JP2007177303A - 延性に優れた鋼及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】転炉精錬や電気炉精錬と連続鋳造を組み合わせた通常の量産鋼精錬設備を用い、純鉄なみに優れた延性を有すると同時に、必要な強度をも具備する鋼とその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.0025%以下、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、sol.Al:0.0070%以下、Nb:0.04〜0.5%、Ti:0.003〜0.006%、N:0.0025%以下、T.O:0.0030%以下であることを特徴とする延性に優れた鋼である。C、P、S、Nを量産製錬技術で可能な限り低減した上で、Al弱脱酸によってAl酸化物系介在物を低減すると同時に鋼中溶存酸素に起因する介在物も極限まで低減し、その上でNbを含有させ、固溶C、固溶O、各種介在物を極限まで低減することにより、極めて高い伸びと純鉄に匹敵する低い耐力を実現することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、純鉄に匹敵する高い延性と適度な強度を有する鋼であって、鉄鋼の量産精錬設備を用いて製造することのできる鋼及びその製造方法に関するものである。
鋼の深絞り性向上を主目的として、鋼中のC濃度を極低炭レベルまで低減し、TiやNbを添加して鋼中のC、Nを析出物の形で固定し、固溶の浸入型元素のほとんど存在しない極低炭Alキルド鋼とする技術が知られており、IF鋼(Interstitial atom free steel)と呼ばれている。特許文献1では、炭素濃度を0.007%以下とし、TiとNbを添加することにより、超深絞り性を実現している。また特許文献2では、炭素濃度0.003〜0.017%の鋼にTiを添加するとともに熱延・冷延・焼鈍条件を規定し、冷間プレス加工性の極めて優れた鋼板を実現している。
一方、今日の自動車用構造部材、各種容器類、あるいは建築用鋼材の中で地震エネルギーの吸収部材などにおいては、鋼材に極めて高い延性が求められている。
例えば、DI缶と呼ばれる2ピース缶は、多段絞り加工あるいは深絞り加工後にしごき加工が施されるDI加工など、成形にあたって厳しい加工が行われ、単に耐食性のみならず優れた加工性も素材に要求されている。DI缶の成形加工ではフランジ加工性の良いことが極めて重要視され、その不良率は数10ppm以下に抑える必要がある。DI缶用の鋼板として、アルミに匹敵する加工性を有する鋼板の開発が待たれている。また鋼製缶蓋のEOE性(易開缶性)をアルミ製缶蓋並みに向上させることが期待されている。
鉄鋼材料の中で最も延性が高いのは純鉄であるが、純鉄では工業材料として求められる強度を満たすことができない。また、純鉄は従来の鋼のように量産する工業技術はなく、仮に工業的なプラントを作ったとしても工業材料として市場が求めるコストでは供給できない。そのため、高い延性を求める上記用途に純鉄を用いることはできなかった。
転炉や真空処理容器で精錬された溶鋼中には、多量の溶存酸素が含まれており、この過剰酸素は酸素との親和力が強い強脱酸元素であるAlにより脱酸されるのが一般的である。このため、溶存酸素は全てアルミナ系介在物となり、これが凝集合体して粗大なアルミナクラスターとなる。このアルミナクラスターは、鋼板製造時に表面疵発生の原因となり、薄鋼板の品質を大きく劣化させる。特許文献3に記載の発明では、大気圧下で溶鋼中のC濃度を0.045質量%以上0.07質量%以下に脱炭処理し、続いて減圧下でC濃度を0.005質量%以下、溶存酸素濃度を0.045質量%以下に精錬処理した溶鋼について、Alを添加せずにNbを添加した後、該溶鋼を連続鋳造する。極低炭素鋼においては、溶存酸素濃度を鋳造時にCO気泡が発生しない程度まで減少させることができ、そのためAl脱酸を行わなくても良いため、介在物を殆ど生成させないと共に、脱酸力の極めて弱いNbを添加してCやNを固定することで、薄板用鋼板としての材質をも確保することにある。
