以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、立ち上げ加工工程に先立って実施する打ち抜き工程において使用する打ち抜きダイ210の形状を示す図である。同図に示すように、打ち抜きダイ210は、全体としては立方体の中実な金属塊212であり、その中央に、上面から底面まで貫通した貫通穴214を備えている。貫通穴214の水平断面形状は円形である。
一方、図2は、図1に示した打ち抜きダイ210と組み合わせて使用する打ち抜きパンチ220の形状を示す斜視図である。打ち抜きパンチ220は、四角柱状の押圧部222と、前記打ち抜きダイ210の貫通穴214と相補的な円形の断面形状を有する打ち抜き部224とを備えている。ここで、打ち抜き部224の端面226の縁部は鋭利な角に仕上げられている。また、打ち抜き部224は、貫通穴214に挿入したときに打ち抜き加工に適した隙間が形成される寸法を有する。
上記のような打ち抜きダイ210および打ち抜きパンチ220を成形装置に装着するとき、打ち抜きダイ210の貫通穴214の内部に、打ち抜きパンチ220の打ち抜き部224が円滑に貫入するように、相互に位置決めされる。また、打ち抜きダイ210の表面に、目的とする軸穴を形成する金属板がセットされる。また、打ち抜きダイ210の貫通穴214の中心が、軸穴の中心と一致するように金属板の板が調整される。この状態で打ち抜きパンチ220を降下させて貫通穴214の内部に貫入させることにより、金属板の一部が、打ち抜きパンチ220の端面226と同形状に切り抜かれる。
図3は、上記のような打ち抜き加工により抜き穴12を形成されたワーク99の形状を示す斜視図である。同図に示すように、この段階のワーク99は、中央に抜き穴12を形成された金属板20である。この段階の抜き穴12の内径は、目的とする軸穴となる直立部14の径よりも小さい。これにより、後述する立ち上げ加工工程において、直立部14を形成するに十分な材料を供給できる。なお、金属板20としては、例えば厚さが1.2mmの冷間圧延鋼板(SECC)を用いることができる。
図4は、次の立ち上げ加工工程において使用されるバーリングダイ310の形状を示す斜視図である。同図に示すように、バーリングダイ310も、立方体の金属塊312により形成され、その中央に円筒状の内面を有する貫通穴314を備えている。この貫通穴314の内径は、目的とする軸穴の直立部の外径に略等しい。
図5は、図4に示したバーリングダイ310と組み合わせて使用するバーリングパンチ320の形状を示す斜視図である。同図に示すように、バーリングパンチ320は、径の一定した円柱状の直胴部322と、直胴部322の一端に形成された砲弾型の先端部324とを備えている。直胴部322の外径は、目的とする軸穴の直立部の内径に略等しい。
図6は、上記のようなバーリングダイ310およびバーリングパンチ320を装着した成形装置110によりワーク99を加工する様子を示す断面図である。同図に示すように、バーリングパンチ320をバーリングダイ310の貫通穴314内に貫入させることにより、ワーク99の打ち抜き穴12の周囲の材が加工され、最終的には軸穴となる直立部14が形成される。
図7は、上記のように加工されたワーク99の形状を示す斜視図である。同図に示すように、金属板20の表面に対して直立する円筒状の直立部14が形成されている。なお、続く開き加工工程は、この実施形態では、予備開き加工工程と、仕上げ開き加工工程に分けて実施される。
図8は、予備開き加工工程で使用する予備開きダイ410の形状を示す斜視図である。同図に示すように、予備開きダイ410は、各々が半円形の加工面418を有する一対の分割ダイ411、412により形成される。これら分割ダイ411、412が加工面418を有する側方端面で対面しつつ当接したとき、水平面に対して45°に傾斜した環状の加工面418が形成される。また、加工面418の直下には、加工面418に隣接した支持面416が形成される。なお、一対の支持面416韮り形成される円の内径は、図7に示したワーク99の直立部14の外径と等しい。
図9は、上記予備開きダイ410と組み合わせて使用する予備開きパンチ420の形状を示す斜視図である。同図に示すように、予備開きパンチ420は、全体に円形の水平断面形状を有し、円筒状の直胴部422と、その先端に形成された直胴部422よりも小径の貫入部424とを備えている。貫入部424が形成された側の直胴部422の端部には、両者の径の差に相当する段差が形成されている。この段差は、直胴部422の側面に対して45°傾斜しており、後述する予備開き加工に寄与する加工面423をなしている。一方、貫入部424の先端周縁部にも傾斜面が形成されているが、これは、貫入部424が直立部14の内側に円滑に貫入するように形成された面取り部425である。即ち、貫入部424の外径は、ワーク99に形成された直立部14の内径に等しい。
