JP3852372B2 - 二次電池の充電率推定装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池の充電率(SOC)を推定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
二次電池の充電率SOC(充電状態とも言う)は開路電圧V0(通電遮断時の電池端子電圧であり、起電力、開放電圧とも言う)と相関があるので、開路電圧V0を求めれば充電率を推定することが出来る。しかし、二次電池の端子電圧は、通電を遮断(充放電を終了)した後も安定するまでに時間を要するので、正確な開路電圧V0を求めるには、充放電を終了してから所定の時間が必要である。したがって充放電中や充放電直後では、正確な開路電圧V0を求めることが出来ないので、上記の方法で充電率SOCを求めることが出来ない。そのため、従来は、下記のような方法を用いて開路電圧V0を推定している。
二次電池の充電率(SOC)を推定する技術に関する公知例としては、「論文“適応デジタルフィルタを用いた鉛電池の開路電圧と残存容量の推定”四国総研、四国電力、湯浅電池 T.IEEE Japan Vol.112-C,No.4 1992」がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のごとき従来例においては、実際の電池の物理特性とは全く異なる「非回帰型の電池モデル(出力値が入力値の現在値および過去値だけで決るモデル)」に「適応デジタルフィルタ(逐次型のモデルパラメータ同定アルゴリズム)」を用いて開路電圧を算出し、この値から充電率SOCを算出している。そのため、実際の電池特性(入力:電流、出力:電圧)に応用した場合、電池特性によっては推定演算が全く収束しなかったり、真値に収束しないため、正確な充電率SOCを推定することが困難である、という問題があった。
【0004】
本発明は上記のごとき従来技術の問題を解決するためになされたものであり、充電率SOCおよびその他のパラメータを正確に推定することの出来る二次電池の充電率推定装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては特許請求の範囲に記載するように構成している。すなわち、請求項1においては、二次電池の電池モデルを(数1)式に示すように定義し、開路電圧V0を(数2)式で近似することで(数1)式を下記(数3)式とし、(数3)式と等価な(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定する適応デジタルフィルタ演算手段と、これらの推定値を(数1)式と等価な(数5)式に代入してGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用とする開路電圧演算手段と、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定手段とを備え、かつ、上記二次電池の内部抵抗値に相当する定常項推定値b0/a0に応じて、ローパスフィルタGlp(s)の応答性、またはローパスフィルタGlp(s)の応答性と適応デジタルフィルタの推定感度とを補正するように構成したものである。例えば、ローパスフィルタGlp(s)の応答性は(数24)式のpに応じて変化し、適応デジタルフィルタ(パラメータ推定アルゴリズム)の推定感度は(数23)式のλ3(k)に応じて変化するので、それらの値を調整することにより、応答性や推定感度を補正することが出来る。
【0006】
【発明の効果】
本発明においては、二次電池の電流Iと端子電圧Vの関係を示す(数1)式を、(数4)式のように近似することで開路電圧V0(オフセット項)を含まない。そのため通常の適応デジタルフィルタを連続時間系のまま適用することが可能になるので、未知パラメータを一括推定することができ、推定した未知パラメータを(数5)式に代入することで、開路電圧V0の推定値の代用としてGlp(s)・V0を容易に算出できる。そして開路電圧V0と充電率SOCの関係(図5)は、温度や劣化度に影響されにくく一定の関係があるため、これを予め記憶しておけば開路電圧V0の推定値から充電率SOCを正確かつ容易に推定できる。
さらに、本発明においては、定常項推定値b0/a0(内部抵抗に相当)を電圧変化の大きさの目安にし、定常項推定値b0/a0の値に応じて、ローパスフィルタの応答性、またはローパスフィルタの応答性と適応デジタルフィルタの推定感度とを補正する構成であるために、電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を良好にできる、という特別の効果がある。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例を機能ブロックで表した図である。図1において、1は電池の端子電圧を検出する端子電圧V(k)検出手段、2は電池の電流を検出する電流I(k)検出手段、3は前処理フィルタ演算手段、4は推定アルゴリズム演算手段〔パラメータθ(k)を推定〕、5は開路電圧演算手段〔V0(k)を演算〕、6は開路電圧から充電率を演算する充電率推定手段、7は調整手段である。前処理フィルタ演算手段3は後記のローパスフィルタやバンドパスフィルタからなる。また、調整手段7は推定アルゴリズム演算手段4で求めたK(k−1)に応じてp(k)やλ3(k)を補正する機能(詳細後述)を有する。なお、請求項に記載の適応デジタルフィルタ演算手段は上記前処理フィルタ演算手段3と推定アルゴリズム演算手段4を合わせた部分に相当する。
【0008】
図2は、実施例の具体的な構成を示すブロック図である。この実施例は、二次電池でモータ等の負荷を駆動したり、モータの回生電力で二次電池を充電するシステムに、二次電池の充電率推定装置を設けた例を示す。
図2において、10は二次電池(単に電池ともいう)、20はモータ等の負荷、30は電池の充電状態を推定する電子制御ユニットで、プログラムを演算するCPUやプログラムを記憶したROMや演算結果を記憶するRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。40は電池から充放電される電流を検出する電流計、50は電池の端子電圧を検出する電圧計、60は電池の温度を検出する温度計であり、それぞれ電子制御ユニット30に接続される。上記の電子制御ユニット30は前記図1の前処理フィルタ演算手段3、推定アルゴリズム演算手段4、開路電圧演算手段5、充電率推定手段6および調整手段7の部分に相当する。また、電流計40は電流I(k)検出手段2に、電圧計50は端子電圧V(k)検出手段1に、それぞれ相当する。
【0009】
本発明は、通電中の二次電池の端子電圧Vと電流Iの計測データに、適応デジタルフィルタを用いて開路電圧V0を推定し、公知の開路電圧V0と充電率SOCの関係から充電率を推定する装置であり、二次電池の電池モデルを前記請求項1に記載の(数1)式に示すように定義し、開路電圧V0を前記(数2)式で近似することで(数1)式を前記(数3)式とし、(数3)式と等価な前記(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定し、これらの推定値を(数1)式と等価な前記(数5)式に代入してGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用として、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定するものである。
【0010】
上記の内容を具体的に説明すると次のようになる。
まず、本実施例で用いる「電池モデル」を説明する。図3は、二次電池の等価回路モデルを示す図であり、二次電池の電池モデルは下記(数13)式で示される。
【0011】
【数13】
