JP2018084548A - 二次電池の状態推定装置及び車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】バッテリの負極閉回路電位と電流との対応関係を精度良くかつ低い演算負荷で推定できるバッテリ制御システムを提供すること。【解決手段】バッテリ制御システムは、等価回路モデルの複数のモデルパラメータR0等、正極開回路電位OCPc、及び負極開回路電位OCPaの推定値を算出する電池状態推定部51と、モデルパラメータの推定値に基づいてバッテリにおける交換電流i0の推定値を算出する交換電流演算部551と、交換電流i0の推定値を用いることによってバッテリの電流Iと活性化過電圧ηct,aとの対応関係を推定する活性化過電圧算出部552と、負極開回路電位OCPaの推定値と活性化過電圧算出部552によって推定した電流Iと活性化過電圧ηct,aとの対応関係とを用いることにより、負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係を推定する負極閉回路電位推定部556と、を備える。【選択図】図2
Description
本発明は、二次電池の状態推定装置及びこれを備える車両に関する。
ハイブリッド車両(HEV)、プラグインハイブリッド車両(PHEV)、及びバッテリ式電動輸送機器(BEV)等に搭載される二次電池は、携帯電話やスマートフォン等の携帯電子機器に搭載される二次電池と比べて入出力が大きく、また充放電の切り替わり頻度が多い所謂動的負荷状態で使用される。
特許文献1には、二次電池の負極閉回路電位と二次電池の電流との対応関係を推定し、これを負極における金属リチウムの析出と関連付けられた析出電位と比較し、さらに負極閉回路電位がこの析出電位を下回らないように二次電池への充電電流を制御することにより、二次電池の劣化を抑制する技術が示されている。二次電池の劣化を抑制するためには、電圧センサや電流センサでは直接検出することができない二次電池の閉回路電位と電流との対応関係を推定することが重要となっている。
ここで、閉回路電位と電流との対応関係を推定する手段としては、二次電池の充放電挙動を等価回路モデルに基づいて扱う方法と、二次電池の充放電挙動を電気化学モデルに基づいて扱う方法と、に大別される。等価回路モデルに基づく方法は、特許文献1に示されているように、比較的簡易な演算で閉回路電位と電流との対応関係を推定することができるという利点があるものの、二次電池の充放電挙動を正確に再現できる範囲が狭いという欠点がある。特に車両に搭載される二次電池のように、動的負荷状態で用いられている場合、その推定精度は低い。
一方、電気化学モデルに基づく方法は、第一原理に基づきリチウムイオンの濃度等を変数として扱うことからその充放電挙動を上記等価回路モデルと比較して精度良く扱うことができるという利点があるものの、初期条件や境界条件の設定が複雑であり、一般的な車両に搭載されるコンピュータには演算負荷が高いという欠点がある。
本発明は、二次電池の劣化を抑制するために必要となる閉回路電位と電流との対応関係を、等価回路モデルに基づくものよりも精度良く、かつ電気化学モデルに基づくものよりも低い演算負荷で推定できる二次電池の状態推定装置、及びこれを搭載する車両を提供することを目的とする。
(1)本発明の二次電池(例えば、後述のバッテリ1)の状態推定装置(例えば、後述のバッテリ制御システム2)は、二次電池の端子電圧を検出する電圧センサ(例えば、後述の電圧センサ4)と、前記二次電池を流れる電流を検出する電流センサ(例えば、後述の電流センサ3)と、を備え、前記電圧センサ及び前記電流センサの検出値を用いることによって前記二次電池の状態を推定するものであって、前記電流センサの検出値及び前記電圧センサの検出値を用いることによって、前記二次電池の等価回路モデルの複数のモデルパラメータのうちの少なくとも1つ(R0,R1,C1等)、前記二次電池の正極開回路電位(OCPc)、及び負極開回路電位(OCPa)の推定値を算出するパラメータ推定部(例えば、後述の電池状態推定部51)と、前記モデルパラメータの推定値に基づいて前記二次電池における交換電流(i0)の推定値を算出する交換電流演算部(例えば、後述の交換電流演算部551)と、前記交換電流の推定値を用いることによって前記二次電池の電流(I)と活性化過電圧(ηct,a)との対応関係を推定する活性化過電圧算出部(例えば、後述の活性化電圧算出部552)と、前記負極開回路電位又は前記正極開回路電位の推定値と前記活性化過電圧算出部によって推定した前記電流と前記活性化過電圧との対応関係とを用いることにより、前記二次電池の負極閉回路電位(CCPa)又は正極閉回路電位(CCPc)と前記電流との対応関係を推定する単極閉回路電位推定部(例えば、後述の負極閉回路電位推定部556又は正極閉回路電位推定部556A)と、を備えることを特徴とする。
(2)この場合、前記状態推定装置は、前記モデルパラメータの推定値に基づいて前記二次電池における第1動的充放電時間(t´)の推定値を算出する第1動的充放電時間演算部(例えば、後述の等価回路動的充放電時間算出部553)と、前記第1動的充放電時間の推定値を用いることによって前記二次電池における第2動的充放電時間(t´´)の推定値を算出する第2動的充放電時間演算部(例えば、後述の電気化学動的充放電時間算出部554)と、前記第2動的充放電時間の推定値を用いることによって前記二次電池における濃度過電圧(ηc,a)の推定値を算出する濃度過電圧算出部(例えば、後述の濃度過電圧算出部555)と、をさらに備え、前記単極閉回路電位推定部は、前記負極開回路電位又は前記正極開回路電位の推定値と、前記電流と前記活性化過電圧との対応関係と、前記濃度過電圧の推定値と、を用いることにより、前記負極閉回路電位又は前記正極閉回路電位と前記電流との対応関係を推定することが好ましい。
(3)この場合、前記等価回路モデルは、前記二次電池の開放電圧に相当する電位差を発生する電池要素と、当該電池要素に直列に接続された抵抗要素と、当該抵抗要素に直列に接続されたRC並列回路と、を備え、前記パラメータ推定部は、前記抵抗要素の電気抵抗(R0)及び前記RC並列回路における電圧降下(VC)を前記モデルパラメータとしてその推定値を算出し、前記交換電流演算部は、前記電気抵抗と前記交換電流との対応関係を規定する電荷移動−抵抗変換手段(例えば、後述の電荷移動−抵抗変換マップ551a)を用いることによって前記電気抵抗の推定値に応じた前記交換電流の推定値を算出することが好ましい。
(4)この場合、前記第1動的充放電時間演算部は、前記電圧降下の推定値に基づいて前記第1動的充放電時間の推定値を算出し、前記第2動的充放電時間演算部は、前記第1動的充放電時間と前記第2動的充放電時間との対応関係を規定する充放電時間変換手段(例えば、後述の充放電時間変換マップ554a)を用いることによって前記第1動的充放電時間の推定値に応じた前記第2動的充放電時間の推定値を算出することが好ましい。
(5)この場合、前記パラメータ推定部は、前記電流センサの検出値を用いることによって、前記モデルパラメータ、前記正極開回路電位、及び前記負極開回路電位の推定値を算出する同定器(例えば、後述のパラメータ同定器511)と、前記モデルパラメータの推定値、及び前記正極開回路電位、及び前記負極開回路電位の推定値を用いることによって前記端子電圧の推定値を算出する端子電圧推定部(例えば、後述の端子電圧推定部513)と、を備え、前記同定器は、前記端子電圧の推定値と前記電圧センサの検出値との誤差が小さくなるように前記モデルパラメータ、前記正極開回路電位、及び前記負極開回路電位の推定値を算出することが好ましい。
