以下、本発明を実施するための形態として、成形性及び疲労特性に優れた複合組織鋼板とその製造方法とについて詳細に説明する。
本発明に係る成形性及び疲労特性に優れた複合組織鋼板の主要な特徴は、良好な打ち抜き穴広げ性と疲労寿命とを得るため、そのミクロ組織について面積分率で90%以上、99%未満を主相としてのフェライトとし、第二相をマルテンサイトとした上で、板幅方向に直交する断面において第二相の圧延方向長さの最大値を20μm以下とするとともに、その第二相のうち円相当径が1.0μm以上のものの密度を10000個/mm2以下とし、かつ、該断面において圧延方向長さが30μm以上である介在物の圧延方向長さの総和を1mm2当たり0.25mm以下とした点にある。
初めに、以上のような構成を有する本発明を想到するに至った基礎的研究の内容について説明する。本発明者は、複合組織鋼板の打ち抜き穴広げ性、疲労寿命に対するミクロ組織、介在物等の支配要因について調査するために、以下のような試験を行なった。
まず、表1に示す範囲の成分を含有する鋳片を実機にて精錬、出鋼、連続鋳造を経て製造し、該鋳片を図1及び表2に示す熱延条件にて熱間圧延し、次に諸々のフェライト分率となるように冷却条件を変えて冷却を行い、最後にフェライト及びマルテンサイトからなる複合組織となるように室温まで急冷することによって、様々な組織分布を有する複合組織鋼板を得た。
得られた複合組織鋼板は、それぞれを供試鋼として以下に説明するような試験を行ない、それぞれの引張特性、打ち抜き穴広げ率、疲労寿命を測定するとともに組織観察を行なった。
引張強度等の引張特性については、供試鋼の幅方向長さをWとした場合に、供試鋼の1/2W部より幅方向と平行なJIS Z2201記載の5号試験片を加工し、JIS Z 2241記載の方法に従って得られた試験片について引張試験を行い、試験による測定値を各供試鋼の引張強度等とした。
打ち抜き穴広げ率については、引張試験と同じく供試鋼の1/2W部より圧延方向長さが150mm、幅方向長さが150mmである試験片を20枚加工し、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の穴広げ試験方法に従ってそれぞれの試験片の打ち抜き穴広げ率を測定し、それぞれの試験片についての測定値の平均値を求め、求めた平均値を各供試鋼の打ち抜き穴広げ率とした。
具体的には、この打ち抜き穴広げ率(λ)の測定に際して、以下に説明するような手順に従って打ち抜き穴広げ試験を行なった。まず、図2(a)の打ち抜き金型1の模式図に示すように、試験片3を打ち抜きダイス12及びしわ押さえ13で挟んで固定し、次に、図2(b)に示すように、打ち抜きポンチ11を移動させることにより試験片3を剪断加工してこれを剪断部分3bと被剪断部分3aとに分離する。次に、図2(c)に示すように、得られた被剪断部分3aの打ち抜き穴3c内の方向P1に先端が円錐形の穴広げポンチ7を移動させることによりこの打ち抜き穴3cを方向P2に押し広げて打ち抜き穴3cの穴径を拡大させて、その際に打ち抜き穴3cの端面3dに入った亀裂が板厚方向に貫通したした時点で、その打ち抜き穴3cの穴径dを測定する。この測定した亀裂貫通時の穴径dから、下記式(1)に基づき、初期穴径d0に対するこの亀裂貫通時の穴径dの拡大率を求め、これを測定値としての打ち抜き穴広げ率とした。
ここで、打ち抜き穴広げ試験での打ち抜き加工における重要な加工条件の一つに、図2(a)に示すような、試験片3の板厚tに対する打ち抜きダイス12と打ち抜きポンチ11の隙間sの比率(%)があり、これを打ち抜きクリアランスと呼ぶ。この打ち抜きクラアランスにより打ち抜き後の試験片3の打ち抜き穴端面3dの状態が変わり、打ち抜き穴広げ性もその影響を受けて変化するため、通常、打ち抜きクリランスは打ち抜き穴広げ率がもっとも良好となる12.5%程度の値に設定されて打ち抜き加工が行われる。本発明の打ち抜き穴広げ試験においてもこの打ち抜きクリアランスは12.5%とした。
疲労寿命については、室温で、図3に示される寸法の試験片を用い、JIS Z 2273に示される条件で、その繰り返し速度を30Hzとして、試験片の最小断面積部分の表裏面に最大で400MPaの応力が加わるように試験片に繰り返し曲げモーメントを与える疲労試験を行い、試験片が破壊されるまでに加えた応力の繰り返し数を測定し、これによって評価することとした。繰り返し応力は、完全両振りの状態(最小最大応力比R=−1)とした。一つの供試鋼に対して試験数Nを3回として疲労試験を行い、各回の測定値から平均値を求め、求めた平均値を各供試鋼の疲労寿命とした。疲労試験片は供試鋼の幅方向と平行に切断し、かつ試験時の表面性状は熱延まま又は酸洗ままの状態とした。
