JP2014109056A - 伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板およびその鋼板用の溶鋼の溶製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.03〜0.25%、Si:0.001〜0.07%、Mn:0.5〜3.0%、S:0.0001
〜0.008%、T.O:0.005%以下、酸可溶Al:0.01〜1.3%、酸可溶Ti:0.008〜0.20%、Ca:0.0005〜0.0050%、Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上を合計で0.001〜0.01%含有し、(Ce+La+Nd+Pr)/T.O>0.5、かつ、Ca/T.O>0.6を満たす鋼板であり、該鋼板中には、Ce、La、Nd、Pr、Al、Ti、Caの1種または2種以上、かつ、O、Sの1種または2種を含有する介在物相と、Ce、La、Nd、Pr、Ti、Mnの1種または2種以上、かつ、Ca、Sを含有する介在物相と、Ti、Mn、Sの1種または2種以上を含有する介在物相があり、3つの介在物相のうち1種または2種以上の介在物相とからなる複合介在物を含み、該複合介在物は、円相当径0.5〜5μmの大きさの複合した1つの球状介在物を形成して、該球状介在物の個数割合が前記大きさの全介在物個数の30%以上であるようにする。
【選択図】なし
Description
自動車用部品の中でも特に足回り系と呼ばれるフレーム類やアーム類等の質量は、車体全体の質量に占める割合が高いため、こうした部位に用いられる素材を高強度化することによって薄肉化することにより、その軽量化を実現することが可能となる。
また、この足回り系に使用される材料は、プレス成形が多用され、プレス成型時の割れを防止する観点から高い曲げ加工性が要求され、高強度鋼板が広く用いられている。中でも、価格の優位性などから、熱延鋼板が主に用いられている。また、補強材や床下部材、特に、シート用スライドレールなど小さな曲げ加工用部材には、高強度鋼板を用いることにより板厚を減少させて軽量化を図る目的から、冷延鋼板や亜鉛めっき鋼板が主に用いられている。
しかし、これらの鋼板は、高強度と加工性・延性には優れるものの、穴拡げ性、即ち、伸びフランジ性や曲げ加工性に優れているとは言えず、足回り部品などのような伸びフランジ成形性が要求される構造用部品においては、延性ではやや劣るものの、ベイナイト系の鋼板が使用されるのが一般的である。
こうしたスケールを噛みこんだ疵や、赤スケール等は、製品鋼板の表面性状の劣化、めっき付着、めっき密着性の劣化を引き起こしたりして問題を起こしたり、問題を回避する目的で疵を除去する工程を増加するためにコストがかかったりしている。
さらには、高強度化に必要なSi元素を添加しないため、高強度化を図るためにMnを増量したり、その他の析出強化元素を増やしたりすることが必要であるが、Si添加の成分系の材料よりも加工性・成形性が劣る。
そして、更に、特許文献4には、ほとんどAlを添加せず、溶存酸素を多量に残すことにより、溶鋼中にほとんど介在物を生成させず、表面性状に優れた鋼板を作り、CuやNbやBを添加して高強度で、加工性、成形性に優れた鋼板を得る技術が開示されている。
また、多量のMnおよびSが所定量含有されていることから、本発明者らの実験的知見によれば、粗大なMnS系介在物が生成されていると考えられるため、後述の通り、粗大な炭化物の生成の量を削減するのみでは、厳しい穴拡げ加工を行った場合、亀裂の発生を防止することが充分とは言えない。
そして、製鋼での溶製段階で、実質的にAlを用いず、比較的高いフリー酸素が存在する条件下での脱硫処理を用いることとなるため、極低硫まで脱硫することは困難であり、MnおよびSが所定量含有されていることから、粗大なMnS系介在物が生成されていると考えられるため、粗大な酸化物系介在物の生成の量を削減するのみでは、厳しい穴拡げ加工を行った場合、亀裂の発生を防止することが充分とは言えない。
しかし、これまで、高強度と、良加工性・良成形性を両立させる鋼板の中でも、スケールを噛みこんだ疵や、赤スケール等により生成された、製品鋼板の表面性状の劣化、めっき付着、めっき密着性の劣化等に厳格な材料に応用し、スケール疵の抑制や、めっき付着性向上を積極的に改良しながら、MnS系介在物の析出・変形制御の視点にたって伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板およびその鋼板用の溶鋼の溶製方法を提案した例は見られない。
