JP2007144438A - 一方向性電磁鋼板用鋳片とその鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気特性の優れた超高磁束密度一方向性電磁鋼板を安定的に製造する。
【解決手段】鋼中Bi:0.0005〜0.05質量%とし、タンディッシュ出側の溶鋼プール中に上堰を設けて区切られた領域を形成し、その領域内にBiあるいはBi合金を充填した鉄被覆ワイヤーを供給しつつ、溶鋼流量をノズル内面積で除すことで求められる浸漬ノズル内の溶鋼流量密度Q、鋳型内湯面近傍で旋回流を形成する電磁攪拌の推力Fが以下の関係式を満足することを特徴とする一方向性電磁鋼板用鋳片の鋳造方法である。
Q≧0.9(ton/m2/s)
3,000≦F≦10,000(Pa/m)
また、鋳片内でのBi濃度の均一度標準偏差σ/平均濃度Aが以下の関係式を満足することを特徴とする一方向性電磁鋼板用鋳片。
0.0005≦A≦0.05(%)
σ/A≦0.2
【選択図】図1

Description

本発明は、トランス等の鉄心として用いられる一方向性電磁鋼板用鋳片とその鋳造方法に関する。
一方向性電磁鋼板は、主にトランスその他の電気機器の鉄心材料として使用されており、励磁特性、鉄損特性等の磁気特性が優れていることが要求されている。励磁特性を表す数値としては、通常800A/mの磁場における磁束密度B(これをB8と以下示す)が使用される。
Biを0.0005〜0.0500%含有させることにより、優れた励磁特性を持つ超高磁束密度一方向性電磁鋼板が報告されている。しかしBiは低沸点かつ高蒸気圧の元素であるため、溶鋼内に有効に入りにくく、歩留が悪く、超高磁束密度効果が十分に満たされない場合がある。Biは低沸点元素であり、1450〜1550℃の溶鋼温度において1mmHg以上という高い蒸気圧を示している。
特許文献1において、質量%でSi:2.5〜4.0%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる溶鋼に、BiをFe系および、またはC系合金で被覆された状態でタンディッシュまたはタンディッシュ・ストッパ部において添加して、0.0005〜0.05%含有する溶鋼として鋳片とすることを特徴とする超高磁束密度一方向性電磁鋼板用鋳片の製造方法が開示されている。これにより、Biの歩留が極めて優れ、所定量を含有する鋳片を安定して製造することが可能となる。
特許文献2において、Bi:0.005〜0.05%を含有する方向性電磁鋼板を製造するに際し、連続鋳造時に未凝固部の溶鋼に対して電磁攪拌を付与する方法が開示されている。この目的は溶鋼の凝固に伴うBiの凝集を抑制するもので、電磁攪拌を付与する位置はメニスカスに近いほど好適であるが、近すぎると溶鋼の湯面変動や凝固シェル厚が薄いことによるブレークアウトの危険性が増大するため、凝固シェル厚が少なくともスラブ厚みの1/20以上は発達した位置とするのが好ましいとしている。また、電磁攪拌を付与する方向については、一方向付与よりもむしろ攪拌方向が周期的に変化する交番方向に付与する方が一層効果的であるとしている。
特許文献3においては、方向性電磁鋼板製造に際し、連続鋳造におけるタンディッシュ内溶鋼温度を液相線温度よりも少なくとも10℃以上高くして鋳造を行うことを特徴する極めて鉄損の低い高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法が開示されている。
特許第3244613号公報 特開2001−47202号公報 特開2001−47194号公報 日本鉄鋼協会編第3版鉄鋼便覧II製銑製鋼編 第611−670頁
特許文献1により、添加したBiの歩留が向上したものの、Bi歩留の絶対値はまだ低い値であった。また、発明者らがBi添加する条件に加えてその鋳造条件について詳細に検討したところ、鋳片内でBi濃度分布に偏りが生じる場合やBi濃度が鋳造長手方向に変動する場合が生じた。Bi濃度が変動するとその後の析出物の分散状態が変わり、二次再結晶挙動が変化するため、鋼板の磁気特性に大きく影響を与えることになる。そのため、鋳片内でのBi濃度を断面内および鋳造長手方向にわたって均一化できる技術が必要である。
特許文献2においては、連続鋳造スラブ段階におけるBiの均一分散性が極めて重要であるとはしているものの、溶鋼段階では均一に分散しているBiが凝固時に偏在することを問題としており、結果として特許文献2に記載の方法ではBiの均一かつ微細分散は十分には達成されていない。また、電磁攪拌を付与する方向として、一方向付与よりも交番方向に付与する方が効果的であるとしているが、一方向付与でも交番方向でもBiの均一かつ微細分散性は十分に達せられていない。そのため、鋼板の磁気特性が十分に安定するには至っていない。加えて、電磁攪拌を付与する位置として、溶鋼の湯面変動やブレークアウトを回避するため、凝固シェル厚が少なくともスラブ厚みの1/20以上発達した位置とするのが好ましいとしている。しかしながら、スラブ厚みの1/20以上発達した位置に攪拌を付与したとしてもその効果は不十分である。そのため、添加したBiを均一に分散させる技術とはいえない。
