JP2007214106A - 電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】外力に押し潰された場合に、より確実に電極間を短絡させることができる、安全性の向上した電池を提供する。
【解決手段】中空直方体形状の電池缶11の内部に、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層し、渦巻き状に巻いた巻回構造を有する偏平な電池素子20が収納されている。電池素子20と電池缶11との間の隙間に、導電性の短絡部材30が設けられている。外部からの力で押し潰されて電池缶11が変形した場合に、切れ目31が電池素子20に食い込み、突き刺さることにより正極21と負極22とを確実に短絡させる。短絡部材30は管状でもよいし板状でもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、電池缶の内部に電池素子を収容した電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として用いられている電池、特に二次電池はキーデバイスとして、エネルギー密度の向上を図る研究開発が活発に進められている。中でも、非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるので、その改良に関する検討が各方面で行われている。
リチウムイオン二次電池には様々な形状のものが開発されているが、その一つに、正極と負極とをセパレータを間にして積層して渦巻き状に巻き、その巻回中心に金属または樹脂材料よりなる円筒形のセンターピンを挿入したものがある(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
図33は、従来のセンターピンの一例を表したものである。このセンターピンは、例えば金属よりなる円筒管状の本体130の軸方向に切れ目131を有している。電池に外力が加わると、本体130が押し潰され、その結果切れ目131の縁が外側に開き、その開いた部分がセパレータを貫通して正極と負極との間を短絡させる。これにより、電池反応を阻止して、発電機能を安全に喪失させようとするものである。
特開平4−332481号公報 特開平11−204140号公報 特開2001−229905号公報
しかしながら、上述の従来構造のセンターピンを用いた二次電池では、外力により押し潰された場合の切れ目部分での変形が十分ではなく、正極と負極とを確実に短絡させることができないという問題があり、より確実に電極間を短絡させて安全性を確保するための有効な手段が望まれている。
また、直方体形状の電池缶を用いたいわゆる角型電池では、正極と負極とを渦巻き状に巻いたのちに偏平な形状に成形した電池素子を用いており、このような偏平な電池素子の巻回中心に上述した従来の円筒型のセンターピンを挿入することは難しかった。
更に、大型電池の場合には、外力により押し潰されたときに、巻回中心に設けられたセンターピンによる短絡だけでは十分な発電抑止効果が得られないという問題もあった。
なお、ちなみに、特許文献3では、電池缶の閉鎖端面と電池素子の底面との間にステンレス鋼などの金属よりなる有孔板を配置し、この有孔板の中心および外周にガス通過孔を設けることによりガスを安全弁側に導くことが記載されている。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、外力に押し潰された場合に、より確実に電極間を短絡させることができる、安全性の向上した電池を提供することにある。
本発明による電池は、正極および負極を有する電池素子と、電池素子を収容する電池缶と、電池素子と電池缶との間の隙間に設けられ、電池缶の変形時に電池素子に突き刺さることが可能な導電性の短絡部材とを備えたものである。
本発明による電池では、電池素子と電池缶との間の隙間に導電性の短絡部材が設けられているので、外部から電池に力がかかった場合、電池缶が変形すると、短絡部材が電池素子に押しつけられて突き刺さり、セパレータを貫通することにより正極と負極とが確実に短絡される。
特に、電池素子を、帯状の正極集電体の面上に正極活物質層を有する正極と、帯状の負極集電体の面上に負極活物質層を有する負極とをセパレータを間にして積層し、巻回した構成とし、かつ、正極に、正極集電体の巻回外周側の端部に、両面に正極活物質層が存在しない正極露出領域を設ける一方、負極に、負極集電体の巻回外周側の端部に、両面に負極活物質層が存在しない負極露出領域を設ける構成とした場合には、抵抗値の低い正極集電体と負極集電体の露出領域同士が直接に短絡されることとなり、抵抗値の高い正極活物質層を介しての短絡が生ずることがなく、正極活物質層での昇温が抑制される。
本発明の電池によれば、電池素子と電池缶との間の隙間に、電池缶の変形時に電池素子に突き刺さることが可能な導電性の短絡部材を設けたので、外部からの力で押し潰されたり折れたりした場合において正極と負極とを確実に短絡させることができ、安全性が向上する。とりわけ円筒形のセンターピンを用いることのできない角型電池や、発熱量の大きい大型電池の場合に好適であり、高い安全性を得ることができる。
特に、負極が、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む負極活物質を含む場合には、電池のエネルギー密度が大きく、より高い安全性が求められるので、より高い効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図において各構成要素は本発明が理解できる程度の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示したものであり、実寸とは異なっている。
(第1の実施の形態)
図1および図2は本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる角型といわれるものであり、ほぼ中空直方体形状の電池缶11の内部に、偏平な電池素子20を有している。