(数13)式において、モデル入力は電流I[A](正値は充電、負値は放電)、モデル出力は端子電圧V[V]、R1〔Ω]は電荷移動抵抗、R2[Ω]は純抵抗、C1[F]は電気二重層容量、V0[V]は開路電圧である。なお、sはラプラス演算子である。本モデルは、正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。このように本実施例においては、電池モデルの次数を1次にした構成を例として説明する。
【0012】
上記(数13)式の電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出を最初に説明する。
(数13)式を変形すると(数14)式(=数7)になる。
【0013】
【数14】
ただし、T1=C1・R1、 T2=C1・R1・R2/(R1+R2)
K=R1+R2
上記のように、電池パラメータK=R1+R2であって、これは電池モデルの内部抵抗推定値に相当する。
開路電圧V0は、電流Iに可変な効率dを乗じたものを、ある初期状態から積分したものと考えれば、(数15)式(=数2=数8)で書ける。
【0014】
【数15】
(数15)式を(数14)式に代入すれば(数16)式になり、整理すれば(数17)式(=数9)になる。
【0015】
【数16】
【0016】
【数17】
安定なローパスフィルタGlp(s)を(数17)式の両辺に乗じて、整理すれば(数18)式になる。
【0017】
【数18】
実際に計測可能な電流Iや端子電圧Vに、ローパスフィルタやバンドパスフィルタを処理した値を、下記(数19)式(=数12)のように定義する。
【0018】
【数19】
なお、Glp(s)はローパスフィルタ、s・Glp(s)やs2・Glp(s)はバンドパスフィルタである。
【0019】
上記変数を用いて(数18)式を書き直せば(数20)式になる。
【0020】
【数20】
更に変形すれば(数21)式になる。
【0021】
【数21】
(数21)式は、計測可能な値と未知パラメータの積和式になっているので、一般的な適応デジタルフィルタの標準形(数22)式と一致する。
【0022】
【数22】
ただし、y=V2、 ωT=[V3,I3,I2,I1]
θT=[−T1,K・T2,K,d]
従って、電流Iと端子電圧Vにフィルタ処理した信号を、適応デジタルフィルタ演算に用いることで、未知パラメータベクトルθを推定する。本実施例では、単純な「最小二乗法による適応デジタルフィルタ」の論理的な欠点(一度推定値が収束すると、その後パラメータが変化しても再度正確な推定ができないこと)を改善した「両限トレースゲイン方式」を用いる。
(数22)式を前提に未知パラメータベクトルθを推定するためのパラメータ推定アルゴリズムは下記(数23)式となる。ただし、k時点のパラメータ推定値をθ(k)とする。
【0023】
【数23】
ただし、λ1、λ3(k)、γU、γLは初期設定値で、0<λ1<1、0<λ3(k)<∞とする。P(0)は十分大きな値、θ(0)は非ゼロな十分小さな値を初期値とする。trace{P}は行列Pのトレースを意味する。
或る観測ノイズの環境下で推定精度を良好に保つには、適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数であるλ3(k)(調整ゲイン)には上限がある。そのため、調整ゲインを予め大きく設定しておくのは、上限までのマージンが小さくなるので、観測ノイズの影響を受けて推定精度が悪化するため得策でない。 また、ローパスフィルタGlp(s)の設定に関しては、(数23)式のパラメータ推定アルゴリズムの推定精度を良くするために、観測ノイズを低減するようローパスフィルタの応答性(カットオフ周波数特性)を適切に設定するけれども、電池の応答特性よりは速くする。以上が、電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出である。
【0024】
なお、上記の説明では、電池モデルの次数を1次にした場合を例として説明したので、内部抵抗推定値K=R1+R2としたが、一般式の場合には、内部抵抗推定値はb0/a0となる。すなわち、前記(数6)式において、a0、b0は多項式A(s)、B(s)の定常状態時の値を示す。定常状態ではラブラス演算子s=0と考えられるので、前記(数1)式は、下式のように変形することが出来る。
V=(b0/a0)I+V0/a0
また、電池モデルの次数を1次にした場合において、一般式の(数1)式に相当する(数7)式は、s=0とすれば下式のようになる。
V=K・I+V0
上記両式を比較すると、K=b0/a0となる。前記(数14)式で説明したように、電池パラメータK=R1+R2であって、これは電池モデルの内部抵抗推定値に相当するので、一般式の場合における内部抵抗推定値はb0/a0となることが判る。
【0025】
次に、図6は、電子制御ユニット30のマイコンが行う処理のフローチャートである。この実施例は電池モデルの次数を1次にしたものである。なお、図6のルーチンは一定周期T0毎に実施される。例えば、I(k)は今回の値、I(k−1)は1回前の値を意味する。
まず、ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)を計測する。
ステップS20では、二次電池の遮断リレーの判断する。電子制御ユニット30は二次電池の遮断リレーの制御も行っており、リレー遮断時(電流I=0)はステップS30へ進む。リレー締結時はステップS40へ進む。
ステップS30では、端子電圧V(k)を端子電圧初期値V_iniとして記憶する。
ステップS40では、端子電圧差分値△V(k)を算出する。ただし、△V(k)=V(k)−V_ini
これは、適応デジタルフィルタ内の推定パラメータの初期値を約0としているので、推定演算開始時に推定パラメータが発散しないように、入力を全て0とするためである。リレー遮断時はステップS30を通るので、I=0かつ△V(k)=0なので、推定パラメータは初期状態のままである。
【0026】
ステップS50では、内部抵抗推定値の大きさを判定する。つまりパラメータ逐次推定演算である後記ステップS100の前段として内部抵抗推定値を判定するため、前回の内部抵抗推定値K(k−1)を用いて大きさの判定を行う。K(k−1)が第1の所定値より大きい場合はステップS70へ進む。その他の場合はステップS60へ進む。ただし、ステップS50の判定で用いる第1の所定値は、ステップS60で用いる第2の所定値よりも大きい値にする。なお、ハンチングを防ぐため所定時間継続した場合に判定をしても良い。
【0027】
次に、ステップS60では、再び内部抵抗推定値の大きさを判定する。K(k−1)が第2の所定値より大きい場合はステップS80へ進む。その他の場合、ステップS90へ進む。なお、ハンチングを防ぐため所定時間継続した場合に判定をしても良い。
上記のように2段階の判定を行うことにより、内部抵抗推定値K(k−1)が第1の所定値よりも大きい場合にはステップS70へ、第1の所定値と第2の所定値の間の値の場合はステップS80へ、第2の所定値よりも小さい場合はステップS90へ進むことになる。ただし、第1の所定値>第2の所定値である。
【0028】
ここで、図4は、内部抵抗に対するローパスフィルタ応答性と調整ゲイン感度の相関を示す図である。内部抵抗が大きければ相対的なノイズ成分は小さいため、ローパスフィルタの応答性を速めて調整ゲインを小さく(鈍感方向に)補正する。内部抵抗が小さければ相対的なノイズ成分は大きいため、ローパスフィルタの応答性を遅くし調整ゲインを大きく(敏感方向に)補正する。
ステップS70では、内部抵抗が充分大きいため端子電圧差分値△V(k)も大きく、ノイズ成分は相対的に小さいと判断する。したがって図4を参考にして、後述のステップS100における(数24)式の、ローパスフィルタGlp(s)の応答性を速めに設定し、(数23)式のパラメータ推定アルゴリズムの調整ゲインλ3(k)を小さく(鈍感方向に)補正する。なお、(数24)式のpはGlp(s)の応答性を決める定数である。
ステップS80では、内部抵抗が中程度(通常値)なため、端子電圧差分値△V(k)も中程度で、ノイズ成分は相対的に中程度と判断する。図4を参考にしてローパスフィルタGlp(s)の応答性を中程度に設定し、(数23)式のパラメータ推定アルゴリズムの調整ゲインλ3(k)を中程度に補正する。なお、パラメータ推定開始時は内部抵抗推定値が収束する前なので、ステップS80の設定とする。