特許文献3も、Biの均一分散化を目的としたものであるが、非特許文献1にもスラブ鋳造においては溶鋼過熱度10〜30℃程度で行うと述べられており、一般的な技術に過ぎず、これではBiの均一かつ微細分散は実現されない。加えて、Bi添加方法等について具体的な記載がないため、Biの微細分散技術とはいえない。そのため、鋼板の磁気特性が十分に安定するには至っていない。
本発明は、鋳片内でBiを均一かつ微細分散させることができる鋳造方法とそのようにして鋳造された鋳片内でのBi濃度分布が均一な鋳片を提供することで、磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板を安定的に製造することを目的としている。
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:2.5〜4.0%、Mn:0.02〜0.3%、Sおよび/またはSe:0.005〜0.04%、Al:0.01〜0.065%、N:0.003〜0.015%、Bi:0.0005〜0.05%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる組成の一方向性電磁鋼板用鋳片を鋳造する方法において、タンディッシュ出側の溶鋼プール中に上堰を設けて区切られた領域を形成し、その領域内にBiあるいはBi合金を充填した鉄被覆ワイヤーを供給しつつ、溶鋼流量(ton/s)をノズル内面積(m2)で除すことで求められる浸漬ノズル内の溶鋼流量密度Q(ton/m2/s)、鋳型内湯面近傍で旋回流を形成する電磁攪拌の推力F(Pa/m)が以下の関係式を満足することを特徴とする一方向性電磁鋼板用鋳片の鋳造方法。
Q≧0.9(ton/m2/s) ・・・・・・・・・・(I)
3,000≦F≦10,000(Pa/m) ・・・・・・(II)
(2)(1)において、浸漬ノズルの吐出孔位置を電磁攪拌コイルの下方に設けることを特徴とする一方向性電磁鋼板用鋳片の鋳造方法。
(3)浸漬ノズル内にArガスを流量が吹込みながら鋳造することを特徴とする上記(1)、(2)に記載の一方向性電磁鋼板用鋳片の製造方法。
(4)質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:2.5〜4.0%、Mn:0.02〜0.3%、Sおよび/またはSe:0.005〜0.04%、Al:0.01〜0.065%、N:0.003〜0.015%、Bi:0.0005〜0.05%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる鋳片において、鋳片内でのBi平均濃度A(%)とその標準偏差σ(%)を用いて表現される鋳片内でのBi濃度の均一度σ/Aが以下の関係式を満足することを特徴とする一方向性電磁鋼板用鋳片。
0.0005≦A≦0.05(%) ・・・・・・・・・・(III)
σ/A≦0.2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(IV)
(5)鋳片内に存在するBiの粒径が10μm以下であり、また、その少なくとも50%以上が、(Fe,Mn)Sの縁に付着した形態で存在することを特徴とする上記(4)に記載の一方向性電磁鋼板用鋳片。
本発明により、Biを鋼中に均一かつ微細分散することが図れるので、磁束密度の高い製品が安定して、かつ低コストで製造することができ、工業的に非常に価値の高い有益なものとなる。
Biは沸点が1561℃、融点が271℃であることに加えて鋼に溶解しない。よって、添加したBiは液相状態で溶鋼中に存在している。その上密度が9.7g/cm3と大きいため、液滴径が増大するに従い溶鋼(密度7.0g/cm3)に対して密度差の影響が大となり、Biが沈降、偏在することとなる。そのため、Biを溶鋼中に安定して添加するためには、溶鋼温度が相対的に低くなる、できるだけ凝固に近い位置で添加し、かつ攪拌によって均一分散を図る必要がある。
均一分散を図るためには単位体積あたりの攪拌エネルギー密度が高い部位に添加する必要がある。その上、溶鋼温度ができるだけ低い領域となると浸漬ノズル内が最も好ましいことになる。しかしながら、浸漬ノズル内に直接添加する場合、例えばストッパー内に貫通孔をあける必要があること、円弧状に巻かれたワイヤーを直線状に矯正したワイヤーを限られた空間内に供給する必要があること等の課題があり簡便な添加方法とは言えない。
以下、図1に基づいて説明する。
浸漬ノズル内に次いで溶鋼温度の低いのは浸漬ノズル3直上のタンディッシュ12内である。タンディッシュ内においては取鍋11からロングノズル13を通じて溶鋼が注入される注入口近傍を除き、流速は遅いため添加した部位での均一混合は望めない。しかしながら、タンディッシュ12の下流は攪拌強度が大きい浸漬ノズル3であるため、添加したBiが滞留することなく溶鋼とともに、浸漬ノズル内に供給されればよいことになる。
