JP2007157399A - 電解液および電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】充放電効率を向上させることができる電解液および電池を提供する。
【解決手段】セパレータ23には電解液が含浸されている。電解液には、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのAOp (NR1R2)(NR3R4)q (NR5R6)r s (Aは、炭素,リンまたは硫黄を表す。R1からR6は、炭化水素基を表す。Xはハロゲンを表す。pは1または2である。qおよびrは0または1である。sは0,1または2である。)で表される無機酸アミド誘導体とが含まれている。これにより、電解液の化学的安定性が向上し、充放電効率が改善される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含む電解液、およびそれを用いた電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),デジタルスチルカメラ,携帯電話,携帯情報端末あるいはノート型コンピュータ等のポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。それに伴い、電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池について、エネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。中でも、負極に炭素材料を用い、正極にリチウム(Li)と遷移金属との複合材料を用い、電解液に炭酸エステルを用いたリチウムイオン二次電池は、従来の鉛電池およびニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため広く実用化されている。
また最近では、携帯用電子機器の高性能化に伴い、更なる容量の向上が求められており、負極活物質として炭素材料に代えてスズあるいはケイ素などを用いることが検討されている。スズの理論容量は994mAh/g、ケイ素の理論容量は4199mAh/gと、黒鉛の理論容量の372mAh/gに比べて格段に大きく、容量の向上を期待できるからである。特に、スズあるいはケイ素の薄膜を集電体上に形成した負極は、リチウムの吸蔵および放出によっても、負極活物質が微粉化することなく、比較的大きな放電容量を保持できることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第WO01/031724号パンフレット
しかしながら、リチウムを吸蔵したスズ合金あるいはケイ素合金は活性が高く、電解液に従来より用いられている環式炭酸エステルあるいは鎖式炭酸エステルなどを用いると、これらが分解されてしまい、しかもリチウムが不活性化されてしまうという問題があった。そこで、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を用いることにより、負極における電解液の分解反応を抑制し、充放電効率を向上させることが検討されている。しかし、電解液の分解反応を抑制する効果は十分ではなく、充放電効率の更なる向上が望まれていた。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、充放電効率を向上させることができる電解液およびそれを用いた電池を提供することにある。
本発明による電解液は、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化1に示した無機酸アミド誘導体とを含むものである。
Figure 2007157399
(Aは、炭素(C),リン(P)または硫黄(S)を表す。R1からR6は、炭化水素基を表す。Xはハロゲンを表す。pは1または2である。qおよびrは0または1である。sは0,1または2である。)
本発明による電池は、正極および負極と共に電解液を備えたものであって、電解液は、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化2に示した無機酸アミド誘導体とを含むものである。
Figure 2007157399
(Aは、炭素,リンまたは硫黄を表す。R1からR6は、炭化水素基を表す。Xはハロゲンを表す。pは1または2である。qおよびrは0または1である。sは0,1または2である。)
本発明の電解液によれば、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化1に示した無機酸アミド誘導体とを含むようにしたので、電解液の安定性を向上させることができる。よって、この電解液を用いた本発明の電池によれば、優れた充放電効率を得ることができる。
特に、電解液における無機酸誘導体の含有量を、0.1質量%以上5質量%以下とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
また、負極に、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む材料を含有するようにした場合に、あるいは構成元素としてスズおよびケイ素のうちの少なくとも一方を含む負極材料を含有するようにした場合に、特に高い効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る二次電池の断面構成を表すものである。この二次電池は、電極反応物質としてリチウムを用い、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12, 13がそれぞれ配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aと、正極集電体21Aの両面に設けられた正極活物質層21Bとを有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどの結着材を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、あるいはこれらを含む固溶体(Li(Nix Coy Mnz )O2 ))(x,yおよびzの値は0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1である。)、またはマンガンスピネル(LiMn2 4 )あるいはその固溶体(Li(Mn2-v Niv )O4 )(vの値はv<2である。)などのリチウム複合酸化物、またはリン酸鉄リチウム(LiFePO4 )などのオリビン構造を有するリン酸化合物が好ましい。高いエネルギー密度を得ることができるからである。また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン,酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物、二硫化鉄,二硫化チタンあるいは二硫化モリブデンなどの二硫化物、硫黄、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅(Cu),ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでいる。
なお、この二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量が、正極21の充電容量よりも大きくなっており、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、スズまたはケイ素を構成元素として含む材料が挙げられる。スズおよびケイ素はリチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