組織観察は、供試鋼の幅方向1/2W部から板幅方向に直交する断面(以下、これをL断面という)が露出するようにその供試鋼を切断したサンプルを樹脂内に埋め込み、これを研磨した後にナイタール腐食を行い、得られたサンプルのL断面を観察することにより行うこととした。
ここで、組織観察を行なうにあたっては、以下のような点に留意することとした。打ち抜き穴広げ率は、鋼の延性破壊挙動と密接な関係にあることが知られている。即ち、打ち抜き端面に加工が加わった際には、鋼中の第二相や介在物等の相と主相との界面でボイドが発生し、これらが連結することによって延性破壊を促進することが知られている。従って、打ち抜き穴広げ率は、第二相や介在物等の量、形態により大きく変化することが予想される。この観点から、組織観察を行なうにあたっては、主相の面積分率、第二相(マルテンサイト)の密度、第二相の形状や、延伸した介在物の量に着目し、これらと打ち抜き穴広げ率との関係について整理することとした。
具体的には、組織観察を行なうにあたっては、フェライトの面積分率、マルテンサイトからなる第二相の圧延方向長さの最大値、その第二相の密度、介在物の圧延方向長さの総和Lを各供試鋼ごとに測定することとした。
フェライトの面積分率は、サンプルの板厚をtとした場合にそのサンプルの1/4t部において組織観察を行なうことにより測定することとした。ここで本発明におけるフェライトの面積分率とは、ミクロ組織中におけるフェライト組織の面積分率で定義される。また、本発明における第二相の面積分率は、{100−(フェライトの面積分率)}(%)で定義される。
第二相の圧延方向長さの最大値は、サンプルのL断面において板厚方向長さが全板厚分で、圧延方向長さが約1mmの大きさの視野内で、1000倍の倍率で組織観察を行うことによって測定することとした。第二相は、圧延方向に延伸した形状のものもあれば、等方的な形状のものもあるが、その圧延方向長さの最大値を測定する際には、視野内における各第二相についての圧延方向の長さを測定し、測定値の最大値を各供試鋼についての第二層の圧延方向長さの最大値とした。
第二相の密度は、サンプルの1/4t部において400倍の倍率で組織観察を行い、0.2mm×0.2mmの視野内で円相当径が1.0μm以上である第二相の個数を測定し、これを1mm2当たりの個数(密度)に換算したものを各供試鋼の第二相の密度とした。なお、第二相の密度を測定するにあたり、測定の対象となる第二相を円相当径が1.0μm以上のものに限定したのは、これよりも円相当径が小さい第二相の延性破壊に対する影響が小さいと考えられるためである。また、ここでいう円相当径とは、観察される第二相をこれと同じ面積の円に換算した場合の直径のことを意味する。
介在物の圧延方向長さの総和Lは、サンプルのL断面を鏡面研磨し、光学顕微鏡を用いて400倍の倍率で、板厚方向長さが全板厚分で圧延方向長さが1mmの大きさの視野面積内にある介在物を観察することによって測定することとした。測定にあたっては、圧延方向長さが30μm以上である介在物を延伸した介在物と見なし、それらの圧延方向長さを測定し、それぞれの圧延方向長さについて総和したものを視野面積で除算し、得られた値を各供試鋼についての介在物の圧延方向長さの総和L(mm/mm2)とした。ここでいう総和Lは、断面1mm2当たりの値である。また、圧延方向長さの総和Lの測定にあたって、測定の対象となる介在物をその圧延方向長さが30μm以上のものに限定したのは、これよりも圧延方向長さが短い介在物では延性破壊に対する影響が小さいと考えられるためである。また、本試験においては、介在物の圧延方向長さの総和Lとともに介在物の個数も測定し、この総和Lを介在物の個数で除算したものである、介在物の圧延方向長さの平均値についても併せて求めた。
以上の試験の結果得られた供試鋼の組織は、主相をフェライトとし、第二相をマルテンサイトとする複合組織であった。一部のサンプルでは、第二相(マルテンサイト)が延伸していることが確認された。
また、今回の試験の結果得られた供試鋼のミクロ組織、介在物と打ち抜き穴広げ率、疲労寿命との関係について以下のように整理した。
図4は、引張強度(TS)が590〜630MPa、第二相の密度が10000個/mm2以下、介在物の圧延方向長さの総和Lが0.25mm/mm2以下の供試鋼を対象として、フェライトの面積分率及び第二相の圧延費方向長さの最大値(μm)と打ち抜き穴広げ率との関係を整理したものである。図4から明らかなように、フェライトの面積分率が90%以上、第二相の圧延方向長さの最大値が20μm以下の領域において、打ち抜き穴広げ率が非常に良好となっていることが分かる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
