JP5103964B2 - 表面性状の良好な深絞り用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、表面性状の良好な深絞り用鋼板およびその製造方法に関するものである。
鋼の脱酸は、従来、特許文献1に開示されているように、フェロチタンで行われていた。しかし、近年では、酸素濃度の安定した鋼を低コストで製造するために、Alにて脱酸するAl脱酸鋼が主流となっている。
鋼のAl脱酸は、ガス攪拌やRH脱ガス装置を用い、生成酸化物を凝集させて、浮上分離する方法である。この場合、鋳片中にはAl2O3酸化物が不可避に残留することになる。しかも、このAl2O3はクラスター状になるため分解しにくく、時には数100μm以上ものクラスター状介在物が鋳片表層部に捕捉されると、ヘゲ、スリーバーのような表面欠陥につながることになるから、美麗さを必要とする自動車用鋼板では致命的な欠陥となる。また、Al脱酸では、タンディッシュからモールドへ注入するために使用するイマージョンノズルの内壁にAl2O3が付着し、ノズル閉塞をひき起こすという問題もあった。
このようなAl脱酸に伴う上述した問題に対し、アルミキルドした溶鋼中にCaを添加することにより、CaO、Al2O3複合酸化物を生成させる方法が提案されている。(例えば、特許文献2、3、4)。この方法におけるCa添加の目的は、Al2O3とCaOとを反応させてCaOAl2O3、12CaO Al2O3、3CaO Al2O3等の低融点複合酸化物を形成することにより、上述した問題点を克服しようとするところにある。
しかしながら、溶鋼中へCaを添加すると、このCaが鋼中のSと反応してCaSを形成し、このCaSが発錆の原因をつくる。この点、特許文献5では、発錆を防止するために、鋼中に残留するCa量を5ppm以上10ppm未満とする方法を提案している。しかし、Ca量を10ppm未満にしたとしても、鋼中に残留するCaO- Al2O3系酸化物の組成が適正でない場合、特にCaO濃度が30%以上の酸化物の場合、その酸化物中のSの溶解度が増加し、温度低下時や凝固時に介在物内周囲にCaSが不可避に生成する。その結果、そのCaSが起点となって錆が発生し、製品板の表面性状の劣化を招くようになる。また、このような発錆点が残留したままめっき、あるいは塗装のような表面処理を行うと、処理後にどうしても表面ムラが発生する。一方で、介在物中のCaO濃度が20%以下と低くかつAl2O3濃度が高い場合、特にAl2O3濃度が70%の場合には、介在物の融点が上がり、介在物どうしが凝縮しやすくなるため、連続鋳造時にノズル詰まりが発生しやすくなるだけでなく、鋼板表面にはヘゲ、スリーバ等が発生し、表面性状を著しく悪化させるという問題があった。
これに対し、近年に至り、Alを添加せずに、Tiで脱酸する方法が、例えば、特許文献6に開示されている。このようなAlレスTi脱酸の方法は、Al脱酸法に比べ、到達酸素濃度が高く介在物量は多いが、クラスター状の酸化物は生成しない。とくに生成する介在物の形態がTi酸化物- Al2O3系となり、2〜50μm程度の粒状の酸化物が分散した状態を呈する。そのため、介在物がクラスター状になることに起因する上述した表面欠陥は減少する。しかしながら、このTi脱酸の場合、Al≦0.005%の溶鋼では、Ti濃度が0.010%以上になると、固相状態のTi酸化物がタンディッシュノズルの内面に地金を取り込んだ形で付着成長し、かえってノズルの閉塞を誘発するという新たな問題があった。
このような問題(ノズルの閉塞防止)を解決するために、特許文献7では、AlレスTi脱酸鋼において、ノズルを通過する溶鋼の酸素量を制限することにより、ノズル内面に成長するTi2O3の成長を防止する方法を提案している。しかし、特許文献7に記載される方法の場合は、酸素量の制限にも限界があることから、処理量が限られる(800トン程度)という別の問題がある。また、閉塞の進行とともにモールド内湯面のレベル制御が不安定になるため、根本的な解決にはなっていないのが実情である。
特許文献8では、タンディッシュの閉塞防止策として、溶鋼のSi濃度を適正化して介在物組成をTi2O3-SiO2系にすることにより、ノズル内面に成長するTi2O3の成長を防止する方法を提案している。しかし、単にSi濃度を増加しただけでは介在物中にSiO2を含有させることは難しく、少なくとも(%Si)/(%Ti)>50を満足するようにしなければならない。したがって、鋼中のTi濃度が0.01%の場合、SiO2-Ti酸化物を得るためには、Si濃度は0.5%以上が必要となる。しかし、Siの増加は材質の硬化を招き、また、めっき性の劣化を招く。ゆえに、Si濃度の増加は鋼板表面性状への悪影響が大きくなり、根本的な解決方法を提供するものではない。
特許文献9では、Mn:0.03〜1.5%、Ti:0.02〜1.5%となるように脱酸することにより、17〜31%MnO-Ti酸化物からなる低融点の介在物を含有する非時効性冷延鋼板を提案している。特許文献9の場合、上記MnO-Ti酸化物は低融点であり、溶鋼中では液相状態となるため、溶鋼がタンディッシュノズルを通過してもノズルに付着することなくモールドに注入されるので、タンディッシュノズルの閉塞を効果的に防止できる。しかしながら、非特許文献1の報告にあるように、MnO:17〜31%含有するMnO-Ti酸化物を得るためには、Mn、Tiの酸素との親和力との違いから、溶鋼中のMnとTiの濃度比を、(%Mn)/(%Ti)>100にする必要がある。したがって、鋼中のTi濃度が0.010%の場合、所要のMnO-Ti酸化物を得るためには、Mn濃度は1.0%以上が必要である。しかし、Mn含有量が1.0%を越えると材質が硬化する。従って、17〜31%MnO-Ti酸化物からなる介在物を形成することは実際上困難である。
