JP2013086030A - ドロマイトスラッジの処理方法及び土質改良材 - Google Patents

ドロマイトスラッジの処理方法及び土質改良材 Download PDF

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Abstract

【課題】ドロマイトスラッジとしてドロマイトスラリー及びドロマイトケーキのいずれを処理することも可能であり、土質改良材用原料やセメント用原料等の工業原料を得ることが可能なドロマイトスラッジの処理方法と、この処理方法によって得られた生成物を含有する土質改良材とを提供する。
【解決手段】ドロマイトスラッジと硫酸とを混合して反応させ、硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを生成する反応工程と、前記硫酸カルシウムと前記硫酸マグネシウムとを分離する分離工程とを含む土質改良材用原料の製造方法。上記の製造方法によって製造された前記硫酸カルシウムと前記硫酸マグネシウムとを混合してなる土質改良材。
【選択図】なし

Description

本発明は、ドロマイトスラッジを有効利用するためのドロマイトスラッジの処理方法と、この処理方法によって得られた生成物を含有する土質改良材とに関する。
ドロマイトは、鉄鋼(フラックス)、ガラス、肥料などの他、コンクリート、道路用骨材等として広く使用されている。
このドロマイトを採掘して水洗する過程で、洗浄水中に微細なドロマイト粉体が混入したドロマイトスラリーが発生する。このドロマイトスラリーを脱水してなるドロマイトケーキは、毎年大量に発生しており、その大部分は埋立処分されている。これらドロマイトスラリーやドロマイトケーキのようなドロマイトスラッジは、埋立処分されることなく有効利用されることが望まれている。
一方、ドロマイトスラッジとは異なり、マグネシウム成分の含有量が少なくカルシウム成分を多く含有している石灰系汚泥ケーキは、土質改良材用原料やセメントの原料として有効利用されている。
例えば、石灰系汚泥ケーキに対して生石灰を混合して生成した汚泥石灰混合物を、加熱焼却して再生生石灰組成物を製造することが行われている(特許文献1、特許文献2)。この再生生石灰組成物は、土質安定化処理剤やセメントの原料として再利用することができる。
特開平6−015297号公報 特開2000−063829号公報
特許文献1,2の石灰系汚泥ケーキと同様に、ドロマイトスラッジも、生石灰と混合して加熱焼却することにより、土質改良剤の原料やセメントの原料として再利用することが考えられる。
しかしながら、このようにドロマイトスラッジを生石灰と混合して加熱焼却してなる生成物は、ドロマイトに由来するMg成分を多量に含んでいるため、土質改良剤やセメントの原料としての利用は困難である。また、特許文献1,2に記載された土質改良材の製造方法では、原料として石灰系汚泥ケーキを用いているため、石炭系汚泥スラリーを脱水して石灰系汚泥ケーキにする手間が必要となる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ドロマイトスラッジとしてドロマイトスラリー及びドロマイトケーキのいずれを処理することも可能であり、土質改良材用原料や石膏ボード用原料等の工業原料を得ることが可能なドロマイトスラッジの処理方法と、この処理方法によって得られた生成物を含有する土質改良材とを提供することを目的とする。
本発明者らは、ドロマイトスラッジを硫酸と反応させて硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを生成させることにより、これら硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを土質改良材用原料等の工業用原料として利用できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち本発明は以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1]ドロマイトスラッジと硫酸とを混合して反応させ、硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを生成する反応工程と、前記硫酸カルシウムと前記硫酸マグネシウムとを分離する分離工程とを含むドロマイトスラッジの処理方法。
