JP2017115190A - 熱間圧延棒線材 - Google Patents
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また、特許文献2は、特許文献1と同様に被削性に言及しておらず、熱間加工後の素材にTi系析出物が多量に析出した場合、素材が硬くなりすぎ、被削性が低下する恐れがある。さらに、浸炭焼入れ後の芯部硬さに言及しておらず、芯部硬さが必要な低サイクル疲労特性に劣る可能性がある。
また、特許文献3は、特許文献1と同様に被削性に言及しておらず、熱間加工後の素材にTi系析出物が多量に析出した場合、素材が硬くなりすぎ、被削性が低下する恐れがある。この鋼は、転動疲労寿命に考慮されたもので、低サイクル疲労特性向上に配慮されていない。
C:0.13〜0.40%、
Si:0.01〜1.5%、
Mn:1.0〜2.0%、
S:0.015〜0.040%未満、
Cr:0.01〜1.6%、
Al:0.010〜0.045%および
N:0.010〜0.025%、
Bi:0.0001〜0.0100%
を含有するとともに、残部がFeおよび不純物からなり、
更に、PおよびOがそれぞれ、
P:0.05%以下および
O:0.0005〜0.0040%であり、
MnおよびSの含有量が下記の式(1)を満たし、
鋼材の圧延方向と平行な断面において硫化物の円相当径が2μm未満のものの存在密度が300個/mm2以上であることを特徴とする熱間圧延棒線材。
[Mn]≧8.4×[S]+0.9・・・(1)
Nb:0.05%以下(0を含む)、
Mo:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Ti:0.01%以下、
Cu:0.40%以下、
V:0.30%以下、
B:0.02%以下及び
Mg:0.0035%以下
からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)記載の熱間圧延棒線材。
本発明の熱間圧延棒線材を歯車などの部品形状に加工する場合、連続鋳造した鋳片を圧延した後、浸炭焼き入れ等の表面硬化処理の前に熱間鍛造と切削が行われる。その際、MnSは、切削加工に極めて有効である。すなわち、被削材である熱間圧延棒線材中のMnSは、切削工具の摩耗による工具変化を抑制し、いわゆる工具寿命を延ばす効果を発現する。
炭素(C)は、鋼の引張強度及び疲労強度を高める。一方、Cの含有量が多すぎれば、鋼の冷間鍛造性が低下し、被削性も低下する。したがって、Cの含有量は0.13〜0.40%である。好ましいCの含有量は0.14〜0.28%であり、さらに好ましくは、0.15〜0.25%である。
シリコン(Si)は、鋼中のフェライトに固溶して、鋼の引張強度を高める。一方、Siの含有量が多すぎれば、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Siの含有量は、0.01〜1.5%である。好ましいSiの含有量は0.15〜0.70%であり、さらに好ましくは0.20〜0.35%である。
マンガン(Mn)は、脱酸作用を有し、酸化物系介在物を低減する。さらに、浸炭焼入れ時の焼入れ性を著しく高め、浸炭後の芯部の硬さを高める。Mnはさらに、鋼中の硫黄(S)と結合してMnSを形成し、鋼の被削性を高める。一方、Mnの含有量が高すぎれば、粗大なMnSが生成し、疲労強度が低下する。したがって、Mnの含有量は、1.0〜2.0%である。好ましいMnの含有量は1.20〜1.70%であり、さらに好ましくは1.30〜1.60%である。
硫黄(S)は、鋼中のMnと結合してMn硫化物を形成し、鋼の被削性を高める。一方、Sを過剰に含有すれば、鋼の疲労強度が低下する。したがって、Sの含有量は、0.015%以上0.040%未満である。好ましいSの含有量は0.020%以上0.030%未満である。
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性及び引張強度を高める。本実施の形態による熱間圧延棒線材により製造される機械部品は、浸炭処理や高周波焼入れにより鋼の表面を硬化する場合がある。Crは、鋼の焼入れ性を高め、浸炭処理や高周波焼入れ後の鋼の表面硬度を高める。一方、Crの含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性や疲労強度が低下する。したがって、Crの含有量は、0.01〜1.60%である。鋼の焼入れ性及び引張強度を高める場合、好ましいCrの含有量は、0.03〜1.50%であり、さらに好ましくは、0.10〜1.20%である。
