JP6048623B2 - 高強度鋼板 - Google Patents

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    • C21D9/46Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor for sheet metals

Description

本発明は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼板に関し、特に自動車構造部材、補強部材等、機械構造部品を製造するために好適な、曲げ加工性に優れた高強度鋼板に関する。
近年、自動車部品においては、軽量化による燃費向上および乗員の保護という特性が要求されている。これら特性への要求を満足させるため、自動車部品に用いられる鋼板には、高強度化が求められている。一方、高強度鋼板は軟質鋼板と比較して加工性が劣るため、プレス成形など成形加工が困難である。特に引張強さが780MPa級以上の鋼板では、曲げ加工モード主体のフォーム成形で加工されることが多いため、成形性の中でも、曲げ加工性が重視される。
そのため、高強度鋼板の曲げ加工性の改善手段については、従来、種々の検討が行われてきた。例えば、特許文献1には、化学成分がmass%で、C:0.08〜0.20%、Si:0.1〜1.5%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.02%以下、S:0.002%以下、Al:0.02〜0.06%、N :0.0005%以下、Ca:0.0005%以下、O:0.0007%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、組織がフェライト相と低温変態生成相とで構成され、組織中の介在物の大きさをその面積に相当する円の直径で表したとき、直径5μm以上の介在物が25個/mm以下であり、引張強さが780MPa級以上であることを特徴とする曲げ加工性に優れた超高強度冷延鋼板が提案されている。特許文献1には、曲げ加工によって生じる割れの原因が酸化物系介在物であり、酸化物系介在物を形成するCaを0.0005%以下、比較的大きな介在物を形成しやすいOを0.0007%以下といった極めて低いレベルまで低減するとともに、曲げ加工性を劣化させるNを0.0005%以下と極めて低いレベルまで低減して、優れた曲げ加工性を得ることが開示されている。
特許文献2には、鋼板表層にフェライト体積率が90%以上で厚さが10〜100μmの軟質層を有し、中心部の組織は焼戻しマルテンサイト体積率が30%以上で残部はフェライト相である曲げ性および伸びフランジ性に優れる超高強度冷延鋼板が開示されている。
また、介在物の量や形状を制御して、鋼板の材料特性を改善する技術としては、例えば特許文献3や4の技術がある。
特許文献3には、伸びフランジ性の向上を目的として、金属組織ならびに介在物量を制限した高強度冷延鋼板が開示されている。特許文献3では、硬さ380Hv以下の焼戻しマルテンサイトが面積率で50%以上(100%を含む)を含み、残部がフェライトからなる組織を有し、該焼戻しマルテンサイト中に存在する、円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子が、該焼戻しマルテンサイト1μm当たり2.3個以下であり、全組織中に存在する、アスペクト比2.0以上の介在物が、1mm当たり200個以下である伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板が提案されている。
また、特許文献4には、CeもしくはLaの1種または2種の合計が0.001〜0.04%であり、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.1、かつ、(Ce+La)/Sが0.4〜50である化学成分を有する、伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板が提案されている。特許文献4では、Ce、Laの添加による脱酸により生成した微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド上にMnS、TiS、(Mn,Ti)Sが析出し、圧延時にもこの析出したMnS、TiS、(Mn,Ti)Sの変形が起こり難いため、鋼板中には延伸した粗大なMnSが著しく減少し、繰り返し変形時や穴拡げ加工時において、これらのMnS系介在物が割れ発生の起点や亀裂伝播の経路となり難くなることが開示されている。また、特許文献4には、酸可溶Al濃度に応じたCe、La濃度とすることにより、Al脱酸で生成したAl系介在物について、添加したCe、Laが還元分解して微細な介在物を形成し、アルミナ系酸化物がクラスター化して粗大とならないことが開示されている。
特開2002−363694号公報 特開2005−273002号公報 特開2009−215571号公報 特開2009−299137号公報
しかしながら、特許文献1に記載される技術では、Ca、N、Oを上記したような範囲に低減するために、製鋼工程において多大な時間とコストを要する。また、特許文献2に記載される技術では、鋼板の表層を軟質とするため、表層硬度の影響が顕著である疲労特性が著しく劣化するという問題がある。