そこで、図1に示すようにタンディッシュ12内のストッパー15周りに上堰14を設けてタンディッシュ内溶鋼プールを区切ることでBiの混合領域を限定した上で、上堰14を設けて区切られた領域に鉄被覆Biワイヤーを添加し、上堰14下方の開口部17を通して流れる溶鋼流16とともに添加したBiが輸送されるようにする。これにより、Biを歩留よく鋳片に添加することが可能となった。ここで上堰14を設けて区切られた領域とは、タンディッシュ内で上堰14を設けて区切られた領域のうち、浸漬ノズル3を含む領域をいう。
なお、本発明での上堰14とは、タンディッシュ内湯面からある深さまでにわたって耐火物が装入されたものであって、その耐火物の下部は溶鋼が流通する開口部17を有しているものをいう。また、堰の高さ(上堰下端から溶鋼表面までの距離)についてはワイヤーの形状や添加速度によって異なるため、特に限定しないが、少なくともワイヤーの添加速度(m/分)×溶解時間以上である必要がある。なお、堰下部の開口部は全体が開口していても、一部に1個以上の孔が空いているトンネル形状の堰であってもよい。
ここで、設ける堰を上堰とする理由は以下の通りである。前述したようにBiの融点は271℃と低いため、溶鋼中に添加した場合速やかに溶解する。そのため、タンディッシュ内でのBiの拡散を防止するにはタンディッシュ内湯面を含んだ堰形状とする必要がある。但し、下部はノズルに向けての溶鋼流16が必要であるため、下部に開口部17を設けるのである。その結果、添加したBiがタンディッシュ内の幅広い領域に輸送されることがないため、添加したBiを浸漬ノズル内に安定的に輸送することができる。
一方、下堰(堰の上方を溶鋼が通過する)を設けた場合には、添加したBiが湯面近傍で速やかに溶解するため、湯面近傍の溶鋼流動によってBiが下堰を乗り越えてタンディッシュ内の幅広い領域に輸送されてしまう。これでは堰を設けないときと同様であり、Biはタンディッシュ内のその部位で沈降しタンディッシュの底部に堆積することになり、Biの歩留低下を引き起こす。また、下堰より上流側の溶鋼流動に載ってBiがノズル近傍まで輸送されたとしても、下堰に邪魔され堰近傍のタンディッシュ底部にBiが堆積することになり、やはりBiの歩留低下を引き起こすことになる。
次に添加したBiを溶鋼中に均一かつ微細分散させる方法について説明する。
先ず、浸漬ノズル内での攪拌により、添加したBiの均一微細分散を図る。浸漬ノズル内における溶鋼攪拌強度は、ノズル内溶鋼流量密度(ton/m2/s)、すなわち溶鋼流量をノズル内面積で除した値に依存することになる。
次に、ストランド内でBiを均一分散させる方法について説明する。スラブ鋳造の場合、ストランドは水平断面が矩形で、かつ、湯面から最終凝固位置までの距離が長いため、ストランド内での流動を適切に制御する必要がある。本発明では鋳型内上部空間でBiを均一分散させ、均一にBiが分散された溶鋼をストランド内に輸送することで、ストランド内でのBiの均一分散をはかる。具体的には鋳型内電磁攪拌を用いて、ノズル吐出孔から鋳型内に流出した溶鋼を水平断面内で攪拌することでBiを均一微細分散させる。この状況を模式的に示したのが図2である。これは、スラブのような矩形断面では鉛直断面内での攪拌よりも水平断面内での攪拌が添加したBiの均一分散を図るには有効のためである。そのためメニスカス近傍の溶鋼流6として旋回流を形成するのである。これによって、Biが付加されたノズル吐出流と鋳型内電磁攪拌による攪拌とが合わさり、鋳型内上部空間でのBiの均一混合が図れる。加えてその領域にあるノズル吐出流のBi濃度がさらに均一化されるため、ストランド内に均一なBi濃度の溶鋼を輸送することができ、ストランド内でのBi濃度を均一化することができる。
この際、図2に示したように、ノズル吐出孔8の位置は電磁攪拌コイル2の設置位置の下方であることが好ましい。より具体的には、ノズル吐出孔8の中心位置が、電磁攪拌コイル2の下端位置9よりも下方であればよい。これは、ノズル吐出流と電磁攪拌による攪拌流との干渉を避け、水平断面内での旋回流形成を安定化させるためである。これによって、鋳型上部空間での混合が均一化するだけでなく、メニスカス近傍で均一な旋回流を形成することで、すなわち、凝固シェル前面に鋳型内周方向にわたって均一な流速を付与することになるため、凝固が鋳片周方向で均一化される効果をも有することによる。その際、凝固不均一は鋳型内メニスカス近傍で生じやすいため、メニスカス近傍に水平断面内に一様な旋回流を形成することが最も効果的である。
本発明と特許文献2の攪拌の違いについて詳しく説明する。特許文献2の一方の短辺から他方の短辺に向かう一方向の攪拌、あるいはその攪拌方向を変化させる交番攪拌を付与する条件と比較すると、一方向に攪拌を付与した場合、ストランド内で偏流を形成することになり、結果としてBi濃度の偏在を招くことになる。また、攪拌方向を仮に周期的に切り替える交番攪拌を付与した場合についても、一方向に攪拌されている時間帯では偏流を意図的に形成しているため、その時間帯ではBiの偏在は避けられない。また、本発明と最も異なる点は、攪拌が付与されている領域で仮にBiの均一分散が図れたとしてもそれ以外の部位では攪拌が作用しないためBiの均一分散は図れないことになる。加えて、このような攪拌を鋳型内で付与すると、偏流を意図的に形成した中での操業となるため、湯面レベルの大きな変動、パウダーの巻き込み、さらに不均一凝固が生じることになる。その結果として、ブレークアウト等の操業異常を避け、かつ表面割れ、パウダー巻き込み等の鋳片品質不良を避けるため、攪拌強度に自ずと制限が課せられることになり、Biの均一分散が図れないことになる。
