JP6816516B2 - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、電気自動車などの駆動モータや各種電気機器用モータの鉄心材料として使用される高強度無方向性電磁鋼板に関する。
近年、自動車用途などで、容量が大きく高速で回転するモータが増えてきている。当該モータの回転子用材料には、遠心力や応力変動に耐えるための機械強度が要求される。鋼の機械強度を上昇させるためには細粒強化、転位強化などの方法が用いられるが、一般にこれら強化作用は、軟磁気特性を劣化させる。機械強度と共に優れた磁気特性を維持できれば、回転子と固定子に同じ材料を用いることができる。特許文献1〜8などでは、低鉄損及び高強度の両立を目的として、冷延再結晶後に金属Cuを微細析出させる方法が提案されている。
特開2004−084053号公報 国際公開第2005/033349号 特開2004−183066号公報 国際公開第2004/050934号 特開2008−223045号公報 特開2010−24509号公報 国際公開第2013/024899号 国際公開第2013/146886号
Cuを微細析出させる技術は、低い鉄損と高い機械強度を得ることができるが、含まれるCuが多いほど、熱間圧延の際に鋼板の表面に疵が発生しやすいという問題がある。本発明は、Cuを微細析出させた高強度の無方向性電磁鋼板を提供するにあたって、製造過程において、疵の発生を抑制し、生産性を向上させることを目的とする。
本発明者らは、Cu起因の熱延板の疵を抑えるためには、スラブ加熱時の鋼の酸化を抑えることが有効であり、そのためには、スラブが含有するAl量を制限することが有効であることを見出した。しかし単純にAl量を減少させると、窒化物や硫化物の微細析出により磁気特性が劣化することが分かった。そのため、Al量の最適化と製鋼時の介在物の制御により、窒化物や硫化物の析出を抑え、良好な磁気特性を確保する。具体的には、下記のとおりである。
(1)質量%で、C:0.005%以下、Si:1.0〜4.0%、Mn:0.05〜1.5%、Al:0.03%未満、Cu:0.5〜2.5%、O:0.003〜0.030%、S:0.004%以下、N:0.004%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
鋼中に含まれる、直径が5μm以下の介在物の単位体積当たりの個数密度N1と、直径が5μmを超える介在物の単位体積当たりの個数密度N2の比率、N1/N2が20以上であり、未再結晶組織を含まないフェライト粒からなる金属組織を有し、前記フェライト粒の平均結晶粒径が30μm以上、180μm以下であり、
前記フェライト粒の内部に個数密度1.0×104〜1.0×107個/μm3の金属Cu粒子を含有し、前記フェライト粒の内部の前記金属Cu粒子の平均粒径が1.0nm以上、10.0nm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
(2)質量%でCrを0.1〜4.0%含むことを特徴とする、前記(1)に記載の無方向性電磁鋼板。
本発明によれば、Cuを微細析出させた高強度無方向性電磁鋼板を生産性良く製造できる。
代表的な合金における、酸化増量の温度変化を示す図である。 1100℃加熱時の酸化増量に対するAl添加の影響を示す図である。 鉄損に対するAl含有量の影響を示す図である。 鉄損に対する酸素濃度の影響を示す図である。 鉄損に対する介在物個数密度比N1/N2の影響を示す図である。 介在物粒子径とS濃度の関係を示す図である。 介在物内の元素分布例を示す図である。
Cu起因の疵を防止するためには、熱延加熱時のスラブの酸化を抑制することが重要である。なぜならば、Cuを含有する鋼が酸化すると、Cuよりも卑であるFeが選択的に酸化し、Cuがスケールと地鉄の界面に金属状態で濃化し、これが種々の疵の原因になるからである。
<実験1>