特公昭61−32375号公報 特公昭44−18066号公報 特開2005−2358号公報
本発明は、転炉精錬や電気炉精錬と連続鋳造を組み合わせた通常の量産鋼精錬設備を用い、純鉄なみに優れた延性を有すると同時に、必要な強度をも具備する鋼とその製造方法を提供することを目的とする。
転炉精錬法に真空脱ガス法を適用することにより、現在ではC濃度を0.0025%以下まで下げると同時に、他の不純物元素についてP:0.010%以下、S:0.0015%以下、N:0.0025%以下まで低減することが可能となっている。
従来は、真空脱ガス法で炭素濃度を下げた後、溶存酸素を脱酸するためにAl脱酸が用いられていた。あるいは特許文献3のようにAl脱酸を適用しない方法が用いられていた。しかし、Al脱酸を行った場合には鋼中にアルミ酸化物系の介在物が残存し、これが延性を純鉄なみに向上させる上での足かせとなっていた。一方Al脱酸を一切行わない方法では、鋳造時に溶存酸素が残ってしまい、溶存酸素は凝固中に鉄酸化物を形成するので、同じく延性向上を妨げる原因となる。
これに対し、C濃度を0.0025%以下まで下げると同時に、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、N:0.0025%以下まで低減し、その段階でAl弱脱酸を行い、Al添加量はsol.Alが0.0070%を超えない範囲に抑えるとともに、溶鋼中フリーOが0.0030%を超えない範囲にまで脱酸を進行させると、凝固後の鋼中にはAl酸化物系の介在物もFe酸化物系の介在物もほとんど残存せず、清浄な鋼を得ることができる。Al弱脱酸の後の段階でNb:0.04〜0.5%、Ti:0.003〜0.006%の範囲となるようにNbとTiを添加すると、もともとC濃度とN濃度が極めて低い上に鋼中に主としてNbCNと主としてTiNのそれぞれ独立した析出物が析出するので、鋼の延性に有害な固溶C、固溶Nを極限までなくすことができる。鋼中Sも0.0015%以下と低いので、MnSなどの硫化物系介在物も極限まで低減することができる。このようにして得られた鋼は、極めて高い伸びと純鉄に匹敵する低い耐力を実現できることが判明した。また、このような鋼であれば、今日の鉄鋼製造技術において量産レベルで製造することが可能である。
本発明は上記知見基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.0025%以下、Si:0.010%以下、Mn:0.5%以下、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、sol.Al:0.0070%以下、Nb:0.04〜0.5%、Ti:0.003〜0.006%、N:0.0025%以下、T.O:0.0030%以下であり、残部Fe及び不可避不純物からなることを特徴とする延性に優れた鋼。
(2)sol.Al:0.0003〜0.0070質量%であることを特徴とする上記(1)に記載の延性に優れた鋼。
(3)さらに質量%で、Ni:0.01〜1%、Cu:0.01〜0.5%の1種又は2種を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の延性に優れた鋼。
(4)アルミニウムの酸化物及びシリコンの酸化物の含有量が0.005容量%以下あることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
(5)転炉精錬連続鋳造鋳片であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
(6)電炉−LF精錬連続鋳造鋳片であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
(7)冷延鋼板であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
(8)熱間圧延鋼板であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