まず、フェライトの面積分率についてであるが、フェライトと第二相との界面で発生する応力集中は、フェライトの面積分率が小さくなるほど第二相が増大し、これに応じて増大するものと考えられる。このため、フェライトの面積分率が小さくなるほど、フェライトと第二相との界面においてのボイドの発生、連結を促進し、延性破壊を促し、その結果、打ち抜き穴広げ性を低下させているものと考えられる。
次に、第二相の圧延方向長さの最大値についてであるが、第二相近傍において発生する応力集中は、第二相が粗大であるほど、又は、第二相が圧延方向に大きく延伸した形状となるほど増大するものと考えられる。このため、第二相の中でも最大サイズのものの圧延方向長さが長いほど、第二相近傍において発生する応力集中が大きなものとなり、これによってボイドの発生、連結を促進することになる。この結果、第二相の圧延方向長さの最大値が長くなるほど延性破壊が促されて打ち抜き穴広げ率を低下させているものと考えられる。因みに、第二相の形状を測定する上では、上述のような圧延方向への延伸の影響を評価する観点から、このような第二相の圧延方向長さの最大値を測定するものとしている。
図5は、引張強度が590〜630MPa、フェライトの面積分率が90%以上、第二相の圧延方向長さの最大値が20μm以下、介在物の圧延方向長さの総和Lが0.25mm/mm2以下の供試鋼を対象として、第二相の密度と打ち抜き穴広げ率との関係を整理したものである。これより、第二相の密度を10000個/mm2以下とすることにより所定の打ち抜き穴広げ率が得られることが分かる。これは、第二相の密度が小さいほど、第二相間の間隔が大きくなるため、加工時に第二相で発生したボイドの連結が抑えられ、その結果、端面亀裂の成長が遅くなることにより打ち抜き穴広げ性が改善されることになったためと考えられる。
図6は、引張強度(TS)が590〜630MPa、フェライトの面積分率が90%以上、第二相の圧延方向長さの最大値が20μm以下、第二相の密度が10000個/mm2以下の供試鋼を対象として、介在物の圧延方向長さの総和Lと応力振幅400MPaでの疲労寿命との関係を整理したものである。これより、単位面積当たりの介在物の圧延方向長さの総和Lが小さいほど疲労寿命は良好となることが分かる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
繰り返し応力が負荷された際においての応力集中部での亀裂伝播時には、亀裂先端にある延伸した介在物近傍で応力集中が発生し、そこからの亀裂の発生により亀裂伝播が促進されるものと考えられる。ここで、亀裂先端で発生する応力集中は、延伸した介在物の量(単位面積当たりの圧延方向長さの総和L)が大きいほど大きくなり、これに応じて亀裂伝搬が更に促進され易くなると考えられる。このため、単位面積当たりの延伸した介在物の圧延方向長さの総和Lが小さいほど疲労寿命が良好なものになることが考えられ、その結果、図6に示すような結果になったものと考えられる。
図7は、引張強度(TS)が590〜630MPa、第二相の圧延方向長さの最大値が20μm以下、フェライトの面積分率が90%以上、第二相の密度が10000個/mm2以下の供試鋼を対象として、介在物の圧延方向長さの総和Lと打ち抜き穴広げ率との関係を整理したものである。これより、単位面積当たりの介在物の圧延方向長さの総和Lが小さいほど打ち抜き穴広げ率は良好となることが分かる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
打ち抜き穴広げ成形時に打ち抜き穴端面近傍で加工される部分では、延伸した介在物近傍で特に応力集中が大きいためボイドが発生しやすい。延伸した介在物近傍で一旦ボイドが発生すると、そのボイドは加工の進行によって介在物の長手方向である圧延方向に速く成長する。従って、単位面積当たりの圧延方向長さの総和Lが大きくなればなるほど、圧延方向に延伸した介在物近傍で発生したボイドの圧延方向への成長が容易となり、圧延方向に速く成長しやすくなるものと考えられる。このため、単位面積当たりの介在物の圧延方向長さの総和Lが小さいほど打ち抜き穴広げ率が良好になるものと考えられ、その結果、図7に示すような結果になったものと考えられる。
因みに、今回の試験結果で、延伸した介在物の圧延方向長さの平均値は、これが30μm以上である場合、打ち抜き穴広げ率、疲労寿命に対して大きな相関関係が見られず、その平均値によってこれら打ち抜き穴広げ率、疲労寿命の程度を特定することが困難であることも判明した。
次に、打ち抜き穴広げ性や疲労寿命を劣化させる要因となる延伸した介在物について行なった調査の結果について説明する。この調査の結果、これら延伸した介在物は、ほとんどが圧延により延伸したMnSや、製鋼段階で脱硫のために投入する脱硫フラックスの残存物であるCaF2であることが明らかになった。
これらの介在物は特に疲労寿命を劣化させる効果が大きくなっており、この傾向は、室温におけるヤング率の鉄との差異に起因するものと思われる。これらを抑制するための複合組織鋼板の組成、製造方法について検討した結果、以下が重要であることが判明した。