表1に示す成分を持つ鋼を真空溶解し、できたインゴットに粗熱延を施し、粗バーから10mm×20mm×30mmの試験片を切り出し、大気中焼鈍に供した。加熱温度を1050℃〜1200℃の範囲で変化させ、均熱時間は30分とした。焼鈍前後の試料の重量を測定した。その増加分は酸化に伴う酸化増量である。加熱温度と酸化増量の関係を図1に示す。Si、Alを含まない合金a1に対して、Siを3.1%とした合金a2では、1150℃以下の酸化は効果的に抑制される。そこにAlを0.7%含有させた合金a3(Siは3.2%)では、酸化増量が増え、耐酸化性は劣化する。また、合金a2、a3共、1160℃を超えると、急激に酸化増量は増加する。
上記の結果から、SiはCu起因の疵を防止する作用を持つが、Alが複合含有されるとその疵防止作用は低下してしまう。またスラブの加熱温度1160℃以上の高温になると、Cuの析出が顕著になり、疵の原因となる。
<実験2>
次にSi量を3.1〜3.2%に固定し、Al量を変化させた鋼を真空溶解で溶製し、上記と同様の実験を行った。成分組成を表2に示す。図2は1100℃における酸化増量に対するAl添加量の影響である。Al量の増加と共に酸化増量は増加する。特に0.1%以上になるとその影響は顕著である。従って、Cuの析出を抑制し、熱延時の疵発生を防止するにはAlを0.1%未満とすることが有効であると考えられる。
表2のそれぞれのインゴットを供試材にして、加熱温度1100℃の粗圧延後、加熱温度1140℃、仕上げ温度850℃、仕上げ厚2.5mmの仕上げ熱延を施した。各材料における熱延板表面のヘゲ疵の有無を表2に示す。上記の様に推定された通り、Al含有量を0.1%以下とすれば熱延板の疵が発生しなかった。
<実験3>
次に上記熱延板に870℃の熱延板焼鈍を実施後、0.35mmに冷間圧延し、1000℃×30秒の仕上げ焼鈍を実施、その後Cuを析出させるため、550℃×30秒の焼鈍を施した。磁気特性、機械特性を同じ表2に示す。図3には、Al添加量と鉄損W10/400の関係を示す。Alが0.03〜0.08の範囲で鉄損が劣化している。鉄損が劣化するのは、スラブ加熱時にAlNが溶解し、熱延後にAlNが微細析出し、仕上げ焼鈍時の粒成長性を阻害するためと考えられる。疵を防止し、かつ、低い鉄損を得るためにAl量を0.03%よりも少なくしなければならない。
以上の様に、疵の防止と鉄損劣化を防ぐためには、鋼のAl含有量を0.03%よりも少なくしなければならないが、脱酸剤にAlを用いると溶製後のAl量をその範囲にすることは困難である。従って以下にSi脱酸を行った場合の鋼板の磁気特性について調査した。
<実験4>
電解鉄と鉄鉱石(Fe23)を溶解し、脱酸剤としてSiを投入し、成分調整し、脱酸剤投入から鋳型に注入するまでの保持時間を0.5分〜60分の範囲で変化させてインゴットを製造した。表3に得られたインゴットの成分分析結果を示す。酸素含有量は保持時間と共に低下するが、10分以上保持すると、約100ppmの一定の値になった。
また、インゴットから試料を切り出し、断面の組織観察を行い、含まれる介在物の大きさと、その個数密度を調査した。直径が5μm以下の介在物の単位面積当たりの個数密度N1と、直径が5μmを超える介在物の単位面積当たりの個数密度N2、およびそれらの比率、N1/N2を表3に示す。直径5μm以下の介在物は、保持時間を長くしてもその個数密度の変化は小さい。介在物個数が保持時間に依存しないことから、これらは主に、鋼の凝固時に晶出する二次脱酸生成物と考えられる。一方、5μm以上の大型の介在物個数は時間と共に低下する。これらは、溶鋼中で既に晶出していた介在物と推定される。
次にこれらインゴットを供試材として、加熱温度1100℃の粗圧延後、加熱温度1140℃、仕上げ温度850℃、仕上げ厚2.5mmの仕上げ熱延を施した。熱延板の表面を観察したところ、すべての熱延板で、表面のヘゲ疵は見られなかった。
