JP3870614B2 - 表面性状および内質に優れる冷延鋼板並びにその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面性状および内質に優れる冷延鋼板、とくに鋼中の酸化物系介在物の組成を制御して、介在物起因によるプレス割れに対する抵抗性を高めた冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼の脱酸は、当初、特公昭44−18066 号公報に開示されているように、AlではなくFe-Ti で行われていた。しかし近年では、酸素濃度の安定した鋼を低コストで製造するために、Alを0.005 wt%以上含有させるAl脱酸鋼が主流となっている。
【0003】
鋼のAl脱酸は、ガス攪拌やRH脱ガス装置を用い、生成酸化物を凝集、合体させて、浮上分離する方法であるが、この場合、鋳片中にはAl2O3 酸化物が不可避に残留することになる。しかも、このAl2O3 はクラスター状になるため、分離しにくく、時には数100 μm以上ものクラスター状介在物が残留する。もし、このようなクラスター状の介在物が鋳片表層部に捕捉されると、ヘゲ, スリーバのような表面欠陥につながることになるから、美麗さを必要とする自動車用鋼板では致命的な欠陥となる。また、Al脱酸では、Al2O3 がタンディシュからモールドへ注入するために使用するイマージョンノズルの内壁に付着し、ノズル閉塞をひき起こすという問題があった。
【0004】
このようなAl脱酸に伴う上述した問題に対し、アルミキルドした溶鋼中にCaを添加することにより、CaO , Al2O3 複合酸化物を生成させる方法が提案されている。 (例えば、特開昭61−276756号公報, 特開昭58−154447号公報および特開平 6−49523 号公報) 。
この方法におけるCa添加の目的は、Al2O3 とCaとを反応させて、CaOAl2O3, 12CaOAl2O3, 3CaOAl2O3 等の低融点複合酸化物を形成することにより、上述した問題点を克服しようとするものである。
【0005】
しかしながら、溶鋼中へCaを添加すると、このCaが鋼中のSと反応してCaSを形成し、このCaSが発錆の原因をつくる。この点、特開平6−559 号公報では、発錆を防止するために、鋼中に残留するCa量を5 ppm 以上10ppm 未満とする方法を提案している。しかし、Ca量を10ppm 未満にしたとしても、鋼中に残留するCaO−Al2O3 系酸化物の組成が適正でない場合、特にCaO 濃度が30%以上の酸化物の場合、その酸化物中のSの溶解度が増加し、温度低下時や凝固時に介在物内周囲にCaSが不可避に生成する。その結果、そのCaSが起点となって錆が発生し、製品板の表面性状の劣化を招くようになる。また、このような発錆点が残留したまま、めっきあるいは塗装のような表面処理を行うと、処理後にどうしても表面ムラが発生する。
一方で、介在物中のCaO 濃度が20%以下と低くかつAl2O3 濃度が高い場合、特にAl2O3 濃度が70%以上の場合には、介在物の融点が上がり、介在物どうしが焼結しやすくなるため、連続鋳造時にノズル詰まりが発生しやすくなるだけでなく、鋼板表面にはヘゲ, スリーバ等が発生し、表面性状を著しく悪化させるという問題があった。
【0006】
これに対し、近年に至り、Alを添加せずに、Tiで脱酸する方法が、特開平8−239731号公報として開発されている。このようなAlレスTi脱酸の方法は、Al脱酸法に比べ、到達酸素濃度が高く介在物量は多いが、クラスター状の酸化物は生成しない。とくに生成する介在物の形態がTi酸化物−Al2O3 系となり、2〜50μm程度の粒状の酸化物が分散した状態を呈する。そのため、介在物がクラスター状になることに起因する上述した表面欠陥は減少する。しかしながら、このTi脱酸の場合、Al≦0.005 wt%の溶鋼では、Ti濃度が0.010 wt%以上になると、固相状態のTi酸化物がタンディッシュノズルの内面に地金を取り込んだ形で付着成長し、かえってノズルの閉塞を誘発するという新たな問題があった。
【0007】
このような問題 (ノズルの閉塞防止) を解決するために、特開平8−281391号公報では、AlレスTi脱酸鋼において、ノズルを通過する溶鋼の酸素量を制限することにより、ノズル内面に成長するTi2O3 の成長を防止する方法を提案している。しかし、この方法の場合、酸素量の制限にも限界があることから、処理量が限られる(800トン程度) という別の問題があった。また、閉塞の進行とともにモールド内湯面のレベル制御が不安定になるため、根本的な解決にはなっていないのが実情である。