Alは脱酸作用を有すると同時に、Nと結合してAlNを形成しやすく、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化防止に有効な元素である。しかし、Alの含有量が0.010%未満では、安定してオーステナイト粒の粗大化を防止できず、粗大化した場合は、疲労強度が低下する。一方、Alの含有量が0.045%を超えると、AlNが粗大となり、結晶粒の粗大化抑制に寄与しなくなる。したがって、Alの含有量を0.010〜0.045%とした。Alの含有量の好ましい下限は0.020%であり、好ましい上限は0.035%である。
窒素(N)は、AlN、Nb(CN)の析出による浸炭時の結晶粒の微細化、及び結晶粒の粗大化抑制を目的として添加するが、0.010%未満ではその効果は不十分である。一方、0.025%を超えるとその効果は飽和する。過剰なNの添加は鋼を脆化させるため、鋳造、圧延時に割れ、キズの原因となる。以上の理由から、その含有量を0.010〜0.025%の範囲内にする必要がある。好適な範囲は0.013〜0.020%である。
Biは、本発明において重要な元素である。微量のBiを含有することによって、鋼の凝固組織が微細化に伴い、硫化物が微細分散する。さらに、微量のBiを添加することにより、結晶粒の粗大化を抑制するAlN等の析出物の浸炭時の成長・粗大化を抑制することができる。Mn硫化物の微細化効果を得るには、Biの含有率を0.0001%以上とする必要がある。しかし、Biの含有率が0.0100%を超えると、デンドライト組織の微細化効果が飽和し、かつ鋼の熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難となる。これらのことから、本発明では、Biの含有率を0.0001〜0.0100%とする。被削性をさらに向上させるには、Biの含有率を0.0010%以上とすることが好ましい。
燐(P)は不純物である。Pは鋼の冷間鍛造性や熱間加工性を低下する。したがって、Pの含有量は少ない方が好ましい。Pの含有量は0.05%以下である。好ましいPの含有量は0.035%以下であり、さらに好ましくは、0.020%以下である。
Oは、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成する。酸化物系介在物が鋼中に多量に存在すると、AlNやNb(CN)の析出サイトとなり、熱間圧延時にAlNやNb(CN)が粗大に析出し、浸炭時に結晶粒の粗大化を抑制できなくなる。そのため、Oの含有量はできるだけ低減することが望ましい。以上の理由から、その含有量を0.0040%以下に制限する必要がある。なお、軸受部品、転動部品においては、酸化物系介在物が転動疲労破壊の起点となるので、Oの含有量が低いほど転動寿命は向上する。そのため、軸受部品、転動部品においては、Oの含有量を0 .0012%以下に制限するのが望ましい。
本実施の形態による熱間圧延棒線材はさらに、Nb、Mo、Ni、Ti、Cu、V、B及びMgからなる群から選択される1種または2種以上を含有してもよい。Nb、Mo、Ni、Ti、Cu、V、B及びMgはいずれも、鋼の疲労強度を高める。
ニオブ(Nb)は、浸炭加熱の際に、鋼中のC、Nと結びついてNb(CN)を形成し、結晶粒の微細化、及び結晶粒の粗大化抑制に有効な元素である。Nbの含有量が0.05%を超えると、素材の硬さが上昇し、加工性が劣化するとともに、Nb(CN)の析出物が粗大になり、結晶粒の粗大化抑制には寄与しなくなる。以上の理由から、その含有量を0.05%以下の範囲内にする必要がある。好適範囲は0.04%以下である。また、Nbの含有量の下限は、0.001%以上がよい。
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の疲労強度を高める。また、Moは、浸炭処理において、不完全焼入れ層を抑制する。Moを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Moの含有量が多すぎれば、鋼の被削性が低下する。さらに、鋼の製造コストも高くなる。したがって、Moの含有量は、1.0%以下である。Moの含有量が0.02%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいMoの含有量は0.05〜0.50%であり、さらに好ましくは、0.10〜0.30%である。
ニッケル(Ni)は、焼入れ性を高める効果があり、より疲労強度を高めるために有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Niの含有量が1.0%を超えると、焼入れ性の向上による疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、変形抵抗が高くなり冷間鍛造性の低下が顕著となる。そのため、含有させる場合のNiの量を1.0%以下とした。含有させる場合のNiの量は0.8%以下であることが好ましい。さらに、Niの焼入れ性向上による疲労強度を高める効果を安定して得るためには、含有させる場合のNiの量は0.1%以上であることが好ましい。