また、一般的に浸漬ノズル内にはノズル詰まりを防止するため、不活性なArガスを吹き込み鋳造することが行われる。Arガス吹込みにより浸漬ノズル内での溶鋼攪拌強度が上昇するため、本発明においては添加したBiの均一混合を図る上で好ましい。ただし、Ar流量が過大となると、浸漬ノズル内で大気泡が生成、鋳型内で浮上し、鋳造性を悪化させる。そのため、適正なAr吹き込み量が存在する。
タンディッシュ内のC:0.09%、Si:3.5%、Mn:0.1%、S:0.022%、Al:0.03%、N:0.009%残部:Feおよび不可避的不純物からなる溶鋼に、ワイヤーフィーダー21を用いてBiを充填した鉄被覆ワイヤー20をタンディッシュ内の異なる位置に添加した。タンディッシュ内に図1に示すような上堰14を設けた場合と設けない場合の両方を行った。タンディッシュ12の容量は20トンである。タンディッシュ内に上堰14を設ける場合は、ストッパー15と上堰14との距離を0.6m、ロングノズル13とストッパー15との間の距離の7mとした。上堰はタンディッシュ内湯面から約0.4m浸漬させ、その上堰下端とタンディッシュ底部の間の開口部17の深さは約0.3mとした。特に断らない場合には、上堰14を設置し、鉄被覆Biワイヤーをストッパー近傍で添加した。
Bi充填鉄被覆ワイヤーには、充填材として純Biを用い、その外周に0.4mm軟鋼板を被覆した上でかしめて作成した。添加Bi濃度は鋼中Bi濃度が40ppmとなるように、ワイヤー形状、添加速度を調整した。
鋳片幅は1m〜1.5m、鋳造速度を0.4〜1m/分、浸漬ノズル内径を80mmから150mm、Ar流量を0〜20Nl/分まで変化させた条件で鋳造を行った。特に断らない場合は、ノズル内溶鋼流量密度は1.0ton/m2/sとし、浸漬ノズル内Ar吹き込みを行い、アルゴン流量を3Nl/分とした。併せて、電磁攪拌コイル2のコア厚は200mmとし、浸漬ノズル吐出孔8の位置は湯面から300mmの場合とした。
併せて鋳型内電磁攪拌(旋回流)を印加した場合、印加しない場合についても同様に実験を行った。電磁攪拌を実施する場合、電磁攪拌の推力Fとは、鋳型内壁面から15mmの位置に真鍮板を設置し、電磁攪拌装置を駆動させ真鍮板に作用する力を歪みゲージ等を用いて測定した値を意味し、単位はPa/mである。特に断らない場合、鋳型内電磁攪拌を旋回流でおこない、推力を5000Pa/mとした。ここで用いた電磁攪拌コイルのコア厚みは200mmとした。
鋳片内でのBi濃度の分布を調査するため、鋳片1/4幅、1/2幅、3/4幅位置において、上下面側から10,20,60,110mmからドリルにて切粉試料を採取し、それぞれの部位毎にBiのICP−MASS分析を行った。分析値をもとに鋳片内での平均Bi濃度A、標準偏差σを求め、標準偏差を平均値で除した値を濃度バラツキ指標σ/Aとした。σ/Aの値が小さいほど、Bi濃度の均一度が高いと判定した。
図3には幾つか異なるBiの添加条件で実験した結果を示した。Biをロングノズル近傍に添加した条件で最も歩留が低く、その次に上堰を設けずストッパー近傍に添加した条件、最も歩留が高いのは上堰を設けストッパー近傍に添加した条件であった。ロングノズル近傍に添加した条件で歩留が最も低いのは、添加部位の流速が十分ではないため、Biが沈降しタンディッシュ底部に偏在することに加えて、添加したBiが幅広い領域にわたって輸送され、その部位で沈降するためである。なお、上堰を設けない場合にはBiの混合領域が限定されないため、添加したBiが幅広い領域にわたって輸送され、その部位で沈降するため、上堰を設けた場合よりも歩留が低位となった。
図4には、ノズル内溶鋼流量密度が2水準の条件で、旋回流を形成する鋳型内電磁攪拌が鋳片内Bi濃度均一度に及ぼす影響を調査した結果を示した。浸漬ノズル内溶鋼流量密度が高いほうが均一度がよいこと、電磁攪拌を付与することで均一度が良くなることがわかる。

図5はノズル内溶鋼流量密度を幅広く振った条件で鋳片内Bi濃度均一度との関係を調査した結果を示した。(a)はAr吹込みを行わなかった場合、(b)はAr吹込量5Nl/分とした場合の結果である。ノズル内溶鋼流量密度については0.9ton/m2/s以上で鋳片内Bi濃度の均一度の改善効果が顕著となること、Ar吹込みによって、また、旋回流を形成する鋳型内電磁攪拌の適用によって鋳片内Bi濃度の均一度は改善されることがわかった。なお、Ar吹込み流量が20Nl/分を超えると、湯面レベル制御性が悪化した。
以上の結果から、浸漬ノズル内溶鋼流量密度Qは、
Q≧0.9(ton/m2/s) ・・・・・・・・・(I)