特許文献10では、AlレスTi脱酸鋼においてタンディッシュノズルの閉塞の防止策として、ノズルにCaO・ZrO2粒を含有する材料を用いることにより、溶鋼中のTi2O3がノズルに捕捉された場合、TiO2-SiO2-Al2O3-CaO-ZrO2系の低融点介在物にしてその成長を防止する方法を提案している。しかしながら、溶鋼中の酸素濃度が高い場合、付着介在物のTiO2濃度が高くなって低融点化しないため、ノズル閉塞を防止することにはつながらず、一方で酸素濃度が低い場合には、ノズルが溶損する問題があり、十分な対策にはなっていない。
さらに、上鍋のノズル詰まり防止に関する各従来技術は、連続鋳造プロセスにおいて、溶鋼をタンディッシュノズルからモールドへ注入するための浸漬ノズルには依然としてArガスやN2ガスを吹き込んで鋳造する必要がある。しかし、その吹き込んだガスが鋳片の凝固シェルに捕捉され、気泡性欠陥になるという問題が残されている。
ところで、極低炭素冷延鋼板の場合、一般に、自動車の外板および内板として広く使用されている。とくに、深絞り成形性が要求される部位には、高いr値(ランクフォード値)とともに優れた強度伸びバランスが求められている。このうち、上記r値は、鋼板の結晶方位に強く依存することが知られており、{111}再結晶集合組織を発達させることにより上昇させることができる。このことから、従来、r値を高めるために、{111}再結晶集合組織を発達させる方法として、鋼成分、熱延条件、冷延条件および焼鈍条件について種々検討されてきた。たとえば、再結晶焼鈍を高温で行うと、{111}再結晶集合組織が強く発達し、r値が上昇することが知られている。しかしながら、この方法の場合、高温焼鈍を行うために結晶粒が粗大化し、プレス成形性に必要な強度伸びバランスの方が却って低下するという新たな問題が生じる。
また、Ti脱酸鋼を用いた深絞り用冷延鋼板の製造技術については、特許文献11および特許文献12に、Ti脱酸鋼はAl脱酸鋼よりもr値が0.1〜0.2高い特性が得られることが開示されている。しかしながら、特許文献11および12は、強度伸びバランスに関してまでは全く検討しておらず、しかもこれらの溶製法はもともと製鋼上の問題もかかえている。
これらの問題を解決するため、特許文献13では、Ti量とAl量を、wt%Ti/wt%Al≧5または、Al≦0.010wt%かつwt%Ti/wt%Al<5としたTi脱酸鋼の酸化物系介在物を、50μm以下の大きさで、かつ0.002〜0.015wt%含有させることにより、表面性状と深絞り性を両立させることができる技術が開示されている。しかしながら、特許文献13では介在物サイズを50μm以下と限定しているだけであり、比較的大きな介在物が存在するため、張出し成形時の介在物割れが問題となる。
特公昭44-18066号公報 特開昭61-276756号公報 特開昭58154447号公報 特開平6-49523号公報 特開平6-559号公報 特開平8-239731号公報 特開平8-281391号公報 特開平8-281390号公報 特公平7-47764号公報 特開平8-281394号公報 特公平7-47764号公報 特開平8-239731号公報 特開2000-1746号公報 森岡泰行、森田一樹ら、鉄と鋼、81、p.40、1995
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。本発明の第1の目的は、表面性状、成形性、深絞り性がともに優れた鋼板を提供することである。本発明の第2の目的は、連続鋳造時のノズル詰まり防止に対して有効で、クラスター状介在物の生成防止にも有効な、深絞り用鋼板の製造技術を提案することである。
発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、以下の知見を得た。
鋼中に残留する介在物は、そのサイズおよび量が特定の範囲であり、組成が特定のものであれば、上述したノズル詰まりを招くことなく、かつ、介在物をクラスター状に巨大化させずに微細分散化させる。
そして、介在物が微細分散化することにより、r値ならびに強度伸びバランスを大幅に改善できる。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]鋼組成は、質量%で、C≦0.005%、Si≦0.1%、Mn≦0.5%、P≦0.05%、S≦0.02%、N≦0.005%、0.010%≦Ti≦0.20%、0.001%≦Sb≦0.02%を含み、前記Tiのうちの非酸化物Ti(Ti*)を、C(質量%)、N(質量%)、S(質量%)との関係において、(C/12)≦(Ti*/48)−(N/14+S/32)≦10(C/12)を満足するように含有し、さらに、Ca、金属REMのいずれか1種または2種以上を合計で0.0005%以上、Alを式(1)または式(2)を満たす範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、鋼中の介在物は、圧延直角方向寸法:2〜5μmの介在物が500個/100mm2以上、圧延直角方向寸法:20μm以上の介在物が10個/100mm2以下で、かつ、介在物中のTi酸化物の含有量の割合が60%以上であることを特徴とする表面性状の良好な深絞り用鋼板。
%Ti/%Al≧5 ‥‥ (1)
Al≦0.010% かつ %Ti/%Al<5 ‥‥ (2)
なお、%Ti、%Alは、ぞれぞれ鋼中のトータルTiおよびAlを示す。
[2]前記[1]において、さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.1%、B:0.0001〜0.05%のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする表面性状の良好な深絞り用鋼板。