(6)本発明の車両(例えば、後述の車両V,VA)は、二次電池(例えば、後述のバッテリ1)と、前記二次電池に充電電流を供給する充電手段(例えば、後述のインバータ8及びモータM)と、前記充電電流が所定の制限値(Ilim)を超えないように当該充電電流を制御する充電電流制御手段(例えば、後述の車両ECU9)と、(1)から(5)の何れかに記載の状態推定装置(例えば、後述のバッテリ制御システム2)と、を備え、前記状態推定装置は、前記単極閉回路電位推定部によって推定された前記負極閉回路電位又は前記正極閉回路電位と前記電流との対応関係を用いることによって、前記負極閉回路電位又は前記正極閉回路電位が所定の閾値(P0,a、P0,c)を与えるような電流値(Ilim_temp)を算出し、当該電流値を前記制限値とする制限電流決定部(例えば、後述の許可電流決定部58,58A)をさらに備えることが好ましい。
(7)この場合、前記単極閉回路電位推定部は、前記負極閉回路電位と前記電流との対応関係を推定し、前記負極閉回路電位に対する前記閾値(P0,a)は、前記負極における金属リチウムの析出が発生する電位に基づいて設定されることが好ましい。
(10)この場合、前記単極閉回路電位推定部は、前記正極閉回路電位と前記電流との対応関係を推定し、前記正極閉回路電位に対する前記閾値(P0,c)は、前記正極の結晶構造の変化が発生する電位に基づいて設定されることが好ましい。
(1)パラメータ推定部は、電流センサ及び電圧センサの検出値を用いることによって二次電池の等価回路モデルの複数のモデルパラメータのうちの少なくとも1つと、正極開回路電位及び負極開回路電位との推定値を算出する。また交換電流演算部では、上記等価回路モデルのモデルパラメータの推定値に基づいて二次電池における交換電流の推定値を算出し、活性化過電圧算出部では、この交換電流の推定値を用いることによって二次電池の活性化過電圧と二次電池の電流との対応関係を推定する。そして単極閉回路電位推定部は、パラメータ推定部によって推定された負極開回路電位又は正極開回路電位の推定値と、活性化過電圧と電流との対応関係とを用いることにより、二次電池の負極閉回路電位又は正極閉回路電位と電流との対応関係を推定する。以上のように、パラメータ推定部では等価回路モデルに基づいた演算を行い、活性化過電圧算出部及び単極閉回路電位推定部では交換電流や活性化過電圧等の推定を含む電気化学モデルに基づいた演算を行い、交換電流演算部では、等価回路モデルと電気化学モデルとを関連付ける演算を行う。すなわち本発明の状態推定装置によれば、等価回路モデルと電気化学モデルとを組み合わせることにより、比較的簡易な演算によって動的負荷状態で用いられている二次電池の閉回路電位と電流との対応関係を精度良く推定することができる。
(2)第1動的充放電時間演算部では、モデルパラメータの推定値に基づいて二次電池における第1動的充放電時間の推定値を算出し、第2動的充放電時間演算部では、第1動的充放電時間の推定値を用いることによって第2動的充放電時間の推定値を算出し、濃度過電圧算出部では、この第2動的充放電時間の推定値を用いることによって二次電池の濃度過電圧の推定値を算出し、単極閉回路電位推定部では、この濃度過電圧の推定値をさらに用いることによって閉回路電位と電流との対応関係を推定する。これにより閉回路電位と電流との対応関係の推定精度をさらに向上できる。
(3)パラメータ推定部は、等価回路モデルにおいて電流変化に対し瞬時に応答する特性を有する抵抗要素の電気抵抗の推定値を算出し、交換電流演算部では電荷移動−抵抗変換手段を用いることによってこの電気抵抗の推定値に応じた交換電流の推定値を算出する。これにより、第1原理に基づいて交換電流の推定値を算出する場合と比較して、容易な演算で交換電流の推定値を算出することができ、ひいては単極閉回路電位と電流との対応関係を容易に推定することができる。
(4)パラメータ推定部は、等価回路モデルにおいて電流変化に対し所定の遅れをもって応答する特性を有するRC並列回路における電圧降下の推定値を算出し、第1動的充放電時間演算部ではこの電圧降下の推定値に基づいて第1動的充放電時間の推定値を算出し、第2動的充放電時間演算部では充放電時間変換手段を用いることによってこの第1動的充放電時間の推定値に応じた第2動的充放電時間の推定値を算出する。これにより、第1原理に基づいて第2動的充放電時間の推定値を算出する場合と比較して、容易な演算で動的充放電時間の推定値を算出することができ、ひいては単極閉回路電位と電流との対応関係を容易に推定することができる。
(5)端子電圧推定部では、同定器によって算出されたモデルパラメータの推定値並びに正極開回路電位及び負極開回路電位の推定値を用いることによって二次電池の端子電圧の推定値を算出し、同定器ではこの端子電圧の推定値と電圧センサの検出値との誤差が小さくなるように上記モデルパラメータ等の推定値を算出する。これにより、モデルパラメータの推定値を精度良く算出することができ、ひいてはこの推定値を用いた単極閉回路電位と電流との対応関係の推定精度を向上することができる。
(6)制限電流決定部では、上記のように単極閉回路電位推定部によって推定された負極閉回路電位又は正極閉回路電位と電流との対応関係を用いることによって、これら負極閉回路電位又は正極閉回路電位が所定の閾値を与えるような電流値を算出し、この電流値を制限値として、二次電池の充電電流がこの制限値を超えないように充電電流を制御する。これにより、二次電池の充電中に単極閉回路電位が上記閾値を超えて変化し、二次電池が劣化するのを抑制することができる。
(7)本発明によれば、負極閉回路電位に対する閾値を負極における金属リチウムの析出が発生する電位に基づいて設定することにより、二次電池の負極における金属リチウムの析出を抑制することができる。
(8)本発明によれば、正極閉回路電位に対する閾値を正極の結晶構造の変化が発生する電位に基づいて設定することにより、二次電池の正極における結晶構造の変化を抑制することができる。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る車両Vの構成を示す図である。車両Vは、所謂バッテリ式電動輸送機器であり、その出力軸が駆動輪Wと連結されたモータMと、二次電池としてのバッテリ1と、バッテリ1とモータMとの間の電力の授受を制御するインバータ8及びその電子制御ユニット(以下、「車両ECU」という)9と、バッテリ1を制御するバッテリ制御システム2と、を備える。
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る車両Vの構成を示す図である。車両Vは、所謂バッテリ式電動輸送機器であり、その出力軸が駆動輪Wと連結されたモータMと、二次電池としてのバッテリ1と、バッテリ1とモータMとの間の電力の授受を制御するインバータ8及びその電子制御ユニット(以下、「車両ECU」という)9と、バッテリ1を制御するバッテリ制御システム2と、を備える。
バッテリ1は、化学エネルギを電気エネルギに変換する放電、及び電気エネルギを化学エネルギに変換する充電の両方が可能である二次電池である。以下では、バッテリ1として、リチウムイオンバッテリを用いた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。バッテリ1としては、ニッケル水素バッテリ等の既知の二次電池を用いてもよい。
インバータ8は、バッテリ1とモータMとの間に接続され、車両ECU9からの指令信号に基づいて、バッテリ1から供給される直流電圧を交流電圧に変換しモータMに供給したり、モータMから供給される交流電圧を直流電圧に変換しバッテリ1に供給したりする。車両ECU9は、バッテリ制御システム2によって推定される状態や車両の運転状態等に基づいて、インバータ8を制御するための指令信号を発生する。
バッテリ制御システム2は、電流センサ3と、電圧センサ4と、温度センサ6と、バッテリECU5と、を備える。
電流センサ3は、バッテリ1からモータMへ電力を供給する際にバッテリ1を流れる放電電流や、車両Vの制動時等においてモータMからバッテリ1へ電力を供給する際にバッテリ1を流れる充電電流を検出し、検出値に応じた信号をバッテリECU5へ送信する。
電圧センサ4は、バッテリ1の端子電圧、すなわちバッテリ1がモータMに接続され、バッテリ1に電流が流れている状態におけるバッテリ1の正極−負極間の電位差を検出し、検出値に応じた信号をバッテリECU5へ送信する。
温度センサ6は、バッテリ1の温度を検出し、検出値に応じた信号をバッテリECU5へ送信する。