このような負極材料としては、具体的には、スズの単体,合金,あるいは化合物、またはケイ素の単体,合金,あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅,鉄,コバルト(Co),マンガン(Mn),亜鉛(Zn),インジウム(In),銀(Ag),チタン(Ti),ゲルマニウム(Ge),ビスマス(Bi),アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
中でも、この負極材料としては、スズと、コバルトと、炭素とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合Co/(Sn+Co)が30質量%以上70質量%以下であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素,鉄,ニッケル,クロム,インジウム,ニオブ(Nb),ゲルマニウム,チタン,モリブデン(Mo),アルミニウム,リン(P),ガリウム(Ga)またはビスマスが好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
なお、このCoSnC含有材料は、スズと、コバルトと、炭素とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このCoSnC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズなどが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また例えば、リチウムと合金を形成可能な他の金属元素または他の半金属元素を構成元素として含む材料を用いることもできる。このような金属元素あるいは半金属元素としては、マグネシウム(Mg),ホウ素(B),アルミニウム,ガリウム,インジウム,ゲルマニウム,鉛(Pb),ビスマス,カドミウム(Cd),銀,亜鉛,ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更にまた、例えば、黒鉛,難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化性炭素などの炭素材料を用いてもよく、また、これらの炭素材料と、上述した負極材料とを共に用いるようにしてもよい。このような炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少なく、例えば上述した負極材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができ、更に導電材としても機能するので好ましい。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどよりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
セパレータ23には、例えば液状の電解質である電解液が含浸されている。電解液は、溶媒と、溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒は、比誘電率が30以上の高誘電率溶媒を含んでいる。これによりリチウムイオンの数を増加させることができるからである。
高誘電率溶媒は、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含んでいる。負極22に良好な被膜を形成することができ、電解液の安定性を向上させることができるからである。このような環式炭酸エステル誘導体としては、例えば、化3(1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのフッ素化炭酸エチレン、または化3(2)に示した4−メチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのフッ素化炭酸プロピレン、または化3(3)に示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどの二フッ化炭酸エチレン、または化3(4)に示した4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、または化3(5)に示した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどの塩素化炭酸エチレンが挙げられる。中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、特に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが望ましい。より高い効果を得ることができるからである。環式炭酸エステル誘導体には1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
Figure 2007157399
高誘電率溶媒としては、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体に加えて、他の高誘電率溶媒を混合して用いてもよい。他の高誘電率溶媒としては、例えば、炭酸エチレン,炭酸プロピレン、炭酸ブチレン,炭酸ビニレンあるいはビニル炭酸エチレンなどの環式炭酸エステル、またはγ−ブチロラクトンあるいはγ−バレロラクトンなどのラクトン、またはN−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム、またはN−メチル−2−オキサゾリジノンなどの環式カルバミン酸エステル、またはテトラメチレンスルホンなどのスルホン化合物が挙げられる。他の高誘電率溶媒には1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
また、高誘電率溶媒には、粘度が1mPa・s以下の低粘度溶媒を混合して用いることが好ましい。これにより高いイオン伝導性を得ることができるからである。低粘度溶媒としては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルあるいは炭酸エチルメチルなどの鎖式炭酸エステル、または酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルあるいはトリメチル酢酸エチルなどの鎖式カルボン酸エステル、またはN,N−ジメチルアセトアミドなどの鎖式アミド、またはN,N−ジエチルカルバミン酸メチルあるいはN,N−ジエチルカルバミン酸エチルなどの鎖式カルバミン酸エステル、または1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランあるいは1,3−ジオキソランなどのエーテルが挙げられる。低粘度溶媒には1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