電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、負極端子としての機能も有している。この電池缶11は、一端部が閉鎖され他端部が開放されており、開放端部に絶縁板12および電池蓋13が取り付けられることにより電池缶11の内部が密閉されている。絶縁板12は、ポリプロピレンなどにより構成され、電池素子20の上に巻回周面に対して垂直に配置されている。電池蓋13は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成され、電池缶11と共に負極端子としての機能も有している。電池蓋13の外側には、正極端子となる端子板14が配置されている。また、電池蓋13の中央付近には貫通孔が設けられ、この貫通孔に、端子板14に電気的に接続された正極ピン15が挿入されている。端子板14と電池蓋13との間は絶縁ケース16により電気的に絶縁され、正極ピン15と電池蓋13との間はガスケット17により電気的に絶縁されている。絶縁ケース16は、例えばポリブチレンテレフタレートにより構成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
電池蓋13の周縁付近には開裂弁18および電解液注入孔19が設けられている。開裂弁18は、電池蓋13と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合に開裂して内圧の上昇を抑えるようになっている。電解液注入孔19は、例えばステンレス鋼球よりなる封止部材19Aにより塞がれている。
電池素子20は、正極21と負極22とをセパレータ23を間にして積層し、渦巻き状に巻回したものであり、電池缶11の形状に合わせて偏平な形状に成形されている。電池素子20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード24が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード25が接続されている。正極リード24は正極ピン15の下端に溶接されることにより端子板14と電気的に接続されており、負極リード25は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
図3は図1に示した正極21の巻回前の断面構成を表すものである。この正極21は、帯状の正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bを設けたものである。具体的には、正極集電体21Aの外周面側および内周面側に正極活物質層21Bが存在する正極被覆領域21Cを有している。加えて、この正極21では、巻回中心側および巻回外周側の端部が正極露出領域21D、すなわち、正極集電体21Aの両面とも正極活物質層21Bが存在せずに露出している領域となっている。
正極集電体21Aは、例えば、厚みが5μm〜50μm程度であり、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出可能な正極材料としては、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 )あるいは酸化バナジウム(V2 5 )などのリチウムを含有しない金属硫化物,金属セレン化物あるいは金属酸化物など、またはリチウムを含有するリチウム含有化合物が挙げられる。
中でも、リチウム含有化合物は、高電圧および高エネルギー密度を得ることができるものがあるので好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、またはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が挙げられ、特にコバルト(Co),ニッケルおよびマンガン(Mn)のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧を得ることができるからである。その化学式は、例えば、Lix MIO2 あるいはLiy MIIPO4 で表される。式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物の具体例としては、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz 2 (z<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 4 )などが挙げられる。中でも、ニッケルを含む複合酸化物が好ましい。高い容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性も得ることができるからである。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物の具体例としては、例えばリチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-v Mnv PO4 (v<1))が挙げられる。
図4は、負極22の構成を表したものである。この負極22は、帯状の負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを設けたものである。具体的には、負極集電体22Aの外周面側および内周面側に負極活物質層22Bが存在する負極被覆領域22Cと、巻回中心側および巻回外周側の端部に、負極集電体22Aの両面とも負極活物質層22Bが存在せずに露出している負極露出領域22Dとを有している。
負極集電体22Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。この負極集電体22Aの厚みは、例えば5μm〜50μmである。
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質を含んでおり、必要に応じて導電材および結着剤などの他の材料を含んでいてもよい。負極活物質としては、例えば、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む負極材料が挙げられる。このような負極材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えばリチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg),ホウ素(B),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In),ケイ素,ゲルマニウム(Ge),スズ,鉛(Pb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),銀(Ag),亜鉛(Zn),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などが挙げられる。