なお、TiNやTiCが微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド上にMnS系介在物と共に複合析出してくる例も観察されたが、曲げ加工性や伸びフランジ性にはほとんど影響がないことが確認されたため、TiNやTiCはMnS系介在物の対象としない。
また、Tiを添加して鋼中の酸可溶Tiを高めることで、固溶TiもしくはTiの炭窒化物のピン止めの効果により結晶粒を微細化することもできることが分かった。従って、鋼中のMnS系介在物をできる限り延伸させず微細球状化でき、同時に結晶粒も微細化できるため、伸びフランジ性、曲げ加工性を両立させることができることが分かった。
C:0.03〜0.25%、
Si:0.001〜0.07%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
T.O:0.0050%以下、
S:0.0001〜0.008%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01〜1.3%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
Ca:0.0005〜0.0050%、
Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La+Nd+Pr)/T.O>0.5、かつ、Ca/T
.O>0.6で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる化学成分の鋼板であり、
該鋼板中には、Ce、La、Nd、Pr、Al、Ti、Caの1種または2種以上を含有し、かつ、O、Sの1種または2種を含有する介在物相と、Ce、La、Nd、Pr、Ti、Mnの1種または2種以上を含有し、かつ、Ca、Sを含有する介在物相と、Ti、Mn、Sの1種または2種以上を含有する介在物相があり、3つの介在物相のうち1種または2種以上の介在物相が、円相当径0.5〜5μmの大きさの複合した1つの球状複合介在物を形成しており、該球状複合介在物の個数割合が円相当径0.5〜5μmの大きさの全介在物個数の30%以上であることを特徴とする伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
Nb:0.001〜0.10%、
V:0.01〜0.10%、
のいずれか1種または2種含有していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
Cu:0.1〜2%、
Ni:0.05〜1%、
Cr:0.01〜1%、
Mo:0.01〜0.4%、
B:0.0003〜0.005%
のいずれか1種または2種以上含有していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
Zr:0.001〜0.01%、
を含有していることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
その理由は、(Ce、La、Nd、Pr)の添加による脱酸により生成した微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、Nd酸化物、Pr酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド、ネオジムオキシサルファイド、プラセジムオキシサルファイド上にMnSやTiS等MnS系介在物が析出し、圧延時にもこの複合析出した酸化物またはオキシサルファイドである介在物の変形を抑制することが可能となることから、鋼板中には延伸した粗大なMnS系介在物を著しく減少させることができるためである。
Si無添加溶鋼における以上の効果は、Si添加鋼すなわち、Al、Si、Ti、(Ce、La、Nd、Pr)、Caによる複合的な脱酸の効果にまでは至らないまでも、Si無添加溶鋼におけるこれまで種々の脱酸元素で脱酸を行ってきた系のうち、最も、酸素ポテンシャルが低下する効果が得られた。
と同様に、伸びフランジ性、曲げ加工性に優れる鋼板が得られることが分かった。また、この成分比を達成できれば、粗大なAl2O3系酸化物がなくなり、Al2O3系酸化物に起因する表面疵を抑制でき、飛躍的に、スケール疵の発生、赤スケール等の発生抑制に効果がある結果を得られた。