まず、複合組織鋼板の組成についてであるが、MnSを抑制するには鋼中に含まれるS量の低減が重要であることが判明した。この観点から、本発明においては、S上限(≦0.0030%)を設定することとした。また、Ti添加鋼においてはMnS生成温度域より高温でTiSが生成されることによりMnSの生成が抑制されることから、MnSを抑制する観点からより多量のTi添加が好ましく、Ti下限(≧0.01%)を設定することとした。特に、Tiを添加せずにS量上限をこれより低減させる手段も考えられるが、Sを低減しすぎると脱硫時において生産性を著しく劣化させるほど長時間の溶鋼環流を行なう必要が生じ、経済性を損なうことになってしまうため、この観点からもTi添加が有効となる。
次に、複合組織鋼板の製造方法についてであるが、脱硫フラックスの残存により介在物の圧延方向長さの総和Lが大きくなることを抑制するためには、溶鋼の二次精錬の工程において、脱硫フラックスの添加後に、生産性を著しく劣化させない時間の範囲内で溶鋼環流を行い、脱硫フラックスの除去を図ることが重要であることが判明した。以下において、介在物の圧延方向長さの総和Lを図6、図7に示すように0.25mm/mm2以下とする製造条件について更に詳細に述べる。
製鋼工程において、二次精錬で溶鋼を溶製するに際しては、脱硫フラックスを除去して介在物(CaF2)の圧延方向長さの総和Lを低減するために、RH(Ruhrstahl-Heraeus)等の二次精練装置を用いた溶鋼脱硫時において、脱硫フラックス添加後に溶鋼を3.0回以上、二次精練装置内で環流させることが重要となる。この理由について説明する。
図8に、表1に示す成分系の鋼を溶製する際の二次精錬工程における溶鋼環流回数と介在物の圧延方向長さの総和Lとの関係を示す。この図8に示すように、環流回数が3.0回以上の場合に介在物の圧延方向長さの総和Lが0.25mm/mm2以下に低減していることが分かる。このため、本発明においては、溶鋼を3.0回以上環流させることとした。
ここで、溶鋼の環流回数については、二次精錬装置内で循環させる単位時間当たりの溶鋼量のことを意味する溶鋼の環流速度Q(ton/min)と、脱硫フラックス添加後の溶鋼環流時間(min)と、二次精錬工程において処理すべき対象の溶鋼量(ton)とから、以下の式(2)、(3)に基づき求めることができる。
上述の溶鋼の環流速度Qについては、種々の算出式があるが、例えば「大量生産規模における不純物元素の精練限界」((株)日本鉄鋼協会 高温精練プロセス部会精練フォーラム 日本学術振興会 製鋼第19委員会反応プロセス研究会,平成8年3月,184頁〜187頁)に開示されている下記式(4)に基づき求めればよい。なお、下記式(4)における環流ガス流量は、0℃、1atmの条件下での1分間当たりの還流ガスの流量を意味する。
Q :環流速度(ton/min)
V :環流ガス流量(L/min)
D :浸漬管内径(m)、
P0:真空槽内圧力(Pa)
P1:環流ガス吹込位置圧力(Pa)、
k :定数(二次精練装置による定数)
因みに、鋼板中に含まれる介在物は、フッ化カルシウム(CaF2)についてはその含有量が、介在物全体の重量に対して重量比で30%以下であることが好ましく、MnSについてはその含有量が、介在物全体の重量に対して重量比で30%以下であることが好ましいことが判明した。これらの数値超であると、CaF2、MnSの含有量が多くなりすぎ、疲労寿命の劣化を招いてしまうので好ましくない。
以上のような知見に基づき鋼板のミクロ組織、介在物を最適化することにより、目標とする引張強度と打ち抜き穴広げ率とのバランスを得つつ、目標とする疲労寿命が得られることが分かった。
本発明は以上を元に為されたものであり、以下に各々の構成要件の限定理由について説明する。因みに、本発明においては、引張強度が590MPa以上、打ち抜き穴広げ率が80%以上、疲労寿命が20万回以上の材料特性を有する複合組織鋼板を得ることを目標としている。
まず、本発明に係る成形性及び疲労寿命に優れた複合組織鋼板についての成分の限定理由について説明する。なお、以下においては、組成についての質量%を、単に%と記載する。
Cは、引張強度を確保し、また疲労寿命の良好な複合組織鋼とするために必要な元素であり、本発明の目標とする引張強度、疲労寿命を得るためには0.01%以上の添加を必要とする。しかし、過多にあると、第二相が増加してフェライトの面積分率が低減してしまい、打ち抜き穴広げ性が劣化するのでその含有量を0.1%以下とする。