また、特許文献3に記載される技術は、MnS介在物等の形態を制御して伸びフランジ性を改善するものであるが、曲げ加工性に大きく影響する酸化物系介在物の制御に関する示唆を与えるものではない。また、特許文献4に記載される技術は、本発明で改善しようとする曲げ加工性向上に必ずしも有効でない。また、Ce、Laといった特殊元素の添加が必要であるため、製造コストが著しく上昇する。
本発明は、かかる状況を鑑み、鋭意研究した結果なされたものであって、自動車構造部材、補強部材、その他あらゆる機械構造部材の製造に好適な、引張強さが780MPa以上であり、曲げ加工性に優れた高強度鋼板を低コストで提供することを目的とする。
本発明者らは、高強度鋼板の曲げ加工性支配因子について研究した。その結果、加工時の割れの起点は鋼板表面から100μm以内に存在する粒子長径が2μm以上の酸化物系介在物であることを見出した。そして、優れた曲げ加工性を確保するには、当該介在物数を100mm当たり100個以下とすることが有効であること、また、曲げ加工の際に発生する微小割れの進展には、鋼の化学成分(成分組成)ならびに熱処理によって決定される鋼板の金属組織が影響することを明らかとした。
ここで、割れ起点となる酸化物系介在物を精錬工程で除去、低減させることは有効であるが、大幅な製造コスト上昇を招く。このため、酸化物系介在物を除去するのではなく、曲げ加工性に対して無害化することを検討した。その結果、酸化物系介在物の組成を適正に制御することにより、介在物ならびにその生成原因となる不純物元素を過度に低減することなく、曲げ加工性を向上できることを明らかとした。また、引張強さを780MPa以上とし、曲げ加工性に優れた高強度鋼板とする上での、鋼板の化学成分、金属組織についても適正範囲を明らかとし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.05〜0.18%、Si:0.8〜3.0%、Mn:1.5〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.0015〜0.0050%、O:0.0008〜0.0020%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、表面から100μm以内の鋼板中における粒子長径2μm以上の酸化物系介在物が100mm当たり100個以下であり、該酸化物系介在物の全個数のうち、アルミナ含有率:50質量%以上であり、シリカ含有率:20質量%以下であり、カルシア含有率:40質量%以下である組成を有するものの個数比率が80%以上であり、かつ、金属組織が、体積率で、マルテンサイト相:20〜65%、フェライト相:40〜80%を有し、ベイナイト相:5%未満(0%含む)、オーステナイト相:5%未満(0%含む)であり、マルテンサイト相およびフェライト相以外の金属組織の体積率の合計が10%以下(0%含む)であることを特徴とする引張強さが780MPa以上の曲げ加工性に優れた高強度鋼板;ここで、粒子長径は、鋼板の圧延方向を含む断面で評価する粒子長径である。
[2]さらに、質量%で、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜0.5%、B:0.0001〜0.0030%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記[1]に記載の引張強さが780MPa以上の曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
[3]さらに、質量%で、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の引張強さが780MPa以上の曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
[4]さらに、質量%で、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Sn:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の引張強さが780MPa以上の曲げ加工性に優れた高強度鋼板。
本発明によれば、自動車構造部材、補強部材等の機械構造部材の製造に最適な、引張強さが780MPa以上であり、曲げ加工性に優れた高強度鋼板を低コストで提供でき、産業上極めて有益である。
まず、本発明における成分組成(化学成分)の限定理由について説明する。なお、各元素の含有量の単位は何れも質量%であるが、以下、特に断らない限り、単に%で示す。
C:0.05〜0.18%
Cは焼き入れ組織のマルテンサイトを強化するために重要な元素である。C量が0.05%未満では強度上昇の効果が不十分となる。このため、C量は0.05%以上とする。好ましくは、C量は0.10%以上である。一方、C量が0.18%を超えると強度が高くなりすぎて、曲げ加工性が著しく劣化する。また、スポット溶接における十字引張試験において溶接部破断するため、接合強度が著しく低下する。このため、C量は0.18%以下とする。好ましくは、C量は0.15%以下である。
