JP2007024740A - 二次電池の充電率推定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】起動直後またはリセット直後の前処理フィルタ手段および適応デジタルフィルタ演算手段の演算開始時における誤差を低減し、充電率を精度良く推定できる二次電池の充電率推定装置を提供する。
【解決手段】起動直後またはリセット直後における前処理フィルタ手段3および適応デジタルフィルタ演算手段4の演算開始時に、適応デジタルフィルタ演算手段の推定誤差が0となるように前処理フィルタ手段を初期化する初期化手段7を備えた構成。例えば(数1)式に示す初期化を行えば(数2)式に示したように推定誤差e(k)が0となるため、適応デジタルフィルタにおける電池パラメータ推定値は再調整されない。従って推定値の初期値が真値とほぼ一致していれば、リセット直後からパラメータ推定値は真値に追従するので、リセット直後から充電率を精度良く推定できる。
【選択図】図1
【解決手段】起動直後またはリセット直後における前処理フィルタ手段3および適応デジタルフィルタ演算手段4の演算開始時に、適応デジタルフィルタ演算手段の推定誤差が0となるように前処理フィルタ手段を初期化する初期化手段7を備えた構成。例えば(数1)式に示す初期化を行えば(数2)式に示したように推定誤差e(k)が0となるため、適応デジタルフィルタにおける電池パラメータ推定値は再調整されない。従って推定値の初期値が真値とほぼ一致していれば、リセット直後からパラメータ推定値は真値に追従するので、リセット直後から充電率を精度良く推定できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、二次電池の充電率SOC(充電状態ともいう)を推定する装置に関する。
特許文献1に記載のように、二次電池の充電率SOCと開路電圧V0(通電遮断時の端子電圧であり、起電力、開放電圧ともいう)の関係は、劣化の進行具合や温度等の使用条件によらず略一定であるという特性があるので、使用中の二次電池について開路電圧を求めることにより現在の充電率を正確に推定することができる。特許文献1においては、二次電池の電流Iと端子電圧Vから適応デジタルフィルタを用いて開路電圧V0を推定し、開路電圧V0から予め計測しておいたデータに基づいて充電率SOCを求めている。
また、特許文献2には、パラメータ推定演算を中止(電源オフまたはリセット)した後に推定演算を再開する場合には、中止する直前の値(前回値)を用いて充電率推定演算を行う内容が記載されている。
また、特許文献2には、パラメータ推定演算を中止(電源オフまたはリセット)した後に推定演算を再開する場合には、中止する直前の値(前回値)を用いて充電率推定演算を行う内容が記載されている。
特許文献1、特許文献2においては、適応デジタルフィルタによるパラメータ推定を行うための定式化として、実際に計測可能な電流Iと端子電圧Vに、ローパスフィルタやバンドパスフィルタ(以下、前処理フィルタと記載)で処理した値を用いて演算を行っている。そして特許文献2においては、適応デジタルフィルタを用いた推定ロジックが動作を開始するCPUの起動直後あるいはCPUがソフトウエアまたはハードウエア的にリセットがかかった直後(以後両者を総じて「リセット直後」と表記する)に前記前処理フィルタおよび前記適応デジタルフィルタにより電池パラメータ推定ロジックが演算を開始した時点において、前処理フィルタにおける電流と電圧の1階微分値〔I2(k)、V2(k)〕および2階微分値〔I3(k)、V3(k)〕の初期出力値をそれぞれ0に初期化している。このため、例えば電流I(k)≠0かつ一定の状態でリセットがかかってしまうと、演算を開始する際のパラメータ推定値の初期値〔K(k−1)、T1(k−1)、T2(k−1)、h(k−1)〕が真値とほぼ一致しているにもかかわらず、推定誤差e(k)がゼロでない値を持っため、これがゼロになるように電池パラメータ推定値が再調整されてしまう。その結果、パラメータ推定値が真値から離れた値に推定されてしまい、充電率推定値にも推定誤差が生じてしまう、という問題があった。
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、起動直後またはリセット直後の前処理フィルタ手段および適応デジタルフィルタ演算手段の演算開始時における誤差を低減し、充電率を精度良く推定することの出来る二次電池の充電率推定装置を提供することを目的とする。
