JP2013139591A - 加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】引張強さ:590MPa以上という高強度を維持したまま、伸びが向上した熱延鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C :0.03〜0.15%、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%及びN :0.007%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物の組成からなり、鋼板における表層部と板厚中央部とのビッカース硬さの差が50以下であり、引張強さが590MPa以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、C :0.03〜0.15%、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%及びN :0.007%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物の組成からなり、鋼板における表層部と板厚中央部とのビッカース硬さの差が50以下であり、引張強さが590MPa以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、自動車の足回り部品や、構造部品、トラックのフレーム等に好適な、高強度熱延鋼板に関し、特に板厚方向の材質均一性の向上を図ったものである。
近年、地球環境保全の観点から、自動車の燃費向上が重要な課題となっている。このため、使用する材料を高強度化し、部材の薄肉化を図り、車体自体を軽量化しようとする動きが活発化している。
これまで、自動車部品用に用いられる材料としては、引張強さ440MPa級、540MPa級の各種熱延鋼板が使用されていたが、最近では、590MPa級以上の高強度熱延鋼板の要望が高くなっている。
ここで、高強度熱延鋼板の材質強化方法については、1)フェライト組織中にマルテンサイト、パーライト、ベイナイトなどを析出させた変態組織強化方法や、2)Ti、Nb、Vの炭窒化物による析出強化方法などが活用され、伸び等の鋼板に要求される特性に応じて種々の検討がなされている。
これまで、自動車部品用に用いられる材料としては、引張強さ440MPa級、540MPa級の各種熱延鋼板が使用されていたが、最近では、590MPa級以上の高強度熱延鋼板の要望が高くなっている。
ここで、高強度熱延鋼板の材質強化方法については、1)フェライト組織中にマルテンサイト、パーライト、ベイナイトなどを析出させた変態組織強化方法や、2)Ti、Nb、Vの炭窒化物による析出強化方法などが活用され、伸び等の鋼板に要求される特性に応じて種々の検討がなされている。
例えば特許文献1には、C:0.010〜0.10%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.50〜2.00%、P:0.01〜0.15%、S:0.005%以下、N:0.001〜0.005%を含みかつTi:0.005〜0.03%,V:0.005〜0.03%及びNb:0.01〜0.06%のうち1種又は2種以上を含む鋼素材を、900〜1300℃の温度域で3600s以下の時間保定した後、仕上げ圧延終了温度を780〜980℃とする連続熱間圧延を行い、圧延終了後1sec以内に、50〜200℃/sの冷却速度で冷却し、引き続き300〜650℃の温度範囲でコイルに巻き取り、体積率80〜97%かつ平均粒径10μm以下のフェライト相と、残部がベイナイト相を主体とする低温変態相からなる、加工性に優れる熱延鋼板及びその製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、C:0.04〜0.08%、Si:0.10〜0.50%、Mn:1.00〜1.80%、S:0.0002〜0.0010%、Al:0.005〜0.050%及びN:0.0010〜0.0030からなる鋼に対し、Ar3〜Ar3+40℃を仕上温度とし、かつ仕上温度〜(仕上温度+50℃)の間で、70〜90%の圧下率により熱間圧延を行い、続いて直ちに120〜200℃/sの冷却速度で620〜680℃の温度域に冷却すると共にその後3〜7秒保持し又は空冷し、次いで50〜150℃/sの冷却速度で400〜450℃の温度に冷却して巻取り,更に伸長率1.5〜3.0%の範囲でスキンパスを行うことを特徴とする極めて微細なフェライト相とベイナイト相の複合組織から成る伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法が記載されている.