ステップS90では、内部抵抗が小さいため、端子電圧差分値△V(k)も小さく、ノイズ成分は相対的に大きいと判断する。図4を参考にしてローパスフィルタGlp(s)の応答性を遅めに設定し、(数23)式のパラメータ推定アルゴリズムの調整ゲインλ3(k)を大きく(敏感方向に)補正する。
【0029】
ステップS100では、電流I(k)と端子電圧差分値△V(k)に、(数19)式に基づきローパスフィルタGlp(s)、バンドパスフィルタsGlp(s)及びs2Glp(s)のフィルタ処理を施し、I1、I2、I3、V2、V3を算出する。ここで、下記(数24)式のpは、Glp(s)の応答性を決める定数である。
【0030】
【数24】
実際のフィルタ処理演算は、連続時間系で記述された伝達関数をタスティン近似等で離散時間化し、下記(数25)式に示すような漸化式でフィルタ処理を行う。係数α0〜α3、β1〜β3はGlp(s)を離散時間化した際の定数である。
【0031】
【数25】
ステップS110では、ステップS100で算出したI1(k)、I2(k)、I3(k)、V2(k)、V3(k)を(数23)式に代入する。そしてパラメータ推定アルゴリズム(適応デジタルフィルタ演算)である(数23)式を行い、パラメータ推定値θ(k)を算出する。
ただし、y=V2、 ωT=[V3,I3,I2,I1]、
θT=[−T1,K・T2,K,d]
ステップS120では、ステップS110で算出したパラメータ推定値θ(k)の中からT1、K・T2、Kを用い、前記(数14)式と等価な下記(数26)式に基づきGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用とする。開路電圧V0は変化が緩やかなので、Glp(s)・V0で代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V0(k)である。
【0032】
【数26】
ステップS130では、ステップS120で算出した△V0(k)はパラメータ推定アルゴリズム開始時からの開路電圧の変化分であるから、開路電圧初期値すなわち端子電圧初期値V_iniを加算して開路電圧推定値V0(k)を(数27)式で算出する。
【0033】
【数27】
ステップS140では、図5に示す開路電圧と充電率の相関マップを用いて、ステップS130で算出したV0(k)から充電率SOC(k)を算出する。
なお、図5のVLはSOC=0%に、VHはSOC=100%に相当する開路電圧である。
ステップS150では、次回演算に必要な数値を保存して、今回演算を終了する。
【0034】
なお、ステップS50およびステップS60においては、判定の際に内部抵抗推定値K(k−1)を用いているが、推定演算開始から推定値が収束する前は、電流I(k)と電圧差分値△V(k)から内部抵抗の目安として△V(k)/I(k)で代用しても良い。また、フィルタ処理後の電流I1(k−1)とフィルタ処理後の電圧差分値V1(k−1)から、内部抵抗の目安としてV1(k−1)/I1(k−1)で代用しても良い。
ここで(k−1)なのは、ステップS50およびステップS60がステップS100におけるフィルタ処理前なので、前回のステップS100で演算した値を用いるためである。また、(数24)式でV1=Glp(s)・△Vとし、V1(k−1)は差分が含まれているものと定義しているので、電圧差分値はV1(k−1)としている。
上記のごとき値を内部抵抗の目安として用いることにより、推定演算開始から推定値が収束する前においても電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を良好にできる。
【0035】
次に、本出願人が先に出願した特願2001−384606号(未公開)との関係について説明する。本発明は上記先行出願をさらに改良したものである。 上記先行出願においては、通電中の二次電池(鉛蓄電池やリチウムイオン電池等の充放電可能な電池)の端子電圧と電流に、適応デジタルフィルタを用いて開路電圧(通電遮断時の端子電圧、起電力)を推定(パラメータ同定)し、予め計測された電池の充電率と開路電圧の関係に、前記開路電圧推定値を照合して、充電率を推定する方法である。
具体的には、端子電圧Vと電流Iの関係を、開路電圧V0および過渡項T1、およびK・T2、内部抵抗Kを用いて、(数28)式(=数7)の電池モデルで表す。
【0036】
【数28】
(数28)式に示す電池モデルにおいて、開路電圧V0は初期状態からの電流Iの積分値に比例すると考えて、(数29)式(=数2)のように仮定する。
【0037】
【数29】
(数29)式を(数28)式に代入して変形すれば(数30)式(=数9)になり、オフセット項である開路電圧V0を含まない。
【0038】
【数30】
(数30)式を変形し、両辺に安定なローパスフィルタGlp(s)を乗じれば、下記(数31)式になる。
【0039】
【数31】
二次電池の電流Iと端子電圧Vの計測データで、(数31)式に公知の適応デジタルフィルタ演算(逐次型のモデルパラメータ同定アルゴリズム)を行い、式中のパラメータ(変数d、過渡項T1およびK・T、内部抵抗K)を一括推定することを特徴とする。
推定したパラメータ(過渡項T1およびK・T2、内部抵抗K)と電流Iと端子電圧Vを、(数28)式と等価な下記(数32)式に代入し、Glp(s)・V0を開路電圧V0として算出する。なお、sはラプラス演算子、Glp(s)は二次以上の安定な口ーパスフィルタである。
【0040】
【数32】
適応デジタルフィルタでのパラメータ推定アルゴリズムにおいて、推定精度が観測ノイズの影響を受けないように、観測ノイズを除去するためにはGlp(s)の応答性をかなり遅く設定する必要がある。ただし、電池の応答特性(時定数T1の概略値は既知)よりも速い特性でないと、電池モデルの各パラメータを精度良く推定できないので、電池の応答特性よりは速く設定する。なお、上記の数式中で過渡項K・T2を2つの変数の積で表記しているが、K・T2で1つの変数である。
【0041】
上記の先行出願では、リアルタイムな電流と電圧の計測値から観測ノイズの程度を判断するのは困難なので、ノイズの最大値を予め考慮してローパスフィルタGlp(s)の応答性を一定値に設定する必要があり、それに合わせて適応デジタルフィルタでのパラメータ推定アルゴリズムに用いる調整ゲインも一定値に設定している。適応デジタルフィルタヘの入力の振幅が小さい場合は、観測ノイズに備えてフィルタ処理しているため、信号成分が更に小さくなってしまい、推定精度が悪化する。しかし、上記先行出願では、調整ゲインを一定値に設定するという構成になっていたため、適応デジタルフィルタの入力である電流と電圧の振幅が継続して小さい場合は、調整ゲインが不足して推定パラメータの精度が悪化する可能性がある。なお、或る観測ノイズの環境下で推定精度を良好に保つには調整ゲインには上限がある。そのため、調整ゲインを予め大きく設定しておくのは、上限までのマージンが小さくなるので、観測ノイズの影響を受けて推定精度が悪化するため得策でない。
【0042】
また、電流(または電流の変化率)の振幅が所定時間以上継続して所定値より小さい場合に、推定アルゴリズム演算手段におけるパラメータ推定アルゴリズムの調整ゲインを感度大に補正することも考えられるが、ローパスフィルタGlp(s)の応答性を一定に設定した場合には、電流変化が小さくても内部抵抗が大きく電圧変化が大きい場合であっても、ローパスフィルタの応答性が一定であるがために不必要に信号がなまされてしまい、パラメータの推定精度が悪化するという問題が残る。なお、電池の内部抵抗値は温度に応じて変化する特性がある。
【0043】
また、電流変化に加えて電圧変化の振幅も小さい場合は、適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を補正する構成も考えらるが、電池充放電中における電流と電圧は連続的に変化するため、その大小を判定して適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を補正するのは現実性に乏しい。