チタン(Ti)は、鋼中のNと結びついてTiNを形成する。TiNの析出物は粗大であり、浸炭時の結晶粒の微細化、及び結晶粒の粗大化抑制に寄与しない。むしろ、TiNが存在すると、AlNやNb(CN)の析出サイトとなり、熱間圧延時にAlNやNb(CN)が粗大に析出し、浸炭時に結晶粒の粗大化を抑制できなくなる。そのため、Tiの量はできるだけ低減することが望ましい。以上の理由から、Tiの含有量を0.01%以下に制限する必要がある。
銅(Cu)は、鋼の焼入性を高める元素である。多量の添加は鋼材の表面性状の劣化や合金コストの増加を招くため、上限を0.40%とした。
バナジウム(V)は、鋼中で炭化物を形成し、鋼の疲労強度を高める。バナジウム炭化物は、フェライト中に析出して鋼の芯部(表層以外の部分)の強度を高める。Vを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Vの含有量が多すぎれば、鋼の冷間鍛造性及び疲労強度が低下する。したがって、Vの含有量は0.30%以下である。Vの含有量が0.03%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいVの含有量は0.04〜0.20%であり、さらに好ましくは、0.05〜0.10%である。
ボロン(B)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の疲労強度を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。Bの含有量が0.02%を超えると、その効果は飽和する。したがって、Bの含有量は0.02%以下である。Bの含有量が0.0005%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいBの含有量は、0.001〜0.012%であり、さらに好ましくは、0.0020〜0.010%である。
マグネシウム(Mg)は、Alと同様に、鋼を脱酸し、鋼中の酸化物を微細化する。鋼中の酸化物が微細化することにより、粗大酸化物を破壊起点とする確率が低下し、鋼の疲労強度が高まる。Mgを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Mgの含有量が多すぎれば、上記効果は飽和し、かつ、鋼の被削性が低下する。したがって、Mgの含有量は0.0035%以下である。Mgの含有量が0.0001%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいMgの含有量は0.0003〜0.0030%であり、さらに好ましくは、0.0005〜0.0025%である。
連続鋳造鋳片の凝固組織は、通常はデンドライト形態を呈している。鋼材中のMnSは、凝固前(溶鋼中)、または凝固時に晶出することが多く、デンドライト1次アーム間隔に大きく影響を受ける。すなわち、デンドライト1次アーム間隔が小さければ、樹間に晶出する硫化物は小さくなる。本実施形態の熱間圧延棒線材は、鋳片の段階におけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満であることが望ましい。
MnSは、切削性の向上に有用であるため、その個数密度を確保することが必要である。S量を増加すると被削性は向上する。円相当径で2μm未満のMnSが300個/mm2以上の存在密度で鋼中に存在すると、工具の摩耗が抑制される。なお、介在物がMnSであることは、走査電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線解析によって確認すればよい。また、MnSの円相当径はMnSの面積と等しい面積を有する円の直径であり、画像解析によって求めることができる。同様に、MnSの個数密度は、画像解析によって求められる。なお、介在物が硫化物であることは、走査電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線解析よって確認すればよい。
本発明の一実施形態による熱間圧延棒線材の製造方法を説明する。本実施形態の熱間圧延棒線材の製造方法は、上記の化学成分を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を連続鋳造し、この鋳片を熱間加工し、更に焼鈍することによって製造される。熱間加工は、熱間圧延を含んでもよい。