電解質塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 ),四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 ),六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 ),六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF6 ),過塩素酸リチウム(LiClO4 ),四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4 )などの無機リチウム塩、またはトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3 SO3 Li),リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド((CF3 SO2 2 NLi),リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミド((C2 5 SO2 2 NLi),リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホン)メチド((CF3 SO2 3 CLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体のリチウム塩が挙げられる。電解質塩には1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
この電解液は、更に、添加剤として、化4に示した無機酸アミド誘導体を含んでいる。これにより、負極22に良好な被膜を形成することができ、電解液の安定性を向上させることができるからである。無機酸アミド誘導体には1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
Figure 2007157399
(Aは、炭素,リンまたは硫黄を表す。R1からR6は、炭化水素基を表す。R1からR6は、互いに同一でも異なっていてもよい。Xはハロゲンを表す。pは1または2である。qおよびrは0または1である。sは0,1または2である。)
このような無機酸アミド誘導体としては、例えば、化5(1)から化5(7)に示した化合物が好ましい。より高い効果を得ることができるからである。
Figure 2007157399
(R7からR30は、炭素数1から4のアルキル基、または炭素数6から11のアリール基を表す。R7からR10,R11およびR12,R13からR18,R19からR22,R23およびR24,R25からR28,R29およびR30は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。X1からX5は、ハロゲンを表す。X3およびX4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
このような無機酸アミド誘導体について具体的に例を挙げれば、化6(1)に示したテトラエチル尿素、化6(2)に示したジエチル塩化カルバモイル、化6(3)に示したヘキサメチルリン酸トリアミド、化6(4)に示したビス(ジメチルアミノ)塩化ホスホリル、化6(5)に示したジメチルアミノ二塩化ホスホリル、化6(6)に示したテトラエチルスルファミド、あるいは化6(7)に示したジメチル塩化スルファモイルなどがある。
Figure 2007157399
この無機酸アミド誘導体の含有量は、電解液において、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。この範囲内で高い効果を得ることができるからである。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極集電体21Aに正極活物質層21Bを形成し正極21を作製する。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質の粉末と導電材と結着材とを混合して正極合剤を調製したのち、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとし、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより形成する。また、例えば、正極21と同様にして、負極集電体22Aに負極活物質層22Bを形成し負極22を作製する。
次いで、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。続いて、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1,2に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極21に吸蔵される。その際、電解液には、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化4に示した無機酸アミド誘導体とが含まれいるので、負極22に良好な被膜が形成され、電解液の分解反応が抑制される。
このように本実施の形態によれば、電解液にハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化4に示した無機酸アミド誘導体とを含むようにしたので、負極22に良好な被膜を形成することができ、電解液の安定性を向上させることができる。よって、優れた充放電効率を得ることができる。
特に、電解液における無機酸誘導体の含有量を、0.1質量%以上5質量%以下とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
また、負極22に、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む材料を含有するようにした場合に、あるいは構成元素としてスズおよびケイ素のうちの少なくとも一方を含む負極材料を含有するようにした場合に、特に高い効果を得ることができる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る二次電池は、負極の構成が異なることを除き、他は第1の実施の形態に係る二次電池と同様の構成および作用を有しており、同様にして製造することができる。よって、図1および図2を参照し、対応する構成要素には同一の符号を付して同一の部分の説明は省略する。
負極22は、第1の実施の形態に係る二次電池と同様に、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極活物質層22Bは、例えば、スズまたはケイ素を構成元素として含む負極活物質を含有している。具体的には、例えば、スズの単体,合金,あるいは化合物、またはケイ素の単体,合金,あるいは化合物を含有しており、それらの2種以上を含有していてもよい。
また、負極活物質層22Bは、例えば、気相法,液相法,溶射法あるいは焼成法、またはそれらの2以上の方法を用いて形成されたものであり、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとが界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに、または負極活物質の構成元素が負極集電体22Aに、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張・収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。なお、焼成法というのは、例えば、粒子状の負極活物質を結着材などと混合して溶剤に分散させ、塗布したのち、結着材などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。
(第3の実施の形態)
図3は、第3の実施の形態に係る二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、いわゆるラミネートフィルム型といわれるものであり、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものである。