バッテリECU5は、電流センサ3、電圧センサ4、及び温度センサ6からの検出信号をA/D変換したり、演算結果を車両ECU9へ送信したりするI/Oインターフェースと、後述の図2や図4等に示す各種演算処理を実行するCPUと、後述の図5や図6等のマップ等の各種データを記憶するRAMやROM等で構成されるマイクロコンピュータである。
図2は、バッテリECU5の機能ブロック図である。バッテリECU5には、バッテリ1の状態を推定する電池状態推定部51と、バッテリ1の単極電位を推定する単極電位推定部55と、許可電流値を決定する許可電流決定部58と、が上記ハードウェアによって構成されている。
電池状態推定部51は、バッテリ制御システムの状態、より具体的にはバッテリ制御システムの状態を特定する複数のシステムパラメータの値を、バッテリ制御システムにおいて観測可能なデータ、すなわち電流センサ3及び電圧センサ4の検出値を用いることによって推定する。
電池状態推定部51は、より具体的には、上記バッテリ制御システムの状態の遷移を記述する状態方程式(後述の式(3)等参照)と、この状態方程式によって表されるバッテリ制御システムの状態と観測可能データとの関係を記述する観測方程式(後述の式(4−1)等参照)と、を合せて構成される状態空間モデルを用いることによって、上記複数のシステムパラメータの値を推定する。以下では、電池状態推定部51において構築される状態空間モデルの構成について説明した後、この状態空間モデルに基づく具体的な演算手順について、順に説明する。
<等価回路モデル>
電池状態推定部51では、状態空間モデルを構築するにあたり、例えば図3に示すようなバッテリシステムの等価回路モデルを定義する。図3の等価回路モデルは、バッテリ1の開放電圧OCVに相当する電位差を発生する電池要素と、この電池要素に直列に接続された第1内部抵抗と、この第1内部抵抗に直列に接続されたRC並列回路と、を備える。第1内部抵抗の抵抗値をR0とし、RC並列回路を構成する第2内部抵抗の抵抗値をR1とし、RC並列回路を構成する内部コンデンサの静電容量値をC1とすると、バッテリ及びモータMを流れる電流をIとすると、バッテリの端子電圧CCVは、バッテリの開放電圧OCVから、第1内部抵抗における第1電圧降下(R0I)と、RC並列回路における第2電圧降下(VC)とを減算したもので表される(下記式(1−1)参照)。なお以下では、このRC並列回路における第2電圧降下を濃度分極VCともいう。またこの濃度分極VCは、通電時間をtとすると、下記式(1−2)によって表される。また図3の等価回路モデルにおける各種物理量のうち、端子電圧CCVは電圧センサによって観測可能であり、電流Iは電流センサによって観測可能である。
電池状態推定部51では、状態空間モデルを構築するにあたり、例えば図3に示すようなバッテリシステムの等価回路モデルを定義する。図3の等価回路モデルは、バッテリ1の開放電圧OCVに相当する電位差を発生する電池要素と、この電池要素に直列に接続された第1内部抵抗と、この第1内部抵抗に直列に接続されたRC並列回路と、を備える。第1内部抵抗の抵抗値をR0とし、RC並列回路を構成する第2内部抵抗の抵抗値をR1とし、RC並列回路を構成する内部コンデンサの静電容量値をC1とすると、バッテリ及びモータMを流れる電流をIとすると、バッテリの端子電圧CCVは、バッテリの開放電圧OCVから、第1内部抵抗における第1電圧降下(R0I)と、RC並列回路における第2電圧降下(VC)とを減算したもので表される(下記式(1−1)参照)。なお以下では、このRC並列回路における第2電圧降下を濃度分極VCともいう。またこの濃度分極VCは、通電時間をtとすると、下記式(1−2)によって表される。また図3の等価回路モデルにおける各種物理量のうち、端子電圧CCVは電圧センサによって観測可能であり、電流Iは電流センサによって観測可能である。
<システムパラメータベクトル>
電池状態推定部51では、バッテリシステムを上記のような等価回路モデルで表現するとともに、時刻kにおけるバッテリシステムの状態を下記式(2)で表される6成分のシステムパラメータベクトルz[k]によって表現する。なお以下では、現在の時刻を“k”で表し、現在に対し1つ前の周期を“k−1”で表し、現在に対し1つ次の周期を“k+1”で表す。
電池状態推定部51では、バッテリシステムを上記のような等価回路モデルで表現するとともに、時刻kにおけるバッテリシステムの状態を下記式(2)で表される6成分のシステムパラメータベクトルz[k]によって表現する。なお以下では、現在の時刻を“k”で表し、現在に対し1つ前の周期を“k−1”で表し、現在に対し1つ次の周期を“k+1”で表す。
システムパラメータベクトルz[k]の第1〜第6成分は、以下の通りである。
R0[k](第1成分)…図3の等価回路モデルにおける第1内部抵抗の抵抗値[Ω]
R1[k](第2成分)…図3の等価回路モデルにおける第2内部抵抗の抵抗値[Ω]
C1[k](第3成分)…図3の等価回路モデルにおける内部コンデンサの静電容量値[F]
δI[k](第4成分)…電流オフセット誤差[A]
OCPc[k](第5成分)…バッテリ1の正極開回路電位[V]
OCPa[k](第6成分)…バッテリ1の負極開回路電位[V]
R0[k](第1成分)…図3の等価回路モデルにおける第1内部抵抗の抵抗値[Ω]
R1[k](第2成分)…図3の等価回路モデルにおける第2内部抵抗の抵抗値[Ω]
C1[k](第3成分)…図3の等価回路モデルにおける内部コンデンサの静電容量値[F]
δI[k](第4成分)…電流オフセット誤差[A]
OCPc[k](第5成分)…バッテリ1の正極開回路電位[V]
OCPa[k](第6成分)…バッテリ1の負極開回路電位[V]
<状態方程式>
電池状態推定部51では、式(2)によって定められたシステムパラメータベクトルzの離散時刻kからk+1への遷移を、下記式(3)で定義される状態方程式によって表す。下記式(3)において、“v[k]”はシステム雑音でありスカラ量である。“g”はシステム雑音の係数ベクトルであり6成分ベクトルである。また“F(・)”は、6成分ベクトル関数であり、システムパラメータベクトルzの非線形関数である。なお、ベクトル非線形関数F(・)の具体的な関数形は、例えば図3の等価回路モデルの式(1−1)及び(1−2)に基づいて導出されたものが用いられる。
電池状態推定部51では、式(2)によって定められたシステムパラメータベクトルzの離散時刻kからk+1への遷移を、下記式(3)で定義される状態方程式によって表す。下記式(3)において、“v[k]”はシステム雑音でありスカラ量である。“g”はシステム雑音の係数ベクトルであり6成分ベクトルである。また“F(・)”は、6成分ベクトル関数であり、システムパラメータベクトルzの非線形関数である。なお、ベクトル非線形関数F(・)の具体的な関数形は、例えば図3の等価回路モデルの式(1−1)及び(1−2)に基づいて導出されたものが用いられる。
<観測方程式>
電池状態推定部51では、上記状態方程式(3)に従って遷移するシステムパラメータベクトルzと、電圧センサによって観測可能なデータである端子電圧CCVとの関係を記述する観測方程式として、例えば上記等価回路モデルにおける端子電圧CCVに対する式(1−1)に基づいて導出される下記式(4−1)が用いられる。下記観測方程式(4−1)において、“w[k]”は観測雑音でありスカラ量である。なお下記観測方程式(4−1)において、濃度分極VC[k]は、上記式(1−2)に基づいて導出される下記式(4−2)に示すように、電流I[k]、第2内部抵抗の電気抵抗R1[k]、内部コンデンサの静電容量C1[k]、通電時間tを用いることによって算出される。なお以下では、電流I[k]の具体的な値には、時刻kにおける電流センサの検出値を用いる。