図10は、図8および図9に示した予備開きダイ410および予備開きパンチ420を用いて予備開き加工を実施するときに、金属板20に不要な変形が生じることを防止するための開き受け430の形状を示す斜視図である。同図に示すように、開き受け430は、立方体の金属塊432と、その中央に形成された陥没部439を有する。陥没部439の内径は、予備開きパンチ420の貫入部424の外径に等しい。
図11は、図8〜図10に示した予備開きダイ410、予備開きパンチ420および開き受け430を装着した成形装置120の動作を説明する断面図である。同図に示すように、ワーク99は、その直立部14を下方に向けて、開き受け430の下面に配置されている。このとき、直立部14の内部と、開き受け430の陥没部439が連続するように、ワーク99の水平方向の位置が調整されている。従って、金属板20の直立部14以外の領域は、開き受け430に密着しており、図上の上方に変形することがない。
また、成形装置120において、予備開きダイ410を形成する分割ダイ411、412は直立部14の側方に、互いに対向して配置される。更に、予備開きパンチ420は、直立部14の下方から、開き受け430に対向して配置される。このとき、開き受け430の陥没部439と、予備開きパンチ420の貫入部424は、互いに同一の軸上に配列されている。
図12は、図11に示した成形装置120において、一対の分割ダイ411、412を互いに接近させて相互に当接させると共に、その支持面416を直立部14に当接させた状態を示す。これにより、直立部14の支持面416に当接した部分は、外側に変形することが防止される。ただし、この段階ではまだ予備開き加工は実施されておらず、ワーク99に変形は生じていない。
図13は、成形装置120において、図12に示した状態から予備開きパンチ420を上昇させて予備開き加工を実施している状態を示す断面図である。同図に示すように、直立部14において、その金属板20に対する付け根付近は、予備開きダイ410の支持面416および予備開きパンチ420の貫入部424の側面に挟まれて、直立したまま保持されている。これに対して、直立部14の先端近傍は、予備開きパンチ420の加工面423により、予備開きダイ410の加工面418に押し付けられ、直立部14に対して45°の角度をなすまで外側に向かって開かれ、フランジ部17をなす。なお、すでに述べた通り、直立部14の先端近傍以外の部分は、開き受け430および予備開きダイ410に挟まれている。従って、上記の予備開き加工により外力が印加されても、直立部14の先端以外の部分は全く変形しない。
図14は、上記のような予備開き加工により成形されたワーク99の外形を示す斜視図である。同図に示すように、直立部14の先端付近が拡がって、最終的にはフランジ部17となる部分を形成している。
図15は、ワーク99に対する次の工程で使用する仕上げ開きダイ510の形状を示す斜視図である。同図に示すように、仕上げ開きダイ510は、各々が半円形の支持面516を有する一対の分割ダイ511、512により形成される。これら分割ダイ511、512が支持面516を有する側方端面を対向させつつ結合されたとき、小支持面516に隣接する上面の一部領域が開き加工面518となる。支持面516の内径は、ワーク99の直立部14の外径に略等しい。
図16は、上記仕上げ開きダイ510と組み合わせて使用する仕上げ開きパンチ520の形状を示す斜視図である。同図に示すように、仕上げ開きパンチ520は、全体に円形の水平断面形状を有し、円柱状の直胴部522と、その先端に形成された直胴部522よりも小径の貫入部524とを備えている。貫入部524が形成された側の直胴部522の端面には、両者の径の差に相当する段差が形成されている。この段差は、後述する開き加工に寄与する加工面523をなしている。一方、貫入部524の先端周縁部にも傾斜面が形成されているが、これは、貫入部524が直立部14の内側に円滑に貫入するように形成された面取り部525である。なお、貫入部524の外径は、直立部14の内径に等しい。
