JP2002363694A - 曲げ加工性に優れた超高強度冷延鋼板 - Google Patents
曲げ加工性に優れた超高強度冷延鋼板Info
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Abstract
れた曲げ加工性を有する超高強度冷延鋼板を提供する。 【解決手段】 本発明の超高強度冷延鋼板は、mass%で
C:0.08〜0.20%、Si:0.1〜1.5%、
Mn:1.5〜2.5%、P:0.02%以下、S :
0.002%以下、Al:0.02〜0.06%、N:
0.0005%以下、Ca:0.0005%以下、O:
0.0007%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不
純物からなり、組織がフェライト相と低温変態生成相と
で構成され、組織中の介在物の大きさをその面積に相当
する円の直径で表したとき、直径5μm 以上の介在物が
25個/mm2以下であり、引張強さが780MPa級以上
である。
Description
た、780MPa級以上の引張強さを有する超高強度冷
延鋼板に関する。
の軽量化に対する要求の高まりを背景として、自動車用
鋼板として加工性に優れた高強度冷延鋼板が使用されて
いる。このような冷延鋼坂として、熱間制御圧延技術や
連続焼鈍技術の普及に伴って、フェライト相と、マルテ
ンサイトやべイナイトのような硬い低温変態生成相とを
共存させた強度・延性バランスに優れる複合組織高強度
鋼板が広く使用されるに至っている。
しくなってきており、780MPa級以上の引張強さを
有する超高強度冷延鋼板も使用されるようになってき
た。このような超高強度鋼板では、絞り成形や張り出し
成形などの複雑形状を得るためのプレス成形性は要求さ
れないものの、極めて高い曲げ加工性が要求される場合
が多い。特に、最近では、シート用スライドレールなど
の曲げ半径の小さい曲げ部を備えた部材に対しても超高
強度冷延鋼板が適用されつつあり、従来に対してより厳
しい曲げ加工性が要求される傾向にある。
工性の改善については、例えば特開昭62−13533
号公報や平特開昭63−293121号公報に記載され
ているように、低温変態生成相の硬さを低下して、フェ
ライト相との硬度差を小さくし、これによって曲げ加工
性を向上させることが行われている。しかしながら、近
年要求される厳しい曲げ加工に対しては十分満足する結
果が得られていない。
あり、780MPa級以上の高強度を備えながら、優れ
た曲げ加工性を有する超高強度冷延鋼板を提供すること
を目的とする。
延鋼板を用いて曲げ半径の小さい曲げ加工を行い、その
曲げ部の割れ発生状況と破面を子細に観察した結果、破
面に特定の大きさの介在物、特に酸化物系介在物の存在
個数が割れ発生に顕著に影響することを見出し、本発明
を完成するに至った。
は、化学成分がmass%で、C:0.08〜0.20%、
Si:0.1〜1.5%、Mn:1.5〜2.5%、P
:0.02%以下、S :0.002%以下、Al:
0.02〜0.06%、N :0.0005%以下、C
a:0.0005%以下、O :0.0007%以下、
あるいはさらにTi:0.005〜0.10%、さらに
またMo:0.05〜0.3%、Cr:0.1〜0.5
%、Ni:0.1〜0.5%のうち1種または2種以上
を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、組織
がフェライト相と低温変態生成相とで構成され、組織中
の介在物の大きさをその面積に相当する円の直径で表し
たとき、直径5μm 以上の介在物が25個/mm2以下であ
り、引張強さが780MPa級以上であることを特徴と
する。
鋼板について詳細に説明する。まず、その化学成分の限
定理由について説明する。以下、単位はmass%である。
ために必要であり、780MPa級以上の強度を確保す
るのに十分な量の低温変態生成相を得るためには、少な
くとも0.08%を添加する必要がある。しかし、添加
量が0.20%を越えると、延性が低下し、またスポッ
ト溶接性にも劣るようになるので、添加量の上限を0.