電池状態推定部51では、上記状態方程式(3)に従って遷移するシステムパラメータベクトルzと、電圧センサによって観測可能なデータである端子電圧CCVとの関係を記述する観測方程式として、例えば上記等価回路モデルにおける端子電圧CCVに対する式(1−1)に基づいて導出される下記式(4−1)が用いられる。下記観測方程式(4−1)において、“w[k]”は観測雑音でありスカラ量である。なお下記観測方程式(4−1)において、濃度分極VC[k]は、上記式(1−2)に基づいて導出される下記式(4−2)に示すように、電流I[k]、第2内部抵抗の電気抵抗R1[k]、内部コンデンサの静電容量C1[k]、通電時間tを用いることによって算出される。なお以下では、電流I[k]の具体的な値には、時刻kにおける電流センサの検出値を用いる。
電池状態推定部51は、パラメータ同定器511と、濃度分極算出部512と、端子電圧推定部513と、推定誤差演算部514と、ゲインベクトル演算部515と、開放電圧算出部516と、を備え、これらによって以上のように規定された状態空間モデルにおける演算を実現する。以下、電池状態推定部51を構成する各モジュール511〜516における演算の手順について説明する。
濃度分極算出部512は、後述の手順によりパラメータ同定器511によって算出されたシステムパラメータベクトルz[k]の推定値、より具体的には、第2内部抵抗の電気抵抗R1[k]及び内部コンデンサの静電容量C1[k]の推定値と、電流I[k]の検出値とを、観測方程式(4−2)に入力することにより、濃度分極VC[k]の推定値を算出する。
開放電圧算出部516は、後述の手順によりパラメータ同定器511によって算出された正極開回路電位OCPc[k]の推定値から負極開回路電位OCPa[k]の推定値を減算することにより、バッテリの開放電圧OCV[k]の推定値を算出する(OCV[k]=OCPc[k]−OCPa[k])。
端子電圧推定部513では、観測方程式(4−1)に示すように、開放電圧算出部516によって算出された開放電圧OCV[k]の推定値から、後述の手順によりパラメータ同定器511によって算出された第1電圧降下R0[k](I[k]−δI[k])の推定値と、濃度分極算出部512によって算出された濃度分極VC[k]の推定値と、を減算し、さらに観測雑音w[k]を加算することにより、バッテリの端子電圧CCV[k]の推定値、すなわち時刻kにおける電圧センサの検出値の推定値を算出する。
推定誤差演算部514では、電圧センサの検出値から端子電圧推定部513によって算出された端子電圧CCV[k]の推定値を減算することにより、推定誤差ε[k]を算出する。
ゲインベクトル演算部515では、推定誤差ε[k]に後に詳述する手順によって算出されるゲインベクトルN[k]を乗算したものを、パラメータ同定器511へ入力する。
パラメータ同定器511では、上述の推定誤差ε[k]が小さくなるように、電流センサの検出値と、ゲインベクトルN[k]と、上述の状態方程式(3)とを用いることにより、上述のように第1内部抵抗の電気抵抗R0[k]、第2内部抵抗の電気抵抗R1[k]、内部コンデンサの静電容量C1[k]、電流オフセット誤差δI[k]、正極開回路電位OCPc[k]、及び負極開回路電位OCPa[k]を成分とするシステムパラメータベクトルz[k]の推定値を算出する。
なお、上記式(3)に示すように、状態方程式はシステムパラメータベクトルzの非線形関数となっている。そこでパラメータ同定器511では、状態方程式を局所的に線形化する拡大系拡張カルマンフィルタと呼称されるアルゴリズムを適用することによって、システムパラメータベクトルzの推定値を算出する。なお以下では、状態方程式及び観測方程式を拡大系拡張カルマンフィルタに適用する場合に付いて説明するが、本発明はこれに限らない。すなわち、上記状態方程式及び観測方程式を、他のアルゴリズム、より具体的には、アンセンテッドカルマンフィルタやパーティクルフィルタ等のアルゴリズムに適用してもよい。
図4は、パラメータ同定器において、電圧センサ及び電流センサの検出値を用いてシステムパラメータベクトルの推定値等を逐次更新する手順を示すフローチャートである。パラメータ同定器では、図4に示す一連の処理を、所定のサンプル間隔ΔTごとに、繰り返し実行する。
図4に示すように、システムパラメータベクトルの推定値を更新する処理は、予測ステップ(S1〜S2)と、フィルタリングステップ(S3〜S6)と、によって構成される。
また以下で説明するように、システムパラメータベクトルzの推定値には、事前推定値z_h−と事後推定値z_h+との2種類が存在する。現在の時刻をkとすると、時刻kにおける事前推定値z_h−[k]とは、時刻k−1までに利用可能なデータに基づいた時刻kにおけるシステムパラメータベクトルz[k]の予測推定値に相当する。また時刻kにおける事後推定値z_h+[k]とは、時刻kまでに利用可能なデータ、すなわち時刻kにおいて取得した最新の電圧センサや電流センサの検出値や上記事前推定値z_h−[k]等を含むデータに基づいた、時刻kにおけるシステムパラメータベクトルz[k]のフィルタリング推定値である。なお以下では、事前推定値については“−”の添え字を付し、事後推定値については“+”の添え字を付す。電池状態推定部51では、以下の手順に従って事前推定値z_h−と事後推定値z_h+とをサンプル間隔ΔTごとに算出するとともに、このうち事後推定値z_h+をシステムパラメータベクトルzの推定値として出力する。換言すると、事後推定値z_h+が電池状態推定部51において最終的に求めたいシステムパラメータベクトルzの推定値に相当する。
予測ステップは、事前推定値の演算(S1)及び事前誤差共分散行列の演算(S2)の2つの演算によって構成される。
S1の事前状態推定値の演算では、上記式(2)によって定義されるシステムパラメータベクトルzの、現在の時刻kにおける事前推定値z_h−[k]の値を算出する。下記式(5)に示すように、S1では、電池状態推定部は、例えば前回の時刻k−1における後述のフィルタリングステップにおいて算出された事後推定値z_h+[k−1]をそのまま現在の時刻kにおける事前状態推定値z_h−[k]とする。
またS2の事前誤差共分散行列の演算では、下記式(6)に基づいて、6行6列の事前誤差共分散行列Σ−の値を算出する。下記式(6)において、“Σv2”は、上記式(3)におけるシステム雑音の分散であり、“g”及び“gT”は、それぞれシステム雑音の係数ベクトル及びその転置ベクトルである。また下記式(6)において“FL[k]”及び“FLT[k]”は、それぞれ、状態方程式(3)の6成分ベクトル非線形関数F(z[k])を線形近似した6成分ベクトル線形関数及びその転置ベクトルである。また下記式(6)において“Σ+[k−1]”は、前回の時刻k−1における事後誤差共分散行列であり、前回の時刻k−1における後述のフィルタリングステップにおいて算出された値がそのまま用いられる。
次に、フィルタリングステップは、ゲインベクトルの演算(S3)、予測誤差の演算(S4)、状態推定値の演算(S5)、及び事後誤差共分散行列の演算(S6)の4つの演算によって構成される。
S3のゲインベクトルの演算では、下記式(7)に基づいて、時刻kにおける6成分のゲインベクトルN[k]の値を算出する。下記式(7)において、“Σw2”は、上記観測方程式(4−1)における観測雑音の分散である。また下記式(7)において、“HL[k]”及び“HLT[k]”は、それぞれ観測方程式(4−1)の右辺を線形近似して得られる6成分ベクトル線形関数及びその転置ベクトルである。
S4の予測誤差の演算では、下記式(8)に示すように、時刻kにおいて取得した電圧センサの検出値CCV[k]から、時刻kにおける電流I[k](時刻kにおいて取得した電流センサの検出値)と、システムパラメータベクトルzの事前推定値z_h−[k]と、を観測方程式(4−1)に基づいて導出される関数h(・)に入力することによって得られる端子電圧の推定値h(z_h−[k],I[k])を減算することにより、時刻kにおける予測誤差ε[k]の値を算出する。
S5の事後推定値の演算では、下記式(9)に示すように、システムパラメータベクトルzの事前推定値z_h−[k]に、先に導出したゲインベクトルN[k]に予測誤差ε[k]を乗算したものを加えることにより、予測誤差ε[k]の絶対値が小さくなるようなシステムパラメータベクトルzの事後推定値z_h+[k]の値を算出する。