溶鋼中にAlを添加することにより、Al2O3系介在物を生成し、一部のAl2O3系介在物は浮上除去され、残りのAl2O3系介在物は溶鋼中に残る。その後、Tiを添加し、さらに添加した(Ce、La、Nd、Pr)により、Al2O3系介在物は還元分解され、微細で球状のCe酸化物、La酸化物、Nd酸化物、Pr酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド、ネオジムオキシサルファイド、プラセジムオキシサルファイド等のREMオキシサルファイドを形成する。更に、Caを添加することにより、これらの酸化物および/またはオキシサルファイドに、(Ce、La、Nd、Pr)、MnCaサルファイド等を含有する介在物が複合析出した形態の微細で硬質な円相当径0.5〜5μmの大きさの複合介在物を形成する。
Ca−Ti−S−Ce−La−Nd−Pr介在物相[例えば、CaTiS(Ce、La、Nd、Pr)]や、Ce−La−Nd−Pr−O−S−Ti−Ca介在物相[例えば、(Ce、La、Nd、Pr)2O2STiCa]の複合介在物、
Ce−La−Nd−Pr−O−S−Al−O介在物相[例えば、(Ce、La、Nd、Pr)2O2SAl2O3]に、Ti−Mn−Ca−S介在物相[例えば、CaTiMnS]が複合して1つの介在物となった球状複合介在物。
なお、(Ce、La、Nd、Pr)の添加前に、Caを添加しても、Caは低融点金属であることと、Ca(O)−Al2O3系の低融点酸化物を形成することから、硬質で微細な球状複合化合物は得られない。
びフランジ性、曲げ加工性を向上できるという効果が得られることに加えて、Al2O3系酸化物をも、硬質複合介在物の一部に不均質核生成させることができることにより、Al2O3の活量を急激に低下させることができ、粗大なAl2O3系酸化物がなくなることから、Al2O3系酸化物に起因する表面疵を抑制できる。
また、こうした低酸素ポテンシャル化した鋼片や鋼板表面の腐食に影響を及ぼす、界面の水素イオン濃度の上昇をも抑制することができ、飛躍的に、スケール疵の発生防止、赤スケール等の発生防止に効果を得られることを見出した。
以下、本発明において伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板の化学成分を限定した理由について説明をする。
Cは、鋼の焼き入れ性と強度を制御する最も基本的な元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて強度の向上に対して有効に寄与する。即ち、このCは、鋼板の強度を確保するために必須の元素であり、高強度鋼板を得るためには少なくとも0.03%が必要である。しかし、このCが過剰に含まれ0.25%を超えると、加工性ならびに溶接性が劣化する。必要な強度を達成し、加工性・溶接性を確保するために、本発明においては、Cの濃度を0.25%以下とする。好ましくは0.03〜0.20%である。
Siは含有量が0.07%を超えると、熱間圧延工程でのスケール形成が顕著で疵の発生に繋がり、赤スケール等の発生から表面性状の劣化を引き起こすとともに、めっき付着性や密着性が著しく劣化し、耐食性が劣化する。このため、Si濃度の上限を0.07%とする。一方、Siを添加しなくても、種々の合金鉄の含有成分として入ってくることや、スラグ中のSiO2の還元からSiがピックアップしてくるため、Si含有量を0.001%未満にするような極低Si化は、製造コストの上昇を招くことになるため、それに対応して下限を0.001%とする。
Mnは、製綱段階での脱酸に有用な元素であり、C、Siとともに鋼板の高強度化に有効な元素である。このような効果を得るためには、このMnを0.5%以上は含有させる必要がある。しかしながら、Mnを、3.0%を超えて含有させるとMnの偏析や固溶強化の増大により延性が低下する。また、溶接性や母材靭性も劣化するのでこのMnの上限を3.0%とする。好ましくは1.0〜2.6%である。
Pは不可避的に含有される元素であり、Fe原子よりも小さな置換型固溶強化元素として作用する点において有効である。しかし、このP濃度が0.05%を超えると、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより、ねじり強度を低下させ、加工性の劣化を引き起こす原因にもなりえるため、上限を0.05%とする。また固溶強化の必要がなければPを添加する必要はなく、Pの下限値は0%を含むものとする。
T.Oは、不純物として酸化物を形成する。T.Oが高すぎる場合、主としてAl2O3系介在物が増大し、系の酸素ポテンシャルを極小にすることができなくなり、靭延性が極端に悪くなり、表面疵が増加するため曲げ加工性が却って悪くなる。このため、本発明においては、T.Oの上限を0.0050%とした。