[3]前記[1]または[2]に記載の鋼組成を有する鋼片を、900〜1300℃の温度で加熱、均熱し、650〜960℃の温度で仕上圧延を終了し、400〜750℃の温度で巻取り、次いで、50〜95%の圧下率で冷間圧延を施した後、700〜920℃の温度で再結晶焼鈍を施し、鋼中の介在物が、圧延直角方向寸法:2〜5μmの介在物が500個/100mm2以上、圧延直角方向寸法:20μm以上の介在物が10個/100mm2以下で、かつ、介在物中のTi酸化物の含有量の割合が60%以上であることを特徴とする表面性状の良好な深絞り用鋼板の製造方法。
[4]前記[3]において、前記再結晶焼鈍後、引き続き、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする表面性状の良好な深絞り用鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。
本発明は、好適なTi脱酸により、巨大クラスター状介在物の生成を抑制して鋼板の表面性状を改善するとともに、介在物を微細分散化することにより、冷延−焼鈍時の粒成長性を制御して平均r値ならびに強度伸びバランスを改善する。その結果、本発明によれば、表面性状、成形性、深絞り性がともに優れた鋼板が得られ、例えば、自動車用薄鋼板として実に好適に用いられる。
そして、本発明の製造方法によれば、上記鋼板を連続鋳造時にイマージョンノズルの閉塞を起こすことがなく製造できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
はじめに、本発明に想到するに至った契機となる実験研究について説明する。まず、C:0.002%、Si:0.02%、Mn:0.1%、P:0.01%、S:0.007%、Al:0.005%、N:0.002%、Ti:0.02〜0.04%、O:0.001〜0.023%、Ca:0.001%、(Ti*/48)-(N/14+S/32)≒3.0×(C/12)(Ti*:非酸化物Ti)からなり、Sbを0〜0.015%と変化させた成分組成のシートバーを、1200℃に加熱して均熱した後、仕上温度が890℃になるように3パス圧延を行って板厚4.0mmの熱延板とした。その後、600℃-1時間の条件でコイル巻取り相当の熱処理を行った。次いで、圧下率が80%の冷間圧延を施した後、850℃-40秒の再結晶焼鈍を施した。
上記により得られた鋼板に対して、介在物個数、特に、2〜5μmのサイズと20μm以上のサイズの酸化物系介在物の個数におよぼすSb添加量の影響を調査した。
調査にあたって、介在物のサイズと個数は、鋼板表面近傍をバフ研磨後、ノーエッチングで光学顕微鏡にて400倍の倍率で観察して測定した。介在物が酸化物であることは、EPMAにより元素分析を行い、酸化物系介在物の形状および色を事前に確認した後、光学顕微鏡観察により判断した。なお、この時の介在物中のTi酸化物の含有量は、EPMA分析より60%以上であった。また、介在物サイズが5μm以下のものは100mm2の視野で、介在物サイズが20μm以上のものは1000mm2の視野で、それぞれ観察して個数を求めた。
得られた結果を図1に示す。図1より、この成分組成系の鋼材においては、Sb添加量を0.001%(10ppm)以上とすることにより、2〜5μmのサイズの介在物が500個/100mm2以上、20μm以上のサイズの介在物の個数が10個/100mm2以下になることが分かる。
次に、C:0.002%、Si:0.02%、Mn:0.1%、P:0.01%、S:0.007%、Al:0.005%、N:0.002%、Ti:0.02〜0.05%、O:0.001〜0.023%、Ca:0.001%、(Ti*/48)-(N/14+S/32)≒3.0×(C/12)(Ti*:非酸化物Ti)からなり、Sbを0〜0.008%と変化させた成分組成のシートバーを、1200℃に加熱して均熱した後、仕上温度が890℃になるように3パス圧延を行って板厚4.0mmの熱延板とした。その後、600℃-1時間の条件でコイル巻取り相当の熱処理を行った。次いで、圧下率が80%の冷間圧延を施した後、850℃-40秒の再結晶焼鈍を施した。
上記により得られた鋼板に対して、鋼板の成形性について調査した。具体的にはr値と強度伸び(TS×EL)におよぼす2〜5μmのサイズの介在物の個数の影響を調査した。
調査にあたって、r値はJIS5号引張試験片を用いて3点法で測定し、3方向のr値、すなわち、rL(圧延方向のr値)、rC(圧延方向に直角方向のr値)、rD(圧延方向に45°方向のr値)の平均値をr=(rL+rC+2rD)/4により求めた。また、引張試験もr値と同様に3方向の平均値で求めた。また、この鋼板について、鋼板表面近傍を顕微鏡観察し、このうち、2〜5μmサイズの介在物の個数を測定した。
得られた結果を図2に示す。図2より、この成分組成系の鋼材において、r値と強度伸びバランスTS×ELは、2〜5μmのサイズの介在物の個数に依存し、個数が500個/100mm2以上の時、高r値と高TS×ELを両立させることができ、より高いr値とTS×EL特性が得られることがわかる。
次いで、上記図2の実験に用いた鋼板に対して、張出し成形を模擬した液圧バルジ試験を行い、介在物割れの有無を調査した。
調査するにあたって、液圧バルジ試験は、ダイ穴直径が150mmφ、ダイ肩半径が8mm、素板直径が220mmの条件で行った。介在物割れの有無は、液圧バルジ試験で鋼板を割れ発生まで成形した時、試験サンプルの先端部に発生する破談部の他に、側面部に発生するネッキングの有無で評価し、1箇所でもネッキング割れが観察された時には介在物割れ発生とした。なお、介在物中のTi酸化物の含有量は、全て60%以上であった。