Si:0.8〜3.0%
Siは、高強度複合組織鋼板の延性を高めるために有効である。Si量が0.8%未満ではその効果が十分でない。また、Si量が0.8%未満では、本発明の特徴である酸化物系介在物の組成制御による曲げ加工性改善効果が認められない。このため、Si量は0.8%以上とする。好ましくは、Si量は1.2%以上である。一方、Si量が3.0%を超えると、熱間圧延工程で鋼板表面にSi酸化物を多量に形成し、表面欠陥を発生させる。このため、Si量は3.0%以下とする。なお、化成処理性の観点からは、Si量は2.3%以下とすることが好ましい。
Mn:1.5〜3.0%
Mnは、連続焼鈍において、急冷開始温度までの冷却の際に、フェライト生成を抑制するために重要な元素である。Mn量が1.5%未満では、このようなフェライト生成を抑制する効果が十分でない。このため、Mn量は1.5%以上とする。一方、Mn量が3.0%を超えると、連続鋳造工程で鋼片(スラブ)が割れる、いわゆるスラブ割れが発生するため、Mn量は3.0%以下とする。なお、連続焼鈍工程における製造安定性を向上するためには、Mn量は、1.8%以上とすることが好ましく、2.5%以下とすることが好ましい。
P:0.02%以下
Pは本発明鋼中では不純物であり、スポット溶接性を劣化させるためにできるだけ製鋼工程で除去することが望ましい。ここで、P量が0.02%を超えるとスポット溶接性の劣化が顕著となる。このため、P量は0.02%以下とする必要がある。好ましくは、P量は0.01%以下である。
S:0.01%以下
Sは本発明鋼中では不純物であり、スポット溶接性、および曲げ加工性を劣化させるためにできるだけ製鋼工程で除去することが望ましい。ここで、S量が0.01%を超えるとスポット溶接性の劣化が顕著となるため、S量は0.01%以下とする必要がある。好ましくは、S量は0.002%以下である。
Sol.Al:0.01〜0.1%
Alは脱酸およびNをAlNとして析出させるために添加される。Sol.Al量が0.01%未満では脱酸・脱窒の効果が十分でない。このため、Sol.Al量は0.01%以上とする。好ましくは、Sol.Al量は0.03%以上である。一方、Sol.Al量が0.1%を超えると、Al添加の効果が飽和し不経済となる。このため、Sol.Al量は0.1%以下とする。好ましくは、Sol.Al量は0.06%以下である。
なお、ここで、Sol.Alは酸可溶性アルミニウムであり、Sol.Al量は鋼中全Al量のうち、酸化物として存在するAlを除いたAl量である。
N:0.0015〜0.0050%
Nは粗鋼中に含有される不純物であり、鋼板の成形性を劣化させるため、N量は0.0050%以下とする必要がある。好ましくは、N量は0.0035%以下である。一方、N量を0.0015%未満にしようとすると、精錬コストが著しく上昇する。また、N量が0.0015%以上であれば、鋼板の成形性に及ぼすNの悪影響は小さく、実質的に無害となる。このため、N量は0.0015%以上とする。好ましくは、N量は0.0025%以上である。
O:0.0008〜0.0020%
Oは精錬時に生成した金属酸化物などが鋼中の介在物として残留するものである。O量が0.0020%を超えると、曲げ加工性が著しく低下する。このため、O量は0.0020%以下とする。好ましくは、O量は0.0015%以下である。一方、O量を0.0008%未満にしようとすると、精錬コストが著しく上昇する。本発明においては、後述するように、酸化物系介在物の組成を適正に制御することで、曲げ加工性を改善することができる。よって、精錬コストの上昇を抑制するため、O量を0.0008%以上とする。
また、本発明の鋼では、上記の化学成分に加えて、目的に応じて、さらに下記の化学成分を含有することができる。
Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜0.5%、B:0.0001〜0.0030%の1種または2種以上
Cr、Mo、Bは、連続焼鈍工程での製造安定化のために有効な元素であり、このような効果を得るため、これらの元素の1種または2種以上を含有させることができる。それぞれ、0.01%以上、0.01%以上、0.0001%以上でこのような効果を得ることができるため、Cr量は0.01%以上、Mo量は0.01%以上、B量は0.0001%以上とする。好ましくは、Cr量は0.1%以上、Mo量は0.05%以上、B量は0.0003%以上である。一方、Cr、Mo、Bは、それぞれ、1.0%、0.5%、0.0030%を超えると延性を劣化させる。このため、Cr量は1.0%以下、Mo量は0.5%以下、B量は0.0030%以下とする。好ましくは、Cr量は0.7%以下、Mo量は0.3%以下、B量は0.0020%以下である。
Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%の1種または2種以上
Ti、Nb、V、Zrは、鋳造、熱延工程で鋼中に炭化物、窒化物を形成し、結晶粒径の粗大化を抑制することで、伸びフランジ性を向上させる効果があり、このような効果を得るため、これらの元素の1種または2種以上を含有させることができる。いずれの添加元素も、その含有量を0.001%以上とすることで、このような効果を得ることができる。このため、Ti量は0.001%以上、Nb量は0.001%以上、V量は0.001%以上、Zr量は0.001%以上とする。一方、それぞれ、その含有量が0.1%を超えると、過度な析出強化によって延性が劣化する。このため、Ti量は0.1%以下、Nb量は0.1%以下、V量は0.1%以下、Zr量は0.1%以下とする。
Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Sn:0.001〜0.01%の1種または2種以上
Cu、Ni、Snは鋼板の耐食性を高める効果があり、このような効果を得るため、これらの元素の1種または2種以上を含有させることができる。それぞれ、0.01%以上、0.01%以上、0.001%以上でこのような効果を得ることができるため、Cu量は0.01%以上、Ni量は0.01%以上、Sn量は0.001%以上とする。一方、Cu、Ni、Snは、それぞれ、0.5%、0.5%、0.01%を超えると鋳造および熱間圧延時の脆化により表面欠陥が発生する。このため、Cu量は0.5%以下、Ni量は0.5%以下、Sn量は0.01%以下とする。
なお、本発明の鋼板において、上記以外の成分はFeおよび不可避的不純物である。
次に、酸化物系介在物に関する限定理由について、説明する。
本発明では、鋼板の表面から100μm以内の鋼板中における粒子長径2μm以上の酸化物系介在物が100mm当たり100個以下であり、該酸化物系介在物の全個数のうち、アルミナ含有率:50質量%以上であり、シリカ含有率:20質量%以下であり、カルシア含有率:40質量%以下である組成を有するものの個数比率が80%以上である。
酸化物系介在物の形態、組成を上記範囲に制御することは本発明の目的とする曲げ加工性向上のための、最も重要な要件である。鋼板表面から100μmより板厚中心側に存在する酸化物系介在物、または粒子長径が2μm未満の酸化物系介在物は曲げ加工性に対して影響が小さいので本発明では特に制御する必要はない。このため、鋼板表面から100μm以内でかつ粒子長径2μm以上の酸化物系介在物について、以下のように限定する。
鋼板表面から100μm以内でかつ粒子長径2μm以上の酸化物系介在物が100mm当たり100個を超えると曲げ加工性が著しく劣化する。このため、当該介在物の個数は100mm当たり100個以下とする。なお、酸化物系介在物は圧延により伸展するので、本発明においては、介在物の大きさは圧延方向を含む断面で評価する。また、粒子長径2μm以上の酸化物系介在物の鋼板表面から深さ方向100μm以内の分布は、通常ほぼ均一であるので、評価位置は鋼板表面から100μm以内の任意断面で行ってよい。ただし、板厚方向に不均一に分布する場合は、最も分布個数が多い深さで評価するものとする。また、評価面積は100mm以上であればよい。
酸化物系介在物中にアルミナは脱酸生成物として不可避的に含まれるが、アルミナ単体では曲げ加工性への影響が小さい。一方、酸化物系介在物中のアルミナ含有率が50質量%未満になると、酸化物が低融点化し、酸化物系介在物が圧延加工時に伸展して、曲げ加工時の割れ起点となり易くなる。このため、酸化物系介在物中のアルミナ含有率は50質量%以上とする。シリカ、カルシアはアルミナと共存することにより、酸化物が低融点化し、酸化物系介在物が圧延加工時に伸展して、曲げ加工時の割れ起点となり易くなるため、鋼板の曲げ加工性を劣化させる。それぞれ質量%で、20%、40%を超えると曲げ加工性の劣化が著しくなるため、シリカ含有率は20質量%以下、カルシア含有率は40質量%以下とする。なお、より好ましい介在物組成としては、溶鋼中の鋼中酸化物の平均組成が、質量%で、アルミナ含有率:60%以上、かつシリカ含有率:10%以下、かつカルシア含有率:20%以下である(溶鋼中の平均組成、中間生成物(例えば、スラブ)の平均組成、高強度鋼板中の平均組成はほぼ一致する。)。この時、上記したように、評価する鋼板の表面から100μm以内の鋼板中における粒子長径2μm以上の酸化物系介在物の全個数のうち、個数比率で80%以上が上記組成の範囲を満たしていれば、良好な曲げ加工性が得られる。このため、上記組成を満たす酸化物系介在物の個数比率を80%以上とする。すなわち、アルミナ含有率:50質量%以上であり、かつシリカ含有率:20質量%以下であり、かつカルシア含有率:40質量%以下である組成を有する酸化物系介在物の個数比率を80%以上とする。すなわち、本発明の技術は、前記したように酸化物系介在物の組成を制御することにより、酸化物系介在物の融点を1600℃以上の高温とすることができる。このような高温の酸化物系介在物は、鋼板の製造工程における、熱間圧延工程で伸展性がないため、上記組成制御により、本発明で特徴とする酸化物系介在物の個数比率を本発明範囲内とすることができ、更には、本発明で意図する曲げ加工性を向上することができる。さらに曲げ加工性を向上させるためには、該個数比率を90%以上とすることが好ましい。酸化物組成の調整は、転炉または二次精錬プロセスのスラグ組成を調整することにより達成される。すなわち、前記のスラグ組成は高塩基度スラグとし、酸化物組成が本発明範囲外の場合には、溶鋼中のCa濃度を低減することにより、本発明の酸化物組成範囲内に近づけられる傾向にある。つまり、酸化物組成が本発明範囲外の場合には上記Ca濃度を低減すれば本発明の酸化物組成範囲内に調整できる傾向にある。また、鋼中酸化物の平均組成は、スラブからサンプルを切り出し、抽出残渣分析法(例えば、蔵保ら:鉄と鋼、Vol.82(1996)、1017)によって定量的に求めることができる。なお、アルミナ含有率の上限は特に限定されないが95%以下が溶製コストの点から好ましく、シリカ含有率の下限は特に限定されないが3%以上が溶製コストの点から好ましく、カルシア含有率の下限は特に限定されないが5%以上が溶製コストの点から好ましい。