とする。
また、浸漬ノズル内のAr吹き込みを行う場合には、Ar吹き込み流量Gを、
G≦20(Nl/分) ・・・・・・・・・・・(V)
とすると好ましい。なお、Ar吹き込みによるBi均一化効果を発現させるためには、Ar吹き込み量Gを1Nl/分以上とすると好ましい。
次に鋳型内電磁攪拌(旋回流)の推力F(Pa/m)と鋳片内Bi濃度均一度との関係を調査した。結果を図6に示す。推力Fの増大とともに鋳片内Bi濃度の均一度は向上し、その効果は推力Fが3000Pa/m以上で顕著となった。一方、10,000Pa/mを超えると、攪拌による湯面レベルの不均一それに伴う表面割れおよびパウダー巻き込みが生じた。そのため、鋳型内電磁攪拌の推力Fは、
3,000≦F≦10,000(Pa/m) ・・・・・(II)
とする。
同じ電磁攪拌を付与した条件において、浸漬ノズル吐出孔と電磁攪拌コイルとの位置関係が鋳片表層部のBi濃度均一性に及ぼす影響を調査した結果を図7に示した。電磁攪拌コイルのコア厚は200mmとし、浸漬ノズルの吐出孔8位置は湯面から300mmの場合と150mmの場合の2条件とした。吐出孔8の位置(湯面からの距離)が300mmの場合は吐出孔位置が電磁攪拌コイル2より下方にあり、吐出孔8の位置が150mmの場合は吐出孔位置が電磁攪拌コイル2の高さ範囲内にある。吐出孔の位置が300mmにおいては、吐出孔の位置が150mmの場合に比較して鋳片表層部でのBi濃度均一性が良好であることがわかった。
以上のように、タンディッシュ内ストッパー近傍に、かつその添加部位と上流側を上堰で区切った条件でBiを添加し、タンディッシュから浸漬ノズル内にBiを歩留よく安定して供給できるようにし、浸漬ノズル内で高い溶鋼流量密度、Arガス吹き込みによって狭い空間内での強攪拌によるBiの混合、鋳型内メニスカス近傍では鋳型内電磁攪拌(旋回流)による水平断面内での攪拌を付与し、溶鋼中で均一に分散された溶鋼をストランド内全体に輸送することで、Biを安定してかつ鋳片内で均一に分散させることができる。その際、水平断面内での均一な旋回流を形成するためにノズル吐出孔位置が電磁攪拌コイルの下方であることがより鋳片内でのBi濃度の均一化を図る上で好ましい。
なお、添加するBi濃度は磁気特性ならびに鋼板歩留の観点から以下のように規定される。Bi濃度が0.0005%未満の場合、磁気特性の改善効果が見られない。一方、0.05%を越えると、鋼板端辺部に耳割れが発生する。そのため、Bi濃度は0.0005%以上0.05%以下とする。
その結果、本発明を用いることで鋳片内でのBi濃度の平均値A,その平均値と鋳片内でのBi濃度の標準偏差σから求められる鋳片内でのBi濃度均一度σ/Aが以下のように表現される鋳片を鋳造することができる。
0.0005≦A≦0.05(%) ・・・・・・・・・・(III)
σ/A≦0.2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(IV)
次に、本発明で鋳造された鋳片内でのBi存在形態の特徴について、SEM−EDXを用いた観察結果に基づき説明する。図8(a)は鋳片内、図8(b)は鋳片を再度加熱し(Fe,Mn)Sを溶体化させた後、冷却した鋳片中に含まれるBi存在形態をSEM−EDXで調査した結果を示したものであり、図中白い部分がBi、黒色部が(Fe,Mn)Sである。2つの図から明らかなように、Biは粒径10μm以下の微細な形で存在することがわかる。
幾つかのサンプルについて同様な調査を行ったが、鋳片内でのBi濃度の均一度が良好な鋳片(σ/A≦0.2)についてはいずれもBi粒径の最大値が10μm以下であることがわかった。一方、鋳片内でのBi濃度の均一度が不良なもの(σ/A>0.2)についてはBi粒径の最大値が10μmを超える形態で存在していることを確認した。
もう1つの特徴として、図8(a)からわかるように鋳片ではBiは(Fe,Mn)Sの縁に存在する。これはBiがFeには溶解しないがMn,Sとは化合物を形成するという特性によっている。また、この特徴は鋳片を再度加熱し、(Fe,Mn)Sを溶体化させた後、冷却した状態においても保持されることが図8(b)からも確認される。あたかも鋼中に分散しているBiを析出サイトとして(Fe,Mn)Sが析出しているかのように見える。
本発明法で製造した鋳片内に存在するBiをSEM−EDXにて100個程度観察した。観察に当たっては、SEM−EDXの分解能から0.1μm以上のものについて測定を行った。その結果、Bi濃度が増えるに従い単独で鋳片内に存在する場合も見られ、Bi濃度によって鋼中でのBiの存在形態は変化するが、本発明のBi濃度0.0005%〜0.05%の範囲内においては(Fe,Mn)Sの縁に存在する比率は50%以上である。
また、図8(b)から溶体化後においてもBiは(Fe,Mn)Sの縁に存在する、言い換えれば、Biが(Fe,Mn)Sの微細析出を促していることになる。Mn,Sの固体鉄中での拡散係数を考慮すると、鋳片段階でBiが(Fe,Mn)Sの縁に存在していることが(Fe,Mn)Sの微細析出を図る上でポイントで、この個数比率が多いほうが好ましい。