得られた結果を、介在物個数、r値およびSb添加量と併せて、図3に示す。図3より、2〜5μmのサイズの介在物が500個/100mm2以上で、かつ、20μm以上のサイズの介在物の個数が10個/100mm2以下とすることにより、r値が高く、割れが発生していない、すなわち、深絞り性と介在物割れが両立可能となることが分かる。
以上の結果より、本発明においては、2〜5μmの介在物が500個/100mm2以上、20μm以上の介在物が10個/100mm2以下とする。なお、介在物のサイズの測定方法、制御方法等の詳細については後述する。
次に、本発明における表面性状の良好な深絞り用鋼板の化学成分の限定理由について説明する。
本発明にかかる鋼板の成分組成は、
(1)C≦0.005%、Si≦0.1%、Mn≦0.5%、P≦0.05%、S≦0.02%、N≦0.005%、0.010%≦Ti≦0.20%、
(2)0.001%≦Sb≦0.02%
(3)Tiのうちの非酸化物Ti(Ti*)を、C(質量%)、N(質量%)、S(質量%)との関係において、(C/12)≦(Ti*/48)−(N/14+S/32)≦10(C/12)を満足する
(4)Ca、金属REMのいずれか1種または2種以上を合計で0.0005%以上
(5)Alを式(1)または式(2)を満たす範囲で含有
%Ti/%Al≧5 ‥‥ (1)
Al≦0.010% かつ %Ti/%Al<5 ‥‥ (2)
なお、%Ti、%Alは、ぞれぞれ鋼中のトータルTiおよびAlを示す。
(6)必要に応じてさらに、Nb:0.001〜0.1%、B:0.0001〜0.05%の1種または2種を含有
(7)残部はFeおよび不可避的不純物
である。
以下、上記のように限定した理由を詳細に説明する。
(a)C≦0.005%
Cは、少ないほど深絞り性が向上するので少ないほうが好ましいが、精錬の負荷なども考慮し、かつ悪影響の出ない上限として0.005%以下に限定した。なお、深絞り性の観点からは、Cは0.003%以下が好ましい。
(b)Si≦0.1%
Siは、鋼を強化する作用があり、所望の強度に応じて必要量を含有させるが、その含有量が0.1%を超えると、溶融亜鉛めっき性が劣化するので0.1%以下に限定した。なお、めっき性と深絞り性の観点からは、Siは0.05%以下が好ましい。
(c)Mn≦0.5%
Mnは、鋼を強化する作用があり、所望の強度に応じて必要量を含有させるが、その含有量が0.5%を超えると、深絞り性が劣化するので0.5%以下に限定した。なお、深絞り性の観点からは、Mnは0.3%以下が好ましい。
(d)P≦0.05%
Pは、鋼を強化する作用があり、所望の強度に応じて必要量を含有させるが、その含有量が0.05%を超えると、深絞り性が劣化するので0.05%以下に限定した。なお、深絞り性の観点からは、Pは0.03%以下が好ましい。
(e)S≦0.02%
Sは、少ないほど深絞り性が向上するので少ないほうが好ましいが、その含有量が0.02%以下であれば、さほど悪影響が出ないので、0.02%以下に限定した。なお、深絞り性の観点からは、Sは0.01%以下が好ましい。
(f)N≦0.005%
Nは、少ないほど深絞り性が向上するので少ないほうが好ましいが、その含有量が0.005%以下であれば、さほど悪影響が出ないので、0.005%以下に限定した。なお、深絞り性の観点からは、Nは0.003%以下が好ましい。
(g)0.010%≦Ti≦0.20%
Tiは、本発明において最も重要な役割を担う成分であり、Ti脱酸により、2〜5μmのサイズの微細酸化物系介在物を形成し、冷延−焼鈍後の粒成長性を制御して、強度伸びバランスを向上させる成分である。さらに、この微細酸化物は、熱延板の微細化にも有効に作用するため、冷延−焼鈍後に{111}再結晶集合組織を発達させてr値を高くする。このTi含有量が0.010%未満では、微細酸化物の量が少なすぎるため、上述の所期した効果が得られなくなる。このTiは、0.025%以上の添加でより有効に作用する。ただし、0.20%を越えて添加すると薄鋼板では材質が硬化して所期の材料特性を損なうばかりか、コスト上昇をも招くことになるので、上限は0.20%とする。なお、深絞り性の観点からは、Tiは0.10%以下が好ましい。
(h)Sb:0.001〜0.02%
Sbは、本発明において重要な役割を担う成分であり、0.001%以上0.02%以下を満たす必要がある。すなわち、Sbを0.001%以上添加することにより、2〜5μmサイズの微細酸化物が増加し、その結果、熱延板粒径の微細化ならびに冷延−焼鈍後の粒成長性を制御でき、高r値ならびに強度伸びバランスが向上する。その含有量が0.001%未満では効果がなく、一方、0.02%を超えて含有させると、逆に表面性状が劣化する。なお、めっき性および深絞り性の観点からは、Sbは0.003%以上0.015%以下が好ましい。
(i)非酸化物Ti(Ti*)、(C/12)≦(Ti*/48)−(N/14+S/32)≦10(C/12)
非酸化物Tiとは、全Tiのうち鋼中で酸化物状態で存在しないTi、すなわち炭化物、窒化物、硫化物などとして存在したり、固溶状態で存在するTiの総量を意味し、次の方法で求めたものである。
非酸化物Ti量=全Ti量−酸化物Ti
ここで、酸化物Ti=全O量×鋼中介在物のEPMAによるTi濃度(%)/鋼中介在物のEPMAによるO濃度(%)である。そして、EPMAによるTi濃度およびO濃度は、鋼中に存在する3〜10μmの酸化物系介在物をランダムに10個選び出してEPMAで濃度を測定し、その平均値を用いる。なお、全O量および全Ti量は、固体発光分光分析法(QV分析)で測定することができる。こうして求めた非酸化物Tiは、本発明にかかる鋼板において、きわめて重要な役割を担う成分であり、鋼中の固溶C、固溶N、固溶Sを炭化物、窒化物、硫化物として析出固定して低減させることにより深絞り性の劣化を防止する効果がある。この非酸化物Ti(Ti*)の量は、C、N、S各含有量との関係において、(C/12)≦(Ti*/48)−(N/14+S/32)≦10(C/12)の関係式を満足する必要がある。すなわち、(C/12)>(Ti*/48)−(N/14+S/32)では、熱延板中に多量の固溶Cが残留するため、冷延−焼鈍後の深絞り性が劣る。一方、Ti*/48)−(N/14+S/32)>10(C/12)の量の非酸化物Tiは、逆に深絞り性を劣化させるため、(C/12)≦(Ti*/48)−(N/14+S/32)≦10(C/12)に限定する。なお、深絞り性の観点からは、1.5(C/12)≦(Ti*/48)−(N/14+S/32)≦7.5(C/12)が好ましい。