次に金属組織の限定理由について説明する。
本発明の鋼板は、実質的にフェライトとマルテンサイトの2相組織であることが必要である。以下、本発明における金属組織の規定について、説明する。
マルテンサイト相の体積率:20〜65%
マルテンサイト相の体積率を20%以上とすることで、引張強さで780MPa以上の強度を安定して確保することが容易となる。より好ましくは、マルテンサイト相の体積率は30%以上である。一方。マルテンサイト相の体積率が65%を超えると、曲げ加工性が著しく低下する場合があり、曲げ加工性を安定して確保するためには、マルテンサイト相の体積率は65%以下とする。好ましくは、マルテンサイト相の体積率は60%以下であり、より好ましくは50%以下である。なお、本発明において、マルテンサイト相とは、焼き戻し処理を行った焼き戻しマルテンサイト相を含むものとする。
フェライト相の体積率:40〜80%
上記したように、本発明の鋼板の金属組織は、実質的にフェライトとマルテンサイトの2相組織とすることが好ましい。すなわち、上記したマルテンサイト相以外の残部は、実質的にフェライト相とすることが好ましい。このため、フェライト相の体積率は40%以上とすることが好ましく、80%以下とすることが好ましい。上記したマルテンサイト相以外の残部を、実質的にフェライト相とすることにより、工業的に組織比率の制御を容易とし、機械的特性を安定化させることができる。
ベイナイト相:5%未満(0%含む)、オーステナイト相:5%未満(0%含む)であり、マルテンサイト相およびフェライト相以外の金属組織の体積率の合計が10%以下(0%含む)
上記したように、本発明は実質的にフェライトとマルテンサイトの2相組織であることが好ましい。これら2相以外の鉄を主構成元素とする相、つまり、ベイナイト相、オーステナイト相は金属組織中に含まれないことが好ましいが、それぞれ体積率で5%未満であれば、実質的に無害であるので、含まれてもよい。特にオーステナイト相は曲げ加工時に硬いマルテンサイトに変態し、曲げ割れの起点となるので、3%以下であることがさらに好ましい。ベイナイト相については、3%以下であることが、より好ましい。また、Feを含有する化合物相、すなわちセメンタイト相などはフェライト相中、マルテンサイト相中およびそれらの界面に含まれてもよい。また、AlN、MnSなど添加元素、不純物元素に起因する化合物相は、本発明の化学成分範囲であれば、実質的に無害であるので、金属組織中に含まれてもよい。
本発明において、上記したように、ベイナイト相の体積率を5%未満、オーステナイト相の体積率を5%未満とした上で、これらベイナイト相およびオーステナイト相を含む、マルテンサイト相およびフェライト相以外の金属組織の体積率の合計が10%以下であれば、その影響は小さい。この場合、金属組織が実質的にフェライトとマルテンサイトの2相組織であるといえる。よって、ベイナイト相:5%未満(0%含む)、オーステナイト相:5%未満(0%含む)とし、マルテンサイト相およびフェライト相以外の金属組織の合計の体積率を10%以下(0%含む)とすることが好ましい。より好ましくは、マルテンサイト相とフェライト相以外の金属組織の合計の体積率は5%以下である。
次に本発明の鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明の鋼板は、上記の成分組成を有し、鋼中酸化物の平均組成を、質量%で、アルミナ含有率:60%以上、シリカ含有率:10%以下、カルシア含有率:20%以下に調整した溶鋼を鋼片とし、該鋼片を熱間圧延し、圧延率:60%以上で冷間圧延して冷延板とし、次いで該冷延板を750〜870℃に加熱し、この温度範囲で10sec以上保持し、次いで550〜750℃の急冷開始温度まで冷却し、該急冷開始温度から平均冷却速度:100℃/sec超として、300℃以下の急冷停止温度まで冷却し、次いで150〜450℃に100〜1000sec保持することにより、製造することが好ましい。以下、好ましい製造条件を説明する。
鋼の成分組成、鋼中酸化物の平均組成を上記したように調整した溶鋼をスラブ等の鋼片とし、該鋼片を熱間圧延に供する。溶鋼は、連続鋳造により、鋼片とすることが好ましい。熱間圧延は、常法に従い行えばよい。なお、通常、一旦温度が下がった鋼片は、熱間圧延前に所定の温度に加熱される。この熱間圧延前の加熱温度は、酸化物系介在物の高温変形による伸展を抑制して、無害化し、曲げ加工性をさらに向上させるため、1190℃以下とすることが好ましい。一方、加熱温度が低くなりすぎると、圧延荷重が上昇して、生産能率が低下するため、熱間圧延前の鋼片の加熱温度は1100℃以上とすることが好ましい。
