JP3714330B2 - 二次電池の充電率推定装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池の充電率(SOC)を推定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2000−323183号公報
【特許文献2】
特開2000−268886号公報
【非特許文献1】
「論文“適応デジタルフィルタを用いた鉛電池の開路電圧と残存容量の推定”四国総研、四国電力、湯浅電池 T.IEEE Japan Vol.112-C,No.4 1992」
二次電池の充電率SOC(充電状態とも言う)は開路電圧V0(通電遮断時の電池端子電圧であり、起電力、開放電圧とも言う)と相関があるので、開路電圧V0を求めれば充電率を推定することが出来る。しかし、二次電池の端子電圧は、通電を遮断(充放電を終了)した後も安定するまでに時間を要するので、正確な開路電圧V0を求めるには、充放電を終了してから所定の時間が必要である。したがって充放電中や充放電直後では、正確な開路電圧V0を求めることが出来ないので、上記の方法で充電率SOCを求めることが出来ない。そのため、従来は、たとえば上記非特許文献1に記載のような方法を用いて開路電圧V0を推定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のごとき従来例においては、実際の電池の物理特性とは全く異なる「非回帰型の電池モデル(出力値が入力値の現在値および過去値だけで決るモデル)」に「適応デジタルフィルタ(逐次型のモデルパラメータ同定アルゴリズム)」を用いて開路電圧を算出し、この値から充電率SOCを算出している。そのため、実際の電池特性(入力:電流、出力:電圧)に応用した場合、電池特性によっては推定演算が全く収束しなかったり、真値に収束しないため、正確な充電率SOCを推定することが困難である、という問題があった。
本発明は上記のごとき従来技術の問題を解決するためになされたものであり、充電率SOCおよびその他のパラメータを正確に推定することの出来る二次電池の充電率推定装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては、前記(数1)式に示す連続時間系の電池モデルを用いて、適応デジタルフィルタ演算を行い、前記の計測した電流Iと端子電圧Vを用いて過渡項であるA(s)、B(s)、C(s)の係数に対応するパラメータを一括推定するパラメータ推定手段と、計測した電流Iと端子電圧Vおよび前記パラメータ推定手段で推定したパラメータを前記(数1)式に代入することで開路電圧V0を算出する開路電圧演算手段と、推定した開路電圧V0を用いて、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCの関係から充電率を推定する充電率推定手段と、を備えるように構成している。
また、電池モデル式によってパラメータを推定して二次電池の充電状態を検出する二次電池の充電率推定装置においては、通常の充放電時には、電流および端子電圧の測定値に対してノイズの値は微小であるため、影響を受けないが、電流遮断時(電流が略0の微小電流時)には計測した電流値および端子電圧値がノイズの影響を受け易く、パラメータ推定精度が悪化する可能性がある。本発明においては、上記の問題を防止するため、電流遮断時(略0の微小電流時:つまり電流の絶対値が所定値以下の場合)にはパラメータの推定値を前回の演算値に保持するように構成している。
【0005】
【発明の効果】
二次電池の電流Iと端子電圧Vと開路電圧V0の関係を、(数1)式のような伝達関数で近似する構成であるため、最小二乗法等の適応デジタルフィルタ(公知の推定アルゴリズム)を適用することが可能になる。その結果、式中のパラメータ(オフセット項である開路電圧V0および多項式A(s)、B(s)、C(s)の係数)を一括推定することが可能になる。これらのパラメータは充電率や温度や劣化度などに影響され、時々刻々と変化するものであるが、適応デジタルフィルタにより精度良く逐次推定することが可能である。そして開路電圧V0と充電率の一意的な相関を記憶しておけば、推定した開路電圧から充電率に換算できる。そのため、充電率についても式中のパラメータ同様に、精度良く逐次推定することが可能である。
また、電流遮断状態のように電流が微小な値を継続する場合には、各パラメータ推定値として前回の演算値を保持する構成であるため、電流遮断中の推定演算がノイズの影響を受けて、適応デジタルフィルタによるパラメータ推定精度が悪化するのを防止することができる、という効果がある。
【0006】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例を機能ブロックで表した図である。図1において、1はパラメータ推定手段であり、開路電圧V0(k)をオフセット項とする電池モデルに基づいたものである。また、2は開路電圧V0(k)演算手段、3は開路電圧から充電率を演算する充電率推定手段である。また、4は電池から充放電される電流を検出する電流I(k)計測手段、5は電池の端子電圧を検出する端子電圧V(k)計測手段である。
【0007】
図2は、実施例の具体的な構成を示すブロック図である。この実施例は、二次電池でモータ等の負荷を駆動したり、モータの回生電力で二次電池を充電するシステムに、二次電池の充電率推定装置を設けた例を示す。