[2]前記分離工程は、前記硫酸カルシウムを沈殿させて、前記硫酸カルシウムの沈殿物と前記硫酸マグネシウムの水溶液とを分離するものである[1]に記載のドロマイトスラッジの処理方法。
[3]前記反応工程は、前記ドロマイトスラッジ中の固形分100質量部に対する前記硫酸の配合量が30〜50質量部になるように、前記ドロマイトと前記硫酸とを混合して反応させ、前記硫酸カルシウム及び前記硫酸マグネシウムを生成するものである[1]又は[2]に記載のドロマイトスラッジの処理方法。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載のドロマイトスラッジの処理方法によって製造された前記硫酸カルシウムを含有する土質改良材。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載のドロマイトスラッジの処理方法によって製造された前記硫酸カルシウム及び前記硫酸マグネシウムを含有する土質改良材。
本発明のドロマイトスラッジの処理方法によると、ドロマイトスラッジの処理によって得られた硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを工業用原料として有効利用することができる。また、本発明の土質改良材は、土質改良効果に優れる。
実施例1〜4のCa塩のX線回折分析結果を示す図面である。 実施例1〜4のMg塩のX線回折分析結果を示す図面である。 実施例5〜7における、土質改良材の添加量と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
[ドロマイトスラッジの処理方法]
本発明に係るドロマイトスラッジの処理方法は、ドロマイトスラッジと硫酸とを混合して反応させ、硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを生成する反応工程と、前記硫酸カルシウムと前記硫酸マグネシウムとを分離する分離工程とを含むものである。
<ドロマイトスラッジ>
本発明において、ドロマイトとは、化学組成CaMg(CO32を有する鉱物と、このCaMg(CO32鉱物を主成分とする岩石との両方を意味する。
また、本発明において、ドロマイトスラッジとは、水中にドロマイトが混入したドロマイトスラリーと、固形状のドロマイトケーキとの両方を意味する。このドロマイトスラリーとしては、たとえば、採掘したドロマイトの水洗工程で生じる洗浄排水を用いることができる。また、ドロマイトケーキとしては、たとえば、ドロマイトスラリーを脱水して固形状にしたものを用いることができる。
<反応工程>
本工程では、ドロマイトスラッジと硫酸とを混合して反応させ、硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを生成する。
ドロマイトスラッジ中における固形分濃度は、5〜40質量%に調製することが好ましい。5質量%以上であると、ドロマイトと硫酸とを効率よく反応させることができ、また、脱水を迅速かつ簡単に行うことができる。40質量%以下であると、ドロマイトスラリーと硫酸との混合を良好に行うことができる。このドロマイトスラッジ中における固形分濃度は、より好ましくは7〜30質量%であり、更に好ましくは8〜20質量%である。
ドロマイトスラッジとしてドロマイトスラリーを用いる場合、脱水してドロマイトケーキにする手間を省略することができる。一方、ドロマイトスラッジとしてドロマイトケーキを用いる場合、脱水されている分だけ、ドロマイトケーキの保管スペースを省スペース化することができる。なお、処理時には、水を添加して所望の固形分濃度に調製することができる。また、ドロマイトスラッジとして、ドロマイトスラリー又はドロマイトスラリーとドロマイトケーキの混合物を用いてもよい。