(9)転炉精錬を行い、その後真空脱ガス処理によってC:0.0025質量%以下まで脱炭を行い、Al脱酸によってsol.Alが0.0070質量%以下、溶鋼中フリーOが0.0030質量%以下となるように脱酸を行い、さらにNb添加、Ti添加の順で合金を添加することを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の延性に優れた鋼の製造方法。
(10)電気炉及びLF精錬を行い、その後真空脱ガス処理によってC:0.0025質量%以下まで脱炭を行い、Al脱酸によってsol.Alが0.0070質量%以下、溶鋼中フリーOが0.0030質量%以下となるように脱酸を行い、さらにNb添加、Ti添加の順で合金を添加することを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の延性に優れた鋼の製造方法。
本発明は、C、P、S、Nを量産製錬技術で可能な限り低減した上で、Al弱脱酸によってAl酸化物系介在物を低減すると同時に鋼中溶存酸素に起因する介在物も極限まで低減し、その上でNbを含有させ、固溶C、固溶O、各種介在物を極限まで低減することにより、極めて高い伸びと純鉄に匹敵する低い耐力を実現することができる。
本発明の鋼は、不純物元素について質量%で、C:0.0025%以下、Si:0.010%以下、Mn:0.5%以下、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、sol.Al:0.0070%以下、N:0.0025%以下、T.O:0.0030%以下のレベルとした上で、Nb:0.04〜0.5%、Ti:0.003〜0.006%を含有することにより、極めて高い伸びと同時に純鉄にも匹敵する低い耐力を得ることができる。また、上記のような不純物レベルの鋼については、今日の鉄鋼製造技術において量産レベルで製造することが可能である。以下、各元素毎に説明する。
不純物炭素及び窒素については、C:0.0025%以下、N:0.0025%以下とした上でNbを0.04〜0.5%、Tiを0.003〜0.006%含有させることにより、鋼中の炭素・窒素を主としてNbCNと主としてTiNのそれぞれ独立した析出物として析出させ、固溶C、固溶Nを極限まで低減することができる。これにより、他の不純物元素の低減と相まって、極めて高い伸びと同時に純鉄にも匹敵する低い耐力を得ることができる。
C濃度が本発明上限を超える等して鋼中の固溶Cが増大すると、連続焼鈍された冷間圧延鋼板のマトリックス中に固溶Cが存在することになり、マトリックス中に僅かに残存する転位に固着して転位のスムーズな動きを妨げるため、純鉄のような低い耐力は得られない。また、固溶Cは鋼の塑性変形時に新たに導入される転位に対しても同様の働きをするため、塑性変形の最終局面で転位のセル構造を著しい頻度でマトリックス中に生成せしめる。転位のセル構造が高密度で導入されて金属のマトリックスはそれ以上の塑性変形(伸び)を続けることができず、本発明の良好な伸びが損なわれることとなる。
C濃度は0.0020質量%以下とすると好ましい。0.0015質量%以下とするとさらに好ましい。N濃度は0.0020質量%以下とすると好ましい。0.0015質量%以下とするとさらに好ましい。
Si含有量を0.010質量%以下とすることにより、鋼中のシリコン酸化物系介在物含有量を極限まで低減し、これにより、他の不純物元素の低減と相まって、極めて高い伸びと同時に純鉄にも匹敵する低い耐力を得ることができる。
Mnは、本鋼が凝固する時に溶鋼中の固溶SがFeと結合して低融点のFeSを生成することを防ぐことにより鋼の熱間延性を確保し鋳造および熱間圧延中の割れの発生を抑えるので、0.5%以下添加する。0.5%を超えると固溶体硬化作用が高まりすぎて鋼の延性を低下させる。Mn含有量が0.10%以上であれば上記効果を発揮することができる。また、MnがFeMnSとして消費された後も大部分が固溶体として鋼中に存在し固溶硬化に寄与する。
鋼中のPは鋼の塑性変形に有害な不純物である。P含有量を0.010質量%以下とすることにより、他の不純物元素の低減と相まって、本発明の極めて高い伸びを実現することが可能となる。P含有量は0.005質量%以下であれば好ましい。0.002質量%以下であればさらに好ましい。