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、仕上圧延終了後50〜200℃/sという急速冷却を行い、巻取るため、鋼板の表層部が過冷却されて過度な硬質化を招き、加工性が低下する場合があった。
また、特許文献2に記載された技術では、巻取り前の冷却速度が50〜150℃/sという急速冷却のため、鋼板の表層部が過冷却され硬質化し過ぎるため、加工性が低下する場合があった。
また、特許文献2に記載された技術では、巻取り前の冷却速度が50〜150℃/sという急速冷却のため、鋼板の表層部が過冷却され硬質化し過ぎるため、加工性が低下する場合があった。
本発明は、上記した従来技術が抱える問題を解決するもので、引張強さが590MPa以上と高強度であり、さらに板厚方向の材質均一性と加工性を兼備する高強度熱延鋼板を、その有利な製造方法とともに提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、引張強さ:590MPa以上という高強度を維持した状態で、板厚方向の材質変動に及ぼす各種要因について鋭意研究した。
本発明で対象とする590MPa級鋼はフェライト組織中にベイナイト、マルテンサイトなどを析出させた変態組織強化鋼、又は、Ti、Nb若しくはV等の炭窒化物の析出強化により強化されたフェライトとパーライトからなるフェライトパーライト鋼である。そのため強度は、硬質な第二相であるベイナイトやマルテンサイトの量、あるいはTiCなどの炭化物の析出物の量に大きく影響される。硬質第二相や炭化物の析出は、フェライト変態が起こるAr3点よりも低温で発生する。
そこで、熱間圧延後の冷却過程において、Ar3点までの平均冷却速度を30℃/s以上で急冷し、オーステナイトからフェライトに変態を開始するAr3変態点以下で、20℃/s未満の冷却速度で冷却後、巻き取ることで、硬質第二相や炭化物の析出が板厚方向で均一となり、板厚方向の材質変動が極めて小さくなり、鋼板表層部と板厚中央部のビッカース硬さの格差が50以下となることを見出した。さらに、このように表面の硬化を防止することで、引張強さ:590MPa以上という高強度を維持したまま、伸びが顕著に向上することを新規に見出した。
本発明で対象とする590MPa級鋼はフェライト組織中にベイナイト、マルテンサイトなどを析出させた変態組織強化鋼、又は、Ti、Nb若しくはV等の炭窒化物の析出強化により強化されたフェライトとパーライトからなるフェライトパーライト鋼である。そのため強度は、硬質な第二相であるベイナイトやマルテンサイトの量、あるいはTiCなどの炭化物の析出物の量に大きく影響される。硬質第二相や炭化物の析出は、フェライト変態が起こるAr3点よりも低温で発生する。
そこで、熱間圧延後の冷却過程において、Ar3点までの平均冷却速度を30℃/s以上で急冷し、オーステナイトからフェライトに変態を開始するAr3変態点以下で、20℃/s未満の冷却速度で冷却後、巻き取ることで、硬質第二相や炭化物の析出が板厚方向で均一となり、板厚方向の材質変動が極めて小さくなり、鋼板表層部と板厚中央部のビッカース硬さの格差が50以下となることを見出した。さらに、このように表面の硬化を防止することで、引張強さ:590MPa以上という高強度を維持したまま、伸びが顕著に向上することを新規に見出した。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたもので、その要旨構成は次のとおりである。
(1)質量%で、C :0.03〜0.15%、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%及びN :0.007%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物の組成からなり、
鋼板における表層部と板厚中央部とのビッカース硬さの差が50以下であり、引張強さが590MPa以上であることを特徴とする加工性に優れた高強度熱延鋼板。
(1)質量%で、C :0.03〜0.15%、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%及びN :0.007%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物の組成からなり、
鋼板における表層部と板厚中央部とのビッカース硬さの差が50以下であり、引張強さが590MPa以上であることを特徴とする加工性に優れた高強度熱延鋼板。
(2)さらに質量%で、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.005〜0.200%及びV:0.005〜0.100%のうちから選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
(3)さらに質量%で、Cu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%及びB:0.0005〜0.0050%のうちから選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
(4)さらに質量%で、Sb:0.001〜0.020%を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
(5)さらに質量%で、Ca:0.0001〜0.0050%及びREM:0.0005〜0.0100%のうちから選択される一種又は二種を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
(6)質量%で、C :0.03〜0.15%、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.04%以下、S:0.0005%以下、Al:0.005〜0.10%及びN :0.007%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物の組成からなる鋼素材に対し、加熱して熱間圧延を施した後、冷却してコイルに巻き取って熱延鋼板を製造するに当たり、