化学量論的には、ドロマイト鉱物(CaMg(CO32、分子量184.4)と硫酸(分子量:98.1)とのモル比が1:2になるようにこれらを混合することにより、CaMg(CO32を過不足なく硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムとすることができる。しかし、硫酸を化学量論比よりも過剰として、より確実にCaMg(CO32を上記のとおり反応させてもよく、また、硫酸を化学量論比よりも少なくして、工業用原料として問題が生じない程度にCaMg(CO32の一部を残存させてもよい。
上記観点から、ドロマイトスラッジの固形分100質量部に対する硫酸の含有量は、好ましくは25〜120質量部である。この硫酸の含有量が25質量部以上であると、後述する分離工程で分離された硫酸カルシウム中や硫酸マグネシウム中に未反応ドロマイトが不純物として混入する量が少なくなり、これら硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを工業用原料として好適に利用することができる(たとえば、土質改良材用原料として用いた場合、土壌の固化効果に優れたものとなる)。この硫酸の含有量が120質量部以下であると、未反応硫酸濃度が低くなり、後工程での取扱いが容易であると共に、硫酸使用量が少なく経済的である。この硫酸の含有量は、より好ましくは50〜120質量部、更に好ましくは75〜120質量部、特に好ましくは95〜110質量部である。
上記反応温度は、10〜80℃であることが好ましい。10℃以上であると、反応速度が高くなり、80℃以下であると、反応時の管理が容易である。この反応温度は、より好ましくは20〜60℃であり、更に好ましくは20〜40℃である。
上記反応時間は、30〜60分であることが好ましい。
<分離工程>
本工程では、前記反応工程で得られた硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムとを分離する。
上記反応工程後においては、これら硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを含む生成液中において、硫酸カルシウムは固体として存在し、硫酸マグネシウムは水溶液として存在している。
上記の硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムとの分離方法には特に制限はなく、例えば、生成液を濾材に通すことにより分離(濾別)してもよく、生成液を貯留槽内に静置し、硫酸カルシウムを沈殿させて分離(沈降分離)してもよい。
分離した硫酸カルシウムは、主に二水石膏(CaSO4・2H2O)として存在する。この主に二水石膏からなる硫酸カルシウムは、石膏ボードの原料や後述するとおり土質改良材の原料として用いることができる。
また、分離した硫酸マグネシウムは、主に水和物として存在する。この主に水和物からなる硫酸マグネシウムも、土質改良材の原料として用いることができる。
<半水石膏生成工程>
前記分離工程で分離された硫酸カルシウムは、更に加熱処理して半水石膏(CaSO4・0.5H2O)を生成する半水石膏生成工程を経ることが好ましい。
すなわち、前述のとおり、分離工程で分離された硫酸カルシウムは、主に二水石膏(CaSO4・2H2O)として存在する。この二水石膏を加熱処理すると半水石膏(CaSO4・0.5H2O)となる。この半水石膏を土質改良材用原料として用いた場合、この半水石膏が水と反応して二水石膏として硬化するため、これら半水石膏の吸水作用及び硬化作用により、土質改良効果に一層優れたものとなる。
上記の加熱処理における加熱温度は、好ましくは120〜200℃である。120℃以上であると、二水石膏を短時間で効率よく半水石膏に変化させることができる。200℃以下であると、加熱処理で消費されるエネルギー量を少なくすることができる。この観点から、加熱温度は、より好ましくは130〜180℃であり、更に好ましくは140〜170℃である。
上記の加熱処理における加熱時間は、好ましくは12〜24時間である。
<硫酸マグネシウム無水物生成工程>
前記分離工程で分離された硫酸マグネシウムの水溶液は、加熱処理して硫酸マグネシウム無水物(MgSO4)を生成する硫酸マグネシウム無水物生成工程を経ることが好ましい。
すなわち、前述のとおり、分離工程で分離された硫酸マグネシウムは、主に水和物(特に1水和物)として存在する。この硫酸マグネシウム水和物を加熱処理すると硫酸マグネシウム無水物(MgSO4)となる。