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、起動直後またはリセット直後の前処理フィルタ手段および適応デジタルフィルタ演算手段の演算開始時における誤差を低減し、充電率を精度良く推定することの出来る二次電池の充電率推定装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明においては、起動直後またはリセット直後における前処理フィルタ手段および適応デジタルフィルタ演算手段の演算開始時に、適応デジタルフィルタ演算手段の推定誤差が0となるように前処理フィルタ手段を初期化する初期化手段を備えるように構成している。具体的には、例えば請求項2に記載のように、 (a)電流についてのローパスフィルタは、初期出力I1(k)が計測された電流値I(k)となるように初期化し、
(b)電流についての1階微分フィルタは、初期出力I2(k)が0となるように初期化し、
(c)電流についての2階微分フィルタは、初期出力I3(k)が0となるように初期化し、
(d)電圧についてのローパスフィルタは、初期出力V1(k)が計測された電圧値V(k)となるように初期化し、
(e)電圧についての1階微分フィルタは、演算を中止する直前の演算結果であるh(k−1)を用いて、初期出力V2(k)=h(k−1)・I(k)となるように初期化し、
(f)電圧についての2階微分フィルタは、初期出力V3(k)が0となるように初期化する。この初期化により、(数2)式に示すように推定誤差e(k)は0となる。
(b)電流についての1階微分フィルタは、初期出力I2(k)が0となるように初期化し、
(c)電流についての2階微分フィルタは、初期出力I3(k)が0となるように初期化し、
(d)電圧についてのローパスフィルタは、初期出力V1(k)が計測された電圧値V(k)となるように初期化し、
(e)電圧についての1階微分フィルタは、演算を中止する直前の演算結果であるh(k−1)を用いて、初期出力V2(k)=h(k−1)・I(k)となるように初期化し、
(f)電圧についての2階微分フィルタは、初期出力V3(k)が0となるように初期化する。この初期化により、(数2)式に示すように推定誤差e(k)は0となる。
リセット直後において、例えば(数2)式に示したように推定誤差e(k)が0となるため、適応デジタルフィルタにおける電池パラメータ推定値は再調整されない。従って、推定値の初期値が真値とほぼ一致していれば、リセット直後からパラメータ推定値は真値に追従する。その結果、リセット直後から充電率を精度良く推定することができる、という効果がある。
(実施例1)
図1は、本発明の一実施例の構成を示す機能ブロック図である。
本発明は図1に示すように、二次電池に充放電される電流を定期的に検出する電流計測部1と、電池の端子電圧を定期的に検出する電圧計測部2と、計測した電流値I(k)と電圧値V(k)からそれらにローパスフィルタ処理を施した値〔I1(k)、V1(k)〕、1階微分値〔I2(k)、V2(k)〕、2階微分値〔I3(k)、V3(k)〕を演算する前処理フィルタ部3と、前処理フィルタ部3の出力を入力として、電池の内部状態を表すパラメータ(K,T1,T2)を推定する適応デジタルフィルタ演算部4と、前処理フィルタ部3の出力と適応デジタルフィルタ演算部4で同定された電池パラメータとから開路電圧V0(k)を推定する開路電圧演算部5と、予め取得した当該電池の充電率−開路電圧特性に基づいて、上記の推定された開路電圧V0(k)から充電率SOCを演算する充電率演算部6と、起動(電源投入)またはリセットを検出し、起動時またはリセット後の演算開始時に前処理フィルタ部3を初期化する前処理フィルタ初期化部7から構成されている。ただし、(k)は時点kにおける値(現時点の演算値)、h(k−1)は時点kの一回前の演算時における値(前回の演算値)を示す。
図1は、本発明の一実施例の構成を示す機能ブロック図である。