図2において、10は二次電池(単に電池とも言う)、20はモータ等の負荷、30は電池の充電状態を推定するバッテリーコントローラ(電子制御ユニット)で、プログラムを演算するCPUやプログラムを記憶したROMや演算結果を記憶するRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。40は電池から充放電される電流を検出する電流計、50は電池の端子電圧を検出する電圧計、60は電池の温度を検出する温度計であり、それぞれバッテリーコントローラ30に接続される。上記のバッテリーコントローラ30は前記図1のパラメータ推定手段1、開路電圧V0(k)演算手段2および充電率推定手段3の部分に相当する。また、電流計40は電流I(k)計測手段4に、電圧計50は端子電圧V(k)計測手段5に、それぞれ相当する。
【0008】
まず、本実施例で用いる「電池モデル」を説明する。図3は、二次電池の等価回路モデルを示す図であり、下記(数5)式(=前記数4式)で表わすことが出来る。
【0009】
【数5】
ただし、モデル入力は電流I[A](正値は充電、負値は放電)、モデル出力は端子電圧V[V]、V0[V]は開路電圧、Kは内部抵抗、T1〜T3は時定数、sはラプラス演算子である。
本モデルは、正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。(数5)式は前記(数1)式において、A(s)=T1・s+1、B(s)=K・(T2・s+1、C(s)=T3・s+1と置いたものである。
【0010】
以下、前記(数5)式の電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出を、最初に説明する。
開路電圧V0は、電流Iに可変な効率Aを乗じた値を、或る初期状態から積分したものと考えれば、(数6)式で書ける。
【0011】
【数6】
なお、(数6)式は前記(数2)式におけるhを上記Aに置き換えたものに相当する。
(数6)式を(数5)式に代入すれば(数7)式になる。
【0012】
【数7】
なお、(数7)式は前記(数3)式に相当するものであり、(数3)式中のA(s)、B(s)、C(s)について前記(数5)式と同様に下記の式を代入したものである。
A(s)=T1・s+1
B(s)=K・(T2・s+1)
C(s)=T3・s+1
つまり、(数3)式が一般式であり、それを一次モデルに適用したものが(数7)式である。
上記の(数7)式を整理すれば(数8)式になる。
【0013】
【数8】
なお、(数8)式の最後の式においては、パラメータを下記(数9)式に示すように書き直している。
【0014】
【数9】
安定なローパスフィルタG1(s)を(数8)式の両辺に導入して、整理すれば(数10)式になる。
【0015】
【数10】
(数8)式において、前記(数5)式と逆に
T1・s+1=A(s)
K・(T2・s+1)=B(s)
T3・s+1=C(s)
を代入すると、
s・A(s)・C(s)・V=B(s)・C(s)・s・I+A・A(s)・I
となり、これを変形すると、
s・A(s)・C(s)・V=〔B(s)・C(s)・s+A・A(s)〕・I
となる。
つまり、一般式を一次モデルに適用したものが(数10)式である。
【0016】
実際に計測可能な電流Iや端子電圧Vを、ローパスフィルタやバンドパスフィルタで処理した値を下記(数11)式のように定義する。ただし、p1は、G1(s)の応答性を決める定数である。
【0017】
【数11】
上記(数11)式に示した変数を用いて(数10)式を書き直せば(数12)式になり、変形すれば、(数13)式になる。
【0018】
【数12】
【0019】
【数13】
(数13)式は、計測可能な値と未知パラメータの積和式になっているので、一般的な適応デジタルフィルタの標準形(数14)式と一致する。
なお、ωTは、ベクトルωの行と列を入れ替えた転置ベクトルを意味する。
【0020】
【数14】
ただし、(数14)式において、y、ωT、θはそれぞれ下記(数15)式で示される。
【0021】
【数15】
したがって、電流Iと端子電圧Vにフィルタ処理を施した信号を、適応デジタルフィルタ演算に用いることで、未知パラメータベクトルθを推定することが出来る。
本実施例では、単純な「最小二乗法による適応フィルタ」の論理的な欠点(一度推定値が収束すると、その後パラメータが変化しても再度正確な推定ができないこと)を改善した「両限トレースゲイン方式」を用いる。前記(数14)式を前提にした未知パラメータベクトルθを推定するためのパラメータ推定アルゴリズムは(数16)式に示すようになる。ただし、k時点のパラメータ推定値をθ(k)とする。
【0022】
【数16】
ただし、λ1、λ3(k)、γU、γLは初期設定値で、b<λ1<1、0<λ3(k)<∞とする。P(0)は十分大きな値、θ(0)は非ゼロの十分小さな値を初期値とする。trace{P}は行列Pのトレースを意味する。
以上が、電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出である。
【0023】
図5および図6は、バッテリーコントローラ30のマイクロコンピュータが行う処理のフローチャートであり、同図のルーチンは一定周期T0(例えば10msec)毎に実施される。例えば、I(k)は今回の値、I(k−1)は1回前の値を意味する。