鋼中のSはMnSなどの硫化物系介在物を形成し、塑性変形を妨げて延性を低下させる原因となる。S含有量を0.0015質量%とすることにより、鋼中の硫化物系介在物を低減し、他の不純物元素の低減と相まって、本発明の極めて高い伸びを実現することが可能となる。
従来の極低炭Alキルド鋼においては、鋼中の溶存酸素を脱酸するためにAlを添加し、sol.Al含有量は通常0.007%以上としていた。このようなAlキルド鋼においては、凝固後の鋼中にアルミナ系介在物の混入が避けられず、それが原因で鋼の塑性変形を妨げて延性が低下していた。本発明ではAl脱酸を弱脱酸としてsol.Al含有量を0.0070質量%以下とすることにより、鋼中のアルミナ介在物含有量を低減させることを可能にし、他の不純物元素の低減と相まって、本発明の極めて高い伸びを実現することが可能となる。sol.Al含有量は0.0050質量%以下であれば好ましい。0.0025質量%以下であればさらに好ましい。
Al弱脱酸前の溶存酸素量に対して、添加する脱酸用アルミニウムの量が少ないと、弱脱酸後の溶鋼中に溶存酸素が残存することとなる。このような溶鋼を凝固させると、凝固の過程で溶存酸素はデンドライト樹枝間の残存溶鋼中に捕捉されてFe酸化物系介在物となり、塑性変形を妨げて延性を低下させる原因となる。従って、有害な酸化物系介在物の残存量については鋼中のT.O含有量で代表することができ、T.Oが0.0030質量%以下であれば、他の不純物元素の低減と相まって、極めて高い伸びと同時に純鉄にも匹敵する低い耐力を得ることができる。
鋼中のT.Oを0.0030質量%以下とするためには、Al弱脱酸後の溶存酸素量(フリーO)を0.0030質量%以下とすればよい。このためには、Al弱脱酸後にsol.Alが若干残存している程度が良好であり、このとき凝固後の鋼中sol.Alは0.0003質量%以上となる。鋼中のT.Oを0.0020質量%以下とするとより好ましい。sol.Alを0.0010質量%以上とするとより好ましい。
本発明においては、Nbを0.04質量%以上及びTiを0.003質量%以上含有させることにより、鋼中に主としてNbCNと主としてTiNのそれぞれ独立した析出物を析出させ、固溶C、固溶Nを極限まで低減させることができる。特にNについては、鋼中N含有量を0.0025質量%以下まで低減した上で、Nbを添加して均一にNbを溶解させた後、溶製工程の最終段階でTiを添加することにより、固溶Nを必要なレベルまで低減することが可能となる。Nbのみの添加では、冷間圧延鋼材マトリックス中に僅かに固溶Nが残存してしまう。また、添加されたNbの大部分がMnと同様に固溶体として鋼中に存在し固溶硬化に寄与する。
一方、Nb含有量が0.5%を超えると鋼中にラーベス相が出現するので、Nb含有量上限を0.5質量%とする。Nb含有量は0.10質量%以下とするとより好ましい。またTi含有量が0.01質量%を超えると凝固過程でNbと競合して炭窒化物を生成し粗大なTiNb(CN)を生じて鋼の延性に好ましくないので、Ti含有量上限を0.01質量%とする。Ti含有量は0.007質量%以下であればより好ましい。
本発明の鋼は、必要に応じて耐食性の向上及び高強度化を目的に、Ni:0.01〜1質量%、Cu:0.01〜0.5%の一方又は両方を含有しても良い。とくに地震エネルギー吸収を目的とする熱延鋼材においては、NiあるいはCuを0.01質量%以上含有させることにより、目的とする耐食性の向上と高強度化を実現することができる。一方、NiあるはCu含有量が多すぎると耐食性向上効果が飽和するばかりでなく、加熱速度の再結晶温度上昇抑制効果がなくなるので、Niについては上限を1質量%、Cuについては上限を0.5質量%とした。
本発明の鋼は、上記のように高純度化を図ることによって、鋼中のアルミニウムの酸化物及びシリコンの酸化物の含有量が0.005容量%以下としている。このようにアルミニウムの酸化物及びシリコンの酸化物の含有量を少ないレベルとした結果として、他の不純物元素の低減と相まって、極めて高い伸びと同時に純鉄にも匹敵する低い耐力を実現することが可能となった。