本発明は図1に示すように、二次電池に充放電される電流を定期的に検出する電流計測部1と、電池の端子電圧を定期的に検出する電圧計測部2と、計測した電流値I(k)と電圧値V(k)からそれらにローパスフィルタ処理を施した値〔I1(k)、V1(k)〕、1階微分値〔I2(k)、V2(k)〕、2階微分値〔I3(k)、V3(k)〕を演算する前処理フィルタ部3と、前処理フィルタ部3の出力を入力として、電池の内部状態を表すパラメータ(K,T1,T2)を推定する適応デジタルフィルタ演算部4と、前処理フィルタ部3の出力と適応デジタルフィルタ演算部4で同定された電池パラメータとから開路電圧V0(k)を推定する開路電圧演算部5と、予め取得した当該電池の充電率−開路電圧特性に基づいて、上記の推定された開路電圧V0(k)から充電率SOCを演算する充電率演算部6と、起動(電源投入)またはリセットを検出し、起動時またはリセット後の演算開始時に前処理フィルタ部3を初期化する前処理フィルタ初期化部7から構成されている。ただし、(k)は時点kにおける値(現時点の演算値)、h(k−1)は時点kの一回前の演算時における値(前回の演算値)を示す。
図2は、本発明の一実施例の具体的な構成図である。この実施例は、二次電池でモータ等の負荷を駆動したり、モータの回生で二次電池を充電したりするシステムにおいて、二次電池の充電率を推定演算する機能を設けた例を示す。
図2において、10は二次電池、20はモータ等の負荷、30は二次電池の充電率や満充電容量等を推定する電子制御ユニット(バッテリコントローラ)で、ブログラムを演算するCPUやプログラムや演算結果を記憶するROMやRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成されている。40は電池から充放電される電流を検出する電流センサ、50は電池の端子電圧(単に電圧ともいう)を検出する電圧センサであり、それぞれ電子制御ユニット30に接続されている。上記の電子制御ユニット30は前記図1の前処理フィルタ部3、適応デジタルフィルタ演算部4、開路電圧演算部5、充電率演算部6、および前処理フィルタ初期化部7の部分に相当する。また、電流センサ40は電流計測部1に、電圧センサ50は電圧計測部2に、それぞれ相当する。
図2において、10は二次電池、20はモータ等の負荷、30は二次電池の充電率や満充電容量等を推定する電子制御ユニット(バッテリコントローラ)で、ブログラムを演算するCPUやプログラムや演算結果を記憶するROMやRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成されている。40は電池から充放電される電流を検出する電流センサ、50は電池の端子電圧(単に電圧ともいう)を検出する電圧センサであり、それぞれ電子制御ユニット30に接続されている。上記の電子制御ユニット30は前記図1の前処理フィルタ部3、適応デジタルフィルタ演算部4、開路電圧演算部5、充電率演算部6、および前処理フィルタ初期化部7の部分に相当する。また、電流センサ40は電流計測部1に、電圧センサ50は電圧計測部2に、それぞれ相当する。
最初に、図1中の適応デジタルフィルタ演算部4において行われる適応デジタルフィルタを用いた電池パラメータ(K,T1,T2)の推定方法に関して説明する。
図3は、上記の推定に用いる電池モデルを示す回路図である。図3において、モデルヘの入力は電流I(t)[A](正値:充電、負値:放電)、出力は端子電圧V(t)[V]、開路電圧V0(t)[V]であり、R1は電荷移動抵抗、R2は純抵抗、C1は電気二重層容量である。本モデルは正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。
この電池モデルは、sを微分オペレータとして(数7)式で表現できる。
この電池モデルは、sを微分オペレータとして(数7)式で表現できる。
y=V2(t)、 ωT=[V3(t),I3(t),I2(t),I1(t)]、
θT=[−T1,K・T2,K,h]
である。
従って、電流Iと端子電圧Vにフィルタ処理を施した信号を、適応デジタルフィルタ演算に用いることで、未知パラメータベクトルθを推定することが出来る。
本実施例では、単純な「最小二乗法による適応デジタルフィルタ」の論理的な欠点、すなわち、一度推定値が収束すると、その後パラメータが変化しても再度正確な推定ができない点を改善した「両限トレースゲイン方式」を用いる。
上記(数15)式を前提に未知パラメータベクトルθを推定するための逐次推定アルゴリズムは(数16)式に示すようになる。ただし、k時点のパラメータ推定値をθ^(k)とする。なお、θの右肩に付した^は推定値を示すが、数式中ではθの真上に付している(以下、同じ)。
上記(数15)式を前提に未知パラメータベクトルθを推定するための逐次推定アルゴリズムは(数16)式に示すようになる。ただし、k時点のパラメータ推定値をθ^(k)とする。なお、θの右肩に付した^は推定値を示すが、数式中ではθの真上に付している(以下、同じ)。
