JP4720364B2 - 二次電池の内部抵抗推定装置 - Google Patents
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Description
また、特許文献2(特開2000−323183号公報)では、検出した電流Iと電圧VをI−V直線(V=K・I+V0)で近似し、その傾きを内部抵抗値K、切片を開路電圧V0として内部抵抗値を推定している。
さらに、特許文献3(特開2003−054035号公報)においては、推定した内部抵抗値K、開路電圧V0および電池の最大許容端子電圧VMAX、最小許容端子電圧VMINから入力可能パワーPinおよび出力可能パワーPoutを推定している。
しかし、電池が強い非線形性を示すような使用領域においては、適応デジタルフィルタでは電池パラメータや充電率を精度良く推定することができない。
また、入力電流が一定値となる条件においては、適応デジタルフィルタでは理論的にパラメータ推定値が更新されず、パラメータが逐次推定できないという問題がある。
なお、電池が強い非線形性を示すのは、例えばリチウムイオン電池において大出力でエネルギーを取り出した(電流Iをかなり大きく流した)場合に内部抵抗値が急増する現象(図5参照)に相当し、入力電流が一定値となる条件としては一定電流での充放電が継続(数秒以上)する場合に相当する。
また、特許文献2に記載の方法では、実際の電池は過渡応答を示す動特性を持っているにもかかわらず、その電池の過渡特性を表すパラメータ(T1、T2)を無視した式で内部抵抗値を推定するため、電流変化が生じている過渡状態では内部抵抗値の推定結果に誤差が生じてしまうという問題がある。
そのため、特許文献3に記載のように、推定した内部抵抗値を用いて充電率や入力可能パワーPin、出力可能パワーPoutを推定するものにおいては、上記のように内部抵抗の推定値に誤差が生じると、それを用いて推定した充電率や入力可能パワーPin、出力可能パワーPoutにも誤差が発生していまう、という問題がある。
本発明は上記のごとき問題を解決するためになされたものであり、一定電流での放電または充電が行われる場合、もしくは所定以上の大電流での放電または充電が行われる場合のように適応デジタルフィルタによる推定演算が困難な状態でも内部抵抗値を精度良く推定できる二次電池の内部抵抗推定装置を提供することを目的とする。
さらに、第二充電率推定値から第二内部抵抗値を推定する場合に、第二充電率が選択される直前の適応デジタルフィルタによる電池パラメータ推定値の記憶値T1_ADF(k)、T2_ADF(k)をホールドし、それを用いて第二内部抵抗値K_ITG(k)を演算するように構成しており、電池の動特性を表す時定数(T1およびT2)までを考慮して内部抵抗値を推定するため、電流が変化する過渡状態においても内部抵抗値を精度良く推定することができる、という効果がある。
図1に示すブロック図は下記の各要素から構成されている。すなわち、二次電池に充放電される電流と電池の端子電圧を定期的に検出する電流検出手段100および電圧検出手段101と、計測した電流I(k)と電圧V(k)からそれらのローパスフィルタ値I1(k)、V1(k)、近似1階微分値I2(k)、V2(k)および近似2階微分値I3(k)、V3(k)を演算する前処理フィルタ演算手段102と、前記前処理フィルタ102の出力から適応デジタルフィルタにより、電池の内部状態を表すパラメータ(K,T1,T2)を一括推定する適応デジタルフィルタ演算手段103と、前記前処理フィルタ演算手段102の出力と前記適応デジタルフィルタ演算手段103により推定された電池パラメータから第一開路電圧V0_ADF(k)を推定する第一開路電圧演算手段104と、予め取得した当該電池の開路電圧−充電率特性(後記図4参照)に基づいて前記第一開路電圧推定値V0_ADF(k)から第一充電率SOCADF(k)を推定する第一充電率推定手段105と、前記電流検出手段100で検出された電流から電流積算により第二充電率を推定する第二充電率推定手段106と、予め計測した開路電圧−充電率特性(図4)に基づいて前記第二充電率から第二開路電圧を推定する第二開路電圧演算手段107と、前記第一充電率と第二充電率の何れか一方を電流の状態に応じて選択する最終充電率推定値選択手段108と、前記最終充電率推定値選択手段108の