【0044】
本発明は、上記の先行出願と同様の効果が得られる他に、次のごとき特別の効果が得られる。すなわち、請求項1においては、定常項推定値b0/a0(内部抵抗に相当)で電圧変化の大きさの目安にし、定常項推定値b0/a0の値に応じて、ローパスフィルタの応答性のみ、またはローパスフィルタの応答性と適応デジタルフィルタの推定感度とを補正する構成であるために、電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を良好にできるという効果がある。
【0045】
また、請求項2、請求項3においては、電池モデルを1次とすることにより、適応デジタルフィルタにおけるパラメータ推定アルゴリズムの演算を容易に行うことが出来る。
また、請求項4、請求項5のように、定常項推定値が通常より大の範囲、通常値、通常値より小の範囲に別け、それらに応じてローパスフィルタGlp(s)の応答性と適応デジタルフィルタの推定感度を補正することにより、電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を的確に向上させることができる。
また、請求項7、請求項8においては、内部抵抗の目安として△V(k)/I(k)、またはV1(k−1)/I1(k−1)を用いることにより、推定演算開始から推定値が収束する前においても電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を良好にできる。
【0046】
以下、実際の測定例によって本発明の効果を説明する。
図7は、本発明の実施例における特性、図8は前記先行出願において電流が通常値の場合の特性を示す図である。
図7および図8は、(数7)式の電池モデルのパラメータを、温度0℃相当の値から温度25℃相当の値に、時間400sを境にステップ的に切り替えた場合に、適応デジタルフィルタでパラメータ推定したシミュレーション結果を示す図である。これらの図は、電池パラメータが急激に変化したとしても、適応デジタルフィルタでパラメータ推定できることを示すための一例である。
【0047】
図8の特性は、前記先行出願において電流変化の振幅が通常より過小の場合であり、適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数は補正するが、ローパスフィルタの応答性と補正後の前記定数は一定値の場合である。温度0℃と25℃では内部抵抗に差があり、電圧変化の振幅が異なるため、電圧変化に対する相対的なノイズ成分は温度25℃の方が大きく、適応デジタルフィルタには不利である。そのため、温度25℃では過渡項T1、K・T2、の真値への収束性が悪い(図中▲1▼▲2▼)。これは、ローパスフィルタの応答性と適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数の設定を、ノイズに対して有利な場合(温度0℃)と不利な場合(温度25℃)とで調整できないからである。
【0048】
図7は、本発明の前記実施例で電流変化の振幅が通常より過小の場合である。前述の通り、温度0℃と25℃では内部抵抗に差があり電圧変化の振幅が異なるため、電圧変化に対する相対的なノイズ成分は温度25℃の方が大きく、適応デジタルフィルタには不利である。しかしながら、内部抵抗Kの値に応じて、少なくともローパスフィルタの応答性、またはローパスフィルタの応答性と適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を補正するという構成のため、内部抵抗が小さい温度25℃でも、過渡項T1、K・T2、の真値への収束性が非常に良い(図中▲1▼▲2▼)と言う効果がある。
【0049】
また、図4に示したように、内部抵抗が大きければ相対的なノイズ成分は小さいため、少なくともローパスフィルタの応答性を速め、または適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を小さく(鈍感方向に)補正し、内部抵抗が小さければ相対的なノイズ成分は大きいため、少なくともローパスフィルタの応答性を遅く、または前記定数を大きく(敏感方向に)補正すると言う構成であるため、内部抵抗が大きい場合は、ローパスフィルタによる適切なノイズ除去と適応デジタルフィルタヘのノイズの影響低減が得られ、内部抵抗が小さい場合は、ローパスフィルタにおいて、より強いノイズ除去と適応デジタルフィルタでの推定感度向上が得られる。図8において、過渡項T1、K・T2の真値への収束性が非常に良い(図中▲1▼▲2▼)のは、温度0℃での内部抵抗は大きく相対的なノイズ成分が小さいので、ローパスフィルタの応答性を速く、適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を小さく補正し、温度25℃での内部抵抗は小さく相対的なノイズ成分が大きいので、ローパスフィルタの応答性を遅く、前記定数を大きく補正しているためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を機能ブロックで表した図。
【図2】実施例の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】二次電池の等価回路モデルを示す図。
【図4】内部抵抗に対するローパスフィルタ応答性と調整ゲイン感度の相関を示す図。
【図5】開路電圧と充電率の相関マップ。
【図6】実施例における処理のフローチャート。
【図7】実施例において、電流変化の振幅が通常より過小の場合に、電流Iと端子電圧Vを適応デジタルフィルタに入力して各パラメータを推定した結果を示す図。
【図8】先行出願において、電流変化の振幅が通常より過小の場合に、電流Iと端子電圧Vを適応デジタルフィルタに入力して各パラメータを推定した結果を示す図。
【符号の説明】
1…端子電圧V(k)検出手段 2…電流I(k)検出手段
3…前処理フィルタ演算手段
4…推定アルゴリズム演算手段〔パラメータθ(k)を推定〕
5…開路電圧演算手段〔V0(k)を演算〕 6…充電率推定手段
7…調整手段
10…二次電池 20…負荷
30…電子制御ユニット 40…電流計
50…電圧計 60…温度計
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池の充電率(SOC)を推定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
二次電池の充電率SOC(充電状態とも言う)は開路電圧V0(通電遮断時の電池端子電圧であり、起電力、開放電圧とも言う)と相関があるので、開路電圧V0を求めれば充電率を推定することが出来る。しかし、二次電池の端子電圧は、通電を遮断(充放電を終了)した後も安定するまでに時間を要するので、正確な開路電圧V0を求めるには、充放電を終了してから所定の時間が必要である。したがって充放電中や充放電直後では、正確な開路電圧V0を求めることが出来ないので、上記の方法で充電率SOCを求めることが出来ない。そのため、従来は、下記のような方法を用いて開路電圧V0を推定している。
二次電池の充電率(SOC)を推定する技術に関する公知例としては、「論文“適応デジタルフィルタを用いた鉛電池の開路電圧と残存容量の推定”四国総研、四国電力、湯浅電池 T.IEEE Japan Vol.112-C,No.4 1992」がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のごとき従来例においては、実際の電池の物理特性とは全く異なる「非回帰型の電池モデル(出力値が入力値の現在値および過去値だけで決るモデル)」に「適応デジタルフィルタ(逐次型のモデルパラメータ同定アルゴリズム)」を用いて開路電圧を算出し、この値から充電率SOCを算出している。そのため、実際の電池特性(入力:電流、出力:電圧)に応用した場合、電池特性によっては推定演算が全く収束しなかったり、真値に収束しないため、正確な充電率SOCを推定することが困難である、という問題があった。