以上が適応デジタルフィルタ演算部において行われる適応デジタルフィルタを用いた電池パラメータ推定方法である。
次に図1中の開路電圧演算部5での処理に関して説明する。
上記適応デジタルフィルタを用いたパラメータ推定アルゴリズムで算出した電池パラメータ推定値(T1^、T2^、K^)と前処理フィルタの出力〔I1(k)、I2(k)、V1(k)、V2(k)〕を用いて、前記(数8)式および(数13)式から、開路電圧推定値V0(k)は(数17)式で算出できる。
上記適応デジタルフィルタを用いたパラメータ推定アルゴリズムで算出した電池パラメータ推定値(T1^、T2^、K^)と前処理フィルタの出力〔I1(k)、I2(k)、V1(k)、V2(k)〕を用いて、前記(数8)式および(数13)式から、開路電圧推定値V0(k)は(数17)式で算出できる。
本実施例ではこの充電率推定方法を例として以下の説明を行う。
図5は充電率推定演算の処理手順をリセット直後の初期化処理を含めて示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて実施例の動作を説明する。なお、この処理は所定の制御周期(例えば50[msec])で実行される。
図5は充電率推定演算の処理手順をリセット直後の初期化処理を含めて示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて実施例の動作を説明する。なお、この処理は所定の制御周期(例えば50[msec])で実行される。
step1では、電流センサ40からの信号に基づいて充放電電流I(k)を検出する。
step2では、電圧センサ50からの信号に基づいて二次電池の端子電圧V(k)を検出する。
step3では、初期化完了フラグをチェックし、初期化完了フラグがセットされていない場合には初期化処理(step4、step5、step6)に分岐する。一方初期化完了フラグがセットされている場合には、前処理フィルタ処理(step7)へ分岐する。
なお、初期化完了フラグはリセット直後のように初期化が完了していない場合にはセットされておらず、初期化完了時にフラグにセットされる構成(後記step6)となっている。
step4は、初期化処理の一部であり、前記(数16)式で示される適応デジタルフィルタの適応則における推定誤差e(k)が0となるように前処理フィルタを初期化する。
step2では、電圧センサ50からの信号に基づいて二次電池の端子電圧V(k)を検出する。
step3では、初期化完了フラグをチェックし、初期化完了フラグがセットされていない場合には初期化処理(step4、step5、step6)に分岐する。一方初期化完了フラグがセットされている場合には、前処理フィルタ処理(step7)へ分岐する。
なお、初期化完了フラグはリセット直後のように初期化が完了していない場合にはセットされておらず、初期化完了時にフラグにセットされる構成(後記step6)となっている。
step4は、初期化処理の一部であり、前記(数16)式で示される適応デジタルフィルタの適応則における推定誤差e(k)が0となるように前処理フィルタを初期化する。
以下、step4に示した前処理フィルタの初期化処理について説明する。
前処理フィルタは連続時間系におけるその伝達関数が(数18)式で表される。
前処理フィルタは連続時間系におけるその伝達関数が(数18)式で表される。
(数18)式において、分子はm=0,1,2であり、m=0はローパスフィルタ、m=1は1階微分、m=2は2階微分を表す。
分母の次数nは分子の次数m以上であれば良いが、本実施例ではn=3に設定する。(数18)式の分母を3次としたフィルタを(数19)式を用いた双一次変換により離散化すると、その一般形は時刻kでの出力をy(k)、入力をu(k)として(数20)式に示すようになる。なお、本実施例においては、連続系から離散系への変換に双一次変換を用いた場合で説明するが、離散化の方法はこれに限定されるものではない。
従って、前処理フィルタにおいて初期化すべき値は、入力の現在値u(k)および過去値u(k−1)、u(k−2)、u(k−3)とフィルタ出力の現在値y(k)および過去値y(k−1)、y(k−2)、y(k−3)である。なお、(k)は今回の演算値(現在値)、(k−1)は一回前の演算値、y(k−2)は二回前の演算値、y(k−3)は三回前の演算値を示す。