上記熱延板に870℃の熱延板焼鈍を施し、仕上げ厚0.35mmの冷延を実施後、1000℃、30秒の仕上げ焼鈍、550℃、30秒のCu析出焼鈍を行い、無方向性電磁鋼板を得た。鉄損W10/400の値を表3に示す。脱酸時間を10分以上にすることで、降伏強度や引張強度にも優れた、良好な鉄損値の無方向性電磁鋼板を得ることができる。
上記結果を用いて、鋼中の含有酸素量と鉄損の関係を図4に示す。酸素量の低下と共に鉄損は低下する。図5には、N1/N2と鉄損W10/400の関係を示す。N1/N2が20以上になると、鉄損が顕著に小さくなることが分かる。
表3のc9のインゴット中の介在物について、その直径と含有するSの関係を図6に示す。小さい介在物ほど、含有するS量が増加する傾向を持つ。含有Sが大きかった2.2μmの介在物の元素分布を図7に示す。介在物上にMnSが析出していることが分かる。 以上から、径の小さい二次脱酸生成物には、マトリックス中のSがMnSとして析出し易いと考えられる。従って、図5でN1/N2が20以上で鉄損が小さくなったのは、Sをスカベンジしない大型介在物個数が減少したと共に、小型の二次脱酸生成物上へのMnSの析出が進み、Sの無害化が進んだためと推測できる。従って、本発明では、鉄損を低減させるため、N1/N2を20以上とする。
<鋼の化学組成、組織>
以下の説明において、鋼に含まれる各元素の含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
<C:0.005%以下>
Cは鉄損を劣化させるため、C含有量は低ければ低いほどよい。このような現象は、C含有量が0.005%超で顕著である。従って、C含有量は0.005%以下とし、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.002%以下とする。
<Si:1.0〜4.0%>
Siは、先の実験で示したように、スラブ加熱時の鋼の酸化を抑えて、Cuの析出を抑制する作用を持つ。更に、Siは固有抵抗を上昇させ、鉄損を低減させる作用も持つ。Si含有量が1.0%未満では、これらの作用効果が十分に得られない。従って、Si含有量は1.0%以上とし、好ましくは2.0%以上、より好ましくは2.5%以上とする。 一方、Si含有量が4.0%超では、鋼が脆化し、圧延性が低下する。従って、Si含有量は4.0%以下とし、好ましくは3.8%以下とし、より好ましくは3.5%以下とする。
<Mn:0.05%〜1.5%>
Mnは鋼の固有抵抗を高める作用と共に、MnSの溶体化温度を高めることで、熱間圧延中の硫化物の微細析出を防止する作用を持つ。Mn含有量が0.05%未満では、これらの作用効果を十分に得られない。従って、Mn含有量は0.05%以上とし、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上とする。一方、Mn含有量が1.5%超では、鋼が脆化することがある。従って、Mn含有量は1.5%以下とし、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下とする。
<Al:0.03%未満>
AlはSiを含有する鋼の酸化を促進し、疵の原因となる。また、実験4の図5で示した通り、Alが0.03%以上であると、鉄損が劣化する。本発明では、Alの含有量を0.03未満にする。好ましくは0.008以下であり、より好ましくは0.005以下である。
<Cu:0.5〜2.5%>
Cuは、冷延再結晶後に粒内に微細に析出させることで、鉄損の劣化なく、機械強度を上昇させる。Cu含有量が0.5%未満では、この効果を十分に得られない。従って、Cu含有量は0.5%以上とし、好ましくは0.7%以上とし、より好ましくは1.0%以上とする。一方、Cu含有量が2.5%超では、熱間圧延時の疵が生じやすく、脆化も生じやすい。従って、Cu含有量は2.5%以下とし、好ましくは2.0%以下とし、より好ましくは1.5%以下とする。
<O:0.003〜0.030%>