Sは、不純物として偏析し、SはMnと化合してMnS系の粗大な延伸介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させるため、極力低濃度であることが望ましい。一方、0.008%程度の比較的高いS濃度においても、本発明のMnS系の粗大な延伸介在物を形態制御により、二次精錬での脱硫負荷をかけず、脱硫コストをかけずに、コストに見合った以上の材質が得られる。従って、本発明におけるS濃度の範囲として、二次精錬での脱硫を前提とした極低S濃度から、比較的高S濃度までの0.0001%〜0.008%までの範囲とした。
Nは、溶鋼処理中に空気中の窒素が取り込まれることから、鋼中に不可避的に混入する元素である。Nは、Al等と窒化物を形成して母材組織の細粒化を促進する。しかしながら、このNは0.01%を超えて含有すると、Al等と粗大な析出物を生成し、伸びフランジ性を劣化させる。このため、本発明においては、Nの濃度の上限を0.01%とするが、好ましくは0.005%である。一方、Nの濃度を0.0005%未満とするにはコストが高くなるので、工業的に実現可能な観点から0.0005%を下限とする。
酸可溶Alは一般的には、その酸化物がクラスター化して粗大になり易く、粗大Al2O3が多数存在すると、靭延性が極端に悪くなり、表面疵が増加し、伸びフランジ性、曲げ加工性を劣化させるため極力抑制することが望ましい。しかしながら、本発明においては、Al脱酸を行いつつも、(Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上)およびCaの複合的、かつ逐次的な脱酸効果と、粗大Al2O3と関連するT.O濃度に応じた(Ce、La、Nd、Pr濃度)ならびに、Ca濃度とすることにより、上述の通り、Al2O3活量を低く抑え、低酸素ポテンシャルを達成しつつ、溶鋼中のAl2O3系介在物やクラスターを分断し、微細な介在物を形成し、材質劣化や、表面疵に繋がらない領域を新たに見出した。
Tiは主要な脱酸元素の一つであるとともに、炭化物、窒化物、炭窒化物を形成し、熱間圧延前で充分な加熱を行うことにより、オーステナイトの核生成サイト数を増加させ、オーステナイトの粒成長を抑制するため微細化・高強度化に寄与し、熱間圧延時の動的再結晶に有効に作用し、伸びフランジ性を著しく向上させる機能を担う。これには、酸可溶Tiが0.008%以上となるように添加する必要があることを実験的に知見した。このため、本発明においては、酸可溶Tiの下限を0.008%とした。
ちなみに、熱間圧延前における充分な加熱温度は、鋳造時に生成した炭化物、窒化物、炭窒化物を、一旦、固溶するために充分な温度であることが要求され、1200℃超は必要である。一方、1250℃を超えて高い温度とすることは、コストやスケール生成の観点から、好ましくない。従って、1250℃程度が好適である。
一方、0.2%を超えて含有すると、脱酸における効果が飽和するのみならず、熱延前で充分な加熱を行っても、粗大な炭化物、窒化物、炭窒化物を形成してしまい、かえって材質の劣化を招き、含有量に見合う効果が期待できない。このため、本発明においては、酸可溶Tiの濃度の上限を0.2%とする。
ちなみに、酸可溶Ti濃度とは、酸に溶解したTiの濃度を測定したもので、溶存Tiは酸に溶解し、Ti酸化物は酸に溶解しないことを利用した分析方法である。ここで、酸とは、例えば塩酸1、硝酸1、水2の割合(質量比)で混合した混酸が例示できる。この様な酸を用いて、酸に可溶なTiと、酸に溶解しないTi酸化物とに分別でき、酸可溶Ti濃度が測定できる。
Caは、本発明においては重要な元素であり、複合脱酸に用いる元素の一つで、硫化物を球状化させる等、脱硫の形態を制御させると共に、MnS、TiMnS、CaS、または(Mn、Ti、Ca)Sの1種または2種以上を、複合析出した酸化物またはオキシサルファイドと析出固溶させて複合介在物を形成させる効果があり、鋼の伸びフランジ性と曲げ加工性を向上することができる。これらの効果を得るためにはCaの添加量を0.0005%以上とすることが好ましい。しかし、Caを多量に含有させると、鋳塊中にCaOAl2O3系介在物やCaS(Fe、Mn、Al2O3)系介在物として粗大析出し、これらの融点が低く1390℃程度であるから、圧延時に容易に延伸され50〜100μm程度の延伸した介在物となり、かえって曲げ加工性と伸びフランジ性(穴拡げ加工性)を低下させる。
さらには、Ca/T.O>0.6が得られている場合、急激に溶鋼中の酸素ポテンシャルが低下する結果が得られており、複合脱酸の効果を最大限享受でき、Al2O3活量を極めて低くできるため、この成分比を達成できれば、粗大なAl2O3系酸化物がなくなり、Al2O3系酸化物に起因する表面疵を抑制でき、飛躍的に、スケール疵の発生、赤スケール等の発生抑制に効果がある。