入力uや出力yは、例えば電流についてのローパスフィルタの場合には具体的には(数21)式のようになる。
前処理フィルタを初期化する第一の方法では、step1で計測された電流I(k)とstep2で計測された電圧V(k)およびリセット直前に同定してEEPROM等に保存しておいた電池パラメータ推定値のうちh^(k−1)を用いて下記(a)〜(f)に記載のように初期化する。
(a)電流についてのローパスフィルタは、リセットより前の時刻においては入力電流がI(k)であり(数22式)、初期出力I1(k)が計測された電流値I(k)となるように初期化する(数23式)。
(a)電流についてのローパスフィルタは、リセットより前の時刻においては入力電流がI(k)であり(数22式)、初期出力I1(k)が計測された電流値I(k)となるように初期化する(数23式)。
ただし△tは前処理フィルタの演算周期を表し、本実施例では50[msec]に設定した。
次に、前処理フィルタを初期化する第二の方法では、予め測定した当該電池の開路電圧−充電率特性の近似多項式SOC=f(V0)を用いて、リセット直前に演算してEEPROM等に保存しておいた開路電圧推定値V0(k−1)と満充電容量推定値QMAX(k−1)(満充電容量は総容量とも云う)から電池パラメータhを推定演算する。
実際には前記(数9)式をhについて整理して得られる(数34)式に基づいて演算する。ただしf'(V0)は開路電圧−充電率特性の近似多項式の導関数であり、αは単位換算係数である。
実際には前記(数9)式をhについて整理して得られる(数34)式に基づいて演算する。ただしf'(V0)は開路電圧−充電率特性の近似多項式の導関数であり、αは単位換算係数である。
以上が前処理フィルタを初期化する第二の方法である。
なお、リセット直後(リセットを行った時点を含む)の開路電圧V0(k)が計測あるいは推定可能であれば、(数34)式においてV0(k−1)の代わりにV0(k)を用いて電池パラメータhを演算しても良い。このV0(k−1)の代わりにV0(k)を用いる方法が前処理フィルタを初期化する第三の方法である。
次に、前処理フィルタを初期化する第四の方法では、図5のstep2で計測された電圧V(k)を用いて以下のように初期化する。
電流についての1階微分フィルタ、電流についての2階微分フィルタ、電圧についてのローパスフィルタ、電圧についての2階微分フィルタは、前処理フィルタを初期化する第一の方法と同様に初期化する(数22式〜数29式および数32式、数33式)。また、電圧についての1階微分フィルタは、リセットより前の時刻においては入力電圧がV(k)であり(数37式)、初期出力V2(k)が0となるように初期化する(数38式)。
電流についての1階微分フィルタ、電流についての2階微分フィルタ、電圧についてのローパスフィルタ、電圧についての2階微分フィルタは、前処理フィルタを初期化する第一の方法と同様に初期化する(数22式〜数29式および数32式、数33式)。また、電圧についての1階微分フィルタは、リセットより前の時刻においては入力電圧がV(k)であり(数37式)、初期出力V2(k)が0となるように初期化する(数38式)。
以上説明した前処理フィルタの初期化処理において、第一と第二の方法の何れかと第三の方法とを併用しても良い。実際には、充電率推定値処理の停止時間(電源OFF中またはリセット中の時間)が比較的短い場合(電池状態があまり変化しない程度の時間)には第一または第二の方法を用いて前処理フィルタを初期化し、充電率推定値処理の停止時間が比較的長く、自己放電等によって電池の状態(開路電圧)が変化していることが予想される場合には第三の方法を選択するのがよい。
次に、step5は、初期化処理の一部であり、適応デジタルフィルタの初期化処理である。ここでは、リセット直前に同定し、EEPROM等に保存しておいた電池パラメータ推定値θ^(k−1)およびP(k−1)を読み出して適応デジタルフィルタを初期化する。
実際にはstep4において第一の方法または第四の方法により前処理フィルタを初期化した場合には、EEPROM等から読み出した電池パラメータ推定値θ^(k−1)およびP(k−1)を前記(数16)式における適応則の前回値とする。
また、step4において第二の方法または第三の方法により前処理フィルタを初期化した場合には、EEPROM等から読み出した電池パラメータ推定値θ^(k−1)のうちh(k−1)は使用せず、前記(数34)式で演算される値を初期値とし、それ以外は読み出した値を初期値とする。