まず、図5において、ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)を計測する。
ステップS20では、二次電池の遮断リレーのオン・オフ判断を行う。つまりバッテリーコントローラ30は二次電池の遮断リレーの制御も行っており、リレー遮断時(電流I=0)はステップS30へ進む。リレー締結時はステップS40へ進む。
ステップS30では、端子電圧V(k)を端子電圧初期値V_iniとして記憶する。
ステップS40では、端子電圧差分値△V(k)を算出する。
ただし、△V(k)=V(k)−V_ini
これは、適応デジタルフィルタ内の推定パラメータの初期値を約0としているので、推定演算開始時に推定パラメータが発散しないように、入力を全て0とするためである。リレー遮断時はステップS30を通るので、I=0かつ△V(k)=0のため、推定パラメータは初期状態のままである。
【0024】
ステップS50では、計測した電流値が不感帯(微小範囲)内にあるか否かを、電流の絶対値|I(k)|で判定する。そして|I(k)|<所定値の場合はステップS60へ進む。その他の場合はステップS100へ進む。
ステップS60では、カウンタCNT1(k)をインクリメントしてステップS70へ進む。
ステップS70では、電流値が不感帯内の値を継続している時間を判定する。そしてCNT1(k)>所定値(例えば50秒)の場合、つまり不感帯内の値を所定値以上継続している場合はステップS80へ進む。その他の場合はステップS90へ進む。
ステップS80では、適応フィルタ保持フラグFHOJI(k)=1とする。ステップS90では、適応フィルタ保持フラグFHOJI(k)=0とする。ステップS100では、適応フィルタ保持フラグFHOJI(k)=0、およびCNT1(k)=0とする。ステップS80、ステップS90、ステップS100で上記の処理を行った後は、それぞれ図6のステップS110へ進む。
【0025】
以下、図6において、ステップS110では、電流I(k)と端子電圧差分値△V(k)に、(数11)式に基づきローパスフィルタ、バンドパスフィルタのフィルタ処理を施し、I0(k)〜I3(k)およびV1(k)〜V3(k)を(数17)式から算出する。
この際、(数16)式のパラメータ推定アルゴリズムの推定精度を良くするために、観測ノイズを低減するようローパスフィルタG1(s)の応答性を遅く設定する。ただし、電池の応答特性(時定数T1の概略値は既知である)よりも速い特性でないと、電池モデルの各パラメータを精度良く推定できない。(数17)式のp1は、G1(s)の応答性を決める定数である。
【0026】
【数17】
次に、ステップS120では、適応フィルタでの推定演算を実行するか、停止して内部変数を全て保持するかを、適応フィルタ保持フラグFHOJI(k)で判断する。FHOJI(k)=1の場合、推定演算を保持するためステップS140へ進む。その他の場合は推定演算を実行(前回値を保持しない)するためステップS130へ進む。
ステップS130では、ステップS110で算出したI0(k)〜I3(k)およびV1(k)〜V3(k)を(数16)式に代入する。そして適応フィルタでのパラメータ推定アルゴリズムである(数16)式を実行し、パラメータ推定値θ(k)を算出する。y(k)、ωT(k)、θ(k)は下記(数18)式で示される。
【0027】
【数18】
ステップS140では、前回の演算値またはステップS130で算出したパラメータ推定値θ(k)の中からa〜eを、電池モデルである前記(数5)式を変形した下記(数20)式に代入して、開路電圧V0の代用としてV0’を算出する。開路電圧V0は変化が緩やかなので、V0’で代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V0(k)である。
ここで、下記(数19)式中の〔1/G2(s)]I等を下記(数22)式に示すように置き換えたものが(数20)式に相当する。また、(数20)式の導出において、(数19)式のKと(数20)式のeは厳密には異なるけれども、物理的にK》A・T1であるため、e≒Kと近似している。また、(数20)式中の各係数a〜eは下記(数21)式に示す内容である。
【0028】
【数19】
【0029】
【数20】
【0030】
【数21】
【0031】
【数22】
(数22)式のp2はG2(s)の応答性を決める定数である。電池パラメータのT1は概略値が数秒と判っているため、(数22)式中のT1’はT1に近い値に設定する。それにより(数20)式中の分子に残る「T1・s+1」を相殺できるため、開路電圧V0の推定精度を向上できるからである。
ステップS150では、ステップS140で算出した△V0(k)はパラメータ推定アルゴリズム開始時からの開路電圧の変化分であるから、開路電圧初期値すなわち端子電圧初期値V_iniを加算して開路電圧推定値V0(k)を下記(数23)式から算出する。
V0(k)=△V0(k)十V_ini …(数23)
ステップS160では、図4に示す開路電圧と充電率の相関マップを用いて、ステップS150で算出したV0(k)から充電率ステップSOC(k)を算出する。
なお、図4において、VLはステップSOC=0%に、VHはステップSOC=100%に相当する開路電圧である。