なお、10μmを超える粗大なBiも(Fe,Mn)Sの縁に観察されるものもあるが、Biの粒径が大きくなることは鋳片内でのBiの存在密度が少なくなることと等価のため、その後の析出物制御を図る上では好ましくない。そのため、鋳片内でのBiの存在形態の特徴として、先ずBiの粒径が10μm以下の形態で鋼中に均一に分散していること、その上で個数比率として50%以上のBiが(Fe,Mn)Sの縁に存在することを特徴とする。
鋳片内でのBiは、融点が低いため、圧延中においても液滴として存在していることになり、圧延中メタルフローに沿って延伸され、さらに微細分散される。ここで、鋳片内でのBiが10μm以下の微細な形で均一に分散されていれば、圧延にてさらに微細分散されるため、溶体化後に析出する(Fe,Mn)Sを微細分散することができる。加えて(Fe,Mn)Sを析出サイトとして、析出するAlNの微細分散化が図れインヒビター強度をアップすることができ、一方向性電磁鋼板の磁気特性を安定して向上することが可能となる。一方、鋳片内でのBiが不均一かつ粗大に存在している場合においてもBiは圧延にて微細分散されるが、その効果は鋼板内の局部的な部位に限定されるため、鋳片内でのBi粒径の微細化およびBi濃度の均一化が重要であることは明らかである。
鋳片内でのBi濃度の均一度が良好でBiの最大粒径が10μm以下の鋳片と、鋳片内でのBi濃度の均一度が不良でBiの最大粒径が10μmを超える鋳片とを用いて電磁鋼板を製造し、それぞれの磁気特性を評価した。なお、電磁鋼板の製造方法と磁気特性の評価方法は以下に述べる方法で行った。すなわち、鋳造して得た鋳片を1350℃で加熱後直ちに熱延して2.3mm厚の熱延コイルとし、さらに1100℃の焼鈍を施し、一回冷延で0.22mm厚とした。引き続き850℃で脱炭焼鈍を行い、MgOを主成分とする一次皮膜・焼鈍分離剤を塗布後、1200℃の仕上げ焼鈍を行った。水洗後、張力コーティングを施し磁気測定(B8)に供した。磁気測定にあたっては幅方向に15分割し、平均値と標準偏差を求めた。その結果、Biの最大粒径が10μm以下の鋳片から製造した鋼板の磁気特性はバラツキなく極めて良好(磁束密度B8は平均値が1.94T以上、ばらつき(標準偏差)が0.02T以下と良好)であった。一方、Biの最大粒径が10μmを超える鋳片から製造した鋼板の磁気特性については、局部的には磁気特性が良好なものも見られるが、バラツキが極めて大きく(ばらつき(標準偏差)が0.02T超)、結果として安定して磁気特性の改善をはかることができなかった。
なお、Bi粒径の下限値については、より(Fe,Mn)Sの微細分散を図るためにはBi粒が微細化していることが好ましいことは明らかであるため、Bi粒径の下限値については特に限定しない。
上述のとおり、本発明における鋳片内のBi平均濃度は0.0005%以上0.05%以下とするが、Biの鋳片内での均一度はBi濃度の上昇につれて低下するため、磁気特性のバラツキは増大する。そのため、より安定して磁気特性の改善を図ろうとするとBi濃度が0.005%以下であることがより好ましい。これによりBiが(Fe,Mn)Sの縁に存在する個数比率を70%以上が得られる。
次に各成分について濃度の限定理由を説明する。
Cは0.03%未満の場合、鋳片がスラブの場合、スラブ加熱時に異常粒成長し、製品板で線状細粒と呼ばれる二次再結晶不良を引き起こす。一方、0.15%を超えた場合、冷延後の脱炭焼鈍時の脱炭時間が長時間となり、脱炭が不完全で磁気時効と呼ばれる磁性不良が発生する。そのため、C濃度は0.03%以上0.15%以下とする。
Siは電気抵抗を高めて渦電流損失を低減する元素である。2.5%未満の場合、渦電流損失を抑制できない。一方、4%を超えた場合、加工性が著しく劣化し、常温での冷延が困難になる。そのため、Si濃度は2.5%以上4%以下とする。
Mnは二次再結晶を左右するインヒビター(Fe,Mn)Sおよび/または(Fe,Mn)Seを形成するために必要な元素である。0.02%未満の場合、(Fe,Mn)Sおよび/または(Fe,Mn)Seの絶対量が不足する。一方、0.3%を超えた場合、スラブ加熱時の(Fe,Mn)Sおよび/または(Fe,Mn)Seの固溶が困難となり、熱延時の析出物サイズが粗大化し、インヒビターとしての最適サイズ分布を形成できない。そのため、Mn濃度は0.02%以上0.3%以下とする。
Sおよび/またはSeは(Fe,Mn)Sおよび/または(Fe,Mn)Se生成のためにMnとともに必要な元素であるが、0.005〜0.04%を逸すると十分なインヒビター効果が得られない。そのため、S濃度および/またはSe濃度は0.005%以上0.04%以下とする。
Alは高磁束密度一方向性電磁鋼板のためのインヒビターを構成するために必要な元素である。0.01%未満の場合、AlNの絶対量が量的に不足する。一方、0.065%を超えると、AlNが粗大析出してしまう。そのため、Al濃度は0.01%以上0.065%以下とする。