また、上記のようにして得た鋼片は、常法に従って、熱間圧延後、冷却して巻取り、熱延板とされる。この際、巻取り温度は550℃以下とすることが好ましい。これは、熱間圧延が終了した後の冷却中のMnなどの固溶元素の分配を軽減して、組織の不均一を軽減するためである。一方、巻取り温度が450℃未満になると、通常行われているような、熱間圧延後の冷却において、水冷による温度制御が困難となり、曲げ加工性を含めた材質ばらつきが大きくなる。このため、巻取り温度は450℃以上とすることが好ましい。
次に、圧延率60%以上の冷間圧延を行い、冷延板とする。圧延率を60%以上とする冷間圧延を行うことによって、冷間加工により熱延板中の酸化物系介在物を不連続に分断して、曲げ加工性に対して無害化することができる。本発明の特徴である酸化物系介在物の形態、組成を得るために、冷間圧延の圧延率を60%以上とすることが好ましい。曲げ加工性の観点からは冷間圧延率は高いほどよい。一方、冷間圧延の圧延率が高くなると、生産性が著しく低下するため、該圧延率は80%以下とすることが好ましい。
次に、得られた冷延板は、750〜870℃に加熱し、この温度範囲で10sec以上保持し、次いで550〜750℃の急冷開始温度まで冷却し、該急冷開始温度から平均冷却速度:100℃/sec超として、300℃以下の急冷停止温度まで冷却し、次いで150〜450℃に100〜1000sec保持する熱処理を施す。この熱処理は、連続焼鈍炉によって行う連続焼鈍とすることが好ましい。この熱処理条件について、以下に詳細に説明する。
750〜870℃に加熱し、この温度範囲で10sec以上保持
上記のようにして得た冷延板を、750〜870℃に加熱し、この温度範囲で保持する。すなわち、加熱・保持温度範囲を750〜870℃とする。なお、以下、該保持する温度は均熱温度ともいう。加熱・均熱温度が750℃未満では、十分なオーステナイトが生成せず、780MPa以上の引張強度を得ることが困難である。よって、加熱・均熱温度は750℃以上とする。好ましくは、該加熱・均熱温度は800℃以上である。一方、この加熱・均熱温度が870℃を超えると、鋼組織がオーステナイト単相化し、組織が粗大化するため伸びおよび伸びフランジ性が劣化する。よって、加熱・均熱温度は870℃以下とする。好ましくは、該加熱・均熱温度は840℃以下である。また、この温度範囲での保持時間は10sec以上とする。なお、以下、該保持時間を均熱時間ともいう。該均熱時間が10sec未満ではオーステナイトが十分生成せず、十分な強度を得ることが困難である。好ましくは、該均熱時間は、30sec以上である。なお、生産性を損なわないようにするため、該均熱時間は1200sec以下とすることが好ましい。
550〜750℃の急冷開始温度まで冷却
上記した加熱・均熱後は、急冷開始温度である550〜750℃まで冷却する。この過程では、フェライトを適量生成して、延性を向上させるとともに強度の調整を行う。このため、該急冷開始までの冷却は、徐冷とすることが好ましい。この過程での冷却速度を20℃/sec以下とすることで、製品の材質の安定性がより向上する。このため、該冷却速度は20℃/sec以下とすることが好ましい。また、この冷却の終了温度、すなわち、この冷却に引き続いて行う急冷の開始温度が550℃未満では、フェライト体積率が高くなりすぎて強度が不足しやすい。このため、急冷開始温度は550℃以上とする。好ましくは、急冷開始温度は600℃以上である。一方、急冷開始温度が750℃を超えると、延性が劣化するばかりか、鋼板の平坦性が劣化する可能性がある。このため、急冷開始温度は750℃以下とする。好ましくは、急冷開始温度は720℃以下である。
急冷開始温度から平均冷却速度:100℃/sec超として、300℃以下の急冷停止温度まで冷却
上記した急冷開始温度から急冷停止温度までの冷却速度が、100℃/sec以下では焼き入れが不十分となり、強度が不足しやすい。このため、急冷開始温度から急冷停止温度までの冷却速度は100℃/sec超とする。なお、製品材質安定化のためには、該冷却速度は、500℃/sec以上とすることが好ましい。また、急冷停止温度が300℃を超えるとベイナイト相が生成、またはオーステナイトが残留し、伸びフランジ性を劣化させる。このため、急冷停止温度は300℃以下とする。なお、製品材質を安定化させるためには、該急冷停止温度は100℃以下とすることが好ましい。
150〜450℃に100〜1000sec保持
上記したように急冷停止温度まで急冷し、次いでそのまま、または再加熱後、150〜450℃で100〜1000sec保持する。このように150〜450℃での保持を行うことにより、先の急冷で生成したマルテンサイトが焼き戻しされ、曲げ加工性が向上する。急冷停止後の保持温度が150℃未満ではこのような効果が十分に得られない。よって、急冷停止後の保持温度は150℃以上とする。また、該保持温度が450℃を超えると、強度低下が顕著となり、780MPa以上の引張強さを得ることが困難となる。よって、急冷停止後の保持温度は450℃以下とする。また、このような急冷停止後に行う150〜450℃での保持時間が100sec未満では、上記したような、マルテンサイトが焼き戻され、曲げ加工性が向上するという効果が十分に得られない。よって、150〜450℃での保持時間は100sec以上とする。一方該保持時間が1000secを超えると、強度低下が顕著となり、780MPa以上の引張強さを得ることが困難となる。よって、150〜450℃での保持時間は1000sec以下とする。