中でも、この負極材料としては、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。具体的には、例えば、ケイ素の単体,合金,あるいは化合物、またはスズの単体,合金,あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅,鉄(Fe),コバルト(Co),マンガン(Mn),亜鉛(Zn),インジウム(In),銀(Ag),チタン(Ti),ゲルマニウム(Ge),ビスマス(Bi),アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
中でも、この負極材料としては、スズと、コバルトと、炭素とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素,鉄,ニッケル,クロム,インジウム,ニオブ(Nb),ゲルマニウム,チタン,モリブデン(Mo),アルミニウム(Al),リン(P),ガリウム(Ga)またはビスマスが好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
なお、このCoSnC含有材料は、スズと、コバルトと、炭素とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このCoSnC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズなどが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
負極活物質としては、また、天然黒鉛,人造黒鉛,難黒鉛化炭素あるいは易黒鉛化炭素などの炭素材料を用いてもよい。炭素材料を用いれば優れたサイクル特性を得ることができるので好ましい。また、負極活物質としては、リチウム金属も挙げられる。負極活物質はこれらの1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
図1に示したセパレータ23は、例えばポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、例えば、溶媒と、電解質塩であるリチウム塩とを含んで構成されている。溶媒は、電解質塩を溶解し解離させるものである。溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1, 2−ジメトキシエタン、1, 2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1, 3−ジオキソラン、4メチル1, 3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルなどが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
リチウム塩としては、例えば、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 5 4 ,CH3 SO3 Li,CF3 SO3 Li,LiClあるいはLiBrが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
更に、本実施の形態では、電池素子20と電池缶11との間の隙間に、導電性の短絡部材30が設けられている。この短絡部材30は、図5に示したように、薄い帯状の板を丸めて管状に成形したものであり、長手方向の一方の端部から他方の端部にかけて切れ目31を有し、外部からの力で電池が押し潰されたり折れたりして電池缶11が変形した場合において切れ目31が電池素子20に食い込み、突き刺さることが可能である。これにより、この電池では、正極21と負極22とを確実に短絡させることができ、安全性を向上させることができるようになっている。
特に、負極22が、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む負極活物質を含む場合には、電池のエネルギー密度が大きく、より高い安全性が求められるので、より高い効果を得ることができる。
短絡部材30は、円筒状のほか、図6に示したような電池缶11の内壁または電池素子20の外周に合わせた断面多角形(例えば、三角形)の筒状でもよい。短絡部材30の両端には、後述する製造工程において電池素子20と電池缶11との間の隙間に挿入しやすくするため傾斜部30Aが設けられている。短絡部材30の寸法は、二次電池の寸法により異なるが、例えば、直径または一辺が3.0mm程度、長さが2.5cm以上8.0cm以下であることが好ましい。
短絡部材30の切れ目31は、例えば、後述する製造工程において薄い帯状の板を管状に成形して短絡部材30を作製する際に、対向する長辺の間に隙間をあけることにより設けられたものである。切れ目31の幅は、例えば0.5mmである。
なお、短絡部材30の材質、厚みは、通常時は所定の強度を保持し、一方、外力により電池が押し潰された場合にはそれと共に潰れ、または折れる程度のものとする。具体的には、短絡部材30の構成材料として、例えばステンレス鋼が挙げられる。短絡部材30の厚みは、例えば0.05mm以上5mm以下であることが好ましい。0.05mm未満では強度が弱くなるおそれがあり、5mmよりも厚いと管状に成形することが難しくなってしまうからである。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aにドクタブレードあるいはバーコーターなどを用いて均一に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
次いで、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aにドクタブレードあるいはバーコーターなどを用いて均一に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機により圧縮成型して負極合剤層22Bを形成し、負極22を作製する。ロールプレス機は加熱して用いてもよい。また、目的の物性値になるまで複数回圧縮成型してもよい。更に、ロールプレス機以外のプレス機を用いてもよい。
続いて、正極集電体21Aに正極リード24を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード25を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を間にして積層し図3および図4に示した巻回方向に多数回巻回したのち偏平な形状に成形し、電池素子20を作製する。