NはAlNを形成するために必要な元素であるが、0.003〜0.015%を逸すると、十分なインヒビター効果が得られない。そのため、N濃度は0.003%以上0.015%とする。
C:0.08%、Si:3.25%、Mn:0.08%、S:0.03%、Al:0.03%、N:0.01%残部:Feおよび不可避的不純物からなる溶鋼を、図1に示すように、取鍋11からロングノズル13を介して溶鋼容量20トンのタンディッシュ12に注入した。ロングノズル13からストッパー15までの距離は7mである。このタンディッシュ内の異なる位置に、ワイヤーフィーダー21を用いてBiを充填した鉄被覆ワイヤー20を添加した。Bi充填鉄被覆ワイヤー20には、充填材として純Biを用い、0.4mm軟鋼板をかしめて作成したワイヤーを用いた。なお、添加位置はロングノズル近傍あるいはストッパー近傍の2種類とした。加えて、各条件に応じて添加Bi濃度は0.004%となるようにワイヤー形状や添加速度を調整した。また、タンディッシュ内でストッパーから500mm離れた位置に下部が200mm開口した上堰14を設けた場合と設けない場合の2種類とした。
鋳片幅は1.1m、浸漬ノズル3の内径を150mmとし鋳造速度を0.4m/分、0.5m/分の条件で鋳造を行った。併せて種々の攪拌条件の鋳型内電磁攪拌を印加した場合、印加しない場合についても同様に実験を行った。なお、電磁攪拌コイル2のコア厚は200mmとし、電磁攪拌コイル2の上端位置は湯面位置とほぼ同じ高さとした。浸漬ノズルの吐出孔の湯面からの深さを調整し、浸漬ノズルの吐出孔8が電磁攪拌コイル2よりも下方に設ける条件(表1の本発明例6以外)と電磁攪拌コイル内とした条件(表1の本発明6)で実験を行った。
鋳片内でのBi濃度の分布を調査するため、鋳片1/4幅、1/2幅、3/4幅位置において、上下面表面から10,20,60,110mmからドリルにて切粉試料を採取し、ICP−MASS分析を行った。分析値をもとに鋳片内での平均Bi濃度A、標準偏差σを求め、標準偏差を平均値で除した値σ/Aを濃度バラツキ指標とした。鋳造条件と鋳片内でのBi濃度均一度との関係を調査した結果を表1に示した。表1のワイヤー添加位置において、STと記載したものはストッパー近傍で添加した水準であり、LNと記載したものはロングノズル近傍で添加した水準である。また、Bi歩留は60%以上を良好とした。
表1の本発明例1〜5については、鉄被覆Biワイヤーをストッパー近傍で添加し、上堰を有し、溶鋼流量密度が高く、鋳型内電磁攪拌を旋回モードでかつ十分な推力で実施し、かつ浸漬ノズルの吐出孔を電磁攪拌コイルよりも下方に設けているため、Bi歩留が60%以上で良好であり、Bi均一度(σ/A)も0.2以下で良好であった。本発明例5は本発明例1と対比してAr吹き込みを実施していない点が異なるため、本発明例1と比較してBi均一度が若干高い結果となった。本発明例6は、電磁攪拌コイル内にノズル吐出孔を設けた条件であるが、鋳片内でのBi濃度の均一度が良好範囲内であるもののやや低下した。
比較例1は、ワイヤー添加位置がロングノズル近傍であり、上堰を設置しておらず、溶鋼流量密度が不足し、鋳型内電磁攪拌を実施していないため、Bi歩留が低くBi均一度が悪い結果となった。比較例2は上堰を設置していないため、Bi歩留が低く、かつ鋳片厚み方向でのBi均一度が不良であった。比較例3は、鋳型内電磁攪拌の推力が不足し、Bi均一度が不良であった。比較例4は、鋳型内電磁攪拌の推力が高すぎ、鋳片表面割れが発生した。比較例5は、Ar吹き込み流量が多すぎ、湯面レベル制御不良のため鋳造を中断した。
鋳型内電磁攪拌の攪拌モードについて、比較例6は旋回モードではなく一方向モード、比較例7は交番モードで実施した。推力については本発明の好適範囲内にある5000Pa/mとした。その結果、いずれにおいてもブレークアウトが発生したために鋳造を中断した。そこで比較例8、9については、それぞれ一方向モード、交番モードとしつつ、推力を本発明範囲内である3000Pa/mに下げた。その結果ブレークアウトの発生はなかったもののBi均一度が悪化する結果となった。一方向モード、交番モードを用いた場合、ブレークアウトの発生がなくかつBi均一度が良好となる電磁攪拌推力範囲はみつからなかった。
次に、表1の本発明2、比較例2の鋳造条件を採用し、添加するBi濃度が異なるようにワイヤー形状や添加速度を調整した鋳片を鋳造した。
各鋳片の幅中央部の1/4厚部からサンプルを切り出し、各鋳片サンプルについて100個程度Biを観察し、Biの粒径ならびに(Fe,Mn)Sとの関係をSEM−EDXにて調査した。得られた鋳片は1350℃で加熱後直ちに熱延して2.3mm厚の熱延コイルとし、さらに1100℃の焼鈍を施し、一回冷延で0.22mm厚とした。引き続き850℃で脱炭焼鈍を行い、MgOを主成分とする一次皮膜・焼鈍分離剤を塗布後、1200℃の仕上げ焼鈍を行った。水洗後、張力コーティングを施し磁気測定(B8)に供した。磁気測定にあたっては幅方向に15分割し、平均値と標準偏差を求めた。磁束密度B8は平均値が1.94T以上、ばらつき(標準偏差)が0.02T以下であれば良好である。