この硫酸マグネシウム無水物を石灰系土質改良材とともに使用すると、次の反応が生じると考えられる。
Ca(OH)2+MgSO4+2H2O→CaSO4・2H2O+Mg(OH)2 (1)
この反応により、アルカリ性のCa(OH)2が消費されて土壌のpHの上昇が抑制されることにより、中性域での土質改良処理を行うことが可能となる。また、このように無水硫酸マグネシウムには吸湿性があり、また、水と反応すると発熱するため、土中の水分を蒸発させ、固化材として機能する。
このように、本工程を実施することにより、前記の硫酸カルシウムの他に、硫酸マグネシウムも同時に再利用することが可能となる。
上記の加熱処理における加熱温度は、好ましくは150〜350℃である。150℃以上であると、硫酸マグネシウム無水物を短時間で効率よく生成することができる。350℃以下であると、加熱処理で消費されるエネルギー量を少なくすることができる。この観点から、加熱温度は、より好ましくは200〜320℃であり、更に好ましくは250〜310℃である。
上記の加熱処理における加熱時間は、好ましくは12〜24時間である。
[土質改良材]
本発明に係る土質改良材は、前記のドロマイトスラッジの処理方法によって製造された前記硫酸カルシウムを含有するものである。
<硫酸カルシウム>
上記の硫酸カルシウムを土質改良材用原料として用いた場合、硫酸カルシウム中の半水石膏が水と反応して二水石膏として硬化するため、これら半水石膏の吸水作用及び硬化作用により、土質改良効果に優れる。特に、この半水石膏は、セメント系や石灰系の土質改良材のように土壌のpHを上げることがないため、環境や植生にも適した低塩基性での土質改良が可能である。また、固化速度が速いため、含水比が高い土壌を短時間で搬出可能な状態に改良することができる。
この硫酸カルシウム中における半水石膏の含有量は、上記の土質改良効果の観点から、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
土質改良材中における半水石膏の含有量は、好ましくは40〜95質量%である。40質量%以上であると、上記の半水石膏の吸水作用及び硬化作用により、土質改良効果に優れたものとなる。95質量%以下であると、後述する他の成分を十分に添加することで土質改良材の添加量を抑制することが可能となる。この観点から、この半水石膏の含有量は、より好ましくは50〜90質量%であり、更に好ましくは60〜85質量%であり、特に好ましくは70〜80質量%である。
<アルカリ材>
上記の土質改良材は、更にアルカリ材を含有することが好ましい。アルカリ材としては、生石灰、軽焼ドロマイト、消石灰等が好適に用いられる。これらアルカリ材を用いることにより、より少量の土質改良材の添加によって土質を良好に改良することができる。
ここで、軽焼ドロマイトとしては、JIS R9001に規定する特号または1号の軽焼ドロマイトが好適であり、生石灰としては、JIS R9001に規定する特号、1号又は2号の生石灰が好適であり、消石灰としては、JIS R9001に規定する特号、1号又は2号の消石灰が好適である。
生石灰を用いた場合、次のようにして土質が改良されるものと推測される。すなわち、生石灰は土中で水和されて消石灰となり、このときに土中の水分が蒸発する。また、生石灰や消石灰が土中のシリカやアルミナと反応してケイ酸カルシウムやエトリンガイト等が生成すること等(ポゾラン反応)により、土粒子を架橋する。これらの効果により、土質が改良されると考えられる。
軽焼ドロマイトを用いた場合、軽焼ドロマイト中のCaOが生石灰と同様の作用を果たすことにより、土質が改良されるものと推測される。また、軽焼ドロマイトを用いた場合、土中のpHの上昇を良好に抑制することができる。その理由は、軽焼ドロマイト中のMgOの水和によって生成した水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が、生石灰や消石灰に起因するCa(OH)2よりも低塩基性であるためと考えられる。このpH上昇抑制効果を有する点において、軽焼ドロマイトは他のアルカリ材よりも好ましい。
消石灰を用いた場合も、ポゾラン反応等によって土質が改良されると考えられる。