【0008】
また、この特開平8−281390号公報に開示の技術は、タンディッシュノズルの閉塞防止策として、溶鋼のSi濃度を適正化して介在物組成をTi3O5-SiO2系にすることにより、ノズル内面に成長するTi2O3 の成長を防止する方法を提案している。しかし、単にSi濃度を増加しても介在物中にSiO2を含有させることは難しく、少なくとも (wt%Si) / (wt%Ti) >50を満足するようにしなければならない。したがって、鋼中のTi濃度が0.010 wt%の場合、SiO2−Ti酸化物を得るためには、Si濃度は0.5 wt%以上が必要となる。しかし、Siの増加は材質の硬化を招き、また、めっき性の劣化を招く。Si濃度の増加は鋼板表面性状への悪影響が大きくなり、根本的な解決方法を提供するものではない。
【0009】
次に、特公平7−47764 号公報では、Mn:0.03〜1.5 wt%、Ti:0.02〜1.5 wt%となるように脱酸することにより、MnO を17〜31wt%含有する MnO−Ti酸化物からなる低融点の介在物を含有する非時効性冷延鋼板を提案している。この提案の場合、上記 MnO−Ti酸化物は低融点であり、溶鋼中では液相状態となるため、溶鋼がタンディッシュノズルを通過してもノズルに付着することなくモールドに注入されるので、タンディッシュノズルの閉塞を効果的に防止できる。
しかしながら、森岡泰行, 森田一樹ら:鉄と鋼, 81(1995), p.40の報告にあるように、MnO :17〜31%含有する MnO−Ti酸化物を得るためには、Mn, Tiの酸素との親和力の違いから、溶鋼中のMnとTiの濃度比を、 (wt%Mn) / (wt%Ti) >100 にする必要がある。したがって、鋼中のTi濃度が0.010 wt%の場合、所要のMnO −Ti酸化物を得るためには、Mn濃度は1.0 wt%以上が必要である。しかし、Mn含有量が1.0 wt%を超えると材質が硬化する。従って、MnO を17〜31wt%含有する MnO−Ti酸化物の介在物を形成することは実際上困難であった。
【0010】
さらに、特開平8−281394号公報では、AlレスTi脱酸鋼においてタンディッシュノズルの閉塞の防止策として、ノズルに CaO・ZrO2粒を含有する材料を用いることにより、溶鋼中のTi3O5 がノズルに捕捉された場合、TiO2−SiO2−Al2O3 −CaO −ZrO2系の低融点介在物にしてその成長を防止する方法を提案している。
しかしながら、溶鋼中の酸素濃度が高い場合、付着介在物のTiO2濃度が高くなって低融点化しないため、ノズル閉塞を防止することにはつながらず、一方で酸素濃度が低い場合には、ノズルが溶損する問題があり、十分な対策にはなっていない。
【0011】
また、上掲のノズル詰まり防止に関する各従来技術は、連続鋳造プロセスにおいて、溶鋼をタンディッシュノズルからモールドへ注入するための浸漬ノズルには依然としてArガスやN2ガスを吹き込んで鋳造する必要がある。しかし、その吹き込んだガスが鋳片の凝固シェルに捕捉され、気泡性欠陥になるという問題が残されていた。
さらに、重要なことは、従来の形態制御方法で粒状の介在物にすると、これが鋼板に残留した場合、従来のクラスター状介在物では起こり難かったプレス割れが発生しやすくなり、大きな問題となることがあった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術が抱える上述した問題点を解決課題とするものであり、クラスター状介在物等による表面欠陥が発生しにくく、大型粒状の介在物に起因するプレス割れが生じがたい、表面性状、内質ともに良好な冷延鋼板とその製造技術を提案することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の結論を導くに到った。
1)鋼板の表面性状を向上させるためには、介在物を低融点化して、連鋳におけるノズル詰まりを抑制することにより、パウダー巻き込み、気泡の付着を抑制することが必要である。
2)鋼板内部の粒状介在物を特定の組成にすれば、介在物の凝集を抑制することが可能となる。この特定組成範囲を外れると、介在物が急速に凝集して、粗大化しやすくなる。
3)介在物組成は、溶鋼の組成によって一義的に定まるものではなく、速度論的に決まり、RH脱ガスなどの二次精錬処理中の攪拌以外に、特に脱酸剤の添加時期に影響される。この添加時期は、Al添加後に生成する Al2O3 が核となり、その後に形成されるTi−Ca−Al−O系介在物の組成や粒径に大きく影響を及ぼす。