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回体電極30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。正極集電体33A,正極活物質層33B,負極集電体34A,負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、上述した第1あるいは第2の実施の形態に係る二次電池における正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22A,負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
電解質36は、第1の実施の形態で説明した電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物あるいはアクリレート系高分子化合物、またはポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ化ビニリデンの重合体が挙げられ、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。特に、酸化還元安定性の観点からは、フッ化ビニリデンの重合体などのフッ素系高分子化合物を用いることが望ましい。
なお、電解質36には、電解液を高分子化合物に保持させることなく、液状の電解質としてそのまま用いてもよい。この場合、電解液はセパレータ35に含浸されている。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極33および負極34のそれぞれに、電解液と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質36を形成する。次いで、正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、電解質36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。そののち、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3,4に示した二次電池が完成する。
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、必要に応じて重合開始剤あるいは重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を熱融着して密封する。そののち、必要に応じて熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質36を形成し、図3,4に示した二次電池を組み立てる。
更に、電解質36として電解液を用いる場合には、上述したようにして正極33および負極34を巻回し、外装部材40の間に挟み込んだのち、電解液を注入して外装部材40を密閉する。
この二次電池の作用および効果は、上述した第1あるいは第2の実施の形態に係る二次電池と同様である。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−8)
図3および図4に示した二次電池を作製した。まず、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )94質量部と、導電材としてグラファイト3質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合したのち、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを添加し正極合剤スラリーを得た。次いで、得られた正極合剤スラリーを、厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体33Aの両面に均一に塗布し乾燥させて正極活物質層33Bを形成した。そののち、正極活物質層33Bが形成された正極集電体33Aを幅50mm,長さ300mmの形状に切断して正極33を作製した。
また、負極活物質としてケイ素を用い、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体34Aの上にスパッタ法により厚み5μmのケイ素よりなる負極活物質層34Bを形成した。そののち、負極活物質層34Bが形成された負極集電体34Aを幅50mm,長さ300mmの形状に切断して負極34を作製した。
正極33および負極34を作製したのち、アルミニウムよりなる正極リード31を正極33に取り付けると共に、ニッケルよりなる負極リード32を負極34に取り付け、厚み20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ35を介して正極33と負極34とを積層し、巻回して巻回電極体30とした。
次いで、巻回電極体30をアルミラミネートフィルムよりなる外装部材40の間に挟み込んだのち、外装部材40の外縁部同士を一辺を残して貼り合わせ袋状とした。その際、正極リード31および負極リード32を外装部材40の外部に導出させるようにした。
続いて、外装部材40の内部に開放辺から電解液2gを注入し、セパレータ35に含浸させたのち、外装部材40の開放辺を熱融着により貼り合わせ、図3および図4に示した二次電池を得た。
電解液には、高誘電率溶媒と、低粘度溶媒としての炭酸ジエチルと、電解質塩として六フッ化リン酸リチウムと、添加剤として化4に示した無機酸アミド誘導体とを、高誘電率溶媒:炭酸ジエチル:六フッ化リン酸リチウム:無機酸アミド誘導体=42:41:16:1の質量比で混合したものを用いた。その際、高誘電率溶媒は、実施例1−1ではハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体である4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとし、実施例1−2〜1−8では、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体である4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとした。また、化4に示した無機酸アミド誘導体は、実施例1−1,1−2では化6(3)に示したヘキサメチルリン酸トリアミドとし、実施例1−3では化6(1)に示したテトラエチル尿素とし、実施例1−4では化6(2)に示したジエチル塩化カルバモイルとし、実施例1−5では化6(4)に示したビス(ジメチルアミノ)塩化ホスホリルとし、実施例1−6では化6(5)に示したジメチルアミノ二塩化ホスホリルとし、実施例1−7では化6(6)に示したテトラエチルスルファミドとし、実施例1−8では化6(7)に示したジメチル塩化スルファモイルとした。
実施例1−1〜1−8に対する比較例1−1,1−2として、高誘電率溶媒に炭酸エチレンを用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。その際、比較例1−1では添加剤を添加せず、炭酸エチレンと炭酸ジエチルと六フッ化リン酸リチウムとの質量比による割合(炭酸エチレン:炭酸ジエチル:六フッ化リン酸リチウム)を42:42:16とした。また、比較例1−2では、添加剤はヘキサメチルリン酸トリアミドとした。
また、比較例1−3,1−4として、添加剤を添加しなかったことを除き、他は実施例1−1または実施例1−2〜1−8と同様にして二次電池を作製した。その際、環式炭酸エステル誘導体と炭酸ジエチルと六フッ化リン酸リチウムとの質量比による割合(環式炭酸エステル誘導体:炭酸ジエチル:六フッ化リン酸リチウム)を42:42:16とした。