S6の事後誤差共分散行列の演算では、下記式(10)に基づいて、6行6列の事後誤差共分散行列Σ+の値を算出し、この処理を終了する。ここで算出された時刻kにおける事後誤差共分散行列Σ+は、次の時刻k+1における事前誤差共分散行列の演算に用いられる。
なお上記の手順に従い繰り返し演算を行うことにより、各時刻で状態推定値を逐次算出する際には、状態パラメータの推定値z_h+及び事後誤差共分散行列Σ+の初期値、すなわち時刻k=0における値が必要となる。これらの初期値は、例えば下記式のように定義する。なお以下では、任意の変数“x”の期待値を“E[x]”と表記する。
次に、図2に戻り、単極電位推定部55の構成及びその具体的な演算手順について説明する。単極電位推定部55は、上述の電池状態推定部51によって推定されたシステムパラメータベクトルzの推定値(より具体的には、システムパラメータベクトルの事後推定値z_h+[k])と、温度センサ6の検出値と、を用いることにより、現在のバッテリの負極閉回路電位と電流との対応関係を推定する。
上述のように電池状態推定部51では、図3に示すようなバッテリの等価回路モデルを規定し、この等価回路モデルに基づいて第1内部抵抗の電気抵抗R0や内部コンデンサの静電容量C1等のモデルパラメータの推定値を算出した。これに対し単極電位推定部55では、バッテリの電気化学モデルに基づいて導出される下記式(12−1)及び(12−2)に基づいて、バッテリの負極閉回路電位と電流との対応関係を推定する。
単極電位推定部55では、等価回路モデルに基づいて導出される式(1−1)と異なり、電気化学モデルに基づいて導出される式(12−1)に基づいてバッテリの端子電圧CCVを扱う。式(12−1)に示すように電気化学モデルの下では、端子電圧CCVは、正極閉回路電位CCPcから、負極閉回路電位CCPaと抵抗過電圧ηRSとを減算したもので表される。また電気化学モデルの下では、式(12−2)に示すように、負極閉回路電位CCPaは、負極開回路電位OCPaから、活性化過電圧ηct,aと濃度過電圧ηc,aとを減算したもので表される。
単極電位推定部55は、交換電流演算部551と、活性化過電圧算出部552と、等価回路動的充放電時間算出部553と、電気化学動的充放電時間算出部554と、濃度過電圧算出部555と、負極閉回路電位推定部556と、を備え、これらによって上記式(12−1)及び(12−2)に示す電気化学モデルに基づいて導出される演算を行うことにより、バッテリの負極閉回路電位と電流との対応関係を推定する。以下、単極電位推定部55を構成する各モジュール551〜556における演算の手順について説明する。
交換電流演算部551は、電池状態推定部51によって算出された第1内部抵抗の電気抵抗R0の推定値(より具体的には、第1内部抵抗の事後推定値R0_h+[k])に基づいて、バッテリにおける交換電流i0の推定値を算出する。
より具体的には、交換電流演算部551には、図5に示すような第1内部抵抗の電気抵抗R0と交換電流i0との対応関係を規定した電荷移動−抵抗変換マップ551aが規定されており、この電荷移動−抵抗変換マップ551aに第1内部抵抗の電気抵抗R0の推定値を入力することにより、交換電流i0の推定値を算出する。
活性化過電圧算出部552は、交換電流演算部551において算出された交換電流i0の推定値を電気化学モデルに基づいて導出される下記式(13)に入力することにより、活性化過電圧ηct,aと電流Iとの対応関係を推定する。下記式(13)において、“R”は気体定数であり、“z”は反応電子数であり、“F”はファラデー定数であり、その具体的な値は何れも既知である。また下記式(13)において“T”はバッテリの温度であり、その具体的な値は、温度センサ6の検出値が用いられる。
等価回路動的充放電時間算出部553は、電池状態推定部51によって算出された第2内部抵抗の電気抵抗R1及び内部コンデンサの静電容量C1の推定値(より具体的には、これらの事後推定値R1_h+[k],C1_h+[k])と、濃度分極算出部512によって算出された濃度分極VCの推定値とを、観測方程式(4−2)に基づいて導出される下記式(14)に入力することにより、等価回路動的充放電時間t´の推定値を算出する。下記式(14)において、“ISP”は、例えばバッテリの定格最大電流値であり、予め定められた値が用いられる。
電気化学動的充放電時間算出部554は、等価回路動的充放電時間算出部553によって算出された等価回路動的充放電時間t´の推定値に基づいて、バッテリにおける電気化学動的充放電時間t´´の推定値を算出する。
より具体的には、電気化学動的充放電時間算出部554には、図6に示すような電気化学動的充放電時間t´´と等価回路動的充放電時間t´との対応関係を規定した充放電時間変換マップ554aが規定されており、この充放電時間変換マップ554aに等価回路動的充放電時間t´の推定値を入力することにより、電気化学動的充放電時間t´´の推定値を算出する。
濃度過電圧算出部555は、電気化学動的充放電時間算出部554において算出された電気化学動的充放電時間t´´の推定値と、濃度分極算出部512によって算出された濃度分極VCの推定値と、を電気化学モデルに基づいて導出される下記式(15)に入力することにより、濃度過電圧ηc,aの推定値を算出する。下記式(15)において“CB OX”は、溶液バルクリチウムイオン濃度であり、“D”は拡散定数であり、その具体的な値は何れも既知である。
負極閉回路電位推定部556では、上記式(12−2)に基づいて導出される下記式(16)に、電池状態推定部51によって算出される負極開回路電位OCPaの推定値(より具体的には、負極開回路電位の事後推定値OCPa_h+[k])と、活性化過電圧算出部552によって導出された活性化過電圧ηct,aと電流Iとの対応関係(式(13)参照)と、濃度過電圧ηc,aの推定値とを入力することにより、充電時(すなわち、電流Iが負(I<0))における負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係を導出する。下記式(16)の右辺は、電流Iを除きいずれも既知である。したがって下記式(16)は、負極閉回路電位CCPaは、電流Iの関数として表されることを意味する。
許可電流決定部58は、以上のようにして単極電位推定部55によって導出された負極閉回路電位CCPaと電流Iとの関係式(16)を用いることによって、負極閉回路電位CCPaが所定の閾値P0,aを与えるような電流値を算出し、この電流値を暫定許可電流値Ilim_tempとして決定する。
より具体的には、許可電流決定部58は、上記関係式(16)において負極閉回路電位CCPaを閾値P0,aとし、電流Iについて解くことによって導出される下記式(17)によって、暫定許可電流値Ilim_tempを決定する(図7参照)。ここで、閾値P0,aは、負極における金属リチウムの析出が発生し得る電位に相当する。換言すると、負極閉回路電位CCPaが閾値P0,aより低くなると、バッテリの負極には金属リチウムの析出が発生し得る。
また許可電流決定部58では、以上のようにして算出した暫定許可電流値Ilim_tempがバッテリ毎に予め定められた最大充電電流値(例えば、マイナス数百A)以下である場合には、この最大充電電流値を許可電流値Ilimとして決定し、暫定許可電流値Ilim_tempが最大充電電流値より大きい場合には、この暫定許可電流値Ilim_tempを許可電流値Ilimとして決定する。
図1に戻り、車両ECU9は、バッテリ1に充電電流を供給し、バッテリ1を充電している間は、充電電流が以上のようにして決定された許可電流Ilimを超えて下回らないようにインバータ8へ指令信号を送信することにより、充電電流を制限する。
次に、以上のように構成された車両Vの効果について説明する。
図8は、電池状態推定部51による推定結果の一部を示す図である。より具体的には、図8には、上段から順に第1内部抵抗の電気抵抗R0、第2内部抵抗の電気抵抗R1、及び内部コンデンサの静電容量C1の推定値の変化を示す。図8において破線は、これら等価回路のモデルパラメータR0,R1,C1の真値の変化を示し、実線は、電池状態推定部51によるモデルパラメータR0,R1,C1の推定値の変化を示す。