なお、EEPROM等のバックアップ機能が無効な場合では、予め設定してROMに書き込んだ値を前記(数16)式における適応則の初期値とすることもできる。
実際にはstep4において第一の方法または第四の方法により前処理フィルタを初期化した場合には、EEPROM等から読み出した電池パラメータ推定値θ^(k−1)およびP(k−1)を前記(数16)式における適応則の前回値とする。
また、step4において第二の方法または第三の方法により前処理フィルタを初期化した場合には、EEPROM等から読み出した電池パラメータ推定値θ^(k−1)のうちh(k−1)は使用せず、前記(数34)式で演算される値を初期値とし、それ以外は読み出した値を初期値とする。
なお、EEPROM等のバックアップ機能が無効な場合では、予め設定してROMに書き込んだ値を前記(数16)式における適応則の初期値とすることもできる。
次に、step6は、初期化処理の一部であり、初期化完了フラグに1をセットし、次回以降の演算周期においてはstep3において、推定処理(step7およびstep8)へ処理が分岐されるように設定する。
以上で初期化処理を終了する。
以上で初期化処理を終了する。
step7は、推定処理の一部であり、step3で初期化が完了していると判断された場合において実行される。step1で計測された電流I(k)およびstep2で計測された電圧V(k)に、連続系での伝達特性が前記(数18)式で示されるローパスフィルタおよびバンドパスフィルタを用いて、前記(数19)式で示される双一次変換により離散化した前記(数20)式で示される前処理フィルタ処理を施し、I1(k)、I2(k)、I3(k)およびV1(k)、V2(k)、V3(k)を算出する。本実施例では前記(数18)式における時定数Thを1.6に設定した。
step8では、step7で算出したI1(k)、I2(k)、I3(k)およびV2(k)、V3(k)を入力とする(数16)式で表される適応デジタルフィルタにより電池パラメータ推定値θ^(k)を算出する。
step9では、step4で設定またはstep7で算出された前処理フィルタ出力〔I1(k)、I2(k)、V1(k)、V2(k)〕とstep8で出力された電池パラメータ推定値〔K(k)、T1(k)、T2(k)〕から(数17)式により開路電圧推定値V0(k)を算出する。
step10では、図4に示されるような予め計測した当該電池の開路電圧−充電率特性に基づいて、step9で演算された開路電圧推定値V0(k)から充電率推定値SOC(k)を算出する。
なお、本実施例で用いたリチウムイオン電池における開路電圧−充電率特性は、(数41)式に示すような4次の多項式で近似した。
なお、本実施例で用いたリチウムイオン電池における開路電圧−充電率特性は、(数41)式に示すような4次の多項式で近似した。
step11では、step4で初期化された、あるいはstep7で算出された電流I1(k)とstep10で算出された充電率推定値SOC(k)から満充電容量QMAX(k)(総容量とも云う)を算出する。その方法としては、例えば、(数42)式に示すように、電流I(k)を充電率推定値SOCの時間微分値で除算して求めることが出来る。なお、この詳細については、特開2001−231179号公報に記載されている。
以上で、図5の演算処理を終了する。
図6〜図10は、本発明の効果をシミュレーションにより検証した結果を示す図である。
本シミュレーションにおいては、図3に示した電池モデルの各パラメータを、それぞれR1=0.05、R2=0.35、C1=32(K=0.4、T1=1.6、T2=1.4)とし、満充電容量3.53[Ah]と仮定した。
このような電池モデルに、図6中段に示すごときパターンの充放電電流を流した場合の端子電圧が図6下段に示す波形である。また、リセット信号は図6上段に示すタイミングで与えた。
本シミュレーションにおいては、図3に示した電池モデルの各パラメータを、それぞれR1=0.05、R2=0.35、C1=32(K=0.4、T1=1.6、T2=1.4)とし、満充電容量3.53[Ah]と仮定した。
このような電池モデルに、図6中段に示すごときパターンの充放電電流を流した場合の端子電圧が図6下段に示す波形である。また、リセット信号は図6上段に示すタイミングで与えた。