作製した二次電池について、23℃環境下において、900mAで4.2Vを上限として12時間充電し、その後10分間休止して900mAで2.5Vに達するまで放電するという充放電を繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量維持率、すなわち、(50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2007157399
表1に示したように、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化4に示した無機酸アミド誘導体とを用いた実施例1−1、または実施例1−2〜1−8によれば、これを用いなかった比較例1−3、または比較例1−4よりも、それぞれ放電容量維持率が向上した。また、環式炭酸エステル誘導体を用いていない比較例1−1,1−2よりも、放電容量維持率が飛躍的に向上した。
すなわち、電解液に、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化4に示した無機酸アミド誘導体とを含むようにすれば、充放電効率を向上させることができることが分かった。
(実施例2−1〜2−8,3−1〜3−8)
実施例2−1〜2−8として、負極活物質にスズを用い、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体34Aの上に蒸着法により厚み5μmのスズよりなる負極活物質層34Bを形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。
実施例3−1〜3−8として、負極活物質にインジウムとチタンとを含むCoSnC含有材料粉末を用い、このCoSnC含有材料粉末94質量部と、導電材として黒鉛3質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させたのち、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体34Aに均一に塗布し乾燥させて厚み70μmの負極活物質層34Bを形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。
その際、CoSnC含有材料粉末は、スズ−コバルト−インジウム−チタン合金粉末と、炭素粉末とを混合し、メカノケミカル反応を利用して合成した。得られたCoSnC含有材料について組成の分析を行ったところ、スズの含有量は48.0質量%、コバルトの含有量は23.0質量%、インジウムの含有量は5.0質量%、チタンの含有量は2.0質量%、炭素の含有量は20.0質量%、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合Co/(Sn+Co)は32質量%であった。なお、炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズ,コバルト,インジウムおよびチタンの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。また、得られたCoSnC含有材料についてX線回折を行ったところ、回折角2θ=20°〜50°の間に、回折角2θが1.0°以上の広い半値幅を有する回折ピークが観察された。更に、このCoSnC含有材料についてXPSを行ったところ、図5に示したようにピークP1が得られた。ピークP1を解析すると、表面汚染炭素のピークP2と、ピークP2よりも低エネルギー側にCoSnC含有材料中におけるC1sのピークP3とが得られた。このピークP3は、284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、CoSnC含有材料中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
これらの実施例に対する比較例2−1〜2−4,3−1〜3−4として、比較例1−1〜1−4と同様の電解液を用いたことを除き、他は実施例2−1〜2−8,3−1〜3−8と同様にして二次電池を作製した。
作製した実施例2−1〜2−8,3−1〜3−8および比較例2−1〜2−4,3−1〜3−4の二次電池についても、実施例1−1〜1−8と同様にして50サイクル目の放電容量維持率を求めた。結果を表2,3に示す。
Figure 2007157399
Figure 2007157399
表2,3に示したように、実施例1−1〜1−8と同様の結果が得られた。すなわち、他の負極活物質を用いた場合にも、電解液に、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化4に示した無機酸アミド誘導体とを含むようにすれば、充放電効率を向上させることができることが分かった。
(実施例4−1,4−2)
負極活物質に黒鉛を用い、この黒鉛97質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合し、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンを添加して、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体に均一に塗布し乾燥させることにより厚み70μmの負極活物質層34Bを形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。その際、電解液には、実施例1−1,1−2と同様のものを用いた。
実施例4−1,4−2に対する比較例4−1〜4−8として、高誘電率溶媒に炭酸エチレンを用いたことを除き、他は実施例4−1,4−2と同様にして二次電池を作製した。その際、比較例4−1では添加剤を添加せず、炭酸エチレンと炭酸ジエチルと六フッ化リン酸リチウムとの質量比による割合(炭酸エチレン:炭酸ジエチル:六フッ化リン酸リチウム)を42:42:16とした。また、添加剤には、比較例4−2ではヘキサメチルリン酸トリアミドを用い、比較例4−3ではテトラエチル尿素を用い、比較例4−4ではジエチル塩化カルバモイルを用い、比較例4−5ではビス(ジメチルアミノ)塩化ホスホリルを用い、比較例4−6ではジメチルアミノ二塩化ホスホリルを用い、比較例4−7ではテトラエチルスルファミドを用い、比較例4−8ではジメチル塩化スルファモイルを用いた。
また、比較例4−9,4−10として、添加剤を用いなかったことを除き、具体的には、比較例1−3,1−4と同様の電解液を用いたことを除き、他は実施例4−1,4−2と同様にして二次電池を作製した。
作製した実施例4−1,4−2および比較例4−1〜4−10の二次電池について、実施例1−1〜1−8と同様の条件で充放電を行い、1サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の放電容量維持率、すなわち、(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)を求めた。結果を表4に示す。
Figure 2007157399
表4に示したように、実施例1−1〜1−8,2−1〜2−8,3−1〜3−8と同様の結果が得られたが、放電容量維持率の改善効果は、実施例1−1〜1−8,2−1〜2−8,3−1〜3−8に比べて低かった。
すなわち、負極34に、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む材料を含有するようにした場合に、電解液に、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化4に示した無機酸アミド誘導体とを含むようにすれば、好ましいことが分かった。
(実施例5−1,5−2,6−1,6−2,7−1,7−2)