図9は、単極電位推定部55及び許可電流決定部58における演算結果の一部を示す図である。より具体的には、図9には、上段から順に、負極閉回路電位推定部556によって導出された負極閉回路電位CCPaと電流Iとの関係式(16)に、電流センサの検出値を入力することで得られる負極閉回路電位CCPaの推定値と、許可電流決定部58において決定される許可電流値Ilimとの変化を示す。
図8は、電池状態推定部51による推定結果の一部を示す図である。より具体的には、図8には、上段から順に第1内部抵抗の電気抵抗R0、第2内部抵抗の電気抵抗R1、及び内部コンデンサの静電容量C1の推定値の変化を示す。図8において破線は、これら等価回路のモデルパラメータR0,R1,C1の真値の変化を示し、実線は、電池状態推定部51によるモデルパラメータR0,R1,C1の推定値の変化を示す。
図9は、単極電位推定部55及び許可電流決定部58における演算結果の一部を示す図である。より具体的には、図9には、上段から順に、負極閉回路電位推定部556によって導出された負極閉回路電位CCPaと電流Iとの関係式(16)に、電流センサの検出値を入力することで得られる負極閉回路電位CCPaの推定値と、許可電流決定部58において決定される許可電流値Ilimとの変化を示す。
図8に示すように、電池状態推定部51によるモデルパラメータR0,R1,C1の推定精度は、演算の開始直後は低いものの、繰り返し演算を行うことにより、徐々に真値に近づくことが確認された。
また図9に示すように、単極電位推定部55による演算の開始直後は、上述のようにモデルパラメータR0,R1,C1の推定精度が低いため、負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係(16)の推定精度も低くなり、結果として負極閉回路電位CCPaの推定値が、負極における金属リチウムの析出を抑制するために定められる閾値P0,aを下回る場合がある。しかしながら、図9に示すように、モデルパラメータR0,R1,C1の推定精度が上昇するに従い、負極閉回路電位CCPaの推定値は閾値P0,aを下回らなくなり、これにより負極における金属リチウムの析出によるバッテリの劣化を抑制できることが確認された。
本実施形態の車両Vによれば、以下の効果を奏する。
(1)電池状態推定部51は、電流センサ3及び電圧センサ4の検出値を用いることによってバッテリ1の等価回路モデルの複数のモデルパラメータR0,R1,C1等と、正極開回路電位OCPc及び負極開回路電位OCPaとの推定値を算出する。また交換電流演算部551では、上記等価回路モデルのモデルパラメータR0の推定値に基づいてバッテリ1における交換電流i0の推定値を算出し、活性化過電圧算出部552では、この交換電流i0の推定値を用いることによってバッテリ1の活性化過電圧ηct,aとバッテリの電流Iとの関係式(13)を推定する。そして負極閉回路電位推定部556は、電池状態推定部51によって推定された負極開回路電位OCPaの推定値と、活性化過電圧ηct,aと電流Iとの関係式(13)とを用いることにより、バッテリ1の負極閉回路電位CCPaと電流Iとの関係式(16)を推定する。以上のように、電池状態推定部51では等価回路モデルに基づいた演算を行い、活性化過電圧算出部552及び負極閉回路電位推定部556では交換電流i0や活性化過電圧ηct,a等の推定を含む電気化学モデルに基づいた演算を行い、交換電流演算部551では、等価回路モデルと電気化学モデルとを関連付ける演算を行う。すなわち本実施形態の車両Vによれば、等価回路モデルと電気化学モデルとを組み合わせることにより、比較的簡易な演算によって動的負荷状態で用いられているバッテリ1の負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係を精度良く推定することができる。
(1)電池状態推定部51は、電流センサ3及び電圧センサ4の検出値を用いることによってバッテリ1の等価回路モデルの複数のモデルパラメータR0,R1,C1等と、正極開回路電位OCPc及び負極開回路電位OCPaとの推定値を算出する。また交換電流演算部551では、上記等価回路モデルのモデルパラメータR0の推定値に基づいてバッテリ1における交換電流i0の推定値を算出し、活性化過電圧算出部552では、この交換電流i0の推定値を用いることによってバッテリ1の活性化過電圧ηct,aとバッテリの電流Iとの関係式(13)を推定する。そして負極閉回路電位推定部556は、電池状態推定部51によって推定された負極開回路電位OCPaの推定値と、活性化過電圧ηct,aと電流Iとの関係式(13)とを用いることにより、バッテリ1の負極閉回路電位CCPaと電流Iとの関係式(16)を推定する。以上のように、電池状態推定部51では等価回路モデルに基づいた演算を行い、活性化過電圧算出部552及び負極閉回路電位推定部556では交換電流i0や活性化過電圧ηct,a等の推定を含む電気化学モデルに基づいた演算を行い、交換電流演算部551では、等価回路モデルと電気化学モデルとを関連付ける演算を行う。すなわち本実施形態の車両Vによれば、等価回路モデルと電気化学モデルとを組み合わせることにより、比較的簡易な演算によって動的負荷状態で用いられているバッテリ1の負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係を精度良く推定することができる。
(2)等価回路動的充放電時間演算部553では、モデルパラメータR1,C1,VCの推定値に基づいてバッテリ1における等価回路動的充放電時間t´の推定値を算出し、電気化学動的充放電時間演算部554では、等価回路動的充放電時間t´の推定値を用いることによって電気化学動的充放電時間t´´の推定値を算出し、濃度過電圧算出部555では、この電気化学動的充放電時間t´´の推定値を用いることによってバッテリ1の濃度過電圧ηc,aの推定値を算出し、負極閉回路電位推定部556では、この濃度過電圧ηc,aの推定値をさらに用いることによって負極閉回路電位CCPaと電流Iとの関係式(16)を推定する。これにより負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係の推定精度をさらに向上できる。
(3)電池状態推定部51は、等価回路モデルにおいて電流変化に対し瞬時に応答する特性を有する第1内部抵抗の電気抵抗R0の推定値を算出し、交換電流演算部551では電荷移動−抵抗変換マップ551aを用いることによってこの第1内部抵抗の電気抵抗R0の推定値に応じた交換電流i0の推定値を算出する。これにより、第1原理に基づいて交換電流i0の推定値を算出する場合と比較して、容易な演算で交換電流i0の推定値を算出することができ、ひいては負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係を容易に推定することができる。
(4)電池状態推定部51は、等価回路モデルにおいて電流変化に対し所定の遅れをもって応答する特性を有するRC並列回路における電圧降下を濃度分極VCとしてその推定値を算出し、等価回路動的充放電時間演算部553ではこの濃度分極VCの推定値に基づいて等価回路動的充放電時間t´の推定値を算出し、電気化学動的充放電時間演算部554では充放電時間変換マップ554aを用いることによってこの等価回路動的充放電時間t´の推定値に応じた電気化学動的充放電時間t´´の推定値を算出する。これにより、第1原理に基づいて電気化学動的充放電時間t´´の推定値を算出する場合と比較して、容易な演算で電気化学動的充放電時間t´´の推定値を算出することができ、ひいては負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係を容易に推定することができる。