図7および図8は、従来方法(前記特許文献2:特開2004−079472号公報)による結果を示す図であり、従来の方法ではリセット直後に大きな推定誤差が発生し、その結果、パラメータ推定値が真値から大きく離れた値に推定される(図7)。そしてその結果、充電率推定値も真値から大きく離れた値に推定されてしまう(図8)。なお、図8において、破線は真値、実線は推定値を示す。
図9、図10は、本発明の方法による結果を示す図であり、本発明の方法では、リセット後においても、電池パラメータ推定値(図9)、充電率推定値(図10)ともに、真値から大きく離れた値に誤推定されることなく、リセット後に大きく変動することがなく、充電率推定精度が向上していることがわかる。なお、図10において、破線は真値、実線は推定値を示す。
上記のように本発明においては、リセット直後において、推定誤差e(k)が0となるように初期化するので、適応デジタルフィルタにおける電池パラメータ推定値は再調整されない。従って、推定値の初期値が真値とほぼ一致していれば、リセット直後からパラメータ推定値は真値を追従する。その結果リセット直後から充電率を精度良く推定することができる。
また、(数1)式に示すように、電流I(k)の1階微分値I2(k)および2階微分値I3(k)の初期出力が0となるように、かつ、電圧V(k)の1階微分値V2(k)の初期出力が演算を停止する直前に同定した結果であるh(k−1)を用いてV2(k)=h(k−1)・I(k)となるように、かつ、電圧V(k)の2階微分値V3(k)の初期出力が0となるように、前処理フィルタ手段を初期化する構成においては、リセット直後において充放電電流が一定の場合でも、(数2)式に示すように推定誤差e(k)が0となるため、上記と同様に、適応デジタルフィルタにおける電池パラメータ推定値は再調整されない。従って、リセット直後において電池パラメータ推定値の初期値が真値とほぼ一致していれば、その後も電池パラメータ推定値は真値を追従する。その結果リセット直後から充電率を精度良く推定することができる。
また、現時点の開路電圧をもとに前処理フィルタの初期値およびパラメータ推定値の初期値を演算する構成においては、適応デジタルフィルタの初期応答性が向上する。
また、充電率推定値処理の停止時間が電池状態があまり変化しない程度の比較的短い場合には第一の初期化処理方法を選択し、前記停止時間が比較的長く、電池の状態が変化していることが予想される場合には第二の初期化処理方法を選択するように切り替えて初期化を行うように構成した場合には、停止時間に応じてより真値に近いと想定される初期値を使用することになるため、適応デジタルフィルタの初期応答性が向上する。
1…電流計測部 2…電圧計測部
3…前処理フィルタ部 4…適応デジタルフィルタ演算部
5…開路電圧演算部 6…充電率演算部
7…前処理フィルタ初期化部 10…二次電池
20…負荷 30…電子制御ユニット
40…電流センサ 50…電圧センサ
3…前処理フィルタ部 4…適応デジタルフィルタ演算部
5…開路電圧演算部 6…充電率演算部
7…前処理フィルタ初期化部 10…二次電池
20…負荷 30…電子制御ユニット
40…電流センサ 50…電圧センサ
Claims (6)
- 二次電池の充放電中の電流Iを検出する電流計測手段と、
二次電池の端子電圧Vを検出する端子電圧計測手段と、
前記電流Iと前記電圧Vのローパスフィルタ値と微分値を演算する前処理フィルタ手段と、
二次電池の電池モデルを定義し、その電池モデルを用いて、前記電流Iおよび端子電圧Vのローパスフィルタ値と微分値を入力として電池モデルのパラメータを一括推定する適応デジタルフィルタ演算手段と、
前記ローパスフィルタ値および微分値と前記パラメータの推定値とから開路電圧V0を演算する開路電圧演算手段と、
前記開路電圧V0から充電率を演算する充電率演算手段と、を有する二次電池の充電率推定装置において、
起動直後またはリセット直後における前記前処理フィルタ手段および前記適応デジタルフィルタ演算手段の演算開始時に、前記適応デジタルフィルタ演算手段の推定誤差が0となるように前記前処理フィルタ手段を初期化する初期化手段を備えたことを特徴とする二次電池の充電率推定装置。 - 前記初期化手段は、(数1)式に示すように、
(a)電流についてのローパスフィルタは、初期出力I1(k)が計測された電流値I(k)となるように初期化し、
(b)電流についての1階微分フィルタは、初期出力I2(k)が0となるように初期化し、
(c)電流についての2階微分フィルタは、初期出力I3(k)が0となるように初期化し、