上記化学組成及び式(1)を満たす鋼の鋳片を連続鋳造法により製造する。造塊法によりインゴット(鋼塊)にしてもよい。鋳造条件は例えば、220×220mm角の鋳型を用いて、タンディッシュ内の溶鋼のスーパーヒートを10〜50℃とし、鋳込み速度を1.0〜1.5m/分とする条件を例示できる。
次いで、鋳片又はインゴットを分塊圧延等の熱間圧延して、ビレット(鋼片)を製造する。更に、ビレットを熱間圧延し、本実施形態の熱間圧延棒線材である棒鋼や線材とする。熱間加工における圧下比に特に制限はない。
凝固組織は、上記の鋳片の断面をピクリン酸にてエッチングし、鋳片表面から深さ方向に15mm位置を鋳込み方向に5mmピッチでデンドライト1次アーム間隔を100点測定し、平均値を求めた。
丸棒のミクロ組織を観察した。丸棒のD/4位置を軸方向に対して垂直に切断し、ミクロ組織観察用の試験片を採取した。試験片の切断面を研磨し、ナイタル腐食液で腐食した。腐食後、400倍の光学顕微鏡で、切断面の中央部のミクロ組織を観察した。各マークの丸棒のミクロ組織はいずれも、フェライト・パーライト組織であった。
光学顕微鏡によって鋼の金属組織を観察し、組織中のコントラストからMnSを判別した。なお、走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)とを用いて介在物を同定した。MnS観察用試験片は、ミクロ観察用試験片と同じ位置である丸棒のD/4位置を軸方向に対して垂直に切断し、試験片の長手方向を含む断面から、縦10mm×横10mmの研磨試験片を10個作製し、これらの研磨試験片の所定位置を光学顕微鏡にて100倍で写真撮影して、0.9mm2の検査基準面積(領域)の画像を10視野分準備した。なお、本発明でのMnS観察視野は、9mm2である。その観察視野(画像)中の円相当径が1μm以上のMnSの粒径分布を検出した。これらの寸法(直径)は、MnSの面積と同一の面積を有する円の直径を示す円相当径に換算した。検出したMnSの粒径分布から、MnSの平均円相当径差を算出した。
各鋼番号の丸棒について、被削性を評価した。
母材材質:超硬P20種グレード、
コーティング:なし。
<旋削加工条件>
周速:250m/分、
送り:0.35mm/rev、
切り込み:1.0mm、
潤滑:水溶性切削油を使用。
機械加工後の中間品に、浸炭シミュレーションを行った。浸炭シミュレーションの条件は、910〜1090℃に5時間加熱―水冷である。その後、切断面に研磨―腐食を行い、旧オーステナイト粒径を観察して粗大粒発生温度(結晶粒粗大化温度)を求めた。高温浸炭は、通常1000〜1050℃で行われるため、粗大粒発生温度が1000℃以下のものは、結晶粒粗大化特性に劣ると判断した。なお、旧オーステナイト粒度の測定は、JIS G 0051に準じて行い、400倍で10視野程度観察し、粒度番号5番以下の粗粒が1つでも存在すれば粗大粒発生と判定した。
熱間加工後の直径55mmの丸棒の残材を用いて、疲労特性評価を実施した。具体的には、13mm×13mm×100mmの角棒の四点曲げ疲労試験片を採取して、浸炭焼入れを行った。この浸炭焼入れでは、この試験片を、炭素ポテンシャルが0.8%の雰囲気中で、900℃に加熱し、5時間保持し、温度が130℃の油に焼入れた。さらに、試験片を150℃で2時間保持し、焼戻しを行った。更に、油圧式サーボ疲労試験機を用いて四点曲げ疲労試験を行った。また、ビッカース硬さ測定機を用いて四点曲げ疲労試験片の芯部硬さを調べた。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.13〜0.40%、
Si:0.01〜1.5%、
Mn:1.0〜2.0%、
S:0.015〜0.040%未満、
Cr:0.01〜1.6%、
Al:0.010〜0.045%および
N:0.010〜0.025%、
Bi:0.0001〜0.0100%
を含有するとともに、残部がFeおよび不純物からなり、
更に、PおよびOがそれぞれ、
P:0.05%以下および
O:0.0005〜0.0040%であり、
MnおよびSの含有量が下記の式(1)を満たし、
鋼材の圧延方向と平行な断面において硫化物の円相当径が2μm未満のものの存在密度が300個/mm2以上であることを特徴とする熱間圧延棒線材。
[Mn]≧8.4×[S]+0.9・・・(1) - 更に、質量%で、
Nb:0.05%以下(0を含む)、
Mo:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Ti:0.01%以下、
Cu:0.40%以下、
V:0.30%以下、
B:0.02%以下及び
Mg:0.0035%以下
からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延棒線材。
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