ステップS170では、次回演算に必要な数値を保存して、今回演算を終了する。以上を、実施例の動作の説明とする。
【0032】
(1)上記のように、二次電池の電流Iと端子電圧Vと開路電圧V0の関係を、一般式では(数1)式、実施例では(数5)式(=数4式)のような伝達関数で近似する構成であるため、最小二乗法等の適応デジタルフィルタ(公知の推定アルゴリズム)を適用することが可能になる効果がある。その結果、式中のパラメータ(オフセット項である開路電圧V0および多項式A(s)、B(s)、C(s)の係数)を一括推定することが可能になる。そして推定したパラメータを(数1)式に代入することで、開路電圧V0の推定値を容易に算出できる。これらのパラメータは充電率や温度や劣化度などに影響され、時々刻々と変化するものであるが、適応デジタルフィルタにより精度良く逐次推定することが可能である。そして図4に示したような開路電圧V0と充電率の一意的な相関を記憶しておけば、推定した開路電圧から充電率に換算できる。そのため、充電率についても式中のパラメータ同様に、精度良く逐次推定することが可能である。
【0033】
(2)また、電流遮断状態のように電流値が微小な値を継続する場合には、各パラメータ推定値の前回演算値を保持する構成であるため、電流遮断中の推定演算がノイズの影響を受けて、適応デジタルフィルタによるパラメータ推定精度が悪化するのを防止できる効果がある。
【0034】
(3)二次電池の電流Iと端子電圧Vの関係式である(数1)式を、(数2)式のように近似した場合には、開路電圧V0(オフセット項)を含まない構成になるため、計測可能な電流Iと端子電圧Vを各々フィルタ処理した値と、未知パラメータ(多項式A(s)、B(s)、C(s)の係数パラメータおよびh)との積和式が得られるので、通常の適応デジタルフィルタ(最小二乗法などで、公知のパラメータ推定アルゴリズム)を連続時間系のまま適用することが可能になるという効果がある。
【0035】
(4)二次電池の電流Iと端子電圧Vの関係式である(数1)式を、(数4)式のように近似した場合には、上記(3)と同様の効果が得られると共に、演算時間やプログラム容量を必要最小限に抑えることができるという効果がある。
【0036】
図7および図8は、実施例に基づいたパラメータ推定のシミュレーション結果を示す図である。図7は、電流遮断状態が長時間継続(500〜800秒)している間も、適応デジタルフィルタの演算を継続して各パラメータ推定値を保持しない(本発明の構成を用いない)場合の状態を示し、図8は適応デジタルフィルタの演算を一時停止して、各パラメータ推定値を前回の演算値に保持する場合(本発明の構成)の状態を示す。なお、シミュレーションの際、電池モデルは(数5)式を用い、1次遅れの時定数に関しては、T1≪T3に設定している。これは、鉛酸電池などを想定した設定である。
【0037】
図7においては、電流遮断中でも各パラメータ推定値を保持しない構成であるため、ノイズの影響を受けてパラメータ推定値は真値から乖離し(図中▲2▼〜▲3▼)、充放電を再開した際にステップSOC推定値に不連続な部分(図中▲1▼)が生じ、推定精度が悪化する。
図8においては、電流遮断中、各パラメータ推定値を前回の演算値に保持する構成であるため、パラメータ推定値は真値と一致し続け(図中▲2▼〜▲3▼)、充放電を再開した際にステップSOC推定値は連続性(図中▲1▼)を有し、推定精度が良好であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を機能ブロックで表した図。
【図2】実施例の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】二次電池の等価回路モデルを示す図。
【図4】開路電圧と充電率の相関マップ。
【図5】バッテリーコントローラ30のマイクロコンピュータが行う処理のフローチャートの一部。
【図6】バッテリーコントローラ30のマイクロコンピュータが行う処理のフローチャートの他の一部。
【図7】電流Iと端子電圧Vを適応フィルタに入力して、各パラメータを推定したシミュレーション結果を示す図。
【図8】本発明の構成において電流Iと端子電圧Vを適応フィルタに入力して、各パラメータを推定したシミュレーション結果を示す図。
【符号の説明】
1…パラメータ推定手段 2…開路電圧V0(k)演算手段
3…充電率推定手段 4…電流I(k)計測手段
5…端子電圧V(k)計測手段 10…二次電池
20…負荷 30…バッテリーコントローラ
40…電流計 50…電圧計
60…温度計
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池の充電率(SOC)を推定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2000−323183号公報
【特許文献2】
特開2000−268886号公報
【非特許文献1】
「論文“適応デジタルフィルタを用いた鉛電池の開路電圧と残存容量の推定”四国総研、四国電力、湯浅電池 T.IEEE Japan Vol.112-C,No.4 1992」