前記鋼素材の加熱温度を1150〜1350℃、前記熱間圧延の仕上げ温度を850〜950℃とし、前記熱間圧延後のAr3点までの平均冷却速度を30℃/s以上、Ar3点から巻取り温度までの平均冷却速度を20℃/s未満、冷却後の巻取り温度を300〜650℃とすることを特徴とする上記(1)に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
前記鋼素材の加熱温度を1150〜1350℃、前記熱間圧延の仕上げ温度を850〜950℃とし、前記熱間圧延後のAr3点までの平均冷却速度を30℃/s以上、Ar3点から巻取り温度までの平均冷却速度を20℃/s未満、冷却後の巻取り温度を300〜650℃とすることを特徴とする上記(1)に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
(7)前記鋼素材は、さらに質量%で、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.005〜0.200%及びV:0.005〜0.100%のうちから選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする上記(6)に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
(8)前記鋼素材は、さらに質量%で、Cu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%及びB:0.0005〜0.0050%のうちから選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
(9)前記鋼素材は、さらに質量%で、Sb:0.001〜0.020%を含有することを特徴とする上記(6)〜(8)のいずれかに記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
(10)前記鋼素材は、さらに質量%で、Ca:0.0001〜0.0050%及びREM:0.0005〜0.0100%のうちから選択される一種又は二種を含有することを特徴とする上記(6)〜(9)のいずれかに記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、引張強さ:590MPa以上という高強度を維持したまま、伸びが向上した熱延鋼板を、容易に製造できる。また、本発明になる高強度熱延鋼板を自動車の構造部品や、トラックのフレーム等に適用することで、安全性を確保しつつ車体重量を軽減でき、環境負荷を低減することが可能となるという効果も奏する。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、熱延鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
まず、本発明において、熱延鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.03〜0.15%
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、また、Tiと結合してTi炭化物として析出強化にも寄与する。このような効果を得るためには、C を0.03%以上含有する必要がある。一方、0.15%を超えて含有すると、溶接性が低下する。このため、Cの含有量は0.03〜0.15%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.07〜0.12%の範囲である。
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、また、Tiと結合してTi炭化物として析出強化にも寄与する。このような効果を得るためには、C を0.03%以上含有する必要がある。一方、0.15%を超えて含有すると、溶接性が低下する。このため、Cの含有量は0.03〜0.15%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.07〜0.12%の範囲である。
Si:1.5%以下
Siは、固溶して鋼の強度の増加に寄与する元素であり、1.5%を超える含有は、鋼板の表面性状を著しく低下させ、化成処理性や耐食性の低下に繋がる。このため、Siの含有量は1.5%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは1.2%以下である。
Siは、固溶して鋼の強度の増加に寄与する元素であり、1.5%を超える含有は、鋼板の表面性状を著しく低下させ、化成処理性や耐食性の低下に繋がる。このため、Siの含有量は1.5%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは1.2%以下である。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、固溶して鋼の強度を増加させる元素である。このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、中心偏析を助長し、鋼板の成形性を低下させる。このため、Mnの含有量は0.5〜2.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.0〜1.8%である。
Mnは、固溶して鋼の強度を増加させる元素である。このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、中心偏析を助長し、鋼板の成形性を低下させる。このため、Mnの含有量は0.5〜2.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.0〜1.8%である。
P:0.04%以下
Pは、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有するが、粒界、とくに旧オーステナイト粒界に偏析し、低温靭性や加工性の低下を招く。このため、本発明ではPは極力低減することが望ましく、含有量の上限を0.04%とする。なお、好ましくは0.03%以下である。
