JP6816516B2 - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Description
鋼中に含まれる、直径が5μm以下の介在物の単位体積当たりの個数密度N1と、直径が5μmを超える介在物の単位体積当たりの個数密度N2の比率、N1/N2が20以上であり、未再結晶組織を含まないフェライト粒からなる金属組織を有し、前記フェライト粒の平均結晶粒径が30μm以上、180μm以下であり、
前記フェライト粒の内部に個数密度1.0×104〜1.0×107個/μm3の金属Cu粒子を含有し、前記フェライト粒の内部の前記金属Cu粒子の平均粒径が1.0nm以上、10.0nm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
表1に示す成分を持つ鋼を真空溶解し、できたインゴットに粗熱延を施し、粗バーから10mm×20mm×30mmの試験片を切り出し、大気中焼鈍に供した。加熱温度を1050℃〜1200℃の範囲で変化させ、均熱時間は30分とした。焼鈍前後の試料の重量を測定した。その増加分は酸化に伴う酸化増量である。加熱温度と酸化増量の関係を図1に示す。Si、Alを含まない合金a1に対して、Siを3.1%とした合金a2では、1150℃以下の酸化は効果的に抑制される。そこにAlを0.7%含有させた合金a3(Siは3.2%)では、酸化増量が増え、耐酸化性は劣化する。また、合金a2、a3共、1160℃を超えると、急激に酸化増量は増加する。
上記の結果から、SiはCu起因の疵を防止する作用を持つが、Alが複合含有されるとその疵防止作用は低下してしまう。またスラブの加熱温度1160℃以上の高温になると、Cuの析出が顕著になり、疵の原因となる。
次にSi量を3.1〜3.2%に固定し、Al量を変化させた鋼を真空溶解で溶製し、上記と同様の実験を行った。成分組成を表2に示す。図2は1100℃における酸化増量に対するAl添加量の影響である。Al量の増加と共に酸化増量は増加する。特に0.1%以上になるとその影響は顕著である。従って、Cuの析出を抑制し、熱延時の疵発生を防止するにはAlを0.1%未満とすることが有効であると考えられる。
表2のそれぞれのインゴットを供試材にして、加熱温度1100℃の粗圧延後、加熱温度1140℃、仕上げ温度850℃、仕上げ厚2.5mmの仕上げ熱延を施した。各材料における熱延板表面のヘゲ疵の有無を表2に示す。上記の様に推定された通り、Al含有量を0.1%以下とすれば熱延板の疵が発生しなかった。
次に上記熱延板に870℃の熱延板焼鈍を実施後、0.35mmに冷間圧延し、1000℃×30秒の仕上げ焼鈍を実施、その後Cuを析出させるため、550℃×30秒の焼鈍を施した。磁気特性、機械特性を同じ表2に示す。図3には、Al添加量と鉄損W10/400の関係を示す。Alが0.03〜0.08の範囲で鉄損が劣化している。鉄損が劣化するのは、スラブ加熱時にAlNが溶解し、熱延後にAlNが微細析出し、仕上げ焼鈍時の粒成長性を阻害するためと考えられる。疵を防止し、かつ、低い鉄損を得るためにAl量を0.03%よりも少なくしなければならない。
電解鉄と鉄鉱石(Fe2O3)を溶解し、脱酸剤としてSiを投入し、成分調整し、脱酸剤投入から鋳型に注入するまでの保持時間を0.5分〜60分の範囲で変化させてインゴットを製造した。表3に得られたインゴットの成分分析結果を示す。酸素含有量は保持時間と共に低下するが、10分以上保持すると、約100ppmの一定の値になった。
以下の説明において、鋼に含まれる各元素の含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
Cは鉄損を劣化させるため、C含有量は低ければ低いほどよい。このような現象は、C含有量が0.005%超で顕著である。従って、C含有量は0.005%以下とし、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.002%以下とする。
Siは、先の実験で示したように、スラブ加熱時の鋼の酸化を抑えて、Cuの析出を抑制する作用を持つ。更に、Siは固有抵抗を上昇させ、鉄損を低減させる作用も持つ。Si含有量が1.0%未満では、これらの作用効果が十分に得られない。従って、Si含有量は1.0%以上とし、好ましくは2.0%以上、より好ましくは2.5%以上とする。 一方、Si含有量が4.0%超では、鋼が脆化し、圧延性が低下する。従って、Si含有量は4.0%以下とし、好ましくは3.8%以下とし、より好ましくは3.5%以下とする。
Mnは鋼の固有抵抗を高める作用と共に、MnSの溶体化温度を高めることで、熱間圧延中の硫化物の微細析出を防止する作用を持つ。Mn含有量が0.05%未満では、これらの作用効果を十分に得られない。従って、Mn含有量は0.05%以上とし、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上とする。一方、Mn含有量が1.5%超では、鋼が脆化することがある。従って、Mn含有量は1.5%以下とし、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下とする。