二次電池の充電率SOC(充電状態とも言う)は開路電圧V0(通電遮断時の電池端子電圧であり、起電力、開放電圧とも言う)と相関があるので、開路電圧V0を求めれば充電率を推定することが出来る。しかし、二次電池の端子電圧は、通電を遮断(充放電を終了)した後も安定するまでに時間を要するので、正確な開路電圧V0を求めるには、充放電を終了してから所定の時間が必要である。したがって充放電中や充放電直後では、正確な開路電圧V0を求めることが出来ないので、上記の方法で充電率SOCを求めることが出来ない。そのため、従来は、たとえば上記非特許文献1に記載のような方法を用いて開路電圧V0を推定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のごとき従来例においては、実際の電池の物理特性とは全く異なる「非回帰型の電池モデル(出力値が入力値の現在値および過去値だけで決るモデル)」に「適応デジタルフィルタ(逐次型のモデルパラメータ同定アルゴリズム)」を用いて開路電圧を算出し、この値から充電率SOCを算出している。そのため、実際の電池特性(入力:電流、出力:電圧)に応用した場合、電池特性によっては推定演算が全く収束しなかったり、真値に収束しないため、正確な充電率SOCを推定することが困難である、という問題があった。
本発明は上記のごとき従来技術の問題を解決するためになされたものであり、充電率SOCおよびその他のパラメータを正確に推定することの出来る二次電池の充電率推定装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては、前記(数1)式に示す連続時間系の電池モデルを用いて、適応デジタルフィルタ演算を行い、前記の計測した電流Iと端子電圧Vを用いて過渡項であるA(s)、B(s)、C(s)の係数に対応するパラメータを一括推定するパラメータ推定手段と、計測した電流Iと端子電圧Vおよび前記パラメータ推定手段で推定したパラメータを前記(数1)式に代入することで開路電圧V0を算出する開路電圧演算手段と、推定した開路電圧V0を用いて、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCの関係から充電率を推定する充電率推定手段と、を備えるように構成している。
また、電池モデル式によってパラメータを推定して二次電池の充電状態を検出する二次電池の充電率推定装置においては、通常の充放電時には、電流および端子電圧の測定値に対してノイズの値は微小であるため、影響を受けないが、電流遮断時(電流が略0の微小電流時)には計測した電流値および端子電圧値がノイズの影響を受け易く、パラメータ推定精度が悪化する可能性がある。本発明においては、上記の問題を防止するため、電流遮断時(略0の微小電流時:つまり電流の絶対値が所定値以下の場合)にはパラメータの推定値を前回の演算値に保持するように構成している。
【0005】
【発明の効果】
二次電池の電流Iと端子電圧Vと開路電圧V0の関係を、(数1)式のような伝達関数で近似する構成であるため、最小二乗法等の適応デジタルフィルタ(公知の推定アルゴリズム)を適用することが可能になる。その結果、式中のパラメータ(オフセット項である開路電圧V0および多項式A(s)、B(s)、C(s)の係数)を一括推定することが可能になる。これらのパラメータは充電率や温度や劣化度などに影響され、時々刻々と変化するものであるが、適応デジタルフィルタにより精度良く逐次推定することが可能である。そして開路電圧V0と充電率の一意的な相関を記憶しておけば、推定した開路電圧から充電率に換算できる。そのため、充電率についても式中のパラメータ同様に、精度良く逐次推定することが可能である。
また、電流遮断状態のように電流が微小な値を継続する場合には、各パラメータ推定値として前回の演算値を保持する構成であるため、電流遮断中の推定演算がノイズの影響を受けて、適応デジタルフィルタによるパラメータ推定精度が悪化するのを防止することができる、という効果がある。
【0006】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例を機能ブロックで表した図である。図1において、1はパラメータ推定手段であり、開路電圧V0(k)をオフセット項とする電池モデルに基づいたものである。また、2は開路電圧V0(k)演算手段、3は開路電圧から充電率を演算する充電率推定手段である。また、4は電池から充放電される電流を検出する電流I(k)計測手段、5は電池の端子電圧を検出する端子電圧V(k)計測手段である。
【0007】
図2は、実施例の具体的な構成を示すブロック図である。この実施例は、二次電池でモータ等の負荷を駆動したり、モータの回生電力で二次電池を充電するシステムに、二次電池の充電率推定装置を設けた例を示す。
図2において、10は二次電池(単に電池とも言う)、20はモータ等の負荷、30は電池の充電状態を推定するバッテリーコントローラ(電子制御ユニット)で、プログラムを演算するCPUやプログラムを記憶したROMや演算結果を記憶するRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。40は電池から充放電される電流を検出する電流計、50は電池の端子電圧を検出する電圧計、60は電池の温度を検出する温度計であり、それぞれバッテリーコントローラ30に接続される。上記のバッテリーコントローラ30は前記図1のパラメータ推定手段1、開路電圧V0(k)演算手段2および充電率推定手段3の部分に相当する。また、電流計40は電流I(k)計測手段4に、電圧計50は端子電圧V(k)計測手段5に、それぞれ相当する。