一方、例えばステンレス鋼よりなる薄い帯状の板を用意し、この板を図5または図6に示したような筒状に成形することにより短絡部材30を形成し、両端にテーパーをつけて傾斜部30Aを設ける。
そののち、電池素子20を電池缶11の内部に収容し、短絡部材30を電池素子20と電池缶11との間の隙間に挿入する。続いて、電池素子20の上に絶縁板12を配置し、負極リード25を電池缶11に溶接すると共に、正極リード24を正極ピン15の下端に溶接して、電池缶11の開放端部に電池蓋13をレーザ溶接により固定する。そののち、電解液を電解液注入孔19から電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させたのち、電解液注入孔19を封止部材19Aで塞ぐ。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。そして、この二次電池では、電池素子20と電池缶11との間の隙間に導電性の短絡部材30が設けられているので、外力が加わることにより電池缶11が変形した場合、短絡部材30も押し潰され、または折れて、図7に示したように、切れ目31が電池素子20に食い込み、セパレータ23を貫通することにより、正極21と負極22とが確実に短絡する。
更に、この二次電池では、正極21の巻回外周側に両面とも正極活物質層21Bの存在しない正極露出領域21Dが設けられると共に、負極22の巻回外周側にも両面とも負極活物質層22Bの存在しない負極露出領域22Dが設けられているので、短絡部材30が電池素子20に突き刺さり、セパレータ23を貫通すると比較的抵抗値の低い正極集電体21Aと負極集電体22Aとの間が直接短絡する。すなわち、本実施の形態では、正極21の正極露出領域21Dと負極22の負極露出領域22Dとの間が短絡部材30により短絡し、抵抗値の高い正極活物質層21Bを介して短絡することがなくなり、正極活物質層21Bでの昇温が抑制される。
このように本実施の形態では、電池素子20と電池缶11との間の隙間に導電性の短絡部材30を設けたので、外力が加わって電池缶11が変形した場合に、短絡部材30が電池素子20に突き刺さり、正極21と負極22との間を確実に短絡させることができる。とりわけ円筒形のセンターピンを用いることのできない角型電池や、発熱量の大きい大型電池の場合に好適であり、高い安全性を得ることができる。
また、電池素子20の特に巻回外周側に、正極21では、両面とも正極活物質層21Bの存在しない正極露出領域21D、また、負極22では、両面とも負極活物質層22Bの存在しない正極露出領域22Dが設けられているので、短絡部材30がセパレータ23を貫通すると比較的抵抗値の低い正極集電体21Aと負極集電体22Aとの間が直接短絡する。よって、正極活物質層21Bの昇温を抑えつつ、正極21と負極22との間を確実に短絡させることができ、安全性が向上する。
特に、負極22が、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む負極活物質を含むようにした場合には、電池のエネルギー密度が大きく、より高い安全性が求められるので、より高い効果を得ることができる。
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る二次電池の断面構成を表したものである。この二次電池は、短絡部材30が板状であることを除いては、第1の実施の形態と同様の構成を有している。よって、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
短絡部材30は、例えば、電池缶11の内壁または電池素子20の外周に沿って配置されていることが好ましい。
この二次電池は、電池素子20を電池缶11に収容したのち、両者の間の隙間に、電池缶11の内壁または電池素子20の外周に沿う形状に予め成形しておいた板状の短絡部材30を挿入することを除いては、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
また、この二次電池は、電池缶11の内壁または電池素子20の外周に、それらに沿う形状に予め成形しておいた板状の短絡部材30を配置したのち、電池缶11の内部に電池素子20を収納することによって製造することもできる。
この二次電池では、外力が加わることにより電池缶11が変形した場合、板状の短絡部材30も押し潰され、または折れて、その端縁32が電池素子20に突き刺さり、セパレータ23を貫通することにより、正極21と負極22とが確実に短絡する。
このように本実施の形態では、短絡部材30を板状としたので、第1の実施の形態と同様に正極21と負極22との間を確実に短絡させることができ、安全性を向上させることができる。
(変形例1)
図9および図10は、第2の実施の形態の変形例1に係る二次電池の断面構成を表したものである。この二次電池は、中空楕円形の電池缶41に、楕円筒状の巻回構造を有する電池素子20を収容した、いわゆる楕円型電池であることを除いては、上記第2の実施の形態と同様の構成を有している。
電池缶41の内部には、電池素子20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板42,43がそれぞれ配置されている。電池缶41の開放端部には、電池蓋44と、この電池蓋44の内側に設けられた安全弁機構45および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)46とが、ガスケット47を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶41の内部は密閉されている。電池蓋44は、例えば、電池缶41と同様の材料により構成されている。安全弁機構45は、熱感抵抗素子46を介して電池蓋44と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板45Aが反転して電池蓋44と電池素子20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子46は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット47は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