本発明の鋼は、上述の通り純鉄に匹敵する高い延性を実現する一方、適度な強度を有している。これは、さきに述べたとおり低融点硫化物の生成を防ぐ目的で添加したMnがFeSとして消費された後も大部分が固溶体として鋼中に存在し固溶硬化に寄与する。加えて添加されたNbの大部分が同様に固溶体として鋼中に存在し固溶硬化に寄与するためである。
本発明の鋼は、鉄鋼の量産精錬設備である転炉を用いて精錬することができる。例えば純酸素上底吹き転炉を用いて脱炭精錬し、その後RH真空脱ガス装置などの真空脱ガス装置を用いて脱炭精錬を行い、その後成分調整を行って連続鋳造装置で鋳造し鋳片とすることができる。あるいは、電炉を経てLF(レードルファーネス)で精錬を行い、さらにRH真空脱ガス装置などの真空脱ガス装置を用いて脱炭精錬を行い、その後成分調整を行って連続鋳造装置で鋳造し鋳片とすることができる。このような量産精錬設備を用いることにより、本発明の鋼を安価に製造することができる。即ち、本発明の鋼を転炉精錬連続鋳造鋳片とすることにより、純鉄に匹敵する高い延性と適度な強度を有する鋼を安価に提供することが可能となる。
本発明の鋼は冷延鋼板とすることができる。連続鋳造鋳片を熱間圧延し、さらに冷間圧延した上で焼鈍を行う。このようにして製造した本発明の冷延鋼板は、純鉄に匹敵する高い延性と低い耐力及び適度な強度を有するので、アルミを凌ぐ優れた深しぼり性や穴広げ性を実現することができる。そのため、DI缶素材として優れた性質を実現することができ、缶蓋のEOE性についてもアルミ製缶蓋並みの良好な性能を実現することができる。
本発明の鋼は熱延鋼板とすることができる。連続鋳造鋳片を連続熱間圧延、あるいは厚板圧延して熱延鋼板とする。このようにして製造した本発明の熱延鋼板は、耐力が低く著しく延性が高いため、耐震性を必要とする建築鋼構造におけるエネルギー吸収部材として優れた性能を発揮することができる。
次に本発明鋼の製造方法について説明する。
通常の転炉精錬法において、転炉炉外予備精錬あるいは転炉を用いた予備脱P精錬と脱炭精錬を組み合わせることにより、あるいは電炉とLFを組み合わせた精錬を行うことにより、精錬終了時においてC濃度0.02質量%程度であり、不純物P、S、N濃度が本発明の範囲内に入るような高純度溶鋼を製造することができる。次にRH真空脱ガス装置等の真空脱ガス装置を用いて脱炭精錬を行うことにより、本発明のC濃度を実現する。
真空脱炭精錬の後、まずAl弱脱酸を行う。Al脱酸強度を精密に調整するためには、酸素濃淡電池等を用いて脱酸前の溶鋼中溶存酸素量を測定し、それに応じてアルミ添加量を定めると良い。Al脱酸は、脱酸後のsol.Alが0.0070質量%以下となるようにアルミを添加する。また、脱酸強度が弱すぎると溶鋼中に溶存酸素が残ってしまうので、溶鋼中フリーOが0.0030質量%以下となる程度までAl脱酸を行う必要がある。以上のようにAl弱脱酸を制御することにより、鋼中のsol.Alを0.0070質量%以下に抑えると同時に、T.Oを0.0030質量%以下の低濃度に抑えることが可能となる。Al弱脱酸後のsol.Alを0.0003質量%以上となるように脱酸強度を調整すれば、溶鋼中フリーOを0.0030質量%以下とし、結果として鋼中のT.Oを0.0030質量%以下に抑えることができる。
Al弱脱酸を終了した後、溶鋼中にまずNbを添加し、その後にTiを添加する。合金添加順序をこのように決めることにより、凝固後の冷却過程および熱間圧延過程さらにはその後の冷却過程で主としてNbCNと主としてTiNのそれぞれ独立した微細な析出物として生成するので、鋼の延性を阻害することなく固溶C、Nを固定することができる。
溶鋼精錬が完了した後、連続鋳造によって連続鋳造鋳片とする。連続鋳造鋳片を熱間圧延し、さらに冷間圧延した上で焼鈍を行うことにより、冷延鋼板とすることができる。冷延鋼板用の素材となる熱延鋼板の熱間圧延に当たっては熱延後のオーステナイト結晶粒を均一微細化することが好ましい。これによって冷延鋼板のフェライト粒を均一微細にでき本発明鋼の延性を損なうことなく強度を高めることができる。このために熱間圧延の条件は1100℃以上で30%以上の圧下を少なくとも1回以上与えた後、950℃以下の累積圧下量が60%以上とすることが好ましい。