JP2007107078A - 被削性に優れた低炭素硫黄快削鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の低炭素硫黄快削鋼は、C:0.02〜0.15%(質量%の意、以下同じ)、Si:0.004%以下(0%を含まない)、Mn:0.6〜3%、P:0.02〜0.2%、S:0.2〜1%、Al:0.005%以下(0%を含まない)、N:0.002〜0.03%を夫々含有し、且つ、鋼中におけるMnS中の平均O濃度が0.4%以上である。
【選択図】図2
Description
(a)鋼中の固溶Siが35ppm以下、固溶Alが1ppm以下であること、
(b)凝固後の鋳片において、面積が25μm2以上の非金属介在物を、MnO−SiO2−MnS系の三元系で規格化したときの平均組成が、MnS:60%以下、SiO2:4%以下、MnO:36%以上であること、
いずれの構成を採用するにしても、化学成分組成として、(1)固溶N量を0.002〜0.02%とすることや、(2)Ti,Cr,Nb,V,ZrおよびBよりなる群から選ばれる1種以上を、合計で0.02%以下(0%を含まない)に抑制することも有用であり、これらの要件を満足することによって、本発明の低炭素硫黄快削鋼の特性を更に改善することができる。
Cは、鋼の強度を確保する上で不可欠な元素であり、また所定量以上添加することによって仕上げ面粗さを改善する作用も有する。こうした効果を発揮させるためには0.02%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると切削加工時の工具寿命が低下して被削性が悪くなり、また鋳造時のCOガス発生に起因する疵発生を誘発することになる。こうした観点から、C含有量は0.15%以下とするのが良い。尚、C含有量の好ましい下限は、0.05%であり、好ましい上限は0.12%である。
Siは、固溶強化による強度確保に有効な元素であるが、基本的には脱酸剤として作用してSiO2を生成する。そしてこのSiO2によって、介在物組成がMnO−SiO2−MnS系になるのであるが、Siが0.004%を超えると、この介在物中のSiO2濃度が高くなって、MnS中のO濃度を確保できなくなり、仕上げ面粗さが劣化することになる。こうした観点から、Si含有量は0.004%以下にする必要があり、好ましくは0.003%以下にするのが良い。
Mnは、焼入れ性を向上させて、ベイナイト組織の生成を促進し、被削性を向上させる作用がある。また強度確保の面でも有効な元素である。更に、Sと結合したMnSを形成し、或いはOと結合してMnOを形成し、MnO−MnS複合介在物を生成し、これによって被削性を向上させる作用がある。これらの作用を発揮させるためには、Mn含有量が0.6%以上とする必要があるが、3%を超えると、強度が上昇し過ぎて被削性が低下することになる。尚、Mn含有量の好ましい下限は1%であり、好ましい上限は2%である。
Pは、仕上げ面粗さを向上させる作用を発揮する。また切り屑中のクラック伝播を容易にすることによって、切り屑処理性を顕著に向上させる作用がある。こうした効果を発揮させるためには、P含有量は少なくも0.02%以上とする必要がある。しかしながら、P含有量が過剰になると、熱間加工性を劣化させるので、0.2%以下とする必要がある。尚、P含有量の好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.15%である。
Sは、鋼中でMnと結合し、MnSとなって切削加工時の応力集中源となり、切り屑の分断を容易にして被削性を高めるために有用な元素である。こうした効果を発揮させるためには、S含有量は0.2%以上とする必要がある。しかしながら、S含有量が過剰になって1%を超えると、熱間加工性の低下を招くことになる。尚、S含有量の好ましい下限は0.3%であり、好ましい上限は0.8%である。
Alは固溶強化による強度の確保および脱酸に有用な元素であるが、強力な脱酸剤として働いて酸化物(Al2O3)を形成することになる。このAl2O3によって、介在物がMnO−Al2O3−MnS系になるのであるが、Al含有量が0.005%を超えると、この介在物中のAl2O3濃度が高くなり、MnS中の酸素濃度が確保できなくなり、仕上げ面粗さが悪化することになる。尚、好ましい上限は0.003%であり、より好ましくは0.001%以下とするのが良い。
Oは、Mnと結合してMnOを生成する。またMnOはSを多く含有し、MnO−MnS複合介在物が形成されることになる。そして、このMnO−MnS複合介在物は、圧延で伸延しにくく、比較的球状に近い状態で存在するので、切削加工時に応力集中源として作用する。このため、Oは積極的に添加するが、0.008%未満ではその効果が小さく、一方0.03%を超えて含有させると、鋼塊にCOガス起因の内部欠陥が発生するようになる。こうしたことから、O含有量は0.008〜0.03%の範囲とする必要がある。尚、鋼中のO含有量の好ましい下限は0.01%であり、好ましい上限は0.03%である。
Nは構成刃先の生成量に影響を与える元素であり、その含有量が仕上げ面粗さに影響を及ぼすことになる。N含有量が、0.002%未満では構成刃先の生成量が多くなり過ぎて仕上げ面粗さが劣化することになる。またNは、組織鋼中の転位上に偏析し易い性質があり、切削時に転位上へ偏析して母材を脆化させ、生成したクラックの伝播を容易にすることで切り屑破断性(切り屑処理性)も向上することになる。しかしながら、N含有量が過剰になって0.03%を超えると鋳造時に気泡(ブローホール)を発生し、鋳塊の内部欠陥や表面疵となり易いので、0.03%以下に抑える必要がある。尚、N含有量の好ましい下限は0.005%であり、好ましい上限は0.025%である。