【0004】
本発明は上記のごとき従来技術の問題を解決するためになされたものであり、充電率SOCおよびその他のパラメータを正確に推定することの出来る二次電池の充電率推定装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては特許請求の範囲に記載するように構成している。すなわち、請求項1においては、二次電池の電池モデルを(数1)式に示すように定義し、開路電圧V0を(数2)式で近似することで(数1)式を下記(数3)式とし、(数3)式と等価な(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定する適応デジタルフィルタ演算手段と、これらの推定値を(数1)式と等価な(数5)式に代入してGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用とする開路電圧演算手段と、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定手段とを備え、かつ、上記二次電池の内部抵抗値に相当する定常項推定値b0/a0に応じて、ローパスフィルタGlp(s)の応答性、またはローパスフィルタGlp(s)の応答性と適応デジタルフィルタの推定感度とを補正するように構成したものである。例えば、ローパスフィルタGlp(s)の応答性は(数24)式のpに応じて変化し、適応デジタルフィルタ(パラメータ推定アルゴリズム)の推定感度は(数23)式のλ3(k)に応じて変化するので、それらの値を調整することにより、応答性や推定感度を補正することが出来る。
【0006】
【発明の効果】
本発明においては、二次電池の電流Iと端子電圧Vの関係を示す(数1)式を、(数4)式のように近似することで開路電圧V0(オフセット項)を含まない。そのため通常の適応デジタルフィルタを連続時間系のまま適用することが可能になるので、未知パラメータを一括推定することができ、推定した未知パラメータを(数5)式に代入することで、開路電圧V0の推定値の代用としてGlp(s)・V0を容易に算出できる。そして開路電圧V0と充電率SOCの関係(図5)は、温度や劣化度に影響されにくく一定の関係があるため、これを予め記憶しておけば開路電圧V0の推定値から充電率SOCを正確かつ容易に推定できる。
さらに、本発明においては、定常項推定値b0/a0(内部抵抗に相当)を電圧変化の大きさの目安にし、定常項推定値b0/a0の値に応じて、ローパスフィルタの応答性、またはローパスフィルタの応答性と適応デジタルフィルタの推定感度とを補正する構成であるために、電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を良好にできる、という特別の効果がある。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例を機能ブロックで表した図である。図1において、1は電池の端子電圧を検出する端子電圧V(k)検出手段、2は電池の電流を検出する電流I(k)検出手段、3は前処理フィルタ演算手段、4は推定アルゴリズム演算手段〔パラメータθ(k)を推定〕、5は開路電圧演算手段〔V0(k)を演算〕、6は開路電圧から充電率を演算する充電率推定手段、7は調整手段である。前処理フィルタ演算手段3は後記のローパスフィルタやバンドパスフィルタからなる。また、調整手段7は推定アルゴリズム演算手段4で求めたK(k−1)に応じてp(k)やλ3(k)を補正する機能(詳細後述)を有する。なお、請求項に記載の適応デジタルフィルタ演算手段は上記前処理フィルタ演算手段3と推定アルゴリズム演算手段4を合わせた部分に相当する。
【0008】
図2は、実施例の具体的な構成を示すブロック図である。この実施例は、二次電池でモータ等の負荷を駆動したり、モータの回生電力で二次電池を充電するシステムに、二次電池の充電率推定装置を設けた例を示す。
図2において、10は二次電池(単に電池ともいう)、20はモータ等の負荷、30は電池の充電状態を推定する電子制御ユニットで、プログラムを演算するCPUやプログラムを記憶したROMや演算結果を記憶するRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。40は電池から充放電される電流を検出する電流計、50は電池の端子電圧を検出する電圧計、60は電池の温度を検出する温度計であり、それぞれ電子制御ユニット30に接続される。上記の電子制御ユニット30は前記図1の前処理フィルタ演算手段3、推定アルゴリズム演算手段4、開路電圧演算手段5、充電率推定手段6および調整手段7の部分に相当する。また、電流計40は電流I(k)検出手段2に、電圧計50は端子電圧V(k)検出手段1に、それぞれ相当する。
【0009】
本発明は、通電中の二次電池の端子電圧Vと電流Iの計測データに、適応デジタルフィルタを用いて開路電圧V0を推定し、公知の開路電圧V0と充電率SOCの関係から充電率を推定する装置であり、二次電池の電池モデルを前記請求項1に記載の(数1)式に示すように定義し、開路電圧V0を前記(数2)式で近似することで(数1)式を前記(数3)式とし、(数3)式と等価な前記(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定し、これらの推定値を(数1)式と等価な前記(数5)式に代入してGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用として、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定するものである。
【0010】
上記の内容を具体的に説明すると次のようになる。
まず、本実施例で用いる「電池モデル」を説明する。図3は、二次電池の等価回路モデルを示す図であり、二次電池の電池モデルは下記(数13)式で示される。
【0011】
【数13】
(数13)式において、モデル入力は電流I[A](正値は充電、負値は放電)、モデル出力は端子電圧V[V]、R1〔Ω]は電荷移動抵抗、R2[Ω]は純抵抗、C1[F]は電気二重層容量、V0[V]は開路電圧である。なお、sはラプラス演算子である。本モデルは、正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。このように本実施例においては、電池モデルの次数を1次にした構成を例として説明する。
【0012】
上記(数13)式の電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出を最初に説明する。
(数13)式を変形すると(数14)式(=数7)になる。
【0013】
【数14】
ただし、T1=C1・R1、 T2=C1・R1・R2/(R1+R2)
K=R1+R2
上記のように、電池パラメータK=R1+R2であって、これは電池モデルの内部抵抗推定値に相当する。
開路電圧V0は、電流Iに可変な効率dを乗じたものを、ある初期状態から積分したものと考えれば、(数15)式(=数2=数8)で書ける。
【0014】
【数15】
(数15)式を(数14)式に代入すれば(数16)式になり、整理すれば(数17)式(=数9)になる。
【0015】
【数16】
【0016】
【数17】
安定なローパスフィルタGlp(s)を(数17)式の両辺に乗じて、整理すれば(数18)式になる。
【0017】
【数18】
実際に計測可能な電流Iや端子電圧Vに、ローパスフィルタやバンドパスフィルタを処理した値を、下記(数19)式(=数12)のように定義する。
【0018】
【数19】
なお、Glp(s)はローパスフィルタ、s・Glp(s)やs2・Glp(s)はバンドパスフィルタである。
【0019】
上記変数を用いて(数18)式を書き直せば(数20)式になる。
【0020】
【数20】
更に変形すれば(数21)式になる。
【0021】
【数21】