(j)Caおよび/または金属REM≧0.0005%
Caおよび金属REMは、本発明にかかる鋼板において重要な役割を担う成分であり、CaおよびREMのいずれか1種または2種以上を合計で0.0005%以上添加する必要がある。すなわち、溶鋼をTi脱酸した後、さらにCaおよびREMのいずれか1種または2種以上を合計で0.0005%以上添加することにより、溶鋼中の酸化物組成を、Ti酸化物:90%以下、好ましくは20%以上90%以下、さらに好ましくは85%以下、CaOおよび/またはREM酸化物:5%以上、好ましくは8%以上50%以下で、Al2O3が70%以下となる低融点の酸化物系介在物となるように調整する。このような調整を行うと、連続鋳造時に、地金を含んだTi酸化物のノズルへの付着を阻止して、ノズル閉塞を無くすことができる。さらに、CaOおよび/またはREM酸化物は、冷延−焼鈍後の粒成長および熱延板の微細化に寄与できる。このような効果を発現するREMとしては、CeやYが好ましい。なお、過剰なCa、REMの添加は発錆をもたらす原因ともなるので、合計量で0.005%以下の範囲で添加するのが望ましい。
(k)Al
Alは、本発明においては重要な役割を担う成分であり、1)%Ti/%Al≧5、あるいは2)Al≦0.010%かつ%Ti/%Al<5のいずれかの条件を満たす必要がある。なお、%Ti、%Alは、ぞれぞれ鋼中のトータルTiおよびAlを示す。前記条件が満たされなくなると、Al脱酸鋼となり、巨大なAl2O3のクラスターが多量に生成し、鋼片の表面性状を劣化させるとともに、冷延−焼鈍後の粒成長性を制御するための2〜5μmサイズの微細酸化物が少なくなるため、強度伸びバランスが劣る。したがって、Al含有量は上記1)または2)の条件を満足する必要があり、このうち特に、1)の条件は、本発明の目的を達成する上で好ましい範囲である。
以上の必須添加元素で、本発明鋼は目的とする特性が得られるが、上記の必須添加元素に加えて、必要に応じて下記の元素を添加することができる。
(l)Nb:0.001〜0.1%
Nbは、熱延板の組織を微細化することにより、冷延−焼鈍後のr値を向上させる効果がある。その添加量が0.001%未満では添加効果がなく、一方、0.1%を越えて添加しても添加の効果が飽和し、逆に深絞り性の劣化につながるので、Nbを添加する場合、0.001〜0.1%の範囲とする。なお、深絞り性の観点からは、Nbは0.001〜0.05%が好ましい。
(m)B:0.0001〜0.05%
Bは、鋼の耐二次加工脆性の改善のために添加してもよいが、その添加量が0.0001%未満では添加効果がなく、一方、0.05%を越えて添加すると逆に深絞り性の劣化につながるので、Bを添加する場合、0.0001〜0.05%とする。なお、深絞り性の観点からは、Bは0.0001〜0.02%が好ましい。
次に、本発明の表面性状の良好な深絞り用鋼板の組織について説明する。
前述したように、本発明では、2〜5μmのサイズを有する微細な介在物を500個/100mm2以上、20μm以上のサイズを有する介在物を10個/100mm2以下となるように調整することが必要である。ところで、鋼片(スラブ)中に存在する介在物の寸法は、圧延により、圧延方向には伸長するものの、板幅方向にはほとんど変化しない。従って、圧延直角方向すなわち鋼板幅方向の介在物寸法を所定の範囲内に保つことが重要であり、本発明において、介在物のサイズとは圧延直角方向のサイズとする。
また、鋼板幅方向の介在物寸法を所定の範囲内に保つためには、鋼片段階で介在物寸法を制御する必要がある。このため、鋼片中に含まれる微細介在物の制御は、本発明の重要な構成要件の一つである。特に、本発明方法の下で生成する介在物は、幅(圧延直角方向)が2〜5μmサイズの大きさを有する粒状または破断状の酸化物系介在物が主である。幅が2〜5μmのサイズの介在物で、かつ、その個数が500個/100mm2以上であれば、熱延時の結晶粒微細化ならびに冷延−焼鈍時の粒成長を制御することができる。しかし、幅が20μmよりも大きい介在物では前記の如き効果はなく、逆に表面欠陥の原因となる。よって、本発明では、幅(圧延直角方向)が20μm以上のサイズの介在物を10個/100mm2以下とした。ここで、幅が2〜5μmサイズの大きさを有する粒状または破断状の介在物とは、鋼スラブで生成した介在物であって、比較的大きなものは熱延および冷延にて圧延方向に分断された破断状の介在物をいい、また比較的小さなものは、その形を維持しているような粒状の介在物をいう。
なお、介在物のサイズと個数は、鋼板表面近傍をバフ研磨後、ノーエッチングで光学顕微鏡で400倍の倍率で観察して測定した。介在物サイズが5μm以下のものは100mm2の視野で、また介在物サイズが20μm以上のものは1000mm2の視野で、それぞれ観察して個数を求める。なお、介在物が酸化物であることは、EPMAにより元素分析を行い、酸化物系介在物の形状および色を事前に確認した後、光学顕微鏡観察により判断した。
なお、この時の介在物中のTi酸化物の含有量の割合は60%以上とする。60%未満では介在物の融点が高くなり、ノズル詰まりを引き起こすためである。