情報(最終充電率推定値選択フラグ)に基づいて前記適応デジタルフィルタ演算手段103で演算した電池の内部パラメータ推定値を記憶する電池パラメータ推定値記憶手段109と、前記電池パラメータ推定値の記憶値と前記第二開路電圧推定値および前記前処理フィルタ演算手段102の出力から第二内部抵抗値を演算する第二内部抵抗推定手段110と、前記第一開路電圧推定値と第二開路電圧推定値を前記最終充電率推定値選択手段108の情報(最終充電率推定値選択フラグ)に応じて切り替えて出力する最終開路電圧推定値選択手段111と、前記適応デジタルフィルタで推定した第一内部抵抗値(前記パラメータKに相当)と前記第二内部抵抗推定手段110で演算した第二内部抵抗値とを前記最終充電率推定値選択手段108の情報(最終充電率推定値選択フラグ)に応じて切り替えて出力する最終内部抵抗推定値選択手段112と、前記最終内部抵抗推定値選択手段112において選択した最終内部抵抗値と前記最終開路電圧推定値とから入出力可能パワーを演算する入出力可能パワー演算手段113から構成されている。ただし、(k)は時点kにおける値(今回の演算における演算値)を示す。
図2において、10は二次電池、20はモータ等の負荷、30は二次電池の充電率や満充電容量等を推定する電子制御ユニット(バッテリコントローラ)で、ブログラムを演算するCPUやプログラムや演算結果を記憶するROMやRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成されている。40は電池から充放電される電流を検出する電流センサ、50は電池の端子電圧(単に電圧ともいう)を検出する電圧センサであり、それぞれ電子制御ユニット30に接続されている。上記の電子制御ユニット30は前記図1の前処理フィルタ演算手段102、適応デジタルフィルタ演算手段103、第一開路電圧演算手段104、第一充電率推定手段105、第二充電率推定手段106、第二開路電圧演算手段107、最終充電率推定値選択手段108、電池パラメータ推定値記憶手段109、第二内部抵抗推定手段110、最終開路電圧推定値選択手段111、最終内部抵抗推定値選択手段112および入出力可能パワー演算手段113の部分に相当する。また、電流センサ40は電流検出手段100に、電圧センサ50は電圧検出手段101に、それぞれ相当する。
図3は、上記の推定に用いる電池モデルを示す回路図である。図3において、モデルヘの入力は電流I(t)[A](正値:充電、負値:放電)、出力は端子電圧V(t)[V]、開路電圧V0(t)[V]であり、R1は電荷移動抵抗、R2は純抵抗、C1は電気二重層容量である。本モデルは正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。
この電池モデルは、sを微分オペレータとして(数4)式で表現できる。
上記(数10)式で示す変数を用いて(数9)式を書き直し、V2(t)について整理すれば、(数12)式になる。
y=V2(t)、 ωT=[V3(t),I3(t),I2(t),I1(t)]、
θT=[−T1,K・T2,K,h]
である。
従って、電流Iと端子電圧Vにフィルタ処理を施した信号を、適応デジタルフィルタ演算に用いることで、未知パラメータベクトルθを推定することが出来る。
上記(数13)式を前提に未知パラメータベクトルθを推定するための逐次推定アルゴリズムは(数14)式に示すようになる。ただし、k時点のパラメータ推定値をθ^(k)とする。なお、θの右肩に付した^は推定値を示すが、数式中ではθの真上に付している(以下、同じ)。
以上が適応デジタルフィルタ演算部において行われる適応デジタルフィルタを用いた電池パラメータ推定方法である。
まず、前記(数5)式を開路電圧V0に関して整理すると(数15)式になる。
さらに図1中の第一充電率推定手段105において、予め取得した当該電池の開路電匠−充電率特性(図4参照)に基づいて、前記第一開路電圧推定値から第一充電率を算出することができる。
step2では、電流値I(k)および電流変化率△I(k)から、後述する二つの手法で推定した充電率のいずれかを最終推定値として選択するための選択フラグf_SOCSWを以下の条件で生成する。
なお、電流変化率△I(k)は、例えば(数18)式で示すように、前回値と今回値との差分の絶対値や(数19)式に示すように、所定時間内における変化幅(最大値と最小値の差)とすることができる。
