JPWO2016199843A1 - 快削鋼 - Google Patents
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Abstract
Description
Mn/S≧2.90 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
Mn/S≧2.90 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
Mn/S≧2.90 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態の機械構造用鋼の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は、鋼の基本強度を高める。切削部品に製造される快削鋼は通常、伸線等の加工が実施された後、切削される。C含有量が0.005%以上であれば、快削鋼の強度が、伸線後に切削の工具寿命や表面粗さに適した強度になる。C含有量が0.005%未満であれば、鋼が軟質になり、伸線や切削が困難になる。特に、切削にむしれが生じやすくなる。一方、C含有量が0.150%を超えれば、鋼が硬化して冷間加工性が低下し、さらに、伸線後の切削において工具摩耗が激しくなる。したがって、C含有量は0.005〜0.150%である。C含有量の好ましい下限は0.06%である。C含有量の好ましい上限は0.120%である。C含有量が0.06〜0.120%であれば、圧延疵の発生率が低下する。
珪素(Si)は、通常、鋼を脱酸する。しかしながら、本発明において、MnSの形状を制御するために、鋼中に酸素(O)をある程度残留させる必要がある。Si含有量が高すぎれば、鋼中のO濃度が低くなりすぎる。Si含有量が高すぎればさらに、SiO2等の硬質酸化物が鋼中に残留して被削性を低下する。さらに、硬質酸化物の生成により、MnS中の酸素量がかえって低減する。この場合、MnSが圧延及び伸線で延伸し、アスペクト比の大きなMnSが生成する。アスペクト比の大きなMnSは、表面粗さ(表面性状)を低下する。したがって、Si含有量は0.010%未満である。
マンガン(Mn)は、鋼を脱酸するが、SiやAlのような他の脱酸元素に比べてその脱酸力は弱いため、多量の含有が許容される。Mnはさらに、鋼の強度を高める。Mnはさらに、鋼中でSと結合してMnSを形成し、被削性を高める。Sを多量に含有する快削鋼では、Mnも多量に含有しなければ、MnSが晶出しない。
燐(P)は鋼を脆化させ、被削性を高める。本発明では強度を高めるC含有量が低いため、Pはさらに、Mnとともに鋼の強度を高める。P含有量が0.010%未満であれば、被削性が低く、表面粗さに劣る。さらに、鋼の強度が不十分になる。一方、P含有量が0.200%を超えれば、鋼の熱間延性が低下し、圧延疵が発生しやすくなり、製造安定性を損なう。したがって、P含有量は0.010〜0.200%である。P含有量の好ましい下限は0.050%である。P含有量の好ましい上限は0.100%である。
硫黄(S)は、鋼中でMnSを形成し、被削性を向上させる。S含有量が0.350%未満であれば、十分な被削性が得られない。一方、S含有量が0.600%を超えれば、粒界偏析によって粒界脆化が発生しやすくなる。したがって、S含有量は0.350〜0.600%である。S含有量の好ましい下限は0.400%である。S含有量の好ましい上限は0.550%である。被削性を優先させる場合、S含有量の好ましい範囲は0.450〜0.500%である。製造性を優先させる場合、S含有量の好ましい範囲は0.400〜0.450%である。
鉛(Pb)は鋼の被削性を高める。Pb含有量が0.010%未満であれば、被削性が不十分である。一方、Pb含有量が.0.100%を超えれば、鋼が脆化して製造性が低下し、圧延疵が発生しやすくなる。Pb含有量が0.100%を超えればさらに、単独で存在するPb介在物(鉛粒)が多く発生し、発銹特性が低下する。したがって、Pb含有量は0.010〜0.100%である。Pb含有量の好ましい下限は0.020%である。Pb含有量の好ましい上限は0.040%である。Pb含有量が0.020〜0.040%であれば、銹特性の低下が抑制され、さらに、PbがMnSと複合化することで被削性がさらに高まる。