Ce、La、Nd、PrはAl脱酸により生成したAl2O3を還元し、かつ粗大化しようとするAl2O3クラスターを分断し、MnS系介在物の析出サイトとなり易く、且つ硬質、微細で圧延時に変形し難いCe酸化物(例えば、Ce2O3、CeO2)、セリュウムオキシサルファイド(例えば、Ce2O2S)、La酸化物(例えば、La2O3、LaO2)、ランタンオキシサルファイド(例えば、La2O2S)、Nd酸化物(例えばNd2O3)、Pr酸化物(例えばPr6O11)、Ce酸化物−La酸化物−Nd酸化物−Pr酸化物、或いはセリュウムオキシサルファイド−ランタンオキシサルファイドを主相(50%以上を目安とする。)とする介在物を形成する効果を有している。なお、Ce、La、Nd、Prの内Ce、Laを用いることが好ましい。
さらには、Al2O3系酸化物をも、硬質複合介在物の一部に不均質核生成させることができることにより、Al2O3の活量を急激に低下させることができ、粗大なAl2O3系酸化物がなくなることから、Al2O3系酸化物に起因する表面疵を抑制でき、こうした低酸素ポテンシャル化した鋼片や鋼板表面の腐食に影響を及ぼす、界面の水素イオン濃度の上昇をも抑制することができ、飛躍的に、スケール疵の発生、赤スケール等の発生に効果がある。
選択成分については、添加の有無は任意であり、1種だけ加えても良く、2種以上加えてもよい。
(Nb:0.001〜0.10%)
上述した複合炭化物、複合窒化物等を得るためこのNb濃度を0.001%以上とするのが好ましい。しかし、このNb濃度が0.10%を超えて多量に含有してもかかる母材組織の細粒化の効果が飽和し、製造コストが高くなる。このため、Nb濃度は0.10%を上限とする。
上述した複合炭化物、複合窒化物等を得るためにはこのV濃度を0.01%以上とするのが好ましい。しかし、このV濃度が0.10%を超えて多量に含有しても効果が飽和し、製造コストが高くなる。このため、V濃度は0.10%を上限とする。
(Cu:0.1〜2%)
Cuは、フェライトの析出強化や強度向上に寄与し、さらに鋼板の強度を確保するために、必要に応じて含有することができ、この効果を得るためには0.1%以上添加することが好ましい。しかし、このCuの多量の含有はかえって強度−延性のバランスを劣化させる。そのため、2%を上限とする。
Niは、フェライトの固溶強化することができるため、さらに鋼板の強度を確保するために、必要に応じて含有することができ、この効果を得るためには0.05%以上添加することが好ましい。しかし、このNiの多量の含有はかえって強度−延性のバランスを劣化させる。そのため、1%を上限とする。
Crは、さらに鋼板の強度を確保するために、必要に応じて含有することができ、この効果を得るためには0.01%以上添加することが好ましい。しかし、このCrの多量の含有はかえって強度−延性のバランスを劣化させる。そのため、1%を上限とする。
Moは、さらに鋼板の強度を確保するために、必要に応じて含有することができ、これらの効果を得るためには0.01%以上添加することが好ましい。しかし、このMoの多量の含有はかえって強度−延性のバランスを劣化させる。そのため、0.4%を上限とする。
Bは、さらに粒界を強化し、加工性を向上するために、必要に応じて含有することができ、これらの効果を得るためには0.0003%以上添加することが好ましい。しかし、このBを0.005%を超えて多量に含有させてもその効果は飽和し、かえって鋼の清浄性を損ない、延性を劣化させる。そのため、0.005%を上限とする。
(Zr:0.001〜0.01%)
Zrは、上述した硫化物を球状化して母材の靭性を改善する効果を得るためには0.0
01%以上添加することが好ましい。しかし、このZrの多量の含有はかえって鋼の清浄
性を損ない、延性を劣化させる。そのため、0.01%を上限とする。
本発明者は、上述の通り、Alで脱酸し、Tiを添加し、その後Ce、La、Nd、Prの1種、2種、3種または4種を添加して脱酸した後、Caを添加して複合脱酸した溶鋼において、質量ベースで、(Ce+La+Nd+Pr)/T.O>0.5、かつ、Ca/T.O>0.6が得られている場合、急激に溶鋼中の酸素ポテンシャルが低下する結果を得た。
上述したこれらの複合介在物は、円相当径0.5〜5μmの大きさの複合した1つの球状介在物を多数形成して、割れ発生の起点や亀裂伝播の経路となり難くなり、かえって微細であるため応力集中の緩和に寄与し、伸びフランジ性、曲げ加工性の向上につながっているものと考えられる。
なお、MnSの円相当直径の上限は特に規定するものではないが、現実的には1mm程度のMnSが観察される場合がある。