Siは、本発明においては、十分な引張強度を確保するために必要であり、目標とする引張強度を得るためには0.5%以上の添加を必要とする。また、引張強度が不十分である場合、目標とする疲労寿命も得られないので、この観点からも0.5%以上の添加を必要とする。しかし、Siは、過多になると、Ar3変態点が高くなりすぎ、実際の熱間圧延工程において仕上圧延温度を後述のようなAr3変態点+40℃以上にすることが困難となり、実際の圧延が不可能となるので、その含有量を2.0%以下とする。
Mnは、固溶強化元素として引張強度を上昇させるのに有効であり、目標とする引張強度を得るためには0.5%以上添加することが必要である。また、引張強度が不十分である場合、十分な疲労寿命も得られないので、この観点からも0.5%以上の添加を必要とする。また、2.0%超添加するとスラブ割れを生ずるため、Mnは2.0%以下添加するものとする。
Pは、鋼中に不可避的に含有される不純物であり低いほど好ましく、0.03%超含有すると成形性や溶接性に悪影響を及ぼすと共に、疲労特性も低下させるので、その含有量を0.03%以下とする。なお、Pの含有量として0%は含まない。
Sは、鋳片加熱時に鋼中においてMnSを生成し、これが熱間圧延により延伸された介在物となることによって打ち抜き穴広げ性や疲労寿命を劣化させるので、極力低減させることが好ましく、その含有量を0.003%以下とする。なお、Sの添加量として0%は含まない。
Alは、溶鋼脱酸のために0.005%以上含有させる必要がある。また、固溶強化により目標とする引張強度を得るためにも、0.005%以上添加することが好ましい。しかし、Alは、多量に添加してしまうとコストの上昇を招くため、その含有量を0.04%以下とする。
Nは、これが過多にあると時効硬化を促進し成形性を劣化させるので、成形性を確保する観点からその含有量を0.006%以下とする。なお、Nの含有量として0%は含まない。
Tiは、TiCとしてフェライト中に析出することにより引張強度を鋼板に付与し、更には、鋳片加熱時においてTiSを生成してSを固定することにより、延伸した介在物となるMnSの生成を抑制するため、0.01%以上の添加が必須である。また、引張強度が不十分である場合、目標とする疲労寿命も得られないので、この観点からも0.01%以上の添加を必要とする。また、過多にあるとこれらの効果が飽和し、コスト増加を招くので、その含有量を0.15%以下とする。
以上が本発明の基本成分の限定理由であるが、本発明においては、必要に応じて、Nb、Mo、V、Cr、Cu、Ni、B、Ca及びREMのうち、何れか一種又は二種以上を含有していてもよい。
Nb、Mo、V、Crは、析出強化若しくは固溶強化元素であり、更に引張強度を向上させるためにこれらのうち何れか一種又は二種以上を必要に応じて添加することが好ましい。ただし、それぞれ0.005%、0.01%、0.02%、0.01%未満ではその効果を得ることができない。また、それぞれ0.05%、0.1%、0.1%、1%を超えて添加しても、その効果は飽和する。このため、添加時においてはこれらの範囲内で添加することが好ましい。
Cuは、固溶状態で疲労特性を改善する効果があるので、疲労特性向上のために必要に応じて添加することが好ましい。ただし、0.01%未満ではその効果は少なく、2%を超えて含有してもその効果が飽和する。このため、添加時におけるCuの含有量は、0.01〜2%の範囲とすることが好ましい。
Niは、Cu含有による熱間脆性防止のために必要に応じて添加することが好ましい。ただし、0.01%未満ではその効果が少なく、1%を超えて添加してもその効果が飽和するので、添加時におけるNiの含有量は、0.01〜1%の範囲とすることが好ましい。
Bは、焼き入れ強化により引張強度を増加させる効果があるので、引張強度向上のために必要に応じて添加することが好ましい。ただし、0.0002%未満ではその効果を得るために不十分であり、0.003%超添加するとスラブ割れが起こる。このため、添加時におけるBの含有量は、0.0002%以上、0.003%以下の範囲とすることが好ましい。
Ca及びREMは、破壊の起点となったり、成形性を劣化させる非金属介在物の形態を変化させて無害化する元素である。ただし、何れも0.0005%未満添加してもその効果がなく、Caならば0.01%超、REMならば0.02%超添加してもその効果が飽和するので、添加時におけるCaの含有量は、0.0005〜0.01%の範囲とし、REMの含有量は0.0005〜0.02%の範囲とすることが好ましい。
次に、本発明に係る複合組織鋼板のミクロ組織の限定理由について説明する。
ミクロ組織の相のうち、面積分率が最大となる主相は、打ち抜き穴広げ性を改善するためにフェライトとする必要がある。また、ミクロ組織の相のうち、主相の次に面積分率が大きい第二相は、引張強度を確保するとともに疲労寿命を良好とする観点からできるだけ硬質とする必要があり、マルテンサイトとする必要がある。第二相がベイナイトやパーライトであると、目標とする引張強度、疲労寿命を得ることができない。主相のフェライト相中に硬質なマルテンサイトからなる第二相が存在する場合に疲労寿命が改善されるのは、硬質なマルテンサイト相が疲労亀裂の伝播を遅らせる効果を有するためと考えられる。