AlはSiを含有する鋼の酸化を促進し、疵の原因となる。また、実験4の図5で示した通り、Alが0.03%以上であると、鉄損が劣化する。本発明では、Alの含有量を0.03未満にする。好ましくは0.008以下であり、より好ましくは0.005以下である。
Cuは、冷延再結晶後に粒内に微細に析出させることで、鉄損の劣化なく、機械強度を上昇させる。Cu含有量が0.5%未満では、この効果を十分に得られない。従って、Cu含有量は0.5%以上とし、好ましくは0.7%以上とし、より好ましくは1.0%以上とする。一方、Cu含有量が2.5%超では、熱間圧延時の疵が生じやすく、脆化も生じやすい。従って、Cu含有量は2.5%以下とし、好ましくは2.0%以下とし、より好ましくは1.5%以下とする。
一般的に、酸素は介在物を生成し、磁気特性に悪影響を与える。しかし、先に示した通り、脱酸後、凝固時に生成される二次脱酸生成物は、自身にMnSを晶出あるいは析出させ、鋼中のSを無害化する作用を持つ。この作用を持つために、Oの含有量は0.003%以上とする。好ましくは0.005%以上、更に好ましくは、0.010%以上である。一方、Oが0.030%より多いと、Sの無害化の作用を持たない大型の介在物が増え、鉄損を劣化させる。従って含有O量は0.030%以下とし、好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.020%以下とする。
Sは微細硫化物を生成し、結晶粒成長性を劣化させるため、S含有量は低ければ低いほどよい。このような現象は、S含有量が0.004%超で顕著である。従って、S含有量は0.004%以下とし、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.002%以下とする。
Nは微細窒化物を生成し、結晶粒成長性を劣化させるため、N含有量は低ければ低いほどよい。このような現象は、N含有量が0.004%超で顕著である。従って、N含有量は0.004%以下とし、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.002%以下とする。
Crは、スラブ加熱時の鋼の酸化を抑えCuの析出を抑制する作用を持つので添加することができる。Cr含有量が0.1%未満ではこの作用が十分得られない。従ってCr含有量は0.1%以上とし、好ましくは0.5%以上、更に好ましくは1%以上である。一方Cr含有量が4.0%を超えると、ヒステリシス損失が増加する。従って、Cr含有量は4.0%以下とし、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下とする。
粗大な硫酸化物や硫化物を形成することでSを固定し、微細な硫化物の生成を抑制させるために、REMを0.03%以下の範囲で添加してもよい。REMとは、原子番号が57のLaから71のLuまでの15元素に原子番号が21のScと原子番号が39のYを加えた合計17元素の総称である。Caも同様の効果を持つので、0.005%以下の範囲で含有させてもよい。
残部は、不可避不純物とFeである。
本発明ではAl添加量を制限するため、Alを脱酸剤に用いることができない。一方で、実験4で示した様に、Si脱酸の場合は、凝固時の二次脱酸生成物が生成し易くなるが、この生成物は、自身にMnSを晶出あるいは析出させ、鋼中のSを無害化する作用を持つことが分かった。一般に、二次脱酸生成物の粒径は、溶鋼中に存在する一次脱酸生成物の粒径に比べて小さいが、実験4の結果から、5μmを境としてそれより小さい介在物は、概ね二次脱酸生成物と言える。直径が5μm以下の介在物の単位面積当たりの個数密度N1と、直径が5μmを超える介在物の単位面積当たりの個数密度N2とした時に、図5からわかるようにその比率、N1/N2を20以上にすると鉄損が良好となる。従って本発明では、N1/N2を20以上とする。好ましくは25以上、より好ましくは30以上である。一方、その上限は、O量の規定からおのずと決まるので、特に規定はしない。
鋼板内に未再結晶組織が残留すると、鋼板の鉄損が著しく増大する。従って、本発明では、未再結晶組織を含まないフェライト粒からなる金属組織とする。
フェライト粒の平均結晶粒径は、鋼板のヒステリシス損失を低減させるために、30μm以上とする必要がある。ただし、フェライト粒の平均結晶粒径が大きすぎる場合、渦電流損失の増加により、鉄損が劣化する場合もある。従って、フェライト粒の平均結晶粒径は180μm以下とする。フェライト粒の平均結晶粒径の下限値は好ましくは30μm、より好ましくは50μm、更に好ましくは70μmである。フェライト粒の平均結晶粒径の上限値は好ましくは、170μm、より好ましくは160μm、更に好ましくは150μmである。なお、フェライト粒の平均結晶粒径は、JIS G 0551「鋼−結晶粒度の顕微鏡試験方法」に従って求めることができる。