土質改良材中におけるアルカリ材の含有量は、好ましくは1〜30質量%である。1質量%以上であると、土質改良材がより土質改良効果に優れたものとなる。30質量%以下であると、土質のpHが高くなり過ぎることが防止されると共に、相対的に前記の硫酸カルシウムの含有量が多くなり、ドロマイトスラッジの有効利用が図られる。この観点から、このアルカリ材の含有量は、より好ましくは3〜25質量%であり、更に好ましくは5〜20質量%であり、特に好ましくは10〜15質量%である。
<硫酸マグネシウム>
上記の土質改良材は、更に前記のドロマイトスラッジの処理方法によって製造された硫酸マグネシウムを含有することが好ましい。この硫酸マグネシウムを含有する場合、pHが高くなることを抑制することができる。その理由は、この硫酸マグネシウム中の硫酸マグネシウム無水物が、上記のアルカリ材等に由来する消石灰と前記の化学反応式(1)にしたがって反応することにより、pH上昇の原因となる消石灰が消費されるためであると考えられる。
土質改良材中における硫酸マグネシウム無水物の含有量は、好ましくは3〜50質量%である。3質量%以上であると、土中のpHの上昇を良好に抑制することができる。50質量%以下であると、相対的に前記の硫酸カルシウム(半水石膏)やアルカリ材の使用量を多くすることができ、これらによる効果が良好に奏される。この観点から、この硫酸マグネシウム無水物の含有量は、より好ましくは5〜40質量%であり、更に好ましくは7から30質量%であり、特に好ましくは10〜20質量%である。
なお、硫酸マグネシウム無水物としては、ドロマイトスラッジの有効利用という観点からは、上記のとおりドロマイトスラッジの処理方法によって製造された硫酸マグネシウム無水物が好ましいが、これに限定されることはなく、市販の硫酸マグネシウム無水物を用いてもよい。
<その他の成分>
上記の土質改良材には、通常用いられる各種の添加剤が含まれていてもよい。例えば、フライアッシュ、ベントナイト等を吸水剤として、アルミニウムミョウバン、硫酸アルミニウム等のアルミニウム化合物等を固化促進剤として添加してもよく、汚泥と均一に固化するように、シリカバルーン、コロイダルシリカ、シラス、シラスバルーン等のケイ素化合物を添加することもできる。また、有機系吸収剤等と併用してもよい。
[土質改良方法]
本発明の土質改良方法は、上記の土質改良材を土壌に添加するものである。
この土質改良材の土壌への添加量は、好ましくは50〜400kg/m3である。土質改良材の添加量が50kg/m3以上であると、土壌の強度を十分に向上させることができる。土質改良材の添加量が400kg/m3以下であると、土壌中のpHの上昇が抑制されて低塩基性に維持されるとともに、土質改良材の使用量が低減され、また土質改良材を土壌へ添加してソイルミキサー等で混合する場合の手間及びコストが低減される。この観点から、土質改良材の添加量は、より好ましくは60〜200kg/m3であり、更に好ましくは70〜150kg/m3であり、特に好ましくは80〜100kg/m3である。
土質改良材の添加後における土質改良材は、環境負荷を低減し、植生に適した土壌にするという観点からは、pHが11未満であることが好ましく、10.5未満であることがより好ましく、10未満であることが更に好ましい。
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
なお、本実施例及び比較例では、ドロマイトスラッジとして、栃木県葛生産ドロマイト原石の水洗工程で生じた水洗排水(固形分80質量%、CaO:36質量%、MgO:13質量%)を用いた。
[実施例1〜4]
実施例1〜4では、次に詳細に説明するとおり、ドロマイトスラッジに硫酸を添加して硫酸カルシウム(Ca塩)及び硫酸マグネシウム(Mg塩)を製造し、これらを濾別して粉末X線回折分析を行った。
<実施例1>
(ドロマイトスラッジの処理)
ドロマイトスラッジとして、ドロマイトケーキ122g(固形分として100g、固形分:82質量%、水分:18質量%)に純水978gを加えて固形分濃度9質量%に調整したものを用意した。このドロマイトスラッジ(合計1100g)に対して濃硫酸(濃度:98質量%)100g(上記固形分100質量部に対する硫酸の配合量98質量部)を20分間かけて滴下した後、30分間撹拌を継続し、ドロマイトスラッジと硫酸とを反応させた。次いで、この反応液を濾材(アドバンテック株式会社製、「商品名:、定量濾紙、材料:セルロース)を用いて濾別した。