一般的に、酸素は介在物を生成し、磁気特性に悪影響を与える。しかし、先に示した通り、脱酸後、凝固時に生成される二次脱酸生成物は、自身にMnSを晶出あるいは析出させ、鋼中のSを無害化する作用を持つ。この作用を持つために、Oの含有量は0.003%以上とする。好ましくは0.005%以上、更に好ましくは、0.010%以上である。一方、Oが0.030%より多いと、Sの無害化の作用を持たない大型の介在物が増え、鉄損を劣化させる。従って含有O量は0.030%以下とし、好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.020%以下とする。
<S:0.004%以下>
Sは微細硫化物を生成し、結晶粒成長性を劣化させるため、S含有量は低ければ低いほどよい。このような現象は、S含有量が0.004%超で顕著である。従って、S含有量は0.004%以下とし、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.002%以下とする。
<N:0.004%以下>
Nは微細窒化物を生成し、結晶粒成長性を劣化させるため、N含有量は低ければ低いほどよい。このような現象は、N含有量が0.004%超で顕著である。従って、N含有量は0.004%以下とし、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.002%以下とする。
<Cr:0.1〜4.0%>
Crは、スラブ加熱時の鋼の酸化を抑えCuの析出を抑制する作用を持つので添加することができる。Cr含有量が0.1%未満ではこの作用が十分得られない。従ってCr含有量は0.1%以上とし、好ましくは0.5%以上、更に好ましくは1%以上である。一方Cr含有量が4.0%を超えると、ヒステリシス損失が増加する。従って、Cr含有量は4.0%以下とし、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下とする。
<その他元素>
粗大な硫酸化物や硫化物を形成することでSを固定し、微細な硫化物の生成を抑制させるために、REMを0.03%以下の範囲で添加してもよい。REMとは、原子番号が57のLaから71のLuまでの15元素に原子番号が21のScと原子番号が39のYを加えた合計17元素の総称である。Caも同様の効果を持つので、0.005%以下の範囲で含有させてもよい。
磁気特性の改善を目的として、Sn、Sbをそれぞれ0.05%以下の範囲で添加することもできる。
また、機械強度上昇や集合組織改善のため、Pを0.1%以下の範囲で添加することもできる。
その他の有害な不純物元素は、極力低減することが好ましく、特にTi、Nb、Vは、0.005%以下にすることが好ましい。
残部は、不可避不純物とFeである。
<介在物個数密度比率N1/N1:20以上>
本発明ではAl添加量を制限するため、Alを脱酸剤に用いることができない。一方で、実験4で示した様に、Si脱酸の場合は、凝固時の二次脱酸生成物が生成し易くなるが、この生成物は、自身にMnSを晶出あるいは析出させ、鋼中のSを無害化する作用を持つことが分かった。一般に、二次脱酸生成物の粒径は、溶鋼中に存在する一次脱酸生成物の粒径に比べて小さいが、実験4の結果から、5μmを境としてそれより小さい介在物は、概ね二次脱酸生成物と言える。直径が5μm以下の介在物の単位面積当たりの個数密度N1と、直径が5μmを超える介在物の単位面積当たりの個数密度N2とした時に、図5からわかるようにその比率、N1/N2を20以上にすると鉄損が良好となる。従って本発明では、N1/N2を20以上とする。好ましくは25以上、より好ましくは30以上である。一方、その上限は、O量の規定からおのずと決まるので、特に規定はしない。
尚、介在物の観察は、金属顕微鏡による観察や、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)によって行うことができる。
<未再結晶組織を含まないフェライト粒からなる金属組織>
鋼板内に未再結晶組織が残留すると、鋼板の鉄損が著しく増大する。従って、本発明では、未再結晶組織を含まないフェライト粒からなる金属組織とする。