【0008】
まず、本実施例で用いる「電池モデル」を説明する。図3は、二次電池の等価回路モデルを示す図であり、下記(数5)式(=前記数4式)で表わすことが出来る。
【0009】
【数5】
ただし、モデル入力は電流I[A](正値は充電、負値は放電)、モデル出力は端子電圧V[V]、V0[V]は開路電圧、Kは内部抵抗、T1〜T3は時定数、sはラプラス演算子である。
本モデルは、正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。(数5)式は前記(数1)式において、A(s)=T1・s+1、B(s)=K・(T2・s+1、C(s)=T3・s+1と置いたものである。
【0010】
以下、前記(数5)式の電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出を、最初に説明する。
開路電圧V0は、電流Iに可変な効率Aを乗じた値を、或る初期状態から積分したものと考えれば、(数6)式で書ける。
【0011】
【数6】
なお、(数6)式は前記(数2)式におけるhを上記Aに置き換えたものに相当する。
(数6)式を(数5)式に代入すれば(数7)式になる。
【0012】
【数7】
なお、(数7)式は前記(数3)式に相当するものであり、(数3)式中のA(s)、B(s)、C(s)について前記(数5)式と同様に下記の式を代入したものである。
A(s)=T1・s+1
B(s)=K・(T2・s+1)
C(s)=T3・s+1
つまり、(数3)式が一般式であり、それを一次モデルに適用したものが(数7)式である。
上記の(数7)式を整理すれば(数8)式になる。
【0013】
【数8】
なお、(数8)式の最後の式においては、パラメータを下記(数9)式に示すように書き直している。
【0014】
【数9】
安定なローパスフィルタG1(s)を(数8)式の両辺に導入して、整理すれば(数10)式になる。
【0015】
【数10】
(数8)式において、前記(数5)式と逆に
T1・s+1=A(s)
K・(T2・s+1)=B(s)
T3・s+1=C(s)
を代入すると、
s・A(s)・C(s)・V=B(s)・C(s)・s・I+A・A(s)・I
となり、これを変形すると、
s・A(s)・C(s)・V=〔B(s)・C(s)・s+A・A(s)〕・I
となる。
つまり、一般式を一次モデルに適用したものが(数10)式である。
【0016】
実際に計測可能な電流Iや端子電圧Vを、ローパスフィルタやバンドパスフィルタで処理した値を下記(数11)式のように定義する。ただし、p1は、G1(s)の応答性を決める定数である。
【0017】
【数11】
上記(数11)式に示した変数を用いて(数10)式を書き直せば(数12)式になり、変形すれば、(数13)式になる。
【0018】
【数12】
【0019】
【数13】
(数13)式は、計測可能な値と未知パラメータの積和式になっているので、一般的な適応デジタルフィルタの標準形(数14)式と一致する。
なお、ωTは、ベクトルωの行と列を入れ替えた転置ベクトルを意味する。
【0020】
【数14】
ただし、(数14)式において、y、ωT、θはそれぞれ下記(数15)式で示される。
【0021】
【数15】
したがって、電流Iと端子電圧Vにフィルタ処理を施した信号を、適応デジタルフィルタ演算に用いることで、未知パラメータベクトルθを推定することが出来る。
本実施例では、単純な「最小二乗法による適応フィルタ」の論理的な欠点(一度推定値が収束すると、その後パラメータが変化しても再度正確な推定ができないこと)を改善した「両限トレースゲイン方式」を用いる。前記(数14)式を前提にした未知パラメータベクトルθを推定するためのパラメータ推定アルゴリズムは(数16)式に示すようになる。ただし、k時点のパラメータ推定値をθ(k)とする。
【0022】
【数16】
ただし、λ1、λ3(k)、γU、γLは初期設定値で、b<λ1<1、0<λ3(k)<∞とする。P(0)は十分大きな値、θ(0)は非ゼロの十分小さな値を初期値とする。trace{P}は行列Pのトレースを意味する。
以上が、電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出である。
【0023】
図5および図6は、バッテリーコントローラ30のマイクロコンピュータが行う処理のフローチャートであり、同図のルーチンは一定周期T0(例えば10msec)毎に実施される。例えば、I(k)は今回の値、I(k−1)は1回前の値を意味する。
まず、図5において、ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)を計測する。
ステップS20では、二次電池の遮断リレーのオン・オフ判断を行う。つまりバッテリーコントローラ30は二次電池の遮断リレーの制御も行っており、リレー遮断時(電流I=0)はステップS30へ進む。リレー締結時はステップS40へ進む。
ステップS30では、端子電圧V(k)を端子電圧初期値V_iniとして記憶する。
ステップS40では、端子電圧差分値△V(k)を算出する。
ただし、△V(k)=V(k)−V_ini
これは、適応デジタルフィルタ内の推定パラメータの初期値を約0としているので、推定演算開始時に推定パラメータが発散しないように、入力を全て0とするためである。リレー遮断時はステップS30を通るので、I=0かつ△V(k)=0のため、推定パラメータは初期状態のままである。