20%とする。
る。0.1%未満ではかかる作用が過少であり、一方
1.5%を超えると熱間圧延の際にSiスケールの発生
が著しくなり、鋼板の表面性状を劣化させる。このた
め、下限を0.1%、上限を1.5%とする。
において低温変態生成相、特に主としてマルテンサイト
からなる低温変態生成相の生成を容易にすると共にフェ
ライトを強化し、延性を高める効果を有する。1.5%
未満ではかかる効果が過少であり、一方2.5%を越え
て添加しても上記効果が飽和し、また偏析により加工性
が劣化するようになるので、上限を2.5%とする。
下させるので、その上限を0.02%とする。
化させるため少ない程よく、0.002%以下に止め
る。
その作用が過少であり、鋼中の酸素含有量を低減できな
い。一方、0.06%を越えて添加してもその効果が飽
和するため、上限を0.06%とする。
の含有量が多くなると、曲げ加工性を劣化させるため、
その上限を0.0005%とする。
階で酸素を巻き込み、CaOなどの酸化物系介在物を生
成するため、本発明ではその含有をできるだけ抑制する
ことが好ましく、上限を0.0005%、好ましくは
0.0003%とする。
いので、本発明ではCaの低減と相まってできるだけ含
有量を抑制することが望ましく、その上限を0.000
7%、好ましくは0.0006%とする。
e及び不可避的不純物からなるが、必要に応じてさらに
Ti、あるいはさらにMo,Cr,Niの1種以上を含
有することができる。
とともに、結晶粒を微細にして降伏強度を高めるのに有
効である。かかる作用を得るためには0.005%以上
は必要であるが、0.10%を越えるとその効果が飽和
するようになるので、これを上限とする。
態生成物の生成を促進する作用を有する。0.05%未
満ではかかる作用が過少であり、一方0.3%を越える
と効果が飽和する上にコスト高となるため、その上限を
0.3%とする。
有効な低温変態生成物の生成を促進する。0.1%未満
ではかかる作用が過少であり、一方0.5%を越えると
効果が飽和するようになるので、その下限を0.1%、
上限を0.5%とする。
する。0.1%未満ではかかる作用が過少であり、一方
0.5%を越えると効果が飽和するようになり、またコ
スト高を招来するので、その下限を0.1%、上限を
0.5%とする。
温変態生成相とで形成される。低温生成相は、べイナイ
ト、マルテンサイトあるいはこれらの混合相によって構
成される。これらの組織の割合は、引張強さが780M
Pa級以上となるように適宜設定される。上記複合組織
の下、本発明の鋼板は組織中の所定サイズの介在物が制
限された点に特徴がある。
鋼板に強度の曲げ加工を施し、曲げ部に発生した割れの
破面を観察したところ、所定サイズの介在物の間をクラ
ックが連結し、このクラックがさらに進展して大きな割
れが発生することを見出した。さらに、クラックの連結
に関与する介在物のサイズ、介在物の密度を調査したと
ころ、大きさが5μm以上の介在物が25個/mm2以下、
好ましくは20個/mm2以下であれば介在物間がクラック
によって連結されにくく、曲げ加工の際に割れが生じ難
いことが知見された。そして、割れの原因になっている
介在物は、主として酸化物系の介在物であることもEP
MAによって確かめられた。前記介在物の大きさは、鋼
板の断面組織をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、
介在物の面積と同面積の円(相当円)の直径によって表
したものである。なお、本発明の鋼板は、上記のように
780MPa級以上の強度を有するように低温変態生成
相の種類、量が適宜設定されるが、介在物サイズ、量を
上記のように規定することで、同じ組織であっても曲げ
加工性を飛躍的に向上させることができる。
れの原因は酸化物系介在物であることに鑑み、本発明の
超高強度冷延鋼板を製造するに際しては鋼の溶解におい
て、アルミニュームによって脱酸したキルド鋼を転炉よ
り出鋼し、取鍋にてLF法にて脱硫した後、さらに真空
脱ガスを行う。真空脱ガスには種々の方法を適用するこ
とができるが、RH法が比較的簡便に実施することがで
きるので好適である。なお、従来、この種の鋼の精錬に
おいては、基本的に真空脱ガス工程を適用しないのが通
常である。
〜1250℃程度に加熱され、仕上温度Ar3 点以上で
熱間圧延を終了し、500〜700℃程度で巻き取り
後、酸洗し、好ましくは30〜80%程度の圧下率にて
冷間圧延され、2mm以下の薄板に加工された後、フェラ
イト+オーステナイト共存温度にて焼鈍処理が施され
る。焼鈍後、好ましくは10℃/s以上の冷却速度にて
低温変態生成相を生成させる。冷却方法は、水焼き入
れ、水冷ロール冷却、気水冷却、ガスジェット冷却等の
適宜の方法を採ることができる。水焼き入れした場合、
冷却の途中、もしくは一旦室温まで冷却後、200〜5
00℃の温度範囲にて30秒から5分程度保持する過時
効処理を施し、過飽和に固溶したフェライト中の炭素を
析出させて、延性を改善することが好ましい。
鋼板として、例えば、特開平5−105959号公報、
特開平10−280090号公報、特開平9−3024
40号公報に開示されているように、低温変態生成相を
ベイナイト主体で構成したり、表面ミクロクラックの抑
制のためにN量を抑制し、Tiを必須添加するなどの方
策が採られるが、本発明は複合組織中に存在する介在
物、特に酸化物系介在物の大きさと個数を制御すること
によって優れた曲げ加工性を達成したものであり、既存
の技術とはその本質を異にするものである。以下、実施
例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明
はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではな
い。
たキルド鋼を溶解炉から取鍋に出鋼し、表1の試料No.