<フェライト粒の平均結晶粒径:30〜180μm>
フェライト粒の平均結晶粒径は、鋼板のヒステリシス損失を低減させるために、30μm以上とする必要がある。ただし、フェライト粒の平均結晶粒径が大きすぎる場合、渦電流損失の増加により、鉄損が劣化する場合もある。従って、フェライト粒の平均結晶粒径は180μm以下とする。フェライト粒の平均結晶粒径の下限値は好ましくは30μm、より好ましくは50μm、更に好ましくは70μmである。フェライト粒の平均結晶粒径の上限値は好ましくは、170μm、より好ましくは160μm、更に好ましくは150μmである。なお、フェライト粒の平均結晶粒径は、JIS G 0551「鋼−結晶粒度の顕微鏡試験方法」に従って求めることができる。
<金属Cu粒子の平均粒径:1.0nm以上10.0nm以下>
再結晶粒内に析出したCu粒子は、転位の移動を妨げる。粒径が小さすぎる金属Cu粒子は、転位の移動に対する抵抗力が小さい。一方、粒径が大きい金属Cu粒子は、転位の移動に対する抵抗力が大きいが、金属Cu粒子の個数密度が減少するので、粒子間距離が大きくなり、転位の移動が容易となる。更に、粒子径が磁壁厚程度の100nm以上の金属Cu粒子は、磁壁移動を妨げ、ヒステリシス損失を増加させる。それ故、金属Cu析出粒子の平均粒径は1.0nm以上、10.0nm以下とする。好ましくは2.0nm以上、5.0nm以下、より好ましくは2.0nm以上、4.0nm以下、更に好ましくは2.0nm以上、3.0nm以下である。
金属Cu粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の明視野像を用いて求める。像内の個々のCu粒子の面積を求め、その面積を持つ円の直径(円相当径)を、個々の粒子の径とみなす。
<金属Cu粒子の個数密度:1.0×104〜1.0×107/μm3
本発明では、フェライト粒内の体積1μm3当たりの金属Cu粒子の個数は1.0×104/μm3以上とする。好ましくは1.0×105/μm3以上、より好ましくは5.0×105/μm3以上である。一方、金属Cu粒子の個数密度が大きすぎる場合、鋼板の磁気特性を劣化させるおそれがある。従って、フェライト粒内の金属Cu粒子の個数密度の下限値は1.0×107/μm3以下とする。
金属Cu粒子の個数密度とは、全てのフェライト粒内の粒径1.0nm以上の金属Cu粒子の個数密度である。粒径1.0nm未満の金属Cu粒子は、検出が困難であり、また、本実施形態に係る鋼板の特性にほぼ影響を与えないと考えられるので、計測対象とされない。本実施形態に係る鋼板のフェライト粒内の金属Cu粒子の個数密度Nは、電子顕微鏡観察像の面積をA、そこに観察されるCu粒子の数をn、その平均粒径(円相当径の算術平均)をdとしたとき、以下の数式に基づいて求められる。
N=n/(A×d)
<製造方法>
本発明の無方向性電磁鋼板は、例えば以下の様な方法により製造できる。即ち、前記成分組成の鋼を溶製した後、連続鋳造などによりスラブとし、前記スラブに熱間圧延を施して熱間圧延鋼板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を施して熱延焼鈍鋼板とし、前記熱間圧延鋼板あるいは熱延焼鈍鋼板に冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とし、前記冷間圧延鋼板に再結晶焼鈍を施し、その後Cuを析出させ無方向性電磁鋼板製品とする無方向性電磁鋼板を製造する方法である。