Pは、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有するが、粒界、とくに旧オーステナイト粒界に偏析し、低温靭性や加工性の低下を招く。このため、本発明ではPは極力低減することが望ましく、含有量の上限を0.04%とする。なお、好ましくは0.03%以下である。
S:0.005%以下
Sは、熱間での延性を著しく低下させることで、熱間割れを誘発し、表面性状を著しく劣化させる。さらに、Sは、強度にほとんど寄与しないが、不純物元素として粗大なMnSを形成することにより、鋼の延性を低下させる。これらの問題はS量が0.005%を超えると顕著となり、極力低減することが望ましい。したがって、S量は0.005%以下とする必要があり、好ましくは0.002%以下、より好ましくは0.001%以下とする。
Sは、熱間での延性を著しく低下させることで、熱間割れを誘発し、表面性状を著しく劣化させる。さらに、Sは、強度にほとんど寄与しないが、不純物元素として粗大なMnSを形成することにより、鋼の延性を低下させる。これらの問題はS量が0.005%を超えると顕著となり、極力低減することが望ましい。したがって、S量は0.005%以下とする必要があり、好ましくは0.002%以下、より好ましくは0.001%以下とする。
Al:0.005〜0.10%
Alは、脱酸剤として作用し、鋼の清浄度を向上させるのに、有効な元素である。このような効果を得るためには、Alを0.005%以上含有する必要がある。一方、0.10%を超える多量の含有は、酸化物系介在物の著しい増加を招き、鋼板の疵発生の原因となる。このため、Alの含有量は0.005〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.07%の範囲である。
Alは、脱酸剤として作用し、鋼の清浄度を向上させるのに、有効な元素である。このような効果を得るためには、Alを0.005%以上含有する必要がある。一方、0.10%を超える多量の含有は、酸化物系介在物の著しい増加を招き、鋼板の疵発生の原因となる。このため、Alの含有量は0.005〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.07%の範囲である。
N:0.007%以下
Nは、Ti等の窒化物形成元素と結合し、窒化物として析出するが、とくにTiとは高温で結合し、粗大な窒化物となりやすく、クラックの起点となりやすく、本発明ではできるだけ低減することが望ましい。このため、本発明におけるNの含有量は0.007%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.003%以下である。
Nは、Ti等の窒化物形成元素と結合し、窒化物として析出するが、とくにTiとは高温で結合し、粗大な窒化物となりやすく、クラックの起点となりやすく、本発明ではできるだけ低減することが望ましい。このため、本発明におけるNの含有量は0.007%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.003%以下である。
上記した成分が基本の成分であるが、これら基本の成分に加えて、鋼板の高強度化を目的として、Nb:0.005〜0.100%,Ti:0.005〜0.200%,V:0.005〜0.100%のうちから選択される一種又は二種以上;Cu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%、B:0.0005〜0.0050%のうちから選択される一種又は二種以上;Sb:0.001〜0.020%;及び/又は、Ca:0.0001〜0.0050%及びREM:0.0005〜0.0100%のうち選択される一種又は二種を、さらに含有することもできる。
Nb:0.005〜0.100%
Nbは、炭化物や窒化物の形成を介して、鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましいが、0.100%を超える含有は、伸びを低下させる。このため、Nbを含有する場合には、0.005〜0.100%の範囲に限定することが好ましい。
Nbは、炭化物や窒化物の形成を介して、鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましいが、0.100%を超える含有は、伸びを低下させる。このため、Nbを含有する場合には、0.005〜0.100%の範囲に限定することが好ましい。
Ti:0.005〜0.200%
Tiは、炭化物や窒化物の形成を介して、鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましいが、0.200%を超える含有は、伸びを低下させる。このため、Tiを含有する場合には、0.005〜0.200%の範囲に限定することが好ましい。
Tiは、炭化物や窒化物の形成を介して、鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましいが、0.200%を超える含有は、伸びを低下させる。このため、Tiを含有する場合には、0.005〜0.200%の範囲に限定することが好ましい。
V:0.005〜0.100%
Vは、炭化物や窒化物の形成を介して、鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましいが、0.100%を超える含有は、伸びを低下させる。このため、Vを含有する場合には、Vは0.005〜0.100%の範囲に限定することが好ましい。
Vは、炭化物や窒化物の形成を介して、鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが好ましいが、0.100%を超える含有は、伸びを低下させる。このため、Vを含有する場合には、Vは0.005〜0.100%の範囲に限定することが好ましい。
Cu:0.05〜0.20%
Cuは、固溶して鋼の強度を増加させる。このような効果を得るために、0.05%以上含有することが好ましいが、0.20%を超える含有は、表面性状の低下を招く。このため、含有する場合には、Cuの含有量は0.05〜0.20%の範囲に限定することが好ましい。
Cuは、固溶して鋼の強度を増加させる。このような効果を得るために、0.05%以上含有することが好ましいが、0.20%を超える含有は、表面性状の低下を招く。このため、含有する場合には、Cuの含有量は0.05〜0.20%の範囲に限定することが好ましい。