冷間圧延については通常の工業的な圧延方法でなんら問題はないが、連続焼鈍プロセスにおいては焼鈍温度を850℃〜900℃の範囲することが望ましい。また、連続鋳造鋳片を連続熱間圧延、あるいは厚板圧延を行うことにより、熱延鋼板とすることができる。厚板圧延あるいは熱延鋼板の圧延においては熱延後のオーステナイト結晶粒を均一微細化することが好ましい。これによって冷延鋼板のフェライト粒を均一微細にでき本発明鋼の延性を損なうことなく強度を高めることができる。このために熱間圧延の条件は1100℃以上で30%以上の圧下を少なくとも1回以上与えた後、950℃以下の累積圧下量が60%以上とすることが好ましい。
上底吹き転炉を用いた精錬に炉外精錬を組み合わせた精錬を行い、その後RH真空脱ガス装置を用いて脱炭精錬を行い、Al弱脱酸後にNbとTiをこの順序で添加し、スラブ連続鋳造装置を用いて鋳片とした。転炉吹き止め時点、真空脱ガス終了時、Al弱脱酸後、Nb・Ti添加後、鋳片段階でのそれぞれの成分実績を表1に示す。
Figure 2007177303
真空脱ガス処理後のCが0.0025質量%以下であり、Al脱酸後のsol.Alが0.0070質量%以下、溶鋼中フリーOが0.0030質量%以下となるように脱酸を行い、その後Nb添加、Tiをこの順で添加しているため、鋳片でのC:0.0025%以下、sol.Al:0.0070%以下、T.O:0.0030%以下を実現することができた。さらに炉外精錬との組み合わせとも相まって、Si:0.010%以下、Mn:0.5%以下、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、N:0.0025%以下とすることができた。また、鋳片中のアルミニウムの酸化物及びシリコンの酸化物の含有量は0.002容量%であった。
実施例1と同様の精錬・鋳造装置を用い、250mm厚みのスラブを鋳造した。Nb添加前の溶鋼成分及び鋳片成分を表2に示す。成分値のうち本発明範囲から外れる値についてはアンダーラインを付した。このスラブから連続熱延設備を用いて厚み6mmの熱延コイルに圧延し、さらにこの熱延コイルから冷間圧延設備を用いて0.8mmの冷延コイルに圧延し、連続焼鈍を行い、0.8%の調圧を行った。熱間圧延においては250mm厚スラブを1250℃に加熱後、粗圧延の初めの1、2パスが1150℃以上で1パスあたり30%の圧延を連続的に行い、続いて4パスの連続圧延によって45mmのバーとして仕上の7パス連続圧延にて6mmの熱延コイルに仕上げた。また、冷間圧延後の連続焼鈍は880℃で行った。
板厚0.8mmの冷延鋼板から長さ25mmの引張試験片を採取し、表2に示す機械試験を実施した。試験片3本の評価結果を平均し、結果を表2に示した。また、表2のNo.1の冷延鋼板を用い、r値測定のための試験片(長さ20mm)を採取し、表3に示すr値評価試験を実施した。試験片3本の評価結果を平均し、結果を表3に示した。
Figure 2007177303
Figure 2007177303
表2には開発段階で作成した材料のデータをまとめて示した。表2によって明らかなように本発明の成分範囲内に制御された試験材(本発明鋼)においてはNo.11を除いて低い強度レベルが確保されていることに対応して、60%以上の全伸び、良好な穴広げ性、おおよそ0.30以下の加工硬化指数(n値)が示されている。No.11においては強度が他の本発明鋼に比べて約100MPa強高いために伸び等の延性は低くなっているが、TSが400MPaを越える強度の鋼板としては驚異的に高い全伸び、良好な穴広げ性が確保されている。
それに対して比較鋼においては強度レベルにおいて本発明鋼と同レベルであっても全伸び等の延性が劣るか穴広げ性が充分ではない。さらには強度の高いものにおいては全伸び等の延性が一般のアルミキルド鋼のしめす50%程度であり、穴広げ性も劣る。これは本試作鋼が、本発明法の特長である極めて清浄でかつ微細で均一分散した介在物しか存在しておらず、加えて延性を阻害する微細析出物や固溶C、固溶Nがほとんど存在していないことによるものである。