濾別した固形物を、140℃で24時間乾燥し、生成物(以下、Ca塩と称する)を得た。また、濾別した水溶液を、150℃で24時間乾燥し、生成物(以下、Mg塩と称する)を得た。
(粉末X線回折分析)
得られたCa塩及びMg塩について、粉末X線回折装置(理学電機株式会社製、RINT2500VPC、光源:Cu−Kα、管電圧:40kV、管電流:120mA)を用いて、走査間隔0.01°、走査速度10°/minの条件で、室温にて粉末X線回折測定を行った。Ca塩の測定結果を図1に示し、Mg塩の測定結果を図2に示す。
<実施例2〜4>
実施例2〜4では、ドロマイトスラッジの固形分100質量部に対する硫酸の配合量を、それぞれ、75質量部、50質量部、及び25質量部、としたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を図1及び図2に示す。
<結果>
(Ca塩について)
図1に示すとおり、実施例1では、半水石膏の単一相であった。実施例2〜4では、半水石膏と共に原料であるドロマイトが混在していた。また、硫酸の添加量の増加に伴って、半水石膏のX線ピーク強度が大きくなる傾向を示した。
(Mg塩について)
図2に示すとおり、すべての実施例(実施例1〜4)で、主な生成物は硫酸マグネシウム(一水和物)であった。また、石膏(無水)が混在していた。これは沈殿物中の石膏が溶解したためと思われる。また、Ca塩の場合と同様に、硫酸の添加量の増加に伴って、硫酸マグネシウム(一水和物)のピーク強度が増加する傾向を示した。
[実施例5〜7]
実施例5〜7では、次に詳細に説明するとおり、実施例1〜3で得られたCa塩のみからなる土質改良材を用い、対象土に添加して土質を評価した。
<試料の調製及び性状>
(対象土)
土質改良を行う対象土として、三峰ローム(栃木県栃木市、湿潤密度:1663kg/cm3、含水比:60.7質量%、一軸圧縮強度:55kN/m2、土縣濁液pH:7.80)を用いた。
(Ca塩)
Ca塩として、実施例1〜3で得たものを用いた。
<実施例5>
土質改良材として、実施例1で得られたCa塩を単独で用いた。対象土に対する土質改良材の添加量が図3に示すとおりとなるように、対象土中に土質改良材を添加した。
このように土質改良材の添加量を異ならせた各対象土について、次の操作を行って円柱状の供試体を作製した。すなわち、対象土300gを4等分し、4回に分けて円筒形モールド(内径:50mm、高さ:100mm)内に詰めて供試体とした。その際、1.5kgのランマーを使用し、1回目の対象土を10回締め固めることにより第1層とし、その上から2回目の対象土を入れて25回締め固めることにより第2層とし、更にその上から3回目の対象土を入れて25回締め固めることにより第3層とし、その上から4回目の対象土を入れて40回締め固めることにより第4層とした。
各供試体は20℃、80%RHの恒温恒湿室で7日間気中養生した。
養生後の各供試体について、JIS A1216に準じて一軸圧縮強度を測定した。その結果を図3に示す。また、地盤工学会JGS−0211に従って土懸濁液のpHを測定した。
<実施例6,7>
実施例6,7では、それぞれ、土質改良材として実施例2,3で得られたCa塩を用いたこと、及び対象土に対する土質改良材の添加量を図3に示すとおりとしたこと以外は実施例5と同様の操作を行った。その結果を図3に示す。
<結果>
図3に示すとおり、実施例5(実施例1のCa塩を使用)及び実施例6(実施例2のCa塩を使用)では、土質改良材(Ca塩)の添加によって土の一軸圧縮強度が向上した。このことから、ドロマイトスラッジから得られた実施例1,2のCa塩が、土質改良材として有用であることがわかった。また、実施例7(実施例3のCa塩を使用)では、Ca塩の添加量が100kg/m3以下では無添加とほぼ同等の効果しか表れなかった。しかし、添加量を200kg/m3以上にすると、Ca塩の添加によって土の一軸圧縮強度が向上した。このことにより、ドロマイトスラッジから得られた実施例3のCa塩も、土質改良材として有用であることがわかった。