短絡部材30は、第2の実施の形態と同様に、板状であり、電池缶41の内壁または電池素子20の外周に沿って配置されている。
電池素子20の巻回中心には、センターピン50が設けられている。このセンターピン50は、例えば、図5に示した円筒状の短絡部材30と同様に、薄い帯状の板を丸めて管状に成形したものであり、長手方向の一方の端部から他方の端部にかけて切れ目51を有している。よって、このセンターピン50は、短絡部材30と同様に、外部からの力で電池が押し潰されたり折れたりして電池缶41が変形した場合において切れ目51が外側に開いて電池素子20に突き刺さることが可能であり、これにより更に安全性を向上させることができるようになっている。
この二次電池は、例えば次のようにして製造することができる。
まず、第1の実施の形態と同様にして電池素子20を作製する。次いで、例えばステンレス鋼よりなる薄い帯状の板を用意し、この板を丸めて筒状に成形することにより、管状のセンターピン50を形成し、このセンターピン50を電池素子20の巻回中心に挿入する。
続いて、電池素子20を一対の絶縁板42,43で挟み、負極リード25を電池缶41に溶接すると共に、正極リード24を安全弁機構45に溶接して、電池素子20を電池缶41の内部に収容する。そののち、電池素子20と電池缶41との間の隙間に、電池缶41の内壁または電池素子20の外周に沿う形状に予め成形しておいた板状の短絡部材30を挿入する。
短絡部材30を挿入したのち、電解液を電池缶41の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。最後に、電池缶41の開放端部に電池蓋44,安全弁機構45および熱感抵抗素子46をガスケット47を介してかしめることにより固定する。これにより、図9および図10に示した二次電池が完成する。
また、この二次電池は、電池缶41の内壁または電池素子20の外周に、それらに沿う形状に予め成形しておいた板状の短絡部材30を配置したのち、電池缶41の内部に電池素子を収容することによっても製造することができる。
この二次電池では、外力が加わることにより電池缶41が変形した場合、板状の短絡部材30も押し潰され、または折れて、その端縁32が電池素子20に突き刺さり、セパレータ23を貫通することにより、正極21と負極22とが確実に短絡する。また、電池素子20の巻回中心にはセンターピン50が設けられているので、このセンターピン50も押し潰され、または折れて、切れ目51が外側に開いて電池素子20に突き刺さり、セパレータ23を貫通して正極21と負極22との短絡を発生させる。
このように本変形例では、中空楕円形の電池缶41の内壁または電池素子20の外周に沿って、板状の短絡部材30を配置するようにしたので、第2の実施の形態と同様に正極21と負極22との間を確実に短絡させることができ、安全性を向上させることができる。
また、電池素子20の巻回中心にセンターピン50を設けることにより、更に安全性を高めることができる。
(変形例2)
図11は、第2の実施の形態の変形例2に係る二次電池の断面構成を表したものである。この二次電池は、中空円筒状の電池缶41に円筒状の巻回構造を有する電池素子20を収容した、いわゆる円筒型電池であることを除いては、変形例1と同様の構成を有し、同様にして製造することができる。また、その作用および効果も変形例1と同様である。
なお、板状の短絡部材30は、必ずしも電池素子20を一周して設けられている必要はない。
(第3の実施の形態)
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る二次電池の短絡部材30の構成を表すものである。この二次電池は、短絡部材30に、屈曲した形状の切込み33を設けたことを除き、他は第1の実施の形態と同様の構成を有している。よって、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
切込み33は、二本の直線部分33A,33Bにより構成され、直線部分33Bは、直線部分33Aの端部から直線部分33Aと異なる方向、例えば直角に延びている。すなわち、切込み33は所謂L字形をなし、屈曲した部分に凸部34を有している。これにより、この二次電池では、外力で押し潰された場合に、切込み33の屈曲した凸部34が電池素子20に食い込み、セパレータ23を貫通して正極21と負極22とをより確実に短絡させることができるようになっている。なお、切込み33の隅の角は必ずしも直角でなくてもよく、角が丸めてあってもよい。
直線部分33A,33Bの長さ、すなわち延長方向における寸法は、確実に切込み33の凸部34を突出させることのできる程度であることが好ましく、例えば短絡部材30の半周分程度とされている。直線部分33A,33Bの幅、すなわち延長方向に直交する方向における寸法は、例えば0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、直線部分33Aと直線部分33Bとは必ずしも同じ長さでなくてもよい。
直線部分33Aは短絡部材30の長手方向に平行であり、直線部分33Bは直線部分33Aの端部から垂直に延びていることが好ましい。生産性を良くすることができるからである。
このような切込み33の相互間の距離Dは、例えば0.1mm以上であることが好ましい。生産性を良くすることができるからである。
更に、切込み33は、例えば図13に示したように、三本の直線部分33A,33B,33Cにより構成され、直線部分33Bは直線部分33Aの端部から直線部分33Aとは異なる方向に延び、直線部分33Cは直線部分33Bの端部から直線部分33Bとは異なる方向に延びている形状(以下、「Z型」という。)でもよい。直線部分33A〜33Cのなす角は、例えば直角が好ましい。生産性を高めることができるからである。
加えて、切込み33は、例えば図14に示したように、多数の直線部分により構成され、それらの直線部分のうちの一本は他の一本の端部からそれとは異なる方向に延びている形状(以下、「波型」という。)であってもよい。このような波型の切欠部33は、直線またはL型やZ型のものに比べて電極間の短絡を容易に発生させることができ、好ましい。なお、切込み33を構成する直線部分が短絡部材30の長手方向に対して斜めに設けられている場合、切込み33の一端と他端とを結ぶ直線は短絡部材30の長手方向に対してほぼ平行または垂直であることが望ましい。