(1)電流変化率△I(k)が所定時間ts連続して所定値β以下となる一定電流放電の場合は、最終充電率推定値の選択フラグf_SOCSWをセットする。この場合は第二充電率推定値(電流積算SOC推定値)を選択する。
(2)電流が所定値γを超えた大電流となった場合は、選択フラグf_SOCSWをセットする。この場合も第二充電率推定値(電流積算SOC推定値)を選択する。
なお、図5はリチウムイオン電池における放電電流と内部抵抗値との関係を示す特性図である。図5に示すように、リチウムイオン電池において大出力でエネルギーを取り出した(電流Iをかなり大きく流した)場合には内部抵抗値が急増する現象が生じ、このような場合には適応デジタルフィルタ(ADF)によるSOC推定は困難になる。
(3)上記以外の場合は、選択フラグf_SOCSWをクリアする。この場合は第一充電率推定値(適応デジタルフィルタADFによるSOC推定値)を選択する。
step3では、step1で検出した電流I(k)と電圧V(k)に下記(数20)式に示すローパスフィルタ処理、近似微分フィルタ処理を施し、I1(k)、I2(k)、I3(k)およびV1(k)、V2(k)、V3(k)算出する。
step4では、電流積算によるSOC推定を行うか否かを選択する。選択フラグf_SOCSWがクリアされている場合には、step5に進み、電流積算によるSOC(第二充電率)推定の初期化処理のみを行い、セットされている場合にはstep6に進み、電流積算によるSOC(第二充電率)推定を行う。
step5では、(数21)式に基づき前回のADFによる第一充電率推定値SOCADF(k−1)を用いて電流積算による第二充電率推定値SOCITG’(k)を初期化することで、電流積算用積分器の初期値とする。
実際には(数24)式をタスティン近似などで離散化して得られた漸化式を用いて演算する。
step8では、予め計測した開路電圧−充電率特性(図4)に基づいて、step7で電流積算によって求めた第二充電率推定値SOCITG(k)から第二開路電圧推定値V0_ITG(k)を求める。
step10では、step3で演算したI1(k)、I2(k)、I3(k)およびV2(k)、V3(k)を用いて、前記(数14)式で示した適応デジタルフィルタによる電池パラメータ推定値θ^(k)を算出する。ただし、(数14)式において、
y(k)=V2(k)
ωT(k)=[V3(k) I3(k) I2(k) I1(k)]
θT(k)=[−T1(k) K(k)・T2(k) K(k) h(k)]
である。
そして推定された電池パラメータ推定値θ^(k)の成分である内部抵抗値K(k)を第一内部抵抗推定値とする。
(数17)式は電池モデル(数15)式を変形し、両辺にローパスフィルタを乗じた式であるから、実際には開路電圧に対しローパスフィルタを施した値として推定される。しかし、開路電圧は変化が穏やかであるので、V0_ADF(k)をGLPF(s)・V0_ADF(k)で代用することができる。
つまり、前記の(選択フラグf_SOCSWの条件)に記載したように、選択フラグf_SOCSWがセットされている場合は、第二充電率推定値(電流積算SOC推定値)を選択し、選択フラグf_SOCSWがクリアされている場合は、第一充電率推定値(適応デジタルフィルタ(ADF)によるSOC推定値)を選択する。
つまり、選択フラグf_SOCSWがセットされている場合は、第二開路電圧推定値SOC_ITG(k)を選択し、選択フラグf_SOCSWがクリアされている場合は、第一開路電圧推定値V0_ADF(k)を選択する。図1ではこの方法を示している。
つまり、選択フラグf_SOCSWがセットされている場合は、第二内部抵抗推定値K_ITG(k)を選択し、選択フラグf_SOCSWがクリアされている場合は、第一内部抵抗推定値KADF(k)を選択する。
step17では、step13で算出した最終充電率推定値SOCest(k)と電流I(k)から総容量推定値QMAX(k)(満充電容量ともいう)を演算する。この値は、例えば(数26)式に示すように、電流I(k)を充電率推定値の微分値で除算して求める。