窒素(N)は鋼の強度を高め、切削において切削抵抗を増加させるものの、表面粗さを向上する。N含有量が0.004%以上であれば、上記効果が得られる。なお、N含有量を0.004%未満にする場合、製造コストが高くなりすぎ、工業的な製造が困難になる。一方、N含有量が0.015%を超えれば、鋼材が脆化して、圧延時及び伸線時に表面疵が発生しやすくなる。したがって、N含有量は0.004〜0.015%である。被削性を優先させる場合のN含有量の好ましい下限は0.007%であり、製造性を優先させる場合のN含有量の好ましい上限は0.012%である。なお、ここでいうN含有量とは、全N(T−N)の含有量を意味する。
酸素(O)は、酸化物を生成する。Oはさらに、硫化物にも含有され、硫化物の形態を制御する。具体的には、OはMnS中に含有され、圧延時及び延伸時にMnSが延伸するのを抑制する。O含有量が0.0080%未満であれば、MnS中の酸素含有量が低くなるため、圧延時及び伸線時にMnSが延伸してそのアスペクト比が大きくなる。一方、O含有量が0.0250%を超えれば、鋳造組織に欠陥が生じやすい。さらに、酸化物が多量に生成し、鋼の被削性が低下する。酸化物の多量の生成はさらに、製造ラインの耐火物の溶損を促進し、製造安定性を低下する。したがって、O含有量は0.0080〜0.0250%である。O含有量の好ましい下限は0.0120%であり、さらに好ましくは0.0150%である。O含有量の好ましい上限は0.0200%であり、さらに好ましくは0.0180%である。なお、ここでいうO含有量とは、全O(T−O)の含有量を意味する。
本発明による快削鋼の化学組成はさらに、Alを含有してもよい。
アルミニウム(Al)は任意元素である。Alは鋼の脱酸元素である。しかしながら、本発明では、MnSの形状を制御するために鋼中に酸素をある程度残留させておく必要がある。Al含有量が0.003%を超えれば、MnS中の酸素量が低くなりすぎ、圧延及び伸線によりMnSが延伸してアスペクト比が大きくなり、表面粗さを低下する。Al含有量が0.003%を超えればさらに、アルミナ系の介在物(硬質酸化物)が鋼中に残留して、鋼の被削性を低下する。したがって、Al含有量は0〜0.003%である。Al含有量の好ましい下限は0.001%である。ここでいうAl含有量とは、全Al(t−Al)の含有量を意味する。
カルシウム(Ca)マグネシウム(Mg)及びジルコニウム(Zr)はいずれも、介在物及び析出物の形態を制御して、鋼の加工性を高める。以下、各元素について説明する。
ボロン(B)はNと結合してBNを形成し、鋼の被削性を高める。BNが粒界に存在する場合、粒界を脆化させることにより被削性が高まる。BNがMnS周辺に存在する場合、硫化物の変形を抑制することによりMnSの応力集中による脆化効果が促進され、鋼の被削性が高まる。しかしながら、B含有量が0.0200%を超えれば、B酸化物が生成して鋼の被削性がかえって低下したり、B酸化物が耐火物と反応して溶損を促進したりする。したがって、B含有量は0〜0.0200%である。被削性をさらに有効に高めるためのB含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0008%である。B含有量の好ましい上限は0.0150%である。BNの生成量を多くして鋼の被削性をさらに高めるためには、0.7≦B/N≦1.8とするのが好ましい。
上述の快削鋼の化学組成はさらに、式(1)を満たす。
Mn/S≧2.90 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
好ましくは、本実施形態の快削鋼はさらに、MnS介在物、Pb介在物及び複合介在物のいずれかであって、円相当径が10μm以上である特定介在物の総個数が200〜10000個/mm2以上である。この場合、発銹特性がさらに高まる。以下、円相当径が10μm以上である特定介在物を「粗大特定介在物」と称する。