電解液におけるヘキサメチルリン酸トリアミドの含有量を0.1質量%または5.0質量%としたことを除き、他は実施例1−2,2−2,3−2と同様にして二次電池を作製した。具体的には、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸ジエチルと、六フッ化リン酸リチウムと、ヘキサメチルリン酸トリアミドとの質量比による割合(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸ジエチル:六フッ化リン酸リチウム:ヘキサメチルリン酸トリアミド)を、42:41.9:16:0.1、または42:37:16:5とした。
作製した実施例5−1,5−2,6−1,6−2,7−1,7−2の二次電池についても、実施例1−1〜1−8と同様にして放電容量維持率を調べた。結果を表5〜7に示す。
Figure 2007157399
Figure 2007157399
Figure 2007157399
表5〜7に示したように、電解液におけるヘキサメチルリン酸トリアミドの含有量を0.1質量%以上5質量%以下とした場合に、高い放電容量維持率が得られた。
すなわち、電解液における化4に示した無機酸アミド誘導体の含有量を0.1質量%以上5質量%以下とするようにすれば、好ましいことが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解質として電解液を用いる場合について説明し、更に上記実施の形態では、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質を用いる場合についても説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性セラミックス,イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などのイオン伝導性無機化合物と電解液とを混合したもの、または他の無機化合物と電解液とを混合したもの、またはこれらの無機化合物とゲル状電解質とを混合したものが挙げられる。
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても、本発明を適用することができる。その際、負極には、上記実施の形態で説明した負極活物質、例えばスズまたはケイ素を構成元素として含む材料などを同様にして用いることができる。
更に、上記実施の形態または実施例では、円筒型あるいはラミネートフィルム型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明はコイン型、ボタン型、あるいは角型などの他の形状を有する二次電池、または積層構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、本発明は、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
加えて、上記実施の形態および実施例では、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池について説明したが、本発明は、負極活物質にリチウム金属を用い、負極の容量が、リチウムの析出および溶解による容量成分により表されるいわゆるリチウム金属二次電池、または、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるようにした二次電池についても同様に適用することができる。
本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。 図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。 本発明の他の実施の形態に係る二次電池の構成を表す分解斜視図である。 図3に示した巻回電極体のI−I線に沿った構成を表す断面図である。 実施例で作製したCoSnC含有材料に係るX線光電子分光法により得られたピークの一例を表すものである。
符号の説明
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33…正極、21A,33A…正極集電体、21B,33B…正極活物質層、22,34…負極、22A,34A…負極集電体、22B,34B…負極活物質層、23,35…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム。

Claims (10)

  1. ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化1に示した無機酸アミド誘導体とを含むことを特徴とする電解液。
    Figure 2007157399
    (Aは、炭素(C),リン(P)または硫黄(S)を表す。R1からR6は、炭化水素基を表す。Xはハロゲンを表す。pは1または2である。qおよびrは0または1である。sは0,1または2である。)
  2. 前記無機酸アミド誘導体は、化2に示した化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の電解液。
    Figure 2007157399
    (R7からR30は、炭素数1から4のアルキル基、または炭素数6から11のアリール基を表す。X1からX5は、ハロゲンを表す。)
  3. 前記無機酸イミド誘導体の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の電解液。
  4. 前記環式炭酸エステル誘導体は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1記載の電解液。
  5. 正極および負極と共に電解液を備えた電池であって、
    前記電解液は、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体と、化3に示した無機酸アミド誘導体とを含む
    ことを特徴とする電池。
    Figure 2007157399
    (Aは、炭素(C),リン(P)または硫黄(S)を表す。R1からR6は、炭化水素基を表す。Xはハロゲンを表す。pは1または2である。qおよびrは0または1である。sは0,1または2である。)
  6. 前記無機酸アミド誘導体は、化4に示した化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5記載の電池。
    Figure 2007157399
    (R7からR30は、炭素数1から4のアルキル基、または炭素数6から11のアリール基を表す。X1からX5は、ハロゲンを表す。)
  7. 前記電解液における前記無機酸イミド誘導体の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項5記載の電池。
  8. 前記環式炭酸エステル誘導体は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項5記載の電池。
  9. 前記負極は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であり、構成元素として金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を含む材料を含有することを特徴とする請求項5記載の電池。
  10. 前記負極は、構成元素としてスズ(Sn)およびケイ素(Si)のうちの少なくとも一方を含む負極材料を含有することを特徴とする請求項5記載の電池。
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