【0024】
ステップS50では、計測した電流値が不感帯(微小範囲)内にあるか否かを、電流の絶対値|I(k)|で判定する。そして|I(k)|<所定値の場合はステップS60へ進む。その他の場合はステップS100へ進む。
ステップS60では、カウンタCNT1(k)をインクリメントしてステップS70へ進む。
ステップS70では、電流値が不感帯内の値を継続している時間を判定する。そしてCNT1(k)>所定値(例えば50秒)の場合、つまり不感帯内の値を所定値以上継続している場合はステップS80へ進む。その他の場合はステップS90へ進む。
ステップS80では、適応フィルタ保持フラグFHOJI(k)=1とする。ステップS90では、適応フィルタ保持フラグFHOJI(k)=0とする。ステップS100では、適応フィルタ保持フラグFHOJI(k)=0、およびCNT1(k)=0とする。ステップS80、ステップS90、ステップS100で上記の処理を行った後は、それぞれ図6のステップS110へ進む。
【0025】
以下、図6において、ステップS110では、電流I(k)と端子電圧差分値△V(k)に、(数11)式に基づきローパスフィルタ、バンドパスフィルタのフィルタ処理を施し、I0(k)〜I3(k)およびV1(k)〜V3(k)を(数17)式から算出する。
この際、(数16)式のパラメータ推定アルゴリズムの推定精度を良くするために、観測ノイズを低減するようローパスフィルタG1(s)の応答性を遅く設定する。ただし、電池の応答特性(時定数T1の概略値は既知である)よりも速い特性でないと、電池モデルの各パラメータを精度良く推定できない。(数17)式のp1は、G1(s)の応答性を決める定数である。
【0026】
【数17】
次に、ステップS120では、適応フィルタでの推定演算を実行するか、停止して内部変数を全て保持するかを、適応フィルタ保持フラグFHOJI(k)で判断する。FHOJI(k)=1の場合、推定演算を保持するためステップS140へ進む。その他の場合は推定演算を実行(前回値を保持しない)するためステップS130へ進む。
ステップS130では、ステップS110で算出したI0(k)〜I3(k)およびV1(k)〜V3(k)を(数16)式に代入する。そして適応フィルタでのパラメータ推定アルゴリズムである(数16)式を実行し、パラメータ推定値θ(k)を算出する。y(k)、ωT(k)、θ(k)は下記(数18)式で示される。
【0027】
【数18】
ステップS140では、前回の演算値またはステップS130で算出したパラメータ推定値θ(k)の中からa〜eを、電池モデルである前記(数5)式を変形した下記(数20)式に代入して、開路電圧V0の代用としてV0’を算出する。開路電圧V0は変化が緩やかなので、V0’で代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V0(k)である。
ここで、下記(数19)式中の〔1/G2(s)]I等を下記(数22)式に示すように置き換えたものが(数20)式に相当する。また、(数20)式の導出において、(数19)式のKと(数20)式のeは厳密には異なるけれども、物理的にK》A・T1であるため、e≒Kと近似している。また、(数20)式中の各係数a〜eは下記(数21)式に示す内容である。
【0028】
【数19】
【0029】
【数20】
【0030】
【数21】
【0031】
【数22】
(数22)式のp2はG2(s)の応答性を決める定数である。電池パラメータのT1は概略値が数秒と判っているため、(数22)式中のT1’はT1に近い値に設定する。それにより(数20)式中の分子に残る「T1・s+1」を相殺できるため、開路電圧V0の推定精度を向上できるからである。
ステップS150では、ステップS140で算出した△V0(k)はパラメータ推定アルゴリズム開始時からの開路電圧の変化分であるから、開路電圧初期値すなわち端子電圧初期値V_iniを加算して開路電圧推定値V0(k)を下記(数23)式から算出する。
V0(k)=△V0(k)十V_ini …(数23)
ステップS160では、図4に示す開路電圧と充電率の相関マップを用いて、ステップS150で算出したV0(k)から充電率ステップSOC(k)を算出する。
なお、図4において、VLはステップSOC=0%に、VHはステップSOC=100%に相当する開路電圧である。
ステップS170では、次回演算に必要な数値を保存して、今回演算を終了する。以上を、実施例の動作の説明とする。
【0032】
(1)上記のように、二次電池の電流Iと端子電圧Vと開路電圧V0の関係を、一般式では(数1)式、実施例では(数5)式(=数4式)のような伝達関数で近似する構成であるため、最小二乗法等の適応デジタルフィルタ(公知の推定アルゴリズム)を適用することが可能になる効果がある。その結果、式中のパラメータ(オフセット項である開路電圧V0および多項式A(s)、B(s)、C(s)の係数)を一括推定することが可能になる。そして推定したパラメータを(数1)式に代入することで、開路電圧V0の推定値を容易に算出できる。これらのパラメータは充電率や温度や劣化度などに影響され、時々刻々と変化するものであるが、適応デジタルフィルタにより精度良く逐次推定することが可能である。そして図4に示したような開路電圧V0と充電率の一意的な相関を記憶しておけば、推定した開路電圧から充電率に換算できる。そのため、充電率についても式中のパラメータ同様に、精度良く逐次推定することが可能である。