(数21)式は、計測可能な値と未知パラメータの積和式になっているので、一般的な適応デジタルフィルタの標準形(数22)式と一致する。
【0022】
【数22】
ただし、y=V2、 ωT=[V3,I3,I2,I1]
θT=[−T1,K・T2,K,d]
従って、電流Iと端子電圧Vにフィルタ処理した信号を、適応デジタルフィルタ演算に用いることで、未知パラメータベクトルθを推定する。本実施例では、単純な「最小二乗法による適応デジタルフィルタ」の論理的な欠点(一度推定値が収束すると、その後パラメータが変化しても再度正確な推定ができないこと)を改善した「両限トレースゲイン方式」を用いる。
(数22)式を前提に未知パラメータベクトルθを推定するためのパラメータ推定アルゴリズムは下記(数23)式となる。ただし、k時点のパラメータ推定値をθ(k)とする。
【0023】
【数23】
ただし、λ1、λ3(k)、γU、γLは初期設定値で、0<λ1<1、0<λ3(k)<∞とする。P(0)は十分大きな値、θ(0)は非ゼロな十分小さな値を初期値とする。trace{P}は行列Pのトレースを意味する。
或る観測ノイズの環境下で推定精度を良好に保つには、適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数であるλ3(k)(調整ゲイン)には上限がある。そのため、調整ゲインを予め大きく設定しておくのは、上限までのマージンが小さくなるので、観測ノイズの影響を受けて推定精度が悪化するため得策でない。 また、ローパスフィルタGlp(s)の設定に関しては、(数23)式のパラメータ推定アルゴリズムの推定精度を良くするために、観測ノイズを低減するようローパスフィルタの応答性(カットオフ周波数特性)を適切に設定するけれども、電池の応答特性よりは速くする。以上が、電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出である。
【0024】
なお、上記の説明では、電池モデルの次数を1次にした場合を例として説明したので、内部抵抗推定値K=R1+R2としたが、一般式の場合には、内部抵抗推定値はb0/a0となる。すなわち、前記(数6)式において、a0、b0は多項式A(s)、B(s)の定常状態時の値を示す。定常状態ではラブラス演算子s=0と考えられるので、前記(数1)式は、下式のように変形することが出来る。
V=(b0/a0)I+V0/a0
また、電池モデルの次数を1次にした場合において、一般式の(数1)式に相当する(数7)式は、s=0とすれば下式のようになる。
V=K・I+V0
上記両式を比較すると、K=b0/a0となる。前記(数14)式で説明したように、電池パラメータK=R1+R2であって、これは電池モデルの内部抵抗推定値に相当するので、一般式の場合における内部抵抗推定値はb0/a0となることが判る。
【0025】
次に、図6は、電子制御ユニット30のマイコンが行う処理のフローチャートである。この実施例は電池モデルの次数を1次にしたものである。なお、図6のルーチンは一定周期T0毎に実施される。例えば、I(k)は今回の値、I(k−1)は1回前の値を意味する。
まず、ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)を計測する。
ステップS20では、二次電池の遮断リレーの判断する。電子制御ユニット30は二次電池の遮断リレーの制御も行っており、リレー遮断時(電流I=0)はステップS30へ進む。リレー締結時はステップS40へ進む。
ステップS30では、端子電圧V(k)を端子電圧初期値V_iniとして記憶する。
ステップS40では、端子電圧差分値△V(k)を算出する。ただし、△V(k)=V(k)−V_ini
これは、適応デジタルフィルタ内の推定パラメータの初期値を約0としているので、推定演算開始時に推定パラメータが発散しないように、入力を全て0とするためである。リレー遮断時はステップS30を通るので、I=0かつ△V(k)=0なので、推定パラメータは初期状態のままである。
【0026】
ステップS50では、内部抵抗推定値の大きさを判定する。つまりパラメータ逐次推定演算である後記ステップS100の前段として内部抵抗推定値を判定するため、前回の内部抵抗推定値K(k−1)を用いて大きさの判定を行う。K(k−1)が第1の所定値より大きい場合はステップS70へ進む。その他の場合はステップS60へ進む。ただし、ステップS50の判定で用いる第1の所定値は、ステップS60で用いる第2の所定値よりも大きい値にする。なお、ハンチングを防ぐため所定時間継続した場合に判定をしても良い。
【0027】
次に、ステップS60では、再び内部抵抗推定値の大きさを判定する。K(k−1)が第2の所定値より大きい場合はステップS80へ進む。その他の場合、ステップS90へ進む。なお、ハンチングを防ぐため所定時間継続した場合に判定をしても良い。
上記のように2段階の判定を行うことにより、内部抵抗推定値K(k−1)が第1の所定値よりも大きい場合にはステップS70へ、第1の所定値と第2の所定値の間の値の場合はステップS80へ、第2の所定値よりも小さい場合はステップS90へ進むことになる。ただし、第1の所定値>第2の所定値である。
【0028】
ここで、図4は、内部抵抗に対するローパスフィルタ応答性と調整ゲイン感度の相関を示す図である。内部抵抗が大きければ相対的なノイズ成分は小さいため、ローパスフィルタの応答性を速めて調整ゲインを小さく(鈍感方向に)補正する。内部抵抗が小さければ相対的なノイズ成分は大きいため、ローパスフィルタの応答性を遅くし調整ゲインを大きく(敏感方向に)補正する。
ステップS70では、内部抵抗が充分大きいため端子電圧差分値△V(k)も大きく、ノイズ成分は相対的に小さいと判断する。したがって図4を参考にして、後述のステップS100における(数24)式の、ローパスフィルタGlp(s)の応答性を速めに設定し、(数23)式のパラメータ推定アルゴリズムの調整ゲインλ3(k)を小さく(鈍感方向に)補正する。なお、(数24)式のpはGlp(s)の応答性を決める定数である。
ステップS80では、内部抵抗が中程度(通常値)なため、端子電圧差分値△V(k)も中程度で、ノイズ成分は相対的に中程度と判断する。図4を参考にしてローパスフィルタGlp(s)の応答性を中程度に設定し、(数23)式のパラメータ推定アルゴリズムの調整ゲインλ3(k)を中程度に補正する。なお、パラメータ推定開始時は内部抵抗推定値が収束する前なので、ステップS80の設定とする。
ステップS90では、内部抵抗が小さいため、端子電圧差分値△V(k)も小さく、ノイズ成分は相対的に大きいと判断する。図4を参考にしてローパスフィルタGlp(s)の応答性を遅めに設定し、(数23)式のパラメータ推定アルゴリズムの調整ゲインλ3(k)を大きく(敏感方向に)補正する。
【0029】
ステップS100では、電流I(k)と端子電圧差分値△V(k)に、(数19)式に基づきローパスフィルタGlp(s)、バンドパスフィルタsGlp(s)及びs2Glp(s)のフィルタ処理を施し、I1、I2、I3、V2、V3を算出する。ここで、下記(数24)式のpは、Glp(s)の応答性を決める定数である。
【0030】
【数24】
実際のフィルタ処理演算は、連続時間系で記述された伝達関数をタスティン近似等で離散時間化し、下記(数25)式に示すような漸化式でフィルタ処理を行う。係数α0〜α3、β1〜β3はGlp(s)を離散時間化した際の定数である。
【0031】
【数25】
ステップS110では、ステップS100で算出したI1(k)、I2(k)、I3(k)、V2(k)、V3(k)を(数23)式に代入する。そしてパラメータ推定アルゴリズム(適応デジタルフィルタ演算)である(数23)式を行い、パラメータ推定値θ(k)を算出する。
ただし、y=V2、 ωT=[V3,I3,I2,I1]、
θT=[−T1,K・T2,K,d]
ステップS120では、ステップS110で算出したパラメータ推定値θ(k)の中からT1、K・T2、Kを用い、前記(数14)式と等価な下記(数26)式に基づきGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用とする。開路電圧V0は変化が緩やかなので、Glp(s)・V0で代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V0(k)である。