主相としてのフェライトの面積分率は、これが大きすぎると第二相の面積分率が少なくなって疲労寿命が劣化するので、目標とする疲労寿命を得るために99%未満とする必要がある。また、フェライトの面積分率は、これが小さすぎると、上述において図4とともに説明したように目標とする打ち抜き穴広げ性を得られなくなるので、90%以上とする必要がある。以上の理由から、ミクロ組織は、主相としてのフェライトを90%以上99%未満含有している必要がある。
第二相の圧延方向長さの最大値は、これが大きすぎると、上述において図4とともに説明したように、目標とする打ち抜き穴広げ性が得られなくなるので、板幅方向に直交する断面において測定されるものが20μm以下である必要がある。
第二相の密度は、これが大きすぎると、上述において図5とともに説明したように、目標とする打ち抜き穴広げ性が得られなくなるので、板厚方向に直交する断面において測定されるものが10000個/mm2以下である必要がある。
介在物の圧延方向長さの総和Lは、これが大きすぎると、上述において図6、図7とともに説明したように、目標とする打ち抜き穴広げ率や疲労寿命が得られなくため、板幅方向に直交する断面において測定されるものが1mm2当たり0.25mm以下である必要がある。
次に、本発明の複合組織鋼板の製造方法においての、各製造条件の限定理由について説明する。
本発明においては、製鋼工程において、鋼成分が上述した所定範囲内となるように調整することと、上述のような延伸した介在物の圧延方向長さの総和Lが小さくなるように溶鋼環流の制御を行うこととが必要となる。
具体的には、製鋼工程において、高炉等によって溶銑を得た後に、これを転炉にて溶鋼としたうえで、得られた溶鋼を各種の二次精錬で溶製して上述の所定範囲の鋼成分となるよう成分調整を行なう。なお、高炉にて溶銑を得る代わりに、原料として鉄スクラップを使用して、これを電炉にて溶解して溶鋼を得るようにしてもかまわない。
図9は、溶鋼を溶製する二次精錬工程を行うにあたって二次精錬装置としてRHを用いた場合のそのRHの構成を示す模式図である。二次精錬装置1は、溶鋼鍋2中に脱ガス槽3内に連通された二本の浸漬管4a、4bが浸漬されて構成されている。また、この二次精錬装置1は、環流ガス吹込管5から溶鋼鍋2内の溶鋼6に供給されているAr等の環流ガスが一方の浸漬管4a内に下方から吹き込まれるよう構成されている。二次精錬装置1における溶鋼鍋2内の溶鋼6は、溶鋼鍋2から一方の浸漬管4aを介して上昇して脱ガス槽3内に入り、脱ガス処理後に脱ガス槽3から他方の浸漬管4bを介して溶鋼鍋2に下降して戻るよう構成されている。溶鋼鍋2内の溶鋼6中には、環流ガス吹込管5又は別途設けた管から脱硫フラックスが吹き込まれており、溶鋼6が環流ガスによって攪拌されることによって溶鋼6の脱硫が行なわれることになる。
このような二次精錬装置を用いて溶鋼の環流回数を調整することによって、介在物の圧延方向長さの総和Lを調整することになる。
ここで、溶鋼を溶製するに際して、脱硫フラックスを除去して介在物の圧延方向長さの総和Lを低減させるために、RH(Ruhrstahl Teraeus)等の二次精練装置を用いた溶鋼脱硫時に、脱硫フラックス添加後に溶鋼を3.0回以上、二次精練装置内で環流させることが重要となる。溶鋼の環流回数については、上述の式(2)、(3)に基づき求めればよい。
なお、ここでは二次精錬装置としてRHを用いた例を示したが、他のDH(Dortmund Horde)、LF(Ladle Furnace)等の二次精練装置を用いても構わないことは言うまでもない。
以上の点を除けば、製鋼工程中の他の工程について、特にその条件を限定するものではない。二次精錬後においては、二次精錬によって得られた溶鋼から、通常の連続鋳造、又はインゴット法による鋳造の他、薄スラブ鋳造等の方法で鋳造して鋳片を得るようにすればよい。また、連続鋳造等して得られた鋳片は、高温のまま熱間圧延機に直送してもよいし、室温まで冷却後に加熱炉で再加熱した後に熱間圧延してもよい。
二次精錬、鋳造を経て得られた鋳片は、熱間圧延を行うために加熱する。この際の加熱温度については特に限定するものではないが、圧延温度を確保するために必要な温度まで加熱すればよく、例えば、1200℃以上に加熱するものとする。
鋳片を加熱した後は、加熱後の鋳片に対して熱間圧延を行う。具体的には、加熱後の鋳片に対して粗圧延を行なった後に仕上圧延を行う。ここで行なう粗圧延の圧延開始温度や圧延終了温度については、特に限定するものではない。