図17は、図10および図15および図16に示した仕上げ開きダイ510、仕上げ開きパンチ520および図10に示した開き受け430を装着した成形装置130の動作を説明する断面図である。同図に示すように、ワーク99は、その直立部14を下方に向けて、開き受け430の下面に配置される。このとき、開き受け430の陥没部439は、直立部14と連続している。また、直立部14以外の部分では、ワーク99は開き受け430に密着している。従って、後述するような仕上げ開き加工を受けても、ワーク99が、図中の上方に向かって変形することはない。
また、成形装置130において、仕上げ開きダイ510を形成する分割ダイ511、512は、直立部14の側方に互いに対向して配置される。更に、仕上げ開きパンチ520は、直立部14の下方から開き受け430に対向して配置される。このとき、開き受け430の陥没部439と、仕上げ開きパンチ520の貫入部524は、互いに同一の軸上に配列されている。
図18は、図17に示した成形装置130において、一対の分割ダイ511、512を互いに近づけて、その支持面516を直立部14に当接させると同時に、分割ダイ511、512自体も相互に当接させた状態を示す。このとき、分割ダイ511、512の支持面516は、直立部14の直立したままの部分に側方から密着している。この段階では、ワーク99に対して変形は生じておらず、まだ仕上げ開き加工は実施されていない。
図19は、成形装置130において、図18に示した状態から、仕上げ開きパンチ520を上昇させて仕上げ開き加工を実施している様子を示す断面図である。同図に示すように、直立部14において、その付け根付近は、仕上げ開きダイ510の支持面516および仕上げ開きパンチ520の貫入部524の側面に挟まれ、金属板20の表面に対して直立したまま保持されている。これに対して、直立部14の先端近傍は、仕上げ開きパンチ520の加工面523により、仕上げ開きダイ510の加工面518に押し付けられ、直立部14に対して直角になるまで、直立部14の外側に向かって開かれる。なお、すでに述べた通り、ワーク99の直立部14の先端近傍以外の部分は、開き受け430および仕上げ開きダイ510に挟まれている。従って、上記の仕上げ開き加工により外力が印加されても、直立部14の先端以外の部分は全く変形しない。
図20は、上記のような仕上げ開き加工により成形されたワーク99の外形を示す斜視図である。同図に示すように、金属板20に対する付け根付近は、直立部14が円筒15を形成したまま残っており、軸穴となる抜き穴12が形成されている。一方、直立部14の先端付近は、金属板20の表面と平行なフランジ部17を形成している。
上記のように加工されたワーク99では、直立部14の内側に、金属板20の厚さよりも大きな長さを有する抜き穴12が形成されている。従って、この穴に他の部材を挿通させたときに良好に支持される。また、抜き穴12形成する直立部14の外側も円筒形をなすので、Cクリップ、Eクリップ等の他の部材をここに装着できる。更に、フランジ部17が形成されているので、直立部14の外側に装着した部材が脱落することもない。また更に、ワーク99を他の部材に対して装着する場合に、フランジ部17をアンカーとして利用することもできる。
なお、上記実施形態では、図4から図7までに示した立ち上げ加工工程に先立ってワーク99に下穴を形成する打ち抜き加工を実施した。しかしながら、材料の加工性、厚さ等が十分に大きければこの工程を省略してもよい。
また、上記実施形態では、フランジ部17を形成する開き加工を予備開き加工工程および仕上げ開き加工工程に分けて実施したが、予備開き加工工程を省略して1回の開き加工工程でフランジを形成することもできる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
10 軸、12 抜き穴、14 直立部、17 フランジ部、20 金属板、214、314 貫通穴、99 ワーク、110、120、130 成形装置、210 打ち抜きダイ、212、312、432、532 金属塊、220 打ち抜きパンチ、222 押圧部、224 打ち抜き部、226 端面、310 バーリングダイ、320 バーリングパンチ、322、422、434、522、534 直胴部、324 先端部、410 予備開きダイ、411、412、511、512 分割ダイ、416、516 支持面、418、518、423、523 加工面、420 予備開きパンチ、424、524 貫入部、425、436、517、525、536 面取り部、430 開き受け、439 陥没部、510 仕上げ開きダイ、520 仕上げ開きパンチ