体および石灰質原料からなる
粉体を用いて転動造粒する工程と、造粒後、これを高温
高圧養生することにより脱リン材を製造する工程とを含
む脱リン材の製造方法であって、上記脱リン材を製造す
る工程は、造粒した脱リン材を湿空中にて養生する工程
と、この後、オートクレーブ養生する工程とを備えた脱
リン材の製造方法である。 この珪酸質原料および石灰質
原料としては、珪石、珪藻土、珪酸白土、高炉スラグ、
フライアッシュ、セメント、石膏、生石灰などが好適で
ある。 オートクレーブ養生とは、主にコンクリート2次
製品に用いられる養生方法であり、飽和水蒸気の圧力と
熱の作用を併用する養生方法である。
【0008】求項2に記載の発明は、珪酸質原料から
なる粉体および石灰質原料からなる粉体とを混合し混合
材料を軟化する工程と、軟化した混合材料を中空パイプ
状に押し出し成形する工程と、押し出し成形後、これを
高温高圧養生することにより脱リン材を製造する工程と
を含む脱リン材の製造方法であって、上記脱リン材を製
造する工程は、押し出し成形された脱リン材を室温にて
養生する工程と、この後、オートクレーブ養生する工程
とを備えた脱リン材の製造方法である。粉体の押し出し
成形には、周知の押し出し成形機を使用することができ
る。
【0009】
【作用】請求項1〜請求項2に記載の発明に係る脱リン
材の製造方法では、珪酸質原料の粉末と石灰質原料の粉
末とを用いて、転動造粒または押し出し成形加工する。
転動造粒の場合、例えば直径が1〜15mm程度の球体
とする。また、押し出し成形の場合、例えば外径3〜2
0mm,内径1〜15mm,長さ0.3〜2m程度の中
空パイプとする。そして、この造粒体または成形体を湿
空中または室温にて養生する。さらに、これを高温高圧
養生する。例えばオートクレーブ中にて180℃,10
atmで養生する。この結果、略球形の珪酸カルシウム
水和物の脱 リン材が製造される。そして、この脱リン材
をカラムなどの容器に収容して使用する。 なお、略球形
の脱リン材を転動造粒した場合、どうしてもその中心部
より表面部の方が強度的に弱くなり、脱リン材全体とし
ての硬度が不均一となりやすい。これに対して、脱リン
材を中空パイプ形に押し出し成形した場合には、成形が
安定しているので、このような事態はほとんど起こら
ず、脱リン材の全体を均一的な硬度とすることができ
る。 この方法で製造された脱リン材は例えばカラムなど
の容器に収容され、この容器がリンを含む汚水中に投入
される。この脱リン材は略球形または中空パイプ形であ
り、全表面にアパタイトの析出サイトである珪酸カルシ
ウム水和物が成長している。このため、アパタイトの析
出サイトである珪酸カルシウム水和物とリン含有水との
接触面積が増大し、リンの吸着効率がきわめて高くなっ
ている。また、略球形とした場合には、脱リン材として
の取り扱い性が優れている。なお、この脱リン材は充填
床としても使用することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、まず図1〜図3に基づい
て、この発明に係る脱リン材および脱リン材の製造方法
の第1実施例を説明する。脱リン材の原料としては、以
下のものを用意する。珪酸質原料としては、珪石粉末を
使用する。石灰質原料としては、普通ポルトランドセメ
ントを使用する。これら粉末の粉末度は、それぞれ50
00cm/g、3200cm/gである。その割合
を重量比で43:57で混合する。そして、これらを混
合した原料を直径φ1.5mのパン型ペレタイザーを用
いて転動造粒した。パン内に原料を投入しながら、同時
に水を散布して造粒した。造粒時のパンの回転数と散水
量とは、造粒状況を観察しながら調節した。
【0011】 この結果、得られた直径1〜5mmの造粒
体について以下の養生を施した。すなわち、温度40
℃、湿度100%、10時間養生した。次いで、これを
ステンレス製の容器に入れ、水に浸して、気圧10at
m、180℃のオートクレーブ中で8時間養生した。養
生後、これを電子顕微鏡で観察した結果、表面にはカー
ドハウス状または板状に成長したトバモライトが析出し
ていることが確認された。図1の(A)は脱リン材1を
示している。その全表面がリンの吸着サイトとなる。こ
れに対して(B)に示す従来例の脱リン材2では気泡部
が吸着サイトとなるのみである。
【0012】 そして、図2に示す装置により、この脱リ
ン材1の性能を調べた。脱リン材1は、アクリル製カラ
ムに内装した。比較例として、特開昭62−18389
8号公報に記載されているものを上記カラムに充填して
その脱リン性能を調べた。この装置には、人工リン溶液
(KHPO ,10mg・P/リットル)を流し
た。人工リン液はカラム容積392mlに対して392
ml/時の速度で流した。溶液中のリン濃度を測定した
結果を図3に示す。この結果、この発明によれば、比較
例に対してより優れた脱リン性能を確認することができ
た。
【0013】 次に、図4および図5に基づいて、この発
明の第2実施例に係る脱リン材およびその製造方法を説
明する。脱リン材の原料としては、以下のものを用意す
