JP2007139536A - 二次電池の入出力可能電力推定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】時間領域に変換した電池モデル(数3式)を用いて所定時間充電した後の端子電圧を推定し、その値が最大可能電圧Vmaxとなる最大入力電流Iin_maxを算出し、最大入力電流Iin_maxと最大可能電圧Vmaxとの積を、所定時間持続できる最大入力可能電力Pinとする。同様に所定時間放電した後の端子電圧を推定し、その値が最小可能電圧Vminとなる最大出力電流Iout_maxを算出し、最大出力電流Iout_maxと最小可能電圧Vminとの積を、所定時間持続できる最大出力可能電力Poutとする。
【選択図】図1
Description
また、従来技術で推定している入出力可能電力の推定値は、瞬時充放電で最大可能電圧Vmaxや最小可能電圧Vminを超えない最大入出力可能電力の推定値である。つまり、所定時間充放電することによる電池状態の変化が考慮されていないので、推定された入出力可能電力は瞬間的なものであり、その状態が所定時間持続できるものではない。したがって、例えば電気自動車において上記のような最大入出力可能電力の推定値をもとに最大出力可能電力で放電(加速)を行うと、瞬間的に最小可能電圧Vminに到達してしまい、その後は電池状態の変化に応じて出力可能電力が減少するので、急激に加速度が低下し、車両の加速性能が悪化するといった問題が生じる。
本発明は上記のごとき問題を解決するためになされたものであり、所定時間のあいだ持続出来る入出力可能電力を推定することの出来る二次電池の入出力可能電力推定装置を提供することを目的とする。
なお、本発明における所定時間tとしては、適応デジタルフィルタで推定した各パラメータや開路電圧V0等の電池の内部状態が変化しない程度の時間、つまり一制御周期(次の演算時までの時間、例えば数十〜数百ms)乃至数回の制御周期程度の比較的短い時間を想定しており、次の演算時において改めて次の時点における最大入力可能電力Pinや最大出力可能電力Poutを演算する。
同様に、入力可能電流も少なくとも想定している所定時間の間は一定の入力電流を維持可能であり、充電と放電のバランスを頻繁に変更すること無く効率良く充電できるという効果がある。
図2において、10は二次電池(単に電池とも言う)、20はモータ等の負荷、30は電池の入出力可能電力を推定するバッテリーコントローラ(電子制御ユニット)で、プログラムを演算するCPUやプログラムを記憶したROMや演算結果を記憶するRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成されており、二次電池10の動作を管理する。40は電池から充放電される電流を検出する電流計、50は電池の端子電圧を検出する電圧計であり、それぞれバッテリーコントローラ30に接続される。上記のバッテリーコントローラ30は前記図1のパラメータθ(k)推定手段1、開路電圧V0(k)演算手段2、入力可能電力推定手段3および出力可能電力推定手段4の部分に相当する。また、電流計40は電流I(k)検出手段5に、電圧計50は端子電圧V(k)検出手段6に、それぞれ相当する。
まず、本実施例で用いる「電池モデル」を説明する。
図3は、本実施例における二次電池の等価回路モデルを示す図である。この等価回路モデルは、正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。
図3において、モデル入力は電流I[A](正値:充電、負値:放電)、モデル出力は端子電圧V[V]であり、R1[Ω]は電荷移動抵抗、R2[Ω]は純抵抗、C1は電気二重層容量、V0[V]は開路電圧(起電力または開放電圧とも言う)である。
この電池モデルは、下記(数5)式およびそれを変形した(数6)式(=数2式)で表現できる。なお、sはラプラス演算子である。
開路電圧V0は、電流Iに可変な効率hを乗じた値を、ある初期状態から積分したものと考えれば、(数7)式で書ける。
但し、y=V2、ωT=[V3,I3,I2,I1]、θT=[−T1,K・T2,K,h]である。
本実施例では、単純な「最小二乗法による適応フィルタ」の論理的な欠点(一度推定値が収束すると、その後パラメータが変化しても再度正確な推定ができないこと)を改善した「両限トレースゲイン方式」を用いる。