【0032】
【数26】
ステップS130では、ステップS120で算出した△V0(k)はパラメータ推定アルゴリズム開始時からの開路電圧の変化分であるから、開路電圧初期値すなわち端子電圧初期値V_iniを加算して開路電圧推定値V0(k)を(数27)式で算出する。
【0033】
【数27】
ステップS140では、図5に示す開路電圧と充電率の相関マップを用いて、ステップS130で算出したV0(k)から充電率SOC(k)を算出する。
なお、図5のVLはSOC=0%に、VHはSOC=100%に相当する開路電圧である。
ステップS150では、次回演算に必要な数値を保存して、今回演算を終了する。
【0034】
なお、ステップS50およびステップS60においては、判定の際に内部抵抗推定値K(k−1)を用いているが、推定演算開始から推定値が収束する前は、電流I(k)と電圧差分値△V(k)から内部抵抗の目安として△V(k)/I(k)で代用しても良い。また、フィルタ処理後の電流I1(k−1)とフィルタ処理後の電圧差分値V1(k−1)から、内部抵抗の目安としてV1(k−1)/I1(k−1)で代用しても良い。
ここで(k−1)なのは、ステップS50およびステップS60がステップS100におけるフィルタ処理前なので、前回のステップS100で演算した値を用いるためである。また、(数24)式でV1=Glp(s)・△Vとし、V1(k−1)は差分が含まれているものと定義しているので、電圧差分値はV1(k−1)としている。
上記のごとき値を内部抵抗の目安として用いることにより、推定演算開始から推定値が収束する前においても電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を良好にできる。
【0035】
次に、本出願人が先に出願した特願2001−384606号(未公開)との関係について説明する。本発明は上記先行出願をさらに改良したものである。 上記先行出願においては、通電中の二次電池(鉛蓄電池やリチウムイオン電池等の充放電可能な電池)の端子電圧と電流に、適応デジタルフィルタを用いて開路電圧(通電遮断時の端子電圧、起電力)を推定(パラメータ同定)し、予め計測された電池の充電率と開路電圧の関係に、前記開路電圧推定値を照合して、充電率を推定する方法である。
具体的には、端子電圧Vと電流Iの関係を、開路電圧V0および過渡項T1、およびK・T2、内部抵抗Kを用いて、(数28)式(=数7)の電池モデルで表す。
【0036】
【数28】
(数28)式に示す電池モデルにおいて、開路電圧V0は初期状態からの電流Iの積分値に比例すると考えて、(数29)式(=数2)のように仮定する。
【0037】
【数29】
(数29)式を(数28)式に代入して変形すれば(数30)式(=数9)になり、オフセット項である開路電圧V0を含まない。
【0038】
【数30】
(数30)式を変形し、両辺に安定なローパスフィルタGlp(s)を乗じれば、下記(数31)式になる。
【0039】
【数31】
二次電池の電流Iと端子電圧Vの計測データで、(数31)式に公知の適応デジタルフィルタ演算(逐次型のモデルパラメータ同定アルゴリズム)を行い、式中のパラメータ(変数d、過渡項T1およびK・T、内部抵抗K)を一括推定することを特徴とする。
推定したパラメータ(過渡項T1およびK・T2、内部抵抗K)と電流Iと端子電圧Vを、(数28)式と等価な下記(数32)式に代入し、Glp(s)・V0を開路電圧V0として算出する。なお、sはラプラス演算子、Glp(s)は二次以上の安定な口ーパスフィルタである。
【0040】
【数32】
適応デジタルフィルタでのパラメータ推定アルゴリズムにおいて、推定精度が観測ノイズの影響を受けないように、観測ノイズを除去するためにはGlp(s)の応答性をかなり遅く設定する必要がある。ただし、電池の応答特性(時定数T1の概略値は既知)よりも速い特性でないと、電池モデルの各パラメータを精度良く推定できないので、電池の応答特性よりは速く設定する。なお、上記の数式中で過渡項K・T2を2つの変数の積で表記しているが、K・T2で1つの変数である。
【0041】
上記の先行出願では、リアルタイムな電流と電圧の計測値から観測ノイズの程度を判断するのは困難なので、ノイズの最大値を予め考慮してローパスフィルタGlp(s)の応答性を一定値に設定する必要があり、それに合わせて適応デジタルフィルタでのパラメータ推定アルゴリズムに用いる調整ゲインも一定値に設定している。適応デジタルフィルタヘの入力の振幅が小さい場合は、観測ノイズに備えてフィルタ処理しているため、信号成分が更に小さくなってしまい、推定精度が悪化する。しかし、上記先行出願では、調整ゲインを一定値に設定するという構成になっていたため、適応デジタルフィルタの入力である電流と電圧の振幅が継続して小さい場合は、調整ゲインが不足して推定パラメータの精度が悪化する可能性がある。なお、或る観測ノイズの環境下で推定精度を良好に保つには調整ゲインには上限がある。そのため、調整ゲインを予め大きく設定しておくのは、上限までのマージンが小さくなるので、観測ノイズの影響を受けて推定精度が悪化するため得策でない。
【0042】
また、電流(または電流の変化率)の振幅が所定時間以上継続して所定値より小さい場合に、推定アルゴリズム演算手段におけるパラメータ推定アルゴリズムの調整ゲインを感度大に補正することも考えられるが、ローパスフィルタGlp(s)の応答性を一定に設定した場合には、電流変化が小さくても内部抵抗が大きく電圧変化が大きい場合であっても、ローパスフィルタの応答性が一定であるがために不必要に信号がなまされてしまい、パラメータの推定精度が悪化するという問題が残る。なお、電池の内部抵抗値は温度に応じて変化する特性がある。
【0043】
また、電流変化に加えて電圧変化の振幅も小さい場合は、適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を補正する構成も考えらるが、電池充放電中における電流と電圧は連続的に変化するため、その大小を判定して適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を補正するのは現実性に乏しい。
【0044】
本発明は、上記の先行出願と同様の効果が得られる他に、次のごとき特別の効果が得られる。すなわち、請求項1においては、定常項推定値b0/a0(内部抵抗に相当)で電圧変化の大きさの目安にし、定常項推定値b0/a0の値に応じて、ローパスフィルタの応答性のみ、またはローパスフィルタの応答性と適応デジタルフィルタの推定感度とを補正する構成であるために、電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を良好にできるという効果がある。
【0045】
また、請求項2、請求項3においては、電池モデルを1次とすることにより、適応デジタルフィルタにおけるパラメータ推定アルゴリズムの演算を容易に行うことが出来る。
また、請求項4、請求項5のように、定常項推定値が通常より大の範囲、通常値、通常値より小の範囲に別け、それらに応じてローパスフィルタGlp(s)の応答性と適応デジタルフィルタの推定感度を補正することにより、電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を的確に向上させることができる。
また、請求項7、請求項8においては、内部抵抗の目安として△V(k)/I(k)、またはV1(k−1)/I1(k−1)を用いることにより、推定演算開始から推定値が収束する前においても電圧変化の大きさに依らず適応デジタルフィルタで逐次推定されるパラメータの精度を良好にできる。
【0046】
以下、実際の測定例によって本発明の効果を説明する。
図7は、本発明の実施例における特性、図8は前記先行出願において電流が通常値の場合の特性を示す図である。