次に本発明の表面性状の良好な深絞り用鋼板の製造条件について説明する。
製鋼工程
この工程は、本発明の場合とくに限定されるものではないが、以下に好ましい処理方法を例示する。素材は極低炭素鋼であって、Ti≧0.010%とし、1)%Ti/%Al≧5、あるいは2)Al≦0.010%かつ%Ti/%Al<5のいずれかの条件を満たす成分組成を有する鋼を溶製する必要がある。
調整成分としてのTiをTi≧0.010%にする理由は、Ti<0.010%では脱酸能力が弱く、溶鋼中の全酸素濃度が高くなり、伸び、絞り等の材料特性が悪化するためである。
また、1)%Ti/%Al≧5、あるいは2)Al≦0.010%かつ%Ti/%Al<5、のいずれかの条件にする理由は、これらの条件を満たさない条件ではTi脱酸鋼ではなくAl脱酸鋼となり、Al2O3濃度が70%以上のAl2O3クラスターが大量に生成するからである。本発明は、Ti酸化物を主体とする介在物とし、この介在物中に、後述するようにCaO、REM酸化物を含有させて所期の目的を達成しようとするものである。この点から、上記1)、2)の2つの条件のうち、とくに1)%Ti/%Al≧5の条件で調整することが好ましい。
溶鋼をFe-Ti等のTi含有合金により脱酸し、鋼中にTi酸化物を主体とする酸化物系介在物を生成させる。この生成した介在物は、Alで脱酸した時のような巨大なクラスター状ではなく、1〜50μm程度のサイズの粒状、破断状のものが多くを占める。ただし、このとき上記1)または2)の条件を外れると、上述したように、巨大なAl2O3クラスターは、Ti合金を添加してTi濃度を増加しても還元できず、鋼中にクラスター状介在物として残存する。したがって、本発明にかかる鋼板については、この製造の段階で、まず溶鋼中に適当なTi酸化物を生成させるようにすることが好ましい。
なお、本発明のもとでは、Alで脱酸する従来方法に比べると、Ti合金の歩留まりが悪く、しかも、Ca、REMを含有するため介在物組成調整用合金は高価である。このことから、かかるTi合金の溶鋼中への添加は、介在物の組成調整が可能な範囲でできるだけ少量に済むように行うのが経済的で好ましい。この意味において、Ti含有合金等の脱酸材の添加の前には、溶鋼中の溶存酸素を200ppm以下にし、またスラグ中のFeO、MnOを低下させるために予備脱酸することが望ましい。この予備脱酸は、脱酸後の溶鋼中のAl≦0.010%となるように少量のAlによる脱酸、SiやFeSi、MnやFeMnの添加によって行うのが好ましい。
ここで、介在物中の、Ti脱酸により生成したTi酸化物(Ti2O3)含有量の割合が60%以上の鋼板であれば、その介在物が2〜20μm程度の大きさにて鋼中に分散するため、クラスター状の介在物による表面欠陥はなくなる。しかしながら、Ti酸化物は溶鋼中では固相状態であり、また、極低炭素鋼は凝固温度が高いために、地金を取り込んだ形でタンディッシュノズルの内面に成長し、ノズルの閉塞を誘発するおそれがある。
そこで、本発明においては、Ti合金により脱酸した後、Ca、REMのいずれか1種または2種以上を合計で0.0005%以上になるように添加して、溶鋼中ひいては鋼板中の酸化物組成を、Ti酸化物:20%以上90%以下、好ましくは85%以下、CaOおよび/またはREM酸化物:5%以上、好ましくは8%以上50%以下、Al2O3が70%以下である低融点の酸化物系介在物とする。これにより、地金を取り込んだTi酸化物のノズルへの付着を有効に防止することが可能になる。なお、望ましい介在物の組成は、Ti2O3:30%以上80%以下、CaO、REM酸化物(La2O3、Ce2O3等):10%以上40%以下である。上記介在物のTi酸化物が20%未満ではTi脱酸鋼ではなく、Al脱酸鋼となり、Al2O3濃度が高まるためノズル詰まりが発生し、また、CaO、REM酸化物濃度が高くなると発錆が悪化するため、Ti酸化物濃度は20%以上とする。一方、Ti酸化物濃度が90%超えでは、CaO、REM酸化物が少なくノズル詰まりが発生するためTi酸化物濃度は20%以上90%以下とする。また、上記介在物中のAl2O3については、70%を越えると高融点組成となるためにノズル閉塞が起きるだけでなく、介在物の形状がクラスター状になり、製品面での非金属介在物性の欠陥が増加する。
以上のように、本発明における鋼中の酸化物系介在物は、CaOおよび/またはREM酸化物を合計量で5%以上50%以下、Al2O3を70%以下含有し、Ti酸化物を主とする必要がある。なお、この他に、さらに、SiO2、MnOなどの酸化物を含むことができる。この場合、上記介在物中のSiO2については30%以下、MnOについては15%以下に制御することが望ましい。また、本発明の酸化物中には、ZrO2、MgOなどを5%以下の範囲で混入させることが許容される。
なお、以上説明した鋼中の酸化物系介在物の組成は、酸化物系介在物を任意に10個抽出し、その平均値(EPMA分析値)から求めるものとする。
また、酸化物Ti=全O量×鋼中介在物のEPMAによるTi濃度(%)/鋼中介在物のEPMAによるO濃度(%)とする。EPMAによるTi濃度およびO濃度は、鋼中に存在する3〜10μmの酸化物系介在物をランダムに10個選び出してEPMAで濃度を測定し、その平均値を用いる。なお、全O量および全Ti量は、固体発光分光分析法(QV分析)で測定することができる。
本発明において、生成する介在物の組成を上記のように制御した場合、連続鋳造時にタンディッシュノズルおよびモールドの浸漬ノズル内面に酸化物等が付着するのを完全に防止することができる。従って、タンディッシュや浸漬ノズル内に、酸化物等の付着防止のためのArやN2等のガスを吹き込む必要がなくなる。その結果、連続鋳造時のパウダー巻き込みによる鋳片のパウダー性欠陥や、吹き込んだガスによる気泡性欠陥が鋳片に発生するのを防止できるという効果が得られる。