この方法にはいくつか考えられるが、ここでは三つの実施例を説明する。なお、いずれの実施例においても、前記(数12)式を内部抵抗値Kに関して整理すると(数27)式になることを利用し、(数27)式における開路電圧推定値V0(k)には、step14で演算した最終開路電圧推定値V0_est(k)を用いる。また、I1(k)、I2(k)、V1(k)、V2(k)にはstep3で演算した前処理フィルタの出力を用いる。
102…前処理フィルタ演算手段 103…適応デジタルフィルタ演算手段
104…第一開路電圧演算手段 105…第一充電率推定手段
106…第二充電率推定手段 107…第二開路電圧演算手段
108…最終充電率推定値選択手段 109…電池パラメータ推定値記憶手段
110…第二内部抵抗推定手段 111…最終開路電圧推定値選択手段
112…最終内部抵抗推定値選択手段 113…入出力可能パワー演算手段
10…二次電池 20…負荷
30…電子制御ユニット 40…電流センサ
50…電圧センサ
Claims (4)
- 二次電池の充放電中の電流を検出する電流検出手段と、
二次電池の端子電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流と電圧のローパスフィルタ値と微分値を演算する前処理フィルタ手段と、
二次電池の電池モデルを定義し、その電池モデルを用いて、前記電流および電圧のローパスフィルタ値と微分値を入力として電池モデルの第一内部抵抗値を含むパラメータを一括推定演算する適応デジタルフィルタ演算手段と、
前記電池パラメータと前記前処理フィルタ処理した電流と電圧を入力として第一開路電圧を推定演算する第一開路電圧演算手段と、
第一開路電圧から第一充電率を推定演算する第一充電率推定手段と、
前記適応デジタルフィルタによる充電率推定が困難な、一定電流での放電または充電が行われる場合、もしくは所定以上の大電流での放電または充電が行われる場合においても充電率推定が可能な方法により第二充電率を推定演算する第二充電率推定手段と、
前記第二充電率推定値から第二開路電圧推定値を演算する第二開路電圧演算手段と、
前記第一充電率と前記第二充電率の何れか一方を選択して最終充電率推定値とする最終充電率推定値選択手段と、
前記第二充電率が選択される直前の前記適応デジタルフィルタ演算手段による電池パラメータ推定値を記憶する電池パラメータ推定値記憶手段と、
電流の状態によって定まる最終充電率推定値の選択フラグの情報に基づいて前記第一開路電圧と第二開路電圧の何れか一方を選択して最終開路電圧とする最終開路電圧推定値選択手段と、
前記第二充電率推定値から第二内部抵抗値を推定演算する第二内部抵抗推定手段と、
電流の状態によって定まる最終充電率推定値の選択フラグの情報に基づいて、前記適応デジタルフィルタ演算手段で推定した第一内部抵抗値と前記第二内部抵抗推定手段で推定した第二内部抵抗値の何れか一方を選択して最終内部抵抗推定値とする最終内部抵抗推定値選択手段と、を有し、
前記第二内部抵抗推定手段は、
第二充電率推定値が選択されている場合における第二内部抵抗推定値K_ITGを、前記電池パラメータ推定値記憶手段における電池パラメータ記憶値の時定数(T1_ADF、T2_ADF)と、第二開路電圧推定値V0_ITGと、前処理フィルタの出力である電流および電圧のローパスフィルタ値(I1、V1)および微分値(I2、V2)と、によって表される(数1)式を用いて推定演算することを特徴とする二次電池の内部抵抗推定装置。
- 請求項1に記載の二次電池の内部抵抗推定装置において、
前記第二充電率推定手段は、前記電流検出手段で検出した電流を積算することにより第二充電率を推定することを特徴とする二次電池の内部抵抗推定装置。
- 請求項1に記載の二次電池の内部抵抗推定装置において、
前記電池パラメータ推定値記憶手段における電池パラメータ記憶値である第一内部抵抗値K_ADFと、前回の演算における第二内部抵抗推定値K_ITG(k−1)から、(数2)式および(数3)式に基づいて電池パラメータ記憶値の時定数(T1_ADF、T2_ADF)を補正することを特徴とする二次電池の内部抵抗推定装置。
ただし、T1_ADF'、T2_ADF'は補正後の時定数 - 請求項3に記載の二次電池の内部抵抗推定装置において、
電流および電圧の変化率が所定値以下の場合に、前記時定数(T1_ADF、T2_ADF)の補正を行うことを特徴とする二次電池の内部抵抗推定装置。
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