仕上圧延終了温度FTは、フェライト変態を促進するとともにフェライト粒及び第二相を微細化させることによりフェライトの面積分率及び第二相の圧延方向長さの最大値を目標とする値とするために、Ar3+140℃以下とする必要がある。これによって、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られる。しかし、仕上圧延終了温度FTがAr3温度+40℃未満でなると、第二相が微細となりすぎることによって第二相の密度が過度に大きくなることに加え、組織が層状組織となって第二相の圧延方向長さの最大値も増加し、打ち抜き穴広げ性を劣化させる可能性もある。このため、仕上圧延終了温度FTは、Ar3+40℃以上とする。
なお、Ar3温度は下記式(5)から求められる。下記式(5)における[C]、[Si]等は、それぞれ鋼板中における質量%での各成分の含有量を意味する。
なお、この仕上圧延終了温度を測定する温度計等は、仕上圧延による最終パスでの圧下後から次に行なう冷却をランアウトテーブルで開始するまでの間のライン上に設置されている関係上、仕上圧延による最終パスでの圧下後からこの仕上圧延終了温度を測定するまでの間において、水冷により冷却速度の速い冷却を行なうことは困難となる。このため、仕上圧延による最終パスでの圧下後から仕上圧延終了温度を測定するまでの間においては、空冷による冷却が必然的に行なわれることになる。ここで行なわれる冷却は、その冷却速度CR0が15℃/秒以下、その冷却時間D0が2秒以下であれば、引張強度等の材質に大きな影響を及ぼさないので、この範囲内で冷却を行なうことが好ましい。
仕上圧延終了後には、冷却を行なう。ここでは、フェライト粒及び第二相を微細とするために、冷却速度CR1でAr3温度以下の温度域までの冷却をまず最初に行う必要がある。ここで行なう冷却は、その冷却速度CR1が30℃/秒未満ではフェライト粒径及び第二相を細粒とすることができないため、目標とする第二相の圧延方向長さの最大値が得られず、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られなくなってしまうので、その冷却速度CR1を30℃/秒以上とする。
冷却速度CR1での冷却に続いては、冷却速度CR2での冷却を行なう。ここで行なう冷却は、その冷却速度CR2が15℃/秒超であると、フェライト変態やフェライト相、第二相の微細化が促進されず、目標とするフェライトの面積分率、第二相の圧延方向長さの最大値が得られず、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られないので、その冷却速度CR2を15℃/秒以下とする。
また、ここで行なう冷却速度CR2での冷却は、その冷却時間D1が5秒未満であると、フェライト変態が促進されず、目標とするフェライトの面積分率が得られず、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られないので、その冷却時間D1を5秒以上とする。
また、ここで行なう冷却速度CR2での冷却は、その冷却開始温度T1が750℃超であると、その温度域ではフェライト変態が遅いためフェライト変態が十分促進されず、目標とするフェライトの面積分率が得られない可能性があるので、その冷却開始温度T1を750℃以下とする。
また、ここで行なう冷却速度CR2での冷却は、その冷却終了温度T2が650℃未満の場合も、その温度域ではフェライト変態が遅いためフェライト変態が十分促進されず、目標とするフェライトの面積分率が得られない可能性があるので、その冷却終了温度T2を650℃以上とする。
冷却速度CR2での冷却に続いては、冷却速度CR3での冷却を行なう。ここで行なう冷却は、その冷却速度CR3が30℃/秒未満であると、第二相としてパーライト等の低温変態組織が析出してしまい、目標とする引張強度、疲労寿命が得られないため、その冷却速度CR3を30℃/秒以上とする。ここで行う冷却は、後述の巻取温度CTまで行なう。
冷却速度CR3での冷却の後は、冷却後の鋼板を巻取装置によって巻き取る。ここで行なう巻き取りは、その巻取温度CTが200℃超であると、第二相としてベイナイト、パーライト等が析出してしまうことによって適度に十分な硬さを持ったマルテンサイトが十分量得られず、その結果として、目標とする引張強度、疲労寿命が得られない。このため、その巻取温度CTは、200℃以下とする必要がある。
以上が、本発明に係る複合組織鋼板の製造方法についての各製造条件の限定理由である。このような方法によれば、そのミクロ組織は面積分率で90%以上、99%未満が主相としてのフェライトであり、第二相がマルテンサイトであり、かつ、板幅方向に直交する断面において第二相の圧延方向長さの最大値を20μm以下とするとともに、その第二相のうち円相当径が1.0μm以上のものの密度が10000個/mm2以下であり、かつ、該断面において圧延方向長さが30μm以上である介在物の圧延方向長さの総和が1mm2当たり0.25mm以下である成形性及び疲労特性に優れた複合組織鋼板を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