この二次電池は、短絡部材30となる板に切込み33を設けたのち丸めて成形することを除いては、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
この二次電池では、外部から二次電池に力がかかった場合には、短絡部材30が押し潰されて、切込み33の凸部34が電池素子20に食い込み、セパレータ23を貫通することにより正極21と負極22とが更に確実に短絡される。
このように本実施の形態では、短絡部材30に切込み33を設けるようにしたので、外部からの力で押し潰されたり折れたりした場合において正極21と負極22とを更に確実に短絡させることができ、安全性が向上する。
(第3の実施の形態の変形例)
なお、本実施の形態では、切込み33が規則的な間隔で配置されている場合について説明したが、切込み33は不規則な間隔で配置されていてもよい。また、本実施の形態では、直線部分33Aは短絡部材30の長手方向に平行であり、直線部分33Bは直線部分33Aに垂直である場合について説明したが、図15に示したように、直線部分33A,33Bが短絡部材30の長手方向に対して斜めに配置されていてもよい。
更に、本実施の形態では、直線部分33Bが直線部分33Aの端部から直角の方向に延びている場合について説明したが、直線部分33Bは、図16に示したように、直線部分33Aの端部から鋭角の方向に延びていてもよい。更に、直線部分33Bが直線部分33Aの端部から鋭角の方向に延びており、かつ直線部分33Aと直線部分33Bとが短絡部材30の長手方向に対して斜めに配置されていてもよい。
加えて、切込み33の直線部分33Aと直線部分33Bとは交差していてもよい。その際、直線部分33Bは、直線部分33Aに対して、例えば、図17に示したような十字形に交差していてもよいし、図18に示したようなT字形に交差していてもよい。また、直線部分33Aと直線部分33Bとの交差角度は必ずしも直角でなくてもよく、鋭角あるいは鈍角をなしていてもよい。
更にまた、切込み33は、必ずしも直線により構成されたものに限られず、例えば図19に示したように丸く屈曲した形状であってもよい。
加えてまた、センターピン30において、図12,13,14に示したような切込み33に加えて、図20,21,22に示したように、切れ目31に交差する切欠部35を設けるようにしてもよい。切欠部35と切れ目31との交差部分に形成される角により、切込み33の凸部34と同様に、正極21と負極22とを更に確実に短絡させることができ、安全性をより高めることができる。
更にまた、切欠部35は直線状に限られず、図23に示したように、切込み33と同様なL型などの屈曲した形状であってもよい。すなわち、切欠部35は、二本の直線部分35A,35Bにより構成され、直線部分35Bが直線部分35Aの端部から直線部分35Aとは異なる方向に延びている形状であってもよい。
なお、切欠部35を設ける位置などは特に限定されず、必ずしも図20〜図23に示したように切欠部35と切込み33とが切れ目31を挟んで対向する位置に設けられている必要はない。その場合、切欠部35は切れ目31の両側にわたって設けられていてもよい。
切欠部35と併用される切込み33の形状は特に限定されず、第3の実施の形態の変形例で説明した他の形状の切込み33を設けてもよい。例えば図24に示したように、図17に示した十字形の切込み33を設けるようにしてもよい。
切欠部35の切れ目32に対する交差角度は、特に限定されず、切れ目32に対して斜めに交差していてもよい。
更にまた、切込み33は、必ずしもセンターピン30を厚さ方向に貫通する孔である必要はなく、図25に示したように、貫通することなく周囲領域よりも厚さ方向の一部を薄くした薄肉溝であってもよい。切欠部35についても同様である。
なお、上記第3の実施の形態およびその変形例では、図5に示したような円筒形の短絡部材30を例として図示したが、第3の実施の形態およびその変形例は、図6に示したような断面多角形の短絡部材30にも適用可能である。また、図26〜図32に示したように、第2の実施の形態で説明した板状の短絡部材30に切込み33または切欠部35を設けるようにしてもよい。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1,2−1〜2−3)
第1および第3の実施の形態で説明した二次電池を作製した。まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3 :CoCO3 =0.5:1(モル比)の割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極活物質としてのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調整した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製した。続いて、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード24を取り付けた。
また、負極活物質としてCoSnC含有材料を作製した。まず、原料としてコバルト粉末とスズ粉末と炭素粉末とを用意し、コバルト粉末とスズ粉末とを合金化してコバルト・スズ合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を加えて乾式混合した。続いて、この混合物を遊星ボールミルを用いてメカノケミカル反応を利用して合成し、CoSnC含有材料を得た。
得られたCoSnC含有材料について組成の分析を行ったところ、コバルトの含有量は29.3質量%、スズの含有量は49.9質量%、炭素の含有量は19.8質量%であった。なお、炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、コバルトおよびスズの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。また、得られたCoSnC含有材料についてX線回折を行ったところ、回折角2θ=20°〜50°の間に、回折角2θが1.0°以上の広い半値幅を有する回折ピークが観察された。更に、このCoSnC含有材料についてXPSを行ったところ、CoSnC含有材料中におけるC1sのピークは284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、CoSnC含有材料中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