る。珪酸質原料としては、珪石粉末を使用する。石灰質
原料としては、普通ポルトランドセメントを使用する。
増粘剤としては、メチルセルロースを使用する。これら
の珪石粉末および普通ポルトランドセメントの粉末度
は、それぞれ5000cm/g、3200cm/g
である。その割合を重量比で43:57で混合する。そ
して、これらの混合物100重量部に対して1重量部の
割合で増粘剤を混合した。
【0014】 混合した原料に水を22重量%加えて混練
した後、図5に示すような一般的な押し出し成形機によ
り中空パイプ状の成形体を得た(外径5mm,内径2m
m,長さ1m)。成形体は24時間、20℃の室内での
養生後、ステンレス容器に入れ、水に浸してオートクレ
ーブ養生を10気圧、180℃で8時間行った。養生
後、これを電子顕微鏡により観察したところ、外周面,
内周面および破断面とも、カードハウス状または板状に
成長したトバモライトが確認することができた。図4は
その中空パイプ状の脱リン材3を示している。その全表
面がリンの吸着サイトとなる。
【0015】 そして、図2に示す装置により、この脱リ
ン材3の性能を第1実施例のものと同様にして調べた。
溶液中のリン濃度を測定した結果は、図3の場合と略同
じになった。なお、図5において、10は押し出し成形
機本体、11は原料投入用のホッパ、12は駆動モー
タ、13はヒータ、14はスクリュー、15は口金、1
6はフォーミングダイ、17は冷却槽、18は引き取り
機、19は定寸自動カッタ、20は成形された中空パイ
プ状の成形体である。図5に示すように、ホッパ11か
ら押し出し成形機本体10へ投入された原料は、スクリ
ュー14により成形機本体11の出口側へ移送されなが
ら、ヒータ13の熱により溶融状態となる。そして、こ
の出口に装着された口金15から中空パイプ状に押し出
される。その後、この成形体は、引き取り機18の引っ
張り力にも助けられて、フォーミングダイ16を通過時
に形状のフォーミングが行われ、さらに冷却槽17の通
過時に所定温度まで冷やされて硬化し、その後、定寸自
動カッタ19により上記所定長さにカットされる。
【0016】
【発明の効果】この発明の脱リン材の製造方法によれ
ば、容積効率が高く、高性能の脱リン材を製造すること
ができる。脱リン材よれば、脱リン効果を高めることが
できる。特にその容積効率を高めることができる。
た、中空パイプ状の脱リン材を押し出し成形により製造
すれば、脱リン材全体において、比較的均一な硬さの良
質なものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る脱リン材を示す概念図である。
【図2】この発明の第1実施例に係る実験装置を示す図
である。
【図3】この発明の第1実施例に係る実験結果を示すグ
ラフである。
【図4】この発明の第2実施例に係る脱リン材を示す概
念図である。
【図5】この発明の第2実施例に係る脱リン材の押し出
し成形機を示す斜視図である。
【符号の説明】
1,3 脱リン材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂本 知彦 福岡県北九州市八幡西区洞南町1番1号 三菱マテリアル株式会社 セメント開 発センタ−内 (72)発明者 西川 邦彦 福岡県北九州市八幡西区洞南町1番1号 三菱マテリアル株式会社 セメント開 発センタ−内 (56)参考文献 特開 平10−1374(JP,A) 特開 昭62−183898(JP,A) 特開 昭49−122889(JP,A) 特開 平3−42096(JP,A) 特開 昭55−116616(JP,A) 特開 平7−16453(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 1/28 B01J 20/00 - 20/34 C02F 1/58

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 珪酸質原料からなる粉体および石灰質原
    料からなる粉体を用いて転動造粒する工程と、 造粒後、これを高温高圧養生することにより脱リン材を
    製造する工程とを含む脱リン材の製造方法であって、 上記脱リン材を製造する工程は、造粒した脱リン材を湿
    空中にて養生する工程と、この後、オートクレーブ養生
    する工程とを備えた脱リン材の製造方法。
  2. 【請求項2】 珪酸質原料からなる粉体および石灰質原
    料からなる粉体を混合した混合材料を軟化させる工程
    と、 この軟化した混合材料を中空パイプ状に押し出し成形す
    る工程と、 押し出し成形後、これを高温高圧養生することにより脱
    リン材を製造する工程とを含む脱リン材の製造方法であ
    って、 上記脱リン材を製造する工程は、押し出し成形された脱
    リン材を室温にて養生する工程と、この後、オートクレ
    ーブ養生する工程とを備えた脱リン材の製造方法。
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