電気炉とLFを組み合わせた精錬を行い、その後RH真空脱ガス装置を用いて脱炭精錬を行い、Al弱脱酸後にNbとTiをこの順序で添加し、スラブ連続鋳造装置を用いて厚み210mmの鋳片とした。成分を表4に示す。このスラブから厚板圧延設備を用いて25mm厚みの厚板に圧延した。この試作鋼材の圧延においては1200℃で加熱後に一般の普通鋼厚板と同様の圧延条件で圧延した。圧延の温度域は1150℃から1000℃の範囲で12パス(粗圧延6パス、仕上圧延6パス)の圧延を行い圧延後は空冷とした。
板厚25mmの厚板から25×50mmのJIS5号の引張試験片を採取し、表5に示す引張試験を実施した。3本の試験片の評価結果を平均し、結果を表5に示す。また、シャルピー試験用として10×10×55mmの試験片を採取し、表6に示すシャルピー試験を実施した。3本の試験片の評価結果を平均し、結果を表6に示す。
Figure 2007177303
Figure 2007177303
Figure 2007177303
表4に示した試作鋼は地震エネルギー吸収を目的とした高延性で延性破壊に至るまでのエネルギー吸収量の極めて高い材料を目的としているが、表5および表6に示されているように通常のアルミキルド鋼で製造される同目的の鋼板に比べて著しく高い全伸び、および著しく高いシャルピー吸収エネルギー値を示している。これは本試作鋼が、本発明法の特長である極めて清浄でかつ微細で均一分散した介在物しか存在しておらず、加えて延性を阻害する微細析出物や固溶C、固溶Nがほとんど存在していないことによるものである。

Claims (10)

  1. 質量%で、C:0.0025%以下、Si:0.010%以下、Mn:0.5%以下、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、sol.Al:0.0070%以下、Nb:0.04〜0.5%、Ti:0.003〜0.006%、N:0.0025%以下、T.O:0.0030%以下であり、残部Fe及び不可避不純物からなることを特徴とする延性に優れた鋼。
  2. sol.Al:0003〜0.0070質量%であることを特徴とする請求項1に記載の延性に優れた鋼。
  3. さらに質量%で、Ni:0.01〜1%、Cu:0.01〜0.5%の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の延性に優れた鋼。
  4. アルミニウムの酸化物及びシリコンの酸化物の含有量が0.005容量%以下あることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
  5. 転炉精錬連続鋳造鋳片であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
  6. 電炉−LF精錬連続鋳造鋳片であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
  7. 冷延鋼板であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
  8. 熱間圧延鋼板であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の延性に優れた鋼。
  9. 転炉精錬を行い、その後真空脱ガス処理によってC:0.0025質量%以下まで脱炭を行い、Al脱酸によってsol.Alが0.0070質量%以下、溶鋼中フリーOが0.0030質量%以下となるように脱酸を行い、さらにNb添加、Ti添加の順で合金を添加することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の延性に優れた鋼の製造方法。
  10. 電気炉及びLF精錬を行い、その後真空脱ガス処理によってC:0.0025質量%以下まで脱炭を行い、Al脱酸によってsol.Alが0.0070質量%以下、溶鋼中フリーOが0.0030質量%以下となるように脱酸を行い、さらにNb添加、Ti添加の順で合金を添加することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の延性に優れた鋼の製造方法。
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