【0014】
このような知見の下に開発した本発明は、C≦0.010wt%、Si≦1.0wt%、Mn≦3.0wt%、P≦0.15wt%、S≦0.05wt%、Al<0.01wt%、N≦0.01wt%、0.015wt%≦Ti≦0.1wt%、Caおよび/または金属REM≧0.0005wt%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる成分組成であり、50μm以下の大きさを有する、粒状または破断状の酸化物系介在物の組成がAl2O3:10〜30wt%、Caおよび/または金属REMの酸化物:5〜30wt%、Ti酸化物:50〜85wt%であることを特徴とする、耐プレス割れ性、表面性状および内質に優れる冷延鋼板である。
【0015】
また、上記発明鋼板は、出鋼後の溶鋼をAlおよびTiにより脱酸したのちCaおよび/またはREMを添加する工程を経て製造するに当たり、Al添加前の酸素の量と、Alを添加してからTiを添加するまでの時間との間に、aO /t≦100(ただし、aO :Al添加前の酸素の量(ppm)、t:Alを添加してからTiを添加するまでの時間(min))の関係が成り立つようにして添加することにより製造される。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の構成要件を上記範囲に限定した理由について説明する。
(a) C≦0.010 wt%
Cは、少なければ少ないほど深絞り性が向上し、その含有量を0.010 wt%以下とすることで良好な成形性が得られるので、0.010 wt%以下とした。
【0017】
(b) Si≦1.0 wt%
Siは、鋼を強化する作用があり、所望の強度に応じて必要量を含有させるが、その含有量が1.0 wt%を超えると深絞り性が低下するので、1.0 wt%以下に限定した。
【0018】
(c) Mn≦3.0 wt%
Mnは、鋼を強化する作用があり、所望の強度に応じて必要量を含有させるが、その含有量が3.0 wt%を超えると深絞り性が低下するので、3.0 wt%以下に限定した。なお、好ましい範囲は0.01〜2.0 wt%である。
【0019】
(d) P≦0.15wt%
Pは、鋼を強化する作用があり、所望の強度に応じて必要量を含有させるが、その含有量が0.15wt%を超えると、深絞り性が低下するので0.15wt%以下に限定した。
【0020】
(e) S≦0.05wt%
Sは、少ないほど深絞り性が向上するので好ましいが、その含有量が0.05wt%以下であれば、さほど悪影響が出ないので、0.05wt%以下に限定した。
【0021】
(f) Al<0.01wt%
Alは、本発明においては重要な役割りを担う成分である。0.01wt%以上では、Al脱酸になり、巨大 Al2O3 クラスターが多量に生成し、表面性状を劣化させる。また、冷延一焼鈍時の粒成長性を制御できる50μm以下の微細酸化物が少なくなるため、強度−伸びバランスが低下する。したがって、Al含有量は0.01wt%未満とした。
【0022】
(g) N≦0.01wt%
Nは、少ないほど深絞り性が向上するので低減するのが好ましいが、その含有量が0.01wt%以下であれば、さほど悪影響を及ぼさないので、0.01wt%以下に限定した。
【0023】
(h) 0.015 wt%≦Ti≦0.1 wt%
Tiは、本発明鋼板において重要な元素であり、Ti脱酸により、50μm以下のサイズの微細な酸化物系介在物を形成させ、冷延−焼鈍時の粒成長性を制御して、強度−伸びバランスを向上させる成分である。さらに、この微細酸化物は、熱延板の微細化にも有効に作用するため、冷延−焼鈍後に{111}再結晶集合組織が発達してr値が向上する。このTi含有量が0.015 wt%未満では、添加の効果、即ち微細酸化物の量が少なすぎるため、所望の効果が得られなくなるので、下限を0.015 wt%に限定した。一方、0.1wt %を超えて添加すると材質が硬化して成形加工性を損なうほか、コスト上昇をも招くので、上限を0.1wt %とした。
【0024】
(i) Caおよび/または金属REM≧0.0005wt%(合計量)
Caおよび金属REMは、本発明において重要な元素であり、CaおよびREMのいずれか1種または2種を合計で0.0005wt%以上添加する必要がある。すなわち、溶鋼をTi脱酸した後、さらにCaおよびREMのいずれか1種または2種を合計で0.0005wt%以上添加することにより、Ti−Ca−Al−O系の低融点の酸化物系介在物に調整できる。このような調整を行うと、連続鋳造時に、地金を含んだTi酸化物のノズルへの付着を阻止して、ノズル閉塞を防ぐことができる。さらに、CaOおよび/またはREM酸化物は、冷延−焼鈍後の粒成長および熱延板の細粒化にも寄与する。