(5)端子電圧推定部513では、パラメータ同定器511によって算出されたモデルパラメータR0,R1,C1等の推定値並びに正極開回路電位OCPc及び負極開回路電位OCPaの推定値を用いることによってバッテリ1の端子電圧CCVの推定値を算出し、パラメータ同定器511ではこの端子電圧CCVの推定値と電圧センサ4の検出値との推定誤差εが小さくなるように上記モデルパラメータR0,R1,C1等の推定値を算出する。これにより、モデルパラメータR0,R1,C1等の推定値を精度良く算出することができ、ひいてはこれら推定値を用いた負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係の推定精度を向上することができる。
(6)許可電流決定部58では、上記のように負極閉回路電位推定部556によって推定された負極閉回路電位CCPaと電流Iとの関係式(16)を用いることによって、負極閉回路電位CCPaが所定の閾値P0,aを与えるような電流値を算出し、この電流値を許可電流値Ilimとして決定する。そして車両ECU9では、バッテリ1の充電電流がこの許可電流値Ilimよりも小さくならないように充電電流を制御する。これにより、バッテリ1の充電中に負極閉回路電位CCPaが上記閾値P0,aを超えて変化し、バッテリ1が劣化するのを抑制することができる。
(7)本実施形態の車両Vによれば、負極閉回路電位CCPaに対する閾値P0,aを負極における金属リチウムの析出が発生する電位に基づいて設定することにより、バッテリ1の負極における金属リチウムの析出を抑制することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図10は、本実施形態に係る車両VAに搭載されるバッテリECU5Aの機能ブロック図である。本実施形態のバッテリECU5Aは、単極電位推定部55Aと、許可電流決定部58Aと、の構成が、図2に示す第1実施形態のバッテリECU5と異なる。以下の説明では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図10は、本実施形態に係る車両VAに搭載されるバッテリECU5Aの機能ブロック図である。本実施形態のバッテリECU5Aは、単極電位推定部55Aと、許可電流決定部58Aと、の構成が、図2に示す第1実施形態のバッテリECU5と異なる。以下の説明では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第1実施形態の単極電位推定部55では、電池状態推定部51によって推定されたシステムパラメータベクトルzの推定値と、温度センサ6の検出値と、を用いることにより、現在のバッテリの負極閉回路電位CCPaと電流Iとの対応関係を推定した。これに対し本実施形態の単極電位推定部55Aでは、現在のバッテリの正極閉回路電位CCPcと電流Iとの対応関係を推定する。
単極電位推定部55Aは、交換電流演算部551と、活性化過電圧算出部552と、等価回路動的充放電時間算出部553と、電気化学動的充放電時間算出部554と、濃度過電圧算出部555と、正極閉回路電位推定部556Aと、を備え、これらによって上記式(18−1)及び(18−2)に示す電気化学モデルに基づいて導出される演算を行うことにより、バッテリの正極閉回路電位CCPcと電流Iとの対応関係を推定する。なお、単極電位推定部55Aを構成する各モジュール551〜555,556Aのうち、モジュール551〜555における演算の具体的な手順は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
正極閉回路電位推定部556Aでは、上記式(18−2)に基づいて導出される下記式(19)に、電池状態推定部51によって算出される正極開回路電位OCPcの推定値(より具体的には、正極開回路電位の事後推定値OCPc_h+[k])と、活性化過電圧算出部552によって導出された活性化過電圧ηct,aと電流Iとの対応関係(上記式(13)参照)と、濃度過電圧ηc,aの推定値とを入力することにより、充電時(すなわち、電流Iが負(I<0))における正極閉回路電位CCPcと電流Iとの対応関係を導出する。下記式(19)の右辺は、電流Iを除きいずれも既知である。したがって下記式(19)は、正極閉回路電位CCPcは、電流Iの関数として表されることを意味する。
許可電流決定部58Aは、以上のようにして単極電位推定部55Aによって導出された正極閉回路電位CCPcと電流Iとの関係式(19)を用いることによって、正極閉回路電位CCPcが所定の閾値P0,cを与えるような電流値を算出し、この電流値を暫定許可電流値Ilim_tempとして決定する。
より具体的には、許可電流決定部58Aは、上記関係式(19)において正極閉回路電位CCPcを閾値P0,cとし、電流Iについて解くことによって導出される下記式(20)によって、暫定許可電流値Ilim_tempを決定する(図11参照)。ここで、閾値P0,cは、正極の結晶構造の変化が発生する電位に相当する。換言すると、正極閉回路電位CCPcが閾値P0,cより高くなると、バッテリの正極の結晶構造に変化が発生し得る。
また許可電流決定部58Aでは、以上のようにして算出した暫定許可電流値Ilim_tempが最大充電電流値以下である場合には、最大充電電流値を許可電流値Ilimとして決定し、暫定許可電流値Ilim_tempが最大充電電流値より大きい場合には、この暫定許可電流値Ilim_tempを許可電流値Ilimとして決定する。
次に、以上のように構成された車両VAの効果について説明する。
図12は、単極電位推定部55A及び許可電流決定部58Aにおける演算結果の一部を示す図である。より具体的には、図12には、上段から順に、正極閉回路電位推定部556Aによって導出された正極閉回路電位CCPcと電流Iとの関係式(19)に、電流センサの検出値を入力することで得られる正極閉回路電位CCPcの推定値と、許可電流決定部58Aにおいて決定される許可電流値Ilimとの変化を示す。
図12は、単極電位推定部55A及び許可電流決定部58Aにおける演算結果の一部を示す図である。より具体的には、図12には、上段から順に、正極閉回路電位推定部556Aによって導出された正極閉回路電位CCPcと電流Iとの関係式(19)に、電流センサの検出値を入力することで得られる正極閉回路電位CCPcの推定値と、許可電流決定部58Aにおいて決定される許可電流値Ilimとの変化を示す。
本実施形態の許可電流決定部58Aでは、正極閉回路電位CCPcが閾値P0,cを上回らないように許可電流値Ilimを決定し、車両ECUは、許可電流値Ilimを下回らないようにバッテリへの充電電流を制御する。これにより、図12に示すように、正極閉回路電位CCPaの推定値は閾値P0,cを上回らなくなり、これにより正極の結晶構造の変化によるバッテリの劣化を抑制できることが確認された。
本実施形態の車両VAによれば、上記第1実施形態における(1)〜(6)の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(8)本実施形態の車両VAによれば、正極閉回路電位CCPcに対する閾値P0,cを正極の結晶構造の変化が発生する電位に基づいて設定することにより、バッテリの正極の結晶構造の変化を抑制することができる。
(8)本実施形態の車両VAによれば、正極閉回路電位CCPcに対する閾値P0,cを正極の結晶構造の変化が発生する電位に基づいて設定することにより、バッテリの正極の結晶構造の変化を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
V,VA…車両
W…駆動輪
M…モータ(充電手段)
1…バッテリ(二次電池)
2…バッテリ制御システム(状態推定装置)
3…電流センサ
4…電圧センサ
5…バッテリECU
51…電池状態推定部(パラメータ推定部)
511…パラメータ同定器(同定器)
512…濃度分極算出部
513…端子電圧推定部
514…推定誤差演算部
515…ゲインベクトル演算部
516…開放電圧算出部
55,55A…単極電位推定部
551…交換電流演算部