次いで、このCoSnC含有材料60質量部と、導電剤および負極活物質である人造黒鉛28質量部およびカーボンブラック2質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合し、負極合剤を調整した。続いて、この負極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとし、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層22Bを形成した。そののち、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード25を取り付けた。
続いて、厚み25μmの微孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ23を用意し、正極21,セパレータ23,負極22,セパレータ23の順に積層して積層体を形成したのち、この積層体を渦巻状に多数回巻回し、電池素子20を作製した。
そののち、電池素子20を電池缶11に収納し、電池素子20と電池缶11との間の隙間に短絡部材30を挿入した。その際、実施例1では、ステンレス鋼よりなる薄い帯状の板を図5および図6に示したような筒状に成形したものを用いた。また、実施例2−1〜2−3では、ステンレス鋼よりなる薄い帯状の板に切込み33または切欠部35を設けたのち、図5および図6に示したような筒状に成形したものを用いた。実施例2−1では図12に示したようなL型の切込み33のみを設けた。実施例2−2では図21に示したようなZ型の切込み33と、直線状の切欠部35とを設けた。実施例2−3では図23に示したようなZ型の切込み33と、Z型の切欠部35とを設けた。
短絡部材30を挿入したのち、電池素子20の上に絶縁板12を配置し、負極リード25を電池缶11に溶接すると共に、正極リード24を正極ピン15の下端に溶接して、電池缶11の開放端部に電池蓋13をレーザ溶接により固定した。そののち、電解液注入孔19から電池缶11の内部に電解液を注入した。電解液には、炭酸エチレン50体積%と炭酸ジエチル50体積%とを混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/dm3 の含有量で溶解させたものを用いた。最後に、電解液注入孔19を封止部材19Aで塞ぐことにより、厚さ5mm、幅34mm、高さ42mmの角型の二次電池を得た。
(実施例3)
第2の実施の形態で説明した二次電池を作製した。すなわち、短絡部材30として、ステンレス鋼よりなる薄い帯状の板を、電池缶11の内壁に沿って配置したことを除いては、実施例1と同様にして二次電池を作製した。
(実施例4)
変形例2に示したような円筒型の電池缶41に円筒状の巻回構造を有する電池素子20を収容した、いわゆる円筒型としたことを除いては、実施例3と同様にして二次電池を作製した。すなわち、まず、実施例1と同様にして電池素子20を作製した。次いで、ステンレス鋼よりなる薄い帯状の板を用意し、この板を丸めて筒状に成形することにより、管状のセンターピン50を形成し、このセンターピン50を電池素子20の巻回中心に挿入した。
続いて、電池素子20を一対の絶縁板42,43で挟み、負極リード25を電池缶41に溶接すると共に、正極リード24を安全弁機構45に溶接して、電池素子20を内径14.0mmの電池缶41の内部に収容した。そののち、板状の短絡部材30を電池缶41の内壁に沿って配置した。
短絡部材30を配置したのち、電解液を電池缶41の内部に注入した。最後に、ガスケット47を介して電池蓋44を電池缶41にかしめることにより、外径14mm、高さ43mmの円筒型の二次電池を得た。
(実施例5,6)
短絡部材30に図26,27に示したようなL型の切込み33を設けたことを除いては、実施例5は実施例3と同様に、実施例6は実施例4と同様にして二次電池を作製した。
(実施例7,8)
短絡部材30を電池素子20の外周に沿って配置したことを除いては、実施例7は実施例3と同様に、実施例8は実施例4と同様にして二次電池を作製した。
(実施例9,10)
短絡部材30に図27に示したようなL型の切込み33を設けたことを除いては、実施例9は実施例7と同様に、実施例10は実施例8と同様にして二次電池を作製した。
(実施例11,12)
短絡部材30に図29に示したようなZ型の切込み33および直線状の切欠部35を設けたことを除いては、実施例11は実施例7と同様に、実施例12は実施例8と同様にして二次電池を作製した。
(実施例13,14)
短絡部材30に図31に示したようなZ型の切込み33と、Z型の切欠部35を設けたことを除いては、実施例13は実施例7と同様に、実施例14は実施例8と同様にして二次電池を作製した。
比較例1,2として、短絡部材を設けなかったことを除き、他は比較例1は実施例1と同様に、比較例2は実施例4と同様にして二次電池を作製した。
このようにして得られた実施例1〜14および比較例1,2の二次電池をそれぞれ5個(電池1〜電池5)作製し、圧壊試験を行って発火や破裂の有無を調べた。得られた結果を表1および表2に示す。
Figure 2007214106
Figure 2007214106
表1および表2からわかるように、短絡部材を設けない比較例1,2では5個の二次電池のすべてで破裂が生じたのに対して、短絡部材30を設けた実施例1,3,4,7,8では破裂を抑えることができた。すなわち、電池素子20と電池缶11,41との間の隙間に導電性の短絡部材30を設けるようにすれば、電池が押し潰されたり折れたりして短絡が発生した場合にも安全性を向上させることができることが分かった。
更に、短絡部材30に切込み33または切欠部35を設けた実施例2−1〜2−3,5,6,9,10〜14では破裂を更に抑えることができた。すなわち、短絡部材30に屈曲した形状の切込み33、または切欠部35を設けるようにすれば、更に安全性を向上させることができることが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、溶媒に液状の電解質である電解液を用いる場合について説明したが、電解液に代えて、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