Ni:0.05〜0.50%
Niは、固溶して鋼の強度を増加させる。このような効果を得るために、0.05%以上含有することが好ましいが、0.50%を超える含有は、マルテンサイト相が生成しやすくなり、加工性が低下する。このため、Niを含有する場合は0.05〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。
Niは、固溶して鋼の強度を増加させる。このような効果を得るために、0.05%以上含有することが好ましいが、0.50%を超える含有は、マルテンサイト相が生成しやすくなり、加工性が低下する。このため、Niを含有する場合は0.05〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。
Mo:0.05〜0.50%
Moは、炭化物の形成による析出強化や、焼入れ性向上を介して鋼の強度を増加させ、伸びフランジ性や、耐疲労特性を向上させる。このような効果を得るために、0.05%以上含有することが好ましいが、0.50%を超えて含有すると、マルテンサイト相が生成しやすくなり、加工性が低下する。このため、Moを含有する場合には0.05〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。
Moは、炭化物の形成による析出強化や、焼入れ性向上を介して鋼の強度を増加させ、伸びフランジ性や、耐疲労特性を向上させる。このような効果を得るために、0.05%以上含有することが好ましいが、0.50%を超えて含有すると、マルテンサイト相が生成しやすくなり、加工性が低下する。このため、Moを含有する場合には0.05〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。
Cr:0.05〜0.50%
Crは、焼入れ性向上を介して鋼の強度を増加させ、伸びフランジ性や、耐疲労特性を向上させる。このような効果を得るために、0.05%以上含有することが好ましいが、0.50%を超えて含有すると、マルテンサイト相が生成しやすくなり、加工性が低下する。このため、Crを含有する場合には0.05〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。
Crは、焼入れ性向上を介して鋼の強度を増加させ、伸びフランジ性や、耐疲労特性を向上させる。このような効果を得るために、0.05%以上含有することが好ましいが、0.50%を超えて含有すると、マルテンサイト相が生成しやすくなり、加工性が低下する。このため、Crを含有する場合には0.05〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。
B:0.0005〜0.0050%
Bは、オーステナイト(γ)粒界に偏析し、粒界からのフェライト生成や成長を抑制し
、焼入れ性向上を介して鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0005%以上含有することが好ましいが、0.0050%を超える含有は、加工性が低下する。このため、Bを含有する場合には0.0005〜0.0050%の範囲に限定することが好ましい。
Bは、オーステナイト(γ)粒界に偏析し、粒界からのフェライト生成や成長を抑制し
、焼入れ性向上を介して鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0005%以上含有することが好ましいが、0.0050%を超える含有は、加工性が低下する。このため、Bを含有する場合には0.0005〜0.0050%の範囲に限定することが好ましい。
Sb:0.001〜0.020%
Sbは、熱間圧延のための加熱時に、表層に濃化する傾向を有する元素であり、表面近傍におけるSi、Mn等の酸化物の生成を抑制し、鋼板の表面性状を改善し、表面からの疲労クラックの生成を抑制し、耐疲労特性の向上に寄与する。このような効果を得るためには0.001%以上含有する必要があるが、0.020%を超えて含有しても、効果が飽和し、経済的に不利となる。このため、Sbを含有する場合には0.001〜0.020%の範囲に限定することが好ましい、なお、より好ましくは0.003〜0.010%である。
Sbは、熱間圧延のための加熱時に、表層に濃化する傾向を有する元素であり、表面近傍におけるSi、Mn等の酸化物の生成を抑制し、鋼板の表面性状を改善し、表面からの疲労クラックの生成を抑制し、耐疲労特性の向上に寄与する。このような効果を得るためには0.001%以上含有する必要があるが、0.020%を超えて含有しても、効果が飽和し、経済的に不利となる。このため、Sbを含有する場合には0.001〜0.020%の範囲に限定することが好ましい、なお、より好ましくは0.003〜0.010%である。
Ca:0.0001〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0100%
Ca、REMはいずれも、硫化物の形態を球状に制御し、伸びフランジ性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0001%以上、REM:0.0005%以上、それぞれ含有することが好ましいが、Ca:0.0050%、REM:0.0100%を超える多量の含有は、介在物等の増加を招き、表面欠陥、内部欠陥の多発を生じ易くする。このため、これらの元素を含有する場合には、Ca:0.0001〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0100%の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。
Ca、REMはいずれも、硫化物の形態を球状に制御し、伸びフランジ性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0001%以上、REM:0.0005%以上、それぞれ含有することが好ましいが、Ca:0.0050%、REM:0.0100%を超える多量の含有は、介在物等の増加を招き、表面欠陥、内部欠陥の多発を生じ易くする。このため、これらの元素を含有する場合には、Ca:0.0001〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0100%の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。