(数14)式を前提に未知パラメータベクトルθを推定するためのパラメータ推定アルゴリズムは(数15)式で示すようになる。但し、k時点のパラメータ推定値をθ(k)とする。
以上が、電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出である。
ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)を計測する。
ステップS20では、二次電池の遮断リレーのオフかオンかの判断をする。
バッテリーコントローラ30は二次電池の遮断リレーの制御も行っており、リレー遮断時(電流I=0)はステップS30へ進む。リレー締結時はステップS40へ進む。 ステップS30では、端子電圧V(k)を端子電圧初期値V_iniとして記憶する。
ただし、 △V(k)=V(k)−V_ini
これは、適応デジタルフィルタ内の推定パラメータの初期値を約0としているので、推定演算開始時に推定パラメータが発散しないように、入力を全て0とするためである。リレー遮断時はステップS30を通るので、I=0かつ△V(k)=0なので、推定パラメータは初期状態のままである。
この際、(数15)式のパラメータ推定アルゴリズムの推定精度を良くするために、観測ノイズを低減するようにローパスフィルタGlp(s)の応答性を遅く設定する。ただし、電池の応答特性よりは速くする。(数16)式の時定数pは、Glp(s)の応答性を決める定数である。
ただし、y=V2、ωT=[V3,I3,I2,I1]、θT=[−T1,K・T2,K,h]である。
ステップS70では、ステップS60で算出したパラメータ推定値θ(k)の中からT1,K・T2,Kと、(数16)式で算出したI1〜I2およびV1〜V2を(数17)式に代入する。
ステップS80では、ステップS70で算出した△V0(k)に開路電圧初期値すなわち端子電圧初期値V_iniを加算して、開路電圧推定値V0(k)を(数18)式から算出する。
なお、図4のVLはSOC=0%に、VHはSOC=100%に相当する開路電圧である。また、Vmaxは最大可能電圧(過充電直前の電池の端子電圧)、Vminは最小可能電圧(過放電直前の電池の端子電圧)であり、電池保護のためそれぞれ当該電池に応じて予め定められた上限値および下限値である。
次に、ステップS110では、ステップS100で算出した最大入力電流Iin_maxと最大出力電流Iout_maxを用いて、(数20)式から所定時間tのあいだ持続できる最大入力可能電力Pinと最大出力可能電力Poutを求める。
図8は、前記従来例における入力可能電力の推定値を説明するための図であり、パルス充電を行った場合の波形図である。
これに対して、第1実施例においては、図9に示すように、t秒間持続できる最大入力電流、つまりt秒間継続して充電しても端子電圧が最大可能電圧(上限電圧)Vmaxに達しない電流値を最大入力電流Iin_maxとして算出しているので、充電によって端子電圧が最大可能電圧(上限電圧)Vmaxを超えてしまうおそれがない。したがって少なくとも想定している所定時間の間は一定の入力電流を維持可能であり、充電と放電のバランスを頻繁に変更すること無く効率良く充電できる効果がある。
これに対して、第1実施例においては、t秒間持続出来る最大出力電流、つまりt秒間継続して放電しても端子電圧が最小可能電圧(下限電圧)Vmin以下にならない電流値を最大出力電流Iout_maxとして算出しているので、放電によって端子電圧が最小可能電圧(下限電圧)Vmin以下になるおそれがない。つまり、図10に示すように、t秒間持続できる出力可能電流を求めているので、少なくとも想定している所定時間の間は一定の出力電流を維持可能であり、その結果、加速度の急激な低下が回避できる効果がある。
図6および図7は、第2実施例における演算のフローチャートである。
図6において、ステップS10〜ステップS90は、前記図5と同じである。
まず、電池モデルの前記(数6)式を変形した(数21)式において、電流変化(△I)に対する直達項だけの電圧変化(△V)に着目すれば、(数22)式を得る。入力可能電力推定値を算出するためには、最大可能電圧Vmaxに到達する瞬間的な電流値が必要であるから、直達項に着目した上記(数22)式を用いる。(数22)式において、最大可能電圧VmaxとステップS80で算出した開路電圧推定値V0(k)の差が△Vであり、ステップS60で算出したパラメータ推定値θ(k)の中から推定値K・T2とT1を(数22)式に代入し、電流ΔIを算出する。そして(数23)式に示すように、求めたΔIに最大可能電圧Vmaxを乗算して入力可能電力Pinの推定値を算出する。