まず、表3に示すA〜Pの鋼成分を有する鋳片を、転炉にて得られた溶鋼を各種の二次精錬で溶製した後、これを連続鋳造することによって製造し、この製造した鋳片を表4に示す熱間圧延条件にて圧延、冷却を行うことによって板厚3.2mmの複合組織鋼板を得ることとした。
ここで、表4における「Ar3」は、上述の式(5)に基づき求めることとした。また、表4における「FT上限」、「FT下限」は、Ar3変態点から導出される仕上圧延終了温度の上限値と下限値とのことを意味している。また、表4における環流回数を求めるにあたっては、上述の式(2)〜(4)に基づき求めることとし、更に、式(4)における係数kは4として計算した。
このようにして得られた各鋼番の鋼板については、それぞれを供試鋼としてそれぞれの引張特性、打ち抜き穴広げ率、疲労寿命を測定するとともに組織観察を行なった。引張特性、打ち抜き穴広げ率、疲労寿命の測定、組織観察については、上述において説明した基礎的研究の測定方法、観察方法と同様の条件とした。これらの測定方法、観察方法によって得られた各鋼番のミクロ組織、機械的性質を表5に示す。
本発明に沿うものは、鋼番1、9〜15であり,何れも本発明が満足すべき成分、ミクロ組織を有しており、引張強度と打ち抜き穴広げ率とのバランスに優れ、更には疲労寿命に優れたものとなっている。
これに対して、以下の鋼番は本発明の条件を満たしておらず、目標とする特性が得られていない。鋼番2は、仕上圧延終了温度FTが低すぎるため、第二相の密度が過度に大きくなりすぎ、更には第二相が扁平となってその圧延方向長さの最大値が長くなりすぎており、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られていない。
鋼番3は、仕上圧延終了温度FTが高すぎるため、フェライトの面積分率が小さくなりすぎ、更には第二相が粗大となってその圧延方向長さの最大値が長くなりすぎ、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られていない。
鋼番4は、仕上圧延後の冷却速度CR1が遅すぎるため、第二相が粗大となってその圧延方向長さの最大値が長くなりすぎ、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られていない。
鋼番5は、冷却速度CR2が速すぎ、更には冷却時間D1が短すぎるため、フェライトの面積分率が小さくなりすぎ、更には第二相の圧延方向長さの最大値が大きくなりすぎ、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られていない。
鋼番6は、冷却時間D1が短すぎるため、フェライトの面積分率が小さくなりすぎ、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られていない。
鋼番7は、冷却速度CR3が遅すぎるため、パーライトが生成しており、その結果、目標とする引張強度、疲労寿命が得られていない。
鋼番8は、巻取温度CTが高すぎるため、第二相として比較的軟質な上部ベイナイトが生成しており、その結果、目標とする引張強度、疲労寿命が得られていない。
鋼番16は、Tiが添加されていないため、目標とする引張強度が得られていないうえ、延伸されたMnSが多く生成されて介在物の圧延方向長さの総和Lが所定より大きくなってしまい、目標とする打ち抜き穴広げ率、疲労寿命が得られていない。
鋼番17は、C量が所定より少なすぎるため、目標とする引張強度、疲労寿命が得られていない。
鋼番18は、Si量が所定より少なすぎるため、目標とする引張強度、疲労寿命が得られていない。
鋼番19は、Mn量が所定より少なすぎるため、目標とする引張強度、疲労寿命が得られていない。
鋼番20は、C量が多すぎるため、フェライトの面積分率が小さくなりすぎており、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率が得られていない。
鋼番21、22は、製鋼工程の二次精錬での溶鋼環流回数が小さすぎるため、延伸した介在物の圧延方向長さの総和Lが所定より大きくなりすぎており、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率、疲労寿命が得られていない。
鋼番23は、S量が所定量より多いため、延伸した介在物の圧延方向長さの総和Lが所定より大きくなりすぎており、その結果、目標とする打ち抜き穴広げ率、疲労寿命が得られていない。