なお、不純物として、Sn、Mg、Co、As、Pb、Zn、O等を合計で0.5%以下含んでいても、特性には問題ない。
なお、本発明の残部は、Fe及び不可避不純物である。これは、本発明の作用・効果を損なわない限り、不可避的不純物をはじめ、他の微量元素を含有するものが本発明の範囲に含まれることを意味する。
表層部と板厚中央部とのビッカース硬さの差:50以下
本発明の高強度熱延鋼板は、その表層部と板厚中央部とのビッカース硬さの差が50以下ことを特徴とする。鋼板の強度を高く(引張強さ:590MPa以上)維持しつつ、所望の伸びを確保するためである。ビッカース硬さの格差が50を超える場合、硬質部分の塑性変形能が小さくなるため、伸びが著しく低下する。このため、表層部と板厚中央部のビッカース硬さの格差は50以下、好ましくは30以下とする。
本発明の高強度熱延鋼板は、その表層部と板厚中央部とのビッカース硬さの差が50以下ことを特徴とする。鋼板の強度を高く(引張強さ:590MPa以上)維持しつつ、所望の伸びを確保するためである。ビッカース硬さの格差が50を超える場合、硬質部分の塑性変形能が小さくなるため、伸びが著しく低下する。このため、表層部と板厚中央部のビッカース硬さの格差は50以下、好ましくは30以下とする。
ここで、前記鋼板の表層部とは、鋼板の表面から厚み方向に0.2mmまでの部分のことをいう。また、前記鋼板の板厚中央部とは、板厚1/4から板厚3/4までの範囲をいう。
前記ビッカース硬さとは、材料の硬さを表す尺度の一つであり、押込み硬さの一種である。具体的には、対面角α=136°の正四角錐ダイヤモンドで作られたピラミッド形をしている圧子を材料表面に押し込み、荷重を除いたあとに残ったへこみの対角線の長さd(mm)から表面積S(mm2)を算出する。試験荷重F(N)を算出した表面積S(mm2)で割った値がビッカース硬さ(HV)であり、以下の式で求められる。
引張強さ:590MPa以上
本発明の高強度熱延鋼板は、その引張強さが590MPa以上であることを特徴とする。高強度であるため、部材の薄肉化可能となり、自動車等に用いられた場合、車体の軽量化寄与できるためである。
本発明の高強度熱延鋼板は、その引張強さが590MPa以上であることを特徴とする。高強度であるため、部材の薄肉化可能となり、自動車等に用いられた場合、車体の軽量化寄与できるためである。
また、本発明の鋼板は、表面にめっき皮膜を有するものとしてもよい。鋼板表面にめっき皮膜を形成することにより、熱延鋼板の耐食性が向上する。なお、めっき皮膜としては、例えば溶融亜鉛めっき皮膜や合金化溶融亜鉛めっき皮膜の他、電気亜鉛めっき、例えばZn−Ni電気合金めっき等が挙げられる。
次に、本発明の熱延鋼板の製造方法について説明する。
本発明では、上述した組成からなる鋼素材に対し、加熱して熱間圧延を施した後、冷却してコイルに巻き取って熱延鋼板を製造する。
そして、前記鋼素材の加熱温度を1150〜1350℃、前記熱間圧延の仕上げ温度を850〜950℃とし、前記熱間圧延後のAr3点までの平均冷却速度を30℃/s以上、Ar3点から巻取り温度までの平均冷却速度を20℃/s未満、冷却後の巻取り温度を300〜650℃とすることを特徴とする。
本発明では、上述した組成からなる鋼素材に対し、加熱して熱間圧延を施した後、冷却してコイルに巻き取って熱延鋼板を製造する。
そして、前記鋼素材の加熱温度を1150〜1350℃、前記熱間圧延の仕上げ温度を850〜950℃とし、前記熱間圧延後のAr3点までの平均冷却速度を30℃/s以上、Ar3点から巻取り温度までの平均冷却速度を20℃/s未満、冷却後の巻取り温度を300〜650℃とすることを特徴とする。
前記鋼素材の製造は、とくに限定する必要はなく、上記組成を有する溶鋼を転炉や電気炉等で溶製し、好ましくは真空脱ガス炉にて二次精錬を行って、連続鋳造法等の鋳造方法で、スラブ等の鋼素材とする、常用の方法がいずれも適用可能である。
鋼素材の加熱温度:1150〜1350℃
熱間圧延のための前記鋼素材の加熱温度は、1150〜1350℃とする。鋼素材(スラブ)中では、Tiなどの炭化物、窒化物形成元素は、ほとんどが粗大な炭化物、窒化物として存在している。固溶Tiや、微細な析出物として、熱延鋼板の高強度化等に利用するため、これら粗大な炭化物、窒化物を一旦固溶させておくことが必要がある。そのため、本発明では、鋼素材をまず1150℃以上に加熱する。一方、加熱温度を高温すぎる(1350℃を超える)と、スケール発生量が多くなり、スケール噛み込み等によって表面品質が低下する。このため、前記鋼素材の加熱温度は1150〜1350℃の範囲に限定した。
熱間圧延のための前記鋼素材の加熱温度は、1150〜1350℃とする。鋼素材(スラブ)中では、Tiなどの炭化物、窒化物形成元素は、ほとんどが粗大な炭化物、窒化物として存在している。固溶Tiや、微細な析出物として、熱延鋼板の高強度化等に利用するため、これら粗大な炭化物、窒化物を一旦固溶させておくことが必要がある。そのため、本発明では、鋼素材をまず1150℃以上に加熱する。一方、加熱温度を高温すぎる(1350℃を超える)と、スケール発生量が多くなり、スケール噛み込み等によって表面品質が低下する。このため、前記鋼素材の加熱温度は1150〜1350℃の範囲に限定した。
熱間圧延の仕上げ温度:850〜950℃
熱間圧延は、850〜950℃の仕上温度として熱間圧延を終了する圧延とする。仕上温度が850℃未満では、フェライト+オーステナイトの二相域圧延となり、加工組織が残存することになるため、伸びが低下する。一方、仕上温度が950℃を超えて高くなると、オーステナイト粒が成長し、冷却後得られる熱延板の組織が粗大化する。このようなことから、仕上温度は850〜950℃の範囲に限定した。
熱間圧延は、850〜950℃の仕上温度として熱間圧延を終了する圧延とする。仕上温度が850℃未満では、フェライト+オーステナイトの二相域圧延となり、加工組織が残存することになるため、伸びが低下する。一方、仕上温度が950℃を超えて高くなると、オーステナイト粒が成長し、冷却後得られる熱延板の組織が粗大化する。このようなことから、仕上温度は850〜950℃の範囲に限定した。