なお、ゲル状の電解質には電解液を吸収してゲル化するものであれば種々の高分子化合物を用いることができる。そのような高分子化合物としては、例えば、ポリビニリデンフルオロライドあるいはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた有機固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。このとき、高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または分子中に共重合させて用いることができる。また、無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを用いることができる。
更に、上記実施の形態および実施例では、巻回構造を有する円筒型の二次電池について説明したが、本発明は、巻回構造を有する二次電池であればどのような形状のものでも適用することができる。また、本発明は一次電池への適用も可能である。
加えて、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質、正極活物質あるいは溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。 図1のII−II線に沿った断面図である。 図1に示した正極の巻回前の構成を表す断面図である。 図1に示した負極の巻回前の構成を表す断面図である。 短絡部材の構成の一例を表す斜視図である。 短絡部材の構成の他の例を表す斜視図である。 図1に示した二次電池が押し潰された場合における短絡部材の作用を説明するための断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。 変形例1に係る二次電池の構成を表す断面図である。 図9のX−X線に沿った断面図である。 変形例2に係る二次電池の構成を表す断面図である。 本発明の第三の実施の形態に係る二次電池の短絡部材の構成を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す平面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す断面図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す斜視図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す斜視図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す斜視図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す斜視図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す斜視図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す斜視図である。 短絡部材の更に他の構成例を表す斜視図である。 従来のセンターピンの一例を表す斜視図である。
符号の説明
11,41…電池缶、12,42,43…絶縁板、13,44…電池蓋、13A…貫通孔、14…端子板、15…正極ピン、16…絶縁ケース、17,47…ガスケット、18…開裂弁、19…電解液注入孔、19A…封止部材、20…電池素子、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、21C…正極被覆領域、21D…正極露出領域、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、22C…負極被覆領域、22D…負極露出領域、23…セパレータ、24…正極リード、25…負極リード、30…短絡部材、30A…傾斜部、31,51…切れ目、32…端縁、33…切込み、35…切欠部、45…安全弁機構、46…熱感抵抗素子、50…センターピン

Claims (11)

  1. 正極および負極を有する電池素子と、
    前記電池素子を収容する電池缶と、
    前記電池素子と前記電池缶との間の隙間に設けられ、前記電池缶の変形時に前記電池素子に突き刺さることが可能な導電性の短絡部材と
    を備えたことを特徴とする電池。
  2. 前記短絡部材は管状であると共にその長手方向に切れ目を有する
    ことを特徴とする請求項1記載の電池。
  3. 前記短絡部材は板状である
    ことを特徴とする請求項1記載の電池。
  4. 前記短絡部材は、屈曲した形状の切込みを有する
    ことを特徴とする請求項1記載の電池。
  5. 前記切込みは、二本以上の直線部分により構成され、前記二本以上の直線部分のうちの一本は他の一本の端部から前記一本と異なる方向に延びている
    ことを特徴とする請求項4記載の電池。
  6. 前記電池素子は、帯状の正極集電体の面上に正極活物質層を有する前記正極と、帯状の負極集電体の面上に負極活物質層を有する前記負極とをセパレータを間にして積層し、巻回した構成を有する
    ことを特徴とする請求項1記載の電池。
  7. 前記正極は、前記正極集電体の巻回外周側の端部に、両面に前記正極活物質層が存在しない正極露出領域を有し、前記負極は、前記負極集電体の巻回外周側の端部に、両面に前記負極活物質層が存在しない負極露出領域を有する
    ことを特徴とする請求項6記載の電池。
  8. 前記電池素子の巻回中心に、管状のセンターピンを有する
    ことを特徴とする請求項6記載の電池。
  9. 前記負極は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む負極活物質を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
  10. 前記負極は、前記負極活物質として、スズ(Sn)およびケイ素(Si)のうちの少なくとも一方を構成元素として含む材料を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
  11. 前記負極は、前記負極活物質として、スズと、コバルト(Co)と、炭素(C)とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下であるCoSnC含有材料を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。

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