なお、過剰なCa、REMの添加は鋼板の発錆を引き起こす原因ともなるので、0.005 wt%以下(合計量)の範囲で添加するのが望ましい。
【0025】
(2)鋼板中の介在物
本発明では、鋼中の介在物の組成をAl2O3:10〜30wt%、Caおよび/または金属REMの酸化物:5〜30wt%、Ti酸化物:50〜85wt%とすることによって、介在物を低融点化し、かつ、溶鋼との濡れ性を増加させることにより、介在物の凝集性を低下させる。その結果、鋳片の大型粒状介在物が残留しなくなり、最終的には、鋼板のプレス割れが防止され、プレス性の向上が達成される。図1に、TiO2−CaO−Al2O3系状態図を示す。この状態図から低融点の組成となるのは、とくにTiO2:Al2O3:CaOの重量比が7:1.5:1.5の付近にある。このような傾向をもとにしてさらに検討を行い、本発明では、低融点組成範囲として、Al2O3:10〜30wt%、Caおよび/または金属REMの酸化物:5〜30wt%(合計量)、Ti酸化物:50〜85wt%と定めた。この範囲から外れる組成では、タンディッシュより前の工程では介在物は液相であるが、鋳型では溶鋼温度が低下するため、介在物は固体となって急速に凝集が進行し、大型介在物を生成するようになる。このようにして、本発明による組成範囲では、大型介在物の生成が抑制され、プレス割れを抑制することが可能になる。
【0026】
本発明で上記組成に定める介在物径を50μm以下としたのは、おおよそ50μmを超える大きさの介在物はスラグやモールドフラックスの混入に起因するものが含まれるので、脱酸生成物の組成を定めるには、50μmを超える大きさの介在物は組成の対象から外さねばならないからである。なお、本発明における鋼板中の介在物の大きさとは、鋼板幅方向(圧延直角方向)の大きさを意味する。というのは、スラブ中に存在する介在物の寸法は、圧延により、圧延方向には伸長するものの、板幅方向にはほとんど変化しない。従って、鋼板幅方向の介在物寸法が上記範囲内のものは、スラブ段階でもこの寸法範囲にある微細なものと考えることができる。
また、本発明でいう粒状または破断状の酸化物系介在物とは、鋼スラブで生成した酸化物系介在物が比較的小さなものでは、その形を維持しているような粒状のもの、また比較的大きなものでは熱延および冷延により圧延方向に分断された破断状のものをそれぞれ意味する。
【0027】
(3) 製造方法
本発明鋼板は、出鋼後の溶鋼をAlおよびTiにより脱酸したのちCaおよび/またはREMを添加する工程により溶製する。このとき、Al添加前の酸素量と、Alを添加してからTiを添加するまでの時間(すなわち、Al単独脱酸時間)との間に、aO /t≦100(ただし、aO :Al添加前の酸素の量(ppm)、t:Alを添加してからTiを添加するまでの時間(min))の関係が成り立つようにして添加する必要がある。
溶鋼(通常は、RH脱ガス設備にて脱炭処理後の溶鋼)中に、Alを添加すると、その直後に Al2O3 クラスターが生成する。図2に、各脱酸剤添加後の介在物の写真を示す。この Al2O3 クラスターは大型化しやすく、大きいものでは1mm以上になる。 Al2O3 クラスターの大きさと径は、Al添加前の溶解酸素量aO でほぼ決まり、aO が大きいとクラスターの量、径とも大きくなる。そして、この Al2O3 クラスターは、Ti添加後のTi2O3 、さらにCa添加後のTi−Al−Ca(REM) 系の球状介在物の組成や粒径に影響を及ぼす。Ti添加前のAl2 O3 量が多いと、最終の介在物の Al2O3 濃度が高くなり、かつ、介在物が凝集しやすくなって粗大化することがわかった。また、Alを添加してからTiを添加するまでの時間は、Ti添加時に残留する大型のAl2O3 クラスターを通じて、最終的に製品の大型介在物量に影響を及ぼす。
【0028】
これらの事実をベースにして導いたパラメータa0/tの値を100以下にすると、介在物の組成が、Al2O3:10〜30wt%、Caおよび/または金属REMの酸化物:5〜30wt%、Ti酸化物:50〜85wt%となり低融点化が達成できる。その結果、タンディッシュや浸漬ノズル内に、酸化物等の付着防止のためのArやN2等のガスを吹き込む必要がなくなり、吹き込みガスによる気泡性の欠陥も防止できる。しかも、このスラブをさらに、熱延、冷延、焼鈍することにより、表面性状と内質に優れた冷延鋼板を製造することが可能となる。なお、本発明において、REM酸化物(例えば、La2O3,CeO2)は、CaOと同じ役割を果たすことを確認した。また、二次精錬設備で,RH脱ガス以外の処理、例えば、VODなどを使用した場合でも、介在物組成を本発明の範囲に制御できれば同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【0029】