熱間圧延工程
熱間圧延に先立って行うスラブの加熱は、900℃以上1300℃以下の温度で行うこととする。900℃以上のスラブ加熱温度で行うことで、圧延時の荷重負荷の過度の上昇を抑制でき、操業上好ましい。また、スラブ加熱温度を1300℃以下の温度では、圧延前の結晶粒径の粗大化を抑制できるため、熱延板の微細化に好ましい。なお、スラブ加熱温度は、深絞り性の観点からは1200℃以下がより好ましい。
連続鋳造から圧延にかけての処理において、CC-DR(連続鋳造−ダイレクトローリング)またはHCR(ホットチャージローリング)を採用することは、省エネルギーの観点から好ましい方法と言える。
仕上圧延の終了温度は、650℃以上960℃以下とする。960℃以下の温度で熱間圧延を終了すると、熱延板の結晶粒の粗大化を抑制でき、冷延−焼鈍後の深絞り性の向上に有利となる。また、Ar3変態点以下のα域で熱間圧延を終了してもいいが、その温度が650℃以上とすることにより、圧延負荷の増大を抑制でき、操業上好ましい。なお、深絞り性の観点から、好ましい仕上圧延終了温度は850℃以上950℃以下である。
熱間圧延後のコイル巻取り温度は、高温ほど析出物の粗大化に有利である。巻取り温度が750℃以下とすることにより、スケール厚さの増大を抑制できるので、酸洗性の観点から好ましい。また、巻取り温度が400℃以上とすると析出物が粗大化し、冷延焼鈍後の深絞り性の向上に好ましい。このためコイル巻取温度は、400℃以上750℃以下とする。深絞り性の観点から、好ましくは550℃以上750℃以下である。
冷間圧延工程
この工程は、高いr値を得るために行う処理であり、この目的を達成するためには冷延圧下率を50%以上95%以下とすることが必要である。圧下率が50%に満たないと、優れた深絞り性が得られない。一方、95%超えの圧下率で冷間圧延を施しても、それ以上の高r値は得られず、逆にr値が低下する。なお、深絞り性の観点からは、冷延圧下率は60%以上95%以下が好ましい。
焼鈍工程
冷間圧延工程を経た冷延鋼板は、再結晶焼鈍を施す必要がある。焼鈍温度は700℃以上920℃以下とする。焼鈍温度が700℃未満では、深絞り性に好ましい{111}再結晶集合組織が発達しない。一方、920℃を越える高温域で焼鈍を行っても、それ以上の深絞り性は得られず、逆にα→γ変態により集合組織がランダム化し、r値が劣化する。なお、深絞り性の観点からは、焼鈍温度は750℃以上880℃以下が好ましい。
また、焼鈍後の鋼帯に対しては、形状矯正、表面粗度等の調整のために、10%以下の調質圧延を加えてもよい。
なお、このようにして得られた冷延鋼板は、加工用冷延鋼板としてのみならず、加工用表面処理鋼板の原板としても適用できる。その表面処理としては、亜鉛めっき(合金系を含む)、すずめっき、ほうろう樹脂被覆等がある。また、本発明鋼板には、焼鈍または亜鉛めっき後、特殊な処理を施して、化成処理性、溶接性、プレス成形性および耐食性等の改善を行ってもよい。
転炉出鋼後、300tonの溶鋼をRH脱ガス装置にて脱炭処理し、C:0.0011〜0.0021%、Si:0.004〜0.020%、Mn:0.11〜0.15%、P:0.008〜0.013%、S:0.004〜0.006%に調整するとともに、溶鋼温度を1585〜1615℃に調整した。この溶鋼中に、Alを0.2〜0.8kg/ton添加し、溶鋼中の溶存酸素濃度を55〜250ppmまで低下させた。この時の溶鋼中のAl濃度は0.001〜0.008%であった。そして、この溶鋼に、70%Ti-Fe合金を0.8〜1.8kg/ton添加してTi脱酸を行った。その後、FeNb、FeB、FeSb等を添加して成分調整を行った後に、溶鋼中に30%Ca-60%Si合金や、それにMet.Ca、Fe、5〜15%のREMを混合した添加剤、または、90%Ca-5%Ni合金等のCa合金、REM合金のFe被覆ワイヤーを0.05〜0.5kg/ton添加し処理を行った。この処理の後のTi濃度は0.026〜0.058%、Al濃度は0.001〜0.008%、Ca濃度は0.0005〜0.0018%、REM濃度は0〜0.0020%であった。
次に、この溶鋼を2ストランドスラブ連続鋳造装置にて鋳造し、連続鋳造スラブを製造した。なお、このときのタンディッシュ内溶鋼の介在物の平均的な組成は、25〜85%Ti2O3-5〜45%CaO-0〜18%REM酸化物-6〜41%Al2O3の微細な粒状介在物であった。この鋳造時は、タンディッシュならびに浸漬ノズル内にArガスを吹き込まなかった。連続鋳造後に観察したところでは、タンディッシュならびに浸漬ノズル内には付着物はほとんどなかった。
次に、上記連鋳スラブを熱間圧延したのち、0.8mmまで冷間圧延し、さらに、連続焼鈍ライン(CAL)または溶融亜鉛めっきライン(CGL)にて再結晶焼鈍を行った。尚、熱延、冷延、焼鈍条件は表3に示す通りである。また、溶融亜鉛めっき処理は、再結晶焼鈍後、めっき浴温は460〜480℃の範囲、浸入板温はめっき浴温以上、浴温+10℃以下、合金化の条件は480〜540℃の温度範囲で15〜28sの範囲の加熱保持とした。
得られた鋼板の鋼組成を表1(鋼A〜D、鋼F)に、介在物の含有量を表2にそれぞれ示す。なお、介在物組成、非酸化物Tiの割合は前述した方法と同様にして求めた。また、この時の介在物の板幅方向サイズはすべて50μm以下であった。
以上より得られた鋼板に対して機械的特性を測定し評価した。なお、機械的特性等の値は前述した方法と同様にして求めた。得られた結果を表3に製造条件と併せて示す。目視にて表面欠陥を観察したところ、この焼鈍板にはヘゲ、スリーバー、スケールなどの非金属介在物の欠陥は0個/1000m-コイルと、全く認められなかった。また、発錆量は、従来のAl脱酸と同じく問題はなかった。
比較例