なお、さらに調質圧延を施すことが好ましい。調質圧延は、降伏伸びをなくすため、伸張率で0.1〜0.7%の範囲で行うことが好ましい。また、本発明鋼板は鋼板表面に電気めっきや溶融亜鉛めっきを施してもよく、また、固形潤滑材などを塗布してもよい。
表1に示す鋼成分を有する鋼塊を溶解、鋳造した。なお、溶鋼中の鋼中酸化物の平均組成は、質量%で、アルミナ含有率:75〜85%、シリカ含有率:3〜7%、カルシア含有率:10〜20%であった。この鋼塊(鋼片)を1180℃に加熱し、板厚2.6mmまで熱間圧延した。熱間圧延における最終パス出側温度(熱間圧延の終了温度)は約860℃であった。熱間圧延後、20℃/secで冷却後、540℃での巻き取りを模擬し、540℃の炉中で1時間保持後、炉冷し、熱延板とした。次いで、冷間圧延を行い、板厚1.0mm(冷間圧延率:61.5%)とし、さらに連続焼鈍を模擬した熱処理を実施した。この連続焼鈍を模擬した熱処理では、加熱速度:20℃/secで、780〜830℃に加熱し、300sec保持した。次いで、10℃/secで600〜700℃の急冷開始温度まで冷却し、引き続き、水温20℃の噴流水中で、水温まで急冷した。すなわち、急冷停止温度は水温(20℃)とした。このときの冷却速度(平均冷却速度)は2000℃/secであった。次に200〜300℃に再加熱して、200〜300℃で300〜600sec保持する焼き戻し処理を行い、冷却後、0.2%の調質圧延を行った。
以上のようにして得られた冷延鋼板について、以下に示すように酸化物系介在物を調査して評価するとともに、金属組織(組織分率)、引張特性、曲げ加工性、化成処理性について調査し、評価した。
鋼板中の酸化物系介在物の評価
鋼板表面から深さ50μmの板面と平行な面を10mm×10mmの範囲で観察し、粒子長径2μm以上の介在物粒子の個数を調査した。なお、板面と平行な面は、圧延方向を含む断面である。また、粒子長径2μm以上の介在物粒子に対しては、すべてSEM−EDX分析を行い、組成を定量分析し、アルミナ含有率:50質量%以上であるとともに、シリカ含有率:20質量%以下であり、カルシア含有率:40質量%以下である組成を有する介在物粒子数(組成該当個数)を求めた。また、上記観察により得た、粒子長径2μm以上の介在物粒子の全個数に対する組成該当個数の比率((組成該当個数)/(粒子長径2μm以上の介在物粒子の全個数))を求め、組成該当比率とした。
金属組織(組織分率)
圧延方向断面で、板厚の1/2位置の面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより調査した。観察はN=5(観察視野5箇所)で実施し、倍率:2000倍の断面組織写真を用い、画像解析により、任意に設定した50μm×50μm四方の正方形領域内に存在する各相の占有面積を求め、これを平均することにより、各相の体積分率とした。ここで、フェライト相およびパーライト相以外で、比較的平滑な表面を有し粒状、針状および塊状な形状として島状に観察された組織をマルテンサイト相または残留オーステナイト相とみなして判定し、その他残部が観察された場合はこの残部をベイナイト相とした。次に、残留オーステナイト相の量を、MoのKα線を用いてX線回折法により求めた。すなわち、鋼板の板厚1/4付近の面を測定面とする試験片を使用し、オーステナイト相の(211)面および(220)面とフェライト相の(200)面および(220)面のピーク強度から残留オーステナイト相の体積率を算出し、体積分率の値とした。次いで、前記したマルテンサイト相または残留オーステナイト相とみなした組織の体積分率から残留オーステナイト相の体積分率の差分をマルテンサイトの体積分率と判断した。
引張特性
JIS5号試験片(JISZ2201)を圧延方向と直角方向を長手として採取し、JISZ2241に準拠して引張試験を行い、降伏強度(YS)、引張強さ(TS)、全伸び(El)を求めた。
曲げ加工性
コイル幅方向を長手とするJIS3号試験片を用い、JISZ2248に準拠した曲げ試験Vブロック法(押金具の先端角:90°、先端半径R:0.5mmから0.5mmピッチで変更)により限界曲げ半径(R)を求め、板厚(t)で除した値であるR/tを指標とした。
化成処理性
日本パーカライジング社製の化成処理液(パルボンドL3080(登録商標))を用い、下記方法で化成処理を施した。日本パーカライジング社製の脱脂液ファインクリーナ(登録商標)で脱脂したのち、水洗し、次に日本パーカライジング社製の表面調整液プレパレンZ(登録商標)で30秒表面調整を行い、43℃の化成処理液(パルボンドL3080)に120秒浸漬した後、水洗し、温風で乾燥した。このようにして得た化成皮膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で、倍率500倍で無作為に5視野を観察し、化成皮膜のスケ面積率を画像処理により測定した。スケ面積率5%以下を合格(○)とし、化成処理性が良好であるとした。また、スケ面積率5%超を不合格(×)とした。