製鋼段階においては、Siを脱酸剤に用いることが有効である。鋳造時には、先に示したN1/N2を20以上にするために、比較的大きな一次脱酸生成物を、可能な限り浮上させ除去することが重要である。そのためには、脱酸剤投入後の撹拌を十分行うと共に、タンディッシュの堰を適切に設けたり、電磁ブレーキや、鋳型内電磁撹拌を適切に用いたりすることが有効である。一方、凝固時に生成される二次脱酸生成物は、先に述べたようにSの無害化に有効であるので、鋳片の冷却を適切に行う必要がある。その温度パターンは、製造する鋼の成分組成によって多少異なるが、MnSが生成する概ね900℃〜1100℃の範囲に滞在する時間を長くすることが有効である。少なくとも1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上である。
次に本発明では、前記熱間圧延工程のスラブ加熱時には、前記スラブの表面の温度が1160℃を超えない様に制御することが好ましい。図1に示すように、本発明の鋼は、1160℃を超えると著しく酸化し易くなる。その場合、Cuが金属状態でスケールと地鉄の界面に析出し、熱延板にヘゲ疵などが形成され易くなる。それを防ぐため、本発明では、加熱時に表面の温度が1160℃を超えないように制御することが好ましい。
その他の製造条件は特に限定しないが、下記の様な条件で製造できる。
熱延時のスラブ加熱温度は1000℃以上が好ましい。スラブ加熱温度が1000℃未満であると、熱間圧延が困難になる。スラブの表面温度は先の通り、1160℃を超えないように制御する。熱延仕上げ温度FTは900℃以下が好ましい。熱延鋼板の巻取温度CTは、高いと、巻取り後のコイル内でCuが析出し、熱延鋼板の靭性が低下するので、500℃以下が好ましい。熱延の仕上げ板厚は、冷間圧延時の高い圧下率によって、集合組織が劣化することを防ぐため、2.7mm以下が好ましい。ただし、あまり薄いと、熱延が困難となり、生産性が低下するので、熱延の仕上げ板厚は1.6mm以上が好ましい。
最終製品の集合組織を改善し、高い磁束密度を得るため、熱延鋼板に熱延板焼鈍を施してもよい。好ましい均熱温度は750〜1100℃、均熱時間は10秒〜5分である。均熱温度が750℃未満、又は、均熱時間が10秒未満であると、集合組織を改善する効果が小さい。均熱温度が1100℃を超えると、又は、均熱時間が5分を超えると、消費エネルギーの上昇、付帯設備の劣化などで製造コストの上昇を招く。冷延後、再結晶前の鋼板内のCuを微細にし、冷延後の再結晶焼鈍時にCuを再固溶させるため、800〜400℃の冷却区間は、平均冷却速度10℃/秒以上で冷却する。平均冷却速度は20℃/以上が好ましく、40℃/秒以上がより好ましい。平均冷却速度が速いことは、熱延焼鈍板の靭性の確保にもつながる。
更に、本発明製造方法は、熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする。冷間圧延は1回で行ってもよいし、中間焼鈍を含む2回以上を行ってもよい。最終の圧下率は60〜90%の範囲が好ましい。これにより、高磁束密度と低鉄損が得られる。中間焼鈍の温度は900〜1100℃が好ましい。この場合も、800〜400℃の冷却区間は、10℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することが望ましい。
再結晶工程では、鋼板の金属組織を再結晶させるとともに、Cuを溶体化する。前述した要件の一つであるフェライト粒の平均結晶粒径を30μm以上とするために、また、Cuを固溶させるために、均熱温度は850℃以上が好ましい。一方、均熱温度が高すぎると、フェライト粒の平均結晶粒径が規定の180μm超になり易くなると共に、エネルギー消費が大きくなり、また、ハースロールなどの付帯設備が傷み易くなるので、均熱温度は1100℃以下が好ましい。均熱時間は10秒以上2分以下が好ましい。一旦固溶したCuを冷却過程で析出させないため、冷却過程における800℃から400℃までの平均冷却速度は10℃/秒以上が好ましい。
次に、再結晶工程で得られる再結晶鋼板を焼鈍して、結晶粒内にCuを析出させる。フェライト粒内に析出するCu粒子の個数密度を1.0×104〜1.0×107個/μm3とし、平均サイズを1.0nm以上、10.0nm以下とするため、均熱温度は450℃以上、650℃以下が好ましい。