熱間圧延後のAr3点までの平均冷却速度を30℃/s以上
熱間圧延終了からAr3点までの冷却は、引張強さが590MPa以上の熱延鋼板を得るために非常に重要となる。Ar3点までの平均冷却速度が30℃/s未満では、その後の冷却時にフェライトの生成が著しく進行し、引張強さが590MPa未満となる。このため、熱間圧延終了後Ar3点までを、平均冷却速度30℃/s以上で冷却することに限定した。一方、Ar3点までの平均冷却速度が55℃/s以上となると、鋼板表層のみが過冷却されやすくなるため,表層部が硬質化して加工性が低下しやすくなる。このため、この温度領域の平均冷却速度は、55℃/s未満とすることが好ましい。
熱間圧延終了からAr3点までの冷却は、引張強さが590MPa以上の熱延鋼板を得るために非常に重要となる。Ar3点までの平均冷却速度が30℃/s未満では、その後の冷却時にフェライトの生成が著しく進行し、引張強さが590MPa未満となる。このため、熱間圧延終了後Ar3点までを、平均冷却速度30℃/s以上で冷却することに限定した。一方、Ar3点までの平均冷却速度が55℃/s以上となると、鋼板表層のみが過冷却されやすくなるため,表層部が硬質化して加工性が低下しやすくなる。このため、この温度領域の平均冷却速度は、55℃/s未満とすることが好ましい。
Ar3点から巻取り温度までの平均冷却速度を20℃/s未満
本発明による製造方法では、Ar3点から巻取り温度までの冷却を出来るだけ緩く行う。これにより、板厚方向の温度を均一化し、第二相または炭化物の析出形態も均一化する。上記の平均冷却速度で冷却すれば、表層部と板厚中央部のビッカース硬さの格差が50以下となり、伸びが向上する。一方、平均冷却速度が20℃/sを超えると、表層部と板厚中央部のビッカース硬さの格差が50を超える。このため、前記平均冷却速度は20℃/s未満とする。
本発明による製造方法では、Ar3点から巻取り温度までの冷却を出来るだけ緩く行う。これにより、板厚方向の温度を均一化し、第二相または炭化物の析出形態も均一化する。上記の平均冷却速度で冷却すれば、表層部と板厚中央部のビッカース硬さの格差が50以下となり、伸びが向上する。一方、平均冷却速度が20℃/sを超えると、表層部と板厚中央部のビッカース硬さの格差が50を超える。このため、前記平均冷却速度は20℃/s未満とする。
巻取り温度を300〜650℃
前記冷却後の巻取温度が300℃未満では、マルテンサイトや残留オーステナイトの生成量が多くなりすぎて、伸びが低下する。一方、巻取温度が650℃を超えて高くなると、粗大なフェライトやパーライトが増加するために、引張強さが590MPa未満となる。このため、巻取温度は300〜650℃の範囲に限定した。なお、好ましくは400℃以上650℃以下である。
前記冷却後の巻取温度が300℃未満では、マルテンサイトや残留オーステナイトの生成量が多くなりすぎて、伸びが低下する。一方、巻取温度が650℃を超えて高くなると、粗大なフェライトやパーライトが増加するために、引張強さが590MPa未満となる。このため、巻取温度は300〜650℃の範囲に限定した。なお、好ましくは400℃以上650℃以下である。
なお、巻取り後、熱延板には、常法により酸洗を施して、スケールを除去してもよい。また、さらに調質圧延を施すこともできる。
また、必要に応じて亜鉛めっき浴に浸漬することで溶融亜鉛めっきを施すこともできる。さらに、めっき浴浸漬後に460〜570℃程度の温度まで再加熱をおこない1s以上、より好ましくは5s以上保持することで亜鉛と鉄を合金化させる、いわゆる合金化処理を行うこともできる。
めっきに際しては亜鉛以外に、Alめっきや亜鉛とAlの複合めっきなどを行うこともできる。また、焼鈍途中でめっきを施さなかった場合には、電気亜鉛めっきやNiめっきなどを施してもよく、冷延鋼板やめっき鋼板の上に、化成処理などにより皮膜を形成することも可能である。
めっきに際しては亜鉛以外に、Alめっきや亜鉛とAlの複合めっきなどを行うこともできる。また、焼鈍途中でめっきを施さなかった場合には、電気亜鉛めっきやNiめっきなどを施してもよく、冷延鋼板やめっき鋼板の上に、化成処理などにより皮膜を形成することも可能である。
以下、実施例について説明する。
表1に供試体の化学組成、表2に鋼板の製造条件を示す。表1の成分組成になる溶鋼を、連続鋳造してスラブ(鋼素材)とした。得られたスラブを、表2の条件に従って、加熱し、熱間圧延を行って熱延板(板厚:2.9〜10.0mm)とし、熱間圧延終了後、これら熱延板に、表2に示す条件に従って、前段冷却と後段冷却とを施した後に巻取った。なお、前段冷却は、熱間圧延終了後、仕上温度からAr3点までの冷却であり、後段冷却はAr3点から巻取温度までの冷却である。表中の冷却速度はそれぞれの冷却温度領域での平均冷却速度で示す。
表1に供試体の化学組成、表2に鋼板の製造条件を示す。表1の成分組成になる溶鋼を、連続鋳造してスラブ(鋼素材)とした。得られたスラブを、表2の条件に従って、加熱し、熱間圧延を行って熱延板(板厚:2.9〜10.0mm)とし、熱間圧延終了後、これら熱延板に、表2に示す条件に従って、前段冷却と後段冷却とを施した後に巻取った。なお、前段冷却は、熱間圧延終了後、仕上温度からAr3点までの冷却であり、後段冷却はAr3点から巻取温度までの冷却である。表中の冷却速度はそれぞれの冷却温度領域での平均冷却速度で示す。
得られた熱延板を酸洗したのち、試験片を採取し、硬さ試験及び引張試験を実施した。なお、鋼板No.3(板厚:6.0mm)およびNo.11(板厚:10.0mm)については、得られた熱延板から、酸洗を施さずに試験片を採取した。試験方法は次の通りである。
(1)硬さ試験
試験片について圧延方向に平行な断面を鏡面研磨し、鋼板表面から0.1mmの深さ位置(表層部)及び鋼板表面から板厚の1/2の深さ位置(板厚中央部)において、試験荷重0.98Nでそれぞれビッカース硬さを各10点測定し平均値を求めた。表層部と板厚中央部との硬さの差は、両位置における硬さの平均値の差とした。
得られたビッカース硬さの差を表2に示す。