表2に評価結果を示す。本結果より明らかなように、本発明例のものは引張強さTS≧780MPa、TS×El≧15000MPa・%、限界曲げ半径R/t≦1.5であり、機械的特性、曲げ加工性に優れる。また、化成処理性も良好であった。一方、比較例のものはいずれかの特性が劣る。例えば、鋼板記号1CはC量が低すぎ、780MPa以上の引張強さが得られていない。鋼板記号1DはC量が高すぎるため、TS×Elおよび限界曲げ半径に劣る。鋼板記号1Eは酸化物系介在物の組成が本発明の範囲を外れる比率が高いため、曲げ加工性が劣化した。鋼板記号1FはO量が高すぎるため、酸化物系介在物個数が本発明範囲に対して多く、曲げ加工性が劣化した。鋼板記号1HはSi量が低すぎるため、TS×Elが低下し、それに伴い曲げ加工性も劣化した。鋼板記号1IはSi量が多すぎるため、曲げ性が劣化するとともに、化成処理性が劣化した。鋼板記号1K、1N、1O、1Sは酸化物系介在物の組成が本発明範囲に該当する比率が低いため、いずれも曲げ加工性が劣化した。鋼板記号1LはMn量が低すぎるため、780MPa以上の引張強さが得られていない。鋼板記号1MはMn量が高すぎるため、TS×Elが低下し、それに伴い曲げ加工性も劣化した。
Figure 0006048623
Figure 0006048623
表1に化学成分を示す鋼のスラブ(鋼片)を用いて、鋼板の製造を行った。スラブ中の酸化物の平均組成は、抽出残渣分析法(蔵保ら:鉄と鋼,Vol.82(1996)、1017)により求めた。ここでAlNは1200℃で溶体化処理を行った。酸化物系介在物(スラブ中の鋼中酸化物)の抽出は臭素−メタノール法で行い、Al、Si、Caおよび複合系酸化物を得て、各酸化物の組成比を算出した。
表3に、実施例2で用いた鋼の鋼番号、スラブ中の酸化物の平均組成を示す。これら表3に示すスラブを、同表に示す条件で熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍を行い、さらに0.1〜0.5%の調質圧延を行い、板厚1.0mmの冷延鋼板を得た。なお、均熱時間は120〜480secとした。このように製造した冷延鋼板を、実施例1と同様の方法で酸化物系介在物を調査して評価するとともに、金属組織(組織分率)、引張特性、曲げ加工性、化成処理性についても実施例1と同様に調査し、評価した。結果を表4に示す。
表4に示した結果より明らかなように、本発明例の鋼板は、引張強さTS≧780MPa、TS×El≧15000MPa・%、限界曲げ半径:R/t≦1.5であり、引張特性、曲げ加工性に優れる。また、化成処理性も合格であり、化成処理性にも優れる。
一方、比較例の鋼板はいずれかの特性が劣る。例えば、鋼板記号2A、2C、2Fは、マルテンサイト相の体積率が低く、本発明で規定する金属組織を満足せず、780MPa以上の引張強さが得られていない。鋼板記号2Dはマルテンサイトの体積率が高く、本発明で規定する金属組織を満足せず、TS×Elが低下し、それに伴い曲げ加工性も劣化した。鋼板記号2Jは酸化物系介在物の組成該当比率が本発明の範囲外となっており、製品における酸化物系介在物の組成が本発明範囲に該当する比率が低いため、曲げ加工性が劣化した。
Figure 0006048623
Figure 0006048623

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.18%、Si:0.8〜3.0%、Mn:1.5〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.0015〜0.0050%、O:0.0008〜0.0020%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、表面から100μm以内の鋼板中における粒子長径2μm以上の酸化物系介在物が100mm当たり100個以下であり、該酸化物系介在物の全個数のうち、アルミナ含有率:50質量%以上であり、シリカ含有率:20質量%以下であり、カルシア含有率:40質量%以下である組成を有するものの個数比率が80%以上であり、かつ、金属組織が、体積率で、マルテンサイト相:20〜65%、フェライト相:35〜80%を有し、ベイナイト相:5%未満(0%含む)、オーステナイト相:5%未満(0%含む)であり、マルテンサイト相およびフェライト相以外の金属組織の体積率の合計が10%以下(0%含む)であり、引張強さが780MPa以上である高強度鋼板;ここで、粒子長径は、鋼板の圧延方向を含む断面で評価する粒子長径である。
  2. さらに、質量%で、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜0.5%、B:0.0001〜0.0030%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. さらに、質量%で、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼板。
  4. さらに、質量%で、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Sn:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
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