さらに好ましくは、粗大特定介在物のうち、粗大特定介在物の総個数に対するPb介在物の個数の比(以下、Pb比という)RAは17%以下である。Pb比RAが高ければ、Pb介在物の個数が多くなる。上述のとおり、Pb介在物は発銹特性を低下する。したがって、粗大特定介在物中に占めるPb介在物の割合は低い方が好ましい。Pb比RAが17%以下であれば、Pb介在物の個数が十分に少ない。そのため、発銹特性がさらに高まる。Pb比RAの好ましい上限は13%である。
個数TN及びPb比RAは次の方法で測定する。快削鋼からサンプルを採取する。たとえば、快削鋼が棒鋼又は線材である場合、横断面(軸方向に垂直な面)のうち、表面と中心軸とを結ぶ半径Rの中央部(以下、R/2部という)からサンプルを採取する。R/2部のサンプルの横断面(表面)に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000倍の倍率でランダムに20視野観察する。各視野(観察面という)において、特定介在物(MnS介在物、Pb介在物、複合介在物)を特定する。特定介在物と他の介在物とは、コントラストで区別可能である。さらに、特定介在物のうち、MnS介在物、Pb介在物及び複合介在物はそれぞれ次の方法で特定する。
RA=MN/TN×100 (A)
本発明の快削鋼は、周知の製造方法で製造可能である。本発明の快削鋼の製造方法の一例では、初めに、上述の化学組成を満たす溶鋼を連続鋳造法により鋳片にする。又は、溶鋼を造塊法によりインゴットにする(鋳造工程)。そして、鋳片又はインゴットを1又は複数回熱間加工して快削鋼材を製造する(熱間加工工程)。鋳造工程及び熱間加工工程は周知の方法で実施すれば足りる。以下、それぞれの工程について説明する。
初めに、溶鋼を転炉、電炉等の周知の方法で溶製する。そして、製造された溶鋼を鋳造して鋳片又はインゴットを製造する。以下、鋳片及びインゴットを総称して素材という。
RC=(λ2/770)−(1/0.41) (3)
熱間加工工程では通常、1又は複数回の熱間加工が実施される。各熱間加工を実施する前に、素材を加熱する。その後、素材に対して熱間加工を実施する。熱間加工はたとえば、分塊圧延又は熱間鍛造である。熱間加工後の素材は空冷等の周知の冷却法により冷却される。続いて、必要に応じて、2回目の熱間加工を実施して、鋼材を製造する。たとえば、連続圧延機により素材を圧延して棒鋼や線材を製造する。以上の製造工程により、快削鋼が製造される。
[Pb比RA]
各試験番号の棒鋼のR/2部から、組織観察用の試験片を採取した。試験片の表面のうち、棒鋼の長手方向(つまり、圧延方向又は延伸方向)と平行な断面を観察面と定義した。上述の方法に基づいて、Pb比RA(%)を求めた。
被削性は、表面粗さ、通常ドリルによる工具寿命特性、及び切り屑処理性を評価した。いずれかの評価において「×」であったものを「被削性が低い」とし、それ以外を「被削性良好」と判断した。
直径8mmの棒鋼を所定の長さで切断し、切削試験片とした。試験片に対して、図2に示す外周旋削を実施した。具体的には、工具10として、K10種超硬工具を用いた。工具10のノーズRは0.4であり、すくい角は5°であった。切削速度V1:80m/分、送り速度V2:0.05mm/rev、切込み量D1:1mm、切削幅L1:1試験片あたり10mm、として、外周旋削を実施した。なお、旋削時に不溶性切削油を使用した。1000個の試験片に対して上記条件の旋削試験を実施した。
上記の切削試験において、1000個目の試験片の旋削が完了した後、その試験片の表面粗さを測定した。表面粗さは、JIS B0601(2001)に規定された十点表面粗さ(Rz)で求めた。測定結果を表1の「表面粗さ」欄に示す。表1中で、「◎」は、表面粗さが10μmRzJIS以下であることを意味する。「○」は、表面粗さが10超〜15μmRzJISであることを意味する。「△」は、表面粗さが15超〜20μmRzJISであることを意味する。「×」は、表面粗さが20μmRzJISを超えたことを意味する。表面粗さが20μmRzJIS以下の場合、優れた表面粗さが得られたと評価した。なお、表中の「○〜◎」は、複数の測定で◎及び○の評価が得られたことを意味する。