なお、(数23)式、(数24)式において、K^等の「^」は推定値を意味する。
ステップS170では、(数29)式を用いて電流値I(k)を補正する。これは一定率(例えば0.9=90%)を乗じて、電流値I(k)が減少するように補正するものである。
次に、ステップS180では、次回演算に必要な数値を保存して、今回の演算を終了する。
以上を第2実施例の動作の説明とする。
また、指数関数を含む方程式を解くことなく容易に演算することが可能なので、演算負荷が軽減される、という利点もある。
第3実施例は、上記第2実施例の図7のステップS170の内容を変更したものである。
図7のステップS170において、充電の場合には、N演算回先の電圧推定値V(k+N)が最大可能電圧Vmaxを超える分に相当する電流値〔V(k+N)−Vmax〕/Kを算出し、(数30)式(=数4式)に示すように、その超える分に相当する電流値だけ差し引いて、電流値I(k)を補正し、補正した電流値I(k)を最大入力電流Iin_maxとする。
なお、ステップS170で補正した後は、図7に示すように、ステップS140、150のループへ戻って補正後の電流値が範囲外になっていないことを確認してもよいが、補正後はステップS170から直ちにステップS180へ行くようにしてもよい。
3…入力可能電力推定手段 4…出力可能電力推定手段
5…電流I(k)検出手段 6…端子電圧V(k)検出手段
10…二次電池 20…負荷
30…バッテリーコントローラ 40…電流計
50…電圧計
Claims (5)
- 二次電池の電流Iを検出する手段と、
二次電池の端子電圧Vを検出する手段と、
(数1)式に示す電池モデルを用いた適応デジタルフィルタに、前記計測した電流Iと端子電圧Vとを入力し、前記(数1)式中のパラメータを一括推定するパラメータ推定手段と、
前記電流Iおよび端子電圧Vと前記パラメータ推定値とを前記(数1)式に代入して開路電圧V0を算出する開路電圧演算手段と、を備え、さらに、
前記(数1)式を時間領域に変換した電池モデルに基づき、前記推定したパラメータと開路電圧V0を用いて、所定時間t充電した後の端子電圧を推定し、その推定値が最大可能電圧Vmaxとなる最大入力電流Iin_maxを算出し、該最大入力電流Iin_maxと予め定められた最大可能電圧Vmaxとの積を求め、この値を前記所定時間t持続できる最大入力可能電力Pinとする入力可能電力推定手段と、
前記(数1)式を時間領域に変換した電池モデルに基づき、前記推定したパラメータと開路電圧V0を用いて、所定時間t放電した後の端子電圧を推定し、その推定値が最小可能電圧Vminとなる最大出力電流Iout_maxを算出し、該最大出力電流Iout_maxと予め定められた最小可能電圧Vminとの積を求め、この値を前記所定時間t持続できる最大出力可能電力Poutとする出力可能電力推定手段と、の少なくとも一方を備えたことを特徴とする二次電池の入出力可能電力推定装置。
- 前記(数1)式を時間領域に変換した電池モデル前記(数3)式で算出される所定時間t後の端子電圧の推定値が予め定められた最大可能電圧Vmaxまたは最小可能電圧Vminに一致する方程式を立て、これを電流Iについて解くことで前記最大入力電流Iin_maxまたは最大出力電流Iout_maxを求めることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の入出力可能電力推定装置。
- 前記の推定した所定時間t後の端子電圧の推定値が、最大可能電圧Vmaxまたは最小可能電圧Vminの範囲を超えた場合には、範囲内になるまで電流Iに1以下の所定比率を順次乗算して補正した値を前記最大入力電流Iin_maxまたは最大出力電流Iout_maxとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二次電池の入出力可能電力推定装置。
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