即ち、延伸割合3以下の介在物の個数割合が50%未満になると、割れ発生の起点となり易いMnSやCe、Laを添加した場合のCe、Laから成る酸化物およびオキシサルファイドを核にしてMnSがその周囲に析出した場合の介在物、および低融点のCaO−Al2O3系介在物および粗大な延伸するCaSの個数割合が多くなり過ぎ、伸びフランジ性と曲げ加工性が低下する。
そこで、本発明においては、延伸割合3以下の介在物の個数割合が50%以上とするのが望ましい。
ここで、延伸していないと判断される球状介在物とは、特に規定するものではないが、鋼鈑中の延伸割合3以下の介在物、好ましくは2以下の介在物である。また、延伸していないと判断される球状介在物は、完全に球状であれば、延伸割合が1になるため、延伸割合の下限は1である。
そして、その個数割合が30%未満になると、これに対応して、MnSの延伸介在物の個数割合が多くなり過ぎ、伸びフランジ性と曲げ加工性が低下するので好ましくない。
一方、この複合介在物は、圧延時にも変形が起こり難い上に、円相当直径が0.5μm未満の場合は、割れ発生起点とならないことから、円相当直径の下限は特に規定するものではない。
なお、スピード法とは、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニュウムクロライド−メタノールを用いて試料表面を電解し、介在物を抽出する方法であるが、電解量としては試料表面の面積1cm2当たり電解量が1Cになるまで電解した。このようにして電解した表面のSEM像を画像処理して、円相当直径に対する頻度(個数)分布を求めた。この粒径の頻度分布から平均円相当直径を算出した。
その結果、複合介在物中に、平均組成でCe、La、Nd、Prの1種または2種以上の合計を0.5〜95%含有させると、伸びフランジ性と曲げ加工性が向上することが判明した。
本発明では、鋳塊中に微細なMnS系介在物を析出させ、さらに圧延時に変形を受けず、割れ発生の起点となり難い微細球状介在物として鋼板中に分散させることにより、伸びフランジ性と曲げ加工性を向上させるものであり、鋼板における特定のミクロ組織に基づくものではない。
原料となる溶銑を転炉で吹錬して脱炭し、或いは更に真空脱ガス装置を用いて脱炭した溶鋼中に、C、Mn等の合金を添加し撹拌して、脱酸と成分調整を行い、所定の組成の溶鋼とする。具体的には、製鋼における精錬工程において、Pが0.05%以下、Sが0.0001%以上に処理された溶鋼に、Cが0.03〜0.25%、Mnを1.0〜3.0%、Nが0.0005〜0.01%となる様にこれらの元素を添加もしくは調整する。なお、Siは無添加とする。
連続鋳造については、通常の250mm厚み程度のスラブ連続鋳造に適用されるだけでなく、ブルームやビレット、さらにはスラブ連続鋳造機の鋳型厚みが通常より薄い、例えば150mm以下の薄スラブ連続鋳造に対して十分に適用可能である。
これら炭窒化物を固溶させておくことにより、圧延後の冷却過程で延性の向上にとって好ましいフェライト相が得られる。一方、熱延前のスラブの加熱温度が1250℃を超えるとスラブ表面の酸化が著しくなり、歩留低下をもたらすので、上限を1250℃とすることが好ましい。
選択元素を添加する実験のチャージによっては、Ce、La、Nd、Prの1種、2種、3種または4種を添加する前までに行い、十分撹拌し、必要に応じて選択元素の成分調整が行われた後に、Ce、La、Nd、Prの1種、2種、3種または4種の添加を行なった。その後、十分撹拌し、Ca添加を行なった。
Claims (11)
- 質量%で、
C:0.03〜0.25%、
Si:0.001〜0.07%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
T.O:0.0050%以下、
S:0.0001〜0.008%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01〜1.3%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
Ca:0.0005〜0.0050%、
Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La+Nd+Pr)/T.O>0.5、かつ、Ca/T.O>0.6で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる化学成分の鋼板であり、