(d)電圧についてのローパスフィルタは、初期出力V1(k)が計測された電圧値V(k)となるように初期化し、
(e)電圧についての1階微分フィルタは、演算を中止する直前の演算結果であるh(k−1)を用いて、初期出力V2(k)=h(k−1)・I(k)となるように初期化し、
(f)電圧についての2階微分フィルタは、初期出力V3(k)が0となるように初期化することにより、
(数2)式で示すように推定誤差e(k)を0とすることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電率推定装置。
- 電池の満充電容量QMAX(k−1)を推定する満充電容量推定手段を有し、記憶しておいたリセット直前の開路電圧推定値V0(k−1)における微分係数f'〔V0(k−1)〕と前記満充電容量推定値QMAX(k−1)から、演算を中止する直前の演算結果であるh(k−1)の代わりとなる値α/f'〔V0(k−1)]・QMAX(k−1)(ただし、αは単位換算係数)を演算し、
前記初期化手段は、(数3)式に示すように、
(a)電流についてのローパスフィルタは、初期出力I1(k)が計測された電流値I(k)となるように初期化し、
(b)電流についての1階微分フィルタは、初期出力I2(k)が0となるように初期化し、
(c)電流についての2階微分フィルタは、初期出力I3(k)が0となるように初期化し、
(d)電圧についてのローパスフィルタは、初期出力V1(k)が計測された電圧値V(k)となるように初期化し、
(e)電圧についての1階微分フィルタは、演算を中止する直前の演算結果であるh(k−1)の代わりに前記α/f'〔V0(k−1)]・QMAX(k−1)を用いて、初期出力V2(k)={α/f'〔V0(k−1)]・QMAX(k−1)}I(k)となるように初期化し、
(f)電圧についての2階微分フィルタは、初期出力V3(k)が0となるように初期化することにより、
(数4)式で示すように推定誤差e(k)を0とすることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電率推定装置。
- 前記初期化手段は、
記憶しておいたリセット直前の開路電圧推定値V0(k−1)の代わりに、リセット直後の開路電圧V0(k)を用いることを特徴とする請求項3に記載の二次電池の充電率推定装置。 - 前記初期化手段は、(数5)式に示すように、
(a)電流についてのローパスフィルタは、初期出力I1(k)が0となるように初期化し、
(b)電流についての1階微分フィルタは、初期出力I2(k)が0となるように初期化し、
(c)電流についての2階微分フィルタは、初期出力I3(k)が0となるように初期化し、
(d)電圧についてのローパスフィルタは、初期出力V1(k)が計測された電圧値V(k)となるように初期化し、
(e)電圧についての1階微分フィルタは、初期出力V2(k)=0となるように初期化し、
(f)電圧についての2階微分フィルタは、初期出力V3(k)が0となるように初期化することにより、
(数6)式で示すように推定誤差e(k)を0とすることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電率推定装置。
- 請求項1に記載の二次電池の充電率推定装置において、前記初期化手段は、請求項2または請求項3に記載の構成と、請求項4に記載の構成との両方を備え、充電率推定値処理の停止時間が電池状態があまり変化しない程度の比較的短い場合には請求項2または請求項3に記載の初期化処理を選択し、前記停止時間が比較的長く、電池の状態が変化していることが予想される場合には請求項4に記載の初期化処理を選択するように切り替えて初期化を行うことを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005209518A JP2007024740A (ja) | 2005-07-20 | 2005-07-20 | 二次電池の充電率推定装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005209518A JP2007024740A (ja) | 2005-07-20 | 2005-07-20 | 二次電池の充電率推定装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2005
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