得られた結果を表2にまとめて示した。表2において、本発明例A〜Fは表1の本発明例2の鋳造条件を採用した水準であり、比較例A〜Dは表1の比較例2の鋳造条件を採用した水準である。表2の「Bi存在形態」とは、Biが(Fe,Mn)Sの縁に存在する個数比率を%表示したものである。
表2の本発明例A〜Fについては、Bi濃度が本発明範囲内であり、鋳造条件が本発明範囲内であるためにBi均一度が良好である。その結果、Biの最大径はいずれも10μm以下であり、Bi存在形態も50%以上であって良好であった。その結果、磁束密度は平均値、ばらつきともに良好であった。なお、本発明例A〜Fにおいて、Bi濃度が低くなるほどBi均一度が良好であり、またBi存在形態が高い値を示した。その結果、磁束密度のばらつきはBi濃度が低いほど良好な結果となっている。
表2の比較例Aは、Bi濃度が本発明の下限を外れており、磁束密度の平均値が低い値となった。比較例B、Cは、Bi濃度は本発明範囲ではあるものの鋳造条件が外れているため、Bi均一度が不良であり、結果としてBi最大粒径、Bi存在形態ともに不良となり、磁束密度のばらつきが大きい結果となった。比較例Dは、Bi平均濃度が本発明の上限を超えていたため、鋼板で耳割れが多発し、磁気特性評価を実施することができなかった。
上堰を設けたタンディッシュ周辺を示す概略図である。 鋳型付近の溶鋼流動を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。 Biワイヤー添加位置と上堰有無によるBi歩留りの状況を示す図である。 浸漬ノズル内溶鋼流量密度と電磁攪拌有無によるBi均一度の状況を示す図である。 電磁攪拌有無、Ar吹き込み有無と浸漬ノズル内溶鋼流量密度とBi均一度との関係を示す図であり、(a)はAr吹き込みあり、(b)はAr吹き込みなしである。 鋳型内電磁攪拌推力とBi均一度との関係を示す図である。 浸漬ノズルの吐出孔の位置とBi均一度との関係を示す図である。 鋳片内のBi存在形態を示すSEM−EDX写真であり、(a)は鋳片内、図8(b)は鋳片を再度加熱し(Fe,Mn)Sを溶体化させた後、冷却した鋳片中に含まれるBi存在形態である。
符号の説明
1 鋳型
2 電磁攪拌コイル
3 浸漬ノズル
4 溶鋼
5 ストランドプール
6 溶鋼流
7 溶鋼流
11 取鍋
12 タンディッシュ
13 ロングノズル
14 上堰
15 ストッパー
16 溶鋼流
17 開口部
20 Biワイヤー
21 ワイヤーフィーダー

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:2.5〜4.0%、Mn:0.02〜0.3%、Sおよび/またはSe:0.005〜0.04%、Al:0.01〜0.065%、N:0.003〜0.015%、Bi:0.0005〜0.05%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる組成の一方向性電磁鋼板用鋳片を鋳造する方法において、タンディッシュ出側の溶鋼プール中に上堰を設けて区切られた領域を形成し、その領域内にBiあるいはBi合金を充填した鉄被覆ワイヤーを供給しつつ、溶鋼流量(ton/s)をノズル内面積(m2)で除すことで求められる浸漬ノズル内の溶鋼流量密度Q(ton/m2/s)、鋳型内湯面近傍で旋回流を形成する電磁攪拌の推力F(Pa/m)が以下の関係式を満足することを特徴とする一方向性電磁鋼板用鋳片の鋳造方法。
    Q≧0.9(ton/m2/s) ・・・・・・・・(I)
    3,000≦F≦10,000(Pa/m) ・・・(II)
  2. 浸漬ノズルの吐出孔位置を電磁攪拌コイルの下方に設けることを特徴とする請求項1に記載の一方向性電磁鋼板用鋳片の鋳造方法。
  3. 浸漬ノズル内にArガスを吹込みながら鋳造することを特徴とする請求項1又は2に記載の一方向性電磁鋼板用鋳片の製造方法。
  4. 質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:2.5〜4.0%、Mn:0.02〜0.3%、Sおよび/またはSe:0.005〜0.04%、Al:0.01〜0.065%、N:0.003〜0.015%、Bi:0.0005〜0.05%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる鋳片において、鋳片内でのBi平均濃度A(%)とその標準偏差σ(%)を用いて表現される鋳片内でのBi濃度の均一度σ/Aが以下の関係式を満足することを特徴とする一方向性電磁鋼板用鋳片。
    0.0005≦A≦0.05(%) ・・・・・・・・(III)
    σ/A≦0.2 ・・・・・・・・・・・・・・・・(IV)
  5. 鋳片内に存在するBiの粒径が10μm以下であり、また、その少なくとも50%以上が、(Fe,Mn)Sの縁に付着した形態で存在することを特徴とする請求項4に記載の一方向性電磁鋼板用鋳片。
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