試験片について圧延方向に平行な断面を鏡面研磨し、鋼板表面から0.1mmの深さ位置(表層部)及び鋼板表面から板厚の1/2の深さ位置(板厚中央部)において、試験荷重0.98Nでそれぞれビッカース硬さを各10点測定し平均値を求めた。表層部と板厚中央部との硬さの差は、両位置における硬さの平均値の差とした。
得られたビッカース硬さの差を表2に示す。
(2)引張試験
得られた熱延板から、引張方向が圧延方向と直角方向となるように、JIS 5号試験片(GL:50mm)を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行ない、各種引張特性(降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)、伸び(El))を求めた。
なお、Elの評価については、20%以上を合格とし、20%未満を不合格とした。
得られた熱延板から、引張方向が圧延方向と直角方向となるように、JIS 5号試験片(GL:50mm)を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行ない、各種引張特性(降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)、伸び(El))を求めた。
なお、Elの評価については、20%以上を合格とし、20%未満を不合格とした。
本発明例に係る鋼板は、いずれも、引張強さTS:590MPa以上の高強度を有するとともに、表層部と板厚中央部のビッカース硬さの格差が50ポイント以下であり、El≧20%と優れた伸びを有し加工性に優れた高強度熱延鋼板となっている。
一方、本発明の範囲を外れる比較例に係る鋼板は、引張強さTSが590MPa未満であるか、Elが20%未満であり、所望の高強度及び伸びを兼備するまでに至っていないことがわかった。
一方、本発明の範囲を外れる比較例に係る鋼板は、引張強さTSが590MPa未満であるか、Elが20%未満であり、所望の高強度及び伸びを兼備するまでに至っていないことがわかった。
本発明によれば、引張強さ:590MPa以上という高強度を維持したまま、伸びが向上した熱延鋼板を、比較的容易に提供することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
Claims (10)
- 質量%で、C :0.03〜0.15%、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%及びN :0.007%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物の組成からなり、
鋼板における表層部と板厚中央部とのビッカース硬さの差が50以下であり、引張強さが590MPa以上であることを特徴とする加工性に優れた高強度熱延鋼板。 - さらに質量%で、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.005〜0.200%及びV:0.005〜0.100%のうちから選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
- さらに質量%で、Cu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%及びB:0.0005〜0.0050%のうちから選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
- さらに質量%で、Sb:0.001〜0.020%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
- さらに質量%で、Ca:0.0001〜0.0050%及びREM:0.0005〜0.0100%のうちから選択される一種又は二種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
- 質量%で、C :0.03〜0.15%、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%及びN :0.007%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物の組成からなる鋼素材に対し、加熱して熱間圧延を施した後、冷却してコイルに巻き取って熱延鋼板を製造するに当たり、
前記鋼素材の加熱温度を1150〜1350℃、前記熱間圧延の仕上げ温度を850〜950℃とし、前記熱間圧延後のAr3点までの平均冷却速度を30℃/s以上、Ar3点から巻取り温度までの平均冷却速度を20℃/s未満、冷却後の巻取り温度を300〜650℃とすることを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。 - 前記鋼素材は、さらに質量%で、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.005〜0.200%及びV:0.005〜0.100%のうちから選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項6に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼素材は、さらに質量%で、Cu:0.05〜0.20%、Ni:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%及びB:0.0005〜0.0050%のうちから選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項6又は7に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼素材は、さらに質量%で、Sb:0.001〜0.020%を含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼素材は、さらに質量%で、Ca:0.0001〜0.0050%及びREM:0.0005〜0.0100%のうちから選択される一種又は二種を含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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