1,2,5,6,9〜14についてはホタル石を主材と
し、Caを含まない還元性フラックスを用いてLF法に
よって脱硫し、さらにRH法による真空脱ガスを施して
脱酸を促進して低Ca、低Oの鋼を溶製した。RH法の
実施に際して、溶鋼の還流時間は1チャージ(240to
n )当たり約9分とした。他の試料については前記Ca
を含まない還元性フラックスあるいはCaを含む還元性
フラックスにより脱硫したが、いずれも真空脱ガスは行
わなかった。
程度に加熱し、仕上温度を900℃程度として熱間圧延
を終了し、巻取温度550〜600℃にて巻き取り、板
厚3.2mmの熱延鋼板を得た。さらに、この熱延鋼板を
酸洗し、板厚1.4mmとなるように冷間圧延を施し、そ
の後連続焼鈍により850℃にて再結晶焼鈍した後、室
温まで急冷し、さらに350℃まで再加熱し、同温度に
て50〜120秒保持して過時効処理を行い、フェライ
トおよびマルテンサイトからなる複合組織の薄鋼板を得
た。
し、その板厚断面中央部をSEMにて観察(倍率100
0)し、面積20mm2 当たりに存在する介在物のサイズ
と個数との関係を調べ、5μm 以上の介在物の個数を求
めた。介在物のサイズは介在物の面積と同面積を有する
円の直径で表した。介在物の面積は画像解析ソフトによ
って求められた。前記調査によって得られたサイズと個
数との関係の一部(試料No. 1〜4)を表2および図1
に示す。なお、EPMAにより介在物はほとんど酸化物
系介在物であることが確認された。
機械的性質を調べた。また、穴拡げ試験片を採取し、伸
びフランジ性を調べた。伸びフランジ性は、穴拡げ試験
を行い、得られた限界穴拡げ率λ(%)によって評価さ
れた。穴拡げ試験は、鋼板に打抜き加工を施し、得られ
た打抜き穴(直径Do=10mmφ)に頂角60°の円
錐ポンチを差し込んで、穴を押し拡げ、穴の周りに生じ
た割れが板厚を貫通したときの穴の直径Dfを測定する
ものであり、下記式により限界穴拡げ率λ(%)が求め
られる。 λ(%)={(Df−Do)/Do}×100
開き角度が60°の断面V字形の凹部を有するダイと、
その凹部に係合するV形凸部を有するパンチを備えた成
形型を用いてV曲げ試験を行った。この際、曲げ部に割
れが発生する限界のパンチ先端部の曲げ半径(限界曲げ
半径という。)を0.5mm単位で求めた。これらの結果
を表3に併せて示す。
9〜14)は、780MPa級以上の高強度を有し、し
かもV曲げ試験における曲げ限界半径が0.5mm以下で
あり、優れた曲げ成形性を具備していることが分かる。
これに対して、RH法による真空脱ガスを行わなかった
比較例(No. 3,4,7,8)は、780MPa級以上
の高強度を有しているものの、含有酸素量が多くなり、
これに伴って5μm 以上の大きな介在物量が増大して曲
げ成形性が劣化し、伸びフランジ性も低下した。
ェライトおよび低温変態生成相からなる複合組織におい
て、曲げ加工の際に曲げ部の割れ発生の要因となる5μ
m 以上の介在物の個数を25個/mm2 以下に制限したの
で、780MPa級以上の高強度ながら、優れた曲げ加
工性を備え、従来に比して厳しい曲げ成形に適用するこ
とができ、自動車用はもとより、家電および建築など厳
しい曲げ加工が必要とされる分野に好適に使用される。
のサイズと個数との関係を示す分布図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 化学成分がmass%で、C :0.08〜
0.20%、Si:0.1〜1.5%、Mn:1.5〜
2.5%、P :0.02%以下、S :0.002%
以下、Al:0.02〜0.06%、N :0.000
5%以下、Ca:0.0005%以下、O :0.00
07%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物から
なり、組織がフェライト相と低温変態生成相とで構成さ
れ、組織中の介在物の大きさをその面積に相当する円の
直径で表したとき、直径5μm 以上の介在物が25個/m
m2以下であり、引張強さが780MPa級以上であるこ
とを特徴とする曲げ加工性に優れた超高強度冷延鋼板。 - 【請求項2】 化学組成としてさらに、Ti:0.00
5〜0.10%を含有する請求項1に記載した超高強度
冷延鋼板。 - 【請求項3】 化学組成としてさらに、Mo:0.05
〜0.3%、Cr:0.1〜0.5%、Ni:0.1〜
0.5%の1種または2種以上を含有する請求項1また
は2に記載した超高強度冷延鋼板。
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