本発明鋼板を製造する際の他の条件として、スラブの加熱は、圧延荷重および結晶粒径の点から、900 〜1300℃の温度で行うのが望ましく、熱間圧延の終了温度も同様な理由で、650 〜960 ℃の範囲とするのが好ましい。また、冷間圧延における冷延圧下率は加工性確保の上から50〜95%とすることが、冷延後の再結晶焼鈍の温度は 700〜920 ℃とすることが望ましい。
【0030】
【実施例】
出鋼後リムド処理した溶鋼に、RH処理設備にて、Alを添加し、次いでTiを添加した。その後、Ca(一部のものについてはREM)をワイヤーで添加し、連続鋳造によりスラブとした。このスラブを熱延(終了温度:820 ℃)、冷延、連続焼鈍(焼鈍温度:800 ℃)して、板厚0.75mmの冷延板および亜鉛めっき板とした。以上の製造条件及び得られた冷延鋼板の各特性の調査結果を表1及び表2にまとめて示す。
なお、上記製造工程において、Al添加前の溶解酸素量ao は、濃淡電池を利用した酸素プローブで測定した。また、鋼板の介在物の組成は、EPMAやEDXなどの分析手法によって、50μm径以下の介在物個々の組成を分析し、10個の値の平均値から求めた。さらに、冷延鋼板(冷延板および亜鉛めっき板)の表面性状は、鋼板の目視検査により、またプレス割れは、各10枚のサンプルについてバルジ試験を行い、介在物によるネッキング個数を一定重量当たりの個数として指数化した。
表1、2から、ao /tを100(ppm/min)以下にして、介在物の組成を調整した発明例は、表面性状、耐プレス割れ性ともに大幅に向上することがわかる。なお、連続鋳造工程におけるイマージョンノズルの閉塞は本発明では生じなかったが、一方、鋼中のAl濃度が0.01%以上の場合 (Alキルド鋼) には、浸漬ノズルからのAr吹きを行わないとノズル閉塞を起こして鋳造不能となった。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、連続鋳造時にArやN2等のガスを吹き込まずともイマージョンノズルの閉塞を引き起こすことがなく、しかも冷延鋼板の表面は非金属介在物に起因する表面欠陥がなく、内部での粗大な介在物もないのでプレス割れも回避でき、優れたプレス性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Ti−Ca−Al−O系の状態図である。
【図2】酸化物系介在物の形状変化を示す図である。
Claims (2)
- C≦0.010wt%、Si≦1.0wt%、Mn≦3.0wt%、P≦0.15wt%、S≦0.05wt%、Al<0.01wt%、N≦0.01wt%、0.015wt%≦Ti≦0.1wt%、Caおよび/または金属REM≧0.0005wt%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる成分組成であり、50μm以下の大きさを有する、粒状または破断状の酸化物系介在物の組成がAl2O3:10〜30wt%、Caおよび/または金属REMの酸化物:5〜30wt%、Ti酸化物:50〜85wt%であることを特徴とする、耐プレス割れ性、表面性状および内質に優れる冷延鋼板。
- 出鋼後の溶鋼をAlおよびTiにより脱酸したのちCaおよび/またはREMを添加する工程を経て、C≦0.010wt%、Si≦1.0wt%、Mn≦3.0wt%、P≦0.15wt%、S≦0.05wt%、Al<0.01wt%、N≦0.01wt%、0.015wt%≦Ti≦0.1wt%、Caおよび/または金属REM≧0.0005wt%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる冷延鋼板を製造するに当たり、Al添加前の酸素の量と、Alを添加してからTiを添加するまでの時間との間に、
a0/t≦100
ただし、a0:Al添加前の酸素の量(ppm)、
t:Alを添加してからTiを添加するまでの時間(min)
の関係が成り立つように添加することを特徴とする、耐プレス割れ性、表面性状および内質に優れる冷延鋼板の製造方法。
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