上述の如く、鋼中の固溶Nは微小クラックの生成に関与するものであり、その量を適切に調整することによって、被削性の良好な快削鋼を実現できる。こうした効果を発揮させるためには、鋼中の固溶N量を0.002%以上確保するのがよいが、0.02%を超えると疵が増加することになる。
これらの元素は、Nと結合して窒化物を生成する成分であり、その量が多くなると固溶N量が減してその必要量が確保できなくなる。こうしたことから、これらの成分は合計で0.02%以下に抑制するのが良い。
凝固後の鋳片断面(430mm×300mm)のD/4部(300mm幅の中心線において、表面から108mm部分)を研磨し、100mm2(10mm×10mm)の領域内に存在する面積が25μm2以上の酸硫化物を、EPMAにより組成分析を実施した。1視野(100mm2)当り、200〜300個の硫化物を測定した。その結果を酸化物、硫化物換算した結果、主成分はMnS、MnO、SiO2、FeOが検出されたが、FeOはマトリクスである鋼を材検出している可能性もあるため、MnO−SiO2−MnSの三元系で規格化(3成分で100%となるように規格化)して平均組成を求めた。
画像解析装置によって、面積が25μm2以上MnSを選択し、このMnSについてSEM−EDXによって平均O濃度を測定した。
分析には、ims5f型二次イオン質量分析装置(CAMECA社製)を用い、以下の手順で分析を行った。各試料(試験片)について、500×500(μm)の領域でAl,Siに二次イオン像を観察し、その領域内でAl,Siが濃化していない場所を3箇所選び、下記の条件で深さ方向分析を行った。このとき、分析対象元素のSiは、電気的に陰性な元素であるので、Cs+イオンを照射して負イオンを検出した。はじめに試料面におけるSi−の二次イオン像を観察し、Siが濃化していない領域を選択した深さ方向分析を行った。測定された二次イオン強度から濃度への変換は28Siをイオン注入した純鉄から求めた感度係数を用いて行った。AlはO2 +イオンを照射して検出した。詳細な条件は下記の通りである。
一次イオン条件:Alの分析 O2 +,8eV,100nA
Siの分析 Cs+,14.5eV,25nA
照射領域 :80×80(μm)
分析領域 :8μmφ
二次イオン極性:Alの分析 正
Siの分析 負
試験室真空度 :1.2×10−7Pa
スパッタ速度 :Alの分析 純鉄換算で約32.0Å/秒
Siの分析 純鉄換算で約36.6Å/秒
電子線照射 :なし
固溶Nは、トータルN(不活性ガス融解熱伝導度法)と化合物N(10%アセチルアセトン+1%テトラメチルアンモニアクロリド+メタノール溶液にて溶解抽出、1μmフィルターで採取→インドフェノール吸光光度計)の差によって求めた。
[切削試験条件]
工具 :高速度工具鋼SKH4A
切削速度:100m/分
送り :0.01mm/rev
切込み :0.5mm
切削油 :塩素系の不水溶性切削油剤
切削長さ:500m
[評価基準]
仕上げ面評価:JIS B 0601(2001)に基づく、最大高さRzによ
って、表面粗さを評価した。
表面疵評価:分塊圧延した鋼片(断面サイズ:155mm×155mm)につい
て、表面疵の有無について調査し、目視検査によりグラインダによる手入れの必要性がないときを、表面疵「無し」と評価した。
Claims (5)
- C :0.02〜0.15%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.004%以下(0%を含まない)、
Mn:0.6〜3%、
P :0.02〜0.2%、
S :0.2〜1%、
Al:0.005%以下(0%を含まない)、
O :0.008〜0.04%
N :0.002〜0.03%を夫々含有し、且つ、
鋼中におけるMnS中の平均O濃度が0.4%以上であることを特徴とする被削性に優れた低炭素硫黄快削鋼。 - C :0.02〜0.15%、
Si:0.004%以下(0%を含まない)、
Mn:0.6〜3%、
P :0.02〜0.2%、
S :0.2〜1%、
Al:0.005%以下(0%を含まない)、
O :0.008〜0.04%
N :0.002〜0.03%を夫々含有し、且つ、
鋼中の固溶Siが35ppm以下、固溶Alが1ppm以下であることを特徴とする被削性に優れた低炭素硫黄快削鋼。 - C :0.02〜0.15%、
Si:0.004%以下(0%を含まない)、
Mn:0.6〜3%、
P :0.02〜0.2%、
S :0.2〜1%、
Al:0.005%以下(0%を含まない)、
O :0.008〜0.04%
N :0.002〜0.03%を夫々含有し、且つ、
凝固後の鋳片において、面積が25μm2以上の非金属介在物を、MnO−SiO2−MnS系の三元系で規格化したときの平均組成が、MnS:60%以下、SiO2:4%以下、MnO:36%以上であることを特徴とする被削性に優れた低炭素硫黄快削鋼。 - 固溶N量が0.002〜0.02%である請求項1〜3のいずれかに記載の低炭素硫黄快削鋼。
- Ti,Cr,Nb,V,ZrおよびBよりなる群から選ばれる1種以上を、合計で0.02%以下に抑制したものである請求項4に記載の低炭素硫黄快削鋼。
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