1000個目の試験片の旋削が完了した後の工具10について、前逃げ面の工具摩耗量(mm)を測定した。測定結果を表1の「工具摩耗」欄に示す。表1中で「◎」は、工具摩耗量が150μm以下であることを意味する。「○」は、工具摩耗量が150超〜200μmであることを意味する。「×」は、工具摩耗量が200μmを超えたことを意味する。工具摩耗量が200μm以下の場合、工具寿命に優れると評価した。
1000個目の試験片の旋削では、図3A及び図3Bに示す切り屑20が得られた。そこで、切り屑20の長さL20と、直径D20とを測定した。測定結果に基づいて、表2に示すように分類した。
直径8mmの棒鋼を所定の長さに切断した試験片を作製した。試験片に対して、上述の切削試験と同様の条件で旋削加工を行った。切削面に水道水を噴霧しながら、湿度70%、20℃の雰囲気内に24時間試験片を保管した。保管後、試験片の切削面を観察し、錆点の個数を測定した。測定結果を表1の「発銹特性」欄に示す。「◎」は、銹点が10点未満であったことを示す。「○」は、銹点が11〜15点であったことを示す。「△」は錆点が16〜19点であったことを示す。「×」は銹点が20点以上であったことを示す。
上述の直径が10mmの棒鋼から、直径10mm、長さ100mmの丸棒試験片を作製した。試験片の両端にねじ加工を施し、試験片を引張試験の治具に取り付けた後、通電加熱による熱間引張試験を実施した。具体的には、通電加熱により試験片を1100℃に加熱し、3分間保持した。その後、放冷により900℃まで冷却した。試験片の温度が900℃となった時点で引張試験を実施し、破断時の延性(絞り値)を評価した。各試験番号において、3本の試験片で上記引張試験を実施し、得られた絞り値の平均を求めた。結果を表1の「表面疵」欄に示す。「◎」は、絞り値の平均が60%以上であったことを意味する。「○」は、絞り値の平均が50〜60%未満であったことを意味する。「△」は、絞り値の平均が40〜50%未満であったことを意味する。「×」は、絞り値の平均が40%未満であったことを意味する。絞り値の平均が40%以上であった場合、熱間加工時の延性に優れ、表面疵の発生が抑制されると評価した。
表1を参照して、試験番号1〜34、及び46〜48はいずれも、化学組成が本発明の範囲内であり、式(1)を満たした。そのため、切削精度(表面粗さ)、工具寿命、切り屑処理性はいずれも優れており、被削性に優れた。さらに、発銹特性及び延性にも優れた。なお、試験番号1〜34、及び46では、Pb介在物の個数比率RAが17%以下であった。
20 Pb介在物
30 複合介在物
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.005〜0.150%、
Si:0.010%未満、
Mn:1.02〜2.00%、
P:0.010〜0.200%、
S:0.350〜0.600%、
Pb:0.010〜0.100%、
N:0.004〜0.015%、
O:0.0080〜0.0250%、
Al:0〜0.003%、
Ca、Mg及びZrからなる群から選択される1種以上:合計で0〜0.0005%、及び、
B:0〜0.0200%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
式(1)を満たす化学組成を有する、快削鋼。
Mn/S≧2.90 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載の快削鋼であって、
前記化学組成は、
Al:0.001〜0.003%を含有する、快削鋼。 - 請求項1又は請求項2に記載の快削鋼であって、
前記化学組成は、
Ca、Mg及びZrからなる群から選択される1種以上を、合計で0.0001〜0.0005%含有する、快削鋼。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の快削鋼であって、
前記化学組成は、
B:0.0005〜0.0200%を含有する、快削鋼。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の快削鋼であって、
前記特定介在物の総個数に対する前記Pb介在物の個数の比率が17%以下である、快削鋼。
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