また、均熱時間は10秒以上必要である。好ましくは30秒以上、より好ましくは40秒以上である。上記温度範囲であれば、バッチ焼鈍で数時間の均熱時間で焼鈍を行うことも可能である。均熱温度及び均熱時間の最適条件は、鋼板の成分組成、特にCu量によって多少変化するが、概ね上記範囲に含まれる。
再結晶焼鈍とCu析出焼鈍を一つの連続焼鈍ラインで同時に行う場合は、均熱温度を850℃以上、1050℃以下、均熱時間を10秒以上とし、冷却過程の600℃〜450℃の温度域に鋼板が滞留する時間を10秒以上とする。
本発明製造方法で得られた鋼板には、必要に応じて、絶縁皮膜を施し、高強度で低鉄損の無方向性電磁鋼板を得ることができる。
<実施例1>
表4に示す成分組成の鋼を真空溶解し、得られたインゴットに加熱温度1150℃、仕上げ温度850℃、巻き取り温度400℃、仕上げ厚2.3mmの熱延を実施した。熱延板のヘゲ疵の有無を目視で確認して、結果を表4に示した。得られた熱延板に、均熱温度1000℃、保持時間30秒の熱延板焼鈍を施してから、冷間圧延に供し、0.35mmの冷延板を得た。その冷延板に均熱温度1000℃、保持時間30秒、800℃から400℃までの平均冷却速度20℃/secの再結晶焼鈍を施し、その後、均熱温度550℃、保持時間60秒のCu析出焼鈍を施し、無方向性電磁鋼板の製品板とした。得られた製品板内の、直径が5μm以下の介在物の単位体積当たりの個数密度N1と、直径が5μmを超える介在物の単位体積当たりの個数密度N2を観察し、その比率、N1/N2を求めた。更に平均のフェライト結晶粒径、析出Cuの個数密度と平均粒子径、機械特性と磁気特性を調査し、それぞれを表4に示した。製品特性として、W10/400は20W/kg以下、B50は1.60T以上、YP、TSはそれぞれ400MPa以上、500MPa以上を良好な特性とした。本発明によって、熱延板の疵なしに、良好な機械特性と良好な鉄損を両立することができる。
<実施例2>
表4の合金d15の冷延板を供試材にして、均熱温度950〜1050℃、均熱時間30〜90秒の仕上げ焼鈍を施し、更に、均熱温度550〜650℃、均熱時間30秒のCu析出焼鈍を施して、無方向性電磁鋼板を得た。実施例1と同様に、比率N1/N2、平均のフェライト結晶粒径、析出Cuの個数密度と平均粒子径、機械特性と磁気特性を調査した。それぞれを表5に示した。本発明によって、良好な機械特性と良好な鉄損を両立することができる。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.005%以下
    Si:1.0〜4.0%、
    Mn:0.05〜1.5%、
    Al:0.03%未満、
    Cu:0.5〜2.5%、
    O:0.003〜0.030%、
    S:0.004%以下、
    N:0.004%以下、
    を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    鋼中に含まれる、直径が5μm以下の介在物の単位体積当たりの個数密度N1と、直径が5μmを超える介在物の単位体積当たりの個数密度N2の比率、N1/N2が20以上であり、
    未再結晶組織を含まないフェライト粒からなる金属組織を有し、
    前記フェライト粒の平均結晶粒径が30μm以上、180μm以下であり、
    前記フェライト粒の内部に個数密度1.0×104〜1.0×107個/μm3の金属Cu粒子を含有し、
    前記フェライト粒の内部の前記金属Cu粒子の平均粒径が1.0nm以上、10.0nm以下である
    ことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
  2. 質量%でCrを0.1〜4.0%含むことを特徴とする、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
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