図7および図8は、(数7)式の電池モデルのパラメータを、温度0℃相当の値から温度25℃相当の値に、時間400sを境にステップ的に切り替えた場合に、適応デジタルフィルタでパラメータ推定したシミュレーション結果を示す図である。これらの図は、電池パラメータが急激に変化したとしても、適応デジタルフィルタでパラメータ推定できることを示すための一例である。
【0047】
図8の特性は、前記先行出願において電流変化の振幅が通常より過小の場合であり、適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数は補正するが、ローパスフィルタの応答性と補正後の前記定数は一定値の場合である。温度0℃と25℃では内部抵抗に差があり、電圧変化の振幅が異なるため、電圧変化に対する相対的なノイズ成分は温度25℃の方が大きく、適応デジタルフィルタには不利である。そのため、温度25℃では過渡項T1、K・T2、の真値への収束性が悪い(図中▲1▼▲2▼)。これは、ローパスフィルタの応答性と適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数の設定を、ノイズに対して有利な場合(温度0℃)と不利な場合(温度25℃)とで調整できないからである。
【0048】
図7は、本発明の前記実施例で電流変化の振幅が通常より過小の場合である。前述の通り、温度0℃と25℃では内部抵抗に差があり電圧変化の振幅が異なるため、電圧変化に対する相対的なノイズ成分は温度25℃の方が大きく、適応デジタルフィルタには不利である。しかしながら、内部抵抗Kの値に応じて、少なくともローパスフィルタの応答性、またはローパスフィルタの応答性と適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を補正するという構成のため、内部抵抗が小さい温度25℃でも、過渡項T1、K・T2、の真値への収束性が非常に良い(図中▲1▼▲2▼)と言う効果がある。
【0049】
また、図4に示したように、内部抵抗が大きければ相対的なノイズ成分は小さいため、少なくともローパスフィルタの応答性を速め、または適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を小さく(鈍感方向に)補正し、内部抵抗が小さければ相対的なノイズ成分は大きいため、少なくともローパスフィルタの応答性を遅く、または前記定数を大きく(敏感方向に)補正すると言う構成であるため、内部抵抗が大きい場合は、ローパスフィルタによる適切なノイズ除去と適応デジタルフィルタヘのノイズの影響低減が得られ、内部抵抗が小さい場合は、ローパスフィルタにおいて、より強いノイズ除去と適応デジタルフィルタでの推定感度向上が得られる。図8において、過渡項T1、K・T2の真値への収束性が非常に良い(図中▲1▼▲2▼)のは、温度0℃での内部抵抗は大きく相対的なノイズ成分が小さいので、ローパスフィルタの応答性を速く、適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数を小さく補正し、温度25℃での内部抵抗は小さく相対的なノイズ成分が大きいので、ローパスフィルタの応答性を遅く、前記定数を大きく補正しているためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を機能ブロックで表した図。
【図2】実施例の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】二次電池の等価回路モデルを示す図。
【図4】内部抵抗に対するローパスフィルタ応答性と調整ゲイン感度の相関を示す図。
【図5】開路電圧と充電率の相関マップ。
【図6】実施例における処理のフローチャート。
【図7】実施例において、電流変化の振幅が通常より過小の場合に、電流Iと端子電圧Vを適応デジタルフィルタに入力して各パラメータを推定した結果を示す図。
【図8】先行出願において、電流変化の振幅が通常より過小の場合に、電流Iと端子電圧Vを適応デジタルフィルタに入力して各パラメータを推定した結果を示す図。
【符号の説明】
1…端子電圧V(k)検出手段 2…電流I(k)検出手段
3…前処理フィルタ演算手段
4…推定アルゴリズム演算手段〔パラメータθ(k)を推定〕
5…開路電圧演算手段〔V0(k)を演算〕 6…充電率推定手段
7…調整手段
10…二次電池 20…負荷
30…電子制御ユニット 40…電流計
50…電圧計 60…温度計
Claims (8)
- 二次電池の電流Iと端子電圧Vとを計測し、適応デジタルフィルタを用いて、上記電流Iと端子電圧Vの計測値から開路電圧V0を推定し、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定装置であって、
二次電池の電池モデルを下記(数1)式に示すように定義し、開路電圧V0を下記(数2)式で近似することで(数1)式を下記(数3)式とし、(数3)式と等価な下記(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定する適応デジタルフィルタ演算手段と、
これらの推定値を(数1)式と等価な下記(数5)式に代入してGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用とする開路電圧演算手段と、
予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定手段と、を備え、
かつ、上記二次電池の内部抵抗値に相当する定常項推定値b0/a0に応じて、ローパスフィルタGlp(s)の応答性、またはローパスフィルタGlp(s)の応答性と適応デジタルフィルタの推定感度とを補正することを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
- 上記電池モデルの次数を1次にしたことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電率推定装置。
- 定常項推定値が通常値より大きい場合は、ローパスフィルタGlp(s)の応答性を速い方向へ補正するか、またはローパスフィルタGlp(s)の応答性を速い方向へ補正すると共に適応デジタルフィルタの推定感度を小さい方向へ補正することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の二次電池の充電率推定装置。
- 定常項推定値が通常値より小さい場合は、ローパスフィルタGlp(s)の応答性を遅い方向へ補正するか、またはローパスフィルタGlp(s)の応答性を遅い方向へ補正すると共に適応デジタルフィルタの推定感度を大きい方向へ補正することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の二次電池の充電率推定装置。
- 内部抵抗推定値として、一回前の演算におけるKの値であるK(k−1)を用いることを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れかに記載の二次電池の充電率推定装置。
- 計測した端子電圧V(k)と端子電圧初期値V_iniとの差を電圧差分値△V(k)とした場合に、
推定演算開始から推定値が収束する前は、計測した電流I(k)と上記電圧差分値△V(k)から求めた△V(k)/I(k)を、内部抵抗推定値として用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の二次電池の充電率推定装置。 - 推定演算開始から推定値が収束する前は、フィルタ処理後の電流I1(k−1)とフィルタ処理後の電圧差分値V1(k−1)から求めたV1(k−1)/I1(k−1)を、内部抵抗推定値として用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の二次電池の充電率推定装置。
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