再結晶粒内に析出したCu粒子は、転位の移動を妨げる。粒径が小さすぎる金属Cu粒子は、転位の移動に対する抵抗力が小さい。一方、粒径が大きい金属Cu粒子は、転位の移動に対する抵抗力が大きいが、金属Cu粒子の個数密度が減少するので、粒子間距離が大きくなり、転位の移動が容易となる。更に、粒子径が磁壁厚程度の100nm以上の金属Cu粒子は、磁壁移動を妨げ、ヒステリシス損失を増加させる。それ故、金属Cu析出粒子の平均粒径は1.0nm以上、10.0nm以下とする。好ましくは2.0nm以上、5.0nm以下、より好ましくは2.0nm以上、4.0nm以下、更に好ましくは2.0nm以上、3.0nm以下である。
本発明では、フェライト粒内の体積1μm3当たりの金属Cu粒子の個数は1.0×104/μm3以上とする。好ましくは1.0×105/μm3以上、より好ましくは5.0×105/μm3以上である。一方、金属Cu粒子の個数密度が大きすぎる場合、鋼板の磁気特性を劣化させるおそれがある。従って、フェライト粒内の金属Cu粒子の個数密度の下限値は1.0×107/μm3以下とする。
N=n/(A×d)
本発明の無方向性電磁鋼板は、例えば以下の様な方法により製造できる。即ち、前記成分組成の鋼を溶製した後、連続鋳造などによりスラブとし、前記スラブに熱間圧延を施して熱間圧延鋼板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を施して熱延焼鈍鋼板とし、前記熱間圧延鋼板あるいは熱延焼鈍鋼板に冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とし、前記冷間圧延鋼板に再結晶焼鈍を施し、その後Cuを析出させ無方向性電磁鋼板製品とする無方向性電磁鋼板を製造する方法である。
熱延時のスラブ加熱温度は1000℃以上が好ましい。スラブ加熱温度が1000℃未満であると、熱間圧延が困難になる。スラブの表面温度は先の通り、1160℃を超えないように制御する。熱延仕上げ温度FTは900℃以下が好ましい。熱延鋼板の巻取温度CTは、高いと、巻取り後のコイル内でCuが析出し、熱延鋼板の靭性が低下するので、500℃以下が好ましい。熱延の仕上げ板厚は、冷間圧延時の高い圧下率によって、集合組織が劣化することを防ぐため、2.7mm以下が好ましい。ただし、あまり薄いと、熱延が困難となり、生産性が低下するので、熱延の仕上げ板厚は1.6mm以上が好ましい。
表4に示す成分組成の鋼を真空溶解し、得られたインゴットに加熱温度1150℃、仕上げ温度850℃、巻き取り温度400℃、仕上げ厚2.3mmの熱延を実施した。熱延板のヘゲ疵の有無を目視で確認して、結果を表4に示した。得られた熱延板に、均熱温度1000℃、保持時間30秒の熱延板焼鈍を施してから、冷間圧延に供し、0.35mmの冷延板を得た。その冷延板に均熱温度1000℃、保持時間30秒、800℃から400℃までの平均冷却速度20℃/secの再結晶焼鈍を施し、その後、均熱温度550℃、保持時間60秒のCu析出焼鈍を施し、無方向性電磁鋼板の製品板とした。得られた製品板内の、直径が5μm以下の介在物の単位体積当たりの個数密度N1と、直径が5μmを超える介在物の単位体積当たりの個数密度N2を観察し、その比率、N1/N2を求めた。更に平均のフェライト結晶粒径、析出Cuの個数密度と平均粒子径、機械特性と磁気特性を調査し、それぞれを表4に示した。製品特性として、W10/400は20W/kg以下、B50は1.60T以上、YP、TSはそれぞれ400MPa以上、500MPa以上を良好な特性とした。本発明によって、熱延板の疵なしに、良好な機械特性と良好な鉄損を両立することができる。
表4の合金d15の冷延板を供試材にして、均熱温度950〜1050℃、均熱時間30〜90秒の仕上げ焼鈍を施し、更に、均熱温度550〜650℃、均熱時間30秒のCu析出焼鈍を施して、無方向性電磁鋼板を得た。実施例1と同様に、比率N1/N2、平均のフェライト結晶粒径、析出Cuの個数密度と平均粒子径、機械特性と磁気特性を調査した。それぞれを表5に示した。本発明によって、良好な機械特性と良好な鉄損を両立することができる。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.005%以下
Si:1.0〜4.0%、
Mn:0.05〜1.5%、
Al:0.03%未満、
Cu:0.5〜2.5%、
O:0.003〜0.030%、
S:0.004%以下、
N:0.004%以下、
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
鋼中に含まれる、直径が5μm以下の介在物の単位体積当たりの個数密度N1と、直径が5μmを超える介在物の単位体積当たりの個数密度N2の比率、N1/N2が20以上であり、
未再結晶組織を含まないフェライト粒からなる金属組織を有し、
前記フェライト粒の平均結晶粒径が30μm以上、180μm以下であり、
前記フェライト粒の内部に個数密度1.0×104〜1.0×107個/μm3の金属Cu粒子を含有し、
前記フェライト粒の内部の前記金属Cu粒子の平均粒径が1.0nm以上、10.0nm以下である
ことを特徴とする無方向性電磁鋼板。 - 質量%でCrを0.1〜4.0%含むことを特徴とする、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
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