転炉出鋼後、300tonの溶鋼をRH脱ガス装置にて脱炭処理し、C:0.0016%、Si:0.01%、Mn:0.10%、P:0.013%、S:0.004%に調整するとともに、溶鋼温度を1590℃に調整した。この溶鋼中に、Alを1.2〜1.6kg/ton添加し脱酸処理を行った。脱酸処理後の溶鋼中のAl濃度は0.032%であった。その後、Fe-Tiを添加するとともに、Fe-Nbを添加して成分組成の調整を行った。なお、この処理の後のTi濃度は0.038%であった。次に、上記溶鋼を、2ストランドスラブ連続鋳造機にて鋳造し、連鋳スラブを製造した。なお、この時のタンディッシュ内溶鋼中に含まれる介在物の平均的な組成は、95〜98wt%Al2O3、5wt%以下のTi2O3からなるクラスター状の介在物が主体であった。鋳造時にタンディッシュならびに浸漬ノズル内にArガスを吹きこまなかった場合には、著しくノズルのAl2O3が付着し、3チャージ目にスライディングノズルの開度が著しく増加し、ノズル詰まりにより鋳込みを中止した。また、Arガスを吹いた場合にも、ノズル内にはAl2O3が大量に付着しており、8チャージ目にはモールド内の湯面の変動が大きくなり鋳込みを中止した。次に、上記連鋳スラブは4.0mmまで熱間圧延した後、0.8mmまで冷間圧延し、さらに、CGLラインにて再結晶焼鈍と合金化溶融亜鉛めっき処理を施した。尚、熱延、冷延、焼鈍条件は表3に示す通りである。また、めっき処理は、上記本発明の場合と同様に行った。
得られた鋼板の鋼組成を表1(鋼E、G)に、介在物の含有量を表2にそれぞれ示す。なお、介在物組成、非酸化物Tiの割合は前述した方法と同様にして求めた。また、この時の介在物の板幅方向サイズはすべて50μm以下であった。
以上より得られた鋼板(比較例)に対して機械的特性を測定し評価した。なお、機械的特性等の値は上記本発明の方法と同様にして求めた。得られた結果を表3に製造条件と併せて示す。目視にて表面欠陥を観察したところ、この焼鈍板には、ヘゲ、スリーバ、スケールなどの非金属介在物性の欠陥が0.45個/1000m-コイル認められた。
Figure 0005103964
Figure 0005103964
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表3より、本発明例では、平均r値ならびに強度伸びバランス(TS×El)が高い。また、上述したように、表面欠陥も認められない。その結果、表面性状、成形性、深絞り性がともに優れた鋼板が得られていることがわかる。
一方、比較例では、表面欠陥が認められる上に、平均r値、強度伸びバランス(TS×El)が劣っている。
本発明の鋼板は、例えば、自動車用薄鋼板を中心に、良好な表面性状、成形性、深絞り性が要求される素材として最適である。
2〜5μmのサイズの介在物個数および20μm以上のサイズの介在物個数におよぼすSb添加量の影響を示す図である。 r値と強度伸びバランス(TS×EL)におよぼす2〜5μmのサイズの介在物個数の影響を示す図である。 介在物個数、Sb添加量、r値および介在物割れの関係を示す図である。

Claims (4)

  1. 鋼組成は、
    質量%で、C≦0.005%、Si≦0.1%、Mn≦0.5%、P≦0.05%、S≦0.02%、N≦0.005%、0.010%≦Ti≦0.20%、0.001%≦Sb≦0.02%を含み、
    前記Tiのうちの非酸化物Ti(Ti*)を、C(質量%)、N(質量%)、S(質量%)との関係において、(C/12)≦(Ti*/48)−(N/14+S/32)≦10(C/12)を満足するように含有し、
    さらに、Ca、金属REMのいずれか1種または2種以上を合計で0.0005%以上、Alを式(1)または式(2)を満たす範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
    鋼中の介在物は、
    圧延直角方向寸法:2〜5μmの介在物が500個/100mm2以上、圧延直角方向寸法:20μm以上の介在物が10個/100mm2以下で、かつ、介在物中のTi酸化物の含有量の割合が60%以上であることを特徴とする表面性状の良好な深絞り用鋼板。
    %Ti/%Al≧5 ‥‥ (1)
    Al≦0.010% かつ %Ti/%Al<5 ‥‥ (2)
    なお、%Ti、%Alは、ぞれぞれ鋼中のトータルTiおよびAlを示す。
  2. さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.1%、B:0.0001〜0.05%のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の表面性状の良好な深絞り用鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の鋼組成を有する鋼片を、
    900〜1300℃の温度で加熱、均熱し、650〜960℃の温度で仕上圧延を終了し、400〜750℃の温度で巻取り、
    次いで、50〜95%の圧下率で冷間圧延を施した後、700〜920℃の温度で再結晶焼鈍を施し、鋼中の介在物が、
    圧延直角方向寸法:2〜5μmの介在物が500個/100mm2以上、圧延直角方向寸法:20μm以上の介在物が10個/100mm2以下で、かつ、介在物中のTi酸化物の含有量の割合が60%以上であることを特徴とする表面性状の良好な深絞り用鋼板の製造方法。
  4. 前記再結晶焼鈍後、引き続き、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする請求項3に記載の表面性状の良好な深絞り用鋼板の製造方法。
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