該鋼板中には、Ce、La、Nd、Pr、Al、Ti、Caの1種または2種以上を含有し、かつ、O、Sの1種または2種を含有する介在物相と、Ce、La、Nd、Pr、Ti、Mnの1種または2種以上を含有し、かつ、Ca、Sを含有する介在物相と、Ti、Mn、Sの1種または2種以上を含有する介在物相があり、3つの介在物相のうち1種または2種以上の介在物相が、円相当径0.5〜5μmの大きさの複合した1つの球状複合介在物を形成しており、該球状複合介在物の個数割合が円相当径0.5〜5μmの大きさの全介在物個数の30%以上であることを特徴とする伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。 - 前記球状複合介在物が円相当直径1μm以上の介在物であり、かつ、長径/短径が3以下の介在物の個数割合が円相当直径1μm以上の全介在物個数の50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
- 前記球状複合介在物中に含有する、Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上の合計が平均組成で0.5〜95質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
- 前記鋼板の組織における結晶の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
- さらに、質量%で、
Nb:0.001〜0.10%、
V:0.01〜0.10%
のいずれか1種または2種含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。 - さらに、質量%で、
Cu:0.1〜2%、
Ni:0.05〜1%、
Cr:0.01〜1%、
Mo:0.01〜0.4%、
B:0.0003〜0.005%
のいずれか1種または2種以上含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。 - さらに、質量%で、
Zr:0.001〜0.01%
を含有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板。 - 製鋼における精錬工程において、質量%で、Pが0.05%以下、Sが0.0001%以上に処理された溶鋼に、Cが0.03〜0.25%、Siを無添加、Mnを1.0〜3.0%、Nが0.0005〜0.01%となる様に添加もしくは調整し、その後、Alを酸可溶Alで0.01%以上、T.Oが0.0050%以下となるように添加し、その後、Tiを酸可溶Tiで0.008%以上となる様に添加し、さらにその後、Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上を添加して、さらに、質量ベースで、(Ce+La+Nd+Pr)/T.O>0.5、Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上の合計を0.001〜0.01%とした後に、Caを添加して、さらに、質量ベースで、Ca/T.O>0.6、Ca:0.0005〜0.0050%となる様に添加もしくは調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
- 前記精錬工程において、Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上を添加する前に、さらに、質量%で、Nbを0.001〜0.10%、Vを0.01〜0.10%のいずれか1種または2種となる様に添加することを特徴とする請求項8に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
- 前記精錬工程において、Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上を添加する前に、さらに、質量%で、Cuを0.1〜2%、Niを0.05〜1%、Crを0.01〜1%、Moを0.01〜0.4%、Bを0.0003〜0.005%のいずれか1種または2種以上となる様に添加することを特徴とする請求項8または9に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
- 前記精錬工程において、Ce、La、Nd、Prの1種または2種以上を添加する前に、さらに、質量%で、Zrを0.001〜0.01%となる様に添加することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の伸びフランジ性、曲げ加工性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
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