【0033】
(2)また、電流遮断状態のように電流値が微小な値を継続する場合には、各パラメータ推定値の前回演算値を保持する構成であるため、電流遮断中の推定演算がノイズの影響を受けて、適応デジタルフィルタによるパラメータ推定精度が悪化するのを防止できる効果がある。
【0034】
(3)二次電池の電流Iと端子電圧Vの関係式である(数1)式を、(数2)式のように近似した場合には、開路電圧V0(オフセット項)を含まない構成になるため、計測可能な電流Iと端子電圧Vを各々フィルタ処理した値と、未知パラメータ(多項式A(s)、B(s)、C(s)の係数パラメータおよびh)との積和式が得られるので、通常の適応デジタルフィルタ(最小二乗法などで、公知のパラメータ推定アルゴリズム)を連続時間系のまま適用することが可能になるという効果がある。
【0035】
(4)二次電池の電流Iと端子電圧Vの関係式である(数1)式を、(数4)式のように近似した場合には、上記(3)と同様の効果が得られると共に、演算時間やプログラム容量を必要最小限に抑えることができるという効果がある。
【0036】
図7および図8は、実施例に基づいたパラメータ推定のシミュレーション結果を示す図である。図7は、電流遮断状態が長時間継続(500〜800秒)している間も、適応デジタルフィルタの演算を継続して各パラメータ推定値を保持しない(本発明の構成を用いない)場合の状態を示し、図8は適応デジタルフィルタの演算を一時停止して、各パラメータ推定値を前回の演算値に保持する場合(本発明の構成)の状態を示す。なお、シミュレーションの際、電池モデルは(数5)式を用い、1次遅れの時定数に関しては、T1≪T3に設定している。これは、鉛酸電池などを想定した設定である。
【0037】
図7においては、電流遮断中でも各パラメータ推定値を保持しない構成であるため、ノイズの影響を受けてパラメータ推定値は真値から乖離し(図中▲2▼〜▲3▼)、充放電を再開した際にステップSOC推定値に不連続な部分(図中▲1▼)が生じ、推定精度が悪化する。
図8においては、電流遮断中、各パラメータ推定値を前回の演算値に保持する構成であるため、パラメータ推定値は真値と一致し続け(図中▲2▼〜▲3▼)、充放電を再開した際にステップSOC推定値は連続性(図中▲1▼)を有し、推定精度が良好であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を機能ブロックで表した図。
【図2】実施例の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】二次電池の等価回路モデルを示す図。
【図4】開路電圧と充電率の相関マップ。
【図5】バッテリーコントローラ30のマイクロコンピュータが行う処理のフローチャートの一部。
【図6】バッテリーコントローラ30のマイクロコンピュータが行う処理のフローチャートの他の一部。
【図7】電流Iと端子電圧Vを適応フィルタに入力して、各パラメータを推定したシミュレーション結果を示す図。
【図8】本発明の構成において電流Iと端子電圧Vを適応フィルタに入力して、各パラメータを推定したシミュレーション結果を示す図。
【符号の説明】
1…パラメータ推定手段 2…開路電圧V0(k)演算手段
3…充電率推定手段 4…電流I(k)計測手段
5…端子電圧V(k)計測手段 10…二次電池
20…負荷 30…バッテリーコントローラ
40…電流計 50…電圧計
60…温度計
Claims (4)
- 二次電池の電流Iと端子電圧Vとを計測し、適応デジタルフィルタを用いて、前記電流Iと端子電圧Vの計測値から開路電圧V0を推定し、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定装置において、
(数1)式に示す連続時間系の電池モデルを用いて、適応デジタルフィルタ演算を行い、前記の計測した電流Iと端子電圧Vを用いて過渡項であるA(s)、B(s)、C(s)の係数に対応するパラメータを一括推定するパラメータ推定手段と、
前記の計測した電流Iと端子電圧Vおよび前記パラメータ推定手段で推定したパラメータを前記(数1)式に代入することで開路電圧V0を算出する開路電圧演算手段と、
前記の推定した開路電圧V0を用いて、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCの関係から充電率を推定する充電率推定手段と、
を備え、かつ、前記パラメータ推定手段は、計測した電流Iの絶対値が所定値以下の場合には適応デジタルフィルタの演算を停止し、各パラメータ推定値を前回の演算値に保持するように構成したことを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
- 前記パラメータ推定手段は、計測した電流Iの絶対値が所定値以下の値を所定時間以上継続した場合に適応デジタルフィルタの演算を停止し、各パラメータ推定値を前回の演算値に保持することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電率推定装置。
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