また、実施例5〜7の総てにおいて、Ca塩の添加量の増加に伴い、一軸圧縮強度が高くなる傾向を示した。更に、実施例5,6,7の順に一軸圧縮強度の向上効果に優れていることから、Ca塩中の半水石膏量が多いほど、一軸圧縮強度の向上効果に優れることがわかった。
更に、300kN/m2以上の圧縮強度を得るためには、実施例5では400kg/m3以上、実施例6では500kg/m3以上、実施例7では950kg/m3以上の添加量が必要であることがわかった。
なお、養生後のpHは、実施例5〜7の総てにおいて7.5程度であった。
[実施例8〜11]
実施例8〜11では、次に説明するとおり、実施例1で得られたCa塩の他に、硫酸マグネシウム無水物及び軽焼ドロマイトを添加してなる土質改良材を用い、対象土に添加して土質を評価した。
<試料の調製及び性状>
(対象土)
実施例5〜7と同様の対象土を用いた。
(半水石膏)
図1に示す通り、実施例1で得られたCa塩は半水石膏のピークしか検出されなったため、実施例1のCa塩を半水石膏として用いた。
(硫酸マグネシウム無水物)
硫酸マグネシウム無水物として、実施例1で得たMg塩を、更に300℃で3時間熱処理したものを用いた。この処理によって得た硫酸マグネシウムは、上記の条件で粉末X線回折分析により硫酸マグネシウムの単一相であることを確認した。
(軽焼ドロマイト)
栃木県葛生産の焼成ドロマイトを粉砕・分級し、0.21mmのフルイを通過したものを使用した。
<実施例8〜11>
土質改良材として、上記の半水石膏、硫酸マグネシウム、及び軽焼ドロマイトを表1に示す割合で配合したものを用いたこと、及び対象土に対する土質改良材の添加量を表1に示すとおり200kg/m3としたこと、の2点以外は実施例5と同様の操作を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2013086030
<結果>
実施例5と実施例8〜11との比較から明らかなとおり、同量の土質改良材(200kg/m3)を添加した場合、半水石膏、硫酸マグネシウム無水物及び軽焼ドロマイトの3種を含む土質改良材(実施例8〜11)の方が、半水石膏(Ca塩)のみからなる土質改良剤(実施例5)よりも一軸圧縮強度が向上した。
表1に示すとおり、実施例8〜10では土のpHが10未満に抑制されており、特に実施例9では一軸圧縮強度が300kN/m2に近い値となり、とりわけ実施例8では一軸圧縮強度が300kN/m2を超える値となった。
以上の結果に示すとおり、ドロマイトスラッジから、半水石膏と硫酸マグネシウム無水物とを分離回収することができる。また、各分離回収した半水石膏及び硫酸マグネシウム無水物は、中性域での固化処理可能な土質改良材として利用することができる。

Claims (5)

  1. ドロマイトスラッジと硫酸とを混合して反応させ、硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウムを生成する反応工程と、
    前記硫酸カルシウムと前記硫酸マグネシウムとを分離する分離工程と
    を含むドロマイトスラッジの処理方法。
  2. 前記分離工程は、前記硫酸カルシウムを沈殿させて、前記硫酸カルシウムの沈殿物と前記硫酸マグネシウムの水溶液とを分離するものである請求項1に記載のドロマイトスラッジの処理方法。
  3. 前記反応工程は、前記ドロマイトスラッジ中の固形分100質量部に対する前記硫酸の配合量が25〜120質量部になるように、前記ドロマイトと前記硫酸とを混合して反応させ、前記硫酸カルシウム及び前記硫酸マグネシウムを生成するものである請求項1又は2に記載のドロマイトスラッジの処理方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のドロマイトスラッジの処理方法によって製造された前記硫酸カルシウムを含有する土質改良材。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のドロマイトスラッジの処理方法によって製造された前記硫酸カルシウム及び前記硫酸マグネシウムを含有する土質改良材。
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