551a…電荷移動−抵抗変換マップ(電荷移動−抵抗変換手段)
552…活性化電圧算出部
553…等価回路動的充放電時間算出部(第1動的充放電時間演算部)
554…電気化学動的充放電時間算出部(第2動的充放電時間演算部)
554a…充放電時間変換マップ(充放電時間変換手段)
555…濃度過電圧算出部
556…負極閉回路電位推定部(単極閉回路電位推定部)
556A…正極閉回路電位推定部(単極閉回路電位推定部)
58,58A…許可電流決定部(制限電流決定部)
6…温度センサ
8…インバータ(充電手段)
9…車両ECU(充電電流制御手段)
W…駆動輪
M…モータ(充電手段)
1…バッテリ(二次電池)
2…バッテリ制御システム(状態推定装置)
3…電流センサ
4…電圧センサ
5…バッテリECU
51…電池状態推定部(パラメータ推定部)
511…パラメータ同定器(同定器)
512…濃度分極算出部
513…端子電圧推定部
514…推定誤差演算部
515…ゲインベクトル演算部
516…開放電圧算出部
55,55A…単極電位推定部
551…交換電流演算部
551a…電荷移動−抵抗変換マップ(電荷移動−抵抗変換手段)
552…活性化電圧算出部
553…等価回路動的充放電時間算出部(第1動的充放電時間演算部)
554…電気化学動的充放電時間算出部(第2動的充放電時間演算部)
554a…充放電時間変換マップ(充放電時間変換手段)
555…濃度過電圧算出部
556…負極閉回路電位推定部(単極閉回路電位推定部)
556A…正極閉回路電位推定部(単極閉回路電位推定部)
58,58A…許可電流決定部(制限電流決定部)
6…温度センサ
8…インバータ(充電手段)
9…車両ECU(充電電流制御手段)
Claims (8)
- 二次電池の端子電圧を検出する電圧センサと、
前記二次電池を流れる電流を検出する電流センサと、を備え、前記電圧センサ及び前記電流センサの検出値を用いることによって前記二次電池の状態を推定する二次電池の状態推定装置であって、
前記電流センサの検出値及び前記電圧センサの検出値を用いることによって、前記二次電池の等価回路モデルの複数のモデルパラメータのうちの少なくとも1つ、前記二次電池の正極開回路電位、及び負極開回路電位の推定値を算出するパラメータ推定部と、
前記モデルパラメータの推定値に基づいて前記二次電池における交換電流の推定値を算出する交換電流演算部と、
前記交換電流の推定値を用いることによって前記二次電池の電流と活性化過電圧との対応関係を推定する活性化過電圧算出部と、
前記負極開回路電位又は前記正極開回路電位の推定値と前記活性化過電圧算出部によって推定した前記電流と前記活性化過電圧との対応関係とを用いることにより、前記二次電池の負極閉回路電位又は正極閉回路電位と前記電流との対応関係を推定する単極閉回路電位推定部と、を備えることを特徴とする二次電池の状態推定装置。 - 前記状態推定装置は、
前記モデルパラメータの推定値に基づいて前記二次電池における第1動的充放電時間の推定値を算出する第1動的充放電時間演算部と、
前記第1動的充放電時間の推定値を用いることによって前記二次電池における第2動的充放電時間の推定値を算出する第2動的充放電時間演算部と、
前記第2動的充放電時間の推定値を用いることによって前記二次電池における濃度過電圧の推定値を算出する濃度過電圧算出部と、をさらに備え、
前記単極閉回路電位推定部は、前記負極開回路電位又は前記正極開回路電位の推定値と、前記電流と前記活性化過電圧との対応関係と、前記濃度過電圧の推定値と、を用いることにより、前記負極閉回路電位又は前記正極閉回路電位と前記電流との対応関係を推定することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の状態推定装置。 - 前記等価回路モデルは、前記二次電池の開放電圧に相当する電位差を発生する電池要素と、当該電池要素に直列に接続された抵抗要素と、当該抵抗要素に直列に接続されたRC並列回路と、を備え、
前記パラメータ推定部は、前記抵抗要素の電気抵抗及び前記RC並列回路における電圧降下を前記モデルパラメータとしてその推定値を算出し、
前記交換電流演算部は、前記電気抵抗と前記交換電流との対応関係を規定する電荷移動−抵抗変換手段を用いることによって前記電気抵抗の推定値に応じた前記交換電流の推定値を算出することを特徴とする請求項2に記載の二次電池の状態推定装置。 - 前記第1動的充放電時間演算部は、前記電圧降下の推定値に基づいて前記第1動的充放電時間の推定値を算出し、
前記第2動的充放電時間演算部は、前記第1動的充放電時間と前記第2動的充放電時間との対応関係を規定する充放電時間変換手段を用いることによって前記第1動的充放電時間の推定値に応じた前記第2動的充放電時間の推定値を算出することを特徴とする請求項3に記載の二次電池の状態推定装置。 - 前記パラメータ推定部は、
前記電流センサの検出値を用いることによって、前記モデルパラメータ、前記正極開回路電位、及び前記負極開回路電位の推定値を算出する同定器と、
前記モデルパラメータの推定値、及び前記正極開回路電位、及び前記負極開回路電位の推定値を用いることによって前記端子電圧の推定値を算出する端子電圧推定部と、を備え、
前記同定器は、前記端子電圧の推定値と前記電圧センサの検出値との誤差が小さくなるように前記モデルパラメータ、前記正極開回路電位、及び前記負極開回路電位の推定値を算出することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の二次電池の状態推定装置。 - 二次電池と、
前記二次電池に充電電流を供給する充電手段と、
前記充電電流が所定の制限値を超えないように当該充電電流を制御する充電電流制御手段と、
請求項1から5の何れかに記載の状態推定装置と、を備える車両であって、
前記状態推定装置は、前記単極閉回路電位推定部によって推定された前記負極閉回路電位又は前記正極閉回路電位と前記電流との対応関係を用いることによって、前記負極閉回路電位又は前記正極閉回路電位が所定の閾値を与えるような電流値を算出し、当該電流値を前記制限値とする制限電流決定部をさらに備えることを特徴とする車両。 - 前記単極閉回路電位推定部は、前記負極閉回路電位と前記電流との対応関係を推定し、
前記負極閉回路電位に対する前記閾値は、前記負極における金属リチウムの析出が発生する電位に基づいて設定されることを特徴とする請求項6に記載の車両。 - 前記単極閉回路電位推定部は、前記正極閉回路電位と前記電流との対応関係を推定し、
前記正極閉回路電位に対する前記閾値は、前記正極の結晶構造の変化が発生する電位に基づいて設定されることを特徴とする請求項6に記載の車両。
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JP2016229176A JP2018084548A (ja) | 2016-11-25 | 2016-11-25 | 二次電池の状態推定装置及び車両 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020162216A (ja) * | 2019-03-25 | 2020-10-01 | 本田技研工業株式会社 | 充電制御装置および充電制御方法 |
KR20220099911A (ko) * | 2021-01-07 | 2022-07-14 | 도요타 지도샤(주) | 전지 시스템 |
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-
2016
- 2016-11-25 JP JP2016229176A patent/JP2018084548A/ja active Pending
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KR20220099911A (ko) * | 2021-01-07 | 2022-07-14 | 도요타 지도샤(주) | 전지 시스템 |
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